説明

ウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体、その製造方法、およびこれを含むネガ型感光性樹脂組成物

【課題】本発明は、ウレタン結合を含む新規なフルオレン系樹脂重合体、その製造方法、およびこれをバインダー樹脂として含むネガ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【解決手段】前記ウレタン結合を含むフルオレン系樹脂重合体の製造時、酸二無水物の代わりにジイソシアネート基を用いてジオール化合物との縮合反応を進めた後に、別に酸無水物を用いて所望の酸基を導入することから、感光性樹脂組成物内において低い分子量にもかかわらず、耐化学性および現象マージンに優れ、向上した感度を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体、その製造方法、およびこれを含むネガ型感光性樹脂組成物に関するものであり、特に、酸価と分子量が高くない新規なフルオレン系樹脂重合体を製造し、これを感光性樹脂組成物に含ませて、現像マージンおよび耐化学性に優れると共に、感度上昇効果を得ることができる感光性樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パソコンと液晶テレビに代表的に適用される液晶表示装置(LCD)等の液晶表示素子のためにはカラーフィルタが必要である。現在、カラーフィルタの製造方法としては顔料分散法が主に用いられている。
【0003】
しかしながら、その前提条件として平滑性、解像性、現像性、耐熱性、耐光性、分光特性、製造工程の簡素化、感度、さらに保存安定性にも優れた感光性樹脂組成物が要求されている。
【0004】
一般のフルオレン系樹脂は、フルオレン基を含むジオール化合物と酸二無水物との縮合重合反応によって製造されるが、通常、製造された前記フルオレン系樹脂は酸価が高く、分子量が低いという問題点があった。したがって、前記のような構造のフルオレン系樹脂をネガ型感光性樹脂組成物に用いる場合、基板との接着性には優れるが、現像工程にぜい弱であるという欠点がある。
【0005】
また、前記従来のフルオレン系樹脂重合体は、現像マージンや耐化学性を高めるために、反応性基を含有したジオール化合物と二無水物間の反応比率が1:1に近く重合を行わなければならないが、このような場合は、溶解度の良くない酸二無水物が残存して保存安定性を阻害し、しかも、酸価もそれに伴って大きくなるため、パターンが剥離され易い。逆にジオール化合物を酸二無水物により超過して重合させると、酸価は低くなるが、それにより分子量も共に減少することになり、現像マージンや耐化学性を低下させる結果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、フルオレン系樹脂が有する優れた基板接着性は維持しながら、低い分子量でも現像マージンおよび耐化学性を向上させると共に、感度改善効果があるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体、その製造方法、およびこれを含むネガ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、フルオレン系樹脂重合体の製造時に、酸二無水物の代わりにジイソシアネート基を用いて、過量のフルオレン基を含むジオール化合物と1次反応をさせてウレタン結合を導入させた後、ここに酸無水物を添加し、前記ジオール化合物から残留したアルコールと反応させ酸基を導入することにより、新規なフルオレン系樹脂重合体を製造し、これを感光性樹脂組成物に含ませたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフルオレン系樹脂重合体は、過量のフルオレン基を含むジオール化合物を用いることから、不飽和二重結合の反応性基の全体樹脂に対する比率が高くなって、感度向上の効果を得ることができ、酸価を低い状態に調節し易くなり、得られる樹脂が低い分子量であるにもかかわらず、ウレタン結合からなっているため、現像マージンおよび耐化学性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の製造実施例1で製造されたフルオレン系樹脂重合体のFT-IR microscopyの結果を示すグラフである
【図2】本発明の製造実施例2で製造されたフルオレン系樹脂重合体のFT-IR microscopyの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記のような本発明の目的を達成するためのウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体は、次の一般式1で表されることを特徴とする。
【化1】

【0011】
式中、Rはジイソシアネートから誘導された2価の炭化水素基であり、Rは酸無水物から誘導された酸成分を構成する基であり、mは0〜3であり、nは3〜8である。
【0012】
また、本発明の他の目的を達成するための前記一般式1で表されるウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体の製造方法は、過量のフルオレン基を含むジオール化合物とジイソシアネートを反応させるステップと、前記反応物に酸無水物を添加して反応させるステップとを経ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のまた他の目的を達成するためのネガ型感光性樹脂組成物は、前記一般式1で表されるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体を含むことを特徴とする。
【0014】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0015】
本発明に係るウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体は、前記一般式1と同様であり、その製造方法を以下で具体的に説明する。
【0016】
先ず、第1ステップは、次の一般式2で表されるフルオレン基を有する過量のジオール化合物と次の一般式3で表されるジイソシアネートを、非プロトン性溶媒中に公知の活性触媒下で添加し加熱してウレタン結合を生成させる。前記活性触媒は前記反応物の反応性に応じて選択される。
【化2】

【0017】
式中、mは0〜3である。
(化3)
NCO-R-NCO
【0018】
式中、Rは2価の炭化水素基であって、具体的にはエチレン、プロピレン、ブチレン、アミレン、ヘキシレンなどのような脂肪族炭化水素と、アリレンなどの芳香族炭化水素とも含む。
【0019】
前記一般式3で表されるジイソシアネートの具体的な例としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、w,w'-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、w,w'-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、w,w'-ジイソシアネート-1,3-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビスイソシアネートメチルシクロヘキサン、2,5-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,2]ヘプタン、および2,6-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタンからなる群より選択されるものがあるが、これに限定されない。
【0020】
従来はフルオレン系重合体の製造時にジオール化合物と酸二無水物を反応させたが、本発明では酸二無水物の代わりにジイソシアネートを用いて反応させてウレタン結合を生成させた後、残留ジオールと酸無水物を反応させる。本発明に係る前記ジオール化合物とジイソシアネートの反応当量比は1.1:1〜3:1であって、ジイソシアネートと反応するジオール化合物を過量用いることにその特徴がある。この場合、前記ジオール化合物の反応性基の不飽和二重結合の全体樹脂に対する比率が高くなり、感度向上の効果を得ることができる。また、過量添加されたジオール化合物がジイソシアネートと反応した後、残留のジオールは後で添加される酸無水物と反応する。
【0021】
本発明では、前記一般式2で表されるジオール化合物以外にも、次の一般式4で表されるジオール化合物をさらに含むことができる。
【化4】

【0022】
式中、Rは水素またはメチル基であり、Xは、C〜C10のアルキレン、-(CHCHO)nCHCH-(ここで、nは1〜10の整数)、-(CHCHCH)nOCHCHCH-(ここで、nは1〜10の整数)、
【化5】

(ここで、Zは、直接結合またはC〜Cのアルキレン、ケトン、-O-、-S-、-SO-、ヘキサフルオロプロピレン、-OCO-、および-OCC(CH3)O-からなる群より選択されるいずれか一つである。)、9,9-ビスフェノールフルオレニル、9,9-ビス(4'-エトキシフェニル)フルオレニルからなる群より選択されるものである。
【0023】
本発明のフルオレン系樹脂重合体を製造する第2ステップの反応は、さらに酸無水物を添加して、前記第1ステップの反応において使用された過量のフルオレン基を含むジオール化合物から残留されたアルコールと反応させて酸基を導入させるステップである。
【0024】
すなわち、本発明では、第1ステップで酸無水物を添加しなく、ウレタン結合が形成されて残ったアルコールと反応するように、第2ステップの反応時に添加して酸基を導入するため、酸価を低い状態に調節し易いという利点がある。また、最終的に得られるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体が低い分子量を有するにもかかわらず、ウレタン結合を含んでいるため現像マージンおよび耐化学性を向上させることができる。
【0025】
本発明で用いられる酸無水物は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびシス-5-ノルボルネン-(エンド、エキソ)-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群より選択されるものであり、これに限定されない。
【0026】
前記のような本発明の全体反応式の一例は次の反応式1の通りである。
【化6】

【0027】
前記のような方法により製造された本発明の一般式1で表されるフルオレン系樹脂重合体は、酸価が60〜120KOHmg/gであり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜6,000の値を有する。
【0028】
前記酸価は、一定量のフルオレン系樹脂重合体を特定溶媒に溶解させた後、水酸化カリウム水溶液で滴定させて、その中和量から測定される。
【0029】
一方、本発明は、前記一般式1で表されるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体を含む感光性樹脂組成物にもその特徴がある。
【0030】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂として1)前記ウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体を用い、ここに2)溶媒、3)多官能性架橋剤、4)光開始剤、および5)着色顔料などを含み、必要に応じてその他成分をさらに含むことができる。
【0031】
本発明のバインダー樹脂の前記1)ウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体は、全感光性樹脂組成物に対して1〜30重量%で含まれることが工程性の面で望ましい。
【0032】
また、本発明の感光性樹脂組成物に用いられるバインダー樹脂として前記ウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体以外にも、ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などのその他樹脂をさらに含むこともできる。
【0033】
また、本発明の2)溶媒としては特に制限されなく、目的により適宜選択できる。具体的な例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、およびn-ヘキサノールからなる群より選択される1種以上のアルコール類と、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンからなる群より選択されるケトン類と、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-n-アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸メチル、安息香酸エチル、およびメトキシプロピルアセテートからなる群より選択されるエステル類と、トルエン、キシレン、ベンゼン、およびエチルベンゼンからなる群より選択される芳香族炭化水素類と、四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレン、およびモノクロロベンゼンからなる群より選択されるハロゲン化炭化水素類と、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、および1-メトキシ2-プロパノールからなる群より選択されるエーテル類と、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびスルホランの中から選択されるものを単独で、もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
前記溶媒は、感光性組成物を溶解、乳化または分散させる役割をする。その含有量は全感光性樹脂組成物に対して30〜90重量%で含まれることが望ましい。
【0035】
3)多官能性架橋剤としては特に制限されなく、目的により適宜選択して用いることができ、前記感光性組成物を用いて形成される感光層の硬化後の膜の強度を改良させるために現像性などに影響を与えない範囲内で用いる。このような多官能性架橋剤の例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
また、カプロラクトンを導入した多官能性架橋剤としては、ジペンタエリスリトールに導入したKAYARAD DPCA-20、30、60、120等とFA-2D、FA1DT、FA-3等があり、テトラ36-18ヒドロフリルアクリレートに導入したKAYARAD TC-110S、またはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートに導入したKAYARAD HX-220、KAYARAD HK-620等がある。その他の使用可能な多官能性架橋剤としてはビスフェノールA誘導体のエポキシアクリレート、ノボラック-エポキシアクリレート、ウレタン系の多官能性アクリレートがあり、ウレタン系の多官能性アクリレートとしてはU-324A、U15HA、U-4HAの中から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0037】
前記多官能性架橋剤の含有量は、全感光性樹脂組成物に対して1〜30重量%で含まれることが望ましい。
【0038】
また、本発明の4)光開始剤としては、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシフェニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシスチリル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(3',4'-ジメトキシフェニル)-6-トリアジン、および3-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}プロパン酸からなる群より選択されるトリアジン化合物と、
2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、および2,2'-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾールからなる群より選択されるビイミダゾール化合物と、
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ)プロピルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノ-1-プロパン-1-オン(Irgacure-907)、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン(Irgacure-369)からなる群より選択されるアセトフェノン系化合物と、
Ciba geigy社のIrgacure OXE 01、CGI-242のようなO-アシルオキシム系化合物、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群より選択されるベンゾフェノン系化合物と、
2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、イソプロピル チオキサントン、およびジイソプロピルチオキサントンからなる群より選択されるチオキサントン系化合物と、
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、およびビス(2,6-ジクロロベンゾイル)プロピルホスフィンオキシドからなる群より選択されるホスフィンオキシド系化合物と、
3,3'-カルボニルビニル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシ-クマリン、10,10'-カルボニルビス[1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-Cl]-ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノリジン-11-オンからなる群より選択されるクマリン系化合物との中から選択される1種以上の化合物がであり、その含有量は通常水準であれば良い。
【0039】
また、5)着色顔料としては、所望のマトリックスの色により適宜選択して用いることができ、特にブラックマトリックスではカーボンブラックを着色顔料として使用するが、その含有量と種類はこれに限定されない。
【0040】
上述した組成以外にも、本発明で目的とする感光性組成物の物性を低下させない範疇内で界面活性剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤などのようなその他の成分を併用して用いることができ、これらの具体的な例は通常使用するものであればさほど限定されない。
【0041】
前記のような組成を有する感光性樹脂組成物を用いた感光層は、前記組成物をスピンコーティング、スリットスピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティングなどの通常の方法により塗布し、露光および現像工程を経て形成させる。露光および現像工程も通常の感光性樹脂組成物を利用した感光層の形成時に用いられる方法が採用され、特に限定されない。
【0042】
前記露光工程時に用いられる光源としては、電磁波、可視光、電子線、X-線、レーザ光などがあり、特に限定されない。また、前記光照射手段による光照射方法としては、例えば、高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ハロゲンランプ、コピー機用冷陰極管、LED、半導体レーザなどの公知の光源による照射方法が挙げられる。
【0043】
現像工程は、前記の露光された感光層を硬化させた後、未硬化領域を除去することから永久パターンを形成する工程である。
【0044】
前記現像液としては、特に制限されなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物あるいは炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水、4級アンモニウム塩の水溶液などが望ましい。その中でも炭酸ナトリウム水溶液が特に望ましい。
【0045】
前記現像液は、界面活性剤、消泡剤、有機塩基(例えば、ベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、モルホリン、トリエタノールアミンなど)や、現像を促進させるために有機溶剤(例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ラクトン類など)等と併用しても良い。また、前記現像液は、水またはアルカリ水溶液と有機溶剤を混合した水系現像液であっても良く、有機溶剤を単独で用いても良い。
【0046】
本発明の感光層の厚さは目的に応じて異なるが、1〜5μmが望ましい。
【0047】
(実施の形態)
本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
製造実施例1:ウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体の合成
500mlの3口フラスコにフルオレン基を含むジオール化合物のビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート(Bisphenol fluorene epoxy acrylate:BPFE)84.52g(0.1393モル)とイソホロンジイソシアネート15.48g(0.0696モル)を添加して溶媒214.36mlに溶解させた後、溶媒の還流下で10時間撹はんし反応させてウレタン結合を生成させた。その後、テトラヒドロフタル酸無水物27.55g(0.1811モル)を添加し、追加に5時間反応させて酸基を含むフルオレン系樹脂重合体341.91gを得た。
【0049】
前記ウレタン結合を含むフルオレン系樹脂の酸価は80mgKOH/gであった。GPCにて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は3,500g/molであった。
【0050】
前記ウレタン結合を含むフルオレン系樹脂の合成結果は、FT-IR spectroscopyを測定して2,250cm−1付近のイソシアネート基が全て消耗したことを確認した(図1参照)。
【0051】
製造実施例2:ウレタン結合を有するフルオレン系樹脂重合体の合成
酸無水物としてコハク酸無水物18.12g(0.1811モル)を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でフルオレン系樹脂重合体を合成した。
【0052】
前記ウレタン結合を含むフルオレン系樹脂の酸価は83mgKOH/gであった。GPCにて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は3,300g/molであった。
【0053】
前記ウレタン結合を含むフルオレン系樹脂の合成結果は、FT-IR spectroscopyを測定して2,250cm−1付近のイソシアネート基が全て消耗したことを確認した(図2参照)。
【0054】
製造比較例1
500mlの3口フラスコにジオール化合物のビスフェノールフルオレン エポキシアクリレート(Bisphenol fluorene epoxy acrylate:BPFE)154.92g(0.2554モル)とジフェニル酸二無水物45.08g(0.1532モル)を添加して溶媒45.64mlに溶解させた後、溶媒の還流下で10時間撹はんし反応させてフルオレン系樹脂重合体245.64gを得た。
【0055】
前記フルオレン系樹脂重合体の酸価は105mgKOH/gであった。GPCにて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は4,000g/molであった。
【0056】
実施例1
前記製造実施例1により得られたフルオレン系樹脂重合体20g、多官能性架橋剤のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)10g、着色顔料のカーボンブラック50g、光開始剤3.0g、界面活性剤1gを溶媒PGMEA50gに溶解させて感光性樹脂組成物を製造した。
【0057】
前記組成物をガラス基板にスピンコーティング法により乾燥させた後の膜厚が1.0μmとなるように塗布し、80℃のオーブンで30分間乾燥させて感光層を形成した。その後、波長405nmのレーザ光を用いて所望の配線パターンが得られるように照射および露光させた後、1重量%の炭酸ソーダ水溶液を用いて60秒間スプレー現像(スプレー圧:2.0kgf/cm)を行い未露光部分を除去した。
【0058】
実施例2
前記製造実施例2により得られたフルオレン系樹脂重合体40g、多官能性架橋剤のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)15g、着色顔料のカーボンブラック50g、光開始剤4.0g、界面活性剤1gを溶媒PGMEA50gに溶解させて感光性樹脂組成物を製造した。これを用いて前記実施例1と同様の過程を経て感光層を形成した。
【0059】
比較例1
前記製造比較例1により得られたフルオレン系樹脂重合体を用いることを除いては、前記実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物を製造した。これを用いて前記実施例1と同様の過程を経て感光層を形成した。
【0060】
前記実施例および比較例により得られた感光性樹脂組成物が有する現像性、耐化学性、および感光層の感度改善効果を次のように測定し、その結果を表1に示す。
【0061】
− 現像マージン:現像時に所望のパターンが形成された以後からパターンが剥離される前までのパターンの原形保存時間を意味し、次のように評価した。
○:パターンの原形保存時間が長い。
△:パターンの原形保存時間が短い。
×:パターンが形成されて直ぐパターンの剥離が発生する。
【0062】
− 耐化学性:前記得られた各基板をNMP溶液中に40℃で10分間漬けた後、コーティング膜の外観の変化を目視で観察して耐化学性を評価した。この際、外観の変化がないものを良好(○)、若干の状態変化が感知されるものを中間(△)、外観が剥離されたり溶剤の色が変質したものを不良(X)で表した。
【0063】
− 感度:Line & space maskを用いて露光を行った時、現像後に残っている最小ピクセルの大きさ(露光量100mJ、現像時間60秒)を測定した。
【表1】

【0064】
前記表1の結果から確認できるように、本発明により合成されたウレタン結合を有する新規なフルオレン系樹脂重合体を感光性樹脂組成物のバインダー樹脂として使用した時、現像性に優れ、耐化学性が向上すると共に、感度改善効果にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式1で表されるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体。
【化1】

式中、Rはジイソシアネートから誘導された2価の炭化水素基であり、Rは酸無水物から誘導された酸成分を構成する基であり、mは0〜3であり、nは3〜8である。
【請求項2】
前記重合体の酸価は60〜120KOHmg/gであることを特徴とする請求項1に記載のウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体。
【請求項3】
前記重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜6,000であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体。
【請求項4】
フルオレン基を含むジオール化合物とジイソシアネートを反応させるステップと、
前記反応物に酸無水物を添加して反応させるステップと、を含む請求項1に記載の一般式1で表されるウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体の製造方法。
【請求項5】
前記フルオレン基を含むジオール化合物とジイソシアネートの反応当量比は1.1:1〜3:1であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記フルオレン基を含むジオール化合物は次の一般式2で表されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【化2】

式中、mは0〜3である。
【請求項7】
前記ジイソシアネートは次の一般式3で表されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
(化3)
NCO-R-NCO
式中、Rは2価の炭化水素基である。
【請求項8】
前記ジイソシアネートは、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、w,w'-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、w,w'-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、w,w'-ジイソシアネート-1,3-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビスイソシアネートメチルシクロヘキサン、2,5-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,2]ヘプタン、および2,6-イソシアネートメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタンからなる群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フルオレン基を含むジオール化合物は次の一般式4で表されるジオール化合物をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【化4】

式中、Rは水素またはメチル基であり、Xは、C〜C10のアルキレン、-(CHCHO)nCHCH-(ここで、nは1〜10の整数)、-(CHCHCH)nOCHCHCH-(ここで、nは1〜10の整数)、
【化5】

(ここで、Zは、直接結合またはC〜Cのアルキレン、ケトン、-O-、-S-、-SO-、ヘキサフルオロプロピレン、-OCO-、および-OCC(CH)O-からなる群より選択されるいずれか一つである。)、9,9-ビスフェノールフルオレニル、9,9-ビス(4'-エトキシフェニル)フルオレニルからなる群より選択されるものである。
【請求項10】
前記酸無水物は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびシス-5-ノルボルネン-(エンド、エキソ)-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸無水物は、前記フルオレン基を含むジオール化合物の残存アルコールと反応することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載のウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体を含むネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記ウレタン基を含むフルオレン系樹脂重合体は、全感光性樹脂組成物に対して1〜30重量%で含まれることを特徴とする請求項12に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒、多官能性架橋剤、光開始剤、および着色顔料をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のうちいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物により形成されたブラックマトリックス。
【請求項16】
請求項15に記載のブラックマトリックスを含むカラーフィルタ。
【請求項17】
請求項16に記載のカラーフィルタを含む液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523756(P2010−523756A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502041(P2010−502041)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005707
【国際公開番号】WO2009/048231
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】