説明

ウォータ回路とオイル回路を有する自動車エンジンの冷却システム

本発明は、オイルクーラ(14)とオイルフィルタ(16)を含むフィルタ及び冷却ユニット(4)と、ラジエータ(8)と、ウォータ回路(6)と、オイル回路(9)と、ウォータポンプ(10)と、オイルポンプ(11)と、エンジンのシリンダブロック(12)を含んでなる自動車エンジンの冷却システムに関する。本発明の自動車エンジンの冷却システムは、上記オイルクーラ(14)が、上記ウォータ回路(6)の中の上記ラジエータ(8)の下流に伸びることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車エンジンの冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に実施の形態を示すようなシステムが、文献EP−1 277 932に開示されている。このシステムは、オイルフィルタとオイルクーラからなるユニットを有する。このユニットは、オイルポンプとエンジンのシリンダブロックへ接続されることによって、オイル回路と連結される。このユニットは、更に、ウォータポンプ、ラジエータ及びシリンダブロックと連通するように、ウォータ回路と連結される。正確には、このユニットから出る水は、ウォータポンプへ送られ、次いで、ウォータポンプからシリンダブロックへ送られる。この水の一部分は、シリンダブロックからラジエータを経由してユニットへ戻り、一方この水のその他の部分はラジエータを経由することなくユニットへ戻る。この構成には、比較的大きな所要空間を要し、配置が複雑で、インターフェースの数が多いために比較的信頼性が低いという問題がある。
【特許文献1】EP−1 277 932
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、このような自動車エンジンの冷却システムを、よりコンパクトで、実地に適用することがより簡単で、かつより信頼性の高いものにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、
オイルクーラとオイルフィルタを含む、フィルタ及び冷却ユニットと、
ラジエータと、
ウォータ回路と、
を含んでなる自動車エンジンの冷却システムにおいて、上記オイルクーラが、上記ウォータ回路の中の上記ラジエータの下流に伸びることを特徴とする、自動車エンジンの冷却システムを提供する。
【0005】
本発明による上記システムは、以下の特徴の少なくとも1つを付加的に有する:
上記フィルタ及び冷却ユニットは、上記オイルクーラの上流に伸びる水の流入口を有し;
上記フィルタ及び冷却ユニットは、上記オイルクーラの下流に伸びる水の流出口を有し;
上記オイルクーラと並列に設けられた水のバイパス導管を有し;
上記バイパス導管は、上記水の流入口の下流に伸び;
上記バイパス導管は、上記水の流出口の上流に伸び;
上記水の流出口の下流に伸びるウォータポンプを有し;
上記バイパス導管の中の水の流量の調整手段を有し;
上記フィルタ及び冷却ユニットは、上記オイルクーラの下流に伸びる上記オイルフィルタを有し;
上記オイルクーラのバイパスを形成するために、上記オイルクーラと並列に設けられたオイル導管を有し;
上記オイル導管にオイルの流量の調整手段を有し;
上記フィルタ及び冷却ユニットは、上記オイルフィルタと、上記オイルクーラと、上記オイル導管からなる構成要素の少なくとも1つ、望ましくは全ての上流に伸びるオイルの流入口を有し;
上記フィルタ及び冷却ユニットは、上記オイルフィルタと、上記オイルクーラと、上記オイル導管からなる構成要素の少なくとも1つ、望ましくは全ての下流に伸びるオイルの流出口を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のその他の特徴及び利点は、非限定的な例として示された本発明の実施の形態の、添付図面を参照する以下の説明によって、より明らかとなるであろう。これらの図面において:
−図1は、本発明の実施の形態によるシステムにおける、ウォータ回路とオイル回路を示す図であり;
−図2は、導管の空間的な配置をより明確に示す、図1に類似の図であり;
−図3、4は、図1に示すシステムの、フィルタ及び冷却ユニットの部分断面図であり、それぞれウォータ回路とオイル回路を示し;
−図5、6は、図3、4に示すフィルタ及び冷却ユニットの主要な2つの外面をそれぞれ示す図である。
【0007】
図1〜6は、本発明による実施の形態を示す。このシステム2は、自動車エンジンのフィルタ及び冷却システムである。
【0008】
システム2は、フィルタ及び冷却ユニット4を含む。フィルタ及び冷却ユニット4は、ウォータ回路6に接続される。また、システム2は、ラジエータ8とウォータポンプ10も含む。
【0009】
さらにフィルタ及び冷却ユニット4は、オイル回路9へ接続される。システム2は、オイル回路9へ接続されたオイルポンプ11も含む。シリンダブロック12がオイル回路9へ接続される。
【0010】
ウォータポンプ10は、ウォータ回路6内に水を循環させるためのものである。同様に、オイルポンプ11は、オイル回路9内にオイルを循環させるためのものである。ラジエータ8は、ウォータ回路6内の水を冷却する機能を有する。フィルタ及び冷却ユニット4は、オイルクーラ14とオイルフィルタ16を含む。オイルクーラ14は、オイルクーラの中を通過する水によってオイルを冷却するためのものである。オイルフィルタ16は、オイルフィルタを通過するオイルを浄化する機能を有する。図1は、フィルタ及び冷却ユニット4に関連する導管の配置の詳細のみを示す。特にウォータポンプ、オイルポンプ、ラジエータ及びシリンダブロックに関連する導管の配置は示されていない。これらの配置は周知のものであり、ここでは詳細には説明しない。
【0011】
ウォータ回路6は、ラジエータ8の水の流出口を、フィルタ及び冷却ユニット4の水の流入口22へ接続する1個の導管20を有する。
【0012】
フィルタ及び冷却ユニット4は、水の流入口22の下流に、分岐点24へ達する導管を有する。分岐点24は、この導管から流出する水を、オイルクーラ14と、オイルクーラ14に対して並列なバイパス導管26との間に分割する。フィルタ及び冷却ユニット4は、オイルクーラ14の下流に伸び、そこにおいてオイルクーラ14から流出する水が、バイパス導管26から流出する水と混合される、分岐点27を有する。このように再構成された水の全体は、フィルタ及び冷却ユニット4の唯一の水の流出口28へ到達し、ウォータポンプ10の水の流入口へ全て運ばれる。
【0013】
バイパス導管26は、例えば、バイパス導管26の上流端の下流と下流端の上流との間に設けられたノズル30からなる、水の流量調整手段を有する。
【0014】
ラジエータ8から出る水の全体は、水の流入口22を経由して、フィルタ及び冷却ユニット4へ流入し、水の流出口28を経由して、フィルタ及び冷却ユニット4から流出することが分かる。この水の一部分は、オイルクーラ14を通過し、この水の残りの部分は、バイパス導管26によって、オイルクーラ14を迂回する。
【0015】
オイルポンプ11から出るオイルの全体は、フィルタ及び冷却ユニット4の唯一のオイルの流入口32を経由して流入する。次いで、オイルは、オイルの流入口32の下流に伸びる分岐点34へ到達する。このオイルの一部分は、分岐点34から出るオイル導管(第1分岐)42を通過して、オイルフィルタ16へ到達する。オイルの残りの部分は、オイル導管36の中へ送られ、次いでオイルクーラ14へ送られる。このオイルの残りの部分は、オイルクーラ14を出て、オイルフィルタ16の第2の流入口へ入る。オイルの一部分と残りの部分は、オイルフィルタ16の内部で一つにまとめられ、オイルフィルタ16のオイルの流出口から、次いで、フィルタ及び冷却ユニット4の唯一のオイルの流出口40から出る。このオイルの全体は、シリンダブロック12へ運ばれる。オイルの流量の調整手段が、オイル導管(第1分岐)42に設けられる。オイルの流量の調整手段は、オイルクーラ14に対するバイパスを構成する。オイルの流量の調整手段は、例えば、ノズル44で形成される。
【0016】
オイルポンプ11から出るオイルの全体は、オイルの流入口32を経由して流入することが分かる。このオイルの一部分は、オイルフィルタ16の中を直接通過し、一方このオイルの残りの部分は、先ずオイルクーラ14の中を通過し、次いでオイルフィルタ16の中を通過する。このオイルの全体は、オイルフィルタ16から、次いでフィルタ及び冷却ユニット4から出て、シリンダブロック12へ入る。
【0017】
図2に、同じ要素が再度略図で示されている。但し、この図においては、同じ接続が再現されて入るが、空間的な配置が、フィルタ及び冷却ユニット4を示す図3、4に示された形態により近い形態で示されている。
【0018】
図2〜6は、このように、フィルタ及び冷却ユニット4には、オイルフィルタ16とオイルクーラ14の他に、ノズル(調整手段)44、30および分岐点34、24、27が組み込まれることを示す。
【0019】
このように、フィルタ及び冷却ユニット4は、それぞれラジエータ、ウォータポンプ、オイルポンプおよびシリンダブロックとの連通をもたらす、4つの導管のみによって、システムの他の装置へ接続される。このシステムにおいては、エンジンから出る水の全ては、フィルタ及び冷却ユニット4を通過し、フィルタ及び冷却ユニット4は、水とオイルを、最小限の所要空間内で、外部分岐接続なしに、熱交換器であるオイルクーラ14とオイルフィルタ16に配分することを可能にする。
【0020】
フィルタ及び冷却ユニット4は、エンジンのシリンダブロック12へ直接取り付けられる。オイルポンプ11から来るオイルは、フィルタ及び冷却ユニット4とシリンダブロック12とのインターフェースで、フィルタ及び冷却ユニット4に受け入れられる。このオイルは、この同じインターフェースを経由してエンジンの主オイル通路へ向かって再度送出される前に、フィルタされ、部分的に冷却される。図から分かるように、水の流れとオイルの流れは、熱交換の効率を高めるように、フィルタ及び冷却ユニット4の中で互いに交差する。
【0021】
換言すれば、本発明は、オイルフィルタとオイルクーラの機能を、水をラジエータからシリンダブロックにおけるウォータポンプへ送ることを可能にするためのウォータパイプの役割をなす支持の上で、最小限の所要空間内で、外部分岐なしに、組み合わせる。
【0022】
オイルフィルタは、ここでは交換可能なタイプのものであり、上記の支持と一体化されたハウジングの中に配置される。プラスチック材料からなるカバーによって取り外し可能なオイルフィルタの覆いを形成することによって、交換のためにカートリッジタイプのオイルフィルタへアクセスすることが可能になる。
【0023】
オイルは、POE−型の標準オイルである。オイルクーラは、上記の支持への取り付けに適合された特有のインターフェースを有する。このインターフェースは、水とオイルの適当なシールを有し、水とオイルが、両方向に通過することを可能にするように設計される。
【0024】
このような構想のフィルタ及び冷却ユニット4は、さらに、ウォータ回路とオイル回路における圧力降下を回避することも可能にする。
【0025】
勿論、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明に多くの変更を加えることが可能である。
【0026】
先に見たように、オイルクーラ14は、ウォータ回路のラジエータ8の下流に伸びる。
【0027】
この特徴がない場合には、ラジエータ8から出る水を、フィルタ及び冷却ユニット4の内部で分岐点24によって分割されたままにしてもよい。このことは、他の水の流入口を経由して他の水がフィルタ及び冷却ユニット4へ流入する場合も同じである。
【0028】
これとは反対に、この特徴がある場合には、分岐点24をフィルタ及び冷却ユニット4の外に設けてもよい。
【0029】
さらに、上述したことに従って、ウォータ回路の形態に関して上述した様々な特徴とは無関係に、特にオイルクーラがウォータ回路の中のラジエータの下流にあるかないかに無関係に、オイル回路が、オイルポンプから出るオイルの流れの一部分を、オイルクーラを通過することなく、直接オイルフィルタに導く、オイルのバイパス導管を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態によるシステムにおける、ウォータ回路とオイル回路を示す図である。
【図2】導管の空間的な配置をより明確に示す、図1に類似の図である。
【図3】図1に示すシステムの、フィルタ及び冷却ユニットの部分断面である。
【図4】図1に示すシステムの、フィルタ及び冷却ユニットの部分断面である。
【図5】図3、4に示すフィルタ及び冷却ユニットの主要な外面を示す図である。
【図6】図3、4に示すフィルタ及び冷却ユニットの主要な外面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルクーラ(14)とオイルフィルタ(16)を含む、フィルタ及び冷却ユニット(4)と、
ラジエータ(8)と、
ウォータ回路(6)と、
を含んでなる自動車エンジンの冷却システムにおいて、上記オイルクーラ(14)は、上記ウォータ回路(6)の中の上記ラジエータ(8)の下流に伸びることを特徴とする、自動車エンジンの冷却システム。
【請求項2】
上記フィルタ及び冷却ユニット(4)は、上記オイルクーラ(14)の上流に伸びる水の流入口(22)を有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項3】
上記フィルタ及び冷却ユニット(4)は、上記オイルクーラ(14)の下流に伸びる水の流出口(28)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項4】
上記オイルクーラ(14)と並列に設けられた水のバイパス導管(26)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項5】
上記バイパス導管(26)は、上記水の流入口(22)の下流に伸びることを特徴とする、請求項2に従属する請求項4に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項6】
上記バイパス導管(26)は、上記水の流出口(28)の上流に伸びることを特徴とする、請求項3に従属する請求項4に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項7】
上記水の流出口(28)の下流に伸びるウォータポンプ(10)を有することを特徴とする、請求項3または6に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項8】
上記バイパス導管(26)の中の水の流量の調整手段(30)を有することを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1つに記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項9】
上記フィルタ及び冷却ユニット(4)は、上記オイルクーラ(14)の下流に伸びる上記オイルフィルタ(16)を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項10】
上記オイルクーラ(14)のバイパス経路を形成するために、上記オイルクーラ(14)と並列に設けられたオイル導管(42)を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項11】
上記オイル導管(42)にオイルの流量の調整手段(44)を有することを特徴とする、請求項10に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項12】
上記フィルタ及び冷却ユニット(4)は、上記オイルフィルタ(16)と、上記オイルクーラ(14)と、上記オイル導管(42)からなる構成要素の少なくとも1つ、望ましくは全ての上流に伸びるオイルの流入口(32)を有することを特徴とする、請求項9に従属する請求項10に記載の自動車エンジンの冷却システム。
【請求項13】
上記フィルタ及び冷却ユニット(4)は、上記オイルフィルタ(16)と、上記オイルクーラ(14)と、上記オイル導管(42)からなる構成要素の少なくとも1つ、望ましくは全ての下流に伸びるオイルの流出口(40)を有することを特徴とする、請求項9に従属する請求項10に記載の自動車エンジンの冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−502840(P2008−502840A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516010(P2007−516010)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050390
【国際公開番号】WO2006/003336
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】