説明

ウサギ第VII因子の単離されたペプチド

本発明は、ウサギ第VII因子から単離されたペプチド、およびウサギ第VII因子を特異的に指向する抗体の生成のためのそのペプチドの使用に関する。本発明はまた、特にヒト第VII因子をも含有する生物試料の中にウサギ第VII因子が存在する場合にウサギ第VII因子を検出または精製するための、ウサギ第VII因子に対する抗体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウサギ第VII因子から単離されたペプチド、およびウサギ第VII因子を特異的に指向する抗体を生成するためのそれらの使用に関する。本発明はまた、特にヒト第VII因子を合わせて含有する生物試料の中にこのウサギ第VII因子が存在する場合にウサギ第VII因子を検出または精製するための、ウサギ第VII因子に対する抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子導入動物の中での組み換えタンパク質の産生は、いまや、広く使用されるタンパク質を産生するための1つの選択肢である。その遺伝子導入組み換えタンパク質が患者に投与されることを意図する場合、投与される遺伝子導入組み換えタンパク質調製物の純度および無害性は特に重要である。
【0003】
組み換えタンパク質を精製または検出するための多くの方法は、この組み換えタンパク質に結合することができる化合物の親和性および特異性に基づく。
【0004】
組み換えタンパク質を精製または検出するためのこれらの工程は、この組み換えタンパク質が、相同性が高いタンパク質が混入して存在する可能性がある場合には、中でも特に繊細なものになる。実際、その組み換えタンパク質がこの組み換えタンパク質に相同的な1つまたはいくつかのタンパク質とともに溶液の中で見出される場合には、標準的な精製技術または検出技術を使用することにより、注目する組み換えタンパク質と望ましくない相同的なタンパク質との間で高レベルの判別を成し遂げるための検出または精製の手法を開発することは困難になる。
【0005】
互いに相同性を有するタンパク質を精製または特異的に検出することの困難さは、遺伝子導入組み換えタンパク質が、この遺伝子組み換えタンパク質の相同的なタンパク質をも天然に発現する遺伝子導入生物または遺伝子導入微生物の中で産生されるときに、遭遇される。特に、組み換えタンパク質は、そのゲノムの中に、導入遺伝子によってコードされる組み換えタンパク質に対して相同性が高いタンパク質をコードする、いわゆる「オルソロガスな」遺伝子を天然に有する生物の中で標的とされ、産生される。
【0006】
遺伝子導入動物の中で発現されるヒトまたは動物の遺伝子組み換えタンパク質がその遺伝子導入動物の中で天然に発現される内因性のタンパク質の相同体であるということは、一般的である。相同的な内因性の天然タンパク質の産生は、遺伝子組み換えタンパク質および相同的な内因性の天然タンパク質の共抽出または共検出を妨げることが求められる状況における、主要な技術的欠点を代表する。
【0007】
遺伝子導入組み換えタンパク質が、薬物を製造することを意図された治療上興味があるタンパク質の中にある場合、組み換えタンパク質の精製された調製物の中に、その遺伝子組み換えタンパク質のいずれかの相同的な内因性のタンパク質が存在すると、その薬物が投与される患者に対する望ましくない効果を引き起こす可能性があり、その例としては、医学的処置の効率を低下させ、かつその患者の生命を危うくする可能性がある自己免疫反応を引き起こすことさえ時にはありうる、混入している天然タンパク質に対する望ましくない免疫応答の媒介が挙げられる。遺伝子導入動物の中での治療用の遺伝子組み換えタンパク質の産生に頼ることが増えてくると、このような問題はますます頻繁に遭遇される。
【0008】
高い無害性を有する治療用産物を提案するために、それゆえ遺伝子組み換えタンパク質は、非常に少量の望ましくない相同的なタンパク質しか存在しないように、そして可能であれば望ましくない相同的なタンパク質がまったく存在しないように、特に精製されていなければならない。
【0009】
それゆえ、注目する外因性タンパク質に相同的な、遺伝子導入動物の内因性タンパク質(両方のタンパク質がその遺伝子導入動物の同じ生物試料の中に含まれている可能性が高い)の検出または精製を可能にする手法を手にすることが必要である。
【0010】
特許文献1は、ヒトラクトフェリンを、ウシラクトフェリンを含有する乳牛の乳から分離するための方法を提案する。この方法は、疎水性相互作用のクロマトグラフィーに基づく。このクロマトグラフィーは、ブチル基またはフェニル基を含有する樹脂を使用し、このブチル基またはフェニル基は、アガロース担体にそれ自体が結合されたリガンドとして使用される。
【0011】
特許文献2は、遺伝子導入動物の乳の中に存在する異種タンパク質(ヒトHSAおよびウシBSA)を分離するための方法を提案する。この方法は、内因性タンパク質をコードする遺伝子をその異種ポリペプチドをコードするDNA配列で置き換えることによる、遺伝子導入動物の内因性タンパク質の発現の抑制に基づく。この分子生物学的な方法は、適用することが特に厄介である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,861,491号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 181 351号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ヒト第VII因子を産生することを意図して、遺伝子導入ウサギの生物試料の中でも見出される可能性があるウサギ第VII因子を検出および/または精製するための、ウサギ第VII因子を特異的に指向する抗体を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の対象はウサギ第VII因子から単離されたペプチドであり、そのアミノ酸配列は、EHKPGSPEVTGN(配列番号1)、KLHHGIQRH(配列番号2)およびAALMNGSTL(配列番号3)から選択される。これらのペプチドは、それぞれ、Swissprotデータベースに受入番号P98139でアクセスできるウサギ第VII因子(Oryctolagus cuniculus)のタンパク質配列のアミノ酸354〜アミノ酸365、アミノ酸433〜アミノ酸441およびアミノ酸207〜アミノ酸215のアミノ酸の配列に対応する。これらの3つのペプチドはすべて、ウサギ第VII因子の重鎖に対応するアミノ酸I192〜P444の間に含まれる。
【0015】
本発明の対象はまた、本発明に係るペプチドによって、およびこのペプチドのN末端およびC末端のいずれか一方または両方に存在する1〜10個のアミノ酸を含む少なくとも1つのさらなるオリゴペプチドによって形成されるポリペプチドである。それゆえ本発明の範囲内で、ポリペプチドという用語は、10〜32個のアミノ酸、好ましくは15〜32個のアミノ酸を含み、かつ本発明のペプチドのうちの1つを含むアミノ酸の配列を指す。本発明のポリペプチドのサイズは、本発明のペプチドの免疫原性を最適にするように選択される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つのさらなるオリゴペプチドを含み、そのさらなるオリゴペプチドのアミノ酸は、受入番号P98139でアクセスできるウサギ第VII因子のタンパク質配列を参照して、本発明のペプチドのN末端のまたはC末端の隣接領域で選択される。それゆえこのポリペプチドは、ウサギ第VII因子の配列の中のこのペプチドのN末端および/またはC末端に天然に隣接するさらなるアミノ酸を選択することにより本発明のペプチドを「延ばす」ことによって、形成される。本発明のペプチドが配列EHKPGSPEVTGN(配列番号1)を有する場合、当該ペプチドのN末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列LMTQDCVEQS(配列番号7)から選択され、かつ/またはC末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列MFCAGYLDGS(配列番号8)から選択される。本発明のペプチドが配列KLHHGIQRH(配列番号2)を有する場合、当該ペプチドのN末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列TEWLSRLMRS(配列番号9)から選択され、かつ/またはC末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列PFP(配列番号10)から選択される。最後に、本発明のペプチドが配列AALMNGSTL(配列番号3)を有する場合、当該ペプチドのN末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列VCPKGECPWQ(配列番号11)から選択され、かつ/またはC末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、それゆえ、配列LCGGSLLDTH(配列番号12)から選択される。
【0017】
より好ましくは、本発明のポリペプチドは以下の配列を有する:
− VEQSEHKPGSPEVTGN(配列番号4)、すなわち配列EHKPGSPEVTGN(配列番号1)のペプチドのN末端は、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)4つのアミノ酸で延ばされている、
− SRLMRSKLHHGIQRH(配列番号5)、すなわち配列KLHHGIQRH(配列番号2)のペプチドのN末端は、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)6つのアミノ酸で延ばされている、または
− AALMNGSTLLCGGSLLDTH(配列番号6)、すなわち配列AALMNGSTL(配列番号3)のペプチドのC末端は、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)10個のアミノ酸で延ばされている。
【0018】
本発明の別の対象は、ベクタータンパク質と組み合わせて少なくとも1つの本発明のペプチドおよび/または少なくとも1つの本発明のポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、このペプチドおよび/またはこのポリペプチドおよびこのベクタータンパク質は任意にスペーサによって隔てられている、キメラタンパク質である。好ましい実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、ベクタータンパク質として、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)およびウシサイログロブリン(THY)から選択されるタンパク質を含む。
【0019】
好ましい実施形態では、当業者に周知のチオール化学を使用した、ベクタータンパク質の結合またはグラフト化を促進するために、システインが、当該ペプチドまたはポリペプチドのN末端に付加されてもよい。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、配列番号1、配列番号2および配列番号3のペプチドまたは配列番号4、配列番号5および配列番号6のポリペプチドを含み、上記ペプチドまたは上記ポリペプチドは、逐次的に組織化されかつスペーサによって互いに隔てられている。ペプチドおよびポリペプチドを互いから隔離することを可能にするこのスペーサは、当業者に周知の技術に従って選択される。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、ベクタータンパク質として、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)およびウシサイログロブリン(THY)から選択されるタンパク質を含む。このベクタータンパク質は、本発明のキメラタンパク質のN末端またはC末端を等しく占めてもよい。
【0022】
本発明の対象はまた、抗体の産生を誘導するためのペプチド組成物であって、配列番号1、配列番号2および/または配列番号3の少なくとも1つのペプチド、および/または少なくとも1つの本発明のポリペプチドおよび/または少なくとも1つの本発明のキメラタンパク質を含むペプチド組成物である。本発明に係るペプチド組成物がいくつかの本発明のペプチドおよび/またはポリペプチドを含む場合、このペプチドおよび/またはポリペプチドは個別化された形態またはひとつながりにされた形態で現れてもよい。本発明に係る組成物がひとつながりにされた形態のいくつかの本発明のペプチドおよび/またはポリペプチドを含む場合、このペプチドおよび/またはポリペプチドは、スペーサによって互いに隔てられていてもよい。
【0023】
本発明に係るペプチド組成物はまた、アジュバントを含んでもよい。アジュバントの使用は、免疫応答の強度または継続期間を増加させて、これにより用量あたりのこのペプチド/ポリペプチド/キメラタンパク質の量または免疫を確実にするために必要とされる用量の総数の減少を可能にするために必要とされる可能性がある。本発明の範囲内で使用してもよいアジュバントは、限定を意図しないが、アルミニウム塩(水酸化物、リン酸塩、硫酸塩、カルシウム塩または細菌性産物)である。本発明のペプチド組成物は、宿主動物の中で、ウサギ第VII因子を特異的に指向する抗体を誘導する可能性を与える。
【0024】
本発明に係るペプチド、ポリペプチドまたはキメラタンパク質はまた、ウサギ第VII因子を特異的に認識する抗体のスクリーニングを実施するために使用されてもよい。
【0025】
本発明の対象はまた、上記ペプチドのうちの少なくとも1つ、上記ポリペプチドのうちの少なくとも1つ、または上記キメラタンパク質のうちの少なくとも1つを指向し、かつウサギ第VII因子(および特に種Oryctolagus cuniculus(カイウサギ))を特異的に認識することができる抗体または抗体機能的フラグメントである。このような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよい。抗体機能的フラグメントとは、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)2フラグメントまたはscFvフラグメントを意味する(Blazarら、1997、Journal of Immunology 159:5821−5833およびBirdら、1988、Science 242:423−426)。
【0026】
特異的な認識とは、本発明に関しては、本発明のペプチドのうちの少なくとも1つ、ポリペプチドのうちの少なくとも1つまたはキメラタンパク質のうちの少なくとも1つに対する抗体が、ウサギ第VII因子に結合することができるが、別の種の第VII因子に結合することはできないということを意味する。好ましくは、本発明の抗体は、ウサギ第VII因子に結合してもよいが、ヒト第VII因子に結合することはできず、それゆえヒト第VII因子からウサギ第VII因子を判別することを可能にする。
【0027】
ポリクローナル抗体を産生するために、本発明に係るペプチド、ポリペプチドまたはキメラタンパク質は合成され、そしてマウス、ウサギまたは抗体を産生することについて当業者に公知のいずれかの他の動物であってもよい宿主動物の中へと注入される。このいわゆる免疫化工程の後、宿主動物の血清が回収され、精製されて、ポリクローナル抗体が得られる。
【0028】
血清からの抗体の精製は、アフィニティークロマトグラフィーによって、硫酸アルミニウムを用いた沈殿によって、イオン交換クロマトグラフィーによって、ゲル上での濾過によって、または当業者に公知のいずれかの他の技術によって、達成されてもよい。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、当該ポリクローナル抗体は、生成された抗体によって認識されることになる本発明に係るペプチド、ポリペプチドまたはキメラタンパク質が結合されたカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーによって血清の他の構成要素から分離される。
【0030】
モノクローナル抗体を産生するために、本発明に係るペプチド、ポリペプチドまたはキメラタンパク質は合成され、そしてマウス、ウサギまたは抗体を産生することについて当業者に公知のいずれかの他の動物であってもよい宿主動物の中へと注入される。このいわゆる免疫化工程の後、本発明のペプチドに対する抗体を発現する動物は、ハイブリドーマを調製することが意図された融合工程の意図された日の前に再び免疫される。この動物の脾臓は、本発明のペプチドに対する抗体を産生するBリンパ球を回収するためにサンプリングされ、このBリンパ球は、ハイブリドーマを形成するために癌細胞と融合される。最良のクローンは、次いで、本発明のモノクローナル抗体の産生を可能にするためにサブクローン化される。
【0031】
本発明の抗体または抗体機能的フラグメントは、特に当該ウサギ第VII因子が、ヒト第VII因子をも含有する生物試料の中に含有される場合に、ウサギ第VII因子の検出または精製の目的のために使用されてもよい。
【0032】
本発明の別の対象はまた、ヒト第VII因子を含有しかつウサギ第VII因子を含有していてもよい生物試料、好ましくはヒト第VII因子を産生することを意図された遺伝子導入ウサギから採取された生物試料の中に存在する可能性があるウサギ第VII因子を検出および/または定量するための方法であって、
− この生物試料を、ウサギ第VII因子と本発明に係る抗体または抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容し、かつヒト第VII因子と当該抗体または当該抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容しない条件下で、本発明に係る抗体または抗体機能的フラグメントと接触させる工程と、
− いずれかの適切な手段によって、この複合体の形成を検出および/または定量する工程と、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0033】
ウサギ第VII因子の検出は、当業者に公知のいずれかの適切な手段を用いて、特にサンドイッチELISA技術または表面プラスモン共鳴技術(Biacore)を用いて実施されてもよい。本発明に係る検出方法は、さらに慣用的に、以下の工程を含んでもよい:
− 本発明のモノクローナルの抗ウサギ第VII因子抗体を、例えばチップ上に固定化する工程;
− 試験するべき試料を置く工程;および
− ポリクローナルのビオチン化された抗第VII因子抗体を用いて、または試験するべき試料と本発明のモノクローナル抗体との結合レベルを測定することによって、明らかにする工程。
【0034】
本発明の別の対象はまた、ヒト第VII因子を含有しかつウサギ第VII因子を含有している可能性がある生物試料、好ましくは遺伝子導入ウサギから採取された生物試料からヒト第VII因子を精製するための方法であって、
− この生物試料を、ウサギ第VII因子と本発明に係る抗体または抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容し、かつヒト第VII因子と当該抗体または当該抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容しない条件下で、本発明に係る抗体または抗体機能的フラグメントと接触させる工程と、
− ウサギ第VII因子および当該抗体または当該抗体機能的フラグメントによって形成されたこの複合体からヒト第VII因子を分離する工程と、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0035】
本発明に係る精製方法は、さらに慣用的に、以下の工程を含んでもよい:
− 本発明のモノクローナルの抗ウサギ第VII因子抗体(またはその機能的フラグメント)を親和性担体(ゲルまたは磁性ビーズ)上に固定化する工程:
− ヒト第VII因子を含有しかつウサギ第VII因子を含有している可能性がある生物試料を、上記固定化されたモノクローナル抗体の存在下に置く工程;および
−適切な接触時間の後に、ウサギ第VII因子および当該抗体または当該抗体機能的フラグメントによって形成されたこの複合体からヒト第VII因子を分離する工程。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、生物試料は、ヒト第VII因子を産生することを意図された遺伝子導入の雌のウサギ由来のものである。それゆえこの生物試料は、注目するタンパク質として記載されるヒト第VII因子を含有し、そしてヒト第VII因子に相同的なタンパク質および特にウサギ第VII因子を含有してもよい。
【0037】
有利には、この生物試料は体液、細胞、細胞ホモジネート、組織、組織ホモジネート、器官または生物全体である。好ましくは、この生物試料は、血液、血液の派生物(血液製剤)、乳または乳派生物などの液体の生物試料である。これは、血漿、血漿クリオプレシピテート、精製乳またはそれらの派生物であってもよい。
【0038】
有利には、当該遺伝子導入ウサギは、この遺伝子導入ウサギの乳の中での当該遺伝子組み換えタンパク質の発現を可能にする特異的プロモーターの制御下で、その乳腺でヒトの遺伝子導入第VII因子を産生する。
【0039】
ヒト以外の哺乳類の雌の乳の中でタンパク質を調製するための方法の一例は、欧州特許第0 527 063号明細書に与えられている。この特許文献の教示は、本発明のタンパク質を産生するために採用されてもよい。WAP(乳清酸性タンパク質)プロモーターを含有するプラスミドは、WAP遺伝子のプロモーターを含む配列を導入することによって作製され、このプラスミドは、WAPプロモーターの依存性の下に置かれた外来の遺伝子を受けることができるように作製される。このプロモーターおよび本発明のタンパク質をコードする遺伝子を含有するプラスミドは、雄の前核への雌のウサギの胚のマイクロインジェクションによって遺伝子導入の雌のウサギを入手するために使用される。次いでこの胚は、ホルモン的に調製された雌の卵管へと移される。導入遺伝子の存在は、得られた遺伝子導入の若いウサギから抽出されたDNAから、サザン技術によって明らかにされる。この動物の乳の濃度は、特異的な放射免疫学的試験によって評価される。
【0040】
他の文献は、ヒト以外の哺乳類の雌の乳の中でタンパク質を調製するための方法を記載する。限定はしないが、米国特許第7,045,676号明細書(遺伝子導入マウス)および欧州特許第1 739 170号明細書(遺伝子導入哺乳動物の中でのフォンウィルブランド因子の産生)の文献に言及することができ、特にカゼインのプロモーターに言及される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】マウスの免疫化の追跡。本発明のペプチド/ポリペプチドで免疫化されたマウスのうちの1匹によって産生されたウサギ第VII因子に対する抗体の割合の代表的な曲線。血清サンプリングは、ヒト化の日(J0)、次いで免疫化から21日、35日および85日(J21、J35およびJ85)に行う。免疫化マウスの血清の中のウサギ第VII因子に対する抗体の存在は、「直接」型のELISA試験によって試験され、プレートのウェルは、組み換えウサギ第VII因子(Am. Diagnostica)でコーティングされている。各ウェルの吸光度が測定され、測定された値は図1のグラフ上に座標に対してプロットされている。各採取された血清試料について、吸光度は、異なる希釈物について測定する。
【図2】非還元条件下(第VII因子の両方の鎖間のジスルフィド架橋の切断なし)でのウエスタンブロットによる第VII因子の免疫学的検出。ウサギ血漿第VII因子(ウェルA)、組み換えウサギ第VII因子(ウェルB)およびヒト遺伝子導入第VII因子(ウェルC)は、分子量マーカー(分子量標品のために「Std PM」として表示)と一緒に、4−12% SDS−PAGE型のポリアクリルアミドゲル上で分離される。このゲルは膜上に移され、次いでウエスタンブロットが、本発明のペプチド/ポリペプチド、またはウサギ第VII因子も認識することができるヒト第VII因子に対するポリクローナルのヒツジ抗体で免疫されたマウスの免疫血清を使用して、実施される。
【図3】還元条件下(第VII因子の両方の鎖間のジスルフィド架橋の切断)でのウエスタンブロットによる第VII因子の免疫学的検出。ウサギ血漿第VII因子(ウェルA)、組み換えウサギ第VII因子(ウェルB)およびヒト遺伝子導入第VII因子(ウェルC)は、分子量マーカー(分子量標品のために「Std PM」として表示)と一緒に、4−12% SDS−PAGE型のポリアクリルアミドゲル上で分離される。このゲルは膜上に移され、次いでウエスタンブロットが、本発明のペプチド/ポリペプチド、またはウサギ第VII因子も認識することができるヒト第VII因子に対するポリクローナルのヒツジ抗体で免疫されたマウスの免疫血清を使用して、実施される。
【実施例】
【0042】
(実施例1:ウサギ第VII因子を特異的に認識する抗体を調製するための免疫原性ペプチドの選択)
ウサギ第VII因子を特異的に指向する抗体を調製することを意図した免疫原性ペプチドを、Swiss Protタンパク質ベースの中で受入番号P98139を有するウサギ第VII因子のタンパク質配列から選択する。3つのペプチドを確保しておく:
−配列EHKPGSPEVTGN(配列番号1)のペプチド;
−配列KLHHGIQRH(配列番号2)のペプチド;および
−配列AALMNGSTL(配列番号3)のペプチド。
【0043】
いずれの溶媒もタンパク質の三次構造の内部に埋もれないことを確認するために、これらのペプチドの溶媒への接近しやすさを分析する。さらに、補足的な分析から、これらのペプチドのいずれもグリコシル化部位をまったく含まないように思われるということが示される。
【0044】
(a − 免疫化を適用するために使用するポリペプチドの調製)
少なくとも15アミノ酸のサイズを有するポリペプチドを得るために、ウサギ第VII因子配列の中の各ペプチドのN末端および/またはC末端に天然に存在する付加的なアミノ酸を選択することにより、選択したペプチドを「延ばす」。これにより、免疫化の間に本発明のペプチドの免疫原性の最適化が可能になる。
【0045】
配列VEQSEHKPGSPEVTGN(配列番号4)のポリペプチドを得るために、配列EHKPGSPEVTGN(配列番号1)のペプチドのN末端を、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)4つのアミノ酸を用いて延ばす。
【0046】
配列SRLMRSKLHHGIQRH(配列番号5)のポリペプチドを得るために、配列KLHHGIQRH(配列番号2)のペプチドのN末端を、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)6つのアミノ酸を用いて延ばす。
【0047】
最後に、配列AALMNGSTLLCGGSLLDTH(配列番号6)のポリペプチドを得るために、配列AALMNGSTL(配列番号3)のペプチドのC末端を、(ウサギ第VII因子のタンパク質配列の中でこのペプチドに天然に隣接する)10個のアミノ酸を用いて延ばす。
【0048】
(b − マウスを免疫するために使用するキメラタンパク質の構築)
ペプチドVEQSEHKPGSPEVTGN(配列番号4)、SRLMRSKLHHGIQRH(配列番号5)およびAALMNGSTLLCGGSLLDTH(配列番号6)を合成し、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)、ベクタータンパク質(Calbiochem)に化学的に結合する。
【0049】
(実施例2:マウスの免疫化)
次いで、本発明のペプチドから形成されるキメラタンパク質の各々を、J0、J15およびJ30、J45の日の3回の注射で1組6匹のマウスを免疫するために使用する。免疫化を、結合したペプチドのうちの1つを用いて、または結合したペプチドのうちの2つを混合することにより、または一緒に結合した3つのペプチドを用いて実施する。免疫化のために使用するキメラタンパク質を形成するために、マウス血清を、本発明の対応するペプチドまたはベクタータンパク質に結合されたポリペプチドに結合するその能力に関して試験する。得た血清を評価するために使用するこの試験は、ELISAまたはBiacoreタイプの技術であり、実施例3に記載している。
【0050】
図1は、J21、J35およびJ85の日の血清サンプリングによる、免疫化の進展を示す。免疫化マウスの血清の中のウサギ第VII因子に対する抗体の存在は、「直接」型のELISA試験を用いて試験し、その試験では、プレートのウェルは組み換えウサギ第VII因子(Am.Diagnostica)で覆われ(「コーティングされ」)ている。各ウェルの吸光度を測定し、測定した値を図1のグラフ上に座標に対してプロットする。吸光度の増加は、マウスの血清の中での、組み換えウサギ第VII因子に対する抗体の増加を表す。
【0051】
(a − ウサギ第VII因子を特異的に指向するポリクローナル抗体の調製)
本発明のペプチドのうちのいずれか1つに対するポリクローナル抗体を得るために、陽性と判定したマウスを犠牲にし、これらのマウスの血清の全部を、得た血清に対応する本発明のペプチド(またはポリペプチド)をグラフト化したカラムを使用することによるアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。次いで、カラム上にグラフト化されたペプチドに対するポリクローナル抗体の結合親和性を当業者に周知の技術に従って変えることによって、このカラムに結合したポリクローナル抗体を溶出する。
【0052】
(b − ウサギ第VII因子を特異的に指向するモノクローナル抗体の調製)
本発明のペプチドに対する抗体を発現する選択したマウス(1匹または複数匹)を、ハイブリドーマを調製するための融合工程について意図した日の3日前に、再度免疫化する。
【0053】
本発明のペプチドに対する抗体を産生するBリンパ球を回収するために、このマウスの脾臓をサンプリングする。ハイブリドーマを形成するために、このBリンパ球をSP20系統の骨髄腫細胞と融合する。
【0054】
SP20との融合後、選択した培地の中の中で、細胞培養プレートに細胞を分散させる。異なるウェルの中に分散させた融合物によって産生した抗体へのウサギ第VII因子およびヒト第VII因子のそれぞれの結合を測定することにより、融合ウェルのスクリーニングを実施する。
【0055】
表1は、ウサギ第VII因子およびヒト第VII因子についての、融合ウェルに由来する抗体の結合を反映する吸光度の値を示す。表1に示す結果は、本発明のペプチドを含むキメラタンパク質による免疫化を介して得た抗体はウサギ第VII因子に対して著しくより大きい親和性を有するということを明確に実証する。
【0056】
【表1】

【0057】
これらの結果は、本発明のペプチド/ポリペプチドで免疫化したマウスの免疫血清を用いて行った免疫学的検出試験(ウエスタンブロット)によって確認される。これらの試験の結果を、図2および図3に複製する。非還元条件下(図2を参照)または還元条件下(図3を参照)で、血漿ウサギ第VII因子(ウェルA)、組み換えウサギ第VII因子(ウェルB)およびヒト遺伝子導入第VII因子(ウェルC)を、分子量マーカー(分子量標品のために「Std PM」として表示)と一緒に、4−12% SDS−PAGE型のポリアクリルアミドゲル上で分離する。
【0058】
このゲルを膜上に移し、次いで、本発明のペプチド/ポリペプチド、またはウサギ第VII因子も認識することができるヒト第VII因子に対するポリクローナルのヒツジ抗体で免疫されたマウスの免疫血清を使用して、ウエスタンブロットを実施する。
【0059】
ヒト第VII因子を指向しかつウサギ第VII因子を認識することができるポリクローナルのヒツジ抗体により、非還元条件下および還元条件下で、ウサギ血漿第VII因子、組み換えウサギ第VII因子およびヒト遺伝子導入第VII因子を一度に検出することが可能になる。反対に、マウスの免疫血清に存在する抗体自体は、ウサギ血漿第VII因子およびウサギ組み換え第VII因子の検出を可能にするだけで、ヒト第VII因子の検出を可能にはしないということは明らかである。
【0060】
当該ウサギ組み換え第VII因子は一本鎖の形態で産生され、それゆえ還元条件下でのゲル上での分離の際に解離しないことに留意されたい。このウサギ血漿第VII因子およびヒト遺伝子導入第VII因子は、それ自体、還元条件下での分離の際に軽鎖および重鎖へと解離する。
【0061】
それゆえ、図2および図3の結果は、本発明のペプチド/ポリペプチドから調製した抗体がウサギ第VII因子の特異的な認識を可能にし、そしてそれらはヒト第VII因子を認識しないということを確認する。
【0062】
(ウサギ第VII因子に対してより大きい親和性を有する)最良の結果を有する融合物を、限界希釈によってクローン化し、新しいELISA鑑別スクリーニングを行う。
【0063】
次いで最良のクローンをサブクローン化する。次いで、本発明のモノクローナル抗体の産生を可能にする細胞を培養液に戻し、本発明に係るモノクローナル抗体を含有する溶解液または細胞上清を、当業者に周知の技術に従って調製する。
【0064】
(実施例3:得た抗体のスクリーニング)
産生した(ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかの)抗体のスクリーニングを、「サンドイッチ」型のELISA技術に基づく2つの連続する試験を適用することにより、実施する。
【0065】
最初の試験は、ウサギ第VII因子を認識する抗体を検出ことからなり、
− ウサギ第VII因子およびヒト第VII因子の両方を認識するポリクローナル抗体を、培養プレートの中に固定化する工程、
− ウサギ第VII因子をこのポリクローナル抗体上へと結合するために、ウサギ血漿試料を置く工程、
− 宿主動物の免疫化(実施例2を参照)後に得た試験すべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料を置く工程、
− この抗体とビオチン化された抗宿主動物(ここではマウス)抗体との結合を明らかにする工程、
を含む。
【0066】
第2の試験は、ヒト第VII因子を認識する抗体を検出することからなり、
− ウサギ第VII因子およびヒト第VII因子の両方を認識するポリクローナル抗体を、培養プレートの中に固定化する工程、
− ヒト第VII因子をこのポリクローナル抗体へと結合するために、ヒト血漿試料を置く工程、
− 宿主動物の免疫化(実施例2を参照)後に得た試験すべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料を置く工程、
− この抗体とビオチン化された抗宿主動物(ここではマウス)抗体との結合を明らかにする工程、
を含む。
【0067】
このELISA「サンドイッチ」手順は、ポリ塩化ビニル(PVC)のマイクロプレートを使用して行う。ウサギ第VII因子およびヒト第VII因子の両方を認識するポリクローナル抗体の、50μLの溶液(PBS中の2μg/mL)を各ウェルに加える。この抗体約100ngが各ウェルの中のPVCに結合することになろう(すなわち約300ngの抗体/cm)。最大の抗体を結合することが可能になるように、このマイクロプレートを4℃で一晩放置する。
【0068】
次いで、ウェルをPBSで2回洗浄する。残りの部位を、PBSおよび3% BSA(ウシ血清アルブミン)からなる飽和緩衝液で、高湿度雰囲気下、室温で少なくとも2時間の継続期間の間、飽和させる。次いでこのウェルをPBSで2回洗浄する。
【0069】
50μLの抗原溶液(ここでは、第1の試験におけるウサギ血漿試料または第2の試験におけるヒト血漿試料)をウェルに加え、高湿度雰囲気下および室温で少なくとも2時間インキュベーションする。プレートをPBSで4回洗浄する。
【0070】
次いで、(マウスの免疫化の後に得た)試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料の一部を加える。好ましくは1:10〜1:10,000の範囲で、かつ慣用的には1:10、1:100、1:1,000および1:10,000の希釈物を含んで、この試料のいくつかの希釈物を試験する。本発明の抗体のスクリーニングを進めるための適切な希釈物の選択は、当業者に周知の予備段階の結合試験に基づいてもよい。
【0071】
試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料を、マイクロプレートと接触して、高湿度雰囲気下で室温で少なくとも2時間インキュベーションする。次いでこのウェルをPBSで数回洗浄する。次いでビオチン化された抗マウス抗体を、製造業者の推奨手順に従って、0.5%のTween 20を含有するPBS緩衝液の中での1:1,000の希釈で加える。このビオチン化された抗マウス抗体とともに、推奨されたインキュベーション時間に到達すると、次いで、結合された試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の量の検出を進める。
【0072】
ELISA「サンドイッチ」型技術は当業者に周知であり、これは、所望の結果を達成するために、抗体および/または抗原の各々の量および濃度を調整するために容易に変更されうる。
【0073】
本発明に係る抗体は、第1の試験に対する陽性反応(これはウサギ第VII因子を検出する)および第2の試験に対する陰性反応(これはヒト第VII因子を検出しない)を有することを特徴とするであろう。
【0074】
「サンドイッチ」ELISA試験に代わるものとして、産生された(ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかの)抗体のスクリーニングを成し遂げるために、「直接」ELISA試験も使用してもよい。この試験は、表面を覆う(コーティングする)ために、ウサギ第VII因子またはヒト第VII因子がプレートのウェルの中に直接置かれるということによって、特徴づけられる。使用する第VII因子は、血漿分画または遺伝子組み換えのいずれかよって得てもよい。
【0075】
この「直接」ELISA手順を、ポリ塩化ビニル(PVC)のマイクロプレートを使用して行う。ウサギ第VII因子またはヒト第VII因子の溶液(PBS中の1μg/mL)100μLを各ウェルに加える。これは、約100ngの第VII因子(すなわち約300ngの第VII因子/cm)に対応する。最大の第VII因子を結合することが可能になるように、このマイクロプレートを4℃で一晩放置する。
【0076】
次いでこのウェルをPBSで2回洗浄する。残りの部位を、PBSおよび3% BSA(ウシ血清アルブミン)からなる飽和緩衝液で、高湿度雰囲気下、室温で少なくとも2時間の継続期間の間、飽和させる。次いでこのウェルをPBSで2回洗浄する。
【0077】
次いで、(マウスの免疫化の後に得た)試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料の一部を加える。好ましくは1:10〜1:10,000の範囲で、かつ慣用的には1:10、1:100、1:1,000および1:10,000の希釈物を含んで、この試料のいくつかの希釈物を試験する。本発明の抗体のスクリーニングを進めるための適切な希釈物の選択は、当業者に周知の予備段階の結合試験に基づいてもよい。
【0078】
試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料を、マイクロプレートと接触して、高湿度雰囲気下で室温で少なくとも2時間インキュベーションする。次いでこのウェルをPBSで数回洗浄する。次いでビオチン化された抗マウス抗体を、製造業者の推奨手順に従って、0.5%のTween 20を含有するPBS緩衝液の中での1:1,000の希釈で加える。このビオチン化された抗マウス抗体とともに、推奨されたインキュベーション時間に到達すると、次いで、結合された試験するべきモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の量の検出を進める。
【0079】
「直接」ELISA型技術は当業者に周知であり、これは、所望の結果を達成するために、抗体および/または抗原の各々の量および濃度を調整するために容易に変更されうる。
【0080】
本発明に係る抗体は、抗体は、ヒト第VII因子がウェルの中に固定化されている試験と比較して、ウェルがウサギ第VII因子でコーティングされている試験に対して、はるかにより大きい反応を有するということを特徴とするであろう。
【0081】
ELISA試験に代わるものとして、いずれかの分子相互作用試験がこのスクリーニングのために使用されてもよい。使用されてもよい分子相互作用試験は、特に2つの可能な構成によって特徴づけられる。第1の構成では、ウサギ第VII因子が固定化され、その上にスクリーニングされるべき抗体が注入される。ヒト第VII因子が、基準として使用される。ヒト第VII因子との相互作用と比較した、試験される抗体とウサギ第VII因子との相互作用の相対的シグナルが記録される。第2の構成は、特にプロテインAまたは抗マウス抗体の使用を介するスクリーニングされるべき抗体の固定化、その後のウサギおよびヒトの第VII因子の逐次的な注入を含む。各注入は、いわゆる再生工程によって隔てられ、この再生工程の間に、形成された抗体−第VII因子相互作用が解離する。分子相互作用試験は、特に、表面プラスモン共鳴システム(Biacore)上でまたはQuartz Microbalance型のものの上で行ってもよい。
【0082】
(実施例4:ヒト第VII因子を産生するために使用する遺伝子導入ウサギの乳からのウサギ第VII因子の検出)
実施例3の試験においてウサギ第VII因子への特異性(ヒト第VII因子への結合なし)を有する本発明のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、それゆえ、ウサギ第VII因子がヒト第VII因子も含有する可能性がある生物試料において見出されるときを含めて、ウサギ第VII因子の特異的検出を可能にする。
【0083】
これらのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、特に、ヒト第VII因子を産生するために使用する遺伝子導入の雌のウサギの乳の中のウサギ第VII因子を検出し、かつ必要に応じて定量するための方法において適用されてもよい。
【0084】
試料の中のタンパク質に対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体に基づいて、このタンパク質を検出するための技術は当業者に周知であり、当業者は、何の困難もなく、それらの技術を本発明のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用に適合させうる。
【0085】
好ましい実施形態では、本発明のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料を、1:100の希釈でポリ塩化ビニル(PVC)のマイクロプレートに置く。このマイクロプレートを4℃で一晩放置する。次いでウェルをPBSで2回洗浄し、次いで遊離の残りの部位を、PBSおよび3% BSA(ウシ血清アルブミン)からなる飽和緩衝液で、高湿度雰囲気下、室温で少なくとも2時間の継続期間の間、飽和させる。次いでこのウェルをPBSで2回洗浄する。
【0086】
ヒト第VII因子を産生するために使用する遺伝子導入の雌のウサギ由来の50μLのウサギの乳をこのウェルに加え、高湿度雰囲気下および室温で少なくとも2時間インキュベーションする。好ましくは、様々な希釈のこの遺伝子導入の雌のウサギの乳を、マイクロプレートのウェルの中に置く。一般に使用される希釈物は以下のとおりである:1、1:10、1:50、1:100、1:500、および1:1,000。しかしながら、他の希釈物が容易に使用されうる。遺伝子導入の雌のウサギの乳も、その中にあるウサギ第VII因子を検出するために使用する前の1つまたはいくつかの予備精製工程の対象となる場合がある。次いでプレートをPBSで4回洗浄する。
【0087】
ウサギ第VII因子を指向しかつペルオキシダーゼと結合されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の溶液をウェルに加え、マイクロプレートと接触して、高湿度雰囲気下で室温で少なくとも2時間インキュベーションする。使用する溶液の中の、ペルオキシダーゼと結合された抗体の希釈は、一般に、0.5%のTween 20を含有するPBS緩衝液の中の1:1,000である。次いでこのウェルをPBSで数回洗浄する。使用するペルオキシダーゼと結合された抗体は、市販の抗体であってもよいし(このときは、製造業者の推奨手順に従って、行動することになる)、または本発明に係る抗体(これは、前もってペルオキシダーゼと結合されていることになる)であってもよい。
【0088】
検出は、オルトフェニレンジアミン(OPD−H)を含有する溶液を加えることにより、行う。OPDを含有する溶液を、マイクロプレートとともに室温で約3分間インキュベーションする。ペルオキシダーゼの存在下で、OPD溶液の添加によって、着色の発生が引き起こされ、これは、試験した遺伝子導入の乳の中にウサギ第VII因子が存在するということを明らかにする。停止試薬(3M HSOまたは1M HCl)によってこの反応を停止し、反応混合物の光学密度(OD)を、反応を停止した後10分間〜2時間の時間の範囲内で、マイクロプレート分光光度計によって読み取る。492nmでの吸光度を測定する(ブランクは、遺伝子導入の乳の存在下でインキュベーションされていないウェルの内容物に対して調整する)。着色の強度は、ペルオキシダーゼと結合された抗体の量と比例し、それゆえ固相に結合したウサギ第VII因子の量と比例する。
【0089】
好ましくは、遺伝子導入の雌のウサギの乳と接触させることを意図したマイクロプレートの調製と並行に、ある範囲で増加する濃度のウサギ第VII因子と接触させるマイクロプレートの調製も進める。その手順は、上に記載した手順と同様である。検出の際、ウサギ第VII因子の濃度範囲と接触させたマイクロプレートから、吸光度の進展 対 第VII因子濃度に対応する較正曲線をプロットすることが可能になる。遺伝子導入の雌のウサギの乳の中のウサギ第VII因子濃度は、この較正曲線に基づき測定した吸光度の値をプロットすることにより、決定する。
【0090】
(実施例5:ヒト第VII因子を産生する遺伝子導入の雌のウサギの乳の中に含有される第VII因子の抽出および精製)
ヒト第VII因子を産生する遺伝子導入の雌のウサギの脱脂していない生の乳を、0.25M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 8.2で希釈し、10,000gで、15℃で1時間遠心分離する。遠心分離後、3つの相が存在する:表面の脂質相(クリーム)、第VII因子に関して濃縮されている透明な非脂質の水相(大部分の相)および白色の固形分が沈降した相(不溶性のカゼインおよびカルシウム化合物の沈殿物)。第VII因子を含有する非脂質の水相を集め、次いで1μm〜0.45μmの細孔径を有する一連のフィルターで濾過する。
【0091】
次いで、濾過した非脂質の水相をクロマトグラフィー相と適合させるために、濾過した非脂質の水相を限外濾過膜で透析する。次いで第VII因子を含有する非脂質の水相を、ヒドロキシアパタイトゲルでのクロマトグラフィー、次いで100kDa接線濾過(filtration tangentielle)および50kDa濃度/透析によって精製する。この接線濾過の間、第VII因子は100kDaの多孔性を有する膜を通過するが、他方で高分子量の(すなわち、100kDaよりも大きい分子量を有する)タンパク質は、それ自体保持される。この処理によって、その後の精製工程の間のタンパク質分解性の加水分解の危険性を著しく減少させることが可能である。
【0092】
次いで、第VII因子を含有する得られた溶液を、イオン交換体ゲルQ−Sepharose Fast Flow(QSFF)での3回の連続的なクロマトグラフフィーによって精製する。これは、第VII因子を精製および濃縮して、第VII因子を活性化された第VII因子(第VII因子a)へと活性化することを可能にするために行う。
【0093】
Q−Sepharose FFゲルで行う第1のクロマトグラフィーの間、第VII因子に富むタンパク質分画はpH 7.5の0.05M 塩化カルシウムを含む緩衝液で溶出され(「高カルシウム」溶出)、また第VII因子を第VII因子aへと活性化することが可能になる。
【0094】
透析後、溶出液をQ−Sepharose FF 2カラムで分離する。この工程の間、非常に高い純度の第VII因子を含有する分画は、pH 7.5の0.005M 塩化カルシウムを含む緩衝液で溶出される(「低カルシウム」溶出)。この工程により、付随するタンパク質(雌のウサギの乳由来のタンパク質)のうちの95%超を取り除くことが可能である。
【0095】
最後に、第VII因子を含有する溶液をQ−Sepharose FF 3で分離する。この工程の間、第VII因子はpH 7.0の塩化ナトリウム 0.28Mを含有する緩衝液で溶出される(「ナトリウム」溶出)。
【0096】
この溶出から得られる第VII因子の組成は、95%超の純度を有する。この場合、この産物は静脈内経路による注入に適合する。
【0097】
(実施例6:ウサギ第VII因子を特異的に指向する本発明の抗体をグラフトした樹脂上でのウサギ第VII因子およびヒト第VII因子を含有する溶液の精製)
アフィニティークロマトグラフィーを成し遂げるために本発明のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用してもよいように、本発明のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体をカラム上にグラフトする。
【0098】
好ましくは、使用するカラムは、「プロテインA」型または「プロテインG」型のカラムである。グラフト化は製造業者の推奨手順に従って行う。これは当業者に周知であるので、適用する手順は、選択したカラムの種類に適合させてもよい。本発明のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含有する試料の中に存在する可能性がある第一級アミンは、樹脂上での濾過またはリン酸緩衝液に対する透析によって取り除かれる。アガロース−プロテインG樹脂を再懸濁し、次いで洗浄し、pH 8.2の50mMのホウ酸ナトリウムを含有する洗浄緩衝液で平衡化する。(約100μg/mLの)抗体溶液をこの樹脂と接触させて置き、この混合物をゆっくりと均質化する。次いでこの樹脂/抗体混合物をカラムの中へと導入する。次いでこのカラムを洗浄緩衝液で2回洗浄する。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)をDMSOまたはDMFに懸濁させ、1当量体積の、0.15MのNaClを含有する0.1M リン酸緩衝液(pH 7.2)を加える。この混合物を上記カラム上に置き、そして室温で1時間、上記樹脂と慎重に均質化する。次いでこのカラムを、pH 7.2の、0.15MのNaClを含有するリン酸緩衝液 0.1Mで洗浄する。次いで、あらゆるいまだ活性化されているエステル基をブロックするために、0.1Mのエタノールアミンを含むブロッキング緩衝液をこのカラムを加える。この樹脂/ブロッキング樹脂混合物を、室温で10分間、ゆっくりと均質化し、次いでプロテインGに共有結合されていないあらゆる抗体を溶出するために、第一級アミンを含有する緩衝液(pH 2.8)を上記カラムに通す。次いでこのカラムを洗浄緩衝液で2回洗浄し、その後、アフィニティークロマトグラフィーのためにそれを使用する。
【0099】
アフィニティークロマトグラフィーを実施するために、このカラムを、pH 7.2のPBS型の緩衝液で平衡化する。ウサギ第VII因子を含有する(そして、上記の第VII因子を精製するための工程のいずれかに対応する)溶液を、PBSを加えることにより、希釈する(1v/1v)。次いでこの希釈溶液を上記カラムに通し、280nmでの吸光度がベースラインに戻るまでこのカラムをPBS緩衝液で洗浄する。
【0100】
このカラムの保持されない溶液、この場合は具体的にはウサギ第VII因子をまったく含まない溶液、は回収される。ウサギ第VII因子の不存在は、例えば免疫学的反応によってチェックされる。遺伝子導入の雌のウサギによって産生されるヒト第VII因子のみを含有するこの保持されない溶液は、その後、治療用途のためのヒト第VII因子組成物を調製するために、濃縮、精製および/または前処置してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列として、EHKPGSPEVTGN(配列番号1)、KLHHGIQRH(配列番号2)およびAALMNGSTL(配列番号3)から選択される配列のうちの1つを有する単離されたペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドによって、および前記ペプチドのN末端およびC末端のいずれか一方または両方に存在する1〜10個のアミノ酸の少なくとも1つのさらなるオリゴペプチドによって形成される単離されたポリペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが配列EHKPGSPEVTGN(配列番号1)を有する場合、前記N末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列LMTQDCVEQS(配列番号7)から選択され、かつ/または前記C末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列MFCAGYLDGS(配列番号8)から選択される、請求項2に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが配列KLHHGIQRH(配列番号2)を有する場合、前記N末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列TEWLSRLMRS(配列番号9)から選択され、かつ/または前記C末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列PFP(配列番号10)から選択される、請求項2に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが配列AALMNGSTL(配列番号3)を有する場合、前記N末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列VCPKGECPWQ(配列番号11)から選択され、かつ/または前記C末端に加えられるオリゴペプチドを形成するアミノ酸は、配列LCGGSLLDTH(配列番号12)から選択される、請求項2に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
アミノ酸の配列として、VEQSEHKPGSPEVTGN(配列番号4)、SRLMRSKLHHGIQRH(配列番号5)およびAALMNGSTLLCGGSLLDTH(配列番号6)から選択される1つの配列を有する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ベクタータンパク質と組み合わせて少なくとも1つの請求項1に記載のペプチドおよび/または少なくとも1つの請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、前記ペプチドおよび/または前記ポリペプチドおよび前記ベクタータンパク質は任意にスペーサによって隔てられている、キメラタンパク質。
【請求項8】
前記ベクタータンパク質は、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)およびウシサイログロブリン(THY)から選択される、請求項7に記載のキメラタンパク質。
【請求項9】
抗体の産生を誘導するためのペプチド組成物であって、少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド、および/または少なくとも1つの請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、および/または少なくとも1つの請求項7もしくは請求項8に記載のキメラタンパク質を含む、ペプチド組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のペプチドのうちの少なくとも1つ、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちの少なくとも1つ、または請求項7もしくは請求項8に記載のキメラタンパク質のうちの少なくとも1つを特異的に指向する抗体または抗体機能的フラグメント。
【請求項11】
前記抗体はポリクローナルまたはモノクローナルである、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)2フラグメントまたはscFvフラグメントを含む、請求項10に記載の抗体機能的フラグメント。
【請求項13】
ウサギ第VII因子に対する抗体のスクリーニングのための、請求項1に記載のペプチド、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項7もしくは請求項8に記載のキメラタンパク質の使用。
【請求項14】
ウサギ第VII因子を検出および精製するための、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の抗体または抗体機能的フラグメントの使用。
【請求項15】
前記ウサギ第VII因子は、ヒト第VII因子も含有する生物試料の中に含有されている、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ヒト第VII因子を産生することを意図された遺伝子導入ウサギから採取された生物試料の中に存在する可能性があるウサギ第VII因子を検出および/または定量するための方法であって、
− 前記生物試料を、ウサギ第VII因子と請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の抗体または抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容し、かつヒト第VII因子と前記抗体または前記抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容しない条件下で、前記抗体または前記抗体機能的フラグメントと接触させる工程と、
− いずれかの適切な手段によって、前記複合体の形成を検出および/または定量する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
遺伝子導入ウサギから採取された生物試料からヒト第VII因子を精製するための方法であって、
− 前記生物試料を、ウサギ第VII因子と請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の抗体または抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容し、かつヒト第VII因子と前記抗体または前記抗体機能的フラグメントとの間の複合体の形成を許容しない条件下で、前記抗体または前記抗体機能的フラグメントと接触させる工程と、
− ウサギ第VII因子および前記抗体または前記抗体機能的フラグメントによって形成された前記複合体からヒト第VII因子を分離する工程と、
を含むことを特徴とする方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514028(P2012−514028A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544109(P2011−544109)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/056003
【国際公開番号】WO2010/076768
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508177460)エルエフビー バイオテクノロジーズ (3)
【Fターム(参考)】