説明

ウォータージェットノズル

【課題】軽量化及び構造の簡素化が可能なウォータージェットノズルを提供する。
【解決手段】第1ヒンジ部33が、一次管25を左右方向にガン本体3に対して揺動可能に連結している。第1ヒンジ部33の揺動する角度範囲は規制されている。第2ヒンジ部37が、二次管27を左右方向に一次管25に対して揺動可能に連結している。第2ヒンジ部37の揺動する角度範囲は規制されている。ガン本体3の水路18と連通したホース29が一次管25及び二次管27の内部に挿通されている。この構成により、噴射中にウォータージェットノズル5を振ると、噴射反力による一次管25及び二次管27の揺動運動を連続させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、建築現場において行われるコンクリートのはつり又は目荒し等に用いられて、高圧水流(ウォータージェット)を噴射する装置に適用するノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォータージェットを噴射させることにより、塗装剥離又は耐火被覆の除去、コンクリートのはつり又は目荒し等を行うための装置としてウォータージェット噴射装置が知られている。この種のウォータージェット噴射装置に用いられるウォータージェットノズルとして、揺動ノズルがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、揺動ノズルとして以下のようなものが開示されている。支持体に対して保持板が揺動可能に設けられ、保持板には揺動モータが固定されている。この揺動モータにクランク機構の一端が連結され、クランク機構の他端が支持体に固定されている。すなわち、揺動モータの回転運動が、クランク機構により揺動運動に変換されて保持板を揺動させる。これにより、この保持板に固定された噴射口を揺動させる。
【特許文献1】特開2005−262420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された揺動ノズルでは、揺動運動の動力源となるモータと、モータの回転運動を揺動運動に変換するクランク機構とが必要である。すなわち、モータ及びクランク機構により、上記揺動ノズルは、重量が重くなると共に構造が複雑になる。
【0005】
そこで本発明は、軽量化及び構造の簡素化が可能なウォータージェットノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るウォータージェットノズルは、ウォータージェット本体の先端部分に取り付けられて利用されると共に、ウォータージェットを噴射するための噴射口が一平面内で揺動するように構成されたウォータージェットノズルにおいて、ウォータージェット本体の内部に設けられた水路と連通する水路が内部に設けられた第1管状部及び第2管状部と、第1管状部の一方端を平面上においてウォータージェット本体に対して揺動可能に連結する第1ヒンジ部と、第1ヒンジ部が揺動する角度範囲を規制する第1ストッパ部及び第2ストッパ部と、噴射口を有する第2管状部の基端を平面上において第1管状部の他方端に対して揺動可能に連結する第2ヒンジ部と、第2ヒンジ部が揺動する角度範囲を規制する第3ストッパ部及び第4ストッパ部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このウォータージェットノズルにおいて、噴射中に、ウォータージェットノズルを例えば左方向に振ると、第1管状部は第1ストッパ部に衝突し、第2管状部は第3ストッパ部に衝突する。このとき、水が噴射されるときの噴射反力により、第1管状部は、右方向に始動し、その後、第2ストッパ部に衝突する。第1管状部が停止すると、第2管状部は、慣性力により第1管状部に対して右方向に振られて、第4ストッパ部に衝突する。さらにその後、噴射反力により、第1管状部は、左方向に始動し、再び第1ストッパ部に衝突する。第1管状部が停止すると、第2管状部は、慣性力により第1管状部に対して左方向に振られて、再び第3ストッパ部に衝突する。
【0008】
第1管状部及び第2管状部のこのような揺動運動によって、噴射口の揺動運動を連続させることができる。そして、ウォータージェットノズルの軽量化及び構成の簡素化が達成される。
【0009】
本発明に係るウォータージェットノズルは、第1及び第2管状部の水路が、ホースによって形成されていることも好ましい。このホースによりノズル内の水路の確保が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータ等の動力源を使わずとも、ウォータージェットノズルの揺動運動を連続させることができる。よって、動力源及び動力の伝達機構を不要とし、ウォータージェットノズルの軽量化、簡素化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るウォータージェットノズルの実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示されるように、ウォータージェットガン1は、ハンドガン式のウォータージェット噴射装置である。ガン本体(ウォータージェット本体)3の先端部分に取り付けられて利用されるウォータージェットノズル5の噴射口は、左右方向すなわち矢印7方向に揺動しながら高圧水を噴射する。矢印9は、噴射方向を示す。
【0013】
ガン本体3は、ハウジング11の後方に設けられたハンドグリップ13及び操作レバー15と、ハウジング11の前方に設けられてウォータージェットノズル5の基端との連結が予定されたパイプ17と、パイプ17とハウジング11との間に設けられた環状のハンドル19とを備える。
【0014】
ハウジング11内には、ガン本体3内の水路(図示せず)を開閉するための開閉弁(図示せず)が設けられ、このハウジング11内の水路には、給水ホース21が接続され、高圧水が外部から給水ホース21を介してハウジング11内の水路に供給される。そして、操作レバー15を指で引くことによりハウジング11内の開閉弁が開放され、パイプ17を介してウォータージェットノズル5内に高圧水が供給される。また、操作レバー15から指を離すことにより、開閉弁が閉鎖し、ウォータージェットノズル5から噴射し続けている高圧水を止めることができる。
【0015】
そして、作業者が、一方の手でハンドグリップ13を握り、他方の手でハンドル19の外周部を握って、ガン本体3を操作しながら、コンクリートのはつり又は目荒しを行う。
【0016】
ガン本体3の先端に取り付けられたウォータージェットノズル5は、パイプ17の先端にネジ(図示せず)を介して取り付けられる接続管23と、接続管23の先端に揺動可能に連結された一次管(第1管状部)25と、一次管25の先端に揺動可能に連結された二次管(第2管状部)27と、パイプ17の先端に接続されると共に一連の接続管23、一次管25及び二次管27内を挿通する可撓性のホース29とを有する。
【0017】
図2に示されるように、ウォータージェットノズル5は、ガン本体3内の水路18の一部を形成するパイプ17の先端に取り付けられて利用される。パイプ17の先端には、接続管23に設けられた雌ネジ部23cに螺合される雄ネジ部17bと、この雄ネジ部17bよりも先方に突出してホース29にホースバンド(図示せず)を介して接続するための差込管17aが形成されている。さらに、パイプ17内の水路18の先端はロート状に形成され、ロート部17cは、差込管17aに向けて径が徐々に小さくなっている。ロート部17cの採用により、パイプ17内の水路18における乱流の発生を抑制しながら更なる高圧水を作り出している。そして、可撓性のホース29は、ウォータージェットノズル5の全長に渡って延在し、ウォータージェットノズル5の水路を形成する。なお、ホース29と二次管27との間にはスペーサ31が挿入されており、ウォータージェットノズル5内でのホース29の暴れを防止している。
【0018】
図2及び図3に示されるように、ガン本体3に取り付けられる接続管23の先端部の左右には、ストッパとして機能する略U字状の第1の切り欠き部23a及び第2の切り欠き部23bがそれぞれ形成されている。そして、上下において接続管23の先端はくちばし状に延びている。
【0019】
一次管25の基端部の左右には、接続管23に対して一次管25が傾いたときに一次管25の基端がホース29に接触しないように、略U字状の第1の切り欠き部(第1ストッパ部)25a及び第2の切り欠き部(第2ストッパ部)25bがそれぞれ形成されている。そして、上下において一次管25の基端はくちばし状に延びている。なお、一次管25の外径は、接続管23の内径より小さく形成されて、一次管25の基端は接続管23の先端部内に差し込まれている。
【0020】
接続管23の先端における上側部分23dと一次管25の基端における上側部分25eとが重なり合う。そして、接続管23の先端における上側部分23dと一次管25の基端における上側部分25eとは、厚さ方向に貫通するピン35によって互いに連結されている。同様に、接続管23の先端における下側部分23eと一次管25の基端における下側部分25fとが重なり合う。そして、接続管23の先端における下側部分23eと一次管25の基端における下側部分25fとは、厚さ方向に貫通するピン35によって互いに連結されている。
【0021】
このようにして接続管23と一次管25とが互いに連結されているので、一次管25を、接続管23に対して左右方向すなわち矢印7方向に自由に揺動させることができる。また、一次管25が接続管23に対して左方向に振れると、接続管23の第1の切り欠き部23aの端面が一次管25の左側半分に衝突する。これに対し、一次管25が接続管23に対して右方向に振れると、接続管23の第2の切り欠き部23bの端面が一次管25の右側半分に衝突する。そして、第1の切り欠き部23a及び第2の切り欠き部23bの大きさや形状を変更することによって、第1ヒンジ部33の揺動する角度範囲を任意に変えることができる。
【0022】
更に、一次管25の先端部の左右には、接続管23に対して一次管25が傾いたときに一次管25の基端がホース29に接触しないように、略U字状の第3の切り欠き部25c及び第4の切り欠き部25dがそれぞれ形成されている。そして、上下において一次管25の先端はくちばし状に延びている。
【0023】
二次管27の基端部の左右には、ストッパとして機能する略U字状の第1の切り欠き部(第3ストッパ部)27a及び第2の切り欠き部(第4ストッパ部)27bがそれぞれ形成されている。そして、上下において二次管27の基端はくちばし状に延びている。なお、一次管25の外径は、二次管27の内径より小さく形成されて、一次管25の先端は二次間27の基端部内に差し込まれている。
【0024】
一次管25の先端における上側部分と二次管27の基端における上側部分とが重なり合う。そして、一次管25の先端における上側部分と二次管27の基端における上側部分とは、厚さ方向に貫通するピンによって互いに連結されている。同様に、一次管25の先端における下側部分と二次管27の基端における下側部分とが重なり合う。そして、一次管25の先端における下側部分と二次管27の基端における下側部分とは、厚さ方向に貫通するピンによって互いに連結されている。
【0025】
このようにして一次管25と二次管27とが互いに連結されているので、二次管27を、一次管25に対して左右方向すなわち矢印7方向に自由に揺動させることができる。また、二次管27が一次管25に対して左方向に振れると、二次管27の第1の切り欠き部27aの端面が一次管25の左側半分に衝突する。これに対し、二次管27が一次管25に対して右方向に振れると、二次管27の第2の切り欠き部27bの端面が一次管25の右側半分に衝突する。そして、第1の切り欠き部27a及び第2の切り欠き部27bの大きさや形状を変更することによって、第2ヒンジ部37の揺動する角度範囲を任意に変えることができる。
【0026】
第1及び第2ヒンジ部33,37のそれぞれの揺動角度範囲は、それぞれ−15〜+15度程度の範囲に設定され、この場合、ウォータージェットノズル5から噴射される高圧水の噴射角度範囲は、−30〜+30度程度となる。
【0027】
前述したように、第1及び第2の切り欠き部23a,23b,27a,27bの切り欠き形状を変えることにより、第1及び第2ヒンジ部33,37が揺動する角度範囲をそれぞれ設定することができる。例えば、第1及び第2の切り欠き部23a,23b,27a,27bの切り込み深さを深くすることにより、第1及び第2ヒンジ部33,37の揺動する角度範囲を大きくすることができる。逆に、第1及び第2の切り欠き部23a,23b,27a,27bの切り込み深さを浅くすることにより、第1及び第2ヒンジ部33,37の揺動する角度範囲を小さくすることができる。
【0028】
なお、接続管23の第1又は第2の切り欠き部23a,23bの切り込み深さを大きくすると、一次管25が接続管23に対してより大きい角度で振れることとなる。この場合に、一次管25の第1又は第2の切り欠き部25a,25bを形成する端面が接続管23内のホース29に接触するおそれがある。そこで、接続管23の第1及び第2の切り欠き部23a,23bの切り込み深さを大きくした場合には、一次管25の第1及び第2の切り欠き部25a,25bの切り込み深さを大きくすることが好ましい。同様に、二次管27の第1及び第2の切り欠き部27a,27bの切り込み深さを大きくした場合には、一次管25の第3及び第4の切り欠き部25c,25dの切り込み深さを大きくすることが好ましい。
【0029】
図4〜図7を参照しながら、ウォータージェットノズル5の揺動動作について説明する。
【0030】
先ず、図4に示されるように、噴射中に、ウォータージェットノズル5を左方向すなわち矢印7a方向に振ると、一次管25の基端の左側半分が接続管23の第1の切り欠き部23aに衝突し、二次管27の第1の切り欠き部27aが一次管25の先端の左側半分に衝突する。この状態では、一次管25はガン本体3に対して左に傾き、二次管27は一次管25に対して左に傾いている。このとき、高圧水が噴射されるときの噴射反力39aの分力が、一次管25に対して右方向に働く。この噴射反力39aにより、一次管25は、右方向すなわち矢印41a方向に始動する。
【0031】
その後、図5に示されるように、一次管25の基端の右側半分が接続管23の第2の切り欠き部23bに衝突する。一次管25が停止すると、二次管27は、慣性力により一次管25に対して右方向すなわち矢印41b方向に振られる。
【0032】
そして、図6に示されるように、二次管27の第2の切り欠き部27bが一次管25の先端の右側半分に衝突する。この状態では、一次管25はガン本体3に対して右に傾き、二次管27は一次管25に対して右に傾いている。このとき、噴射反力39cの分力が、一次管25に対して左方向に働く。この噴射反力39cにより、一次管25は、左方向すなわち矢印41c方向に始動する。
【0033】
そして、図7に示されるように、一次管25の基端の左側半分が接続管23の第1の切り欠き部23aに再び衝突する。一次管25が停止すると、二次管27は、慣性力により一次管25に対して左方向すなわち矢印41d方向に振られて、再び二次管27の第1の切り欠き部27aが一次管25の先端の左側半分に衝突する。このようにして、ウォータージェットノズル5の揺動運動が連続する。
【0034】
従来の技術では、モータを用いてウォータージェットノズルを揺動運動させている。この場合、ガン本体3に、モータと、モータの回転運動を揺動運動に変換するクランク機構等を搭載する必要があり、ガン本体3の重量が重くなると共に構造が複雑になる。また、ガン本体3に、電気を供給するために、電気ケーブルの接続及び電源の確保等が必要となる。
【0035】
それに対して本実施形態のウォータージェットノズル5では、モータ等の動力源を使わずとも、揺動運動が連続する。よって、動力源及び動力の伝達機構を不要とし、ウォータージェットノズルの軽量化、簡素化を達成することができる。また、電源等の電気設備も不要となる。従って、作業性を向上させることができる。
【0036】
更に、本実施形態のウォータージェットノズル5では、一連の接続管23、一次管25及び二次管27内の水路が、ホース29によって形成されているので、ウォータージェットノズル5内の水路の確保が容易になる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ハンドガン式の本体にウォータージェットノズル5を接続することとしたが、設置型又は車両型のウォータージェット装置本体にウォータージェットノズルを接続してもよい。また例えば、上記実態形態では、ホース29によって水路を形成したが、第1及び第2ヒンジ部33,37を水封可能な構造とすることにより、接続管23、一次管25及び二次管27によって水路を形成してもよい。また例えば、上記実施形態では、第1及び第2ヒンジ部33,37を左右方向に揺動可能に構成したが、揺動方向は上下方向又は斜め方向であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るウォータージェットノズルを備えたウォータージェットガンを示す斜視図である。
【図2】図1に示すウォータージェットノズルの断面図である。
【図3】第1ヒンジ部を示す平面図である。
【図4】ウォータージェットノズルが左側に傾いた状態を示す平面図である。
【図5】ウォータージェットノズルが左側から右側へ振られる状態を示す平面図である。
【図6】ウォータージェットノズルが右側に傾いた状態を示す平面図である。
【図7】ウォータージェットノズルが右側から左側へ振られる状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ウォータージェットガン、3…ガン本体(ウォータージェット本体)、5…ウォータージェットノズル、18…ガン本体の水路、23…接続管、23a…第1の切り欠き部(第1ストッパ部)、23b…第2の切り欠き部(第2ストッパ部)、25…一次管(第1管状部)、27…二次管(第2管状部)、27a…第1の切り欠き部(第3ストッパ部)、27b…第2のきり欠き部(第4ストッパ部)、29…ホース、31,32…スペーサ、33…第1ヒンジ部、37…第2ヒンジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータージェット本体の先端部分に取り付けられて利用されると共に、ウォータージェットを噴射するための噴射口が一平面内で揺動するように構成されたウォータージェットノズルにおいて、
前記ウォータージェット本体の内部に設けられた水路と連通する水路が内部に設けられた第1管状部及び第2管状部と、
前記第1管状部の一方端を前記平面上において前記ウォータージェット本体に対して揺動可能に連結する第1ヒンジ部と、
前記第1ヒンジ部が揺動する角度範囲を規制する第1ストッパ部及び第2ストッパ部と、
前記噴射口を有する前記第2管状部の基端を前記平面上において前記第1管状部の他方端に対して揺動可能に連結する第2ヒンジ部と、
前記第2ヒンジ部が揺動する角度範囲を規制する第3ストッパ部及び第4ストッパ部と、
を備えたことを特徴とするウォータージェットノズル。
【請求項2】
前記第1及び第2管状部の前記水路は、ホースによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウォータージェットノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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