説明

ウレタン組成物

【課題】どの様な材料にも強い接着力を有し且つ柔軟性のある連続皮膜を形成する、揮発性有機溶剤を低減化した、柔軟性被着体に適した接着剤およびプライマーを提供すること。
【解決手段】接着力が高く且つ柔軟な塗膜を形成する接着剤またはプライマーの開発に際し、低分子量多官能ポリイソシアネート化合物とアルキレンカーボネートおよびウレタン化触媒の3成分系組成物によって、所望する接着剤およびプライマーを得ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い接着性を有し且つ柔軟性の付与された、接着剤またはプライマー等に利用されるウレタン材料に関するものである。更に詳しくは、柔軟性を有する建築物の主に屋上、屋根、壁、庇、ベランダなどの防水工事や補修工事に用いるポリウレタン塗膜防水材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、ポリヒドロキシ化合物(以下ポリオールと称す)とジイソシアネート化合物との反応で得られる両末端にイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーを揮発性有機溶剤に溶解した1成分湿気硬化型ウレタン材料が専ら使用され、その用途目的は高硬度無機基材にウレタン材料を接着しようとするものであり、必然的に無機基材の硬度に近似させた接着剤およびプライマーであった。
【0003】
ウレタン系接着剤またはプライマーには、塗工作業性を確保することを目的に多量の揮発性有機溶剤が使用されていることから、環境を著しく悪化するのみならず、内分泌攪乱物質や有機溶剤中毒予防規則対象物質等に関連する健康障害を引き起こすことになる。また硬化塗膜物性から推定し、従来品技術では極めて硬度の高い脆い性質を有している。これは被着体としてコンクリート面を想定して分子設計されていることが原因と考えられる。このような硬度の高い接着剤またはプライマーを、柔軟性を有する被着体上に用いると、建築物躯体の動きや、被着体の寒暖による伸縮性等の外的要因によって接着剤またはプライマー層が亀裂破断するだけではなく、被着体自身の破断要因となる危険性が生じる。逆に分子設計の段階で柔軟性を付与する方法としてプレポリマーの分子量を大きくする方法が考えられるが、分子量の肥大化に伴い接着力の低下をきたすばかりか、プレポリマーの粘度が著しく上昇し、作業性を維持するための希釈有機溶剤量が著しく増加し、環境汚染の原因となる。
【0004】
ウレタン系カーボネートプライマーに関しては、プラスチックレンズ基材表面上に塗布、硬化するプラスチックレンズ基材へのプライマー層の形成方法がある。(例えば、特許文献1参照)。これは、ポリアルキレングリコール類、ポリ(アルキレンカーボネート)類等から選ばれる活性水素含有化合物とポリイソシアネートとのウレタン溶液からなるプラスチックレンズ用プライマー組成物を、プラスチックレンズ基材へのプライマー層の形成方法に使用するものである。ここで使用されているポリ(アルキレンカーボネート)類とは、ポリ(アルキレンカーボネート)系ポリオールのことである。
【特許文献1】特公平7−109441
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、どの様な材料にも強い接着力を有し且つ柔軟性のある連続皮膜を形成する、揮発性有機溶剤を低減化した、柔軟性被着体に適した接着剤およびプライマーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、接着力が高く且つ柔軟な塗膜を形成する接着剤またはプライマーの開発に際し、低分子量多官能ポリイソシアネート化合物とアルキレンカーボネートおよびウレタン化触媒の3成分系組成物によって、所望する接着剤およびプライマーが得られることを突き止め、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち本発明は、多官能ヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物の反応で得られるイソシアネートアダクト体である多官能イソシアネート化合物(A)、多官能イソシアネート化合物(A)に対して、0.3〜22モル比のアルキレンカーボネート化合物の1種類または2種類以上の混合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.0001〜2質量部であるウレタン化反応触媒(C)の3成分で構成され、(A)、(B)、(C)、各成分を施工時に混合して使用することを特徴とするウレタン接着剤である。
【0008】
また本発明は、前記した多官能イソシアネート化合物(A)が、多官能ヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物の反応で得られるイソシアネートアダクト体であるウレタン接着剤であり、前記したアルキレンカーボネート化合物(B)が、一般式[1]で表される化合物であるウレタン接着剤であり、前記したウレタン化反応触媒(C)が、アミン系触媒または有機錫系触媒または有機ビスマス系触媒であるウレタン接着剤である。
さらに本発明のウレタン接着剤は、プライマーとして使用することができる。
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記ウレタン系カーボネートプライマーは、鉄筋コンクリート造り建築物の屋根および外壁などの防水工事や老朽化による建造物のひび割れ等の補修工事用プライマー、
また、下地のコンクリートやモルタル等の接着剤として、また補修前のウレタン防水層(基材)との塗り重ね用プライマーとしても使用できる。弾力性のある基材と層間剥離を起こす危険性が極めて少なく可とう性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用されるA成分である多官能イソシアネート化合物としては、トリメチロールプロパンやグリセリンのような低分子量ポリヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物との反応で得られるアダクト体(例えばコロネートLシリーズ:日本ポリウレタン工業(株)製)やジイソシアネート化合物のポリイソシアヌレート体のような3量体化ポリイソシアネート化合物(例えばコロネートHXやEHシリーズ:日本ポリウレタン工業(株)製)やポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物との反応で得られるミリオネートCS−100(保土谷建材工業(株)製)等が挙げられる。
具体的にアダクト体として使用するイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、およびこれらに水添した化合物、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(粗製MDI)、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、1種類または2種類以上の混合物でも良い。
また、低分子量ポリヒドロキシ化合物としては、上記トリメチロールプロパンやグリセリン以外にエチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用されるアルキレンカーボネートは、ヒドロキシアルキル化剤として使用される化合物で、酸またはアルカリ性触媒の存在下において脱炭酸反応で開環し、アルキレンオキシドを生成することが知られている化合物を指し、無色無臭の高沸点溶剤としても有用な物質であることが知られている。このアルキレンカーボネートの中でも好ましいのは、一般式[1]で表される化合物であり、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,2−イソブチレンカーボネートである。これらのカーボネートを1種類あるいは2種類以上を混合して使用する。
またアルキレンカーボネートとのモル比は、系内の多官能イソシアネート化合物に対して0.3〜22である。0.3未満では形成塗膜に柔軟性が付与されず、23以上では塗膜の硬化が遅く、ウレタン塗膜との接着不良が発生し十分な皮膜を形成しない。
【0014】
本発明で使用されるウレタン化反応を促進する触媒としては、有機錫化合物、例えばラウリル酸ジ−n−ブチル錫やアミン系触媒としてU−CATシリーズ(サンアプロ社製)等が挙げられる。また、モノアミン類触媒、ジアミン類触媒、トリアミン類触媒、環状アミン類触媒、アルコールアミン類触媒、エーテルアミン類触媒、有機ビスマス系触媒、有機鉛系触媒も使用できる。好ましくは、アミン系触媒であるU−CAT 660M(サンアプロ社製)である。これらの1種類または2種類以上を混合して使用することができる。その使用量に関しては所望する硬化速度が得られる量であって、季節的因子等を考慮すれば、使用直前の混合系内に多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)との合計量100質量部に対して0.0001〜2質量部が望ましい。
【0015】
なお、本発明では必要に応じてシランカップリング剤を使用直前の混合系内に添加使用することにより、ウレタン塗膜防水層等の基材との接着力向上に効果がある。
使用するシランカップリング剤としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基を持つものが挙げられ、その配合量は多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)およびウレタン化反応触媒(C)との合計量100質量部に対して0.01〜5質量部である。
【0016】
本発明では必要に応じてウレタン化反応触媒(C)にはじき防止剤を混合・溶解して使用することができ、基材であるウレタン塗膜層表面のぬれを改善することにより接着力向上に効果がある。効果のあるはじき防止剤としては、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン系のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)、アクリルポリマー系のBKY−350(同上)、アクリルポリマー/シリコーン系のポリフローNo.55(共栄社化学(株)製)等が挙げられ、その配合量は多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)およびウレタン化反応触媒(C)との合計量100質量部に対して0.05〜3質量部である。
【0017】
また、本発明では必要に応じてセメント(ポルトランドセメント等)と配合して使用することもできる。そのセメントの配合割合は、多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)およびウレタン化反応触媒(C)との合計量100質量部に対して10〜300質量部である。
【実施例1】
【0018】
3成分系調合剤または2成分系調合剤をガラス瓶中に封入し、23℃における6カ月保存後の貯蔵経時安定性を観察した。観察結果は、[表1]の通りである。
[表1]においては、試料No.1〜4が含有する成分について○印を付した。
【0019】
【表1】


[表1]に示すように、それぞれの組成物間で貯蔵経時安定性が異なっており、貯蔵経時安定性の悪い組合わせもあることから、組成物は2成分系とする必要がある。多官能イソシアネートとアルキレンカーボネート混合物を第1成分とし、ウレタン化触媒単独もしくはアルキレンカーボネートとウレタン化触媒との混合物を第2成分として、使用直前に混合することが条件となる。
【実施例2】
【0020】
次に、3成分の混合比と硬化時間および硬化塗膜物性、更にはウレタン材料との接着性の関係を検討した。
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)100質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.140質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液1とする。
この試料液1の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液1の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(プロピレンカーボネート(PC)/コロネートL(L)のモル比=9.5)
その結果を[表2]に示す。
【実施例3】
【0021】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)50質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.105質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液2とする。
この試料液2の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液2の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=4.8)
その結果を[表2]に示す。
【実施例4】
【0022】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)25質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.088質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液3とする。
この試料液3の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液3の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=2.4)
その結果を[表2]に示す。
【実施例5】
【0023】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)10質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.077質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液4とする。
この試料液4の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液4の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=1.0)
その結果を[表2]に示す。
【実施例6】
【0024】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)3質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.072質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液5とする。
この試料液5の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液5の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=0.3)
その結果を[表2]に示す。
【実施例7】
【0025】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)180質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.196質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液6とする。
この試料液6の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液6の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=17.1)
その結果を[表2]に示す。
【0026】
[比較例1]
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.070質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液に加えて均一に混合し試料液7とする。
この試料液7の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液7の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=0)
その結果を[表2]に示す。
アルキレンカーボネートを使用しないと、皮膜が形成されないことがわかる。
【0027】
[比較例2]
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)250質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.245質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液8とする。
この試料液8の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液8の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=23.8)
その結果を[表2]に示す。
PC/Lモル比が大き過ぎると、皮膜が十分に硬化しないことがわかる。
【実施例8】
【0028】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別にエチレンカーボネート(東京化成品試薬)100質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.140質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液9とする。
この試料液9の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液9の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(EC/Lモル比=11.0)
その結果を[表3]に示す。
【実施例9】
【0029】
2官能イソシアネートであるトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製)とポリオキシプロピレングリコールとの反応化合物であるミリオネートCS−100主剤(保土谷建材工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)50質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.750質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液10とする。
この試料液10の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液10の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/CS−100モル比=8.6)
その結果を[表3]に示す。
【実施例10】
【0030】
2官能イソシアネートであるトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製)とポリオキシプロピレングリコールとの反応化合物であるミリオネートCS−100主剤(保土谷建材工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別にエチレンカーボネート(東京化成品試薬)100質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.750質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液11とする。
この試料液11の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液11の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(EC/CS−100モル比=19.9)その結果を[表3]に示す。
【実施例11】
【0031】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)100質量部に1%ジブチル錫ジラウレートキシレン溶液(堺化学工業(株)製)0.900質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液12とする。
この試料液12の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液12の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=9.5)
その結果を[表3]に示す。
【実施例12】
【0032】
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別に1,2−プロピレンカーボネート(日曹油化工業(株)製)100質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.900質量部とはじき防止剤のBKY−307(ビックケミー・ジャパン社製)0.4質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液13とする。
この試料液13の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液13の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。(PC/Lモル比=9.5)
その結果を[表3]に示す。
【0033】
[比較例3]
多官能イソシアネート化合物であるコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部を酢酸エチル100質量部に溶解しA液とする。別にフタル酸−2−エチルヘキシル100質量部にU−CAT660M(サンアプロ社製)0.140質量部を溶解しB液とし、先のA液と均一に混合し試料液14とする。
この試料液14の一部をガラス製型枠に流し、厚さ0.1〜0.2mmのフィルムを作製した。また、この試料液14の一部をウレタン塗膜防水材HCエコプルーフ(保土谷建材工業(株)製JISA6021適合品)の上に0.2kg/m2となるように塗布し、タック消失時間および接着挙動の変化を追跡した。その結果を[表3]に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
実施例から、低分子量多官能ポリイソシアネート化合物とアルキレンカーボネートおよびウレタン化触媒の3成分の組成物によって、皮膜の柔軟性が発現していることは明りょうである。特に1,2−プロピレンカーボネートはその柔軟性付与効果が大きい。一方、比較例3で示す一般的に可塑剤と呼ばれる高沸点液状物の添加では皮膜を形成せず、低沸点有機溶媒添加では皮膜形成はするが硬度の高い脆い皮膜となり、本発明のウレタン接着剤およびプライマーの有用性は歴然である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
鉄筋コンクリート造り建築物の屋根および外壁などの防水工事や老朽化による建造物のひび割れ等の補修工事に用いる塗膜防水材、下地のコンクリートやモルタル、更には補修前のウレタン防水層(基材)との塗り重ね等の施工に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能ヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物の反応で得られるイソシアネートアダクト体である多官能イソシアネート化合物(A)、多官能イソシアネート化合物(A)に対して、0.3〜22モル比のアルキレンカーボネート化合物の1種類または2種類以上の混合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(A)とアルキレンカーボネート化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.0001〜2質量部であるウレタン化反応触媒(C)の3成分で構成され、(A)、(B)、(C)、各成分を施工時に混合して使用することを特徴とするウレタン接着剤。
【請求項2】
前記したアルキレンカーボネート化合物(B)が、一般式[1]で表される化合物である請求項1記載のウレタン接着剤。
【化1】


[式中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。]
【請求項3】
前記したウレタン化反応触媒(C)が、アミン系触媒または有機錫系触媒である請求項1記載のウレタン接着剤。
【請求項4】
前記したウレタン接着剤が弾力性のある基材を対象とすることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの項に記載のウレタン接着剤。
【請求項5】
前記したウレタン接着剤を、プライマーとして使用することを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの項に記載のウレタン接着剤。

【公開番号】特開2007−106993(P2007−106993A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248959(P2006−248959)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【出願人】(392035064)保土谷建材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】