説明

エアスポイラ構造

【課題】ウレタンシートを用いること無く、ホイールハウスの内側面との間に形成される隙間を埋めることができるエアスポイラ構造を提供する。
【解決手段】エアスポイラ1の端部に、ホイールハウス22の内側へ向けて折曲された折曲部23を設定し、側面部14後端にホイールハウス22の内側面25に沿って延在するフランジ面26を一体形成する。フランジ面26の上縁31に、内側面25側へ向けて突出する延出面32を一体形成し、延出面32に、内側面25に沿って延在する薄肉のヒンジ部41を複数設ける。各ヒンジ部41を延出面32の延出方向に並設し、各ヒンジ部41を延出面32の下面に形成されたV字溝で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーに沿って配設され、端部がホイールハウスの内側に折曲されたエアスポイラにおけるエアスポイラ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントバンパーに取り付けられるパーツとしては、エアスポイラ(バンパープロテクターとも言う)が知られている。
【0003】
このエアスポイラは、前記フロントバンパー下部を覆うように取り付けられており、前記フロントバンパーに沿ったコ字形状に形成されている。前記エアスポイラの端部には、ホイールハウスの内側へ向けて折曲された折曲部が設けられており、前記ホイールハウスの内側面に沿って延在するフランジ面が形成されている。
【0004】
このフランジ面は、当該エアスポイラを前記フロントバンパーに取り付けた状態で、前記ホイールハウスの内側面との間に3〜4mmの間隙が形成されるように設計されており、組み付け時のバラツキと製品そのもののバラツキの両方を吸収できるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のエアスポイラ構造にあっては、取付状態においてエアスポイラのフランジ面とホイールハウスの内側面との間に隙間が形成されてしまう。
【0006】
これにより、視覚的な品質感が低下するとともに、この隙間からタイヤで巻き上げられた泥や砂が入り込む恐れがあった。このため、この隙間部にウレタンシートを貼り付けて閉鎖しなければならず、部材コストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ウレタンシートを用いること無く、ホイールハウスの内側面との間に形成される隙間を埋めることができるエアスポイラ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のエアスポイラ構造にあっては、バンパーに沿って配設されるエアスポイラの端部に、ホイールハウスの内側へ向けて折曲されるとともに該ホイールハウスの内側面に沿って配置されるフランジ面が形成されたエアスポイラ構造において、前記フランジ面の上縁より前記内側面側へ向けて突出する延出面を延出するとともに、該延出面に、前記内側面に沿って延在する薄肉のヒンジ部を複数設け、各ヒンジ部を当該延出面の延出方向に並設した。
【0009】
すなわち、エアスポイラの端部には、ホイールハウスの内側へ向けて延出するフランジ面が形成されており、このフランジ面と前記ホイールハウスの内側面との間には組み付け時のバラツキ及び製品のバラツキを吸収する為に間隙が形成されるように設計されている。このため、取付状態において、前記フランジ面と前記内側面との間には、所定の間隙が形成されてしまう。
【0010】
そこで、前記フランジ面の上縁には前記内側面側へ向けて突出する延出面が延設されており、該延出面には、前記内側面に沿って延在する薄肉のヒンジ部が当該延出面の延出方向に並設されている。
【0011】
このため、前記フランジ面と前記内側面間の間隙寸法に合致する位置のフランジ部に沿って、前記延出面を切断する又は折り曲げることにより、残存した延出面によって前記間隙を閉鎖することができる。
【0012】
また、請求項2のエアスポイラ構造においては、前記延出面の下面に形成された断面V字状のV字溝によって前記ヒンジ部を構成した。
【0013】
すなわち、延出面に形成されたヒンジ部は、当該延出面の下面に形成されたV字溝によって構成されている。このため、延出面の上面にV字溝を形成してヒンジ部を形成する場合と比較して、表面側へのV字溝の表出が防止される。
【0014】
また、前記ヒンジ部は、断面V字状のV字溝で構成されている。このため、前記延出面を折曲する際には、当該延出面の下面側への折曲が容易に行われる。
【0015】
そして、この折曲状態では、前記ヒンジ部を構成するV字溝の一方の斜面が他方の斜面に当接することによって、下方に折曲された前記ヒンジ部を境とする先端部の必要以上の折曲が防止される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の請求項1のエアスポイラ構造にあっては、エアスポイラ端部のフランジ面より延出した延出面を、前記フランジ面と前記内側面間の間隙寸法に合致する位置のフランジ部に沿って切断する又は折り曲げることにより、残存した延出面により前記間隙を閉鎖することができる。
【0017】
このため、エアスポイラのフランジ面とホイールハウスの内側面との間に形成された隙間を閉鎖する為に、ウレタンシートを貼り付けなければならなかった従来と比較して、前記ウレタンシートの使用を廃止することができ、低コスト化を図ることができる。また、ウレタンシートの貼り付け作業を省略することができるため、組み付け工数を削減することができる。
【0018】
さらに、前記エアスポイラのフランジ面とホイールハウスの内側面との間に隙間が形成される場合や、この間隙部にウレタンシートが貼着される場合と比較して、外観品質を高めることができるとともに、タイヤで巻き上げられた泥や砂などの前記間隙からの進入や前記ウレタンシートへの付着を防止することができる。
【0019】
また、請求項2のエアスポイラ構造においては、延出面に形成されたヒンジ部を当該延出面の下面に形成されたV字溝によって構成したため、前記延出面の上面にV字溝を形成してヒンジ部を形成した場合と比較して、表面側へのV字溝の表出を防止することができる。これにより、前記延出面表面での外観品質を高めることができるとともに、前記延出面の上面にV字溝を形成する場合と比較して、当該延出面への汚れの付着を抑えることができる。
【0020】
また、前記ヒンジ部を、断面V字状のV字溝で構成することによって、前記延出面を折曲する際に、当該延出面の下面側への折曲を容易とすることができる。これにより、作業性を高めることができる。
【0021】
そして、この折曲状態では、前記ヒンジ部を構成するV字溝の一方の斜面が他方の斜面に当接することによって、下方に折曲された前記ヒンジ部を境とする先端部の必要以上の折曲を防止することができる。これにより、折曲された部位と前記ホイールハウスの内側面との面接範囲を広げることができ、密着性を高める効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるエアスポイラ構造を備えたエアスポイラ1を示す図であり、該エアスポイラ1が車両2のフロントバンパー3に取り付けられた状態が示されている。
【0023】
このエアスポイラ1は、前記フロントバンパー3の下部を覆うように取り付けられるパーツであり、走行風の流れを整流して空力特性を向上したり、前記フロントバンパー3を保護する目的のバンパープロテクターとしても用いられている。
【0024】
前記エアスポイラ1は、合成樹脂製であって、前記フロントバンパー3の前面11に沿って車幅方向に延在する前面部12と、前記フロントバンパー3の側面部13に沿って延在する車両後方RRへ向けて延出した側面部14とによってコ字状に形成されている。また、このエアスポイラ1は、取付状態において、前記フロントバンパー3より下方に突出するように構成されており、車両2下面を通過する走行風を整流するとともに、路面に設けられた障害物の前記フロントバンパー3への干渉を未然に防止できるように構成されている。
【0025】
このエアスポイラ1の前記両側面部14,14は、フロントタイヤ21を収容したホイールハウス22まで達する長さに設定されており、当該側面部14の端部には、図2に示すように、前記ホイールハウス22の内側(車両中心方向)へ向けて折曲された折曲部23が設定されている。これにより、前記側面部14の後端には、前記ホイールハウス22のアーチ部24における内側面25に沿って延在するフランジ面26が一体形成されている。
【0026】
このフランジ面26は、当該エアスポイラ1を前記フロントバンパー3に取り付けた状態において、前記ホイールハウス22の前記内側面25との間に3〜4mmの間隙を確保できるように設計されており、組み付け時のバラツキや成型誤差を吸収できるように工夫されている。前記フランジ面26の上縁31には、図3に示すように、前記内側面25側へ向けて突出する延出面32が一体形成されており、この延出面32の前記内側面25へ向けた長さ寸法は、3〜4mmに設定された前記間隙33より十分に長い寸法に設定されている。
【0027】
この延出面32には、前記内側面25に沿って延在する、すなわち車幅方向に延在する薄肉のヒンジ部41が複数設けられており(本実施の形態では、その一例として4本のヒンジ部41,・・・を示す)、各ヒンジ部41,・・・は、当該エアスポイラ1を成型する金型の型抜き方向であって当該延出面32の左端から右端までの全域に渡って形成されている。前記各ヒンジ部41,・・・は、当該延出面32の延出方向、すなわち車両前後方向に並設されており、各ヒンジ部41,・・・は、等間隔をおいて配置されている。そして、隣接したヒンジ部41,41の間隔は、1mmに設定されている。
【0028】
なお、本実施の形態では、各ヒンジ部41,・・・が等間隔に形成された場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、必ずしも等間隔で形成しなくても良い。また、隣接したヒンジ部41,41の間隔は、1mmに限定されるものではなく、他の寸法であっても良い。
【0029】
前記各ヒンジ部41,・・・は、前記延出面32の下面に形成された断面V字状のV字溝によって構成されており、各ヒンジ部41,・・・を形成するV字溝の内側面は、当該延出面32の上面に向かうに従って当該V字溝の中央へ向けて傾斜した相対向する傾斜面51,52によって構成されている。各ヒンジ部41,・・・における前記両傾斜面51,52が形成する角度αは、90度よりやや鈍角に設定されており、所定のヒンジ部41を境とする先端側を下方の折曲する際に、当該先端部を90度以上折曲できるように構成されている。
【0030】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記エアスポイラ1の端部には、ホイールハウス22の内側へ向けて延出するフランジ面26が形成されており、このフランジ面26と前記ホイールハウス22の内側面25との間には、組み付け時のバラツキや成型誤差を吸収する為に間隙33が形成されるように設計されている。このため、取付状態において、前記フランジ面26と前記内側面25との間には、所定の間隙33が形成されてしまう。
【0031】
そこで、このエアスポイラ1にあっては、前記フランジ面26の上縁31には、前記内側面25側へ向けて突出する延出面32が形成されており、該延出面32には、前記内側面25に沿って延在する薄肉のヒンジ部41,・・・が当該延出面32の延出方向に並設されている。
【0032】
このため、前記フランジ面26と前記内側面25間の間隙33の寸法に合致する位置のフランジ部41に沿って、前記延出面32を切断する又は折り曲げることにより、基端側に残存した延出面32によって前記間隙33を閉鎖することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、前記ヒンジ部41を境に折曲する場合を例に挙げて説明したが、前記ヒンジ部41にて切断しても、前記間隙33を閉鎖することができる。
【0034】
このため、前記エアスポイラ1のフランジ面26とホイールハウス22の内側面25との間に形成された間隙33を閉鎖する為に、ウレタンシートを貼り付けなければならなかった従来と比較して、前記ウレタンシートの使用を廃止することができ、低コスト化を図ることができる。また、ウレタンシートの貼り付け作業を省略することができるため、組み付け工数を削減することができる。
【0035】
さらに、前記エアスポイラ1のフランジ面26とホイールハウス22の内側面25との間に間隙33が形成される場合や、この間隙部にウレタンシートが貼着される場合と比較して、外観品質を高めることができるとともに、フロントタイヤ21で巻き上げられた泥や砂などの前記間隙33からの進入や前記ウレタンシートへの付着を防止することができる。
【0036】
また、前記ヒンジ部41,・・・は、前記延出面32の下面に形成されたV字溝によって構成されている。このため、前記延出面32の上面にV字溝を形成してヒンジ部41,・・・を形成する場合と比較して、表面側へのV字溝の表出を防止することができる。
【0037】
これにより、前記延出面32表面での外観品質を高めることができるとともに、前記延出面32の上面にV字溝を形成する場合と比較して、当該延出面32への汚れの付着を抑えることができる。
【0038】
さらに、前記ヒンジ部41,・・・を、断面V字状のV字溝で構成することによって、前記延出面32を折曲する際に、当該延出面32の下面側への折曲を容易とすることができる。これにより、作業性を高めることができる。
【0039】
そして、この折曲状態では、前記ヒンジ部41を構成するV字溝の一方の傾斜面51が他方の傾斜面52に当接することによって、下方に折曲された前記ヒンジ部41を境とする先端部の必要以上の折曲を防止することができる。これにより、折曲された前記先端部と前記ホイールハウス22の内側面25との面接範囲を広げることができ、密着性を高める効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のSA−SA断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 エアスポイラ
3 フロントバンパー
22 ホイールハウス
25 内側面
26 フランジ面
31 上縁
32 延出面
33 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパーに沿って配設されるエアスポイラの端部に、ホイールハウスの内側へ向けて折曲されるとともに該ホイールハウスの内側面に沿って配置されるフランジ面が形成されたエアスポイラ構造において、
前記フランジ面の上縁より前記内側面側へ向けて突出する延出面を延出するとともに、該延出面に、前記内側面に沿って延在する薄肉のヒンジ部を複数設け、各ヒンジ部を当該延出面の延出方向に並設したことを特徴とするエアスポイラ構造。
【請求項2】
前記延出面の下面に形成された断面V字状のV字溝によって前記ヒンジ部を構成したことを特徴とする請求項1記載のエアスポイラ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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