説明

ウレタン系塗膜材および施工方法

【課題】本発明は、2液混合時に発生する混合不良のトラブルを防止することができ、更には夏場の施工時に発生する塗膜の発泡によるトラブルをも防止する、2液型ウレタン系塗膜材組成物およびその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明は、イソシアネート化合物を含有する主剤および、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤からなる2液混合型ウレタン系塗膜材であって、それらの混合液と硬化剤との色差が7以上であり、また主剤の明度が60以下であるように、主剤および硬化剤を着色した2液混合型ウレタン系塗膜材、それを用いてなるウレタン系塗膜の施工方法、および該塗膜を構造物の下地材上に積層してなる積層構造である。本発明の主剤の着色剤は有機顔料または無機顔料であり、硬化剤をその明度Lが50以上となるように着色し、また上記の混合物の明度は50以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水材、床材等に使用される2液型ウレタン系塗膜材において、2液混合時に発生する混合不良のトラブルを防止する2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法に関するものである。更には、夏場の施工時に発生する塗膜の発泡によるトラブルをも防止する、2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2液型ウレタン系塗膜材は、防水材、床材等に広く使用されている。2液型ウレタン系塗膜材は、イソシアネート化合物を含有する主剤と、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤とからなっている。
通常2液型ウレタン系塗膜材は、主剤と硬化剤の混合比(質量比)が1:1〜1:3である場合が多く、1:2が主流である。
【0003】
通常、硬化剤は充填剤及び顔料で着色されており、2液混合してから施工するときに下地のコンクリート等を隠蔽し、均一な塗膜層が施工されたことを確認し易くされている。
従来の防水材は硬化剤を比較的明度の低いグレー色に着色する場合が一般的であり、その場合顔料として酸化チタンとカーボンブラック等を用いて、やや明度の低いグレー系に着色される場合が多かった。
【0004】
一方で、通常、主剤は着色されることはなく、無色透明〜淡黄色透明であった。これは主剤に充填剤あるいは顔料を配合して着色すると、充填剤や顔料が沈降分離したり、充填剤や顔料中の水分との反応で主剤が増粘したりする等、主剤の貯蔵安定性が悪くなること、および充填剤や顔料の添加で主剤の粘度が高くなり缶から取り出しにくくなることのためである。
【0005】
ここで、従来の技術による問題点として、以下の二つが挙げられる。
第一の問題点としては、上記のように、上記塗膜材に使用される主剤は、透明性のある無色あるいは淡黄色液体である場合が多く、そのために主剤と硬化剤とを混合した場合、硬化剤と混合物との色の違いが非常に小さいため、目視では混合状況がわかり難かった。更に、未混合の主剤が透明であるために、残った主剤が識別し難かった。そのため、未混合の主剤及び硬化剤を残したまま塗膜材を施工してしまい、混合不良による未硬化部分を残してしまう場合が多々あり、ウレタン系塗膜材の信頼を損なっているとともに、補修のために大きな手間と経費を必要としている。
【0006】
第2の問題としては、夏場の炎天下にウレタン系塗膜材を塗布すると、塗膜自身が発泡することがある。また、同じように、炎天下でウレタン系塗膜材を塗り重ねする場合においても、一層目と二層目の界面で発泡が起こることがあり、これらのトラブルが年々多くなっている。これらの場合も塗膜表面の仕上がりを著しく損ねるだけでなく、その補修にも多大な労力を要する。
【0007】
従来、2液型の材料の混合状態を確認するために、着色剤を用いて混合物の色の変化を利用することが行われている。
例えば、特許文献1では、簡易的な補修材用の少量タイプの容器であって、密封容器内を仕切りで区分けし、それぞれに、複数種類の液体が視認可能な状態で収容保存され、混合時には、仕切りを外して複数種類の液体を、その混合状態が視覚的に把握できるように混合し、混合物を得る容器において、液体のそれぞれに、混合状態を視覚的に把握できるように、混合の前後で色調差を発生させる色調差発生剤が配合されて調色されたものである複数液の保存兼混合容器が記載されており、2液硬化型ウレタン材料が記載されている。しかしながら、ここで開示されているのは、それぞれの液体が透明タイプの顔料及び/または染料を用いて着色された全光透過率が20%以上の透明の液体である補修材料であり、従って、コンクリートなどの構造物の下地材の表面を隠蔽することが求められる塗膜材としては適用できないものであった。
【0008】
特許文献2には、ポリイソシアネート化合物を含む第1液と活性水素基を含む第2液とを有し、第2液に着色剤を含み、該着色剤がそれ以外の成分と均一に混合されておらず、また着色剤以外の成分のいずれの混合物とも異なる色である2液型のポリウレンタンシーリング材組成物が記載されており、第1液と第2液との混合物と第1液および第2液の着色剤以外の成分の混合物との色差が、3.0以上であることが記載されている。しかしながら、ここに開示されている組成物はシーリング材用組成物であり、コンクリートなどの構造物の下地材の表面を塗工するための塗膜材としては適用できないものであった。
【0009】
特許文献3には、A液とB液の2液混合タイプであって、B液に染料を含み、A液およびB液の混合液とA液との色差が1〜10である補修用のアクリル系塗料が記載されている。しかしながら、この方法はアクリル系塗料に関するものであり、また染料によって着色する方法であるので、従って、コンクリートなどの構造物の下地材の表面を隠蔽することが求められるウレタン系の塗膜材には適用できないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−112482号公報
【特許文献2】特開2007−254501号公報
【特許文献3】特開2008−259951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、防水材、床材等に使用される2液型ウレタン系塗膜材において、2液混合時に発生する混合不良のトラブルを防止することができる2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法を提供するものである。更には夏場の施工時に発生する塗膜の発泡によるトラブルをも防止する、2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、イソシアネート化合物を含有する主剤および、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤からなる2液混合型ウレタン系塗膜材であって、それらの混合液と硬化剤とのL表色系の色差ΔEが7以上であり、また主剤の明度Lが60以下であるように、主剤および硬化剤を着色した2液混合型ウレタン系塗膜材である。
また、本発明は、主剤の着色剤が有機顔料または無機顔料である2液混合型ウレタン系塗膜材である。
更に本発明は、硬化剤をその明度Lが50以上となるように着色した上記の2液混合型ウレタン系塗膜材である。
更に本発明は、上記の混合物の明度Lが50以上である上記の2液混合型ウレタン系塗膜材である。
【0013】
本発明の他の態様は、上記のいずれかの2液混合型ウレタン系塗膜材を用いてなるウレタン系塗膜の施工方法である。
【0014】
本発明の更なる態様は、上記のいずれかの2液混合型ウレタン系塗膜材を用いてなる塗膜を構造物の下地材上に積層してなる積層構造である。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成により、本発明は、防水材、床材等に使用される2液型ウレタン系塗膜材において、2液混合時に発生する混合不良のトラブルを防止することができる2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法を提供できる。更には夏場の施工時に発生する塗膜の発泡によるトラブルをも防止する、2液型ウレタン系塗膜材およびその施工方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記したように、従来の防水材は硬化剤を比較的明度の低いグレー色に着色する場合が一般的であり、その場合顔料として酸化チタンとカーボンブラック等によりやや明度の低いグレー系に着色される場合が多かった。
その場合、主剤を明度の高い白系に着色したとしても、2液混合した場合の混合物と硬化剤との色差ΔEは小さく、目視での混合の判別がし難かった。
さらに、配合比1:2のような主剤の少ない配合においては、主剤を白系に着色しても効率的に混合物と硬化剤とのΔEを大きくすることはできなかった。
また、主剤に大量の顔料を配合して着色することは、顔料の沈降分離や、主剤の増粘、それによる主剤の貯蔵安定性が悪化することなどのためにできないと考えられていた。
【0017】
(第一の発明:主剤着色による混合不良防止)
本出願の第一の発明は、従来技術とは異なり、主剤と硬化剤とを混合した時に、目視で容易に混合不良を確認でき、かつ主剤の貯蔵安定性および低粘度性を損なわない2液混合型ウレタン系塗膜材であり、主剤と硬化剤の混合液と硬化剤との色差ΔEが7以上であり、また主剤の明度Lが60以下であるように、主剤および硬化剤を着色した2液混合型ウレタン系塗膜材とすることによってこれを達成したものである。
【0018】
以下、具体的にその方法を述べる。
本発明者らは種々の検討の結果、本発明の2液混合型ウレタン系塗膜材の主剤と硬化剤の混合液と硬化剤との色差ΔEが7以上であり、また主剤の明度Lが60以下であるように、主剤および硬化剤を着色すれば、主剤への顔料添加が少量でも、硬化剤と混合物との色の違いがはっきりと認識でき、主剤と硬化剤との混合状況がわかりやすくでき、混合不良を有効に防止できることを見出した。しかも顔料が少量であることができるので、従来予想されていたような増粘や貯蔵安定性の低下の問題もクリアできることを見出した。より具体的には、主剤の明度Lを60以下と比較的低くなるように着色し、かつ主剤と硬化剤の混合液と硬化剤の色差ΔEが7以上となるように、主剤および硬化剤のそれぞれの明度Lを調整するか、更に好ましくは、主剤の明度Lを比較的低くなるように着色し、一方で硬化剤の明度Lを高くするように着色するか、または主剤の色相と硬化剤の色相との違いが大きくなるようにそれぞれを着色することが有効である。主剤と硬化剤の混合液と硬化剤の色差ΔEは10以上であることが更に好ましい。主剤の明度Lは50以下であることが更に好ましい。
【0019】
(L表色系の色差ΔEの定義)
本願発明において、主剤、硬化剤、混合物の色を表すのに、CIE(国際照明委員会)1976 L表色系(JIS Z8729)を使用した。L表色系では、明度をL、色相(色あい)と彩度(鮮やかさ)を示す色度をa、bで表す。
また、混合物の色をL、a、b、硬化剤の色をL、a、bとすると、混合物と硬化剤の色差ΔEは以下の式によって求められる。
【0020】
【数1】

【0021】
(2液型ウレタン系塗膜材の説明)
本願発明の2液型ウレタン系塗膜材は、2液型ウレタン系防水材用または床用塗膜材として好ましく用いられ、イソシアネート化合物、とりわけポリイソシアネートを含有する主剤と、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤とからなるものである。
【0022】
(主剤の説明)
主剤に含有するイソシアネート化合物としては、イソシアネート基末端プレポリマー、低分子量のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
イソシアネート基末端プレポリマーとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、カルボジイミド等で変性されたMDI等のポリイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリオールとの反応によって得られるもの等が挙げられる。ポリエーテルポリオールの例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の1種以上を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールの具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールの1種以上と、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、あるいはその他の低分子ジカルボン酸やオリゴマー酸の1種以上との縮合重合、及びカプロラクトン等を開環重合して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。ポリオールは平均分子量が200〜10000であることが塗工の際の適正な粘度を得るために好ましい。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの分子量が200未満のポリオールを上記のポリオールと併用して使用することもできる。
【0023】
MDI、ポリメリックMDI、カルボジイミド等で変性されたMDIといった低分子量ポリイソシアネートは、イソシアネート基末端プレポリマー化して使用される以外に、ポリオールにより部分プレポリマー化して使用したり、プレポリマー化せずに単独で使用することもできる。
本願発明の2液型ウレタン系防水材用または床用塗膜材の代表的な例としては、主剤がTDIとポリオキシプロピレンポリオールとのイソシアネート基末端プレポリマーであるものが挙げられる。TDIとポリオールのイソシアネート基末端プレポリマーは、NCO/OH=1.5〜2.5(当量比)であり、NCO含有量は2.0〜5.0質量%であることが好ましい。
主剤には、顔料の他に粘度調整のために溶剤や可塑剤等や、消泡剤、硬化触媒、湿潤分散剤、色分かれ防止剤等の添加剤類等を含むことができる。
【0024】
(硬化剤の説明)
硬化剤に含有する多官能活性水素化合物としては、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(MOCA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン(MED)等のポリアミン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリオール等が挙げられ、これらは通常行われているように、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、例えば主剤について例示したものを用いることができる。ポリオールは平均分子量が200〜10000であることが塗工の際の適正な粘度を得るために好ましい。
硬化剤には、多官能活性水素化合物、顔料の他に、溶剤、可塑剤、充填剤、硬化触媒、顔料、湿潤分散剤、色分かれ防止剤、増粘剤、消泡剤、老化防止剤等を含むことができる。
硬化剤に用いる可塑剤としては、ウレタン系塗膜材に通常用いられるものを用いることができ、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、動植物油系脂肪酸エステル類、石油・鉱物油系可塑剤、アルキレンオキサイド重合系可塑剤などが挙げられる。
硬化剤に用いる充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、タルク、カオリンクレー、ゼオライト、水酸化アルミニウム、ケイソウ土、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維等が挙げられ、硬化剤の全量に対して10質量%〜75質量%であることが好ましい。
本発明に用いる好ましい硬化剤としては、DETDA、ジメチルチオトルエンジアミン、MED等の芳香族ポリアミンを含有するもの、MOCA等の芳香族ポリアミンとポリオキシアルキレンポリオール等のポリオールとオクチル酸鉛等の有機金属触媒を含有するもの、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリオールとオクチル酸鉛やジブチル錫ラウレート等の有機金属触媒を含有するもの、等が挙げられる。
【0025】
(主剤の顔料)
主剤には一般的にウレタン系塗料、ウレタン系塗膜材に使用されている有機顔料、無機顔料を使用できる。
主剤に添加できる有機顔料として具体的には、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、イソインドリノンイエロー、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。これらの中でもフタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーンは少量の添加で主剤の明度Lを低下させ、硬化剤と混合物とのΔEを大きくすることができ、主剤の貯蔵安定性の影響をより少なくできるので、特に好ましい。
ただし、キナクリドンレッド、2,9−ジメチルキナクリドン等は、主剤に配合した場合、貯蔵安定性が相対的に劣るので、排除はしないが、相対的には好ましくない。
【0026】
主剤には無機顔料も添加できる。無機顔料は、有機顔料に比べると長期の貯蔵安定性が劣るが、本発明の着色方法によれば、許容できる範囲の少量の使用で良好に混合状態を判断できることが見出された。
主剤に添加できる無機顔料として具体的には、例えば、酸化チタン、赤酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、鉄黒、複合酸化物(例えば、チタンエロー系、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック)などの酸化物;カーボンブラック等の炭素;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛などの硫化物;硫酸バリウムなどの硫酸塩;塩酸塩;群青等のケイ酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;マンガンバイオレット等のリン酸塩;黄色酸化鉄等の水酸化物;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;チタン被覆雲母等が挙げられる。
【0027】
なお、酸化チタンは主剤の明度Lを低下させるための顔料としては不適当であり、顔料の主成分を酸化チタンとすることは好ましくない。
主剤に添加する顔料は、平均粒子径が20nm以上であることが、主剤の混合状態を確認する上で更に好ましい。
主剤に添加する上記有機顔料、無機顔料は、粉体で添加してもよいし、トナー化して添加してもよいが、トナー化したもののほうが作業性や分散性に優れるためより好ましい。
顔料のトナー化に用いる可塑剤は、通常用いられるものを用いることができ、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、動植物油系脂肪酸エステル類、石油・鉱物油系可塑剤、アルキレンオキサイド重合系可塑剤などが挙げられる。
【0028】
(主剤の顔料添加量)
主剤への顔料添加は、1種類以上の有機顔料および/または1種類以上の無機顔料を使用することができる。
有機顔料の場合には、主剤100質量部に対して顔料添加量は0.01〜0.5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.3質量部であることができるので好ましい。0.01質量部未満では、混合物と硬化剤との色差ΔEを7以上とすることが難しい場合があり、0.5質量部を超える添加は効果が飽和し、経済的に有利でないが、0.5質量部超でもよい。
主剤への有機顔料の添加は、予想を超えるほどの微量で硬化剤と混合物の色差ΔEを大きくすることが可能であり、微量の添加ゆえに主剤の低粘度性を損なわず、また比重が無機顔料よりも低く、微粒子であるために沈降することがなく、貯蔵安定性に優れるため、本発明では有機顔料のみか、有機顔料を主成分とすることが好ましい。
【0029】
無機顔料の場合には、主剤100質量部に対して顔料添加量は0.1〜5質量部が好ましい。0.1質量部未満では混合物と硬化剤との色差ΔEを7以上とすることが難しい場合があり、5質量部を超える添加は効果が飽和し、経済性を損ねるし、貯蔵安定性を損ねるおそれがある。カーボンブラックについては0.01〜2質量部であることが好ましい。
1種類以上の有機顔料と1種類以上の無機顔料を併用することもでき、その場合0.01〜5質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0030】
(硬化剤の顔料)
硬化剤には、有機顔料、無機顔料等の従来知られている顔料を使用することができ、上記の主剤について挙げた顔料等を用いることができるが、特に限定はされない。
(硬化剤の顔料添加量)
硬化剤への顔料添加は、1種類以上の有機顔料または1種類以上の無機顔料を使用することができる。1種類以上の有機顔料と1種類以上の無機顔料を併用することもできる。
顔料の添加量については特に限定はされないが、硬化剤の全量に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では、十分な着色効果が得られない場合があり、顔料添加量が多くなると、硬化剤と混合物のΔEを小さくするように作用する。従って、必要な添加量以上を添加しないことが好ましい。
【0031】
酸化チタンは硬化剤の明度Lを上げ、より効率的に硬化剤と混合物の色差ΔEを大きくすることができるため、酸化チタンを顔料の主成分とすることが好ましい。硬化剤の明度Lは、50以上とすることが好ましく、60以上とすることが更に好ましい。硬化剤の明度Lを上げることで、着色した主剤が有効にはたらき、混合物の色差ΔEを効率的にあげることができるようになる。
また、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、タルク、カオリンクレー、ゼオライト、水酸化アルミニウム、ケイソウ土、硫酸バリウム、マイカ等といった、一般的で比較的隠蔽性のある無機系充填剤も使用することができ、この場合はこれらによって着色されるので、本発明の要件を満たすように着色されていれば他に顔料を使用しなくともよい。
【0032】
(第二の発明:混合物の明度を高くすることによる膨れ防止)
炎天下でのウレタン塗布の際の塗膜自身の発泡および、塗膜材を塗り重ねする場合における一層目と二層目の界面の発泡は、直射日光による塗膜の温度上昇によるものであると考えられる。
近年、地球温暖化の問題が言われており、そのためか夏場は猛暑になる日が多くなってきており、夏場の炎天下にウレタン系塗膜材を塗布すると、太陽熱及び直射日光により表面温度が上昇するため、炭酸ガスの発生量が多くなって塗膜自身が発泡することがあり、この現象によるトラブルは年々増加している。また、同じように、夏場の炎天下でウレタン系塗膜材を塗り重ねする場合においても、一層目と二層目の界面で炭酸ガスが発生して発泡が起こることがあり、このトラブルも年々多くなっている。これらの場合は、塗膜表面の仕上がりを著しく損ねるだけでなく、その補修にも多大な労力を要する。
【0033】
本発明者らは、更に種々の検討を行った結果、本発明の2液混合型ウレタン系塗膜材の混合物の明度Lを高くすることで、夏場の施工性改善に大きな効果を与えることを見出した。
本発明者らは、混合物の明度Lと日射反射率に相関性があり、混合物の明度Lを上げると直射日光下での施工時の表面温度が低下し、真夏の炎天下での施工時に発生する場合があるウレタン系塗膜の発泡現象に起因する層間膨れ現象を防止できることを見出した。
【0034】
ウレタン系塗膜の発泡現象とは、施工直後に塗膜の温度が上昇すると、主剤のイソシアネート基と、硬化剤中に含まれる微量の水分および混合時に巻き込まれる湿気中の水分との反応性が高まり、水分との反応により発生する炭酸ガスの発生量が多くなり、塗膜が発泡現象を起こすものである。
層間膨れも塗膜の発泡現象に起因するものと思われ、夏場、前日に施工した塗膜の上に翌日二層目を塗布する場合に層間に発生するもので、特に前日の夕方に一層目を施工し、翌日の朝方に二層目を施工し、その後直射日光に曝された場合に発生しやすく、一層目と二層目の層間接着力が発現する前に塗膜が高温になり、一層目および二層目からも発生する炭酸ガスにより、層間膨れが発生すると考えられている。
また、塗膜の表面温度の低下により、施工時のウレタン系塗膜材の混合物の可使時間(硬化前の塗布可能時間)を延長する効果があり、施工可能なレベリング時間を延長できる効果も見出した。
【0035】
上記のような効果を発現させるには、本発明の2液混合型ウレタン系塗膜材の主剤及び硬化剤の混合物の明度Lが50以上であることが好ましく、60以上であることが更に好ましい。
また、硬化剤に使用する顔料としては、混合物の明度Lを上げる効果の高い酸化チタンを顔料の主成分とすることが好ましい。
一方、カーボンブラックを多く使用することは、混合物の明度Lを下げ、日射反射率が低下し、塗膜の表面温度が高くなるため、上記の目的のためには好ましくない。
【0036】
(主剤と硬化剤の混合比)
本発明の2液混合型ウレタン系塗膜材の主剤と硬化剤を混合する際は、主剤中のイソシアネート基と、硬化剤中の官能活性水素の比率を、NCO/(OH+NH)=0.8〜1.6(当量比)の比率とすることが好ましい。また、主剤と硬化剤の混合比(質量比)は1:0.5〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:4であることがより好ましい。
【0037】
(混合、施工方法)
本発明の2液混合型ウレタン系塗膜材の主剤と硬化剤の混合方法としては、通常行われているように、主剤、硬化剤の2液をハンドミキサー等にて攪拌・混合し、混合物はコテ、レーキ、クシベラ等で手塗り施工することができる。また、スタティックミキサー等の自動混合装置を使用した機械化施工にも使用できる。
【0038】
本発明の更なる態様は、コンクリートなどの構造物の下地材及び2液混合型ウレタン系塗膜材を用いてなる塗膜からなる積層構造であり、更にトップコート層等を備えていてもよい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例をもって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(表1の説明)
オルタックカラー1:2用主剤:TDIとポリオキシプロピレンポリオールとのイソシアネート基末端プレポリマー97%と脂肪族炭化水素3%の混合物、NCO=3.40%、田島ルーフィング株式会社製
ブルートナー:フタロシアニンブルー(平均粒子径:80nm)28%、DINP72%、大日精化工業株式会社製
グリーントナー:フタロシアニングリーン(平均粒子径:50nm)30%、DINP70%、大日精化工業株式会社製
イエロートナー1:イソインドリノンイエロー(粒子径の範囲100nm〜10μm)42%、DINP58%、大日精化工業株式会社製
ホワイトトナー:酸化チタン(平均粒子径:270nm)70%、DINP約30%、大日精化工業株式会社製
ブラックトナー:カーボンブラック(平均粒子径:78nm)33.3%、DINP66.7%
ブラウントナー:赤酸化鉄(平均粒子径:170nm)50%、DINP50%、大日精化工業株式会社製
バイオレットトナー:ジオキサジンバイオレット(平均粒子径:40〜50nm)30%、DINP70%、大日精化工業株式会社製
レッドトナー:キナクリドンレッド(平均粒子径:70nm)30%、DINP70%、大日精化工業株式会社製
マゼンタトナー:2,9−ジメチルキナクリドン(平均粒子径:65nm)23%、DINP77%、大日精化工業株式会社製
【0040】
実験例1
(主剤の調製)
表1の配合に従って、オルタックカラー1:2用主剤とトナーとを攪拌機にて2分間混合・攪拌し、着色主剤を得た。
【0041】
【表1】

【0042】
(貯蔵安定性試験)
着色した主剤を40℃で4週間貯蔵した後の状態を観察した。
○:極端な粘度上昇やゲル化がなく、顔料の分離や沈降がない。
×:極端な粘度上昇やゲル化があるか、または顔料の分離や沈降がみられる。
【0043】
(着色主剤の貯蔵安定性)
主剤B〜D、主剤Hは、有機顔料で着色したが、40℃で4週間貯蔵後でも顔料を添加しない主剤Aと同等の粘度で流動性を保っており、また顔料の分離や沈降もなく、貯蔵安定性は○であった。
主剤E〜Gは、無機顔料で着色したが、貯蔵安定性は○であった。しかし、無機顔料は比重が大きいため、長期の貯蔵安定性では沈降・分離する場合がある。
【0044】
一方、キナクリドンレッドで着色した主剤Iは、40℃で4週間貯蔵後ではゲル化しており貯蔵安定性は×、2,9−ジメチルキナクリドンで着色した主剤Jは、40℃で4週間貯蔵後では、粘度の上昇はみられなかったものの、顔料の分離がみられ、貯蔵安定性は×であった。
【0045】
(表2〜表4の説明)
オルタックカラー1:2用主剤:TDIとポリオキシプロピレンポリオールとのイソシアネート基末端プレポリマー97%と脂肪族炭化水素3%の混合物、NCO=3.40%、田島ルーフィング株式会社製
ブルートナー:フタロシアニンブルー(平均粒子径:80nm)28%、DINP72%、大日精化工業株式会社製
ホワイトトナー:酸化チタン(平均粒子径:270nm)70%、DINP約30%、大日精化工業株式会社製
ブラックトナー:カーボンブラック(平均粒子径:78nm)33.3%、DINP66.7%
グリーントナー:フタロシアニングリーン(平均粒子径:50nm)30%、DINP70%、大日精化工業株式会社製
イエロートナー1:イソインドリノンイエロー(粒子径の範囲100nm〜10μm)42%、DINP58%、大日精化工業株式会社製
ブラウントナー:赤酸化鉄(平均粒子径:170nm)50%、DINP50%、大日精化工業株式会社製
MOCA:イハラキュアミンMT、イハラケミカル工業株式会社製、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン
T−500:ポリハードナーT−500、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、33.7mgKOH/g
DINP:サンソサイザーDINP、新日本理化株式会社製、ジイソノニルフタレート
シェルゾールS:脂肪族石油系炭化水素、シェルケミカルズジャパン株式会社製
ニッカオクチックス鉛20%TS:オクチル酸鉛と脂肪族系溶剤の混合物、Pbとして20%含有、日本化学産業株式会社製
添加剤類:楠本化成株式会社製
炭酸カルシウム:NS#100、日東粉化工業株式会社製
グレートナー:フタロシアニンブルー(平均粒子径:80nm)1〜10%、カーボンブラック(平均粒子径:78nm)1〜10%、酸化チタン(平均粒子径:280nm)40〜50%、総顔料分約55%、DINP約45%、大日精化工業株式会社製
酸化チタン:チタニックスJR−600A、テイカ株式会社製
イエロートナー2:ジスアゾイエロー約20%、DOP約80%、山陽色素株式会社製
【0046】
(色差の測定)
主剤、硬化剤、混合物をプラスチックセルCT−A31(コニカミノルタ社製)に入れ、色彩色差計CR−200(ミノルタ社製)を用いて測定し、L表色系による、明度L、色度a、色度bを測定した。なお、主剤のLの測定の場合、光を透過するものもあったため、光源をあてる部分と反対側に隠蔽率試験紙の白部分をあてて測定した。
また、混合物の色をL、a、b、硬化剤の色をL、a、bとすると、混合物と硬化剤の色差ΔEは以下の式によって求めた。
【0047】
【数2】

【0048】
(主剤の調製)
表2〜表4の配合に従って、オルタックカラー1:2用主剤とトナーとを攪拌機にて2分間混合・攪拌し、着色主剤を得た。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
実験例2
(硬化剤の調製)
表2〜表4の配合に従って、所定量のT−500に溶解したMOCAを配合し、DINP、シェルゾールS、ニッカオクチック20%鉛TS、添加剤類の液物を仕込み、攪拌機で低速混合し均一にした後、炭酸カルシウム、トナー、酸化チタンを配合し、1500rpmで15分間混合し、着色された硬化剤を得た。
【0053】
比較例1〜4、実施例1〜11
(主剤と硬化剤の混合方法)
表2〜表4の配合に従って、主剤と硬化剤とをハンドミキサーで2分間、攪拌・混合し、2液混合物を得た。
【0054】
比較例1
比較例1は、主剤が無色透明で、硬化剤をグレーに着色した、従来例である。
主剤は顔料を含まず、明らかに無色透明であった。
硬化剤の明度Lは42.34であり、比較的濃いグレーであった。
主剤と硬化剤との2液混合時の状況は、主剤が無色透明であるため、混合が十分になったことは目視では確認できなかった。また、硬化剤と2液混合物のΔEは2.18と小さく、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視では認識できず、混合不良防止には有効ではなかった。
【0055】
比較例2
比較例2は、主剤をブルーに着色、硬化剤をグレーに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは、19.65であり、比較的濃いブルーであった。
硬化剤の明度Lは、42.34であり、比較的濃いグレーであった。
主剤と硬化剤との2液混合時の状況において、主剤と硬化剤の色の違いは認識できたが、攪拌を開始してからすぐ2液混合物の色は硬化剤の色とほぼ同じ色になり、混合が十分になったことは目視では確認できなかった。また、硬化剤と2液混合物のΔEは1.96であり、硬化剤と2液混合物の色の違いは目視では認識できず、濃色主剤と濃色硬化剤の組合せは混合不良防止に有効ではなかった。
【0056】
比較例3
比較例3は、主剤をホワイトに着色、硬化剤をグレーに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは、77.20であり、ほぼ白色であった。
硬化剤の明度Lは、42.34であり、比較的濃いグレーであった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、主剤と硬化剤の色の違いははっきりと認識できたが、攪拌を開始してからすぐ2液混合物の色は硬化剤の色とほぼ同じ色になり、混合が十分になったことは目視では確認できなかった。また、硬化剤と2液混合物のΔEは2.98であり、硬化剤と2液混合物の色の違いは目視では認識できず、淡色主剤と濃色硬化剤の組合せは混合不良防止に有効ではなかった。
【0057】
比較例4
比較例4は、主剤をブラックに着色、硬化剤をグレーに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは、19.47であり、比較的濃いブラックであった。
硬化剤の明度Lは、42.34であり、比較的濃いグレーであった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況では、主剤と硬化剤の色の違いははっきりと認識できたが、攪拌を開始してからすぐ2液混合物の色は硬化剤の色とほぼ同じ色になり、混合が十分になったことは目視では確認できなかった。また、硬化剤と2液混合物のΔEは5.88と比較例1〜3と比較するとやや大きい値を示したものの、硬化剤と2液混合物の色の違いは目視では認識できず、濃色主剤と濃色硬化剤の組合せは混合不良防止に有効ではなかった。
【0058】
実施例1
実施例1は、主剤をブルーに着色、硬化剤をホワイトに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは、19.65であり、比較的濃いブルーであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況では、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは19.18であり、硬化剤と2液混合物との色の違いも目視で確認でき、濃色主剤と淡色硬化剤の組合せは混合不良防止に有効であった。
【0059】
実施例2
実施例2は、実施例1において、硬化剤に配合する酸化チタンを増量して、硬化剤の明度をさらにあげた場合の例である。
主剤の明度Lは19.65であり、比較的濃いブルーであった。
硬化剤の明度Lは、77.20であり、実施例1よりさらに白色となった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況では、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは16.13であり、硬化剤と2液混合物との色の違いも目視で確認でき、硬化剤の明度をさらに上げても混合不良防止に有効であった。
【0060】
実施例3
実施例3は、実施例1において、主剤に配合するブルートナーを増量した場合の例である。
主剤の明度Lは18.99と比較的濃いブルーであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは37.89と実施例1より大きい値を示し、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、混合不良防止に有効であった。
【0061】
実施例4
実施例4は、実施例3において、硬化剤にグレートナーを追加し、硬化剤の明度を小さくした場合の例である。
主剤の明度Lは18.99であり、比較的濃いブルーであった。
硬化剤の明度Lは、62.02であり、比較的淡いグレーであった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは17.93であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視で確認でき、少々硬化剤の明度を小さくしても、混合不良防止に有効であった。
【0062】
実施例5
実施例5は、実施例1において、主剤をグリーンに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは19.56であり、比較的濃いグリーンであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは25.63であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、主剤をグリーンに着色しても、混合不良防止には有効であった。
【0063】
実施例6
実施例6は、実施例1において、主剤を比較的淡色であるイエローに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは52.67であり、やや淡いイエローであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは26.92であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、主剤を比較的淡色に着色しても混合不良防止に有効であった。
【0064】
実施例7
実施例7は、主剤をグリーン、硬化剤をイエローに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは19.56であり、比較的濃いグリーンであった。
硬化剤の明度Lは、64.40であり、比較的淡いイエローであった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは46.10であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、主剤をグリーン、硬化剤をイエローに着色しても混合不良防止に有効であった。
【0065】
実施例8
実施例8は、実施例1において、主剤をブラックに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは19.47であり、比較的濃いブラックであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは22.75であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、主剤をブラックに着色しても混合不良防止に有効であった。
【0066】
実施例9
実施例9は、実施例1において、主剤をブラウンに着色した場合の例である。
主剤の明度Lは29.82であり、他の実施例よりは若干淡色ではあるが比較的濃色に近いブラウンであった。
硬化剤の明度Lは、75.51であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは14.50であり、後述の実施例11よりも硬化剤と2液混合物の色の違いがはっきりと目視で確認でき、主剤をブラウンで着色しても混合不良防止に有効であった。
【0067】
実施例10
実施例10は、主剤をグリーン、硬化剤をブラウンに着色した、反対色の組合せの例である。
主剤の明度Lは19.56であり、比較的濃いグリーンであった。
硬化剤の明度Lは、58.10であり、比較的淡いブラウンであった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違うグレー系の濁色となり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは23.65であり、硬化剤と2液混合物の色の違いも目視ではっきりと確認でき、主剤をグリーン、硬化剤をブラウンに着色した、反対色の組合せでも混合不良防止に有効であった。
【0068】
実施例11
実施例11は、主剤に配合する顔料が比較的少ない場合の例である。
主剤の明度Lは25.53であり、他の実施例よりは若干淡色ではあるが比較的濃色に近いグリーンであった。
硬化剤の明度Lは、77.20であり、ほぼ白色であった。
主剤と硬化剤との2液混合の状況は、攪拌開始直後では主剤と硬化剤の色は分離していたが、攪拌を続けるに従って混合物が主剤の色とも硬化剤の色とも違う均一な色になり、混合が十分になったことが目視で確認できた。硬化剤と2液混合物のΔEは7.99であり、他の実施例と比較すると硬化剤と2液混合物の色の違いは小さくてわかり難かったが、よく観察すれば目視で色の違いを確認でき、主剤に配合する顔料が比較的少なくても混合不良防止に有効であった。
【0069】
以上の実施例1〜11において、主剤については透明性のあるものとないものがあったが、硬化剤についてはすべて透明性がなく、2液混合物についてもすべて透明性がなく、下地が十分に隠蔽できるものであった。
【0070】
実施例12〜14、比較例5
実施例1、3、6及び比較例1で調製した2液混合型ウレタン系塗膜材を用いて下記の試験を実施した。
(層間膨れ試験)
屋外(静岡県磐田市)において、断熱材(ギルフォーム、硬質ウレタン系フォーム、厚さ75mm、田島ルーフィング株式会社)にオルタックシートS(合成繊維不織布/ガラスメッシュ/プラスチックフィルム/ゴムアスファルト系粘着層からなる特殊下張り用防水シート、田島ルーフィング株式会社製)を貼ったものを下地とし、その上に防水材の一層目を1.5kg/m施工した(2008年8月7日18時30分)。一層目を施工した翌日の朝方、二層目を2kg/mあるいは3kg/m施工し(2008年8月8日7時00分)、一層目と二層目の層間膨れを観察した。
○:層間膨れが発生しないもの
△:層間膨れが塗膜の一部に発生しているもの
×:層間膨れが塗膜全面に発生しているもの
【0071】
(日射反射率の測定)
隠蔽率試験紙の黒部塗面に、2液混合物を2kg/m塗布、硬化させて試験体を作成した。これを紫外・可視・近赤外分光光度計UV−3600(60Φ積分球付属装置ISR−3100付属、島津製作所製)で分光反射率を測定した。また、これよりJISK5602に準じて日射反射率を算出した。ただし、分光反射率はスペクトラロン標準反射板(Labsphere社製)を用い、入射角8度における拡散反射(正反射成分も含む)を測定した。結果を表5に示した。
【0072】
【表5】

【0073】
表5より、混合物の明度Lが高くなると、日射反射率は大きくなり、塗膜の表面温度は低くなる傾向がみられていることから、混合物の明度L、日射反射率、塗膜の表面温度には相関性があるといえる。
主剤を濃色、硬化剤を淡色にした実施例1の塗膜材を用いた実施例12は、混合物の明度Lが高く、日射反射率も大きく、塗膜の表面温度は低くなっており、層間膨れは発生しなかった。
【0074】
実施例3の塗膜材を用いた実施例13は、実施例1の塗膜材を用いた実施例12において混合物の明度が若干低い例である。塗膜の表面温度は実施例1の塗膜材を用いた実施例12よりやや高く、日射反射率もやや低い値を示した。2層目の塗布量が3kg/mの場合では層間膨れが一部発生したが、真夏の炎天下、断熱材上で、層間膨れ試験を行う非常に厳しい試験のため、実用上としては問題ない。2kg/m施工した場合は層間膨れの発生はなかった。
【0075】
実施例6の塗膜材を用いた実施例14は、主剤、硬化剤ともに淡色である場合の例である。実施例1及び3の塗膜材を用いた実施例12及び13と比較して、混合物の明度Lが更に高く、日射反射率はさらに大きく、塗膜の表面温度はさらに低くなっており、層間膨れは発生しなかった。
【0076】
主剤が無色透明、硬化剤を濃色にした従来の例である比較例1の塗膜材を用いた比較例5は、実施例1、3及び6の塗膜材を用いた実施例12〜14に比較して、混合物のL表色系による明度Lが低く、日射反射率も小さく、塗膜の表面温度は高くなっており、何れの塗布量でも層間膨れが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、2液混合時に発生する混合不良のトラブルが防止され、更に夏場の施工時に発生する塗膜の発泡によるトラブルをも防止された、防水材、床材等に使用される2液型ウレタン系塗膜材およびそれを用いた施工方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物を含有する主剤および、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤からなる2液混合型ウレタン系塗膜材であって、主剤と硬化剤の混合液と硬化剤との色差ΔEが7以上であり、また主剤の明度Lが60以下であるように、主剤および硬化剤を着色した2液混合型ウレタン系塗膜材。
【請求項2】
主剤の着色剤が有機顔料である請求項1記載の2液混合型ウレタン系塗膜材。
【請求項3】
主剤の着色剤が無機顔料である請求項1記載の2液混合型ウレタン系塗膜材。
【請求項4】
硬化剤をその明度Lが50以上となるように着色した請求項1〜3のいずれか1項記載の2液混合型ウレタン系塗膜材。
【請求項5】
主剤と硬化剤との混合物の明度Lが50以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の2液混合型ウレタン系塗膜材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の2液混合型ウレタン系塗膜材を用いてなるウレタン系塗膜の施工方法。
【請求項7】
2液が混合されたことを、主剤および硬化剤の混合物と硬化剤との色の違いから判断する請求項6記載の施工方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項記載の2液混合型ウレタン系塗膜材を用いてなる塗膜を構造物の下地材上に積層してなる積層構造。
【請求項9】
請求項6または7記載の施工方法を用いて構造物の下地材上に塗膜を積層してなる積層構造。

【公開番号】特開2010−285587(P2010−285587A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142762(P2009−142762)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(594162663)アイシーケイ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】