説明

ウレタン結合を有するブロック共重合体及びそれを含有するゴム組成物

【課題】ゴム組成物の耐摩耗性を改良する。
【解決手段】少なくとも1つのポリイソプレン系ブロック(A)と少なくとも1つのポリブタジエン系ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、両ブロック(A)と(B)の結合部位にウレタン結合を有するブロック共重合体である。また、ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤20〜150重量部と、該ブロック共重合体1〜25重量部を含有するゴム組成物であり、該ジエン系ゴムとしては、天然ゴム又は合成イソプレンゴム、及び、ブタジエンゴムからなるものが好適である。上記ブロック共重合体は、ウレタン結合部位が分子間水素結合することにより、外部より入力されるエネルギーに対し、可逆的に切断・結合を起こすことでエネルギーを緩和させ、耐摩耗性を改良することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックからなるブロック共重合体、及び、該ブロック共重合体を含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤのゴム原料として、天然ゴムとブタジエンゴムをブレンドしたものが広く用いられている。そして、かかる天然ゴムとブタジエンゴムのブレンド系において、機械的強度の改善を目的として、イソプレン−ブタジエンブロック共重合体を相溶化剤として配合する方法が提案されている(下記非特許文献1参照)。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ポリイソプレン系ゴムとポリブタジエン系ゴムの合計量100重量部に対して、1,4−シス結合含量が40重量%以上のポリブタジエン系ブロックとポリイソプレン系ブロックとからなるブロック共重合体を0.5〜25重量部配合することが提案されている。
【0004】
一方、下記特許文献2には、ゴム組成物に配合する変性ポリマーとして、ポリブタジエンやポリイソプレンの末端に、ウレタン結合を介してアルコキシシリル基などの有機ケイ素官能基を導入したものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−012702号公報
【特許文献2】特開2005−350603号公報
【非特許文献1】David J. Zanzig他4名, "IBR BLOCK COPOLYMERS AS COMPATIBILIZERS IN NR/BR BLENDS", RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, Vol.66, p538-549, 1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックからなる共重合体を相溶化剤として用いることは開示されている。しかしながら、ポリブタジエン系ブロック中の1,4−シス結合含量のみに注目したものであり、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックの結合部位にウレタン結合を導入することについては沈黙している。
【0006】
一方、上記特許文献2では、ポリブタジエンやポリイソプレンにウレタン結合を導入することは開示されている。しかしながら、ポリマーの末端にウレタン結合を介した有機ケイ素官能基を導入することにより、シリカの分散性を向上することを意図したものであり、ポリマーの内部にウレタン結合を導入することは開示されていない。すなわち、特許文献2では、その段落0014に記載されているように、末端に水酸基を持つポリブタジエンやポリイソプレンに、イソシアネート基及びアルコキシ基を有するシラン化合物を反応させることで、末端にウレタン結合を介してアルコキシシリル基を導入している。あるいはまた、末端に水酸基を有するポリブタジエンやポリイソプレンに、2つ以上イソシアネート基を有する化合物を反応させて末端にウレタン結合を有するウレタンプレポリマーを得て、これに一級もしくは二級アミン又は水酸基を有するアルコキシシリル基を持つシラン化合物を反応させることにより、末端にウレタン結合を介してアルコキシシリル基を導入している。このように、特許文献2は、あくまでポリマーの末端にウレタン結合を導入するものであり、後述する本発明の特徴を何ら開示するものではない。
【0007】
本発明者は、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックからなるブロック共重合体において、両ブロックの結合部位にウレタン結合を導入することで、該ブロック共重合体を配合したゴム組成物の耐摩耗性を改良できることを見い出し、本発明を完成にするに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ゴム組成物における耐摩耗性を改良することができる新規なブロック共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るブロック共重合体は、少なくとも1つのポリイソプレン系ブロックと少なくとも1つのポリブタジエン系ブロックとからなるブロック共重合体であって、前記ポリイソプレン系ブロックと前記ポリブタジエン系ブロックとの結合部位にウレタン結合を有するものである。
【0010】
また、本発明に係るゴム組成物は、該ブロック共重合体を配合したものであり、詳細には、ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤20〜150重量部と、該ブロック共重合体1〜25重量部を含有することが好ましい。また、該ジエン系ゴムとしては、天然ゴム又は合成イソプレンゴム、及び、ブタジエンゴムからなるものが特に好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブロック共重合体であると、ゴム組成物に配合した場合に、その耐摩耗性を改良することができる。これは、該ブロック共重合体がポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックとの結合部位にウレタン結合を有し、このポリマー内部に導入されたウレタン結合部位が分子間水素結合することによるものと考えられる。すなわち、該分子間水素結合は、可逆的な物理結合であるため、外部より入力されるエネルギーに対し、可逆的に切断・結合を起こすことができ、エネルギーを緩和させるものと考えられる。
【0012】
また、該ブロック共重合体は、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックを持ち、これらのブロックは、ゴム組成物中のジエン系ゴムとともに共加硫可能であるため、機械的強度を維持やすい。
【0013】
また、ゴム組成物のジエン系ゴムとして、天然ゴム又は合成イソプレンゴム、及び、ブタジエンゴムからなるものを用いた場合、前記ブロック共重合体が、ポリイソプレン系ブロックとポリブタジエン系ブロックを有するため、相溶化剤的に作用し、マトリクスゴム中での分散不良等の問題を抑制して、機械的強度を一層維持しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0015】
本発明に係るブロック共重合体は、ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)とからなるIR−BRブロック共重合体であって、両ブロック(A)と(B)の結合部位にウレタン結合を有するものである。
【0016】
上記ポリイソプレン系ブロック(A)は、イソプレン(即ち、2−メチル−1,3−ブタジエン)単位を主たる構成単位とするブロックである。ブロック(A)中のイソプレン単位含量は70重量%以上であることが好ましく、より好ましくは90重量%以上であり、100重量%が特に好ましい。
【0017】
ポリイソプレン系ブロック(A)を構成し得る他の単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン、スチレンなどの芳香族ビニル、エチレン、プロピレン、イソブテンなどのオレフイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらの単量体単位は、ポリイソプレン系ブロック(A)中でランダムに結合されていることが好ましい。
【0018】
ポリイソプレン系ブロック(A)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量(Wn)は1000〜5000であることが好ましい。より好ましくは、該数平均分子量は1500〜3500である。該数平均分子量が小さすぎると、ゴム組成物中に配合するジエン系ゴムとの親和性が損なわれる。逆に大きすぎると、ブロック共重合体全体の分子量が大きくなって、加工性の改良効果が得られにくくなる。
【0019】
上記ポリブタジエン系ブロック(B)は、1,3−ブタジエン単位を主たる構成単位とするブロックである。ブロック(B)中の1,3−ブタジエン単位含量は70重量%以上であることが好ましく、より好ましくは90重量%以上であり、100重量%が特に好ましい。
【0020】
ポリブタジエン系ブロック(B)を構成し得る他の単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどの1,3−ブタジエン以外の共役ジエン、スチレンなどの芳香族ビニル;エチレン、プロピレン、イソブテンなどのオレフイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらの単量体単位は、ポリブタジエン系ブロック(B)中でランダムに結合されていることが好ましい。
【0021】
ポリブタジエン系ブロック(B)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量(Wn)は1000〜5000であることが好ましい。より好ましくは、該数平均分子量は1500〜3500である。該数平均分子量が小さすぎると、ゴム組成物中に配合するジエン系ゴムとの親和性が損なわれる。逆に大きすぎると、ブロック共重合体全体の分子量が大きくなって、加工性の改良効果が得られにくくなる。
【0022】
上記ブロック共重合体は、ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)とを、それぞれ少なくとも1つ有するものである。結合形式としては、(A)−(B)、(A)−(B)−(A)、(B)−(A)−(B)、((A)−(B))n(但し、nは2以上)などが挙げられる。好ましくは、少なくとも3つのブロックから構成されるものである。すなわち、(A)−(B)−(A)、(B)−(A)−(B)、又は、これらにブロック(A)及び/又は(B)が更に付加されたものが好適である。3つ以上のブロックから構成されることにより、ブロック共重合体中におけるウレタン結合の数が増え、上記の分子間水素結合によるエネルギー緩和効果が大きくなるためである。
【0023】
ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)との比率は、重量比で、(A):(B)=10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは、(A):(B)=30:70〜70:30である。
【0024】
上記ブロック共重合体において、ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)はウレタン結合を介して結合される。より好ましくは、ブロック(A)とブロック(B)は、下記一般式(1)で表される結合基を介して結合されることである。
【0025】
−O−CO−NH−R−NH−CO−O− …(1)
式(1)中、Rは2価有機基であり、具体的には、ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基が挙げられる。
【0026】
上記ブロック共重合体は、末端に水酸基を持つポリイソプレン系ポリマーと、末端に水酸基を持つポリブタジエン系ポリマーとを、ジイソシアネート化合物を介して結合することにより合成することが好適である。ジイソシアネート化合物を用いることにより、ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)との結合部位にウレタン結合を容易に導入することができる。また、この場合、ブロック共重合体の末端に水酸基を持たせることができるので、表面に極性基を持つ充填剤との親和性を向上することができる。
【0027】
より好ましくは、数平均分子量が1000〜5000である水酸基末端液状ポリイソプレン系ポリマーと、数平均分子量が1000〜5000である水酸基末端液状ポリブタジエン系ポリマーと、ジイソシアネート化合物とから上記ブロック共重合体を合成することである。
【0028】
具体的な合成方法としては、水酸基末端ポリイソプレン系ポリマーと水酸基末端ポリブタジエン系ポリマーのいずれか一方に対し、その末端の水酸基にジイソシアネート化合物を反応させてウレタン結合を形成することで、ジイソシアネート化合物を導入する。次いで、この末端にジイソシアネート化合物を導入した上記一方のポリマーに対して、他方のポリマーを加えて、該他方のポリマーの末端の水酸基と上記ジイソシアネート化合物の未反応のイソシアネート基を反応させる。これにより、上記一方のポリマーと他方のポリマーとをジイソシアネート化合物を介して結合することができる。
【0029】
このようにして合成されるブロック共重合体は、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)を主成分とするものであるが、反応条件などによっては、(A)−(B)などの他の結合形式のものも混在した状態で合成され、本発明ではそのような混合物を用いることもできる。
【0030】
ジイソシアネート化合物の具体例としては、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)などが挙げられる。
【0031】
該ブロック共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量(Wn)は2000〜500000であることが好ましく、より好ましくは3000〜100000、更に好ましくは4000〜20000、特に好ましくは5000〜10000である。該数平均分子量が小さすぎると、機械的強度を確保することが難しくなる。逆に大きすぎると、加工性が損なわれる。特に、該ブロック共重合体の数平均分子量が10000以下であると、ゴム組成物に配合した場合に、ムーニー粘度の低下が見られ、加工性が改良される。
【0032】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム及び充填剤とともに、上記ブロック共重合体を含有するものである。
【0033】
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられ、これらはいずれか単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0034】
ジエン系ゴムとして、好ましくは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、及びブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種を用いることであり、更には、天然ゴム又は合成イソプレンゴムのイソプレン系ゴムと、ブタジエンゴムとのブレンド(IR/BR配合)を用いることである。かかるIR/BR配合であると、ポリイソプレン系ブロック(A)とポリブタジエン系ブロック(B)を有する上記ブロック共重合体が相溶化剤として作用するので、該ブロック共重合体のマトリクスゴム中への分散を良好にして、機械的強度を効果的に維持することができる。
【0035】
上記イソプレン系ゴム(NR、IR)とブタジエンゴム(BR)を併用する場合、ジエン系ゴムは、イソプレン系ゴム20〜90重量%と、ブタジエンゴム80〜10重量%とからなることが好ましく、より好ましくは、イソプレン系ゴム50〜90重量%と、ブタジエンゴム50〜10重量%とからなることである。この場合、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムを主成分(即ち、ジエン系ゴム中の比率で50重量%以上)とするものであれば、残部にスチレン−ブタジエンゴム(SBR)などの他のジエン系ゴムを含有するものであってもよい。
【0036】
上記充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、ゼオライトなどの各種無機充填剤を用いることができ、これらはいずれか単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、カーボンブラック、シリカ、又は、カーボンブラックとシリカの併用である。なお、シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。
【0037】
該充填剤は、ジエン系ゴム100重量部に対し、20〜150重量部配合され、より好ましくは20〜100重量部配合されることである。また、上記ブロック共重合体は、ジエン系ゴム100重量部に対し、1〜25重量部配合され、より好ましくは2〜10重量部配合されることである。ブロック共重合体の配合量が1重量部よりも少ないと、耐摩耗性の改良効果が不十分となる。逆にブロック共重合体の配合量が30重量部以上では、機械的強度や発熱性が悪化する傾向となる。
【0038】
本発明に係るゴム組成物には、上記した成分の他に、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、可塑剤、亜鉛華、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム用の各種添加剤を配合することができる。
【0039】
本発明に係るゴム組成物は、タイヤを始めとして、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種ゴムに用いることができる。特には、該ゴム組成物は、耐摩耗性に優れることから、タイヤ用トレッドゴム、更にはトラックやバスなどの重荷重用タイヤのトレッドゴム用として好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[合成例1(ブロック共重合体1の合成)]
両末端に水酸基を持つ水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産製「R−45HT」、数平均分子量=2800)100gと、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI、住化バイエルウレタン製「スミジュール44S」)41gを容器に入れ、撹拌しながら、70℃で2時間反応させた。これにより、液状ポリブタジエンの両末端の水酸基とMDIのイソシアネート基を反応させて、液状ポリブタジエンの両末端にウレタン結合を介してMDIを導入した。
【0042】
次いで、上記で得た末端にMDIを導入した液状ポリブタジエン100gと、両末端に水酸基を持つ水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産製「Poly ip」、数平均分子量=2500)145gを容器に入れ、撹拌混合した後、70℃で2時間反応させた。これにより、液状ポリブタジエンの両末端のMDIが持つ未反応のイソシアネート基と、液状ポリイソプレンの末端の水酸基を反応させて、ポリブタジエンブロック(B)の両末端にMDIを介してポリイソプレンブロック(A)を導入した(即ち、(A)−(B)−(A)の結合形式を持つ)ブロック共重合体1を合成した。
【0043】
得られたブロック共重合体1について、GPC分析を行って、数平均分子量を測定するとともに、13C−NMR分析を行って、ウレタン結合の存在の確認と、(A)と(B)の比率を求めた。
【0044】
GPC分析は、溶離液としてTHFを、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel−MIXED−E」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用いて行った。その結果、得られたブロック共重合体1の数平均分子量は8000であった。
【0045】
13C−NMR分析にはBRUKER社製「DPX400」を用い、試料の重クロロホルム溶液について室温にて測定した。その結果、カルボニル炭素シグナル(153.5ppm)により、ブロック結合部位におけるウレタン結合の存在が確認された。また、13C−NMRスペクトルから算出したブロック共重合体中の(A)の比率は65重量%であった。
【0046】
以上より、ブロック共重合体1は、主として、(A)−(B)−(A)の結合形式を持ち、ポリイソプレンブロック(A)とポリブタジエンブロック(B)が上記式(1)により示されるウレタン結合を含む結合基により結合された、末端が水酸基のウレタン結合含有ブロックポリマーであることが確認された。
【0047】
[合成例2(ブロック共重合体2の合成)]
両末端に水酸基を持つ水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産製「Poly ip」、数平均分子量=2500)100gと、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI、住化バイエルウレタン製「スミジュール44S」)41gを容器に入れ、撹拌しながら、70℃で2時間反応させた。これにより、液状ポリイソプレンの両末端の水酸基とMDIのイソシアネート基を反応させて、液状ポリイソプレンの両末端にウレタン結合を介してMDIを導入した。
【0048】
次いで、上記で得た末端にMDIを導入した液状ポリイソプレン100gと、両末端に水酸基を持つ水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産製「R−45HT」、数平均分子量=2800)150gを容器に入れ、撹拌混合した後、70℃で2時間反応させた。これにより、液状ポリイソプレンの両末端のMDIが持つ未反応のイソシアネート基と、液状ポリブタジエンの末端の水酸基を反応させて、ポリイソプレンブロック(A)の両末端にMDIを介してポリブタジエンブロック(B)を導入した(即ち、(B)−(A)−(B)の結合形式を持つ)ブロック共重合体2を合成した。
【0049】
得られたブロック共重合体2について、上記と同様、GPC分析と13C−NMR分析を行った。その結果、GPCによる数平均分子量は8000であった。また、13C−NMR分析において、カルボニル炭素シグナル(153.5ppm)により、ブロック結合部位におけるウレタン結合の存在が確認された。また、ブロック共重合体中の(A)の比率は40重量%であった。
【0050】
以上より、ブロック共重合体2は、主として、(B)−(A)−(B)の結合形式を持ち、ポリイソプレンブロック(A)とポリブタジエンブロック(B)が上記式(1)により示されるウレタン結合を含む結合基により結合された、末端が水酸基のウレタン結合含有ブロックポリマーであることが確認された。
【0051】
[ゴム組成物の調製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合に従い、実施例及び比較例の各タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。表1中の各成分は以下の通りである。
【0052】
・NR:天然ゴム(RSS#3)、
・BR:JSR製「BR01」、
・カーボンブラック:ISAF級、東海カーボン製「シースト6」、
・液状ポリブタジエン:出光興産製「R−45HT」(数平均分子量=2800)、
・液状ポリイソプレン:出光興産製「Poly ip」(数平均分子量=2500)。
【0053】
各ゴム組成物には、共通配合として、ジエン系ゴム100重量部に対し、亜鉛華(三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華1号」)3重量部、ステアリン酸(花王株式会社製「ルナックS−20」)2重量部、老化防止剤6C(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」)2重量部、ワックス(大内新興化学工業株式会社製「サンノック」)2重量部、硫黄(細井化学工業株式会社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」)2重量部、加硫促進剤CZ(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーCZ」)1重量部、及び、加硫促進剤D(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーD」)1重量部を配合した。
【0054】
各ゴム組成物について、ムーニー粘度、硬さ、引張強さ、破断伸び、及び、耐摩耗性を測定・評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0055】
・ムーニー粘度:JIS K6300に準拠して(L形ロータ)、予熱1分、測定4分、温度100℃にて測定。
【0056】
・硬さ:150℃×30分で加硫した試験片(長さ×幅×厚み=45mm×45mm×12mm)について、JIS K−6253に準拠して、タイプAデュロメータ(A型)を用いて、23℃で硬度を測定。
【0057】
・引張強さ、破断伸び:JIS K−6251に準拠し、150℃×30分で加硫した試験片(ダンベル3号形)につき、島津製作所製「オートグラフSES1000」を用いて、測定を行った。
【0058】
・耐摩耗性:150℃×30分で加硫した試験片について、JIS K−6264に準拠したランボーン摩耗試験機を用いて測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【表1】

【0059】
表1に示すように、ポリマー内部にウレタン結合を含有するIR−BRブロック共重合体を、天然ゴムとブタジエンゴムからなるジエン系ゴムに配合した実施例1〜6では、硬さを維持しつつ、また引張特性も実質的に損なわずに、耐摩耗性が大幅に改良されていた。また、該ブロック共重合体を配合することで、ムーニー粘度の低下がみられ、加工性が改良されることが分かった。このようにムーニー粘度が下がるにもかかわらず、硬さは実質的に維持されていた。
【0060】
これに対し、上記ブロック共重合体の代わりに、液状ポリイソプレンと液状ポリブタジエンを、ブロック共重合体1と同等の組成で単に混合して添加した比較例2では、ムーニー粘度は下がるものの、硬さも低下し、また、耐摩耗性の改良効果も得られなかった。また、比較例3(但し、請求項3に対する比較例)に示すように、上記ブロック共重合体の配合量が多すぎると、硬さを維持できず、引張特性も悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るブロック共重合体は、タイヤを始めとして、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種のゴム組成物に配合して用いることができる。該ブロック共重合体を配合することでゴム組成物の耐摩耗性を改良することができるので、耐摩耗性が要求されるタイヤ用トレッドゴム、特にはトラックやバスなどの重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴム用として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリイソプレン系ブロックと少なくとも1つのポリブタジエン系ブロックとからなるブロック共重合体であって、前記ポリイソプレン系ブロックと前記ポリブタジエン系ブロックとの結合部位にウレタン結合を有するブロック共重合体。
【請求項2】
前記ポリイソプレン系ブロックの数平均分子量が1000〜5000であり、前記ポリブタジエン系ブロックの数平均分子量が1000〜5000であり、前記ポリイソプレン系ブロックと前記ポリブタジエン系ブロックとが下記一般式(1)で表される結合基を介して結合された、請求項1記載のブロック共重合体。
−O−CO−NH−R−NH−CO−O− …(1)
(式中、Rは2価有機基である。)
【請求項3】
ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤20〜150重量部と、請求項1記載のブロック共重合体1〜25重量部を含有するゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム又は合成イソプレンゴム、及び、ブタジエンゴムからなる、請求項3記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項3又は4記載のゴム組成物を用いてなるタイヤ用トレッドゴム。

【公開番号】特開2008−231272(P2008−231272A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73697(P2007−73697)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】