説明

エアサポート構造物を効果的に加圧および通気する装置およびその方法

【課題】エアサポート温室、または、加圧、通気を必要とする他の構造物を効果的に加圧、通気する方法および装置を提供する。
【解決手段】任意の外部風流および外部風圧を、1つまたは並列接続された複数のファンを用い、エアサポート構造物の内部空間に方向付け、かつ、内圧を調節する排気手段を用い、内部空間から外へ方向付ける。これにより、構造物の内部空間を、任意の外部の風と機械的フロー手段(ファン)の信頼性との支援により通気および加圧する。光透過性の膜は、膜の重量および外部の風の動圧に対する内部空気圧自体によってのみ支えられる。電力消費がより少ない、内部の静圧が最小である、フィルムが破損する可能性がより低い、光透過率がより高い、より低コストである、より小型である等の、利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、同じ名称を有する、2006年6月27日出願の仮特許出願を基礎とするものである。
【0002】
本考案は、大量の熱流束を除去する必要のある温室または類似の構造物に関する。本考案は特に、外部の風力エネルギーである、圧力と流量との両方を利用する方法および構造的手段、ならびに、エアサポート温室といったエアサポート構造物内の空気圧と空気流とを生成させ、かつ制御する方法および構造的手段に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のところ、市販の温室は、透明または半透明の、空気および水不浸透性の材料で覆われたフレームで建築されている。該フレームの主たる機能は、この被覆材料を、その自重、風、雨、および、見込まれる雪荷重に対して支えることである。上記フレームはまた、温室へ入るためまたは温室から出るための通路用の出入り口を支えている。多くの場合、上記フレームは通気のための手段を支えている。この通気は、外部からの風および/または熱対流による消極的な通気であるか、または、1つもしくは複数のファンによる積極的な通気であり得る。
【0004】
市販の特定の温室は、2層のプラスチックフィルムをフレームに付着させ、該2層の端部を密閉させてなる。この2層のプラスチックフィルムの間には、通常、結露を回避するために外部からの空気が小さな送風機で送られており、これら2つの層を分離させると共にフィルム内の張力を維持させている。この技術は1964年に開発されたものであり、2つの点において、1つの層の構造物よりも改善されたものである。最初に、2層のプラスチックフィルム間の空隙を断熱させている。次に、プラスチックフィルムが激しく吹き付けられた後破裂する可能性を低減させ、該フィルムの寿命を延ばしている。このシステムの欠点は、余分なプラスチックフィルムが必要となり、これと送風機とに費用が係る点、および、温室に差し込む光の透過率が10%以上低減される点である。その他の潜在的な欠点は、上述の膨張用の送風機の位置、方向、および環境に応じて、外部からの風の動圧が、2層のプラスチックフィルム間の空気圧に加えられるか、または、該空気圧から引かれる点である。内部の空気圧を低減させる風の状況の場合には、この作用によってプラスチックフィルムは激しく吹き付けられて破裂する可能性がある。内部の空気圧を増大させる風の状況の場合には、この作用によってプラスチックフィルムは超過加圧されて破裂する可能性がある。
【0005】
現在市販されている全種類の温室では、フレームによりプラスチックフィルムまたは他のガラスを支えることが求められている。このようなフレームは有用であるが、高価であり、太陽光の一部が温室内の植物に達することを妨げるものである。この欠点のために、フレームの材料を換えるという、従来の方法に代わる方法が模索されている。1つの実験的アプローチは、典型的な木または金属のフレームを、圧搾空気フレームまたはエアビームに換えることである。一般的に透明なプラスチックであるこのフレームは、内部の空気を加圧しなければ弛緩してしまう。加圧すると該フレームは硬くなり、意図される形状になる。Hasselquistの米国特許第2,854,014号明細書(1958年)には、膨張したチュービングによって支えられた「膨張可能シェルタ」が記載されている。Robinson,Sr.の米国特許第4,856,228号明細書(1989年)には、同じく膨張したチュービングによって支えられた「種子および植物等の生育用トンネルシステム」が記載されている。
【0006】
他のアプローチは、膨張可能なフレームを被覆物と一体化させて、加圧した空気によって光透過性表面のほぼ全面を硬化させることである。このアプローチも、被覆層の間に断熱空隙を提供するものである。Stevensの米国特許第4,160,523号明細書(1979年)およびLearyの米国特許第6,061,969号明細書(2000年)は、どちらもこの方法を用いたものである。
【0007】
「空気膨張式構造物」という用語は、上述の膨張可能構造物を指し、ここでは、構造物の形状は、空気が加圧されたチューブまたはセルによって形成されているが、構造物の密閉空間内は、空気が加圧されない状態が保持される。透明且つ空気が膨張した構造物を温室として用いる場合には、従来技術の温室と同様に、該構造物を通気、加熱、および、冷却することが依然として必要である。
【0008】
他の設計である「エアサポート構造物」は、端部が壁または地面に固定されていると共に密閉されている膜と、該膜が吊られて頑丈な状態を保持するための空気加圧手段とからなり、該空気加圧手段は、この構造物内の密閉空間内に配置されている。通常、出入り口には、エアロックが取り付けられている。エアサポート構造物は、構造物の完全性と居住性とを保持するために必要とされる加圧と通気に関して、重大な問題を有している。さらに、圧力および通気は、構造物のエネルギー消費に影響を及ぼす。
【0009】
内圧を、外部の風荷重、雪荷重、氷荷重に基づいて、且つ、エアサポートされた膜の高さおよび張力に基づいて制御する方法とその装置とが開発されている。その最終目標は、外圧に対して最小内圧を維持することであり、これは、膜の完全性および該膜の高さ(つまり床上の隙間)を維持するために必要である。内部と外部との間の圧力の差を最小化することによって、膜内の張力の必要量と膨張用エネルギーの必要量とを最小化する。このため、理想的な加圧状態を維持するためのセンサおよび制御機器が求められている。Turnerの米国特許第2,948,286号明細書(1960年)では、膜の高さ、側壁直立度、または、膜の張力を測定する機械的手段を用いて、膨張送風機の動作を制御するスイッチを起動させ、これによって、内圧、並びに、結果として生じる膜の高さ、側壁直立度、および、膜の張力を制御している。しかしながら、通気についてはこの発明の範囲内にはないため、当該発明は排気口を含んでいない。Cohenらの米国特許第3,159,165号明細書(1964年)では、構造物の周囲の長さを測定する機械的手段を用いて、膨張送風機の動作を制御するスイッチを起動させ、これによって、内圧と、結果として生じる構造物の周囲の長さとを制御している。ここでも、通気についてはこの発明の範囲内にはないため、当該発明は排気口を含んでいない。Gelinasらの米国特許第4,936,060号明細書(1990年)では、膜の高さを測定するレーダー手段を用いて、膨張送風機および排気口の動作を制御し、これによって、内圧および容積、並びに、結果として生じる膜の高さを制御している。Brisbaneらの米国特許第5,685,122号明細書(1997年)およびBrisbaneらの米国特許第6,032,080号(2000年)では、外部の風速、並びに雪荷重および氷荷重の潜在的状態を測定するセンサ手段を用いて、膨張送風機および排気通気口の動作を制御し、これによって、内圧を制御している。
【0010】
Brisbaneらの2つの特許では、空気圧センサのために、たった1つの場所しか特定されておらず、これはすなわちエアサポート構造物内の1つの場所である。当該発明のプロセス制御素子内で特定される圧力は、差圧であって絶対圧ではない。つまり、特定された水位計0.4”〜1.4”の静圧は、大気圧よりも大幅に少なく、内圧と、外圧(より正確に言えば、風の動圧を低減させる外部の静圧)との差異を実際に示すものである。従って、この構造物には、この外部の静圧を検知するセンサを設ける必要があるだろう。構造物の上面には、風速計として説明される、「風速センサ」と記されたものがあるが、このセンサを当該特許内に開示されている静圧センサに結びつける記載はない。また、この風センサに関しては、風向を考慮せずに風速についてのみ説明されている。
【0011】
やはり、開示されている発明を正常に動作させるには、必要な外部の静圧センサの位置と方向が極めて重要である。例えば、25MPHの風速は、水位計0.3”の動圧を有している。この状態を下回ると、エアサポート構造物の表面の外圧は、図面に示したドーム形構造物の場合のように、風上側における“大気圧+水位計0.3””から、側部(風上と風下との間)および上部における“大気圧−水位計0.3””へと変動する。50MPHでは、この偏差は、+/−水位計1.2”へと4倍になる。従って、外部の静圧センサが構造物の(風に対する)上部または側部にあり、構造物内では均一の内圧が、検知された外圧より上の、水位計1.4”であったならば、外圧が内圧よりも上の水位計1.0”の圧力(1.2”+1.2”−1.4”)となり、構造物の風上側は崩壊するであろう。従って当該発明は、適切に改変しない限り、機能しなくなることは必至である。
【0012】
エアサポート構造物の第2の重大な問題は通気である。エアサポート構造物の多くは、透明度の低い、反射率の高い膜から製造されており、これによって、該構造物内に流入すると共に該構造物から放出される放射エネルギー束を低減させて、構造物の冷却および加熱の必要量を低減させている。この構造物は、テニスコート、プール、競技場、および、スタジアムを覆っている。通気は、低減された太陽輻射エネルギー束および/または占有者の空気放出量のうちのいずれか大きい方を除去するために必要である。この状態における通気の必要量は、温室の通気の必要量よりも大幅に低い(80%〜90%も低い)。温室では、過熱を回避するために、ほぼ全太陽輻射エネルギー束が除去される必要がある。
【0013】
夏季に温室を冷却する要件を満たすために必要な通気量は、床面積1平方フィートにつき毎分、ほぼ10立方フィートである。この通気を、エアサポート構造物では高圧送風機によって行っているが、フレームサポート温室ではこれを比較的低圧(水位計0.25”以下)のプロペラファンによって実現している。典型的な夏季条件では、約床面積2000平方フィートの通気および冷却には、1hpモータを有する直径48”のプロペラファンで十分である。
【0014】
典型的なエアサポート構造物の場合、同じ通気量を生成するには、10hpモータを有する車輪径25”の送風機が必要となろう。これは、フレームサポート構造物よりも、エアサポート構造物内のほうが高圧だからである。従って、現在のエアサポート構造物の技術を温室の性能に当てはめると、10倍の電力が必要ということになる。
【0015】
エアサポートにおける1つの製造業者エンバイロンメンタル ストラクチャーズ インコーポレイテッド(Environmental Structures Incorporated)は、高出力送風機を中圧(水位計0.5”以下)のプロペラファンに換えることによって、この問題を解決しようとしている。比較的無風状態では、このファンは、フレームサポート温室のファンが必要とする電力の2〜3倍を必要とする。風の強い状態では、タンデムファン、すなわち直列に配置された2つの中圧ファンを起動させて圧力を2倍にする。これは、強風の動圧に対して膜を支えるために必要な圧力である。結果的に、このシステムの電気的エネルギー消費の正味量は、典型的な温室の電気的エネルギー消費量の約3倍になる。このように稼動費用が高く、かつ、初期費用が従来の温室の2倍もかかるため、このエアサポート温室は、個人使用にのみ用いられていた。
【0016】
このエネルギー消費を低減する1つの方法は、通気を低減するか、または、ほとんど行わないことである。個々の実施例については、http://www.actahort.org/books/42/42_5.htm、http://www.sunset.com/sunset/Premium/Garden/1997/02-Feb/Greenhouse297/Greenhouse297.htm、および、http://www.savagefarmer.blogspot.com/2006/02/big-greenhouse.htmに、開示されているが、これらの各ウェブサイトの説明によると、これら各温室は、該各温室を夏季に十分に冷却するために必要な通気装置を備えていない。
【0017】
上述の欠陥を克服するための他の一試みが、アリゾナ大学環境研究所とメキシコのソノラ大学との協同で行われた。1968年に、通気せずに、エアサポート温室を送風機によって加圧した。充填カラム熱交換器で、近隣の海からの冷たい塩水を吹き付けられた空気を吸引することによって、冷却することが可能となった。しかしながらこのシステムでは、温室内の相対湿度がほぼ100%で保持され、これは、多くの植物にとって理想的な状態ではない。
【0018】
本発明の範囲においては、他に3つの従来技術の実施例について言及する価値がある。Eerkensの米国特許第3,924,364号明細書(1975年)には、「風膨張可能テント」が記載されている。ここでは、風の動圧を利用して加圧しているが、エアサポートテントの通気はしていない。外部で支えられているテントへの入口は、風に向かっている。風を追跡する手段は設けられていない。このテントは、風から逃れる手段、すなわちシェルタとして利用されている。
【0019】
Piersonの米国特許第6,070,366号明細書(2000年)に記載された別のシェルタは、回転可能なエアスクープを備えている。該エアスクープは、その開口部の反対側に減風器(wind wane)を備えており、外見上、該開口部を自動的に風の方に向けているようになっていることは明らかである。このエアスクープの開口部内にはルーバー排気孔が配置されており、外部の風からの空気だけをエアスクープの中に入れ、その後シェルタの中に移動させることが可能なように配向されている。このルーバーは、風の全圧(動圧および静圧)が内部空気圧を幾分上回った時だけ動作し、空気をシェルタ内に移動させることが可能である。これらのエアスクープを、シェルタの屋根の布地に複数配備してもよい。上記回転可能なエアスクープの機能は、シェルタの表面上の局所的な風を受けて、追加的に膨張させることである。エアスクープは、シェルタを膨張させる主たる手段ではない。これらエアスクープは、シェルタを膨張させるために、送風機またはファンといった任意の機械的手段に接続されてはいない。また、当該発明の範囲には通気が含まれておらず、排気口は、当該発明には含まれない。
【0020】
最後に、Tom Elliotは、蒸発冷却パッドによって風流を室内に方向付ける回転可能なエアスクープを用いた消極空調システムを記載している。これは、部屋を冷却するためであって、加圧するためではない。これに関しては、http://www.thedisease.net/arcana/survival/How-To_Survival_Library/library2/aircool.htmに記載されている。このシステムは消極的であり、風流を増大させるために、ファンを用いてはおらず、風と、筒の下に向かって流れ部屋の中に入り込む冷却された空気の自然な対流とによって、風流を増大させている。
【0021】
要するに、風力エネルギー、つまり風圧および風流を、ファンまたは送風機といった任意の機械的通気装置の中に方向付け、これによって、風力エネルギーと機械的通気装置のエネルギーとを利用して、構造物の内部空間を通気すると共に場合によっては加圧する方法または装置を提供する、如何なるエアサポート構造物またはフレームサポート構造も知られていない。また、各風の外部の動圧および外部の静圧を個々に割り出すか、または、方向付けて、排気口を制御し、これによって構造物の内圧を、風の外部の動圧および外部の静圧に対して調節する方法または装置を提供する、如何なるエアサポート構造物またはフレームサポート構造も知られていない。
【発明の概要】
【0022】
考案の効果:電力消費がより少ない点、内部の静圧が最小である(外部の風に耐えるのに十分な程度)点、フィルムが破損する可能性が(フレームサポートの単一ポリよりも)より低い点、光透過率がより高い点、より低コストである点、より小型である点。
【0023】
本考案は、エアサポート温室、または、加圧および通気を必要とする他の構造物を効果的に加圧および通気する一連の方法および一連の装置である。
【0024】
エアサポート構造物を効果的に加圧および通気する主たる方法は、外部風流および外部風圧を、1つのファンまたは並列接続された複数のファンといった、吸気の方向に動作している機械的フロー手段の中に方向付けると共に、エアサポート構造物の内部空間の中に方向付け、および、内圧を調節する排気手段によって該内部空間から外へ方向付ける工程を含む。これによって、構造物の内部空間を、任意の外部の風と機械的フロー手段(ファン)の信頼性との支援によって通気および加圧する。この方法は、光透過性の膜(カバー)によって生成される保護空間を、通気によって、効率的、効果的、且つ、経済的に冷却することを可能にするものであり、この光透過性の膜は、膜の重量および外部の風の動圧に対して内部空気圧自体によってのみ支えられるものである。
【0025】
エアサポート構造物を効果的に加圧および通気する他の一方法は、上述の主たる方法と同様であるが、内圧調節は排気手段を制御するのではなく、機械的フロー手段を制御する(1つまたは複数のファンとダンパーの速度制御、すなわちオン/オフ制御または可変制御を含み得る)という点が異なっている。ここでは、排気手段もしくは排気ポートはどちらも固定されているか、または、これを手動で調整して、ファンの回転速度もしくは領域を制御する。排気ポートが完全に閉じていない間は、構造物を支えるために必要な内圧を空気流により常に生成する必要があるために、この方法は好ましい方法ではない。しかしながら、上述の主たる方法では、空気流の少ない状態で内圧を維持するために、内圧を調節する排気手段はほぼ閉鎖される(これは寒冷な気象状態では望ましいことである)。
【0026】
エアサポート構造物を効果的に加圧および通気する主たる方法のさらなる利点は、外部の風が約10mphを超えた時に、構造物を支えると共に通気する機械的フロー手段に必要な電力が、極めてわずかであるという点である。これはつまり、排気部(単に吸気口の反対)に、通気されたエアサポート構造物を通る空気流を制限するものが配置されている場合、風自体は、構造物を通気および支えるには十分に強力な、約10mph以上になるということである。これは、これらエアサポート構造物を、風が決して直接入射(斜め入射のみ)しないような規定の形状および外郭(従って内圧は、外部全圧+膜重量と同じくらい大きいものである必要はない)に構成可能であるために、実現可能である。ここで本考案は、これに対して、機械的フロー手段によって、ほぼ全風力、外部全圧を、構造物の中に再び方向付ける。約10mph未満では、機械的フロー手段は、膜を持ち上げるために十分な圧力差(動圧約5mphの風)で構造物を通気することが求められる。従って上記構造物を動作させるには、低電力モータしか必要とされず、この低電力は、約10mphよりも高い風で風力発電されるものである。これには、風を再び方向付ける手段と機械的フロー手段とを直列につなぐことが合理的である。機械的フロー手段は、ファンを有していないがダンパーを有している吸気口を含んでおり、この吸気口は、ファンを有し且つダンパーを有しているかまたは有していない吸気口に、並列につながっている。構造物が、動力が供給されたモードだけで風の中で動作している場合には、このファンを有する吸気口は用いられない。
【0027】
上記主たる方法の好ましい一実施形態は、上述のような、機械的フロー手段が、並列に動作している1組のファンである方法である。該1組のファンは、制御可能なファン回転速度(オン/オフ制御または可変制御)および/または制御可能なファン領域(例えばダンパー)を有している。この方法では、制御可能なファン回転速度および/またはファン領域は、構造物内の空気の温度、日射、および/または、湿度レベルによって、1日の時間の関数として調節されている。ここでは、機械的フロー手段が、エアサポート構造物を流れる空気流を制御しており、排気手段が内圧を制御している。
【0028】
当該方法のさらなる改善点は、上記主たる方法の好ましい一実施形態の場合と同様で、1日の時間の関数としての、構造物内の空気の温度、日射、および/または、湿度レベルによる、制御可能なファンの回転速度および/またはファンの領域の調節を無効にして、構造物内の圧力を増大させて、構造物の構造的完全性を維持することが可能な方法である。この改善方法は、排気ポート、つまり装置の大きなドアにおいて圧力調節が失敗した場合、または、エアサポート膜に穴が開いた場合には有用である。
【0029】
本考案はまた、通気が必要な温室または他の構造物を、効率良く且つ信頼性を伴って通気させる一連の方法および一連の装置である。
【0030】
第1の方法は、任意の外部風流および外部風圧を、1つのファンまたは並列につながっている複数のファンといった、吸気の方向に動作している機械的フロー手段の中、および、構造物の内部空間の中に方向付ける工程を含み、ここでは、任意の外部風流および外部風圧が、機械的フロー手段を支援して、構造物を加圧および通気させる。エアサポート構造物に関して上述したように、当該方法は、調整されると内部の静圧を生成し、該内部の静圧が、外部の風に対して構造物を支えるようになっている。以下に、本方法のための装置の3つの実施形態を記載する。
【0031】
第2の方法は、低圧区域を生成するように任意の外部の風を方向付ける工程と、1つのファンまたは並列につながっている複数のファンといった、排気の方向に動作している機械的フロー手段からの排気を、外部の風における低圧区域の中に方向付ける工程とを含み、ここでは、任意の外部の風が、機械的フロー手段(ファン)を流れる空気流を支援する。当該方法は、排気ファンを機械的通気装置として用いたフレームサポート温室等に有効である。なぜなら、ファンを動作させるために必要とされる電力が、無風状態時のみに限定されるからである。強風状態は通気を支援し、従って、ファンを動作するために必要な電力を低減させる。当該方法は、外圧よりも低い内部の静圧を生成するので、エアサポート構造物には有効でない。
【0032】
これらの方法の実用性および独自性は、外部の風を、ファンまたは送風機など、外部の風の通気をバックアップまたは増大させるものとしての機械的通気手段に直列につながった通気装置の中に、再び方向付ける風として利用する点にある。結果的には、機械的通気手段が制御可能である点を考慮すると、信頼性のある通気が実現できると共に、外部の風の消極的な通気である点を考慮すると、電気的エネルギー消費の低減が実現できる。上述したこれら2つのいずれの方法も、フレームサポート温室等に有効である。
【0033】
エアサポート温室、または、加圧および通気を必要とする他の構造物を効果的に加圧および通気する方法を達成するための主要な部材は、任意の外部風流および外部風圧を機械的フロー手段の中に方向付ける手段である。以下に、任意の外部風流および外部風圧を機械的フロー手段の中に方向付ける装置の3つの実施形態について説明する。
【0034】
任意の外部風流および外部風圧を、機械的フロー手段の中および構造物の中に方向付ける装置の一実施形態は、中空筒上の回転可能なエアスクープである。該中空筒は、外部の風における通路の中で、回転可能なエアスクープを持ち上げるように機能していると共に、一部の外部の風を機械的フロー手段の中および構造物の中に運ぶ送風管を備えている。このエアスクープは、垂直回転軸の一端にあり、該エアスクープの開口部は回転軸の方を向いており、該回転軸を軸の風下に向けている。このエアスクープを回転軸の一端に配置する代わりに、該エアスクープの背面には、開口部の反対側を向いた風向計が取り付けられていてもよい。いずれの場合にも、エアスクープの開口部は、自動的に外部の風に向くようになっており、任意の外部風流および外部風圧を、ファンの中、および、構造物の中に再び方向付けている。
【0035】
外部風流と外部風圧とを機械的フロー手段の中および構造物の中に方向付ける装置の第2の実施形態は、水平断面が正多角形、好ましくは辺が6つ以上の正多角形の中空筒である。該筒の上部には、ヒンジフラップが取り付けられており、該ヒンジフラップは、内部に向かってのみ開放されるので、外部の風の一部を、該筒の中に取り込み、1つのファンまたは複数のファンの中、および、構造物の中に流すことが可能である。上記フラップは、ほぼ垂直な軸上にヒンジで連結されており、最小圧力で該フラップを開放することが可能であると同時に、重力によって生成される閉鎖トルクを小さく抑えている。これは、上記筒を、底部よりも上部においてわずかに広く形成し、該フラップを筒の頂点においてヒンジで連結することによって実現可能である。筒の中心近くには、該フラップが筒の中心を越えて開くことを回避して、これによって重力が開放トルクを生成しないように、各フラップには停止具が必要である。あるいは、閉鎖トルクを、ねじりバネまたは線形バネ、および、モーメントアームによって提供してもよい。上記筒は、送風管として機能すると共に1つまたは複数の吸気ファンにつながっており、これによって、空気流を構造物の中に方向付けている。
【0036】
外部風流と外部風圧とを機械的フロー手段の中に方向付ける装置の上記第2の実施形態は、フラップがデュアル壁のポリカーボネートシートのような軽量材料からなる場合には、このフラップは、突然の180度の風の方向変化でも急速に反応するため、好ましい実施形態である。特にほぼ180度の変化の際には、回転可能なエアスクープの角度慣性が、フラップをゆっくりと反応させ、風の方向を外させる。また、以下の第3の実施形態は、外部風圧を捕捉するという点でそれほど効果的でない。
【0037】
任意の外部風流と外部風圧とを機械的フロー手段および構造物の中に方向付ける装置の第3の実施形態は、盛り土または風偏向板であり、該盛り土または風偏向板は、温室を加圧膨張させる1つまたは複数の吸気ファンの吸気領域を包囲している。この風偏向板は、上記吸気ファンの高さと同程度またはこれよりも高い高さで、該吸気ファンの3辺を包囲しており、該ファンの直径よりも幾分大きい間隔で、上記ファンの吸気口から離れて配置されており、翼のように機能するように曲線的な上面を有し、風偏向板、地面、温室の側面、および、1つまたは複数の吸気ファンによって生成された空洞の中に風流を方向付けている。上記風偏向板は、前後にずれたアレイに配置された隣接し合う複数の温室からなり、2つの背中合わせになったインライン型温室の吸気領域は、隣接する複数の温室の側壁によって区切られている。ここでは、温室自体が、任意の方向からの外部の風を、上記吸気領域の中に方向付けるための翼となり、これによって、吸気口における空気圧を増大させている。
【0038】
さらに、構造物の内部の静圧を調節する方法について記載する。該方法は、検知手段によって外部の動圧を割り出す工程、検知手段によって外部の静圧を割り出す工程、検知手段によって内部の静圧を割り出す工程、ならびに、該内部の静圧を、上記外部の静圧、所定の一部における外部の動圧、および所定の膜オフセット圧力の合計と比較する工程であって、該内部の静圧が上記外部の静圧と所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計よりも大きいならば、量を増大させることによって排気口を開口させるか、または、該内部の静圧が上記外部の静圧と所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計よりも小さいならば、量を増大させることによって排気口を閉鎖させる工程を含み、これによって、上記内部の静圧は、上記外部の静圧と所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計に維持される。
【0039】
本考案では、所定の膜オフセット圧力は、各季節中の最大積雪量を含むように、季節毎に調整される。積雪量を最小化する方法は、膜のピーク高さが幾分低減するために十分な程度、内部の静圧を交互に低減させる工程と、その後、内圧を急速に増大させて膜内に繰り返し風を吹き付ける工程とを含む。これによって、周期的に、積雪をエアサポート構造物から実質的に滑り落とす。
【0040】
本考案ではまた、「外部風圧」、「外部全圧」、「外部の動圧」、および、「外部内圧」という表現は全て、いかなる構造物からも十分に離れた状態に適用されるものであり、したがってそれらの構造物に大きく影響されない。対象物の上方の空気流は、局部動圧(局部気流速度)および局部静圧を生成する。これらは該対象物の表面に応じて変動するため、一価の基準値として扱うことは不可能である。これは、本考案の特徴的な要素であり、構造物に局部的に配置される、風センサもしくは風圧センサまたは風雪センサもしくは風雪圧センサの位置(例えば、上部、側部、吸気口、または、排気口)を明示しない他の発明とは異なるものである。これらの他の発明は、外部風速および方向に自然変動が生じた場合には、不正な内圧制御を生成するであろう。
【0041】
本考案ではまた、内圧を、エアサポート構造物内では一価のものとして扱っている。これは、外部の風が構造物を支えるという点において1つの係数となる場合に、上記内圧の変化量は、膜オフセット圧力またはエアサポート構造物の外部表面上の局部静圧における変化量と比べて極わずかであるからである。
【0042】
さらに、構造物の内部の静圧を調節する他の一方法について記載する。この方法は、検知手段によって外部の動圧(つまり、外部全圧と外部の静圧との間の差圧)を割り出す工程、検知手段によって内部の静圧と外部の静圧との間の差圧を割り出す工程、および、該内部の静圧と外部の静圧との間の差圧を所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計と比較する工程であって、上記内部の静圧と外部の静圧との間の差圧が所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計よりも大きいならば、量を増大させることによって排気口を開口させるか、または、上記内部の静圧と外部の静圧との間の差圧が所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計よりも小さいならば、量を増大させることによって排気口を閉鎖させる工程を含み、これによって、内部の静圧は、外部の静圧と所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計に維持される。
【0043】
構造物の内部の静圧を調節するこれら2つの方法はそれぞれ、内部の静圧が外部の静圧と所定の一部における外部の動圧と所定の膜オフセット圧力との合計に維持されるという同一の結果をもたらす。所定の一部における外部の動圧は、類似の構造物におけるアレイ内の特定の一構造物に特有のものであり、構造物の形状およびその外郭によって割り出されるものである。所定の膜オフセット圧力は、1つまたは複数の膜の重量から成り、これもまた、類似の構造物におけるアレイ内の特定の一構造物に特有のものである。
【0044】
構造物の内部の静圧を調節する方法の一実施形態を記載する。本実施形態は、外部全圧(つまり静圧+動圧)を移動可能な表面の一部の側面に方向付ける工程と、外部の静圧を移動可能な表面の側部における残りの部分に方向付けて、力を生成する工程と、該力を構造物の排気ポートを主として覆っている第2の移動可能な表面に方向付け、該第2の移動可能な表面を構造物の排気ポートの上に押し付ける工程と、該第2の移動可能な表面に所定の外部閉鎖力を加える工程とを含む。ここでは、構造物の内部の静圧が、外部の静圧と外部の動圧のある割合とを足したものを所定の量だけ上回った場合にのみ、構造物から空気が排気される。(この「割合」とは、外部全圧によって作用する移動可能な表面の表面積と、内部の静圧によって作用する移動可能な表面の全表面積との比率である。)
さらに、構造物の内部の静圧を調節する方法の第2の実施形態を記載する。この実施形態は、外部全圧(つまり静圧+動圧)を移動可能な表面の一部の側面に方向付ける工程と、外部の静圧を移動可能な表面の側部における残りの部分に方向付けて、力を生成する工程と、内部の静圧を移動可能な表面の側部の反対側に方向付け反対の力を生じさせて、結果的に正味の力を生成する工程と、該正味の力を、構造物の排気ポートを主として覆うと共に該排気ポートから滑り落ちる第2の移動可能な表面に方向付ける工程と、該第2の移動可能な表面に所定の外部閉鎖力を加える工程とを含む。ここでは、構造物の内部の静圧が、外部の静圧と外部の動圧のある割合とを足したものを所定の量だけ上回った場合にのみ、構造物から空気が排気される。(この「割合」とは、外部全圧によって作用する移動可能な表面の表面積と、内部の静圧によって作用する移動可能な表面の全表面積との比率である。)
内部の静圧を調節するこれら方法の機能を実現するためにこれら方法を実施する任意の装置は、風に向かわないように、排気ポートを位置決めしなければならない。これはすなわち、空気を確実に排気するには、排気ポート表面の上方の局部外部全圧(静圧+動圧)は内部の静圧を決して上回ってはならないということである。
【0045】
例えば、上記排気ポートは、エアサポート構造物の上部の開口部であってよい。ここでは、この排気ポート開口部は、決して風の方を向いていない。また、排気ポートは、風除けによって風から遮断されることが可能であり、従って、該排気ポートは、決して風の動圧にさらされない。
【0046】
本考案はまた、出入り口、吸気口および排気ポート等用のアクセス口のエアサポート構造物の膜応力を低減させる一連の方法および一連の装置である。
【0047】
アクセス口におけるエアサポート構造物の膜応力を低減させる主たる第1の方法は、フレームを、地面または土台に隣接したアクセス口の縁の地上部分の、アクセス口におけるエアサポート構造物の膜に取り付ける工程と、上記フレームの終端を、地面または土台に取り付けられた膜の付属物と同一線上にヒンジ軸がある地面または土台にヒンジで連結させ、該フレームをエアサポート構造物の密閉空間に向かっておよびそこから離れるように旋回させることを可能にする工程と、機能的手段(例えばドア、1つまたは複数のファン、孔等)をヒンジフレームに取り付ける工程と、該ヒンジフレーム内のエアサポート構造物の膜を除去する工程とを含む。これによって、空気が抜けた時には、アクセス口は、膜と一緒に、風に向かって且つ地面または土台まで動き、その際に、取り付けられたフレームの近傍において膜に過度の応力が生じることはない。
【0048】
アクセス口におけるエアサポート構造物の膜応力を低減させる一改善方法は、アクセス口におけるエアサポート構造物の膜の自然な(膨張されるとともに妨害されていない)輪郭にあわせて、アクセスポータルフレームを曲げる工程と、その後該フレームを、地面または土台に隣接したアクセス口の縁における地上部分の、アクセス口における該エアサポート構造物の膜に取り付ける工程と、この輪郭のフレームの終端を、地面または土台に取り付けられた膜の付属物と同一線上にヒンジ軸がある地面または土台にヒンジで連結させ、この輪郭のフレームがエアサポート構造物の密閉空間に向かっておよびそこから離れるように旋回することを可能にする工程と、機能的手段(例えばドア、1つまたは複数のファン、孔等)を輪郭が形成されたヒンジフレームに取り付ける工程と、該輪郭が形成されたヒンジフレーム内のエアサポート構造物の膜を除去する工程とを含む。これによって、空気が抜けた時には、アクセス口は、膜と一緒に、風に向かって且つ地面または土台まで動き、その際に、取り付けられたフレームの近傍において膜に過度の応力が生じることはない。
【0049】
アクセス口におけるエアサポート構造物の膜応力を低減させる第2の主たる方法は、フレームを、地面または土台に隣接したアクセス口の縁における地上部分の、アクセス口におけるエアサポート構造物の膜に取り付ける工程と、上記フレームの終端を、地面または土台に取り付けられた膜の付属物と同一線上にヒンジ軸がある地面または土台にヒンジで連結させ、該フレームをエアサポート構造物の密閉空間に向かっておよびそこから離れるように旋回させることを可能にする工程と、所定の幅の覆い膜における一端を該ヒンジフレームに取り付ける工程と、覆い膜の他端を機能的手段(例えばドア、1つまたは複数のファン、孔等)の固定骨組みに取り付ける工程と、ヒンジフレーム内のエアサポート構造物の膜を除去する工程とを含む。これによって、空気が抜けた時には、アクセス口のヒンジフレームは、エアサポート構造物の膜と一緒に、風に向かって且つ地面または土台まで動き、その際に、取り付けられたフレームの近傍において膜に過度の応力が生じることはない。
【0050】
アクセス口におけるエアサポート構造物の膜応力を低減させる改善された第2の方法は、アクセス口におけるエアサポート構造物の膜の自然な(膨張されるとともに妨害されていない)輪郭にあわせて、アクセスポータルフレームを曲げる工程と、その後該フレームを、地面または土台に隣接したアクセス口の縁における地上部分の、アクセス口における該エアサポート構造物の膜に取り付ける工程と、この輪郭のフレームの終端を、地面または土台に取り付けられた膜の付属物と同一線上にヒンジ軸がある地面または土台にヒンジで連結させ、この輪郭のフレームがエアサポート構造物の密閉空間に向かっておよびそこから離れるように旋回することを可能にする工程と、所定の幅の覆い膜における一端を輪郭が形成されたヒンジフレームに取り付ける工程と、覆い膜の他端を機能的手段(例えばドア、1つまたは複数のファン、孔等)の固定骨組みに取り付ける工程と、輪郭が形成されたヒンジフレーム内のエアサポート構造物の膜を除去する工程とを含む。これによって、空気が抜けた時には、アクセス口の輪郭が形成されたヒンジフレームは、エアサポート構造物の膜と一緒に、風に向かって且つ地面または土台まで動き、その際に、取り付けられたフレームの近傍において膜に過度の応力が生じることはない。
【0051】
各上記方法では、フレームが、該フレーム内の張力によって、該フレームのすぐ上の膜内の主として垂直な応力線を、地面または土台まで転移させる。これは、アクセス口内の膜をアクセス可能とするために除去したならば、アクセス口内の膜を介して、地面または土台に導かれたであろう張力である。上記フレームは、この張力を地面または土台まで転移させ、結果的に、隣接する膜がこの追加的応力を運ぶ必要はない。なぜなら、上記フレームに隣接した膜が、フレームのない領域の応力をこのすぐ上に既に移動させているからである。
【0052】
ヒンジ手段は、膜が風に向かって移動している周期の間の水平応力を低減させる。上記主たる第1の方法およびその改善方法は、フレームに直接取り付けられた機能的手段が低角度慣性(つまり、ヒンジ軸から離間された低質量)のものである場合のみ有効である。これ以外の場合は、前後に揺れる重いフレームの動態作用が周辺の膜に応力を加える。
【0053】
構造物の内部の静圧を調節することと、出入り口手段を提供することとを結びつける一方法は、内部の静圧が所望の圧力を上回った場合に、スライディングドアまたはフォローアップドアといった出入り口手段を開放する工程と、内部の静圧が所望の圧力よりも下に降下した場合に、該出入り口手段を閉鎖する工程と、出入りのために出入り口手段を短時間全開するために、内部の静圧の調節を一時的に無効にする手段を提供する工程とを含む。これによって、内部の圧力を所望の圧力に調節すると共に出入りが可能となる。
【0054】
構造物の内部の静圧を調節することと、出入り口手段を提供することとを結びつける一改善方法は、内部の静圧が所望の圧力を上回った場合に、スライディングドアまたはフォローアップドアといった出入り口手段を開放する工程と、内部の静圧が所望の圧力よりも下に降下した場合に、該出入り口手段を閉鎖する工程と、出入りのために出入り口手段を短時間全開するために内部の静圧の調節を一時的に無効にすると同時に、吸気流を増大させ、一時的に増大した排気流を補償する手段を提供する工程とを含む。これによって、内部の圧力を所望の圧力に調節すると共に出入りが可能となる。
【0055】
この改善方法は、本考案に記載の、通気されたエアサポート構造物の内部の圧力を調節する好ましい方法である。なぜなら本方法は、大幅な通気が可能であると共に、牽引車のような装置を出入りさせることが可能となるからである。また、吸気流および排気流を制御することによる圧力調節機能と、出入り口の機能とを組み合わせることによって、通路、つまりアクセス口の数を減らし、コストを低減させながら、構造物の安定性および軽便性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、通気および加圧されたエアサポート構造物を示す正面図である。
【図2】図2は、回転可能なエアスクープを先端部に備える空気取入筒を示す斜視図であり、該筒は、1つまたは複数の吸気ファンを備えるハウジングに接続されている。
【図3】図3は、空気取入筒を示す正面図であり、該空気取入筒は、該空気取入筒の上部のほぼ垂直な軸にヒンジで連結されている吸気フラップを備えている。
【図4】図4は、吸気ポートのいずれか1つに法線入射する外部の風で動作する、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。
【図5】図5は、吸気ポートのいずれか1つに斜め入射する外部の風で動作する、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。
【図6】図6は、外部の風で動作しない、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。
【図7】図7は、通気および加圧された、2つの背中合わせになったインライン型エアサポート構造物を示す正面図であり、外部の風の流線が記入されている。
【図8】図8は、通気および加圧された、2つの背中合わせになったインライン型エアサポート構造物の、前後にずれたアレイの一部を示す斜視図であり、該構造物には、外縁風除けが設けられている。
【図9】図9は、圧力調節排気口を示す正面図である。
【図10】図10は、機械的に制御された排気口を示す正面図である。
【図11】図11は、エアサポート構造物の一端に取り付けられたヒンジフレームを示す斜視図である。
【図12】図12は、エアサポート構造物の一端に取り付けられたヒンジフレームと覆いとを示す斜視図であり、該覆いは、エアロックに取り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0057】
〔詳細な説明〕
図1は、通気および加圧されたエアサポート構造物を示す正面図である。該構造物は、空気取入システムを示しており、該エアサポート構造物の一側面には、風で支援される空気取入筒1と1つまたは複数のファン用のハウジング2とを含んでおり、該エアサポート構造物の他の側面には、圧力を調節する排気口6および出入り用エアロック9を含んでいる。筒1は、入手可能な任意の風を捕捉し、その流れを、この空気流をエアサポート構造物の内部空間の中に向けてさらに加圧する1つまたは複数のファンの中に方向付ける。この内部空間は、空気流を排気口6のなかに運び該構造物から外に排出する送風管として機能している。また、ヒンジで連結され、エアサポート構造物の膜5とファン用ハウジング2とに柔軟性のある覆い3を経由して接続された空気取入口ポータルフレーム4といった付属物も示されている。柔軟性のある覆い3は、フレーム4が膜5と共に動いて、空気が抜けた場合にも、上記構造物の密閉を破損することなく、地面を軸にして(pivot)完全に旋回することを可能にしている。同様に、ヒンジで連結されたエアロックおよび排気口ポータルフレーム7と、エアロックおよび排気口覆い8と、エアロックおよび排気口覆い偏向板8aとが示されている。この排気口覆い偏向板8aは、覆い8が、排気口6の排気を干渉することを回避すると共に、覆い8と共に風除けとして機能し、(エアロック9の方向から来る)風が排気口6の排気を干渉することを妨げている。
【0058】
図2は、空気取入筒を示す斜視図であり、該空気取入筒は、該筒の先端部に、回転台13の上に接続された回転可能なエアスクープ14を備えている。この空気取入筒は、1つまたは複数の吸気ファンを備えるハウジング2に接続されている。直線の矢印は、風流および空気流が構造物の中に導かれる方向を示すものである。ダブルヘッドの曲がった矢印は、回転台13の回転可能な動きを示すものである。回転台13の回転軸の一面には、該軸に向かって開口した開口部を備えたエアスクープが配置されており、このため、エアスクープ14の開口部は、自動的に風の方を向くようになっている。
【0059】
図3は、空気取入筒1を示す正面図であり、該空気取入筒は、その上部の空気取入筒骨組み11のほぼ垂直な軸にヒンジで連結された吸気フラップ10を備えている。フラップ10は、内側にしか開口せず、このため、入手可能な任意の風流および風圧の吸気口として機能している。
【0060】
図4は、吸気ポートのいずれか1つに法線入射する外部の風で動作する、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。空気取入筒フラップ停止具12は、フラップ10が任意の隣接するフラップの動き、弧状の動きを干渉することを回避させると共に、フラップ10がリターントルクのない点を通り過ぎることを回避させるように機能する。骨組み11は、フラップ10が外側に開くことを妨げる停止具と、フラップ10を上記筒のほぼ垂直な頂点にヒンジで連結させる手段とを提供する。矢印は、外部風流の方向を示すものである。上記筒から風流が抜けることを妨げるために、風下側のフラップが閉じられる。
【0061】
図5は、吸気ポートのいずれか1つに斜め入射する外部の風で動作する、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。これは、矢印によって示される外部風流の方向がわずかに異なる点を除いて、図4と同様である。
【0062】
図6は、外部の風で動作しない、図3の空気取入筒の吸気領域を示す水平断面図である。ここでは、好ましい吸気ポートは存在せず、各フラップは、ほぼ同じ程度、内側に向かって開いている。
【0063】
図7は、通気および加圧された、2つの背中合わせになったインライン型エアサポート構造物を示す正面図であり、外部の風の流線が記入されている。ここでは、空気取入筒が、上記構造物の構成自体に置き換えられており、この構造物の構成については、図8にさらに詳細に示している。構造物の膜5の形状が、一部の風流を、図示した2つの構造物の間の吸気領域内に方向付ける翼として機能している。この吸気領域内の静圧は、吸気領域の上方の、上向きに曲がった複数の流線によって示される外部風流の静圧よりも高い(つまり一部の風の動圧が、静圧に変換されている)。その後、1つまたは複数のファンが、このより高い圧力を増大させ、破線の矢印の空気流をエアサポート構造物の中に方向付ける。
【0064】
図8は、通気および加圧された、2つの背中合わせになったインライン型エアサポート構造物の、前後にずれたアレイの一部を示す斜視図であり、該構造物には、外縁風除けが設けられている。このアレイは、図7に示した構造物の吸気領域内に、より高圧な区域を生成している。上記曲線的な風除けは、翼として機能して、隣接する構造物をシミュレートする。
【0065】
図9は、圧力調節排気口6を示す正面図である。排気口外部蓄圧器19は、図3の空気取入筒と同様に機能している。内部に向かって開いている排気口外部蓄圧器19のフラップ20は、外部の全風圧が、上記蓄圧器の中に入ることを可能にしており、この外部の全風圧は、排気口外圧領域17に運ばれ、楔形の排気口フラップ16の上部を押さえつける。排気口フラップ16の上部は、軸16aを軸に旋回しながら、フラップ16の下部にしっかりと接続されている。フラップ16の閉鎖トルクを調節して、膜オフセット圧力(無風時に膜を支えるために必要な最小圧力)を調節するためにフラップ16にしっかりと接続されたカウンタバランス21aの上に、カウンタバランス重石21が配置されている。排気口外圧シール18は、外圧領域17からの空気漏れを最小限に抑えるように機能している。排気口外圧シール18は、内部の静圧を、実質的に、外部全圧と膜オフセット圧力との合計に維持するものである。一部の外部の動圧によって内圧を低減させるために、蓄圧器19の先端部の穴(図示していない)を用いてもよい。これによって、蓄圧器19および外圧領域17内の圧力は、外部の静圧と外部全圧との間に維持されることになる。この穴がフラップ20の領域に対して大きいほど、17に位置する圧力および19に位置する圧力は、外部の静圧に近い圧力になる。
【0066】
図10は、機械的に制御された排気口22を示す正面図である。直線アクチュエータ24によって、機械的な排気口フラップ23は開閉される。このタイプの排気口は、外部の静圧と外部の動圧と内部の静圧とを割り出すための圧力トランスデューサと共に用いられ得る。
【0067】
図11は、エアサポート構造物の一端に取り付けられた、ヒンジフレーム7を示す斜視図である。ヒンジ軸25は、膜5の付属物と同一線の地面上にあり、このため、空気が抜けた時には、ヒンジフレーム7は、膜5と共に動いて地面に旋回することが可能である。
【0068】
図12は、エアサポート構造物の一端に取り付けられたヒンジフレーム7と、エアロック9に取り付けられた覆い8とを、外側ドア26と共に示す斜視図である。図11に示したフレーム7内の膜の一部は、出入りが可能なように、取り外されている。柔軟性のある覆い8は、フレーム7とエアロック9とに接続され、エアサポート構造物からの空気漏れを回避すると同時に、ヒンジフレーム7が動くことを可能にしている。
【符号の説明】
【0069】
1 空気取入筒
2 1つまたは複数の吸気ファン用ハウジング
3 空気取入口覆い
4 ヒンジで連結された空気取入口ポータルフレーム
5 エアサポート構造物の膜
6 圧力が調節された排気口
7 ヒンジで連結されたエアロックおよび排気口ポータルフレーム
8 エアロックおよび排気口覆い
8a エアロックおよび排気口覆い偏向板
9 エアロック
10 空気取入筒フラップ
11 空気取入筒骨組み
12 空気取入筒フラップ停止具
13 回転可能なエアスクープ用回転台
14 エアスクープ
15 曲線的な風除け
16 楔形の排気口フラップ
17 排気口外圧領域
18 排気口外圧シール
19 排気口外部蓄圧器
20 排気口外部蓄圧器フラップ
21 排気口カウンタバランス重石
21a 排気口カウンタバランス
22 機械的排気口
23 機械的排気口フラップ
24 機械的排気口直線アクチュエータ
25 フレームヒンジ
26 エアロックの外側ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアサポート構造物を加圧および通気する方法であって、
外部風流および外部風圧を、内圧を調節する機械的フロー手段の中に方向付けて、空気流および内圧を生成する工程と、
上記空気流を上記エアサポート構造物の内部空間の中に方向付ける工程と、
上記空気流を上記エアサポート構造物の内部空間を通るように方向付ける工程と、
上記空気流を、排気手段によって、上記エアサポート構造物の内部空間から外へ方向付ける工程とを含み、
上記エアサポート構造物の内部空間を、外部の風と上記機械的フロー手段の信頼性との支援によって通気および加圧する方法。
【請求項2】
上記機械的フロー手段は、上記空気流を制御する手段を含む、請求項1に記載のエアサポート構造物を加圧および通気する方法。
【請求項3】
上記空気流を制御する上記手段は、上記エアサポート構造物内の空気の温度、日射、または、湿度レベルによって調節される、請求項2に記載のエアサポート構造物を加圧および通気する方法。
【請求項4】
上記空気流を制御する上記手段は、上記エアサポート構造物内の圧力によって調節される、請求項2に記載のエアサポート構造物を加圧および通気する方法。
【請求項5】
構造物の内部の静圧を調節する方法であって、
外部全圧を移動可能な表面の側部の一部に方向付け、上記側部の一部は残りの部分を補償している工程と、
外部の静圧を上記移動可能な表面の側部における残りの部分に方向付けて、力を生成する工程と、
上記力を、上記構造物の排気ポートを主として覆っている第2の移動可能な表面に方向付け、上記第2の移動可能な表面を上記構造物の排気ポートの上に押し付ける工程と、
上記第2の移動可能な表面に、所定の外部閉鎖力を加える工程とを含み、
上記構造物の内部の静圧が、上記外部の静圧と上記外部の動圧のある割合とを足したものを、所定の量だけ上回った場合にのみ、上記排気ポートを通って空気が排気される方法。
【請求項6】
通路と構造物における内部の静圧の調節とを結びつける方法であって、
出入り口手段を提供する工程と、
上記構造物の内圧を調節する手段を提供する工程であって、
上記内部の静圧が所望の圧力を上回った場合に、上記出入り口手段を開放し、
上記内部の静圧が所望の圧力よりも下に降下した場合に、上記出入り口手段を閉鎖する工程と、
上記内部の静圧の調節を短時間無効にする手段を提供する工程であって、
出入りのために上記出入り口手段を短時間全開する工程とを含み、
上記内部の静圧を、実質的に所望の圧力に調節すると共に、出入りを可能にする方法。
【請求項7】
通路と構造物における内部の静圧の調節とを結びつける方法であって、
出入り口手段を提供する工程と、
上記構造物の内部の静圧を調節する手段を提供する工程であって、
上記内部の静圧が所望の圧力を上回った場合に、上記出入り口手段を開放し、
上記内部の静圧が所望の圧力よりも下に降下した場合に、上記出入り口手段を閉鎖する工程と、
上記内部の静圧の調節を短時間無効にする手段を提供する工程であって、
出入りのために上記出入り口手段を短時間全開し、
当該短時間の間、吸気空気流を増大させ、増大した排気流を補償する工程とを含み、
上記内部の静圧を、実質的に所望の圧力に調節すると共に、出入りを可能にする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−144974(P2012−144974A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26704(P2012−26704)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2009−172111(P2009−172111)の分割
【原出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(509004664)
【氏名又は名称原語表記】CHELF,Jonathan,David
【住所又は居所原語表記】7974 Amargosa Drive,Carlsbad,CA 92009,United States of America
【Fターム(参考)】