説明

ウレタン化反応生成物及びその製造方法

【課題】不純物の含有量が著しく少なく、熱分解による低分子量の不純物の発生も抑制され、離型剤等の各種用途に有用なウレタン化反応生成物を提供する。
【解決手段】一般式[1]で表される脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を0.5〜1.0として反応させて得られる、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとの付加化合物を主成分とするウレタン化反応生成物であって、一般式[2]で表される化合物及び一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜1重量%。 R−NCO [1] R−NHCO−NH−R [2] R−N(CO−NH−R) [3](Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体とのウレタン化反応生成物及びその製造方法に係り、特に、不純物含量が少なく、離型剤等としての各種用途に有用なウレタン化反応生成物及びその製造方法に関する。本発明はまた、このウレタン化反応生成物を有効成分とする離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリビニルアルコール又はエチレン−ビニルアルコール共重合体に、脂肪族イソシアネートを付加させてなるウレタン系離型剤が知られている。具体例としては、ポリビニルアルコールのウレタン系離型剤(例えば、特許文献1参照)や、エチレン−ビニルアルコール共重合体のウレタン系離型剤(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体のウレタン系離型剤の製造方法として、有機溶媒を用いて反応開始から反応終了に至るまでその中間生成物も含めて溶液状態で反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
通常、エチレン−ビニルアルコール共重合体のウレタン系離型剤を製造する際に、原料であるエチレン−ビニルアルコール共重合体をトルエン等の有機溶媒に分散させ、加温してジメチルスルホキシド等の水溶性溶媒を加え、下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネート(以下、「脂肪族イソシアネート[1]」と称す場合がある。)、例えばオクタデシルイソシアネート等を加えて反応させる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ジメチルスルホキシド等の水溶性溶媒を添加した際に徐々に溶解するので、エチレン−ビニルアルコール共重合体の粉体は、その周りから溶媒に溶解して脂肪族イソシアネートと反応し、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネート[1]との付加化合物(以下、「目的ウレタン化合物」と称す場合がある。)を得ることができる。生成した目的ウレタン化合物は、トルエンに溶解するため、溶液状態で反応を進行させることができる。しかし、その際に、目的ウレタン化合物の他に、下記一般式[2]で表される化合物(以下「不純物[2]」と称す場合がある。)及び下記一般式[3]で表される化合物(以下「不純物[3]」と称す場合がある。)が不純物として副生し、反応液中に析出するか、或いは反応液中に含有されて最終的に目的とするウレタン系離型剤中に含有されてしまう。
【0004】
R−NCO [1]
R−NHCO−NH−R [2]
R−N(CO−NH−R) [3]
([1]〜[3]式中、Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、一分子内に複数のRを有する場合はそれらRは同一でも異なっていてもよい。)
【0005】
これらの副生成物は、出発原料の脂肪族イソシアネート[1]が水と反応して生成した脂肪族アミンが、更に脂肪族イソシアネート[1]と反応して生成した、分子の両末端が脂肪族由来の、例えばアルキル基で封鎖された、中心が−NH−CO−NH−の結合を有している化合物(不純物[2])、或いは−N(−CO−NH−)−CO−NH−の結合を有している化合物(不純物[3])である。
【0006】
反応液中に不純物[2]及び不純物[3]が析出していると、反応器から反応溶液を移送する際に、送液ポンプをいためたり、ゴミ等を捕捉するためのネット(ストレーナ)の目詰まりによる生産性の低下が生じる。
【0007】
また、ウレタン系離型剤の製造に際しては、目的とする離型力を有するウレタン系離型剤とするために、原料のエチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネート[1]との付加率を適宜調整しているが、原料の脂肪族イソシアネート[1]が不純物[2]及び不純物[3]の生成に消費されてしまうために、設計した通りの離型力を有するウレタン系離型剤を得ることができないといった問題もある。
【0008】
また、耐熱性の低いウレタン系離型剤は、コンパウンドの調製や押出成形の際にウレタン結合が熱分解して低分子量の不純物を生じ、これが成形加工時に発煙や発泡、金属ロール汚染等の問題を引き起こす原因となる。
更には、これらコンパウンド調製等で生じる不純物や、製造の際に生じる不純物[2],[3]を含むウレタン系離型剤を有効成分とする離型層と粘着層とを対向させて積層すると、離型層から粘着層の粘着面に不純物が移行することによる粘着性能の低下等の問題もある。
【0009】
このため、これら不純物[2],[3]を含む、耐熱性の低いウレタン系離型剤は、離型剤としては必ずしも満足できるものではなかった。
【特許文献1】特公平2−7988号公報
【特許文献2】特公昭60−30355号公報
【特許文献3】特公平4−28002号公報
【特許文献4】特開2003−96432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述の現状に鑑みてなされたものであり、脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体とを反応させて得られるウレタン化反応生成物であって、不純物[2]及び不純物[3]の含有量が著しく少なく、更には熱分解による低分子量の不純物の発生も抑制された、離型剤等の各種用途に有用なウレタン化反応生成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、このようなウレタン化反応生成物を有効成分とし、例えば離型層と粘着層とを積層した積層体において、離型層から粘着層への不純物の移行による粘着性能の低下といった、不純物に起因する問題のない離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ウレタン化反応及び精製工程における工夫により、ウレタン化反応生成物中の不純物含量を低減し、耐熱性が高く、品質にバラツキのない目的物であるウレタン化反応生成物を高収率で効率的に得ることができ、これにより、本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明のウレタン化反応生成物は、下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を0.5〜1.0として反応させて得られる、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとの付加化合物を主成分とするウレタン化反応生成物であって、下記一般式[2]で表される化合物及び下記一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜1重量%で、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のウレタン化反応生成物の製造方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体に対して脱水操作を行い、該脱水操作後のエチレン−ビニルアルコール共重合体と下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネートとを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を0.5〜1.0として、実質的に触媒を使用することなくウレタン化反応させて反応生成物を得、該反応生成物を非極性有機溶媒の溶液として0〜40℃で濾過し、得られた濾液から該溶媒を除去することにより、下記一般式[2]で表される化合物及び下記一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜1重量%で、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあるウレタン化反応生成物を得ることを特徴とする。
【0015】
R−NCO [1]
R−NHCO−NH−R [2]
R−N(CO−NH−R) [3]
([1]〜[3]式中、Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、一分子内に複数のRを有する場合はそれらRは同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
本発明の離型剤は、このような本発明のウレタン化反応生成物を有効成分として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体とを所定のNCO/OH当量比でウレタン化反応させてなるウレタン化反応生成物であって、目的ウレタン化合物、即ち、エチレン−ビニルアルコール共重合体に脂肪族イソシアネート[1]を付加させてなるウレタン化合物の純度が高く、副生成物である不純物[2]及び不純物[3]の含有量が十分に低減され、耐熱性の高いウレタン化反応生成物が提供される。このウレタン化反応生成物は、不純物[2],[3]の含有量が少なく、耐熱性が高く、また、目的ウレタン化合物純度が高いことにより、次のような優れた効果が奏される。
【0018】
(1) ウレタン化反応工程において、反応器から反応溶液を移送する際に、析出物による送液ポンプの損傷やストレーナの目詰まり等の障害が防止され、高い生産性でウレタン化反応生成物を得ることができる。
(2) ウレタン化反応に供した脂肪族イソシアネートが不純物の生成に無駄に消費される量が少なく、このため、仕込み原料比に対応した目的ウレタン化合物を得ることができる。従って、例えば、離型剤として、所期の離型力を有する離型剤を確実に製造することができる。
(3) 上記(1),(2)より、品質のバラツキのない目的ウレタン化合物含有ウレタン化反応生成物を高収率で効率的に得ることができる。
(4) 耐熱性が高いことから、コンパウンドの調製や押出成形の際に、熱分解で生成する低分子量不純物による、成形加工時の発煙や発泡、金属ロール汚染等の問題が防止される。
(5) 離型剤としての用途において、離型層から粘着層へ不純物が移行することによる粘着性能の低下の問題が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のウレタン化反応生成物は、下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネート(脂肪族イソシアネート[1])とエチレン−ビニルアルコール共重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネート[1]のイソシアネート基の当量比(以下「NCO/OH比」と称す。)を0.5〜1.0として反応させてなる、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネート[1]との付加化合物(目的ウレタン化合物)を主成分とし、下記一般式[2]で表される化合物(不純物[2])及び下記一般式[3]で表される化合物(不純物[3])の合計含量が0.01〜1重量%で、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあるものである。
【0020】
R−NCO [1]
R−NHCO−NH−R [2]
R−N(CO−NH−R) [3]
([1]〜[3]式中、Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、一分子内に複数のRを有する場合はそれらRは同一でも異なっていてもよい。)
【0021】
本発明で使用する脂肪族イソシアネート[1]の脂肪族基(鎖状炭化水素基)としては特に限定されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが用いられ、好ましくはアルキル基が挙げられる。脂肪族基としては、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状の方が好ましい。脂肪族基の炭素数は、得られるウレタン化反応生成物の離型性能の確保のために8以上であることが必要であるが、上限は特に限定されない。好ましくは脂肪族イソシアネート[1]の脂肪族基の炭素数は通常ウレタン化反応の反応性を高める点から30以下、より好ましくは20以下である。
【0022】
ウレタン化反応に供する脂肪族イソシアネート[1]としては1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
脂肪族イソシアネート[1]を具体的に例示すると、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート等のモノアルキルイソシアネートが挙げられるが、好ましくはオクタデシルイソシアネート(ステアリルイソシアネート)が挙げられる。
【0024】
一般にオクタデシルイソシアネートとしては、アルキル基の炭素数が18のオクタデシルイソシアネートを主成分とし、アルキル基の炭素の数が12、炭素数14、炭素数16、炭素数17、炭素数20の各モノアルキルイソシアネートを含有する混合物として市販されており、その含有割合として、アルキル基の炭素数が16のイソシアネートが1〜10重量%、アルキル基の炭素数が17のイソシアネートが0.5〜4重量%、アルキル基の炭素数が18のイソシアネートが80〜98重量%のものがあるが、好ましくは、アルキル基の炭素数が16のイソシアネートが8〜9重量%、アルキル基の炭素数が17のイソシアネートが3〜4重量%、アルキル基の炭素数が18のイソシアネートが85〜87重量%のものであり、このような混合物の市販品としては、保土谷化学工業社製、商品名:ミリオネートOが挙げられる。
【0025】
本発明で使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体の構造は特に限定されないが、好ましくはビニルアルコール構造単位の含有量が40〜80モル%であり、より好ましくは40〜70モル%のものである。エチレン−ビニルアルコール共重合体のビニルアルコール構造単位の含有量が40モル%未満の場合は、これを用いて得られたウレタン化反応生成物は離型剤としての用途において、十分な離型性能を発現しない可能性があり、80モル%を超えるとこれを用いて得られたウレタン化反応生成物を離型剤として用いる場合、他の樹脂との相溶性が悪く、結果として良好な離型性能を示さなくなる可能性がある。
【0026】
本発明に好適なエチレン−ビニルアルコール共重合体の市販品としては、株式会社クラレ製の商品名エバール:グレードE−171B、E−151B、E−105B等や、日本合成化学工業株式会社製の商品名ソアノール:グレードAT4403、AT4406、A4412等が挙げられる。
【0027】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、重合度やビニルアルコール構造単位の含有量の異なるものを2種以上混合して用いても良い。
【0028】
ウレタン化反応に供するエチレン−ビニルアルコール共重合体の粒径は特に限定されないが、10メッシュより大きさが細かい、即ち粒径10メッシュ以下の粒子状のものが好ましく、20メッシュより細かい、即ち粒径20メッシュ以下の粒子状のものが更に好ましい。
ここで、粒径が10メッシュ以下の粒子とは、目の粗さが10メッシュの篩いで分級したとき、篩いを通過した粒子を指し、同様に、粒径が20メッシュ以下の粒子とは、目の粗さが20メッシュの篩いで分級したとき、篩いを通過した粒子を言う。
エチレン−ビニルアルコール共重合体粒子の大きさを10メッシュより細かくすることで、脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体との反応率を向上させる効果が期待でき、生産性が向上して経済的に有利となる。また、この場合には、ウレタン化反応で不純物[2],[3]が生成しにくくなる効果が期待できる。
【0029】
また、ウレタン化反応に供するエチレン−ビニルアルコール共重合体は、水分含量が3000重量ppm(以下、単に「ppm」と記す。)以下の低含水率のものであることが好ましい。
【0030】
エチレンービニルアルコール共重合体の揮発分は通常1800ppm前後である。
【0031】
本発明に係るウレタン化反応においては、脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体とをNCO/OH比0.5〜1.0の割合で反応させる。この反応NCO/OH比が0.5当量未満であると、製造が困難であるだけでなく、目的ウレタン化合物の収率が低下して経済的に不利であり、1.0当量を超えると未反応の脂肪族イソシアネート[1]が水と反応して不純物[2]及び不純物[3]が生成し易くなったり、耐熱性のより低いアロファネート化合物も生成し易くなる。
【0032】
上記NCO/OH比で脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体とを反応させて得られる本発明のウレタン化反応生成物において、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量は0.01〜1重量%である。この合計含量が1重量%を超える場合は、このウレタン化反応生成物の離型剤としての用途において、前述の如く、不純物の移行による粘着層の粘着性能の低下の可能性がある。ウレタン化反応生成物中の不純物[2]及び不純物[3]の合計含量は少ないほど良く、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下である。ただし、この合計含量を0.01重量%未満とすることは実質的に困難であるため、その下限は0.01重量%である。
【0033】
なお、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量とは、試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法から得られる分子量分布図において、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)以下の成分のピーク面積の割合を百分率で表した値で表される。
【0034】
また、本発明のウレタン化反応生成物は、成形加工性向上の観点から、通常の成形加工温度より高い熱安定性を有することが好ましい。即ち、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満であることが好ましく、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあることが好ましい。より好ましくは、5%重量減少温度は280℃以上330℃未満の領域にある。2%重量減少温度が260℃より低く、また、5%重量減少温度が275℃より低い場合は、成形加工時にウレタン化反応生成物のウレタン結合等が熱分解して生じた低分子量の不純物によって、発煙や発泡、金属ロール汚染等の問題を引き起こすことがあり、さらには、このウレタン化反応生成物の離型剤としての用途において、前述の如く、粘着層の粘着性能の低下の可能性がある。
【0035】
なお、2%又は5%重量減少温度は、熱重量分析装置を用いて、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下(100ml/分)で試料を室温〜700℃まで昇温した際に、試料の重量が2%、または5%減少する温度をいう。
【0036】
また、本発明のウレタン化反応生成物は、好ましくは重量平均分子量が1万〜100万である。重量平均分子量が1万未満の場合は、離型剤としての用途において、粘着面に移行して粘着性能を低下させる可能性があり、100万を超える場合は、他の樹脂に分散しにくいために、良好な離型性能を発現できない可能性がある。
また、好ましくはウレタン化反応生成物中に占めるイソシアネート付加量が20〜50モル%である。イソシアネート付加量が20モル%未満であると、このウレタン化反応生成物の離型剤としての用途において、十分な離型性能を発現しない可能性がある。イソシアネート付加量は30モル%以上であることがより好ましい。また、ウレタン結合は耐熱性が低いことから、イソシアネート付加量が50モル%を超える場合は、成形加工時に熱分解して生じる低分子量の不純物量が増加する可能性がある。
【0037】
なお、上記イソシアネート付加量は13C−NMRによる一次構造解析から特定することができる。
【0038】
次に、このような本発明のウレタン化反応生成物の製造方法について説明する。
【0039】
脂肪族イソシアネート[1]とエチレン−ビニルアルコール共重合体とをNCO/OH比0.5〜1.0で反応させて得られる、目的ウレタン化合物を主成分とし、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量が0.01〜1重量%、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下であり、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にある本発明のウレタン化反応生成物を製造する方法については、本発明のウレタン化反応生成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、例えば、本発明の方法に従って、エチレン−ビニルアルコール共重合体に対して脱水操作を行って、該脱水操作後のエチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネート[1]とを、NCO/OH比0.5〜1.0で、実質的に触媒を使用することなくウレタン化反応させて反応生成物を得、この該反応生成物を非極性有機溶媒の溶液の状態で、0〜40℃で濾過し、得られた濾液から該溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0040】
以下、この方法について説明する。
まず、エチレン−ビニルアルコール共重合体に脱水操作を行った後、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネート[1]とを所定のNCO/OH比で触媒の非存在下にウレタン化反応を行う。
【0041】
ここで、触媒を使用しない理由は、触媒を用いると、ウレタン化反応生成物中に残留した触媒が、ウレタン結合の分解反応を促進する可能性があることによる。
【0042】
エチレン−ビニルアルコール共重合体の水分を除く方法としては特に限定されず、乾燥機等により水分を除く方法も挙げられるが、水分を除く方法として、共沸脱水の方法を用いるのが工業的に好ましい。共沸脱水の操作としては、還流を行いながら還流装置の途中で水分を分離除去する方法等も含まれる。共沸脱水に使用する溶媒は水と共沸する溶媒であれば特に限定されず、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の1種又は2種以上が挙げられるが、好ましくはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等の非極性有機溶媒であり、このような非極性有機溶媒であれば、これをそのままウレタン化反応における溶媒として用いることができる。なかでも好ましくは、トルエン又はキシレンである。
【0043】
エチレン−ビニルアルコール共重合体をトルエン等の非極性有機溶媒に分散させて共沸脱水することにより水分含量を低減した後は、温度を下げてから、必要によりジメチルスルホキシド等の水溶性の溶媒を添加し、所定量のオクタデシルイソシアネート等の脂肪族イソシアネート[1]を滴下してウレタン化反応させる。
【0044】
このウレタン化反応の反応条件は、通常のウレタン化反応条件でよく、例えば反応温度は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、通常150℃以下、好ましくは140℃以下で、反応時間は通常2時間以上、好ましくは3時間以上で、通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が低過ぎたり、反応時間が短過ぎたりすると、ウレタン化反応が十分に進行し得ず、逆に反応温度が高過ぎたり、反応時間が長過ぎたりすると、逆反応が起こって所望の構造が得られない可能性がある。
【0045】
ウレタン化反応の完結または終点は、反応生成物中のイソシアネート化合物の残存量を赤外線分光光度計で測定することにより確認することができる。
【0046】
ウレタン化反応が終了後は、水を加え油層と水層を分離し、望ましくは油層を濾過機(フィルター)に通して濾過し、微量の不純物[2]及び不純物[3]を析出させて捕捉する。この濾過精製時の液温は0〜40℃、好ましくは30℃以下である。濾過時の温度が40℃を超えると不純物の含有量が増加する可能性があり、0℃未満では濾過性が低下する可能性がある。
【0047】
反応生成物の濾過に使用できる濾過機は特に限定はされないが、使用する溶媒がトルエン等の有機溶媒であり、濾液中に目的ウレタン化合物が含まれていることにより、溶媒に不溶な不純物[2],[3]を濾過することを目的とすることから、密閉型加圧濾過機が好ましく、葉状(リーフ)密閉型加圧濾過機が特に好ましい。密閉型の加圧濾過機として市販されているものの例としては、石川島播磨重工業社製、商品名:フンダバックフィルター又は商品名:リーフフィルターがあり、葉状密閉型加圧濾過機としては、前記、商品名リーフフィルターの他、ミウラ化学装置株式会社製の商品名:ウルトラフィルターが市販されている。濾過機としては、溶液を入れた器からフィルターを通し別の受器で溶液を受ける方式、あるいは、溶液を入れた器からフィルターを通し、再び溶液を入れてある器に戻す循環方式のどちらでも使用できる。
【0048】
このような濾過処理で得られる濾液は、目的ウレタン化合物の有機溶媒溶液である。この濾液から溶媒を除去することによりウレタン化反応生成物を得ることができるが、この方法としては、この濾液をメタノール等の貧溶媒中に導入し、析出物を濾別し、次いで乾燥させる方法が挙げられる。
【0049】
このようにして得られた本発明のウレタン化反応生成物は、これを有効成分とする離型剤、その離型剤を含有する離型層として使用することができる。離型剤の調製方法や離型層の形成方法は特に制限されない。例えば、本発明のウレタン化反応生成物を溶媒に溶解した後に基材表面に塗布し、乾燥させることによって基材上に離型層として形成することができる。また、溶融押出法により成形して成形体(フィルムまたはシート)として使用してもよく、基材への押出ラミネート成形により積層体として使用してもよい。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、「部」はすべて「重量部」を示す。
【0051】
また、以下の諸例で使用した特性評価方法は次の通りである。
(1)ウレタン化反応生成物(又は市販ウレタン系離型剤)中に含まれる不純物[2]及び不純物[3]の合計含量:GPC法で評価した。装置は東ソー社製「HLC−8020」(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流速:1.0ml/分、カラム:G−6000、G−4000、G−2500計3本、検出器:RI(装置内蔵))を使用し、得られた分子量分布図において、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)以下の成分のピーク面積の割合を百分率で表した値とした。
【0052】
(2)ウレタン化反応生成物(又は市販ウレタン系離型剤)の2%及び5%重量減少温度:熱重量分析法により評価した。装置はリガク社製「Thermo Plus TG8120」を使用し、100ml/分の窒素気流中、10℃/分の昇温速度で測定した際の、ウレタン化反応生成物の重量が2%又は5%減少する時の温度とした。
【0053】
(3)ウレタン化反応生成物の重量平均分子量:前記(1)と同様にして得られた分子量分布図において、ポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)よりも高分子量成分についての重量平均分子量である。
【0054】
(4)ウレタン化反応生成物中に占めるイソシアネート付加量:13C−NMR法により評価した。装置はバリアン社製「Unity 400」(溶媒:重トルエン、温度:40℃)を使用し、得られた13C−NMRスペクトルにおいて、−CHO−に由来する70ppm付近の信号の積分強度に対する、カルバメートカルボニル基に由来する157ppm付近の信号の積分強度の割合から、エチレン−ビニルアルコール共重合体中のビニルアルコール構造単位のカルバメート変性率を算出し、該エチレン−ビニルアルコール共重合体中のビニルアルコール構造単位の含有量との積をモル%で表した値とした。
【0055】
(実施例1)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバール E−171B」、ビニルアルコール構造単位:56モル%、揮発分:0.18%)100部をトルエン1160部に分散し、2時間還流しながら還流装置の途中で水分を分離除去した。その後、40℃まで冷却して、ジメチルスルホキシドを280部加えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対するイソシアネート基の当量比が0.6当量となるようにオクタデシルイソシアネート(保土谷化学工業社製、商品名「ミリオネートO」)269部を撹拌しながら滴下し、120℃で4時間反応させた。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外線分光光度計で定量(2260cm−1付近)し、その残存分が消失した時点をもって終点とした(図1参照、測定法:液膜法)。
【0056】
反応終了後、反応液に280部の水を加えて、反応液を分液した。トルエン層である反応液を110℃で1時間共沸脱水した後、この反応液を密閉型加圧濾過機(東洋製作所製、商品名「滅菌濾過機」)を用いて30℃で加圧濾過した。得られた濾液を3440部のメタノール中に注ぎ白色沈殿物を析出させ、これを濾別後、メタノールで洗浄し、遠心分離し乾燥粉砕して、目的ウレタン化合物を主成分とするウレタン化反応生成物350部(収率約95%)を得た。
【0057】
このウレタン化反応生成物の不純物[2]及び不純物[3]の合計含量は0.08重量%で、重量平均分子量は1.03×10、イソシアネート付加量は32モル%であり、2%及び5%重量減少温度は、各々263℃、278℃であった。
得られたウレタン化反応生成物のGPC図を図2に、熱重量分析図を図3に、13C−NMR測定チャート図を図4に示す。
【0058】
(実施例2)
実施例1で用いたエチレン−ビニルアルコール共重合体に替えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバール E−151B」、ビニルアルコール構造単位:56モル%、揮発分:0.20%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応及び精製を行って、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量が0.11%、重量平均分子量が1.42×10、イソシアネート付加量が34モル%で、2%及び5%重量減少温度が、各々265℃、282℃であるウレタン化反応生成物を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1で用いたエチレン−ビニルアルコール共重合体に替えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバール E−105B」、ビニルアルコール構造単位:56モル%、揮発分:0.18%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応及び精製を行って、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量が0.25%、重量平均分子量が1.21×10、イソシアネート付加量が34モル%で、2%及び5%重量減少温度が、各々271℃、286℃であるウレタン化反応生成物を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例2において、NCO/OH比が0.8となるように、使用するオクタデシルイソシアネートを358部としたこと以外は、実施例2と同様にして反応及び精製を行って、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量が0.33%、重量平均分子量が1.51×10、イソシアネート付加量が44モル%で、2%及び5%重量減少温度が、各々263℃、279℃であるウレタン化反応生成物を得た。
【0061】
(比較例1)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバール E−151B」、ビニルアルコール構造単位:56モル%、揮発分:0.20%)100部とジオクチル酸ジブチルスズ5部をキシレン413部に分散し、140℃まで昇温して、NCO/OH比が1.1となるようにオクタデシルイソシアネート493部を撹拌しながら滴下し、140℃で12時間反応させた。
【0062】
反応終了後、80℃まで冷却し、10μmカートリッジフィルターにより濾過後、キシレン1100部を加えて希釈して、5650部のアセトン中に注ぎ白色沈殿物を析出させ、アセトンで洗浄しつつ1〜3μmの濾布を用いたセントルで濾過した後に、60℃で真空乾燥して目的物であるウレタン化反応生成物560部を得た。
【0063】
このようにして、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量が1.76%、重量平均分子量が1.73×10、イソシアネート付加量が51モル%で、2%及び5%重量減少温度が、各々242℃、259℃であるウレタン化反応生成物を得た。
このウレタン化反応生成物のGPC図を図5に、熱重量分析図を図6に示す。
【0064】
(比較例2)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバール、E−171B」、ビニルアルコール構造単位:56モル%、揮発分:0.18%)100部をトルエン2000部に分散し、2時間還流しながら還流装置の途中で水分を分離除去し、40℃まで冷却して、ジメチルスルホキシドを300部加えて、NCO/OH比が0.4となるようにオクタデシルイソシアネート(商品名:ミリオネートO、保土谷化学工業社製)179部を撹拌しながら滴下し、120℃で4時間反応させた。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外線分光光度計で定量し、その残存分が消失した時点をもって終点とした。
【0065】
反応終了後、反応液に1000部の水を加えて、反応液を分液する際、撹拌棒にオクタデシルイソシアネートが付加しきれていないと思われるトルエン不溶物が少量存在したが、そのまま分液した。
【0066】
このトルエン層である反応液を110℃で1時間共沸脱水した後、この反応液を加圧濾過するため冷却したところ、70℃付近で溶液が増粘し、ゲル状となり、40℃での加圧濾過は困難であった。
【0067】
(比較例3)
市販のウレタン系離型剤(一方社油脂工業社製、商品名「ピーロイル 1010S」)について調べたところ、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量は3.27%であり、重量平均分子量は1.75×10、2%及び5%重量減少温度は、各々100℃以下であった。
【0068】
(比較例4)
市販のウレタン系離型剤(アシオ産業社製、商品名「アシオレジン RA−80」)について調べたところ、不純物[2]及び不純物[3]の合計含量は0.59%であり、重量平均分子量は1.33×10、2%及び5%重量減少温度は、各々254℃、268℃であった。
この離型剤のGPC図を図7に示す。
【0069】
実施例1〜4及び比較例1で得られたウレタン化反応生成物と比較例3,4の市販のウレタン系離型剤について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
〈成形加工性の評価方法〉
低密度ポリエチレン(以下、LDPE)(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LC720」)100部に対して、各ウレタン化反応生成物又はウレタン系離型剤5部を添加した離型層形成用組成物を、口径が15mmφの押出機を用いて樹脂温度260℃で溶融混練し、次いでTダイより幅150mm、肉厚50μmでフィルム状に溶融押出した。
【0071】
一方、押出ラミネートの基材繰り出し部より、予め厚さ50μmのLDPE(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LC607」)がアンカーコート層を介してラミネートされた布基材を繰り出して、上記フィルム状に溶融押出した離型層と布基材とを圧着ロールと冷却ロールに導いて圧着ラミネートした。
【0072】
上記成形加工において、離型層形成用組成物が吐出量1.5kg/時間でTダイから溶融押出される際の発煙量を目視により観察した。発煙のないものを○、Tダイの一部から筋様に発生したものを△、Tダイ全体から帯状に発生したものを×とした。
【0073】
(参考例1)
離型性能を評価するために、LDPE(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LC720」)のみを上記押出ラミネート法と同様にして成形し、LDPEフィルムを得た。このときの成形加工性の評価も行った。
【0074】
〈離型性能の評価方法〉
上記押出ラミネート加工で得られたフィルムを幅30mmに切断し、その離型層面に幅25mmの市販粘着テ―プ(日東電工社製、ニットーテ―プNo.502)の粘着面を重さ2kgのゴムロ―ラを1往復させて圧着した。室温で1時間放置後、引張速度300mm/分で180°方向に粘着テープを引き剥がすのに要する力(5個の試料の平均値)を剥離力として測定した。次いで、引き剥がした粘着テープの粘着面を、SUS板に重さ2kgのゴムロ―ラを1往復させて圧着し、室温で1時間放置後、引張速度300mm/分で180°方向に粘着テープを引き剥がすのに要する力(5個の試料の平均値)を粘着力として測定した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1より、本発明のウレタン化反応生成物は成形加工性、離型性能、当接した粘着層の粘着性能の維持性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のウレタン化反応生成物の用途には特に制限はないが、例えば、離型剤として用いた場合、十分な離型性能を有するとともに、ウレタン化反応生成物中の不純物の含有量が少なく、耐熱性が高いことにより、粘着テープを作製し長期保管した際に、これらの不純物の粘着層移行による粘着性能の低下のおそれがないなどの様々な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1で得られた反応液の赤外線分光光度計による測定チャート図である。
【図2】実施例1で得られたウレタン化反応生成物のGPC図である。
【図3】実施例1で得られたウレタン化反応生成物の熱重量分析図である。
【図4】実施例1で得られたウレタン化反応生成物の13C−NMR測定チャート図である。
【図5】比較例1で得られたウレタン化反応生成物のGPC図である。
【図6】比較例1で得られたウレタン化反応生成物の熱重量分析図である。
【図7】比較例4で評価した市販ウレタン系離型剤のGPC図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を0.5〜1.0として反応させて得られる、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとの付加化合物を主成分とするウレタン化反応生成物であって、
下記一般式[2]で表される化合物及び下記一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜1重量%で、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあることを特徴とするウレタン化反応生成物。
R−NCO [1]
R−NHCO−NH−R [2]
R−N(CO−NH−R) [3]
([1]〜[3]式中、Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、一分子内に複数のRを有する場合はそれらRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体のビニルアルコール構造単位の含有量が40〜80モル%である請求項1に記載のウレタン化反応生成物。
【請求項3】
前記ウレタン化反応生成物の重量平均分子量が1万〜100万であり、該ウレタン化反応生成物中に占めるイソシアネート付加量が20〜50モル%である請求項1又は2に記載のウレタン化反応生成物。
【請求項4】
前記脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体とを実質的に触媒を使用することなくウレタン化反応させて得られた反応生成物を、非極性有機溶媒の溶液として0〜40℃で濾過した濾液から、該溶媒を除去することにより得られる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のウレタン化反応生成物。
【請求項5】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン−ビニルアルコール共重合体に対して脱水操作を行ったものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のウレタン化反応生成物。
【請求項6】
前記濾過は密閉型加圧濾過機を用いて行われる請求項4又は5に記載のウレタン化反応生成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のウレタン化反応生成物を有効成分として含むことを特徴とする離型剤。
【請求項8】
エチレン−ビニルアルコール共重合体に対して脱水操作を行い、
該脱水操作後のエチレン−ビニルアルコール共重合体と下記一般式[1]で表される脂肪族イソシアネートとを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪族イソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を0.5〜1.0として、実質的に触媒を使用することなくウレタン化反応させて反応生成物を得、
該反応生成物を非極性有機溶媒の溶液として0〜40℃で濾過し、得られた濾液から該溶媒を除去することにより、下記一般式[2]で表される化合物及び下記一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜1重量%で、熱重量分析による2%重量減少温度が260℃以上275℃未満の領域にあり、かつ、5%重量減少温度が275℃以上330℃未満の領域にあるウレタン化反応生成物を得ることを特徴とするウレタン化反応生成物の製造方法。
R−NCO [1]
R−NHCO−NH−R [2]
R−N(CO−NH−R) [3]
([1]〜[3]式中、Rは炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、一分子内に複数のRを有する場合はそれらRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記一般式[2]で表される化合物及び前記一般式[3]で表される化合物の合計含量が0.01〜0.5重量%であるウレタン化反応生成物を得る請求項8に記載のウレタン化反応生成物の製造方法。
【請求項10】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体を非極性有機溶媒に溶解して前記脱水操作を行った後、該溶媒を引き続き前記ウレタン化反応の溶媒として用いる請求項8又は9に記載のウレタン化反応生成物の製造方法。
【請求項11】
前記濾過を密閉型加圧濾過機を用いて行う請求項8ないし10のいずれか1項に記載のウレタン化反応生成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−204639(P2007−204639A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25991(P2006−25991)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】