説明

ウレタンの製造方法

芳香族アミンとジアルキルカーボネートとの反応によりウレタンを製造する方法であって、ジアルキルカーボネートのアルキル基は4〜18個の炭素原子を含み且つ2位で分岐しており、前記反応はアミノ基に対して化学量論量未満の塩基の存在下で行うことを特徴とするウレタンの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一価、二価又は多価の芳香族アミンとジアルキルカーボネートとを塩基の存在下で反応させることによりウレタンを製造する方法を提供する。このように製造されたウレタンは工業的に重要なイソシアネートに転化することができる。
【背景技術】
【0002】
カルバメートとしても知られるウレタンを製造する様々な方法が数多く知られている。例えば、特許文献1(US3763217)、特許文献2(US4268683)又は特許文献3(US4268684)に記載されているように、反応においては、ルイス酸、例えばアルミニウムの削り屑をヨウ素及び水銀促進剤(特許文献4:US4550188)、更にウラン塩、亜鉛塩、鉄塩、チタン塩、鉛塩、ジルコニウム塩、アンチモン塩、コバルト塩、スカンジウム塩又はスズ塩とともに、触媒として使用している。この方法を工業的に使用する場合の欠点は、反応時間が長いこと、転化率が低いこと、選択率が低いこと、又は数種の特性である。
【0003】
例えば、特許文献5(WO98/55450)、特許文献6(WO98/55451)、特許文献7(WO01/68590)又は非特許文献1(Green Chemistry 2005,7,159−165)に記載されているように、大過剰量のジメチルカーボネートを使用する場合(好ましくはカーボネートに対するアミンの比が少なくとも1:12)に、ルイス酸の触媒作用によるこれらの方法では鉛塩又は亜鉛塩を使用した場合に高収率が達成される。ジメチルカーボネートが大過剰量であると、再循環流が多くなりまた/あるいはこの試薬の損失が多くなる。
【0004】
特許文献8(EP0048371)及び特許文献9(EP0391473)に記載されているように、別のケースにおいては、例えば、鉛触媒、チタン触媒、亜鉛触媒及びジルコニウム触媒を使用して、ウレタン化で同様に生じる尿素を更なる反応で対応するウレタンに熱的に転化する場合に、カルバメートの高収率が達成され得る。これは、更にエネルギーを大量消費する工程が必要となる。
【0005】
均一系触媒としてルイス酸を使用した場合の更なる一般的な欠点は、生成物に残存する触媒残留物と、その除去が不完全及び/又は複雑であることである。これらの問題を回避するために、特許文献10(WO2007/015852)には、芳香族アミンのウレタン化用ルイス酸不均一系触媒を使用することが記載されている。これにより、純粋な生成物の除去を顕著に簡略化できるが、得られる転化率は、工業的規模で使用するにはあまりも低く、また、均一系触媒の処理期間が増加するにつれて選択率と共に低下する。
【0006】
芳香族アミンは、塩基性化合物(例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド)を使用して、対応するウレタンに転化することができることもまた知られている。特許文献11(DE3202690)には、触媒として少量の金属アルコキシドの存在下でアニリンとジアルキルカーボネートを反応させることが記載されている。実施例に記載されている転化率は不十分であり、達成される選択率は工業的利用にとっては不十分である。
【0007】
非特許文献2(Journal of Chemistry 2005,70,2219−2224)には、化学量論量を超える量の塩基(ナトリウムメトキシド(NaOMe)やカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)等)の存在下でアニリンと40倍過剰量のジメチルカーボネートとを反応させることが記載されている。NaOMeの使用により、反応時間210分後において67%という選択率が得られる。KOtBuの使用により、1分後において100%という選択率が測定されるが、これは反応時間が増えると60%に低下し、その結果、副生成物としてN−メチルカルバニレートが生じる。転化率及び単離収率は記載されていない。
【0008】
最後に、特許文献12(WO2008/084842)には、少過剰量のジアルキルカーボネート(アミノ基に対して2.5〜3当量)及び触媒量のナトリウムメトキシドを使用する芳香族カルバメートの製造、及びこの対応するイソシアネートへの更なる転化について記載されている。しかしながら、この目的に必要な反応時間及びウレタン化後の収率についての数値は記載されていない。
【0009】
特許文献13(WO2009/15538)には、化学量論量のアルカリ金属アルコキシドの存在下で、芳香族ジアミンと、少過剰量の、すなわちアミノ基当たり2当量の、鎖に少なくとも2個の炭素原子を有する高級アルコールのジアルキルカーボネートとを反応させることが開示されており、これによりカルバメートの単離収率が高くなっている。しかしながら、このような多量の塩基を再利用することは、エネルギーを多量に消費することを意味し、これにより経済的実行可能性が大幅に低下する。
【0010】
また、特許文献14(WO2010/020621)には、触媒量のみの塩基を使用して、カルバメートの製造について記載されている。しかしながら、ヘテロ原子を含むアルコールから誘導され且つこの目的のために必要とされるカーボネートは、合成するのが難しいので、利用性は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US3763217
【特許文献2】US4268683
【特許文献3】US4268684
【特許文献4】US4550188
【特許文献5】WO98/55450
【特許文献6】WO98/55451
【特許文献7】WO01/68590
【特許文献8】EP0048371
【特許文献9】EP0391473
【特許文献10】WO2007/015852
【特許文献11】DE3202690
【特許文献12】WO2008/084842
【特許文献13】WO2009/15538
【特許文献14】WO2010/020621
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Green Chemistry 2005,7,159−165
【非特許文献2】Journal of Chemistry 2005,70,2219−2224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、一価、二価又は多価芳香族アミンからウレタンを製造する工業的に実施可能な方法であって、空時収率と選択率が向上する方法を開発することにある。この方法は、工業的規模で利用可能なジアルキルカーボネートを使用することができるべきである。同時に、アミノ基に対して少ないモル過剰量のジアルキルカーボネートを使用すべきである。更に、使用する塩基の量は最小限であるべきである。次に、この方法で得られるウレタンを処理に付して、工業的に重要な芳香族イソシアネートが得られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、芳香族アミンと、第1級アルキル基が2位で分岐を有するジアルキルカーボネートとの反応により、カーボネートの過剰量が少ない場合に、化学量論量未満の塩基の存在下であっても、所望とするウレタンの単離が97%という非常に良好な収率に至るまで可能となる。また、結果として非常に良好な選択率を達成することができる。
【0015】
従って、本発明は、芳香族アミンとジアルキルカーボネートとの反応によりウレタンを製造する方法であって、有機ジアルキルカーボネートのアルキル基が4〜18個、好ましくは4〜10個の炭素原子を含み且つ2位で分岐しており、その反応をアミノ基に対して化学量論量未満の塩基の存在下で行うことを特徴とするウレタンの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
芳香族アミンとジアルキルカーボネートの反応生成物は、プロトン性化合物と反応させることが好ましい。プロトン性化合物は、プロトンを移動させることができる化合物を意味するものとして理解されたい。プロトン性化合物は、アルコール、水及びこの2つの混合物を含む群から選択されることが好ましい。水を使用することが特に好ましい。
【0018】
塩基は、アミノ基に対するモル比が0.3以上0.8未満、より好ましくは0.4〜0.6で使用することが好ましい。
【0019】
ジアルキルカーボネートは、アミノ基に対するジアルキルカーボネートのモル比が1:1〜6:1、より好ましくは1:1〜3:1で使用する。
【0020】
塩基の存在下での芳香族アミンとジアルキルカーボネートとの反応は、反応温度60〜180℃、より好ましくは100〜150℃で行われることが好ましい。この温度であれば、芳香族アミンの定量的転化が0.5〜10時間以内に達成される。この反応は典型的には標準圧力下、あるいは(自己発生により)上昇した圧力下(加圧下)又は低下した圧力下(減圧下)で行う。この場合において、生じるアルコールは反応混合物中に残してもよいし、蒸留除去してもよい。本発明の一実施の形態では、反応は不活性溶媒の存在下で行う。好適な溶媒は、例えば、ジオキサン、ジフェニルエーテル又はジベンジルエーテル等のモノ又はポリエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル又はトリエチレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエチレングリコール、アルキル、ハロゲン又はアルコキシ置換基を有するか有しない芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンの各異性体、メシチレン、エチルベンゼン、テトラリン、ベンジル−及びジベンジルトルエンの各異性体、クロロベンゼン、ジクロロ及びトリクロロベンゼンの各異性体又はアニソール、又はジアルキルカーボネート及び/又はアルコキシド中に存在するアルコールである。これらは単独でも混合物としても使用することができる。
【0021】
本発明の方法では、一価、二価又は多価の芳香族アミンを使用する。この芳香族アミンは、芳香基にいかなるヘテロ原子も含まないことが好ましい。この類の代表例は、例えば、アニリン、o−,m−,p−トルイジン及びこれらの混合物、o−,m−,p−クロロアニリン及びこれらの混合物、o−,m−,p−ブロモアニリン及びこれらの混合物、o−,m−,p−トリフルオロメチルアニリン及びこれらの混合物、2,4−、2,6−、3,4−及び3,5−ジメチル−、−ジクロロ−、−ジブロモ−及び−ジエチルアニリン及びこれらの異性体混合物、p−tert−ブチルアニリン、ジアミノトルエン(TDA)、特に2,4−及び2,6−ジアミノトルエン及びこれらの混合物、ジアミノジフェニルメタン(MDA)、特に2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン及びその高級同族体(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン)及びこれらの混合物、並びにo−,m−,p−フェニレンジアミン及びこれらの混合物である。アニリン、ジアミノトルエンの異性体類及びジアミノジフェニルメタンの異性体類及びその高級同族体を使用することが好ましい。
【0022】
ジアルキルカーボネートのアルキル鎖は、4〜18個及び好ましくは4〜10個の炭素原子を含み、2位で分岐している。これは、対応する第1級アルコールから誘導される。このアルキル鎖は更に飽和又は不飽和環を含んでいてもよい。本発明の一実施態様では、ジアルキルカーボネートのアルキル鎖は、酸素原子で変性されている。これは、エーテル基の形態であることが好ましい。
【0023】
本発明の特に好ましい実施の形態では、ジアルキルカーボネートは、ジ(2−メチルプロピル)カーボネート、ジ(2−メトキシプロピル)カーボネート、ジ(2−エトキシプロピル)カーボネート、ジ(2−メチルブチル)カーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)カーボネート、ジ(シクロペンチルメチル)カーボネート及びジ(シクロヘキシルメチル)カーボネートを含む群から選択され、好ましくはジ(2−メチルプロピル)カーボネート及びジ(2−メトキシプロピル)カーボネート、より好ましくはジ(2−メチルプロピル)カーボネートである。
【0024】
ジアルキルカーボネートは、アルキレンカーボネートとアルコールとのエステル交換により製造されることが好ましい。
【0025】
塩基は好ましくは、塩基性有機金属化合物、特にアルカリ金属の化合物である。これらの化合物は、例えば、窒素原子を含む化合物(例えばナトリウムアミド等のアミド)又はケイ素原子及び窒素原子を含む化合物(例えばリチウムヘキサメチルジシラジド)であってよい。より好ましくは、塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドである。
【0026】
アルコキシドのアルキル鎖は、直鎖状、分岐状又は環状であってよく、1〜18個、好ましくは4〜10個の炭素原子を含む。アルコールは、更に、飽和又は不飽和環を含んでいてもよい。本発明の一実施態様では、アルコキシドのアルキル鎖は、少なくとも1個の酸素原子で変性されている。これは、エーテル基の形態が好ましい。
【0027】
本発明の方法の特に好ましい実施の形態では、ジアルキルカーボネートとアルコキシドは、同じアルコールを基礎とするものである。この利点は、本発明の方法に存在する化合物がより少量であることである。これにより、この方法での分離複雑性が低減される。
【0028】
プロトン性化合物として水を使用する本発明のウレタン製造方法の好ましい実施の形態では、本発明の方法は、
a)塩基の存在下で芳香族アミンをジアルキルカーボネートと反応させる工程、
b)工程a)で生じた反応生成物を水と反応させる工程、
c)工程b)で生成した生成物と水性塩基を分離する工程、
d)工程c)で得られた水性塩基を、対応する非水性塩基に転化し、これを工程a)に再利用する工程、
e)工程c)で分離されたウレタンを単離する工程、
を含む。
【0029】
この方法は、連続式又はバッチ式、好ましくは連続式で行う。この例では、工程b)でウレタンが生じる。この実施の形態を、プロトン性化合物として水を使用した場合である図1に示している。ウレタンは、有機溶媒に溶解した溶液として又は溶融物若しくは固体の形態の純粋な物質として単離することができる。工程b)で生成した生成物には、ウレタン及び、塩基としてナトリウムアルコキシドを使用した場合には、水酸化ナトリウム溶液が含まれる。
【0030】
処理工程a)は図1のステージ1で、処理工程b)はステージ2で行われる。バッチ式形態での稼働の場合には、ステージ1及び2は同じ反応容器で行うことができ、連続式形態での稼働の場合には、好ましくは別の反応容器で行うことができる。ステージ1で生じた生成物は、更なる後処理を行うことなくステージ2に送ることができる。
【0031】
ステージ3では、ステージ2で得られた水性塩基が非水性塩基に転化する。アルコキシドを使用した場合には水酸化物からアルコキシドへの転化である。後者はステージ1に再利用される。ステージ2で得られる余剰のアルコールは、その場で排出されるか、又は本方法の別の箇所に再利用される。塩基又はアルコキシドの形成の過程で生じた水は、工程b)に戻して再利用することができる。工程b)で生じた水性アルカリをアルコールと反応させて、対応するアルコキシドを得ることができ、これを工程a)に戻して再利用してもよい。
【0032】
ステージ2から生じた生成物は、既にこの形態で存在していない場合には、非水性相と水性相に分離する。この生成物は、ウレタンを含む有機相から取り除かれ、固体又は溶融物として単離されるか、あるいは更なる反応ステージ、例えば対応するイソシアネートへの熱的開裂にこの形態で直接使用される。取り除かれたウレタンは、必要に応じて、当業者に知られている方法、例えば水又は有機溶媒での洗浄、あるいは好適な溶媒からの再結晶によって精製してもよい。
【0033】
ウレタンの対応するイソシアネートへの熱的開裂(熱による開裂、熱開裂)は、工程f)として工程e)に直接続いてもよい。
【0034】
工程a)で使用するジアルキルカーボネートは、好ましくはアルキレンカーボネートとアルコールとのエステル交換により製造することができる。
【0035】
本発明においては、化学量論量未満の塩基の存在下で、芳香族アミンと、分岐を有するアルコールから誘導される少過剰量のジアルキルカーボネートとを反応させて対応するカルバメートを得ることが、高い選択率及び空時収率で可能である。ウレタンは高純度で生成するので、通常は複雑な事後精製は必要としない。
【0036】
アミノ基に対して化学量論量の塩基の存在下で、芳香族アミンと低過剰量のカーボネートとを反応させると、ジアルキルカーボネート類全体について同程度の単離収率(例えば、WO2009/115538の2,4−ジアミノトルエンの場合は90%以上)、即ち、高い転化率及び高い選択率が得られるが、塩基の使用量がより少ない場合には反応の効率が著しく低下する。
【0037】
ジ−n−プロピルカーボネート又はビス(2−メトキシエチル)カーボネート等の本発明に含まれない直鎖状カーボネートを使用する場合であって、アミノ基に対して約0.5当量の塩基しか使用しない場合には、2,4−ジアミノトルエンの場合、最高でも84%という明らかに低い収率(即ち、低選択率で高転化率)しか得られない。本発明のようにジイソブチルカーボネート等の2位で分岐したカーボネートを使用した場合のみ、高い単離収率は変化せず、2,4−ジアミノトルエンの場合には96%である(即ち、高転化率・高選択率)。
【0038】
非常に少ない触媒量の塩基(アミノ基に対して0.2当量以下)を使用した場合には、ヘテロ原子を含むアルコールから誘導されるカーボネート(ビス(2−メトキシエチル)カーボネート等)を用いた場合にのみ、許容可能な転化率が得られる。しかしながら、この場合においても単離収率は低いままである。なぜなら副生成物の生成が依然として増加するからであり、このことは、反応が高転化率ではあるが低選択率であることを意味している。他の全てのカーボネートを使用した場合には、工業的規模において達成可能な滞留時間では転化率及び単離収率は不十分のままである(DE3202690)。
【0039】
本発明を以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0040】
実施例1
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、12.0g(98.0mmol)の2,4−ジアミノトルエン、9.42g(98.0mmol)のナトリウムイソブトキシド及び68.3g(392mmol)のジイソブチルカーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。この混合物をこの温度で3時間撹拌した後、200mlのトルエンで希釈して、50℃に冷却し、次いで100mlの水を計量導入した。相分離が終了次第、上側の有機相を100mlの水で1回洗浄した。水相を、それぞれ100mlのトルエンで2回再抽出し、全ての有機相を組み合わせた。429gの黄色溶液が得られ、この溶液のビスウレタンの含有量をHPLCで測定したところ、7.08質量%(96%)であった。
【0041】
比較例1
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、12.1g(98.7mmol)の2,4−ジアミノトルエン、8.10g(98.7mmol)のナトリウムn−プロポキシド及び57.7g(395mmol)のジ−n−プロピルカーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。混合物をこの温度で3時間撹拌した後、この混合物を実施例1に記載のように後処理を行った。399gの黄褐色溶液が得られ、この溶液のビスウレタンの含有量をHPLCで測定したところ、5.58質量%(77%)であった。
【0042】
比較例2
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、12.1g(98.7mmol)の2,4−ジアミノトルエン、9.68g(98.7mmol)のナトリウム2−メトキシエトキシド及び70.4g(395mmol)のビス(2−メトキシエチル)カーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。混合物をこの温度で3時間撹拌した後、この混合物を実施例1に記載のように後処理を行った。407gの黄褐色溶液が得られ、この溶液のビスウレタンの含有量をHPLCで測定したところ、6.64質量%(84%)であった。
【0043】
比較例3
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える250mlの四口フラスコ内で、12.2g(100mmol)の2,4−ジアミノトルエン、2.07gのナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液(10.7mmolのナトリウムメトキシドに相当する)及び121.4g(600mmol)のビス(3−メチルブチル)カーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、80℃に予熱した油浴に入れた。転化率を薄膜クロマトグラフィーによって時折分析した。80℃において反応時間140時間経過後であっても、2,4−ジアミノトルエンとアミノウレタン各異性体の明瞭に認識可能な部分は依然として存在していた。このときにHPLCで測定したビスウレタン含有量は約6.45質量%であった(25%)。
【0044】
実施例2
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、11.9g(97.1mmol)の2,4−ジアミノトルエン、9.33g(97.1mmol)のナトリウムイソブトキシド及び67.6g(388mmol)のジイソブチルカーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。混合物をこの温度で2時間撹拌した後、この混合物を実施例1に記載のように後処理を行った。427gの黄色溶液が得られ、この溶液のビスウレタンの含有量をHPLCで測定したところ、7.03質量%(96%)であった。
【0045】
実施例3
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、11.8g(96.8mmol)の2,4−及び2,6−ジアミノトルエン(比が80:20)、9.30g(96.8mmol)のナトリウムイソブトキシド及び67.4g(387mmol)のジイソブチルカーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。反応混合物中のビスウレタンの含有量を、定期的な間隔でサンプリングし、次いでHPLC分析することにより測定した。4時間後、これは32.2質量%(91%)であった。
【0046】
実施例4
スターラー、還流凝縮器、内部温度計及び保護ガスシールを備える500mlの四口フラスコ内で、12.0g(98.0mmol)の2,4−及び2,6−ジアミノトルエン(比が80:20)、14.1g(147mmol)のナトリウムイソブトキシド及び68.1g(391mmol)のジイソブチルカーボネートを、アルゴン下で続けて計量し、125℃に予熱した油浴に入れた。反応混合物中のビスウレタンの含有量を、定期的な間隔でサンプリングし、次いでHPLC分析することにより測定した。3時間後、これは32.6質量%(97%)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アミンとジアルキルカーボネートとの反応によりウレタンを製造する方法であって、
前記ジアルキルカーボネートのアルキル基は4〜18個の炭素原子を含み且つ2位で分岐しており、前記反応はアミノ基に対して化学量論量未満の塩基の存在下で行うことを特徴とするウレタンの製造方法。
【請求項2】
前記塩基を、アミノ基に対して0.3以上0.8未満のモル比で使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族アミンが1個のアミノ基を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族アミンが2個以上のアミノ基を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族アミンがその芳香環にヘテロ原子を有しない請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族アミンが、アニリン、o−,m−,p−トルイジン及びこれらの混合物、o−,m−,p−クロロアニリン及びこれらの混合物、o−,m−,p−ブロモアニリン及びこれらの混合物、o−,m−,p−トリフルオロメチルアニリン及びこれらの混合物、2,4−、2,6−、3,4−及び3,5−ジメチル−、−ジクロロ−、−ジブロモ−及び−ジエチルアニリン及びこれらの異性体混合物、p−tert−ブチルアニリン、ジアミノトルエン(TDA)、特に2,4−及び2,6−ジアミノトルエン及びこれらの混合物、ジアミノジフェニルメタン(MDA)、特に2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン及びその高級同族体(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン)及びこれらの混合物、並びにo−,m−,p−フェニレンジアミン及びこれらの混合物を含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ジアルキルカーボネートが、アルキル鎖に少なくとも1個の酸素原子を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアルキルカーボネートが、第1級アルコールから誘導される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアルキルカーボネートが、ジ(2−メチルプロピル)カーボネート、ジ(2−メトキシプロピル)カーボネート、ジ(2−エトキシプロピル)カーボネート、ジ(2−メチルブチル)カーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)カーボネート、ジ(シクロペンチルメチル)カーボネート及びジ(シクロヘキシルメチル)カーボネートの群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアルキルカーボネートを、アミノ基に対するジアルキルカーボネートのモル比が1:1〜6:1において使用する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基がアルコキシドである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基がアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコキシドが、その鎖に1〜18個の炭素原子を有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルコキシドのアルキル基が、そのアルキル鎖に少なくとも1個の酸素原子を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルコキシドのアルコールが、前記ジアルキルカーボネートのものと同じである請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記芳香族アミンと前記ジアルキルカーボネートとの反応に続いて、得られた反応生成物をプロトン性化合物と反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記プロトン性化合物が水である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
a)塩基の存在下で芳香族アミンをジアルキルカーボネートと反応させる工程、
b)工程a)で生じた反応生成物を水と反応させる工程、
c)工程b)で生成した生成物と水性塩基を分離する工程、
d)工程c)で得られた水性塩基を、対応する非水性塩基に転化し、これを工程a)に再利用する工程、
e)工程c)で分離されたウレタンを単離する工程、
を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程a)で使用するジアルキルカーボネートは、アルキレンカーボネートとアルコールとのエステル交換により製造される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程e)に続いて、f)前記ウレタンをイソシアネートとアルコールに開裂させる請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−508336(P2013−508336A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534678(P2012−534678)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065765
【国際公開番号】WO2011/048124
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】