説明

ウレタン樹脂

【課題】100℃以上の温度域でも引張り破断強度等の樹脂の機械的強度が維持されるウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、およびポリイソシアネート(i)を構成単位として有し、貯蔵弾性率(G’)が20000(dyn/cm)になる温度が100℃以上であり、150℃における貯蔵弾性率〔G’150〕(dyn/cm)および180℃における貯蔵弾性率〔G’180〕(dyn/cm)が、次の式(1)を満たすウレタン樹脂(A)。
〔G’150〕/〔G’180〕≦12 ・・・式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂の機械的強度を高くする最も一般的な方法としては、鎖延長剤とポリイソシアネートで構成されるハードセグメントの量を増やすことが知られていた。
上記方法以外にもポリイソシアネート、鎖延長剤、イソフタル酸/アジピン酸及および低分子量ジオールを含有するポリエステルウレタンが60℃以下で高い貯蔵弾性率(G’)を有し、樹脂の機械的強度に優れるという報告がなされている(特許文献1)。
しかしこれらの方法で得られたウレタン樹脂は、60℃以下では高いG’を有するが、温度が高くなっていくとともにG’が低下していくため、100℃以上の環境で高いG′を維持することは困難であり、例えばフィルムに成型した際、100℃以上の温度では引張り破断強度が低下し、フィルム剥離、破れ等が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−60674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、100℃以上の温度域でも引張り破断強度等の樹脂の機械的強度が維持されるウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、およびポリイソシアネート(i)を構成単位として有し、貯蔵弾性率(G’)が20000(dyn/cm)になる温度が100℃以上であり、150℃における貯蔵弾性率〔G’150〕(dyn/cm)および180℃における貯蔵弾性率〔G’180〕(dyn/cm)が、次の式(1)を満たすウレタン樹脂(A);並びに上記のウレタン樹脂(A)を含有する成型品である。
〔G’150〕/〔G’180〕≦12 ・・・式(1)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、100℃以上の温度域でも樹脂の機械的強度が維持され、剥離、破れ等が発生しにくいウレタン樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明のウレタン樹脂(A)は、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)を必須構成単位として含有する。
エステル(e)を構成する炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)としては、炭素数2〜10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオール等);炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等);等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これら(d1)のうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から、分子末端に1級水酸基を有する分岐のない脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオール等)が好ましく、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコールおよび1,4−ブタンジオールがさらに好ましく、エチレングリコールおよび/または1,3−プロピレングリコールが特に好ましい。
【0008】
エステル(e)を構成するジアルカノールアミン化合物(d2)としては、式(2)で表される化合物が挙げられる。

HO−R−N−R−OH
| ・・・式(2)


式中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数が2〜10の脂肪族アルキレン基、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。
炭素数2〜10のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチル−トリメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基及びデカメチレン基等が挙げられる。
およびRのうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から好ましいのは、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基およびテトラメチレン基であり、さらに好ましいのはエチレン基および/またはトリメチレン基である。
炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、およびn−またはイソプロピル基である。
のうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から好ましいのは、水素原子又はメチル基である。
ジアルカノールアミン化合物(d2)の具体例としては、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−プロピルジエタノールアミン、1−ヒドロキシエチル−1−ヒドロキシ−n−プロピルアミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−プロピル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−ヘキシル)−N−メチルアミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−プロピル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−ヘキシル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−オクチル)アミンおよびジ(1−ヒドロキシ−n−デシル)アミン等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これら(d2)のうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から、ジエタノールアミンおよびN−メチルジエタノールアミンが好ましい。
【0009】
エステル(e)を構成する1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのモル比は、貯蔵弾性率の観点から、(c)1モルに対して(d1)または(d2)が1〜3モルであることが好ましく、より好ましくは1.2〜3モル、最も好ましくは2〜3モルである。
【0010】
エステル(e)を合成する条件としては、副反応抑制の観点から100〜230℃で行うことが好ましく、5〜200mmHgの減圧下で行うことが好ましい。必要により、エステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0011】
エステル(e)は必要によりモノアルコールを構成単位として含有してもよい。モノアルコールとしては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)とエステルを形成できるものであれば特に限定はない。具体例としては、炭素数1〜30のアルカノール(ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコール等)、炭素数2〜30のアルケノール(オレイルアルコールおよびリノリルアルコール等)、炭素数7〜30の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール等)が挙げられる。これらの中では、生産性の観点から、ベンジルアルコール、炭素数10〜30のアルカノールおよび炭素数10〜30のアルケノールが好ましい。
【0012】
エステル(e)の数平均分子量(以下Mnと記載する。)としては、樹脂の強度の観点から180〜2000が好ましく、より好ましくは200〜800、最も好ましくは220〜700である。
【0013】
本発明において、樹脂の分子量〔Mn〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例) : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
また、Mnの測定は、試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0014】
エステル(e)の酸価は、貯蔵弾性率保持の観点から、300(mgKOH/g、以下同じ)以下が好ましく、より好ましくは0〜280、最も好ましくは0〜180である。酸価が300以上になると貯蔵弾性率の温度依存性が高くなり、150℃以上での貯蔵弾性率保持が困難になる。
(e)の水酸基価としては、ポリイソシアネート(i)との反応率の観点から、10〜1000(mgKOH/g、以下同じ)が好ましく、より好ましくは50〜800、最も好ましくは100〜700である。
【0015】
本発明において、樹脂の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製 ラボプラストミル MODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
【0016】
本発明のウレタン樹脂(A)は、100℃以上での樹脂の機械的強度の維持に加えて、耐磨耗性や耐衝撃性の付与を目的に、エステル(e)以外のポリオール(x)を構成成分として用いてもよい。
【0017】
ポリオール(x)としては、耐磨耗性や耐衝撃性付与の観点から、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオール、およびアルキルポリオールの群から選ばれる1種類以上であることが好ましく、この中でもポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオールがより好ましく、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートポリオールが最も好ましい。
【0018】
ポリエーテルポリオールのうち、脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコール等)、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール骨格を有するポリオール(例えばビスフェノールAのエチレオキサイドまたはプロピレンオキサイド2〜20モル付加物)、およびレゾルシンのエチレオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、脂肪族または芳香族低分子量活性水素原子含有化合物に、付加触媒(アルカリ金属水酸化物およびルイス酸等の公知の触媒)の存在下にアルキレンオキサイドを開環付加反応させることで得られる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルおよびポリラクトンポリオールが挙げられる。
縮合型ポリエステルは、低分子量(Mn300以下)の多価アルコールと多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とのポリエステルである。
低分子量の多価アルコールとしては、水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよび水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上のフェノールのアルキレンオキサイド低モル付加物が使用できる。
縮合型ポリエステルに使用できる低分子量の多価アルコールのうち好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコ
ール、1,6−ヘキサングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド低モル付加物、およびこれらの併用である。
縮合型ポリエステルに使用できる多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸およびマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸等)、および3価またはそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸およびピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸および無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチルおよびフタル酸ジメチル等)およびこれらの併用が挙げられる。
【0020】
ポリラクトンポリオールは、低分子量多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトンが使用でき、例えば4−ブタノリド、5−ペンタノリドおよび6−ヘキサノリド等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールおよびポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネートポリオールは、低分子量多価アルコールへのアルキレンカーボネートの重付加物であり、アルキレンカーボネートとしては、炭素数2〜8のアルキレンカーボネートが使用でき、例えばエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート等が挙げられる。これらはそれぞれ2種以上併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0022】
シリコーンポリオールとしては、例えばシリコーン樹脂の末端に水酸基を有するジオール等が挙げられる。
アルキルポリオールとしては、上記の低分子量の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0023】
ポリオール(x)のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のMnは、樹脂強度の観点から、100〜20000が好ましく、さらに好ましくは200〜10000、特に好ましくは400〜9000である。
【0024】
本発明のウレタン樹脂(A)は、構成単位として、前記のエステル(e)と、必要によりポリオール(x)に加え、さらにポリイソシアネート(i)を含有する。
【0025】
上記ポリイソシアネート(i)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基およびオキサゾリドン基含有変性物等)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0026】
上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネートおよび4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートおよびビス(2−イソシアナトエチル)フマレート等が挙げられる。
【0028】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−または2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0030】
これらのうちで好ましいものは、樹脂の強度の観点から、炭素数6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート、および炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、特に好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、およびIPDIである。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂(A)は、必要によりさらにポリアミン(j)および/または水を構成単位として有し、ウレア基を含有してもよい。
【0032】
ポリアミン(j)の例として、脂肪族ジアミン類(C2〜C18)としては、
〔1〕脂肪族ジアミン{C2〜C6 アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(C2〜C6)ジアミン〔ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミン等〕};
〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)またはヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミンおよびメチルイミノビスプロピルアミン等〕;
〔3〕脂環または複素環含有脂肪族ジアミン{脂環式ジアミン(C4〜C15)〔1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミンおよび4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等〕、複素環式ジアミン(C4〜C15)〔ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、および3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等〕;
〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミンおよびテトラクロル−p−キシリレンジアミン等);等が挙げられる。
【0033】
芳香族ジアミン類(C6〜C20)としては、
〔1〕非置換芳香族ジアミン〔1,2−、1,3−または1,4−フェニレンジアミン、2,4´−または4,4´−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4´,4”−トリアミンおよびナフチレンジアミン等;
〔2〕核置換アルキル基〔メチル,エチル,n−またはi−プロピル、およびn−またはi−ブチル等のC1〜C4アルキル基〕を有する芳香族ジアミン、例えば2,4−または2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、4,4´−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、および4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン等〕、およびこれらの異性体の種々の割合の混合物;
〔3〕核置換電子吸引基(Cl,Br,IおよびF等のハロゲン;メトキシおよびエトキシ等のアルコキシ基;ニトロ基等)を有する芳香族ジアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミンおよび3−ジメトキシ−4−アミノアニリン等〕;
〔4〕2級アミノ基を有する芳香族ジアミン〔上記〔1〕〜〔3〕の芳香族ジアミンの−NHの一部または全部が−NH−R´(R´はアルキル基;例えばメチルおよびエチル等の低級アルキル基)で置換されたもの〕〔4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、および1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン等〕が挙げられる。
【0034】
ポリアミン(j)としては、これらの他、ポリアミドポリアミン〔ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミンおよびポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン等〕、ポリエーテルポリアミン〔ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物等〕等が挙げられる。
【0035】
ウレタン樹脂(A)に含有されるウレタン基の濃度としては、樹脂の強度の観点から、(A)の全重量に対する、(A)の構成単位としてのポリイソシアネート(i)の量が70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜60重量%、特に好ましくは0.3〜50重量%である。
【0036】
樹脂強度の観点から、ポリイソシアネート(i)、ポリアミン(j)、および(i)と反応する水の構成単位の合計含有量が、ウレタン樹脂(A)の全重量に対して2〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜75重量%、特に好ましくは15〜70重量%である。
【0037】
導入されるウレタン基・ウレア基のモル比率は、樹脂強度の観点から、ウレタン基/ウレア基=45/55〜100/0が好ましく、さらに好ましくは50/50〜90/10である。
上記モル比率は、ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用した、ポリイソシアネート(i)と、ポリアミン(j)および(i)と反応する水の重量から、(A)中に含有されるウレタン基(―NHCOO―)のモル数とウレア基(―NHCONH―)のモル数の比を、計算により求めたものである。
【0038】
構成単位としての1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)の含有率は、樹脂強度の観点から、ウレタン樹脂(A)の全重量に対して2〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜55重量%、特に好ましくは5〜50重量%である。
【0039】
本発明のウレタン樹脂(A)は、貯蔵弾性率(G’)が20000dyn/cmにな
る温度が100℃以上であり、好ましくは110〜280℃、さらに好ましくは130〜270℃である。
【0040】
さらに150℃における貯蔵弾性率〔G’150〕(dyn/cm)、および180
℃における貯蔵弾性率〔G’180〕(dyn/cm)が、次の式(1)を満たす必要
があり、式(1’)を満たすことが好ましく、式(1”)を満たすことがさらに好ましい。
〔G’150〕/〔G’180〕≦12 ・・・式(1)
〔G’150〕/〔G’180〕≦10 ・・・式(1’)
〔G’150〕/〔G’180〕≦8 ・・・式(1”)

ウレタン樹脂(A)の貯蔵弾性率(G’)を調整するには、例えば、〔G’150〕/〔G’180〕を小さくする場合、ウレタン樹脂(A)の軟化点を上げる、3価以上の構成成分の比率を上げ架橋点の数を増やす、分子量を大きくする、またはTgを高くする等で達成できる。
【0041】
本発明において、ウレタン樹脂(A)の貯蔵弾性率(G’)は、下記粘弾性測定装置を用いて測定される。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
【0042】
ウレタン樹脂(A)を製造する方法としては特に限定されないが、下記2種類の製造法のいずれかを含む方法が好ましい。
製造法〔1〕 1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とを重縮合させて得られる水酸基を有するエステル(e)の有機溶剤(S)溶液を、ポリイソシアネート(i)と反応させ、次いで必要によりポリアミン(j)および/または水と反応させて、ウレタン樹脂(A)を製造する方法。
製造法〔2〕 1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とを重縮合させて得られる水酸基を有するエステル(e)を液体状でポリイソシアネート(i)と反応させ、次いで必要によりポリアミン(j)および/または水と反応させて、ウレタン樹脂(A)を製造する方法。
なお、上記の製造法〔1〕、〔2〕における1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)は、その無水物を用いてもよい。
【0043】
上記製造法〔1〕において、有機溶剤(S)としてはエステル(e)を溶解可能であれば特に限定はないが、溶剤除去のしやすさより、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、トルエンおよびキシレンが好ましい。
【0044】
上記製造法〔1〕において、水酸基を有するエステル(e)を有機溶剤(S)に溶解させた溶液中に、ポリイソシアネート(i)を入れて反応させる。反応温度は反応速度とアロファネート化抑制の観点で50〜120℃が好ましく、生産性の観点で反応時間は48時間以下が好ましい。エステル(e)とポリイソシアネート(i)との反応比率は、水酸基とイソシアネート基の当量比[OH]/[NCO]として、好ましくは1/1.5〜1/0.6、さらに好ましくは1/1.4〜1/0.7、特に好ましくは1/1.2〜1/0.8である。
【0045】
ポリアミン(j)および/または水を構成単位として有するウレタン樹脂(A)を製造する場合は、上記のエステル(e)とポリイソシアネート(i)との反応比率は、水酸基とイソシアネート基の当量比[OH]/[NCO]として、好ましくは1/1.5〜1/3、さらに好ましくは1/1.6〜1/2.7、特に好ましくは1/1.8〜1/2.6である。
次いで、未反応のイソシアネート基を有する(e)と(i)の反応生成物(エステルイ
ソシアネート変性体)を、ポリアミン(j)および/または水と反応させて、ウレタン樹脂(A)を製造する。反応温度は反応速度とビューレット化抑制の観点で10〜100℃が好ましく、生産性の観点で反応時間は48時間以下が好ましい。(e)と(i)の反応生成物の未反応イソシアネート基と、ポリアミン(j)のアミノ基の当量比[NCO]/[NH]は、好ましくは0.5/1〜1.5/1、さらに好ましくは0.7/1〜1.3/1、特に好ましくは0.75/1〜1.2/1である。
【0046】
反応後、必要により、有機溶剤(S)を取り除く工程を入れてもよい。有機溶剤(S)を取り除く方法は、一般的な公知の方法が用いられるが、生産性の観点から減圧脱溶剤が好ましい。有機溶剤(S)を取り除く前に、後述する樹脂(B)を溶解混合してもよい。
【0047】
上記製造法〔2〕において、水酸基を有するエステル(e)としては、製造法〔1〕と同様のものが挙げられる。(e)は、必要により加熱溶融して液体状で、ポリイソシアネート(i)と反応させる。
エステル(e)の水酸基とポリイソシアネート(i)のイソシアネート基の当量比は製造法〔1〕と同様でよい。反応温度はアロファネート化の開裂の観点から、150〜250℃で反応させることが好ましく、さらに好ましくは170〜230℃、特に好ましくは180〜220℃である。
(e)と(i)の反応時間は1時間以下が好ましく、さらに好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。
【0048】
ポリアミン(j)および/または水を構成単位として有するウレタン樹脂(A)を製造する場合は、製造法〔1〕と同様の当量比で、エステル(e)とポリイソシアネート(i)とを上記温度で反応後、未反応イソシアネート基を有する反応生成物とポリアミン(j)および/または水を、製造法〔1〕と同様の当量比で反応させることが好ましい。(e)と(i)の反応時間は1時間以下が好ましく、さらに好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。(e)と(i)の反応生成物と(j)および/または水の反応時間は、30分以下が好ましく、さらに好ましくは20分以下、特に好ましくは15分以下である。
【0049】
製造法〔2〕は、2軸混練機または2軸混練押出し機を用いて連続的に行うことが好ましい。2軸混練機としてはラボプラストミル[(株)東洋精機製作所製]等が挙げられ、2軸混練押出し機としてはKCニーダー[(株)栗本鐵工所製]、池貝PCM−30[池貝鉄工(株)製]等が挙げられる。
【0050】
本発明のウレタン樹脂(A)の酸価は、樹脂強度の観点から、好ましくは0〜210、さらに好ましくは0〜150、特に好ましくは0〜100である。
また、(A)の水酸基価は、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜80、特に好ましくは0〜50である。
【0051】
ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂のブロッキングの観点から、30〜75℃が好ましく、さらに好ましくは40〜72℃、特に好ましくは50〜70℃である。
なお、上記および以下において、TgはDSC20、SSC/580[セイコー電子工業(株)製]を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0052】
(A)のフロー軟化点〔Tm〕は、120〜300℃が好ましく、さらに好ましくは125〜250℃、特に好ましくは130〜200℃である。この範囲であると、樹脂の強度と加工性が良好となる。本発明において、Tmは以下の方法で測定される。
<フロー軟化点〔Tm〕>
降下式フローテスター[例えば(株)島津製作所製、CFT−500D]を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をフロー軟化点〔Tm〕とする。
【0053】
本発明のウレタン樹脂(A)と共に、必要により樹脂(B)を併用してもよい。(B)は、(A)以外の樹脂であり、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メタクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂等である。
【0054】
樹脂(B)を併用する場合の使用量としては、混合性の観点から、ウレタン樹脂(A)/樹脂(B)の重量比において、5/95〜70/30が好ましく、さらに好ましくは10/90〜65/35である。
【0055】
本発明において、ウレタン樹脂(A)と樹脂(B)の混合方法は特に限定されず、通常行われる公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダーおよび3本ロール等が挙げられる。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサーおよびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0056】
本発明のウレタン樹脂(A)は、必要により着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉[強磁性金属(鉄、コバルトおよびニッケル等)、マグネタイト、ヘマタイトおよびフェライト等の粉末)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のウレタン樹脂(A)100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0057】
本発明のウレタン樹脂(A)は、成型品として用いることができる。(A)を成型加工する方法としては、本発明のウレタン樹脂(A)、および必要により、その他の添加剤とペレットまたは粉末状の樹脂(B)を、混合機で所定濃度になるように配合し均一に混合後、押出機で加熱溶融混練し、次いで加熱成形機または射出成形機等により成型加工する方法等が挙げられる。また、ウレタン樹脂(A)の前駆体および必要により、その他の添加剤を混合可能な成分に予め配合した後に、成型する方法が挙げられる。
【0058】
本発明のウレタン樹脂(A)は、成形機(加熱成形機および射出成形機等)により、ブロック状物、板状物、シート、フィルムおよび糸等の成型品とされ、各種用途に使用される。
【実施例】
【0059】
以下実施例、比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
<製造例1>[エステル(e−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽(以下の製造例で用いる反応槽も同様)中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル)、エチレングリコール409部(6.6モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させた。回収されたエチレングリコールは37部(0.6モル)であった。得られたエステル(e−1)のMnは350、酸価は0、水酸基価は470であった。
【0061】
<製造例2>[エステル(e−2)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル)、エチレングリコール285部(4.6モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させた。回収されたエチレングリコールは37部(0.6モル)であった。得られたエステル(e−2)のMnは300、酸価は170、水酸基価は350であった。
【0062】
<製造例3>[エステル(e−3)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル)、エチレングリコール285部(4.3モル)、ベンジルアルコール129部(1.2モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させた。回収されたエチレングリコールは19部(0.3モル)、ベンジルアルコールは22部(0.2部)であった。得られたエステル(e−3)のMnは390、酸価は8、水酸基価は360であった。
【0063】
<製造例4>[エステル(e−4)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル)、エチレングリコール223部(3.6モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させた。回収されたエチレングリコールは19部(0.6モル)であった。得られたエステル(e−4)のMnは270、酸価は271、水酸基価は180であった。
【0064】
<製造例5>[エステル(e−5)の合成]
エチレングリコール409部(6.6モル)をジエタノールアミン693部(6.6モル)に変更した以外は製造例1と同様にして、エステル(e−5)を得た。得られたエステル(e−5)のMnは470、酸価は0、水酸基価は358であった。
【0065】
<製造例6>[エステルイソシアネート変性体(eu−6)の合成]
反応槽中に、製造例1で得られたエステル(e−1)100部(0.3モル)、テトラヒドロフラン800部を入れ80℃まで加熱し、(e−1)を溶解した。窒素気流下でイソホロンジイソシアネート(IPDI)を190部(0.9モル)加え24時間反応させ、エステルイソシアネート変性体(eu−6)を得た。得られた(eu−6)のMnは1000、固形分のイソシアネート価は160、固形分濃度は27重量%であった。
【0066】
<製造例7>[エステルイソシアネート変性体(eu−7)の合成]
反応槽中に、製造例2で得られたエステル(e−2)100部(0.3モル)、テトラヒドロフラン800部を入れ80℃まで加熱し、(e−2)を溶解した。窒素気流下でIPDIを148部(0.7モル)加え24時間反応させ、エステルイソシアネート変性体(eu−7)を得た。得られた(eu−7)のMnは750、固形分のイソシアネート価は140、固形分濃度は24重量%であった。
【0067】
<製造例8>[ポリエーテルポリオールイソシアネート変性体(xu−8)の合成]
反応槽中に、ポリエチレングリコール[PEG−400;三洋化成工業(株)製、Mn440]100部(0.2モル)、テトラヒドロフラン800部を入れ80℃まで加熱し、ポリエチレングリコールを溶解した。窒素気流下で4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を113部(0.5モル)加え24時間反応させ、ポリオールイソシアネート変性体(xu−8)を得た。得られた(xu−8)のMnは950、固形分のイソシアネート価は115、固形分濃度は21重量%であった。
【0068】
<製造例9>[ポリエステルポリオール(x−9)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸2990部(18.0モル)、ビスフェノールA・エチレンオキサイド2モル付加物7660部(23.4モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が94℃になった時点で、生成したポリマーを取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステルポリオール(x−9)とする。得られたポリエステルポリオール(x−9)のMnは1800、酸価は2、水酸基価は30であった。
【0069】
<製造例10>[ポリオールイソシアネート変性体(xu−10)の合成]
反応槽中に、製造例9で得られたポリエステルポリオール(x−9)100部(0.06モル)、テトラヒドロフラン800部を入れ80℃まで加熱し、(x−9)を溶解した。窒素気流下でヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を19部(0.1モル)加え24時間反応させ、ポリオールイソシアネート変性体(xu−10)を得た。得られた(xu−10)のMnは2100、固形分のイソシアネート価は51、固形分濃度は13重量%であった。
【0070】
<実施例1〜9>、<比較例1、2>
上記製造例で得られたエステル(e−1)〜(e−5)、およびポリオール(x−9)に加え、ポリエーテルポリオール[PEG−400;三洋化成工業(株)製]、ポリカーボネートポリオール[PCDL T4671;旭化成ケミカルズ(株)製]およびシリコーンポリオール[KF−6001:信越化学工業(株)製]を用いた。
反応槽を十分に窒素で置換後に、表1に示す配合比で、エステル(e)、必要によりポリオール(x)を加え、温度を80℃にし、均一化した。そこへポリイソシアネート(i)を攪拌下に加え、30分攪拌し、均一化した。その後、攪拌を停止し、24時間反応させ、冷却、取り出し、粉砕することで、ウレタン樹脂(A−1)〜(A−9)、比較ウレタン樹脂(RA−1)、(RA−2)を得た。
得られたウレタン樹脂および比較ウレタン樹脂について、下記粘弾性測定装置を用いて(G’)が20000dyn/cmになる温度、および〔G’150〕/〔G’180〕を測定した。測定結果を表1に示す。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
【0071】
【表1】

【0072】
<実施例10〜14>、<比較例3、4>
上記製造例で得られたイソシアネート変性体(eu−6)、(eu−7)、(xu−8)および(xu−10)を用いた。
反応槽を十分に窒素で置換後に、表2に示す配合比でイソシアネート変性体を加え、40℃に調整し、1時間均一化した。そこへポリアミン(j)または水を攪拌下に加え、4時間攪拌した。得られた樹脂溶液を薄く延ばし、90℃の減圧乾燥機で12時間脱溶剤し、冷却、取り出し、粉砕することで、ウレタン樹脂(A−10)〜(A−14)、比較ウレタン樹脂(RA−3)、(RA−4)を得た。
得られたウレタン樹脂および比較ウレタン樹脂について、実施例1〜9と同様にして(G’)が20000dyn/cmになる温度、および〔G’150〕/〔G’180〕を測定した。測定結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
<引張り破断強度の評価>
実施例1〜14、比較例1〜4で得られたウレタン樹脂を250℃に温調したホットプ
レスで厚さ1mmになるように30秒プレスし、フィルムを得た。
フィルム化したウレタン樹脂から、JIS K6301(1995年)の引裂試験片ダンベルB号形を3枚打ち抜いた。板厚は曲がっている場所の近傍5カ所の最小値をとった。これを恒温槽の設置されたオートグラフに取り付け、100℃に温調し、2時間放置した後、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたる最大強度を算出した。25℃での引張り破断強度についても同様に測定し、試験片が破断にいたる最大強度を算出した。結果を表1、2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のウレタン樹脂は、高温領域での貯蔵弾性率の温度依存性が低く、引張り破断強
度等の樹脂の機械的強度が維持されるため、自動車のエンジンルーム内の部材、断熱材等の加熱源に近い成型材料、サニタリー用品、家電用品、家庭用品、建築用品、繊維または繊維製品および包装用品等の各種用途に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、およびポリイソシアネート(i)を構成単位として有し、貯蔵弾性率(G’)が20000(dyn/cm)になる温度が100℃以上であり、150℃における貯蔵弾性率〔G’150〕(dyn/cm)および180℃における貯蔵弾性率〔G’180〕(dyn/cm)が、次の式(1)を満たすウレタン樹脂(A)。
〔G’150〕/〔G’180〕≦12 ・・・式(1)
【請求項2】
エステル(e)を構成する1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)またはジアルカノールアミン化合物(d2)とのモル比が、(c):(d)=1:(1〜3)である請求項1記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項3】
エステル(e)の酸価が300(mgKOH/g)以下である請求項1または2記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項4】
さらにポリオール(x)を構成単位として有する請求項1〜3のいずれか記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項5】
ポリオール(x)がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオールおよびアルキルポリオールからなる群から選ばれる1種類以上である請求項4記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項6】
ポリオール(x)の数平均分子量が100〜20000である請求項4または5記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項7】
さらにポリアミン(j)および/または水を構成単位として有し、ウレア基を含有する請求項1〜6のいずれか記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項8】
ポリイソシアネート(i)、ポリアミン(j)、および(i)と反応する水の構成単位の合計含有量がウレタン樹脂(A)の全重量に対して2〜80重量%である請求項1〜7のいずれか記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項9】
構成単位としての1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)の含有率が、ウレタン樹脂(A)の全重量に対して2〜60重量%である請求項1〜8のいずれか記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項10】
炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d)が、エチレングリコールおよび/または1,3−プロピレングリコールである請求項1〜9のいずれか記載のウレタン樹脂(A)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載のウレタン樹脂(A)を含有する成型品。


【公開番号】特開2012−97126(P2012−97126A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226564(P2010−226564)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】