説明

エアゾール容器用オーバーキャップおよびオーバーキャップ付きエアゾール容器

【課題】天板部に押圧板を連結する弱化部が、残留ガスを抜き出す前に不用意に破断するのを防ぎ、かつ外観に優れたオーバーキャップを提供する。
【解決手段】エアゾール容器用オーバーキャップ40であって、天板部41に、蓋部材42の外周面をその径方向外方から囲繞する囲繞筒部43が立設されるとともに、この囲繞筒部43に蓋部材42を係止する係止部44が設けられ、このオーバーキャップ40をエアゾール容器から外した状態で、押圧板16を、天板部41の裏面側から弱化部を破断しつつ押し上げたときに、蓋部材42がこの押圧板16により押し上げられ係止部44から外れる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器用オーバーキャップおよびオーバーキャップ付きエアゾール容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のオーバーキャップ付きエアゾール容器として、上方付勢状態で立設されたステム、およびこのステムに取り付けられた噴霧ヘッドを備えたエアゾール容器と、前記ステムおよび噴霧ヘッドを囲うようにこのエアゾール容器に装着されたエアゾール容器用オーバーキャップとを備える構成が知られている。
近年では、需要者において、内容物を使い切った後のエアゾール容器内の残留ガスを容易に抜き出すことができるように、エアゾール容器用オーバーキャップの天板部に、例えば下記特許文献1に示されるような、押圧板がヒンジ部回りに下方に折り曲げ可能に区画され、この押圧板を下方に折り曲げたときに、その押下端部が、このオーバーキャップをエアゾール容器に装着した状態で、噴霧ヘッドの上面を押し下げる構成が提案されている。そして、前述のように折り曲げる前の押圧板の外周縁は、この押圧板の折り曲げにより容易に破断可能な弱化部を介して天板部に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−191062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のエアゾール容器用オーバーキャップでは、例えばオーバーキャップ付きエアゾール容器の流通過程や、需要者が内容物を使用するのにオーバーキャップをエアゾール容器に対して繰り返し着脱する等の残留ガスを抜き出す前に、押圧板に作用する外力によって、不用意に前記弱化部が破断するおそれがあった。
また、天板部に形成された前記弱化部がオーバーキャップの見映えを悪くするおそれもあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、天板部に押圧板を連結する弱化部が、残留ガスを抜き出す前に不用意に破断するのを防ぐことができるとともに、外観に優れたエアゾール容器用オーバーキャップおよびオーバーキャップ付きエアゾール容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のエアゾール容器用オーバーキャップは、上方付勢状態で立設されたステムと、このステムに取り付けられた噴霧ヘッドと、を備えたエアゾール容器に着脱可能に装着されるエアゾール容器用オーバーキャップであって、エアゾール容器に装着した状態で前記噴霧ヘッドの上面に対向する天板部が備えられ、この天板部に押圧板が区画されるとともに、この押圧板の外周縁は破断可能な弱化部を介して前記天板部に連結され、前記押圧板は、前記弱化部を破断して押圧板の押下端部をこのオーバーキャップの内部に進入させたときに、このオーバーキャップをエアゾール容器に装着した状態で、前記押下端部がステムを押し下げる残留ガス抜き姿勢に保持される構成とされ、前記天板部の表面に、前記押圧板および弱化部を覆う蓋部材が取り外し可能に設けられ、前記天板部に、前記蓋部材の外周面をその径方向外方から囲繞する囲繞筒部が立設されるとともに、この囲繞筒部に前記蓋部材を係止する係止部が設けられ、このオーバーキャップをエアゾール容器から外した状態で、前記押圧板を、前記天板部の裏面側から前記弱化部を破断しつつ押し上げたときに、前記蓋部材がこの押圧板により押し上げられ前記係止部から外れる構成とされたことを特徴とする。
この発明によれば、天板部の表面に前記蓋部材が設けられているので、例えばオーバーキャップ付きエアゾール容器の流通過程や、需要者が内容物を使用するのにオーバーキャップをエアゾール容器に対して繰り返し着脱する等の残留ガスを抜き出す前に、押圧板の表面側に外力が作用しても、この外力を蓋部材で受け止めて、この力が弱化部に作用するのを防ぐことが可能になり、この弱化部が不用意に破断するのを防止することができる。
さらに、前記弱化部が蓋部材で覆われているので、天板部に弱化部が形成されたことによりこのオーバーキャップの見映えが悪くなるのを防ぐことが可能になり、外観に優れたオーバーキャップを提供することができる。
しかも、この蓋部材は、天板部の表面に取り外し可能に設けられているので、残留ガスを抜き出すときには蓋部材を天板部から取り外すことが可能になり、このオーバーキャップに優れた操作性を具備させることができる。
そして、蓋部材の外周面がその径方向外方から囲繞筒部の内周面により囲繞されるとともに、この蓋部材が前記係止部で係止されているので、残留ガスを抜き出す前に蓋部材の外周側に外力が作用しても、この外力を囲繞筒部で受け止めることが可能になり、この蓋部材が天板部に対して移動させられ天板部から外れるのを防ぐことができる。なお、残留ガスを抜き出す前に蓋部材の表面側に外力が作用しても、この蓋部材は天板部の表面に当接しているので移動しない。
【0007】
ここで、前述した囲繞筒部および係止部に代えて、互いに係合可能な第1、第2係合部のうち、一方が前記天板部の表面に設けられるとともに、他方が前記蓋部材の裏面に設けられ、第1係合部は、幅広孔と幅狭孔とがそれぞれの幅方向と直交する長手方向に連結された長穴形状の係合孔とされ、第2係合部は、前記天板部の表面、若しくは前記蓋部材の裏面に突設された係合凸部とされるとともに、この係合凸部は、前記天板部の表面、若しくは前記蓋部材の裏面に連結された薄肉部と、この薄肉部の先端に連結された厚肉部とを備え、前記第1係合部の幅広孔に前記第2係合部を挿入した状態で、この第2係合部を、第1係合部の幅狭孔内に向けて相対的にスライド移動させ、前記厚肉部の薄肉部側の端部を、蓋部材の表面、若しくは天板部の裏面における前記幅狭孔の開口周縁部に引っ掛けることによって、第1、第2係合部が互いに係合する構成とされてもよい。
この場合、蓋部材を天板部の表面に取り外し可能に設ける構成を容易かつ確実に実現することができる。
【0008】
また、前記第1係合部の幅狭孔の内面には係止凸部が突設され、蓋部材が天板部に取り付けられた状態で、第2係合部の薄肉部は、前記係止凸部と、前記幅狭孔において前記長手方向における幅広孔と反対側の先端との間に挟持されてもよい。
この場合、天板部に取り付けられた蓋部材に、第2係合部を第1係合部の幅広孔側に向けてスライド移動させようとする外力が不意に作用しても、前記係止凸部に第2係合部の薄肉部が引っ掛かることにより、蓋部材がこのようにスライド移動するのを防ぐことができる。したがって、残留ガスを抜き出す前に不用意に蓋部材が天板部から外れるのを防ぐことが可能になり、前述の作用効果が確実に奏功されることになる。
【0009】
また、本発明のオーバーキャップ付きエアゾール容器は、上方付勢状態で立設されたステム、およびこのステムに取り付けられた噴霧ヘッドを備えたエアゾール容器と、前記ステムおよび噴霧ヘッドを囲うようにこのエアゾール容器に装着されたエアゾール容器用オーバーキャップとを備えたオーバーキャップ付きエアゾール容器であって、前記エアゾール容器用オーバーキャップが、本発明のエアゾール容器用オーバーキャップであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエアゾール容器用オーバーキャップおよびオーバーキャップ付きエアゾール容器によれば、天板部に押圧板を連結する弱化部が、残留ガスを抜き出す前に不用意に破断するのを防ぐことができるとともに、外観に優れたオーバーキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したオーバーキャップ付きエアゾール容器を示す一部縦断面図である。
【図2】図1に示すエアゾール容器用オーバーキャップのX−X線矢視断面図である。
【図3】図1に示すエアゾール容器用オーバーキャップおよび蓋部材の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る他の実施形態として示したオーバーキャップを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。この実施形態に係るエアゾール容器用オーバーキャップ(以下、「オーバーキャップ」という)10が装着されるエアゾール容器20は、上端面に上方付勢状態でステム22が立設されたエアゾール容器本体と、ステム22が嵌合された導入口を有する噴霧ヘッド23と、を備えている。また、エアゾール容器本体は、胴部24と、この胴部24の上端に設けられた肩部25と、を備える容器本体の上端開口部にマウンティングカップ26が巻き締められ、このマウンティングカップ26の上面に前記ステム22が上方付勢状態で立設されている。
【0013】
オーバーキャップ10は、上面視円形状の天板部11と、この天板部11の外周縁からほぼ垂下してなる筒状の外筒部12と、外筒部12よりも小径とされるとともに、天板部11の裏面に垂設された嵌合筒部13と、を備え、この嵌合筒部13の下端開口部の内周面がマウンティングカップ26の外周面に嵌合することにより、エアゾール容器20に取り付けられてオーバーキャップ付きエアゾール容器が構成されている。
【0014】
また、このオーバーキャップ付きエアゾール容器において、天板部11の裏面が噴霧ヘッド23の上面と対向している。図示の例では、天板部11の裏面においてその径方向中央部が噴霧ヘッド23の上面と対向している。さらに、外筒部12の外径とエアゾール容器20の胴部24の外径とは同等となっている。
ここで、オーバーキャップ付きエアゾール容器の上面視において、天板部11、外筒部12および嵌合筒部13の各径方向中央部と、エアゾール容器20の径方向中央部とは一致しており、以下、これらの径方向中央部を結ぶ仮想直線を中心軸線Oという。
【0015】
ここで、天板部11には、前記中心軸線Oを中心とする半円形状の押圧板16がヒンジ部17回りに下方に折り曲げ可能に区画され、また、このオーバーキャップ10の内部には、図2に示されるように、一対の支持板18が、これら18の間を前記折り曲げられた押圧板16が通過可能となるように前記中心軸線Oを径方向で挟んで互いに対向して設けられている。
【0016】
すなわち、押圧板16をヒンジ部17回りに下方に折り曲げて支持板18同士の間を通過させるときに、半円形状とされた押圧板16においてその両周端部に後述の押下端部16a側で連なるヒンジ部近傍部分16bを、両支持板18の表面18bに押し付けつつ、押圧板16を、これらの支持板18の互いに対向する側面18a同士の間に押し込み、前記ヒンジ部近傍部分16bおよび支持板18の少なくとも一方を弾性変形させ、ヒンジ部近傍部分16bを、前記側面18aを乗り越えさせて裏面18c側に至らせることによって、この裏面18cに引っ掛けるようになっている。これにより、押圧板16の、前記折り曲げた方向と反対方向の移動が規制され、オーバーキャップ10をエアゾール容器20に嵌合した状態で、この押圧板16においてヒンジ部17の反対側に位置する押下端部16aが、噴霧ヘッド23の上面を押し下げるようになっている。
【0017】
なお、ヒンジ部17は、天板部11の裏面において、前記中心軸線Oと半円形状とされた押圧板16の両周端部とを通る直線に沿って延びる凹部とされている。また、前述のように折り曲げる前の押圧板16の外周縁は、この押圧板16の折り曲げにより容易に破断可能なブリッジ(弱化部)11aを介して天板部11と連結されている。
【0018】
さらに、図示の例では、嵌合筒部13の内周面に、支持板18の裏面18cと対向するように、この支持板18とほぼ同形同大の挟持板19が一体に連結されている。これにより、押圧板16を前述のように折り曲げて、前記ヒンジ部近傍部分16bを支持板18の裏面18c側に至らせたときに、このヒンジ部近傍部分16bが、支持板18の裏面18cと挟持板19との間に挟まれるようになっている。
以上より、押圧板16は、ブリッジ11aを破断してこの押圧板16の押下端部16aをこのオーバーキャップ10の内部に進入させたときに、このオーバーキャップ10をエアゾール容器20に装着した状態で、前記押下端部16aがステム22を押し下げる残留ガス抜き姿勢に保持されるようになっている。
なお、支持板18と挟持板19との間隔は、押圧板16の厚さと同等となっている。
【0019】
そして、本実施形態では、天板部11の表面に、押圧板16およびブリッジ11aを覆う蓋部材30が着脱可能に設けられている。図示の例では、蓋部材30は天板部11と同形同大の円板とされ、天板部11の表面に前記中心軸線Oと同軸上に取り付けられて、この蓋部材30により天板部11の表面がその全域にわたって覆われるようになっている。
ここで、互いに係合可能な第1、第2係合部31、32のうち、一方が天板部11の表面に設けられるとともに、他方が蓋部材30の裏面に設けられている。
【0020】
第1係合部31は、図2および図3に示されるように、天板部11の表面において押圧板16およびブリッジ11aの外方に位置する部分に形成され、幅広孔33と幅狭孔34とがそれぞれの幅方向と直交する長手方向に連結された長穴形状の係合孔となっている。図示の例では、前記幅方向は天板部11の径方向と一致し、前記長手方向は天板部11の周方向と一致している。そして、第1係合部31は、天板部11の上面視矩形状とされて周方向に沿って延びる長穴となっている。
【0021】
また、第1係合部31の内面のうち、天板部11の周方向に沿って延在し、かつ天板部11の径方向内側に位置する第1内面31aは、幅広孔33および幅狭孔34において面一とされて、幅広孔33は幅狭孔34よりも径方向外方に張り出すことによりこの幅狭孔34よりも幅が広くなっている。なお、第1係合部31は、天板部11の表面に周方向に等間隔をあけて複数(図示の例では4つ)形成されている。
【0022】
一方、第2係合部32は、蓋部材30の裏面に突設された係合凸部とされるとともに、この係合凸部は、蓋部材30の裏面に連結された薄肉部35と、この薄肉部35の突出端に連結された厚肉部36とを備えている。図示の例では、蓋部材30をその裏面側から見たときの第2係合部32の外形形状は、蓋部材30の周方向に沿って延びる矩形状とされ、かつ第1係合部31の幅広孔33の上面視形状と同形同大とされており、第2係合部32は幅広孔33に挿入可能となっている。
【0023】
また、第2係合部32において蓋部材30の径方向内方端面は面一とされて、厚肉部36は薄肉部35よりも径方向外方に張り出すことによりこの薄肉部35よりも厚さが大きくなっている。本実施形態では、厚肉部36の径方向外方端面は、薄肉部35側から第2係合部32の突出端に向かうに従い漸次、径方向内方に向けて傾斜している。さらに、薄肉部35の蓋部材30の裏面からの突出長さは、天板部11の厚さと同等となっている。
【0024】
以上より、第1係合部31の幅広孔33に第2係合部32を挿入した状態で、この第2係合部32を第1係合部31の幅狭孔34内に向けてスライド移動させ、第2係合部32において厚肉部36の薄肉部35側の端部36aを、天板部11の裏面における幅狭孔34の開口周縁部に引っ掛けることによって、第1、第2係合部31、32が互いに係合するようになっている。本実施形態では、第2係合部32を第1係合部31の幅広孔33に挿入した状態で、オーバーキャップ10において天板部11側の部分、および蓋部材30を相対的に前記中心軸線O回りに回転させることにより、第2係合部32の薄肉部35が、第1係合部31の幅狭孔34内をその前記長手方向における幅広孔33と反対側の先端34aに向けて進入するようになっている。
【0025】
さらに、本実施形態では、第1係合部31の幅狭孔34の内面のうち、前記第1内面31aと径方向で対向する第2内面34cにおいて前記長手方向の中央部に、突曲面状の係止凸部34bが突設されている。この係止凸部34bの頂部と前記第1内面31aとの間隔は、第2係合部32の薄肉部35の厚さよりも小さくなっている。
【0026】
これにより、第1係合部31の幅広孔33に第2係合部32を挿入した状態で、この第2係合部32を、幅狭孔34の前記先端34aに向けてスライド移動させたときに、第2係合部32の薄肉部35が、係止凸部34bおよび第1内面31aに摺接しつつこの係止凸部34bを通過するようになっている。そして、第2係合部32が、幅狭孔34の前記先端34aに到達したときに、薄肉部35において蓋部材30の周方向における両端面が、幅狭孔34の前記先端34aと係止部34bとで挟まれるようになっている。
【0027】
以上のように構成されたオーバーキャップ付きエアゾール容器では、図1および図2に示されるように蓋部材30を天板部11に取り付けた状態から、まず、蓋部材30を、第2係合部32が第1係合部31の幅広孔33に向けて移動するように、前記中心軸線O回りに回転させる。この際、第2係合部32の薄肉部35が係止凸部34bを乗り越え、薄肉部35は、係止凸部34bと前記第1内面31aとで挟まれて、これらの係止凸部34bおよび前記第1内面31aに摺接しながら、第1係合部31の幅広孔33に到達する。これにより、厚肉部36の前記端部36aの、天板部11の裏面における幅狭孔34の開口周縁部への引っ掛かりが解放され、蓋部材30を上方に持ち上げたときに蓋部材30が天板部11から取り外される。
【0028】
次に、押圧板16をヒンジ部17回りに下方に折り曲げ、押下端部16aにより噴霧ヘッド23の上面を押し下げて残留ガスを抜き出す。ここで、押圧板16をヒンジ部17回りに折り曲げて、前記ヒンジ部近傍部分16bを支持板18の裏面18cに引っ掛けたときに、このヒンジ部近傍部分16bは、支持板18の裏面18cと挟持板19との間に挟まれるので、押圧板16は、前記のように折り曲げた方向と反対方向の移動のみならず、この折り曲げた方向の移動をも規制されることになる。したがって、押圧板16にステム22からの押し上げ力が作用しても、この押圧板16によるステム22の押し下げを確実に維持することが可能になる。
【0029】
以上説明したように本実施形態に係るオーバーキャップ10によれば、天板部11の表面に蓋部材30が設けられているので、例えばオーバーキャップ付きエアゾール容器の流通過程や、需要者が内容物を使用するのにオーバーキャップ10をエアゾール容器20に対して繰り返し着脱する等の残留ガスを抜き出す前に、押圧板16の表面側に外力が作用しても、この外力を蓋部材30で受け止めて、この力がブリッジ11aに作用するのを防ぐことが可能になり、このブリッジ11aが不用意に破断するのを防止することができる。
さらに、ブリッジ11aが蓋部材30で覆われているので、天板部11にブリッジ11aが形成されたことによりこのオーバーキャップ10の見映えが悪くなるのを防ぐことが可能になり、外観に優れたオーバーキャップ10を提供することができる。
【0030】
しかも、この蓋部材30は、天板部11の表面に着脱可能に設けられているので、残留ガスを抜き出すときには蓋部材30を天板部11から取り外すことが可能になり、このオーバーキャップ10に優れた操作性を具備させることができる。
また、本実施形態では、天板部11の表面に第1係合部31が形成される一方、蓋部材30の裏面に第2係合部32が形成されているので、蓋部材30を天板部11の表面に着脱可能に設ける構成を容易かつ確実に実現することができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、第1係合部31の幅狭孔34の内面のうち、前記第1内面3
1aと径方向で対向する第2内面34cに、突曲面状の係止凸部34bが突設されているので、天板部11に取り付けられた蓋部材30に、第2係合部32を第1係合部31の幅広孔33側に向けてスライド移動させようとする外力が不意に作用しても、係止凸部34bに、第2係合部32の薄肉部35において蓋部材30の周方向における端面が引っ掛かることにより、蓋部材30がこのようにスライド移動するのを防ぐことができる。したがって、残留ガスを抜き出す前に不用意に蓋部材30が天板部11から外れるのを防ぐことが可能になり、前述の作用効果が確実に奏功されることになる。
【0032】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、第1係合部31を天板部11に形成し、第2係合部32を蓋部材30の裏面に形成したが、これとは逆に、第1係合部31を蓋部材30に形成し、第2係合部32を天板部11に形成してもよい。
また、前記実施形態に代えて、第1係合部31若しくは第2係合部32を押圧板16の表面に形成してもよい。さらに、前記実施形態では、第1、第2係合部31、32をそれぞれ、複数ずつ設けたが、一つずつ設けてもよい。さらにまた、前記実施形態では、第1、第2係合部31、32をそれぞれ、周方向に沿って延在させたが、例えば直線状に延在させてもよい。
【0033】
さらに、前記実施形態に代えて、図4に示すように、天板部41に、蓋部材42の外周面をその径方向外方から囲繞する囲繞筒部43を立設するとともに、この囲繞筒部43に蓋部材42を係止する係止部44を設け、このオーバーキャップ40をエアゾール容器20から外した状態で、押圧板16を、天板部41の裏面側からブリッジ11aを破断しつつ押し上げたときに、蓋部材42が押圧板16により押し上げられ係止部44から外れる構成を採用してもよい。
【0034】
図示の例では、天板部41は、外筒部12と嵌合筒部13とを連結する外周部分41aが、この外周部分41aの径方向内方に位置する中央部分41bよりも前記中心軸線O方向の下方に位置されるように2段形状となっている。そして、押圧板16およびブリッジ11aは、中央部分41bに形成されている。
また、囲繞筒部43は、外筒部12の内径および外径と同等とされ、前記外周部分41aの表面に立設されている。さらに、この囲繞筒部43の前記中心軸線O方向の上端、つまり上端開口面における前記中心軸線O方向の位置は、天板部41の中央部分41bの表面における前記中心軸線O方向の位置と同等となっている。
【0035】
また、蓋部材42は円板状体とされて、その裏面において外周縁部42aを除いた部分はその全域が厚さ方向に凹んだ凹部42bとなっている。そして、この蓋部材42を囲繞筒部43内に配置した状態で、天板部41の表面においてブリッジ11aよりも径方向外方に位置する部分に、蓋部材42の前記外周縁部42aが当接することによって、押圧板16およびブリッジ11aが、蓋部材42の凹部42bに非接触状態で覆われるようになっている。図示の例では、凹部42bの深さは、前記中央部分41bの、外周部分41aの表面からの突出高さ以上となっている。また、蓋部材42の前記外周縁部42aは、天板部41の外周部分41aの表面に当接している。さらに、蓋部材42の表面は、この蓋部材42を囲繞筒部43内に配置した状態で、この囲繞筒部43の上端開口面よりも前記中心軸線O方向の上方に位置している。
【0036】
ここで、係止部44は、図示の例では、囲繞筒部43の内周面および蓋部材42の外周面の双方に、その全周にわたって連続して突設され、蓋部材42をその裏面側から囲繞筒部43内に配置したときに、蓋部材42に形成された第1係止部44aが、囲繞筒部43に形成された第2係止部44bよりも前記中心軸線O方向の下方に位置されることによって、蓋部材42が囲繞筒部43内で係止されるようになっている。
【0037】
以上のように構成されたオーバーキャップ40では、このキャップ40をエアゾール容器20から取り外した後に、押圧板16を、天板部41の裏面側からヒンジ部17回りに上方に折り曲げてブリッジ11aを破断しつつ押し上げ、この押圧板16により蓋部材42を押し上げて、蓋部材42に形成された第1係止部44aを、囲繞筒部43に形成された第2係止部44bを乗り越えさせることによって、この蓋部材42を囲繞筒部43から外す。その後、押圧板16をヒンジ部17回りに下方に折り曲げて、前記実施形態と同様にして、押圧板16の押下端部16aにより噴霧ヘッド23の上面を押し下げて残留ガスを抜き出す。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るオーバーキャップ40によれば、蓋部材42の外周面がその径方向外方から囲繞筒部43の内周面により囲繞されるとともに、この蓋部材42が係止部44で係止されているので、残留ガスを抜き出す前に蓋部材42の外周側に外力が作用しても、この外力を囲繞筒部43で受け止めることが可能になり、この蓋部材42が天板部41に対して移動させられ天板部41から外れるのを防ぐことができる。なお、残留ガスを抜き出す前に蓋部材42の表面側に外力が作用しても、この蓋部材42は天板部41の表面に当接しているので移動しない。
【0039】
さらに、本実施形態では、蓋部材42の裏面に凹部42bが形成され、この蓋部材42を囲繞筒部43内に配置した状態で、天板部41の表面においてブリッジ11aよりも径方向外方に位置する部分に、蓋部材42の前記外周縁部42aが当接することによって、押圧板16およびブリッジ11aが、蓋部材42の凹部42bに非接触状態で覆われるようになっているので、蓋部材42に外力が作用しても、その力が押圧板16およびブリッジ11aに伝わるのを防ぐことが可能になり、残留ガスを抜き出す前にブリッジ11aが不用意に破断するのを確実に防ぐことができる。
【0040】
なお、係止部44は図示の例に限らず、例えば、囲繞筒部43にその内周面に対して径方向内方に突出するように係止突部を突設し、囲繞筒部43内に蓋部材42を配置したときに、蓋部材42が厚さ方向にこの係止部と天板部41の表面とによって挟まれるようにしてもよいし、囲繞筒部43の内周面および蓋部材42の外周面のうちいずれか一方に係止凹部を形成し、他方にこの係止凹部に嵌まる係止突部を設けてもよい。
さらに、天板部41および蓋部材42は図示の例に限らず、例えば表裏面ともに全域にわたって平坦面としてもよい。
また、囲繞筒部43は、天板部41の表面において、ブリッジ11aが形成されている位置よりも径方向外方であればいずれに設けてもよい。
さらに、前記実施形態では、押圧板16およびブリッジ11aが、蓋部材42の凹部42bに非接触状態で覆われた構成を示したが、押圧板16およびブリッジ11aが蓋部材42の凹部42bに接触状態で覆われるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、蓋部材42を囲繞筒部43内に配置した状態で、蓋部材42の表面を、囲繞筒部43の上端開口面よりも前記中心軸線O方向の上方に位置させたが、蓋部材42の表面を、囲繞筒部43の上端開口面と面一となるように位置させてもよいし、あるいは囲繞筒部43の上端開口面よりも前記中心軸線O方向の下方に位置させてもよい。
【0041】
さらに、図1から図4では、オーバーキャップ10、40の嵌合筒部13の下端開口部がエアゾール容器20の上端部に嵌合することにより、このキャップ10、40がエアゾール容器20に装着される構成を示したが、これに代えて、例えば、オーバーキャップ10、40およびエアゾール容器20にそれぞれ形成された雄ねじ部と雌ねじ部とが互いに螺合することにより、オーバーキャップ10、40がエアゾール容器20に装着される構成を採用してもよい。
さらにまた、図1から図4では、蓋部材30、42として、天板部11、41の表面をその全域にわたって覆う構成を示したが、天板部11、41の表面のうち少なくとも押圧板16およびブリッジ11aを覆うような構成であれば、前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
また、図1から図4で示した押圧板16に代えて、押圧板を、その両側部がそれぞれ接続部を介して天板部11、41に一体に連結されるとともに、その両端部が上下動するようにこの接続部回りに回動自在に設けることにより、押圧板の一端部側を押し下げて押圧板を接続部回りに回動させたときに、このオーバーキャップをエアゾール容器20に装着した状態で、押圧板は、前記一端部がステム22を押し下げ、かつ他端部側が天板部11、41の表面から上方に突出した残留ガス抜き姿勢に保持されるような構成を採用してもよい。
【0043】
この場合、エアゾール容器20内の残留ガスを抜き出すときに、押圧板は、その前記一端部がステム22を押し下げる一方、前記他端部側が天板部11、41の表面から上方に突出した残留ガス抜き姿勢に保持されるので、残留ガスを抜き出す前後で、押圧板の前記他端部側における前記突出の有無によりエアゾール容器用オーバーキャップの外観形状を大きく異ならせることが可能になる。したがって、残留ガスを抜き出した人がこの容器を放置した後、例えば、残留ガスを抜き出した人とは別の人等がこの容器を見かけたときに、その人がこの容器から離れた位置にいてもそこから見た外観で、残留ガスが既に抜き出されたかどうかを一目で判別することができる。
【0044】
さらに、この押圧板に代えて、天板部11、41に押圧板が取り外し可能に区画されるとともに、この押圧板を取り外すことにより天板部11、41に開口部が形成され、このオーバーキャップの内部には、前記開口部に、天板部11、41から取り外された押圧板をその外周縁における一端部側から差し込んだときに、押圧板の外周縁における両側部にそれぞれ形成された第1押圧板係合部に各別に係合する一対の第2押圧板係合部が設けられ、これらの第1、第2押圧板係合部を互いに係合させることにより、このオーバーキャップをエアゾール容器20に装着した状態で、押圧板は、前記一端部がステム22を押し下げ、かつ他端部側が天板部11、41の表面から上方に突出した姿勢に保持される押圧板を採用してもよい。
【0045】
また、図1から図4で示した蓋部材30、42に代えて、例えば天板部11、41の表面に、剥離可能な接着剤を介して蓋部材の裏面を接着してもよいし、あるいは天板部11、41にヒンジ部を介して一体に連結された蓋部材を採用してもよく、さらにまた、蓋部材をキャップ状に形成して、その内周面に雌ねじを形成する一方、外筒部12の外周面に雄ねじ部を形成して、これらの両ねじ部が着脱可能に螺合してなる構成を採用してもよい。
また、蓋部材30、42は、天板部11、41の表面にその全域を覆うように設けなくてもよい。
【0046】
ここで、図1から図4では、オーバーキャップ10、40の内部に支持板18と挟持板19とを設けることにより、押圧板16の、少なくとも前記折り曲げた方向と反対方向の移動を規制したが、これに代えて、例えば、支持板18および挟持板19を設けずに、噴霧ヘッド23の上面に押圧板16の押下端部16aが係止可能な係止部を形成してもよい。
さらに、押圧板16と天板部11、41とを連結する弱化部としてブリッジ11aを示したが、これに代えて、押圧板16を、この押圧板16や天板部11、41よりも厚さが薄い薄肉部で囲繞することによって、天板部11、41に押圧板16を区画するようにしてもよい。
【0047】
さらにまた、図1から図4では、押圧板16を平面視半円形状としたが、これに限らず、例えば矩形や多角形等としてもよい。
さらに、図1から図4では、押圧板16の押下端部16aで噴霧ヘッド23の上面を押し下げたが、これに代えて、例えば噴霧ヘッド23をステム22から取り外して、このステム22の開口端面を押圧板16の押下端部16aで押圧して押し下げてもよい。
また、残留ガスを抜き出す際に、押圧板16をオーバーキャップ10、40の内部に進入させた後に、このオーバーキャップ10、40をエアゾール容器20に装着してもよいし、あるいはオーバーキャップ10、40をエアゾール容器20に装着した状態で、押圧板16をオーバーキャップ10、40の内部に進入させてもよい。
さらに、エアゾール容器20およびオーバーキャップ10、40の横断面形状は図示した円形に限らず、例えば多角形等であってもよい。
さらにまた、オーバーキャップ10、40は、蓋部材30、42を含めた全体を合成樹脂で形成してもよいし、あるいはオーバーキャップ10、40において、蓋部材30、42を除いた部分は合成樹脂により形成する一方、蓋部材30、42は例えば金属材料で形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
天板部に押圧板を連結する弱化部が、残留ガスを抜き出す前に不用意に破断するのを防ぐことができるとともに、外観に優れたオーバーキャップを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
10、40 エアゾール容器用オーバーキャップ
11、41 天板部
11a ブリッジ(弱化部)
16 押圧板
16a 押下端部
20 エアゾール容器
22 ステム
23 噴霧ヘッド
30、42 蓋部材
31 第1係合部
32 第2係合部
33 幅広孔
34 幅狭孔
34a 先端
34b 係止凸部
35 薄肉部
36 厚肉部
36a 端部
43 囲繞筒部
44 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で立設されたステムと、このステムに取り付けられた噴霧ヘッドと、を備えたエアゾール容器に着脱可能に装着されるエアゾール容器用オーバーキャップであって、
エアゾール容器に装着した状態で前記噴霧ヘッドの上面に対向する天板部が備えられ、この天板部に押圧板が区画されるとともに、この押圧板の外周縁は破断可能な弱化部を介して前記天板部に連結され、
前記押圧板は、前記弱化部を破断して押圧板の押下端部をこのオーバーキャップの内部に進入させたときに、このオーバーキャップをエアゾール容器に装着した状態で、前記押下端部がステムを押し下げる残留ガス抜き姿勢に保持される構成とされ、
前記天板部の表面に、前記押圧板および弱化部を覆う蓋部材が取り外し可能に設けられ、
前記天板部に、前記蓋部材の外周面をその径方向外方から囲繞する囲繞筒部が立設されるとともに、この囲繞筒部に前記蓋部材を係止する係止部が設けられ、
このオーバーキャップをエアゾール容器から外した状態で、前記押圧板を、前記天板部の裏面側から前記弱化部を破断しつつ押し上げたときに、前記蓋部材がこの押圧板により押し上げられ前記係止部から外れる構成とされたことを特徴とするエアゾール容器用オーバーキャップ。
【請求項2】
上方付勢状態で立設されたステム、およびこのステムに取り付けられた噴霧ヘッドを備えたエアゾール容器と、前記ステムおよび噴霧ヘッドを囲うようにこのエアゾール容器に装着されたエアゾール容器用オーバーキャップとを備えたオーバーキャップ付きエアゾール容器であって、
前記エアゾール容器用オーバーキャップが、請求項1記載のエアゾール容器用オーバーキャップであることを特徴とするオーバーキャップ付きエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30898(P2012−30898A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249090(P2011−249090)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−349239(P2006−349239)の分割
【原出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】