説明

ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】有機スズ化合物を使用しないウレタン(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。また着色の少ないウレタン(メタ)アクリレートを提供する。
【解決手段】原料として少なくともポリイソシアネート化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b)を使用するウレタン(メタ)アクリレートの製造方法において、ウレタン化反応の触媒としてM(L)nで表される触媒を用いる。但し、Mは中心金属であって、Fe、Mn、Cu、Zr、Ti、Ni又はBiを表し、Lは配位子であって、β−ジケトン、ハロゲン原子、アルキル基、アシルオキシ基、アシル基又はアルコキシ基を表す。nは中心金属の価数と配位子の配位座数により定まる整数値である。得られたウレタン(メタ)アクリレート含有物中に残存する前記触媒の配位子Lを特定の配位化合物を用いて配位子交換させて、ウレタン(メタ)アクリレートの着色を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法に関する。また、着色の少ないウレタン(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリレート又はメタクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」という)は光重合開始剤の存在下で、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により硬化するため、活性エネルギー線硬化型組成物の配合成分として用いられている。活性エネルギー線硬化型組成物は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより短時間で硬化し、強靭性、柔軟性、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性等の優れた特性を有する硬化物を形成できる。このことから、木工用、塩ビ床材用、プラスチック成型品用、プラスチックフィルム用、光ファイバー被覆材用、光ディスク被覆材用等の多くの産業用途に使用されている。
【0003】
このような活性エネルギー線硬化型組成物としては、アクリル系オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤から構成される組成物が知られている。アクリル系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その中でもウレタン(メタ)アクリレートは、その硬化物が硬度、柔軟性、耐水性及び基材密着性に優れるため、活性エネルギー線硬化型組成物の成分として広く用いられている。
【0004】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレートを、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTDL」という)等の有機スズ化合物の存在下でウレタン化反応させて製造されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、上記有機スズ化合物は、毒性が指摘されており、人体への有害性が問題となっている。又、ウレタン(メタ)アクリレートの製造においては、得られるウレタン(メタ)アクリレートの粘度が高いため水洗が困難であり、又水洗できたとしても、液液分離が困難であるため、有機スズ化合物は分離、除去されずに残存している。そこで、有機スズ化合物を使用することなくウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法が求められている。
【0006】
有機スズ化合物を使用せず、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法として、アミン化合物を使用する方法が挙げられる。しかし、アミン化合物は、一般的に有機スズ化合物と比較して、反応活性が低い。このため生産性を上げるためには触媒量を増やさなければならない。その結果、得られるウレタン(メタ)アクリレートが着色したり、硬化物の物性が低下したりするという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−220240号公報
【特許文献2】特開平5−306323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機スズ化合物を使用することなく、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することを目的とする。さらに、着色の少ないウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の本発明〔1〕および〔2〕によって解決される。
【0010】
〔1〕原料として少なくともポリイソシアネート化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b)を使用するウレタン(メタ)アクリレートの製造方法において、ウレタン化反応の触媒として式(1)で表される触媒を用いるウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【0011】
M(L)n ・・・式(1)
式(1)において、Mは中心金属であって、Fe、Mn、Cu、Zr、Ti、Ni又はBiを表し、Lは配位子であって、β−ジケトン、ハロゲン原子、アルキル基、アシルオキシ基、アシル基又はアルコキシ基を表す。nは中心金属の価数と配位子の配位座数により定まる整数値である。
【0012】
〔2〕前記方法により得られたウレタン(メタ)アクリレート含有物に対して配位化合物を加えて、該ウレタン(メタ)アクリレート含有物中の前記式(1)で表される触媒の配位子Lを前記配位化合物に由来の配位子に配位子交換させる、改質されたウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、有機スズ化合物を使用することなく、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。また、着色の少ないウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
<式(1)で表される触媒>
式(1)で表される触媒はウレタン化反応触媒として用いられる化合物である。式(1)において、Mは中心金属であって、Fe、Mn、Cu、Zr、Ti、Ni又はBiを表し、Lは配位子であって、β−ジケトン、ハロゲン原子、アルキル基、アシルオキシ基、アシル基又はアルコキシ基を表す。nは中心金属の価数と配位子の配位座数により定まる整数値である。反応活性の点からMはFeまたはTiであることが好ましく、より好ましくはFeである。また、黄色度の点からMはZrが好ましい。
【0016】
β−ジケトンとしては、例えば以下のものが挙げられる。アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ノナンジオン、2,8−ジメチルノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニルtert−ブチル及びヘキサフルオロアセチルアセトン。反応活性の点から、アセチルアセトン、またはヘキサフルオロアセチルアセトンであることが好ましい。
【0017】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0018】
アルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
【0019】
アシルオキシ基としては、例えば、炭素数3〜20のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、ペンタノイロキシ基、ヘキサノイロキシ基、2−エチルヘキサノイロキシ基、オクタノイロキシ基、ノナノイロキシ基、デカノイロキシ基、ドデカノイロキシ基及びオクタデカノイロキシ基等が挙げられる。
【0020】
アシル基としては、例えば、炭素数3〜20のアシル基が好ましく、具体的には、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基及びオクタデカノイル基等が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及び2−エチルヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0022】
Lは、上記のいずれか1種でも良く、2種以上の組み合わせでも良い。これらの中でも、β−ジケトンまたはハロゲン原子が好ましい。さらに、アセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、塩素原子または臭素原子がより好ましく、反応液や組成物への溶解性に優れる点から、アセチルアセトンが最も好ましい。
【0023】
式(1)で表される触媒の添加量は、ポリイソシアネート化合物1モル当量に対して2.0×10-7モル当量から1.2×10-2モル当量の間が好ましく、2.0×10-6モル当量から2.4×10-3モル当量の間がより好ましい。その配合量がポリイソシアネート化合物1モル当量に対して2.0×10-7モル当量以上であれば反応速度が速くなる。またその配合量が1.2×10-2モル当量以下であれば得られたウレタン(メタ)アクリレートから調製される塗料の外観が良好になる。
【0024】
<ポリイソシアネート化合物(a)>
ポリイソシアネート化合物(a)(以下、「(a)成分」という)としては、例えば以下のものが挙げられる。2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、1,4−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、又はこれらイソシアネートの二量体変性体もしくは三量体変性体、更にこれらイソシアネートのブロックイソシアネート体や活性水素含有化合物との反応物であるイソシアネート基末端のプレポリマー等。
【0025】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(b)>
水酸基含有(メタ)アクリレート(b)(以下、「(b)成分」という)としては、例えば以下のものが挙げられる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、またはジペンタエリスリトールペンタアクリレート等。
【0026】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレートは、原料として少なくとも前記の(a)成分及び(b)成分を使用して製造される。原料にはさらに以下のポリオール化合物(c)を使用することができる。
【0027】
<ポリオール化合物(c)>
ポリオール化合物(c)(以下、「(c)成分」という)としては、例えば以下のものが挙げられる。ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油変性ポリオール、フッ素含有ポリオール等。これらのポリオール化合物は、上記のいずれか1種でも良く2種以上の組み合わせでも良い。
【0028】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば以下の方法〔1−1〕、〔1−2〕または〔1−3〕によって製造される。
【0029】
〔1−1〕(c)成分と(a)成分をウレタン化反応させ、得られた反応物と(b)成分をウレタン化反応させるウレタン(メタ)アクリレートの製造方法において、これらの2段階のウレタン化反応を式(1)で表される触媒の存在下で行う方法。
【0030】
この方法において、各原料の使用量は、製造されるウレタン(メタ)アクリレートに求める物性により適宜設定される。即ち、この方法の第1段階のウレタン化反応では、反応終了後にイソシアネート基が残るように(c)成分のヒドロキシ基と(a)成分のイソシアネート基を反応させることが必要であるので、イソシアネート基の数がヒドロキシ基の数を上回るように(a)成分と(c)成分の使用量を設定することが好ましい。また、第2段階のウレタン化反応では、第1段階での未反応のイソシアネート基と(b)成分のヒドロキシ基を反応させるので、(b)成分のヒドロキシ基の数が未反応のイソシアネート基の数と同じかそれを僅かに上回るように(b)成分の使用量を設定することが好ましい。
【0031】
〔1−2〕ポリイソシアネート化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b)をウレタン化反応させ、得られた反応物とポリオール化合物(c)をウレタン化反応させるウレタン(メタ)アクリレートの製造方法において、これらの2段階のウレタン化反応を式(1)で表される触媒の存在下で行う方法。
【0032】
この方法においても、各原料の使用量は、製造されるウレタン(メタ)アクリレートに求める物性により適宜設定される。即ち、この方法の第1段階のウレタン化反応では、反応終了後にイソシアネート基が残るように(a)成分のイソシアネート基と(b)成分のヒドロキシ基を反応させることが必要であるので、イソシアネート基の数がヒドロキシ基の数を上回るように(a)成分と(b)成分の使用量を設定することが好ましい。また、第2段階のウレタン化反応では、第1段階の未反応のイソシアネート基と(c)成分のヒドロキシ基を反応させるので、(c)成分のヒドロキシ基の数が未反応のイソシアネート基の数と同じかそれを僅かに上回るように(c)成分の使用量を設定することが好ましい。
【0033】
〔1−3〕ポリイソシアネート化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b)を式(1)で表される触媒の存在下でウレタン化反応させるウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【0034】
この方法においても、各原料の使用量は、製造されるウレタン(メタ)アクリレートに求める物性等により適宜設定される。即ち、反応終了後にイソシアネート基が残らないように(a)成分のイソシアネート基と(b)成分のヒドロキシ基を反応させることが好ましく、そのためにはヒドロキシ基の数がイソシアネート基の数と同じかそれを僅かに上回るように(a)成分と(b)成分の使用量を設定することが好ましい。
【0035】
前記製造方法〔1−1〕、〔1−2〕または〔1−3〕において各原料成分を添加する方法は任意であり、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み、滴下仕込み等いずれでもよく、適宜選択することができる。
【0036】
前記反応により製造されるウレタン(メタ)アクリレートの分子量が高くなると反応液が高粘度となり、撹拌が困難になる場合があるため、反応液中に希釈成分を加えることもできる。希釈成分としては、ウレタン化反応に関与しないものが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。トルエン及びキシレン等の芳香族化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチルなどのエステル化合物、ジメチルアミド等の有機溶媒、2−エチルヘキシルアクリレート及びイソボルニルアクリレート等の水酸基を有さないモノマー。
【0037】
<配位化合物(d)>
前記製造方法のウレタン化反応により得られたウレタン(メタ)アクリレート含有物中には前記触媒が残存している。この残存触媒がウレタン(メタ)アクリレート含有物に色を帯びさせている。本発明においては、このウレタン(メタ)アクリレート含有物に対して配位化合物(d)を加えて、該ウレタン(メタ)アクリレート含有物中の残存触媒の配位子Lを前記配位化合物(d)に由来の配位子に配位子交換させることができる。これによって、ウレタン(メタ)アクリレート含有物の着色を減少または消失させることができる。
【0038】
配位化合物(d)としては、例えば、有機酸、無機酸、アルコール及びアミンなどが挙げられる。即ち、カルボン酸、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコール、直鎖状もしくは分岐鎖状のアミンが挙げられる。これらの中でもリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、または亜リン酸エステルが好ましく、特に好ましいのはリン酸エステルである。
【0039】
リン酸エステルの具体例としては、例えば、リン酸(メタ)アクリレート、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、またはトリフェニルホスフェートなどが挙げられる。リン酸(メタ)アクリレートとしては、日本化薬(株)製の商品名カヤマーPM−21や商品名カヤマーPM−2などがある。
【0040】
配位化合物(d)の添加量はウレタン化反応触媒1モル当量に対して1〜100モル当量が好ましく、より好ましくは1〜50モル当量である。
【実施例】
【0041】
次に、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。実施例における評価項目及び評価方法は以下の通りである。
【0042】
<1.反応速度>
実施例において、水酸基含有(メタ)アクリレート(b)の仕込み終了時を0時間(T0)とし、その時点から反応率が97%になった時間を反応時間とし、下記基準で評価する。
◎:反応時間が5時間以下、
○:反応時間が5時間超、10時間以下、
×:反応時間が10時間超。
【0043】
この評価においては、適宜反応させる時間を変えて反応率を測定し、反応率が97%となった時間がT0から5時間以下の場合は「◎」、T0から5時間後の反応率が97%未満で10時間後の反応率が97%以上の場合は「○」、T0から10時間後の反応率が97%未満の場合は「×」と評価する。
【0044】
1−1.反応率測定
以下の式により反応率を算出する。
反応率(%)=(C0−C)÷C0×100
0:反応前のイソシアネート基当量(モル/g)、
C:反応後のイソシアネート基当量(モル/g)。
【0045】
1−2.C0の求め方
以下の式によりC0を算出する。
0=x×y÷N
x:ポリイソシアネート化合物のモル数、
y:ポリイソシアネート化合物1分子中のイソシアネート基の数、
N:ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート及びその他添加剤の合計量(g)。
【0046】
1−3.Cの求め方
以下の式によりCを算出する。
C=(A−B)×0.1×F÷1000÷S
A:空測定での中和に必要な塩酸量(ml)、
B:反応溶液の中和に必要な塩酸量(ml)、
F:滴定液のファクター、
S:試料量(g)。
【0047】
1−4.Aの求め方
200mlの三角フラスコにクロロベンゼン25ml、0.1Nジ−n−ブチルアミンのクロロベンゼン溶液25ml、ブロモフェノール2滴を加えて、均一になるように撹拌する。0.1N塩酸を用いて滴定を行い、溶液の色が変化した点をAとする。
【0048】
1−5.Bの求め方
ウレタン(メタ)アクリレート0.3gを200mlの三角フラスコに取り、クロロベンゼン25mlを加えて溶解させる。0.1Nジ−n−ブチルアミンのクロロベンゼン溶液25mlとブロモフェノール2滴を加えて、均一になるように撹拌する。0.1N塩酸を用いて滴定を行い、溶液の色が変化した点をBとする。
【0049】
<2.黄色度>
セル長5cmの石英セルを使用し、分光光度計(日立ハイテクノロジー(株)製、商品名:日立分光光度計U−1900)によってウレタン(メタ)アクリレートの417nmの吸光度を測定する。その後、以下の式を用いてAPHAを算出する。
APHA=(417nmの吸光度)×549
黄色度の評価については、下記基準で評価する。
◎:APHAが200未満、
○:APHAが200以上、1000未満、
×:APHAが1000以上。
【0050】
<実施例1> ウレタンアクリレート(UA1)の製造
2Lの4つ口フラスコに、(a)成分として4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製、商品名デスモジュールW、分子量264.8)424g(1.6モル)、及び式(1)で表される触媒として鉄(III)アセチルアセトナート(Aldrich(株)製、商品名Iron(III)Acetylacetonate、分子量353.18)0.095g(2.69×10-4モル)を仕込んでウォーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
【0051】
一方、(c)成分としてポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名PTG850SN、平均分子量872)634g(0.73モル)を側管付きの滴下ロートに仕込んだ。この滴下ロート内の液を、上記フラスコ内の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を70℃に保ちながら、2時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに2時間撹拌してウレタン化反応を行った。
【0052】
次いで、フラスコ内容物の温度を80℃に上げた。一方(b)成分としての2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名HEA、分子量116.12)204g(1.76モル)と、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール(和光純薬工業(株)製、商品名ブチルヒドロキシトルエン、分子量220.36)1.8gを、別の滴下ロートに仕込み均一に混合溶解させた。この液を、フラスコ内温を80℃に保ちながら、2時間かけてフラスコ内に滴下した。その後、フラスコ内容物の温度を80℃に保って、30分間ウレタン化反応を行って、ウレタンアクリレート含有物を得た。
【0053】
次いで、2−エチルヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名EHA、分子量184.28)347gと、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール(和光純薬工業(株)製、商品名ブチルヒドロキシトルエン、分子量220.36)0.7gを均一に混合溶解させた。この液を、フラスコ内に加えて80℃で30分撹拌して、ウレタンアクリレート含有物の希釈液を得た。この希釈液は黄褐色で、粘調な液体で、APHAが1297であった。また、この希釈液を用いて反応率を測定したところ98%であった。
【0054】
<実施例2> ウレタンアクリレート(UA2)の製造
2Lの4つ口フラスコに、(a)成分として4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製、商品名デスモジュールW、分子量264.8)424g(1.6モル)、(c)成分としてポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名PTG850SN、平均分子量872)634g(0.73モル)、及び式(1)で表される触媒として鉄(III)アセチルアセトナート(Aldrich(株)製、商品名Iron(III)Acetylacetonate、分子量353.18)0.095g(2.69×10-3モル)を仕込んだ。
【0055】
上記フラスコ内の内容物を、フラスコ内温を70℃に加温し、2時間撹拌してウレタン化反応を行った。
【0056】
次いで、フラスコ内容物の温度を80℃に上げた。一方(b)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名HEA、分子量116.12)204g(1.76モル)と、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール1.8gを均一に混合溶解させた。この液をフラスコ内に加えた。その後、フラスコ内容物の温度を80℃に保って、30分間ウレタン化反応を行って、ウレタンアクリレート含有物を得た。
【0057】
次いで、2−エチルヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名EHA、分子量184.28)347gと、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール(和光純薬工業(株)製、商品名ブチルヒドロキシトルエン、分子量220.36)0.7gを均一に混合溶解させた。この液をフラスコ内に加え、80℃で30分撹拌して、ウレタンアクリレート含有物の希釈液を得た。この希釈液は黄褐色で、粘調な液体で、APHAが1320であった。また、この希釈液を用いて反応率を測定したところ98%であった。
【0058】
<実施例3>
実施例1で得られたウレタンアクリレート含有物の希釈液50質量部、及び配位化合物(d)としてリン酸メタクリレート化合物(日本化薬(株)製、商品名カヤマーPM−21、平均分子量416.36)0.024質量部を混合溶解した液は淡黄色透明で、粘調な液体であり、そのAPHAは172であった。このことから、リン酸メタクリレート化合物によってウレタンアクリレート含有物の希釈液の色が薄まることを確認した。
【0059】
<実施例4> ウレタンアクリレート(UA3)の製造
2Lの4つ口フラスコに、(a)成分として1,3−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名タケネート600、分子量194.2)242g(1.25モル)、及び式(1)で表される触媒として鉄(III)アセチルアセトナート(Aldrich(株)製、商品名Iron(III)Acetylacetonate、分子量353.18)0.072g(2.04×10-4モル)を仕込んでウォーターバスで内温が65℃になるように加熱した。
【0060】
一方、(b)成分として2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名HPA、分子量130.14)355g(2.73モル)を滴下ロートに仕込んだ。この滴下ロート内の液を、上記フラスコ内の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65℃に保ちながら、6時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後から65℃で1時間撹拌してウレタン化反応を行った。得られたウレタンアクリレート含有物は黄褐色で、粘調な液体であり、そのAPHAは1010であった。また、このウレタンアクリレート含有物を用いて反応率を測定したところ98%であった。
【0061】
<実施例5>
表1に示した配位化合物を用いたこと以外は実施例3と同様にして、ウレタンアクリレートを製造し、配位化合物を加えて、反応速度と黄色度を評価した。評価結果を表1に示した。
【0062】
<実施例6、8、10、12、および14〜32>
表2〜7に示した種類及び量の各種原料並びに式(1)で表される触媒を用い、反応時間が判るまで適宜時間を変えて反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、ウレタンアクリレートを製造し、反応速度と黄色度を評価した。評価結果を表2〜7に示した。
【0063】
<実施例7、9、11および13>
表2および表3に示した種類及び量の各種原料、式(1)で表される触媒並びに配位化合物を用い、反応時間が判るまで適宜時間を変えて反応を行ったこと以外は実施例3と同様にして、ウレタンアクリレートを製造し、配位化合物を加えて、反応速度と黄色度を評価した。評価結果を表2および表3に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
表1〜7中の略号は、以下の通りである。
Fe(acac)3:鉄(III)アセチルアセトナート、
Zr(acac)4:ジルコニウムアセチルアセトナート、
Ni(acac)3:ニッケルアセチルアセトナート、
(i−PrO)2Ti(C6932:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、
Ti(i−PrO)4:チタンテトライソプロポキシド、
Bi(C101923:ネオデカン酸ビスマス、
PTG850SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名PTG850SN)、
PL205:ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名プラクセル205)、
T5650J:ポリカーボネートジオール(旭化成工業(株)製、商品名T5650J)、
G−1000:ポリブタジエンジオール(日本曹達(株)製、商品名G−1000)、
H−MDI:4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、
H−XDI:1,3−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、
IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニック・デグサ・ジャパン(株)製、商品名VESTANAT IPDI)、
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、
HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート、
PM−21:リン酸メタクリレート化合物(日本化薬(株)製、商品名カヤマーPM−21)、
DPPA:ジフェニルホスフィン酸、
DBTDL:ジブチルスズジラウレート((株)ADEKA製、商品名アデカスタブBT−11)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として少なくともポリイソシアネート化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b)を使用するウレタン(メタ)アクリレートの製造方法において、ウレタン化反応の触媒として式(1)で表される触媒を用いるウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
M(L)n ・・・式(1)
〔式(1)において、Mは中心金属であって、Fe、Mn、Cu、Zr、Ti、Ni又はBiを表し、Lは配位子であって、β−ジケトン、ハロゲン原子、アルキル基、アシルオキシ基、アシル基又はアルコキシ基を表す。nは中心金属の価数と配位子の配位座数により定まる整数値である。〕。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により得られたウレタン(メタ)アクリレート含有物に対して配位化合物を加えて、該ウレタン(メタ)アクリレート含有物中の前記式(1)で表される触媒の配位子Lを前記配位化合物に由来の配位子に配位子交換させる、改質されたウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。

【公開番号】特開2012−251105(P2012−251105A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126299(P2011−126299)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】