説明

ウレタンプライマー組成物

【課題】本発明は、トルエン、キシレン等の使用に伴う室内環境汚染をなくし、ウレタンプレポリマーとの溶解性に優れ、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性に優れた一液ウレタンプライマー組成物を得ることを目的としている。
【解決手段】上記課題の解決のため、ウレタンプレポリマー10〜50重量部、メチルシクロヘキサンを5〜35重量部、その他の溶媒としてアルコール類、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を15〜85重量部を混合して得られる一液ウレタンプライマー組成物において、溶解性に優れ、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性に優れた一液ウレタンプライマー組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築分野で使用する塗り床、特に防水用途として、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性を付与し、ウレタンプライマー組成物中にトルエン、キシレン、ホルムアルテ゛ヒト゛、ハ゜ラシ゛クロロヘ゛ンセ゛ン、エチルヘ゛ンセ゛ン、スチレンを使用しない環境に配慮したウレタンプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土木・建築分野で使用されている塗り床、特に防水用途として、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地へは密着性、耐久性を付与するために、ウレタンプライマーが使用されている。
【0003】
しかし、従来のウレタンプライマーでは相溶性、溶解性が優れているといった理由によりトルエン、キシレンが溶媒として使用されている(特許文献1、2参照)。しかし、近年、厚生労働省により、シックハウス症候群の室内汚染物質としてもホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等の優先取り組み物質が定められ、また、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の第一種指定化学物質にホルムアルデヒド,ベンゼン、トルエン,キシレンなどが指定されている。さらに、文部科学省により、学校環境衛生の基準が改訂され、学校における室内空気汚染に対する対策がなされ、小、中、高、大学などの教育施設でのホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物の判定基準が適応された。このような背景の中、上記化学物質を含有しないウレタンプライマーの開発が市場より望まれている。
【特許文献1】特許第3027854号
【特許文献2】特開平2003-221426号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、トルエン、キシレン等の使用に伴う室内環境汚染をなくし、ウレタンプレポリマーとの溶解性に優れ、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性に優れたウレタンプライマー組成物を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決のため、ウレタンプレポリマー10〜50重量部、メチルシクロヘキサンを5〜35重量部、その他の有機溶媒としてホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を15〜85重量部を混合して得られるウレタンプライマー組成物において、前記、環境汚染の原因物質であるホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの有機化合物を含まず、溶解性に優れ、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性に優れたウレタンプライマー組成物を得る。
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるウレタンプレポリマーとは、ポリオール類と有機ジイソシアネート類の反応に於いてNCO/OHの当量比を平均1.2以上2.0以下で反応させて、得られるプレポリマーの性状は湿気硬化型ウレタンプレポリマーであり、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地に適するようポリオール組成により硬さ、粘度の設定を行うことが出来るものである。
【0007】
このようなポリオール類としては、1分子中に水酸基数2から3個を有する多価アルコール類例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等にアルキレンオキサイド例えばプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドを単独又は混合して重合した共重合体のポリアルキレンエーテルポリオールの平均分子量が好ましくは200〜800のものが使用できる。
【0008】
また、有機ジイソシアネート類は通常のウレタン樹脂に用いるジイソシアネート類が使用出来る。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4/2,6異性体比65/35(重量比)トリレンジイソシアネート、2,4/2,6異性体比80/20(重量比)トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水添加トリレンジイソシアネート、水添加4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の単独又は混合物であって、好ましくは常温で液状で取り扱いの容易なものが好適である。
【0009】
このようにして、製造されたウレタンプライマーは全重量に対して10〜50重量部以下、また、好ましくは30〜40重量部以下が適している。ウレタンプライマーが10重量部より少なくなると十分なとの密着性、耐久性が得られにくく、50重量部を越えると溶剤との相溶性が得られにくく、下地への浸透性が悪く密着性が低下する。このようにして製造されたウレタンプレポリマーの数平均分子量は700〜1400が好ましい。数平均分子量が700より少なくなると硬化時間が長くなるため作業性が悪くなり、1400超えると粘度が高くなるため下地との密着性が悪くなる。
【0010】
本発明で使用する溶剤としては環境汚染の原因物質である、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの有機化合物を含まず、さらに、イソシアネート基と反応することのない有機溶媒であり、例えば、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ソルフィト等が挙げられる。これらのうち、メチルシクロヘキサンを必須溶剤として、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルのうち少なくとも1種類を含む混合溶剤がウレタンプレポリマーとの相溶性、溶解性、さらに、ウレタンプレポリマーの乾燥性、下地への浸透性、密着性に優れているため好ましい。
【0011】
溶剤の使用量は、その種類や混合物の粘度によって変化するが、メチルシクロへキサンの使用量は全重量に対して、5〜35重量部以下、また、好ましくは10〜20重量部以下が適している。メチルシクロヘキサンが5重量部より少なくなると十分なウレタンプレポリマーとの溶解性が得られにくく、35重量部を越えるとウレタンプレポリマーの乾燥が速くなり適さない。また、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルの使用量は混合した状態で全重量に対して、15〜85重量部以下、好ましくは40〜60重量部以下が適している。メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルが15重量部より少なくなると十分なウレタンプレポリマーとの溶解性が得られにくく、85重量部を越えると硬化時間が遅くなる。
【0012】
本発明のウレタンプライマー組成物には前記成分の他に、一般に用いられている、消泡剤、老化防止剤、安定剤、補強剤、架橋剤を必要に応じて含有することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により得られたウレタンプライマー組成物は、シックハウス症候群の室内汚染物質、PRTR法の第一種指定化学物質、学校環境衛生の基準に指定されるホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンを含まず、ウレタンプレポリマーとの溶解性に優れ、コンクリート、モルタル、合板、ケイカル下地への密着性、耐久性に優れたウレタンプライマー組成物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
実施例及び比較例
表1の配合により、実施例、比較例のウレタンプライマー組成物を調製した。
実施例1
TDI(2、4又は2、6−トリレンジイソシアネート)と平均分子量約300〜400のPPG(ポリプロピレングリコール)をウレタン化反応させて得られたイソシアネート基含有化合物であり、その平均分子量は、約700〜1400の範囲内を有する、ウレタンプレポリマー(L-1150:三井武田ケミカル株式会社製)40部、メチルシクロヘキサン20部、メチルエチルケトン20部、酢酸エチル10部、酢酸ブチル10部を混合し、コンクリート下地にローラーで0.2kg/m2を塗布し、23℃×50%RH×7日の条件で硬化させ、その後の塗膜物性を評価した。
比較例1
実施例1と同一の反応によって得られた、ウレタンプレポリマー(L-1150:三井武田ケミカル株式会社製)40部、トルエン30部、メチルエチルケトン20部、酢酸エチル10部、を混合し、コンクリート下地にローラーで0.2kg/m2を塗布し、23℃×50%RH×7日の条件で硬化させ、その後の塗膜物性を評価した。
比較例2
実施例1と同一の反応によって得られた、ウレタンプレポリマー(L-1150:三井武田ケミカル株式会社製)40部、イソヘキサン20部、メチルシクロヘキサン15部、メチルエチルケトン15部、酢酸エチル5部、酢酸ブチル5部を混合し、コンクリート下地にローラーで0.2kg/m2を塗布し、23℃×50%RH×7日の条件で硬化させ、その後の塗膜物性を評価した。
比較例3
実施例1と同一の反応によって得られた、ウレタンプレポリマー(L-1150:三井武田ケミカル株式会社製)60部、メチルシクロヘキサン15部、メチルエチルケトン15部、酢酸エチル5部、酢酸ブチル5部を混合し、コンクリート下地にローラーで0.2kg/m2を塗布し、23℃×50%RH×7日の条件で硬化させ、その後の塗膜物性を評価した。








【0016】
表1






粘度はブルックフィールド回転型粘度計によりBM型、No.1、60rpmの条件で測定した。
【0017】
実施例、比較例における、密着性試験の測定は以下の方法で測定、評価し、その結果は表1に示した。実施例1では、トルエンを含有せず、クリアーな硬化塗膜が得られ、コンクリート下地との密着性、耐水性に優れていた。比較例1では、品質は良いがトルエンを含有しており環境に配慮していない。比較例2では、請求項以外の溶剤の影響により、ウレタンプレポリマーとの相溶性が悪いため硬化塗膜が濁り、耐水性に劣った。比較例3では、請求項以外のウレタンプレポリマー重量部で、混合物粘度が大幅に上昇し、コンクリート下地に浸透せず、密着性が大幅に劣った。
【0018】
密着性試験
JIS A 5371のコンクリート平板上に、実施例、比較例の配合において、0.2kg/m2塗布し、23℃、RH50%下で7日間養生したものを試験体として用いた、硬化塗膜との密着性試験として、JIS A 5536に準じて試験体の表面に縦、横各40mm角の接着面、厚み20mmの鉄鋼製治具のを接着し、建研式引張試験機により引張試験を行い、破壊状態を確認した。
耐水試験
JIS A 5371のコンクリート平板上に、実施例、比較例の配合において、0.2kg/m2塗布し、23℃、RH50%下で8時間後に水滴を2ml滴下した。24時間後、塗膜表面を白化の度合いを目視で確認した。
○:白化なし、△:一部白化、×:全体の白化の3段階で評価をした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重量組成物中、ウレタンプレポリマー10〜50重量部、メチルシクロヘキサンを5〜35重量部、その他の溶媒としてホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を15〜85重量部を配合したことを特徴とするウレタンプライマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の、ウレタンプレポリマーとして数平均分子量が700〜1400の湿気硬化型ウレタンプレポリマーであることを特徴とするウレタンプライマー組成物。
【請求項3】
請求項1、2に記載のその他の溶媒として、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルの中から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とするウレタンプライマー組成物。

【公開番号】特開2006−206708(P2006−206708A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19341(P2005−19341)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】