説明

ウレタン樹脂の製造方法および粘着剤

【課題】 低粘度で、強粘着領域から微粘着領域の広範囲に渡る粘着剤に使用できるウレタン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法であって、鎖延長剤が、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群から選ばれる基であり、残りの官能基がカルボキシル基から選ばれる基であることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤の原料になるウレタン樹脂を製造するウレタン樹脂の製造方法に関する。さらには、粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、テープ、ラベル、シール、化粧用シート、滑り止めシート、両面粘着テープ等には粘着剤が使用されており、その粘着剤としてはアクリル系粘着剤が広く使用されている。特に最近はより強い粘着力を有する強粘着型粘着剤から自動車や電子材料における保護フィルム等の剥離力の弱い微粘着型粘着剤まで広範囲の用途にアクリル系粘着剤が使用される傾向がある。しかし、アクリル系粘着剤の塗工物は、粘着力に優れているが、被着体に貼付した後、経時変化によって粘着力が上昇したり、移行性が高くなり被着体に糊残りが発生しやすくなることから、再剥離性が不充分であった。また、アクリル系粘着剤を微粘着型粘着剤として使用した場合には、保持力が不足したり、硬化剤の量の違いにより粘着力がばらつきやすくなる問題があった。さらには、アクリルモノマーが粘着剤中に残存する場合には、臭気や皮膚刺激性が問題となる。
また、粘着剤として、ゴム系粘着剤を用いることがあるが、ゴム系粘着剤においては、取り扱い性や粘着性能の調整のため低分子量可塑剤の添加が不可欠である。ところが、長期間経過すると、この低分子量可塑剤が表面に移行して、著しい性能低下を起こす問題があった。
【0003】
また、ウレタン樹脂系粘着剤も知られている。ウレタン樹脂系粘着剤では、一般に、粘着性を高くすると樹脂の強度が低下し、糊残りが発生しやすくなって、再剥離性が不充分になり、樹脂の強度を高くすると、粘着性が低くなる問題があった。粘着性能と再剥離性を両立させる方法として、たとえば、特許文献1〜3には、3官能のポリオールを含むポリオールを原料として用いることにより、樹脂の強度を向上させることが記載されている。また、特許文献4〜6には、3官能以上の架橋剤を用いることにより、樹脂の強度を向上させることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−221570号公報
【特許文献2】特開2000−256630号公報
【特許文献3】特開2000−256638号公報
【特許文献4】特開2001−253819号公報
【特許文献5】特開2002−38119号公報
【特許文献6】特開2002−53828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載の発明は、3官能のポリエーテルポリオールを含むポリエーテルポリオールと当量未満のポリイソシアネートとから得た水酸基末端プレポリマーを架橋したものを粘着剤とするものである。しかし、この粘着剤では、糊残り性の改善は見られるものの、粘着性能が低くなる傾向にあった。
また、特許文献4〜6に記載の発明は、イソシアネート基末端プレポリマーを特定の3官能以上の架橋剤を用いて架橋することにより、樹脂の強度を高めようとするものであるが、反応性が高いため、反応制御が困難であった。すなわち、鎖延長剤の量を減らすと、得られるウレタン樹脂の凝集力が低下して再剥離性が不足し、鎖延長剤の量を増やすと、ウレタン樹脂が高粘度化してしまい、塗工が困難になる問題があった。
さらに、特許文献4〜6に記載の鎖延長剤は、不飽和二重結合を有する化合物としてアクリル系モノマーを使用する。したがって、アクリル系粘着剤と同様の問題を有する上に、鎖延長剤を別途製造する必要があるため、得られる粘着剤のコストが高かった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、低粘度で、強粘着領域から微粘着領域の広範囲に渡る粘着剤に使用できるウレタン樹脂の製造方法を提供するものである。当該ウレタン樹脂を用いた粘着剤は、強粘着領域から微粘着領域の広範囲に渡って再剥離性に優れる。しかも低コストである。さらには、アクリル系化合物を含まず、低コストで、しかも皮膚刺激性、粘着力の温度依存性が低く、作業性に優れた粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法であって、鎖延長剤が、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群から選ばれる基であり、残りの官能基がカルボキシル基から選ばれる基であることを特徴とする
本発明のウレタン樹脂の製造方法においては、ポリオールが、平均水酸基数が2以上であり水酸基価が5.6〜600mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオールであることが好ましい。
また、本発明のウレタン樹脂の製造方法においては、鎖延長剤が、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが1級水酸基であり、残りの官能基がカルボキシル基であることを特徴とする。また、本発明のウレタン樹脂の製造方法においては、鎖延長剤が、ジメチロールカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明は、上述した製造方法で得られたウレタン樹脂からなる粘着剤、である。
本発明の粘着剤においては、上述した製造方法で得られたウレタン樹脂とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂からなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のウレタン樹脂の製造方法は、低粘度であり、強粘着領域から微粘着領域までの広範囲の領域に渡る粘着剤に使用できるウレタン樹脂を得ることができる。また、当該ウレタン樹脂を用いた粘着剤は、強粘着領域から微粘着領域までの広範囲の領域に渡って再剥離性に優れ、しかも低コストである。このウレタン樹脂を用いれば、アクリル系化合物を含まない粘着剤を得ることができる。
本発明の粘着剤は、再剥離性に優れ、低コストで、しかも被着体への移行性、皮膚刺激性、粘着力の温度依存性が低く、低分子量化合物の移行が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(ウレタン樹脂の製造方法)
本発明のウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを製造し(プレポリマー生成反応)、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ(鎖延長反応)、さらに末端停止剤を反応させ、末端を失活させて(停止反応)、ウレタン樹脂を製造する方法である。この方法により得られるウレタン樹脂は、ウレタン樹脂系粘着剤の原料になるものである。
【0008】
[ポリオール]
ポリオールとしては、たとえば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0009】
ポリオキシアルキレンポリオールは、開環重合触媒および多価開始剤の存在下、アルキレンオキシドを開環付加させて製造できる。
アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキシドが好ましく、具体例としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせが特に好ましい。
【0010】
開環重合触媒としては、たとえば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム等の汎用アルカリ金属化合物触媒;水酸化セシウム等のセシウム金属化合物触媒;亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体などの複合金属シアン化物錯体触媒;フォスファゼン触媒などが挙げられる。
多価開始剤としては、アルキレンオキシドが反応しうる活性水素原子を2個以上有する化合物であり、たとえば、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミンなどが挙げられる。その価数としては2〜6価が好ましく、2〜3価がより好ましく、2価が最も好ましい。2価の開始剤としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAまたはこれらに少量のアルキレンオキシドが付加された比較的低分子量のポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合には、多価開始剤として水酸基当たりの分子量が200〜500のポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0011】
ポリオキシアルキレンポリオールは、平均水酸基数が2以上であり、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましく、2が最も好ましい。なお、ポリオキシアルキレンポリオールの1分子あたりの水酸基数は製造するのに用いた多価開始剤の活性水素原子数と一致する。
また、水酸基価が5.6〜600mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が5.6mgKOH/g未満では分子量が大きいため、ポリイソシアネート化合物と反応しにくくなり、また得られたプレポリマーが鎖延長剤と反応しにくくなる傾向にある。一方、600mgKOH/gを超えると得られるプレポリマー中のイソシアネート化合物の比率が相対的に高くなり、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖延長剤と反応させる際にゲル化しやすくなる。
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は最終的に得ようとする粘着剤の粘着力の大きさによって、適宜上記の範囲の中から選択できる。粘着力が1N/25mmを超える低粘着領域以上の粘着力であって、50N/25mm以下の強粘着領域以下の粘着力を有する粘着剤を得ようとする場合には、水酸基価が5.6〜112mgKOH/gが好ましく、11〜112mgKOH/gがより好ましく、18〜75mgKOH/gが最も好ましい。
粘着力が1N/25mm以下の微粘着領域の粘着力を有する粘着剤を得ようとする場合においては水酸基価が112mgKOH/gを超えることが好ましく、113〜600mgKOH/gがより好ましく、130〜300mgKOH/gが最も好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においては平均の水酸基価が上記の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
ポリオキシアルキレンポリオールは、不飽和度が0.3meq/g以下が好ましく、0.05meq/g以下であることがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの不飽和度が0.3meq/g以下であれば、得られる粘着剤からの移行成分が少なくなる。
このような不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを製造するためには、開環重合触媒として、セシウム金属化合物触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、フォスファゼン触媒などを用いることが好ましく、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが最も好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においても平均の不飽和度、水酸基価は上記の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
ポリエステルポリオールとしては、公知のポリエステルポリオールを用いることができ、たとえば、低分子量ジオール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。低分子量ジオールとして、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAが挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を低分子量ジオールと併用してもよい。また、二塩基酸成分としては、たとえば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸が挙げられる。また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物を開環重合したポリエステルポリオール等も使用できる。
【0014】
ポリエステルポリオールは、水酸基価が20〜600mgKOH/gであることが好ましく、30〜300mgKOH/gであることがより好ましい。
ポリエステルポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においては平均の水酸基価が上記の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
ポリオールとして、ポリオキシアルキレンポリオールとポリエステルポリオールとを併用する場合、それらは反応性が異なり、ゲル化や反応溶液の濁りが生じやすいため、一方を両者の合計100質量%に対して10質量%以下にすることが好ましく、5質量%以下にすることがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールとポリエステルポリオールとは併用しないことが好ましい。なお、反応溶液に濁りが生ずると無色透明な樹脂が得られなくなる。
【0016】
[ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物としては、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等を用いることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、たとえば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと記載する)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと記載する)、2,6−トリレンジイソシアネート(以下2,6−TDIと記載する)、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
脂環族ポリイソシアネートとしては、たとえば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、上述したポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
上述したポリイソシアネートの中でも、HDI、IPDI、MDI、2,4−TDI、2,6−TDIおよびそれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましい。耐候性を重視する場合はHDI、IPDIおよびそれらの変性体から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0018】
[プレポリマー生成反応]
プレポリマー生成反応は特に制限されず、たとえば、ポリオールとポリイソシアネート化合物と必要に応じてウレタン化触媒と溶剤とを反応器に仕込んで行う方法などが挙げられる。
ポリオールとポリイソシアネート化合物の配合比は、末端にイソシアネート基が残るようにするために、インデックス(NCOのモル数/OHのモル数×100)が110〜300となるように反応させることが好ましく、130〜250となるように反応させることがより好ましい。インデックスが110未満ではゲル化して増粘しやすくなる傾向にあり、300を超えるとプレポリマー中の未反応イソシアネート化合物濃度が高くなり過ぎて次の鎖延長反応が困難になる傾向にある。
また、使用する化合物の反応性や、鎖延長剤の配合量によって異なるが、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)は0.5〜12質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。NCO%が0.5質量%未満では充分な量の鎖延長剤を反応させることができず、12質量%を超えると鎖延長反応の制御が難しくなる傾向にある。
【0019】
プレポリマー生成反応において使用されるウレタン化触媒としては、たとえば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等の公知のものが挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物が挙げられる。錫系化合物としては、たとえば、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロミド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫スルフィド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロリド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、たとえば、ジブチルチタニウムジクロリド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロリドなどのチタン系化合物、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系化合物、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系化合物、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系化合物、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系化合物、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上述したウレタン化触媒の中でも、DBTDL、2−エチルヘキサン酸錫等が好ましい。また、上述したウレタン化触媒は単独で用いてもよいし併用してもよい。
【0020】
また、溶剤としては、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノンなど挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
反応温度は120℃以下が好ましく、70〜100℃がより好ましい。反応温度が120℃を超えると、アロハネート反応が進行して所定の分子量と構造を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成することが困難になる上に、反応速度の制御が困難になる。反応温度が70〜100℃の場合には、反応時間は2〜20時間であることが好ましい。
【0022】
[鎖延長剤]
鎖延長剤は、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群から選ばれる基であり(これらは反応性の高い官能基で以下官能基aとする)であり、残りの官能基がカルボキシル基から選ばれる基(これは反応性の低い官能基で以下官能基bとする)であるものである。
このような鎖延長剤としては、分子量は500以下が好ましい。具体的には、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ有する化合物が好ましく、官能基aを2つおよび官能基bを1つ有する化合物が特に好ましい。さらに具体的には、官能基aとして2つの1級水酸基を有し、官能基bとして1つのカルボキシル基を有する化合物が好ましい。
該化合物は、官能基を3つ以上有するが、主として官能基aのみがイソシアネート基末端プレポリマーと反応し、官能基bは反応しにくいので、イソシアネート基末端プレポリマーと反応させても官能基bは樹脂中に残存すると考えられる。特に、官能基aとして2つの1級水酸基を有し、官能基bとして1つのカルボキシル基を有する化合物では、その傾向が顕著である。
これらの鎖延長剤としては、ジメチロールカルボン酸類が挙げられる。
具体的にはジメチロールカルボン酸類としては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸(DMPA、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(DMBA、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ジメチロールペンタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸)、ジメチロールへプタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン酸)、ジメチロールオクタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸)、ジメチロールノナン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ノナン酸)などが挙げられる。
【0023】
[その他の鎖延長剤]
本発明では、上記化合物以外の他の鎖延長剤を併用することができる。他の鎖延長剤としてはイソシアネート基と反応可能な官能基を2つ以上有する分子量500以下の化合物が好ましい。他の鎖延長剤としては、たとえば、イソホロンジアミン、エチレンジアミンなどのジアミン化合物、1,4−ブタンジール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコールなどのジオール化合物、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。また、少量のトリオール化合物を併用してもよい。他の鎖延長剤は全使用量の50モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0024】
[鎖延長反応]
鎖延長反応としては特に制限されず、たとえば、1)イソシアネート基末端プレポリマー溶液をフラスコに仕込み、そのフラスコに鎖延長剤を滴下して反応させる方法、2)鎖延長剤をフラスコに仕込み、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を滴下して反応させる方法、3)イソシアネート基末端プレポリマー溶液を溶剤で希釈した後、そのフラスコに鎖延長剤を所定量一括投入して反応させる方法が挙げられる。イソシアネート基が徐々に減少するため均一な樹脂を得やすいことから、1)または3)の方法が好ましい。
【0025】
鎖延長剤の添加量は、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%により異なるが、鎖延長後のイソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.01〜1.0%となる量であることが好ましく、0.05〜0.2%となる量であることがより好ましい。鎖延長剤の添加量が、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.01%未満になる量では、鎖延長反応時に急激に増粘してゲル化しやすくなる。イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.4%になる量を超えると鎖延長が不十分になり所望の分子量にしにくくなる。
【0026】
鎖延長反応における反応温度は80℃以下が好ましい。反応温度が80℃を超えると反応速度が速くなりすぎて反応の制御が困難になるため、所望の分子量と構造を有するウレタン樹脂を得るのが困難になる傾向にある。溶剤存在下で鎖延長反応を行う場合には、溶媒の沸点以下が好ましく、特にMEK、酢酸エチルの存在下では40〜60℃が好ましい。
【0027】
[末端停止剤]
末端停止剤は、イソシアネート基と反応可能な活性水素を1つだけ有する化合物またはアミノ基を1つだけ有する化合物を使用することができる。イソシアネート基と反応可能な活性水素を1つだけ有する化合物としては、たとえば、ジエチルアミン、モルホリンなどのモノアミン化合物およびメタノールなどのモノオール化合物が挙げられる。また、アミノ基を1つだけ有する化合物としては、1級アミノ基または2級アミノ基を有する化合物が使用できる。アミノ基とともに水酸基を1〜2つ有する化合物であってもよい。2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、モノイソプロパノールアミン、アミノプロパノールなどの水酸基を有するモノアミン化合物などが使用できる。1級アミノ基を1つ有する化合物は活性水素を2つ有しているが、1つの活性水素が反応した後、残りの活性水素は反応性が低いので、実質的に1官能と同等となる。また、アミノ基と水酸基を有する化合物は、アミノ基に比較して水酸基の反応性が低いので、実質的に1官能と同等となる。
【0028】
末端停止剤の添加量は、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、末端停止剤が1モル以上2モル以下となる割合であることが好ましい。1モル未満では、停止反応後にイソシアネート基が残るので、得られるウレタン樹脂が不安定になる。2モルを超えると低分子量化合物が増加するため好ましくない。
【0029】
このようにして得られたウレタン樹脂の数平均分子量はGPCによる標準ポリスチレン換算分子量で1万以上が好ましい。粘着力が15N/25mmを超える高粘着領域の粘着力を有する粘着剤としたときでも再剥離性を発揮させるためには、数平均分子量が3万以上であることがより好ましい。数平均分子量が1万未満であると、粘着特性、特に保持力の低下が著しく、好ましくない。上限は特に制限されないが、数平均分子量が30万超になるとゲル化の可能性があるので好ましくないので、30万以下が好ましい。
【0030】
[溶剤]
鎖延長反応は、必要に応じて上記した溶剤中で行ってもよい。
【0031】
[添加剤]
また、ウレタン樹脂には必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、たとえば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、粘着付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等が挙げられる。
【0032】
以上説明したウレタン樹脂の製造方法は、イソシアネート基末端プレポリマーと特定の鎖延長剤とを反応させ、さらに末端停止剤を反応させる方法である。鎖延長反応の際には、官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群から選ばれる基であり、イソシアネート基末端プレポリマーと容易に反応する。一方、反応性が低いカルボキシル基はイソシアネート基末端プレポリマーと反応しにくいため、ウレタン樹脂中に残存すると考えられる。また、この鎖延長反応は反応を制御しやすいため、生成物のゲル化を抑制してウレタン樹脂の高粘度化を防止できる。
さらに、ウレタン樹脂中に残存する官能基を利用してウレタン樹脂を架橋できるので、このウレタン樹脂を原料として用いることで再剥離性に優れたウレタン樹脂系粘着剤を得ることができると考えられる。
さらに、鎖延長剤として入手容易なものを用いることができるため、低コストである。
【0033】
(粘着剤)
次に、本発明の粘着剤について説明する。
本発明の粘着剤は、上述したウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂を含有するものである。
上記製造方法で得られたウレタン樹脂はそれ自体で粘着性能を有しているので、そのまま粘着剤として使用できる。しかしながら、ウレタン樹脂中に残存するカルボキシル基をさらに架橋剤としてのポリイソシアネート化合物と反応させることにより、再剥離性がより優れた粘着剤を得ることができる。すなわち、本発明は、上記ウレタン樹脂およびポリイソシアネート化合物を反応させてなる粘着剤である。
【0034】
[架橋剤]
架橋剤として使用しうるポリイソシアネート化合物としては、上記のポリイソシアネート化合物およびそれらのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等の多官能ポリイソシアネートが用いられる。中でも、平均官能基数2超の変性体が好ましい。例えばデュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)等が使用できる。
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基含有量(溶液の場合には溶剤を除く)10〜30質量%のものをウレタン樹脂100質量部に対して20質量部以下の範囲で反応させることが好ましい。より良好な再剥離性が発揮することから、0.01〜10質量部であることがより好ましい。これに対し、ポリイソシアネート化合物を使用しない場合には凝集力が低下して凝集破壊しやすくなり、20質量部を超えると凝集が強すぎて粘着力が低下する傾向にある。このポリイソシアネート化合物の使用量の調整により、粘着剤の強度を調整することが可能であるので、粘着性と強度のバランスが取れた粘着剤を容易に得ることができる。
ポリイソシアネート化合物は、被着体に該粘着剤を塗工する直前にウレタン樹脂に添加し、反応させることが好ましい。
【0035】
架橋剤とウレタン樹脂に残存するカルボキシル基とを反応させる際には、ウレタン化触媒を用いることができる。ウレタン化触媒としては、プレポリマー生成反応の際に用いるウレタン化触媒を用いることができる。
【0036】
本発明において、ポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ウレタン樹脂に残存するカルボキシル基を介して架橋したウレタン樹脂は、粘着性能と強度のバランスが優れ、粘着性能を維持しながら再剥離性に優れると推定される。また、上述したウレタン樹脂を用いたものであるため、低コストである。
しかも、アクリル系化合物を含まないので、被着体への移行性、皮膚刺激性が低いと考えられる。さらには、この架橋したウレタン樹脂は分子量が大きく、低温時に固くなりにくいため、粘着力の温度依存性が低いと考えられる。また、ゴム系粘着剤のように低分子量化合物が表面に移行することもないと思われる。
【0037】
(粘着領域)
本発明の粘着剤は、粘着力が15N/25mmを超え50N/25mm以下である強粘着領域、粘着力が8N/25mmを超え15N/25mm以下である中粘着領域、粘着力が1N/25mmを超え8N/25mm以下の低粘着領域、ならびに粘着力が0より大きく1N/25mm以下である微粘着領域に渡り適用可能である。
上記粘着力は以下の方法で測定する。すなわち、50μmのPETフィルムに25μmの厚さで粘着剤層を設けた粘着シートを得る。粘着シートを幅25mmに切断したものを、23℃相対湿度65%雰囲気にて、厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、貼着する。ついで、JIS Z 0237(1991年)に準じて2kgのゴムロールを用い、圧着を行う。30分後にJIS B 7721に規定する引張り試験機にて粘着力(180度ピール、引張速度300mm/分)を測定する。
【0038】
本発明の粘着剤は、プラスチックフィルム、プラスチックシート、ポリウレタン、紙、ポリウレタン発泡体等である被着体に塗工され、テープ、ラベル、シール、化粧用シート、滑り止めシート、両面粘着テープ等として好適に使用できる。本発明では無色透明のウレタン樹脂を製造することができる。このような樹脂は透明な被着体に用いることに適する。
また、上述の通り 本発明の粘着剤は、微粘着領域から強粘着領域に渡って、再剥離性に優れる効果を有する。
特に、微粘着領域の粘着剤(微粘着型粘着剤)とした場合は、たとえば、液晶ディスプレイで偏光板、位相差板または拡散板などとして用いられる様々なフィルムの表面保護のためのプロテクトテープとして利用可能である。これらのプロテクトテープは、貼り合わせおよび剥離が容易であること、ならびに、表面が汚染されにくいことが求められることから、微粘着であって再剥離性がある本発明の粘着剤は適している。
また、低粘着領域〜中粘着領域の粘着剤とした場合は、液晶ディスプレイ等で使用される様々なフィルムを張り合わせるための粘着剤として使用できる。シリコンウエハ切断時の固定用ダイシングテープなどにも使用できる。これらの用途では、容易に剥離せずかつフィルムのゆがみに追従する性能が求められるから、適度な粘着力と再剥離性がある本発明の粘着剤は適している。
強粘着領域の粘着剤とした場合は、広告用看板または自動車の内外装や家電の化粧鋼板等、環境変化の大きなところ、および風圧、接触等への耐性が求められる分野における粘着剤として使用できる。これまで接着剤が使用されてきた分野であり、外力に対する追従性、貼りなおしが求められ、特に強固に接着した後に、リサイクルの観点から糊残りせずに剥離することが求められる。したがって、本発明の強粘着型であっても再剥離性に優れる粘着剤は有効である。
さらに、本発明の粘着剤は、従来のアクリル系において特に低、微粘着時に発生しやすいジッピング性を改良することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、この実施例は本発明を限定するものではない。
(ポリオール)
ポリオール(1):プロピレングリコールを開始剤とし、KOH触媒を用いてプロピレンオキシドを反応させて製造した、水酸基価56.1mgKOH/gのポリオキシプロピレンジオール。
ポリオール(2):分子量700のプロピレングリコールのプロピレンオキシド付加物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体触媒を用いてプロピレンオキシドを反応させた後、KOH触媒を用いてエチレンオキシドを反応させて製造した、全ポリオール中10質量%のオキシエチレン基を有する、水酸基価28.1mgKOH/gのポリオキシプロピレンオキシエチレンジオール。
ポリオール(3):プロピレングリコールを開始剤とし、KOH触媒を用いてプロピレンオキシドを反応させて製造した、水酸基価160.3mgKOH/gのポリオキシプロピレンジオール。
【0040】
(鎖延長剤)
DMBA:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸
アクリル含有鎖延長剤:2.58gのイソホロンジアミン、1.94gのブチルアクリレートおよび2.19gの4−ヒドロキシブチルアクリレートをマイケル付加反応させて得たもの。
化合物(C1):N−(2−ヒドロキシプロピル)メタキシリレンジアミン。(1級アミン、2級アミンおよび2級水酸基を有する化合物)。
化合物(C2):N−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン。
ポリウレタン溶液の25℃における粘度はB型粘度計で測定した。ポリウレタン溶液中の樹脂分の数平均分子量はゲルパーミエーショングラフィー法によりポリスチレン換算で測定した。
【0041】
(実施例1:ウレタン樹脂系粘着剤の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに100gのポリオール(2)、8.4gのHDI(日本ポリウレタン工業社製、製品名HDI)、ウレタン化触媒としてDBTDLをポリオール(2)、HDIおよびDMBAの合計量に対して50ppmに相当する量を仕込み、100℃まで徐々に昇温し、プレポリマー生成反応を4時間行ってイソシアネート基末端プレポリマーを得た。その後、60℃まで冷却し、56gの酢酸エチル、56gのMEKを添加した後、鎖延長剤として3.69gのDMBAを添加して反応させた。60℃で反応を続け、NCO%が0.2%以下になった時点で末端停止剤であるジエチルアミン0.8gを添加して反応を終了した。得られたポリウレタン溶液Aは無色透明で固形分が50質量%であった。またこのポリウレタン溶液Aの粘度を測定したところ、3000mPa・s/25℃であった。このポリウレタン溶液A中の樹脂の数平均分子量は35000であった。
次いで、得られたポリウレタン溶液A100gに対し、架橋剤として、デュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)を1.5g、さらにウレタン化触媒としてDBTDLを、ポリウレタン溶液の固形分と架橋剤の固形分の合計量に対して500ppmに相当する量添加し、毎分40回転で1分間、撹拌混合して、ウレタン樹脂系粘着剤Aを得た。
【0042】
(実施例2、比較例1〜4)
表1に示す配合とし、その他の条件は実施例1と同様にしてポリウレタン溶液B(実施例)およびポリウレタン溶液a〜d(比較例)を得た。それぞれから、ウレタン樹脂系粘着剤B(実施例)およびウレタン樹脂系粘着剤a〜d(比較例)を得た。
比較例においては、本発明以外の鎖延長剤を用いた。比較例2および3は架橋剤量を変更した。比較例2〜4ではポリウレタン溶液が実施例に比べ粘度が高かった。
これにより、鎖延長剤として、官能基が2個のアミノ基と1個の水酸基から選ばれる官能基からなる:N−(2−ヒドロキシプロピル)メタキシリレンジアミン(化合物(C1))やN−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン(化合物(C2))を使用した場合には、反応制御が困難で、高粘度となることがわかる。
アクリル含有鎖延長剤を使用した比較例1では、剥離状態および皮膚刺激性に問題があった。
【0043】
【表1】

【0044】
(評価)
ウレタン樹脂系粘着剤Aおよびa〜dをそれぞれ50μmのPETフィルムに、乾燥後の膜厚が25μmになるように塗工し、循環式オーブンにおいて100℃で2分乾燥して、粘着シートを得た。そして、50℃で2日間養生した後、23℃かつ相対湿度65%で2時間放置し、下記の物性を測定した。評価結果を表2に示す。
[粘着力]:粘着シートを厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に室温にて貼着し、2kgのゴムロールで圧着し30分後、JIS B 7721に規定する引張り試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引っ張り速度300mm/分)を測定した。
[ボールタック]:JIS Z 0237に規定するボールタック法にて23℃かつ相対湿度65%の条件下で測定した。
[保持力]:厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))の一端に、粘着シートの25mm×25mmの面積が接触するように貼合わせ、ロールで圧着した。次いで、ステンレス板の他端を吊り下げて、粘着シートがステンレス板にぶら下がるように配置し、40℃中に20分間放置した。その後、粘着シートに1kgの荷重をかけて、落下するまでの秒数または60分後のずれを測定した。60分後にずれがないものを〇、落下したものを×として評価した。
[再剥離性]:粘着シートをステンレス板(SUS304(JIS))に貼着した後、40℃かつ相対湿度65%の条件下に放置し、23℃かつ相対湿度65%に冷却した後、剥離し、糊残り性を目視評価した。目視評価では、ステンレス板への糊移行が全くないものを○、部分的にあるものを△、完全に移行しているものを×として評価した。また、剥離後、ステンレス板に糊が残った場合は、貼着面積に対する糊残りの割合を式(1)で計算し評価した。
糊残り率(%)=(ステンレス鋼板へ移行した粘着剤の面積/粘着シートを貼り付けた面積)×100 ・・・式(1)
[剥離状態]:手剥離においてスムーズに剥離したものを○、ジッピングが若干生じたものを△、ジッピングが激しく生じたものを×として評価した。
[皮膚刺激性]:アクリルモノマー、アクリル樹脂等を全く使用していないものを○、僅かでも使用してあるものを×として評価した
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示されるように、鎖延長剤として、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級水酸基であり、残りの官能基がカルボキシル基であるものを用いた実施例1、2の粘着剤では、再剥離性に優れ、剥離状態が良好であり、しかも皮膚刺激性も低かった。
一方、鎖延長剤としてアクリル含有鎖延長剤を用いた比較例1は剥離状態が良好でなく、皮膚刺激性が高かった。またアミノ基を2つ以上もつ鎖延長剤を用いた比較例3の粘着剤は、再剥離性が実現せず、保持力も低かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のウレタン樹脂系粘着剤は、電子分野、医療分野やスポーツ分野、建築分野等の各分野で用いられる保護フィルム、粘着テープ、粘着ラベル、粘着シール、滑り止めシート、両面粘着テープ等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法であって、
鎖延長剤が、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群から選ばれる基であり、残りの官能基がカルボキシル基であることを特徴とするウレタン樹脂の製造方法。
【請求項2】
ポリオールが、平均水酸基数が2以上であり水酸基価が5.6〜600mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオールである、請求項1に記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項3】
鎖延長剤が、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級水酸基であり、残りの官能基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項4】
鎖延長剤が、ジメチロールカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3に記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られたウレタン樹脂からなる粘着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られたウレタン樹脂とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂からなる粘着剤。

【公開番号】特開2006−124693(P2006−124693A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286383(P2005−286383)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】