説明

エアゾール容器用噴射装置

【課題】残留ガス排出機構を備える噴射装置をエアゾール製品に取り付ける際に、意図的に残留ガス排出状態にしない場合には、確実に通常の噴射状態に組み付けることのできる噴射装置を提供すること。
【解決手段】エアゾール容器のステムに装着される噴射ボタンと、エアゾール容器に嵌着される噴射ボタンの頭部を露出させる中央孔部を有する肩カバーとからなる噴射装置であって、噴射ボタンには外周面に少なくとも1つが他の突起と幅が異なる複数の突起を有し、肩カバーの中央孔部を形成する環状周壁の下端部には切欠き深さの異なる深切欠部と浅切欠部とが交互に構成されるとともに、各切欠部の上端の幅は対応する異なる突起幅の突起が嵌入されるように構成され、肩カバーの浅切欠部に噴射ボタンの対応する突起幅の突起を嵌入させた状態で肩カバーをエアゾール容器に嵌着させると、容器内の残留ガスが連続噴出されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付ける噴射装置に関し、詳しくは、エアゾール製品に残留したガスを誤操作なく簡便に排出できる、残留ガスの排出機構を備えたエアゾール容器用噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品には、内容物である中味原液を噴射する為に、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテルなどの可燃性ガスが多用されている。そのため、内容物を使用後に可燃性ガスが残留した状態で廃棄すると、容器の爆発等により清掃作業者等が怪我をするなどの問題がある。
【0003】
そこで、近年では、エアゾール製品には、一般に残留ガスの排出機構を備えるようになってきている。しかし、従来の残留ガスの排出機構(例えば、特許文献1参照)では、通常の噴射状態から一段階で排出状態となるため、使用者が廃棄する意図が無いにも拘わらず、誤ってガス排出状態(連続噴射状態)になってしまうという問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、本出願人は、エアゾール製品から噴射ボタンと肩カバーとからなる噴射装置を一旦取り外し、噴射ボタンをガス排出状態にセットし直す、二段階操作による残留ガスを排出する機構を創出している(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の残留ガス排出機構により、エアゾール製品の使用時に、誤操作によりガス排出状態(連続噴射状態)となる問題点は解決することができるものの、使用者が廃棄する意図が無いにも拘わらず興味本位で取り外し、エアゾール容器に噴射装置を再度取り付ける際に誤って噴射ボタンをガス排出状態にしてしまうという問題がある。また、エアゾール製品の製造時に噴射ボタンを誤ってガス排出状態にして噴射装置を組み付けてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−120968号公報
【特許文献2】特許第3698309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みて成されたものであって、残留ガス排出機構を備える噴射装置をエアゾール製品に取り付ける際に、意図的に残留ガス排出状態にしない場合には、確実に通常の噴射状態に組み付けることのできる噴射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕エアゾール容器のステムに装着される噴射ボタンと、エアゾール容器の上部に嵌着される噴射ボタンの少なくとも頭部を露出させる中央孔部を有する肩カバーとからなる噴射装置であって、
前記噴射ボタンには外周面に複数の突起を有し、該突起の少なくとも1つの突起が他の突起と水平方向の突起幅が異なり、
前記肩カバーの中央孔部を形成する環状周壁の下端部には複数の切欠部が形成され、該切欠部は上方に向けての切欠き深さの異なる深切欠部と浅切欠部とが交互に構成されるとともに、各切欠部の上端の幅は対応する水平方向の異なる突起幅の突起が嵌入されるように構成され、
肩カバーの深切欠部に噴射ボタンの対応する突起幅の突起を嵌入させた状態で肩カバーをエアゾール容器の上端部に嵌着させると、噴射ボタンを押下した場合にだけ噴射され、
肩カバーの浅切欠部に噴射ボタンの対応する突起幅の突起を嵌入させた状態で肩カバーをエアゾール容器の上端部に嵌着させると、噴射ボタンがステムを押下げてエアゾール容器内の残留ガスが連続噴出されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用噴射装置、
〔2〕前記肩カバーの中央孔部を形成する環状周壁の下端部に形成された深切欠部の開口部の幅が該切欠部の上端の幅より幅広に形成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載のエアゾール容器用噴射装置、並びに
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載のエアゾール容器用噴射装置を備えたことを特徴とするエアゾール製品
に関する。
【発明の効果】
【0009】
前記〔1〕に係る発明は、噴射ボタンの外周面に形成された複数の突起のうち、少なくとも1つの突起が他の突起と水平方向の突起幅が異なることから、肩カバーに形成された複数の切欠部のうち、各突起が嵌入する切欠部は各突起幅に対応した所定の切欠部とされるので、噴射装置をエアゾール製品に取り付ける際に、意図的に残留ガス排出状態にしない場合には、確実に通常の噴射状態に組み付けることができ、誤って残留ガス排出状態に組み付けてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、前記〔2〕に係る発明は、肩カバーの深切欠部の開口部の幅を、該切欠部の上端の幅より幅広に形成することにより、噴射ボタンの各突起を肩カバーの対応する所定の切欠部に嵌入する際、残留ガス排出を意図しない場合には、噴射ボタンの各突起が対応する深切欠部に嵌入し易くなるので、噴射装置をエアゾール製品に取り付ける際に、意図的に残留ガス排出状態にしない場合には、より確実に通常の噴射状態に組み付けることができる。
【0011】
そして、前記〔3〕に係る発明は、エアゾール製品の使用途中で意図しない残留ガス排出状態とする誤使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を示す正面図である。
【図2】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を示す平面図である。
【図3】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を示す背面図である。
【図4】噴射ボタンの平面図である。
【図5】噴射ボタンの正面図である。
【図6】肩カバーの正面図である。
【図7】肩カバーの背面図である。
【図8】肩カバーの底面図である。
【図9】図6のA−A線断面図である。
【図10】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の正常噴射状態における底面図である。
【図11】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の残留ガス排出状態における底面図である。
【図12】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を正常噴射状態でエアゾール容器に装着したときの断面図である。
【図13】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を残留ガス排出状態でエアゾール容器に装着したときの断面図である。
【図14】本発明に係る他の実施形態による肩カバーの断面図である。
【図15】本発明に係る他の実施形態による肩カバーを用いたエアゾール容器用噴射装置を正常噴射状態でエアゾー1ル容器に装着したときの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置について、図面を参照しつつ実施形態を説明する。
【0014】
本発明のエアゾール容器用噴射装置は、肩カバー(1)と噴射ボタン(3)とから構成される。図1は、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の一実施形態を示す正面図、図2はその平面図、図3はその背面図である。
以下、これらの構成について、説明する。
【0015】
図4は噴射ボタンの平面図、図5はその正面図である。噴射ボタン(3)は、一般に上面が塞がれ下面が開放された円柱状の形状とされている。その前面には、エアゾール容器の内容物を噴射するための噴射口(31)が設けられている。
【0016】
その内部には、ステム(S)に嵌着する内筒部(32)が噴射ボタン(3)の中央部上下方向に形成されている。この内筒部(32)の内部空間は、噴射口(31)と連通している。
【0017】
噴射ボタン(3)の外周面には、周方向に複数の突起(4)が設けられている。図示例では、直方体状の3個の突起が噴射口(31)より下側で等間隔(120°間隔)に形成されているが、後述する肩カバー(1)の切欠部(2)の数と形成位置に合うように対応していれば、特に、個数、間隔が限定されるものではない。
尚、本発明における噴射ボタン(3)に設けられた複数の突起(4)は、少なくとも1つの突起が他の突起と水平方向の突起幅が異なっている。すなわち、複数の突起(4)のうち、1つの突起幅のみが異なっていても良いし、全ての突起(4)の突起幅が異なっていても良い。図示例では、3個の突起(41,42,43)が設けられおり、そのうち、突起(41)のみが他の突起より水平方向に幅広に形成されている。
【0018】
また、噴射ボタン(3)の外周面下端部には、上方に向けた噴射ボタン切欠部(33)(図示せず)を設けることもできる。この切欠部(33)に、後述する肩カバー(1)の突出部(3)がストッパーとなり、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置をエアゾール容器(C)から取り外した際に、噴射ボタン(3)の肩カバー(1)からの脱落を防止することができる。
【0019】
図6は肩カバーの正面図、図7はその背面図、図8はその底面図であり、図9は図6のA−A線断面図である。
【0020】
肩カバー(1)は、前記噴射ボタン(3)が挿通され上下動自在なように、中央孔部(12)を備えた略円筒形状となっている。図示例では、前方に噴射用開口部(11)を有し、該開口部に相対して後方凹部(14)が形成されている。
エアゾール容器の通常使用時には、噴射用開口部(11)は噴射ボタン(3)からの容器内容物のとおり道となっている。後方凹部(14)は、噴射ボタン(3)を押さえる際の指の入口となる。
【0021】
また、中央孔部(12)を形成する環状周壁(15)と外周壁(16)との間には、中間環状周壁(17)が形成されている。この中間環状周壁(17)の下端部にはエアゾール容器のマウンテンカップに対して嵌着可能な嵌着部(18)が設けられている。
【0022】
環状周壁(15)の下端部には、複数の切欠部(2)が形成されている。この切欠部(2)は、複数の切欠け深さの深い深切欠部(21)と複数の切欠け深さの浅い浅切欠部(22)とがそれぞれ交互に形成されている。
そして、この深切欠部(21)及び浅切欠部(22)の上端部(21b,22b)の幅は、それぞれのうちの少なくとも1つが、他の切欠部上端部の幅と異なっており、対応する噴射ボタン(3)の突起(4)の突起幅より僅かに幅広になるように形成されている。
これにより、噴射ボタン(3)に設けられた複数の突起(4)のうち、幅広突起(41)が嵌入する深切欠部(21)又は浅切欠部(22)は1ヶ所のみとなり、各突起(4)が嵌入する切欠部(2)は各突起幅に対応する所定の切欠部となる。その結果、本発明のエアゾール容器用噴射装置をエアゾール容器に再装着する際に、噴射ボタン(3)の噴射口(31)を肩カバー(1)の噴射開口部(11)或いは後方凹部(14)に確実に合わせて装着することができる。
【0023】
また、深切欠部(21)の開口部(21a)の幅は、上端部(21b)の幅より幅広に形成されていることが好ましい。これにより、浅切欠部(22)の開口部(22a)は対応する深切欠部開口部(21a)より幅が狭く形成されることから、肩カバー(1)に噴射ボタン(3)を装着する際に正常噴射状態に容易にセットすることができ、意図しない残留ガス排出状態にしてしまうことを防止することができる。
図示例では、深切欠部(21)は、その開口部(21a)から上端部(21b)に向かって徐々に幅狭になるように形成されている。
【0024】
肩カバー(1)の環状周壁(15)の下端部には、中央孔部(12)内方側に突出部(13)を設けることができる。図示例では、2つの突出部(13)が、中央孔部を挟んで相対して設けられている。
この突出部(13)は、噴射ボタン(3)が中央孔部(12)に挿通した際、僅かに噴射ボタン(3)の外周壁内に達する長さを有し、この突出部(13)の数と形成位置は、前記噴射ボタン切欠部(33)が当接できるように、その数、形成位置を合わせて設定すれば良い。
【0025】
次に、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を、正常噴射状態又は残留ガス排出状態に組付ける方法を説明する。図10は本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の正常噴射状態における底面図、図12は正常噴射状態でエアゾール容器に装着したときの断面図である。図11は本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の残留ガス排出状態における底面図、図13はエアゾール容器用噴射装置を残留ガス排出状態でエアゾール容器に装着したときの断面図である。
【0026】
図12に示すように、正常噴射状態で組付けられているエアゾール容器用噴射装置をエアゾール容器から取り外し、肩カバー(1)と噴射ボタン(3)とを分離する。正常噴射状態に組付けたい場合は、幅広の突起(41)を幅広の深切欠部(211)に嵌入する。この際、深切欠部(21)の開口部(21a)が最も幅広に形成されていることから、幅広突起(41)を容易に幅広深切欠部(211)に嵌入することができる。
また、幅広深切欠部(211)に幅広突起(41)が嵌入した場合のみ、肩カバー(1)の噴射用開口部(11)から噴射ボタン(3)の噴射口(31)が視認できることから、意図しない残留ガス排出状態となる浅切欠部(22)への嵌入を防止することができる。
【0027】
残留ガス排出状態に組付けたい場合は、幅広の突起(41)を幅広の浅切欠部(221)に嵌入する。この際、浅切欠部(22)の開口部(22a)は幅広に形成されていないことから、幅広突起(41)を所定の幅広浅切欠部(221)に意図して嵌入する。
このため、意図して残留ガス排出状態にする場合のみに、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置を残留ガス排出状態に組付けることができ、使用者が興味本位でエアゾール容器用噴射装置を分解したとしても、意図しない残留ガス排出状態となることを防止することができる。
【0028】
かくして、噴射ボタン(3)を肩カバー(1)の下側から中央孔部(12)に挿通し、幅広突起(41)を幅広深切欠部(211)に嵌入した状態で、エアゾール容器(C)に嵌着すると、噴射ボタン(3)を押した場合のみ、容器の内容物が噴射する、正常噴射状態に組付けることができる。
これに対し、幅広突起(41)を幅広浅切欠部(221)に嵌入した状態で、エアゾール容器(C)に嵌着すると、噴射ボタンの各突起(4)は、突起幅の対応する所定の各浅切欠部の上端(22a)に常時当接する状態となることにより、噴射ボタン(3)は上昇不能に拘束される。その結果、噴射ボタン(3)は、上下動ならびに周方向への回動が拘束され、容器内の残留ガスが消失するまで、連続噴射する残留ガス排出状態となる。
これにより、エアゾール容器(C)の廃棄に際し、噴射ボタン(3)を押下げる動作をすることなく、容器内の残留ガスを完全に排出することができる。
【0029】
尚、上記図示例は、噴射用開口部を有する肩カバー、すなわち、キャップを必要としない肩カバーについて説明したが、本発明のエアゾール容器用噴射装置は、かかる態様に限定されるものではない。
図14は本発明に係る他の実施形態による肩カバーの断面図、図15は本発明に係る他の実施形態による肩カバーを用いたエアゾール容器用噴射装置を正常噴射状態でエアゾール容器に装着したときの部分断面図である。
このような肩カバーを用いると、噴射ボタンの略全体が露出することから、噴射ボタンの保護のために肩カバーにキャップ(図示せず)を装着するのが好ましい。肩カバーへのキャップの装着方法は特に限定されず、使用者が簡便確実に着脱可能であり、かつ不用意に外れたりすることのない程度にキャップおよび肩カバーに係合突起を形成するなどにより行えば良い。
【符号の説明】
【0030】
1 肩カバー
11 噴射用開口部
12 中央孔部
13 突出部
14 後方凹部
2 切欠部
21 深切欠部
21a 深切欠部開口部
21b 深切欠部上端部
211 幅広深切欠部
22 浅切欠部
22a 浅切欠部開口部
22b 浅切欠部上端部
221 幅広浅切欠部
3 噴射ボタン
31 噴射口
4 突起
41 幅広突起
C エアゾール容器
M マウンテンカップ
S ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムに装着される噴射ボタンと、エアゾール容器の上部に嵌着される噴射ボタンの少なくとも頭部を露出させる中央孔部を有する肩カバーとからなる噴射装置であって、
前記噴射ボタンには外周面に複数の突起を有し、該突起の少なくとも1つの突起が他の突起と水平方向の突起幅が異なり、
前記肩カバーの中央孔部を形成する環状周壁の下端部には複数の切欠部が形成され、該切欠部は上方に向けての切欠き深さの異なる深切欠部と浅切欠部とが交互に構成されるとともに、各切欠部の上端の幅は対応する水平方向の異なる突起幅の突起が嵌入されるように構成され、
肩カバーの深切欠部に噴射ボタンの対応する突起幅の突起を嵌入させた状態で肩カバーをエアゾール容器の上端部に嵌着させると、噴射ボタンを押下した場合にだけ噴射され、
肩カバーの浅切欠部に噴射ボタンの対応する突起幅の突起を嵌入させた状態で肩カバーをエアゾール容器の上端部に嵌着させると、噴射ボタンがステムを押下げてエアゾール容器内の残留ガスが連続噴出されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用噴射装置。
【請求項2】
前記肩カバーの中央孔部を形成する環状周壁の下端部に形成された深切欠部の開口部の幅が該切欠部の上端の幅より幅広に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアゾール容器用噴射装置を備えたことを特徴とするエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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