説明

エアゾール缶への液体充填装置

【課題】圧縮ガスが充填済みのエアゾール缶に対して、硬化剤等の液体を充填することができる装置を、低コストかつ軽量に提供すること。
【解決手段】液体充填装置1は、液体を収容するための容器5を取り外し可能に保持するための容器保持部2と、エアゾール缶6の側面に沿った形状を有し、エアゾール缶6の軸芯6bがぶれないようにエアゾール缶6を取り外し可能に載置し、エアゾール缶6の噴射用ステム6aの先端と容器5の液体抽出先端5cとを当接させることができる位置に容器保持部2を設置する外枠ホルダー3と、外枠ホルダー3の端部に取り付けられ、容器5に収容されている液体を押し出すためのピストン棒4aを有し、ピストン棒4aに対して押進力を与えるための作動機構部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール缶の充填装置に関し、より特定的には、圧縮ガスが充填されているエアゾール缶へ液体を充填するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、1液型塗料は、アクリルシリコーン系、ポリウレタン系、あるいはエポキシ系等の2液型塗料に比べ、塗膜強度が弱かったり、乾燥までに時間がかかったりする場合が多い。そのため、2液型塗料を使用したいというニーズは、大きい。また、エアゾール缶のように、簡易に塗装したいというニーズも存在する。しかし、2液型塗料の場合、使用直前に硬化剤を混合する必要があるので、エアゾール缶の工場製造時点で、硬化剤を予め充填しておくことは好ましくない。したがって、2液型塗料を用いたエアゾール缶を提供するためには、硬化剤を使用直前に混合するための器具が必要となる。
【0003】
そのような中、特許文献1には、塗料が充填されているエアゾール缶に対して、当該エアゾール缶よりも高い内圧を有する硬化剤が充填された他のエアゾール缶をノズルで連結して、硬化剤を当該エアゾール缶に充填するためのセットが開示されている。
【特許文献1】特開2001−206466号公報
【特許文献2】特公昭49−40676号公報
【特許文献3】登録実用新案第3041821号公報
【特許文献4】特開2000−79975号公報
【特許文献5】特表2002−516796号公報
【特許文献6】特開2004−50015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のセットの場合、硬化剤が充填されているエアゾール缶を別途製造しなければならず、大量生産しなければならず、コストアップにつながる。そのため、硬化剤の充填を低価格に行うことができる器具が要求される。さらに、硬化剤は、塗装直前に充填することが望ましいので、硬化剤を充填するための器具には、コンパクトさや、軽量さが要求される。また、充填済みのエアゾール缶に対して、硬化剤以外に、配色のための他の塗料など、他の液体を充填したいという要求も存在する。
【0005】
特許文献2の図1に記載の装置は、トルグ機構(64)にエアゾール缶を取り付けて上昇させ、流体圧シリンダピストン組立体を含む作動機構(46)によって、ピストンを押し下げて、スプレー材料を充填する装置である(括弧内の符号は特許文献内の符号を示す。以下同様)。特許文献2に記載の装置は、非常に大がかりであり、簡易に硬化剤を充填する装置に転用することはできない。
【0006】
特許文献3の図1に記載の装置は、特許文献2に記載の装置と異なり、エアゾール缶を上昇させるための機構を有していない。しかし、粘性液体を収容するための収容部(1a)を保持するためのライナ(1)や、ライナ(1)を収容するための円筒部材(3)、円筒部材(3)を差し込むためのベース板(6)、ベース板(6)を固定するためのベース側板(7)などが必要である。このように、特許文献3に記載の装置は、特殊部品点数が多く、低コストには提供されない。また、装置自体も大きく、軽量・コンパクトという要求を満たさない。また、そもそも、特許文献3の図2(b)及び段落0011に示されているように、特許文献3の装置によって粘性液体を充填することができるエアゾール缶は、作動ピン(47)によって弁(44)を押し下げるタイプのものに限られる。一般的には、エアゾール缶のステムを押し下げることによって、弁が開くタイプのエアゾール缶が多いので、特許文献3に記載の装置は、汎用性に乏しい。
【0007】
特許文献4の図2には、配色用の塗料を充填するための装置が開示されている。特許文献4の装置では、特許文献4の段落0023や段落0029、段落0031に記載されているように、エアゾール缶のステム(2)を最初に開放状態にして、逆止弁を有する連結具(C)をステム(2)とノズル(N)とに連結しなければならない。しかし、このように、エアゾール缶のステム(2)を事前に開放状態にする作業は、内容物の飛散の危険性がある。また、特許文献4に記載の装置では、逆止弁を有する連結具(C)を特別に製造しなければならないなど、コストアップにつながる要素が含まれている。また、充填する液体として硬化剤を用いた場合、エアゾール缶から噴出される塗料と硬化剤とが混合することによって、逆止弁付近が固まってしまう可能性がある。連結具(C)を使い捨てればよいが、塗装現場において、このような小さな連結具(C)を取り扱うのは非常に煩わしい。
【0008】
特許文献5の図1に記載の装置は、特殊なスプレー缶(12)にスプレー剤及びガスを充填するための装置であり、本発明とは目的を異にする。
【0009】
上記のような従来技術に対し、本発明者は、特許文献6に示すように、エアゾール缶(17)の噴射ノズル(16)を、注入棒(2)に加えられる押圧力によって、液溜めシリンダ(7)に取り付けられた注入口(13)がステム(16)を押し下げながら、液体を注入する装置を発明した。しかし、特許文献6に記載の装置は、特殊部品点数も多く複雑であり、主には金属で作られているので、コストや軽量さの面では、やはり課題を有する。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、圧縮ガスが充填済みのエアゾール缶に対して、硬化剤や配色用の塗料、沈降防止剤、分散剤、界面活性剤、香水、洗浄剤、アルコール系洗剤など液体を充填することができる装置を、低コストかつ軽量に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、圧縮ガスが充填されているエアゾール缶へ液体を充填するための装置であって、液体を収容するための容器を取り外し可能に保持するための容器保持部と、エアゾール缶の側面に沿った形状を有し、エアゾール缶の軸芯がぶれないようにエアゾール缶を取り外し可能に載置し、エアゾール缶の噴射用ステムの先端と容器の液体抽出先端とを当接させることができる位置に容器保持部を設置する外枠ホルダーと、外枠ホルダーの端部に取り付けられ、容器に収容されている液体を押し出すためのピストン棒を有し、当該ピストン棒に対して押進力を与えるための作動機構部とを備える。
【0012】
好ましくは、容器保持部は、ピストン棒からの押進力によって、容器を軸芯に沿って左右動可能に保持するとよい。
【0013】
好ましくは、作動機構部は、容器に収容されている液体の抽出が略完了する位置までピストン棒を押進した後、エアゾール缶のバルブが少なくとも閉じる長さ分、ピストン棒を後進させるとよい。
【0014】
好ましくは、作動機構部は、レバーを握る毎にピストン棒が押進するトリガータイプの押し出し機構を備えるとよい。
【0015】
好ましくは、作動機構部は、ピストン棒を貫通しており、回動可能なレバーを有する把持体と、ピストン棒を挿通させる第1の弾性部材と、第1の弾性部材の後方に配置され、ピストン棒を挿通させると共に、レバーの一端及び把持体の第1の止め部に係止され、第1の弾性部材によって常時後方に向かって押圧されている係止部材と、ピストン棒の後部で挿通された第2の弾性部材と、ピストン棒を挿通させながら、把持体の第2の止め部に一端を係止され、第2の弾性部材の後方に傾斜させて配置される後退規制部材とを備えるとよい。
【0016】
好ましくは、ピストン棒は、液体の抽出が略完了する位置まで押進されたときに後退規制部材に当接する後退部材を有するとよい。
【0017】
好ましくは、容器は、ピストン棒によって押進され得る蓋部材を有するとよい。
【0018】
好ましくは、外枠ホルダーは、略半管状であるとよい。
【0019】
好ましくは、外枠ホルダーは、エアゾール缶を出し入れ可能にパイプの一部がくり抜かれたような形状を有するとよい。
【0020】
好ましくは、容器保持部は、外枠ホルダーの内径と略同一の外径を有する円柱状であるとよい。
【0021】
好ましくは、容器保持部は、容器の外径と略同一の内径を有する孔部を含み、容器は、噴射用ステムが押し下がり切る以上に孔部に挿入されることを規制するための凸部を有するとよい。
【0022】
好ましくは、容器保持部は、挿入された容器が押進する際に、反発力を加える弾性部をさらに含むとよい。
【0023】
好ましくは、弾性部は、容器保持部内をスライド可能で、容器の押進に応じて押進し得るガイド枠体と、容器保持部内でガイド枠体に対して、反発力を加えるスプリングとを有するとよい。
【0024】
好ましくは、液体は、硬化剤であるとよい。
【0025】
また、本発明は、上記液体充填装置の容器保持部に脱着可能な容器であって、液体を溜めておく貯留部と、貯留部に溜められている液体を抽出するための液体抽出路と、エアゾール缶の噴射用ステムの先端に当接される液体抽出先端部とを備える。
【0026】
また、本発明は、エアゾール缶を製造するための製造方法であって、上記液体充填装置に対して、液体が収容された容器を容器保持部に取り付ける工程と、上記液体充填装置に対して、エアゾール缶を外枠ホルダーに取り付ける工程と、作動機構部を作動させて、ピストン棒を押進させ、容器に収容されている液体を充填する工程とを備える。
【0027】
また、本発明は、上記製造方法を用いて製造されたエアゾール缶を用いて、物品を塗装する方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、エアゾール缶の側面に沿った形状を有する外枠ホルダーを用いているので、低コストに液体充填装置を提供することができる。また、容器保持部によって、容器が左右動可能に保持されているので、噴射用ステムを押し下げるタイプであっても、噴射用ステムを押し下げないタイプであっても、いずれのタイプのエアゾール缶に対しても、液体を充填することができ、汎用性に富む。また、液体の抽出が略完了すれば、ピストン棒が後進して戻るので、エアゾール缶のバルブを閉じることができ、内容物の飛散を防止することができる。
【0029】
作動機構部としてトリガータイプの押し出し機構を採用すれば、簡単に液体を充填することができる。場合によっては、シーリングガンを流用することができるので、非常に安価に液体充填装置を提供することが可能となる。レバー、把持体、第1の弾性部材、係止部材、第2の弾性部材、及び後退規制部材を備える作動機構部を用いれば、内容物の飛散を防止しながら、液体を確実に充填することができる。具体的な実施形態では、後退部材を設けて、液体の充填が略完了すると、ピストン棒が後進して戻るようにして、内容物の飛散が確実に防止される。容器に蓋部材を設ければ、ピストン棒のぶれによる液体の漏れを防止することができる。
【0030】
外枠ホルダーを略半管状やパイプの一部がくり抜かれた形状にすれば、エアゾール缶をしっかり保持することができ、充填時のずれ等を確実に防止できる。液体を収容する容器は、使い捨てにしてもよいし、再利用してもよい。当該容器自体は、非常に安価に提供可能である。
【0031】
円柱状の容器保持部を用いれば、容器保持部の設置が容易となり、ピストン棒に押圧される際に、容器がぶれることを防止することができ、結果、エアゾール缶からの噴射漏れを防止することができる。容器保持部に容器が挿入される孔部を設ければ、容器のぶれは、ほとんど生じない。噴射用ステムが押し下がり切る以上に孔部に挿入されることを規制するための凸部が容器に設けられていれば、容器が過剰に押進されたとしても、容器が噴射用ステムを押し続けることを防止することができ、結果、エアゾール缶からの噴射漏れやエアゾール缶の破損を防止することができる。容器に反発力を加える弾性部を容器保持部内に設けることによって、容器が噴射用ステムに過剰な押進力を加えることを防止することができる。さらに、充填が終わった場合、容器が押し戻されて、エアゾール缶のバルブが閉じることとなり、噴射漏れを防止できる。また、外枠ホルダーへの設置時に、不用意に、噴射用ステムを押し下げてしまうことを防止することができる。容器保持部内のガイド枠体に反発力を加えるスプリングを設けることによって、容器へ反発力を加える構成が実現される。
【0032】
本発明の製造方法を用いれば、塗装直前や塗装現場への出発前に、非常に簡単に、硬化剤入りのエアゾール缶を製造することができる。本発明の製造方法によって得られた硬化剤入りのエアゾール缶を用いて塗装を行えば、塗膜が強化され、乾燥時間を短縮することができる。
【0033】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液体充填装置1の構成を示す図である。液体充填装置1は、容器保持部2と、外枠ホルダー3と、作動機構部4とを備える。図2は、容器保持部2を他の角度から見たときの図である。
【0035】
容器5は、硬化剤や配色用の塗料、沈降防止剤、分散剤、界面活性剤、香水、洗浄剤、アルコール系洗剤など液体(粘性液体を含む。以下同様)を収容するための容器である。後述の図8(a)に示すように、容器5は、貯留部5aと、液体抽出路5bと、液体抽出先端部5cとを含む。貯留部5aは、円筒状の胴部に設けられており、液体を溜める。液体抽出路5bは、貯留部5aに溜められている液体を抽出するための通路であり、円錐台状の先端胴部内に設けられている。液体抽出先端5cは、エアゾール缶6の噴射用ステム6aの先端に密着して当接する大きさを有する円柱管状の凹部を有する。液体抽出路5の太さは、当該凹部の太さよりも細い。エアゾール缶6には、圧縮ガスが充填されている。一例として、エアゾール缶6の容量を330mlとした場合、塗料が半分となり、圧縮ガスが半分となる。このような場合、液体として硬化剤を用いるならば、硬化剤は、約7ml程度を用いることとなる。硬化剤の分量に合わせて、容器5の容量を決めればよい。
【0036】
図1及び図2に示すように、容器保持部2は、嵌着部材2aと、付設台2bとを含む。嵌着部材2aは、付設台2bの上に取り付けられている。嵌着部材2aの断面の弧の中心角は、180度よりも大きい。嵌着部材2aの断面の内径は、容器5の外径と略同一か、少し大きい。したがって、嵌着部材2aは、容器5を左右動可能に保持することができる。付設台2bは、外枠ホルダー3に取り付けられている。外枠ホルダー3は、エアゾール缶6の軸芯(噴射用ステム6aを通る軸)6b上に、容器5の軸芯が配置され、かつ、噴射用ステム6aと液体抽出先端部5cとが当接する位置に、容器保持部2の付設台2bを設置している。
【0037】
外枠ホルダー3は、断面形状が連続的な弧状である。図1及び図2に示す例では、外枠ホルダー3は、略半管状の部材からなる。外枠ホルダー3は、エアゾール缶規制部材3aと、左面部3bと、右面部3cとを含む。エアゾール缶規制部材3aは、エアゾール缶6の軸芯6bがぶれないようにするために、エアゾール缶6の外径に沿った形状を有する。左面部3bは、完全な面状である必要はなく、少なくともエアゾール缶6が図1上の左方向に移動しないように、エアゾール缶6の底面を押さえる部材である。右面部3cは、作動機構部4を取り付けるための部材である。右面部3cは、ピストン棒4aを貫通させるように、少なくとも軸芯6b上に図面上見えない貫通孔を有する。このように、外枠ホルダー3は、エアゾール缶6の軸芯6bがぶれないように、エアゾール缶6を取り外し可能に載置する。液体充填装置1を横倒した状態で、エアゾール缶6を横倒しにして載置してもよいし、液体充填装置1を立てた状態(左面部3bを下にした状態)で、エアゾール缶6を立てて載置してもよい。
【0038】
作動機構部4は、外枠ホルダー3の右面部3cの端部に取り付けられている。作動機構部4は、ピストン棒4aと、レバー4cを有する把持体4bと、第1の弾性部材4eと、係止部材4fと、第2の弾性部材4gと、後退規制部材4hとを含む。
【0039】
ピストン棒4aは、エアゾール缶6の軸芯6b上となるように、把持体4b及び右面部3cを貫通している。ピストン棒4aは、容器5内に挿入される押し出し面部4iと、後退部材4jとを有する。押し出し面部4iの外径は、容器5の貯留部5bの内径と略同一か又は少し大きい。押し出し面部4iは、液体の漏れを防止し、ゴムやシリコンなど貯留部5b内を滑ることができる部材であるとよい。押し出し面部4iには、その他、周知のピストンカップの形状を採用することができる。後退部材4jの機能については、図3及び図5を用いて後述する。
【0040】
レバー4cは、支点P1を中心に回動可能に把持体4bに取り付けられている。第1の弾性部材4eは、典型的にはスプリングであるが、ゴム等の弾性部材でもよい。第1の弾性部材4eは、把持体4b内において、ピストン棒4aを貫通させるように設けられている。係止部材4fは、ピストン棒4bを貫通させる孔を有する長方形状の部材である。係止部材4fは、把持体4bに設けられた止め部P2とレバー4cの一端に設けられた止め部P3とによって、係止され、第1の弾性部材4eによって常時後方に押圧されている。
【0041】
第2の弾性部材4gは、典型的にはスプリングであるが、ゴム等の弾性部材でもよい。第2の弾性部材4gは、ピストン棒4bの後部で挿通されている。後退規制部材4hは、ピストン棒4bを貫通させる孔を有する先端がくの字状に折れ曲がっている長方形状の部材である。後退規制部材4hの一端は、把持体4bに設けられた止め部P4に係止されている。後退規制部材4hは、第2の弾性部材4gによって、常時、後方に押圧されている。後退規制部材4は、止め部P4の一点でのみ係止しているので、図1に示すように傾斜させて配置されている。後退規制部材4hは、傾斜して配置されているので、後退規制部材4hに穿孔されている孔及び第2の弾性部材4gの押圧力によって、ピストン棒4bに対して、上下に力が加えられることとなる。よって、後退規制部材4hは、ピストン棒4bを後退させるのを規制することができる。なお、ピストン棒4aを後退させたい場合は、後退規制部材4hのくの字状の部分を押して、後退規制を解除し、ピストン棒4aを引き抜けばよい。
【0042】
図3は、レバー4cを握ったときの様子を示す図である。図4は、ピストン棒4aが移動する様子を示す拡大図である。図3に示すように、レバー4cを握ると、止め部P3を介して、係止部材4fを押進する力が加えられる。その際、図4に示すように、係止部材4fは、傾斜しながら押進する。そのため、係止部材4fに設けられた孔4faがピストン棒4aを挟み込むようになる。そのため、係止部材4fがピストン棒4aを押進させる。ピストン棒4aが押進すると、容器5に収容されている液体の内圧及び押し出し面部4iと容器5との摩擦力によって、容器5も押進し、それに伴い、エアゾール缶6の噴射用ステム6aが押し下げられ、容器5内の液体がエアゾール缶6内に充填される。
【0043】
レバー4cの握りを解除すると、係止部材4fは、図4に示す矢印の方向に戻る。その際、後退規制部材4hが存在するので、係止部材4fだけが元の位置に戻り、ピストン棒4aは、後退しない。図3の状態で、容器5には、あと、幅Dだけの液体が残っている。幅Dは、もう一度レバー4cを握れば、液体の抽出が略完了するだけの幅である。残り一回の握りによって液体の充填が完了する段階において、後退部材4jは、後退規制部材4hに当接することとなる。なお、後退部材4jは、後退規制部材4hから多少離れていてもよい。後退部材4jは、たとえば、ピストン棒に溶接によって取り付けられていてもよいし、後退部材4jをナットとして、ピストン棒4aに切り込まれたねじ溝に後退部材4jを取り付けてもよい。後退部材4jがピストン棒4aに切り込まれたねじ溝に取り付けられている場合、後退部材4jの位置を微調整できる。
【0044】
図5は、液体の抽出が完了する位置までピストン棒4aが押進されたときの様子を示す図である。図5に示すように、レバー4cを握ることによって、残り幅D分だけ、ピストン棒4aが押進する。これにより、液体の充填が完了する。図3の段階で、後退部材4jは、後退規制部材4hにほぼ当接していた。したがって、図5に示す段階では、後退部材4jは、後退規制部材4hに当接し、第2の弾性部材4gを縮めながら、後退規制部材4hを押進させる。したがって、液体の抽出が略完了する位置までピストン棒4aが押進し、レバー4cが離されると、後退規制部材4hが押進した分だけ、ピストン棒4aが後退して戻ることとなる。これにより、エアゾール缶6の噴射用ステム6aが押し上がり、エアゾール缶6内のバルブが閉じる。後退部材4jは、少なくとも、液体の抽出が略完了する位置まで押進されたときに後退規制部材4hに当接するように、ピストン棒4aの後方に設けられていれば、液体の抽出が略完了した段階で、ピストン棒4aを後方に戻すことができ、エアゾール缶6からの内容物の噴射を防止することができる。
【0045】
さらに、液体の充填の様子を詳しく説明する。図6は、容器5が容器保持部2に装着され、エアゾール缶6の噴射用ステム6aの先端と液体抽出先端部5cとが当接されたときの様子を示す断面図である。図6に示す状態から、液体の充填が開始する。図6に示すように、噴射用ステム6aは、内容物噴射路104と、通路102とを有する。噴射用ステム6aには、常時、スプリング101によって、上方への力が加えられているので、通路102は、パッキン103によって、閉じられている。図7は、容器5が押進されたときの様子を示す断面図である。図7に示すように、容器5が押進されると、噴射用ステム6aが押し下げられて、通路102が開いた状態となる。そのため、液体抽出路5bから抽出される液体は、内容物噴射路104及び通路102を介して、エアゾール缶6の内部に充填されることとなる。
【0046】
図8は、液体の充填の開始から、終了までにおいて、容器5がどのように移動するかを詳細に示した図である。図8(a)に示すように、液体の充填開始段階において、噴射用ステム6aと液体抽出先端5cとが当接するように、エアゾール缶6と容器5とが設置される。図8(b)に示すように、ピストン棒4aが押進されると、押し出し面部4iが液体を押し出すと共に、容器5が噴射用ステム6aを押し下げて、液体が充填される。このとき、エアゾール缶6のバルブ(通路102がパッキン103から離れていること。以下同様)は開いている状態になるので、エアゾール缶6からは、内容物を噴射する圧力が容器5に加えられることになる。しかし、ピストン棒4aは、後退規制部材4hによって、後退することができず、かつピストン棒4aに押進力が加えられているので、内容物の噴射圧以上の圧力が押し出し目部4iに加えられることとなる。レバー4cが握られてない状態においても、ピストン棒4aは、後退規制部材4hによって、後退することができないので、内容物の噴射圧以上の圧力が押し出し目部4iに加えられることとなる。したがって、内容物が噴射されることが防止されている。
【0047】
図8(c)に示すように、液体の充填が完了した段階で、噴射用ステム6aは押し下げられた状態となっている。図8(d)に示すように、液体の充填が完了し、レバー4cを離すと、ピストン棒4aは、少なくともバルブを閉じる分だけ後退する。容器5は、スプリング101による圧力とピストン棒4aの戻る力とによって上昇し、噴射用ステム6aのバルブが閉じられる。図8(d)では、容器5が噴射用ステム6aから離れる様子を誇張して記載しているが、少なくともバルブが閉じる距離だけ、容器5が噴射用ステム6aから離れればよい。
【0048】
液体充填装置1は、一般的に採用されているシーリングガンを流用することによって、製造することができる。特に、外枠ホルダー3と作動機構部4とは、一般的なシーリングガンに採用されている構造である。ただし、誤解が生じないように明言しておくが、シーリングガンを本発明に転用することが発明の創作という観点において容易であるということを自認しているわけではない。本発明は、発想の転換によって生まれているのであり、シーリングガンを液体充填装置1に転用することは、当業者であったとしても、容易に想到できるものではない。一般的なシーリングガンは、大量に生産されているので、市場で数百円で購入することができる。一般的なシーリングガンに対して、エアゾール缶規制部材3aを、樹脂を変形させるなど周知のあらゆる方法によって簡易的に製造し、容器保持部5を外枠ホルダー3の適切な位置に接着剤などで付設させ、ピストン棒6aの先端に押し出し面部4iを取り付け、ピストン棒6aの後方の適切な場所に後退部材4jを設ければ、液体充填装置1が製造可能である。なお、外枠ホルダー3は、エアゾール缶6の外径と略同一の塩ビパイプなどを加工して製造しても良い。この場合、エアゾール缶規制部材3aは不要となる。また、容器保持部2や容器5は、樹脂成形や簡単な金属曲げ加工によって製造することができるので、低コストに製造可能である。
【0049】
このように、液体充填装置1は、非常に低コストで製造することができるものであり、従来の如何なる装置と比べてもコスト面でのメリットは大変優れたものである。したがって、液体として充填剤を用いる場合、作業員が各自の液体充填装置1を持参して、塗装現場で充填剤を充填させた後、塗装することができる。また、装置自体が非常に簡易的であるので、軽量化されている。実際、本発明者が試作した液体充填装置1は、容器5及びエアゾール缶6を除いた状態で1キログラム未満であった。これほど、実用的で、コスト面・軽量化面で優れた液体充填装置1は、今まで存在しなかった。
【0050】
上記第1の実施形態では、レバー4cを2回握ると、容器5に収容されている液体の抽出が完了することとしたが、1回握っただけで、容器5に収容されている液体の抽出が完了するようにしてもよい。そのためには、係止部材4fの移動可能距離を長くするように、把持体4bの形状を変更してもよいし、容器5における貯留部5aの底面積を大きくして高さを低くしてもよいし、その他、あらゆる方法で、1回握っただけで液体の抽出が完了するようにできる。当然、3回以上握ることによって、液体の抽出が完了するように設計してもよい。また、一回の握り動作で、レバー4cを完全に握り切る必要はなく、少しずつ握るようにしてもよい。
【0051】
上記第1の実施形態では、作動機構部4を簡易な構成にするために、レバー4cを握る毎にピストン棒6aが押進するトリガータイプの押し出し機構を採用したが、作動機構部4の機構はこれには限定されない。たとえば、ハンドルと歯車とを組み合わせて、ピストン棒が押し出されるような機構であってもよい。また、ピストン棒を直接手で押し出すような機構であってもよい。いずれにせよ、作動機構部は、外枠ホルダーの端部に取り付けられ、容器に収容されている液体を押し出すためのピストン棒を有し、当該ピストン棒に対して押進力を与えるための機構であればよい。
【0052】
より効果的な作動機構部は、容器に収容されている液体の抽出が略完了する位置までピストン棒が押進した場合、エアゾール缶のバルブが少なくとも閉じる長さ分、ピストン棒を後進させる機構を有しているとよい。たとえば、ピストン棒を直接手で押し出すような機構を採用した場合、ピストン棒の所定の位置に止め部材が設けられており、外枠ホルダーとピストン棒の止め部材との間にスプリングが取り付けられ、ピストン棒の押進が完了したら、外枠ホルダーの端面と当該止め部材とが当接して、当該スプリングによって、ピストン棒が戻るような機構であってもよい。すなわち、特許文献6に記載されているように、シリンダが戻る機構を採用してもよい。なお、液体の抽出が完了したか否かは、必要な液体の量によって決まるので、液体が残っていたとしても、液体の抽出が完了する場合があり、液体の抽出が完了したことは、容器内に液体がなくなったことを意味するものではない。
【0053】
図9は、容器5の変形例を示す図である。図9に示すように、容器5は、蓋部材5dをさらに含んでいてもよい。蓋部材5dは、ピストン棒4aによって押進される。ピストン棒は、図9上に示した矢印のように、押進される際、ぶれてしまう可能性がある。ピストン棒4aがぶれてしまうと、押し出し面部4iがずれてしまい、液体が漏れ出てしまう可能性がある。蓋部材5dは、ピストン棒4aのぶれを吸収して、液体の漏れを防止することができる。
【0054】
図6及び図7では、噴射用ステム6aが押し下がるタイプのエアゾール缶6に対して、液体が充填される様子について説明した。しかし、本発明に用いられるエアゾール缶6は、他のタイプのものであってもよい。図10及び図11は、他のタイプのエアゾール缶6を用いて液体を充填する際の様子を示す図である。図10において、弁部材205は、スプリング203の弾性力によって、押し上げられ、噴射用ステム6aの弁座部202に密着される。したがって、内容物は、噴出されない。また、噴射ステム6aは動かない。図11に示すように、ピストン棒4aが押し下げられた場合、容器5からの液体は、ピストン棒4から加えられる圧力によって、内容物噴出路201に進入する。液体の圧力によって、弁部材205が押し下げられ、液体が充填されることとなる。このように、本発明では、容器5が噴射用ステムの先端と当接するように配置されるので、エアゾール缶の種類に限定されることなく、液体を充填することができ、汎用性に富む。
【0055】
容器5は、使い捨てにしてもよいし、再利用してもよい。従来技術のように、逆止弁を使用していないので、硬化によって、逆止弁が機能しなくなる問題も生じない。ただし、容器5に逆止弁を利用することを否定するものではなく、容器5に逆止弁を採用してもよいことは言うまでもない。
【0056】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る液体注入装置10の構成を示す図である。図12に示すように、液体充填装置10は、容器保持部20と、外枠ホルダー30と、作動機構部4とを備える。外枠ホルダー30は、エアゾール缶6を出し入れ可能に塩ビ製などのパイプの一部がくり抜かれた形状を有し、略半管状である。容器保持部20は、外枠ホルダー30の内径と略同一の外径を有する円柱状である。作動機構部4は、第1の実施形態と同様であるので、詳しい説明を省略する。なお、第2の実施形態では、後退部材4jは、第1の実施形態と異なる形状を有しているが、第1の実施形態と同様の機能を有する。
【0057】
容器保持部20には、略円柱状の容器50の外径と略同一の内径を有する孔部22aが穿孔されている。容器50は、噴射用ステム6aが押し下がり切る以上に孔部22aに挿入されることを規制するための凸部53aを有する。容器保持部20の孔部22aに容器50が挿入され、孔部21aにエアゾール缶6の頭部が挿入され、エアゾール缶6、容器保持部20、及び容器50が外枠ホルダーに設置される。これにより、噴射用ステム6aと、容器50の液体抽出先端部54aとが当接する。作動機構部4を用いて、ピストン棒4aを押進させると、先端部43は、抜き出し棒固定部51に当接し、ピストン兼容器蓋部52が押進して、貯留部53に収容されている液体がエアゾール缶6に充填される。
【0058】
次に、各部材の構成について、詳細に説明する。
図13は、容器保持部20、容器50、及びピストン棒先端部材40の部品を分解した図である。図13に示すように、容器保持部20は、下部保持部21と、上部保持部22と、スプリング23と、ガイド枠体24とを含む。容器50は、抜き出し棒固定部51と、ピストン兼容器蓋部52と、貯留部53と、注出路部54とを含む。ピストン棒用部材40は、先端部43と、調整ボルト42と、固定部41とを含む。典型的には、スプリング23以外の部材は、樹脂成形によって製造されている。スプリング23は、通常は、金属製であるが、特に限定されない。汎用されている部材を流用できるような場合は、樹脂成形に限定されるものではない。特に、固定部41や、調整ボルト42、抜き出し棒固定部51は、汎用品を流用することができる。また、本発明は、各部材が必ずしも樹脂成形されている場合に限定されるものではなく、適宜、金属製であってもよい。特に、容器50の一部又は全部の部材には、相当の圧力がかかるので、容器50の一部又は全部の部材は、金属製であってもよい。容器50の一部又は全部の部材を金属製とすれば、再利用可能な回数が増える。
【0059】
下部保持部21と上部保持部22とは、ねじ溝21b,22bを介して、スプリング23とガイド枠体24とが収容された状態で連結される。スプリング23とガイド枠体24とは、略円柱状である。ねじ溝21bは、容器保持部20の幅を微調整できるように、微調整溝21cを有する。容器保持部20の幅を微調整することによって、噴射用ステム6aと液体抽出先端部54aとの当接位置を調整することができる。下部保持部21は、エアゾール缶6の頭部、スプリング23、及びガイド枠体24を収容し得る孔部21aを有する。下部保持部22は、スプリング23及びガイド枠体24を収容し得ると共に、容器50を挿入し得る孔部22aを有する。ガイド枠体24は、スプリング23の外側に配置される。
【0060】
貯留部53の先端に抽出路部54が取り付けられる。貯留部53の後端にピストン兼容器蓋部52が挿入される。貯留部53は、先述の凸部53aを有する。ピストン兼容器蓋部52は、貯留部53の蓋となり、かつ、液体を押し出すためのピストンとなる。ピストン兼容器蓋部52は、略円柱状であり、内側が窪んだ形状を有する。当該窪み部分によって、貯留部53での内壁での摩擦を軽減することができ、ピストン兼容器蓋部52の動きをスムーズにする。なお、ピストン兼容器蓋部52の先端構造は、周知のピストンカップの形状を有していても良い。抜き出し棒固定部51は、ピストン兼容器蓋部52を貯留部53から抜き出すための抜き出し棒60(後述の図15参照)を取り付けるためのねじ穴51aを有する。ピストン兼容器蓋部52が貯留部53に挿入された段階で、貯留部53の先端から、液体を注入し、その後、抽出路部54をねじ込むことによって、液体を収容する容器50が得られる。抽出路部54の液体抽出路5bは細いので、圧力の関係により、容器50を多少逆さにした程度では、内部の液体は漏れない。
【0061】
固定部41は、ピストン棒4aを挿通させる孔41aを有する。固定部41は、右蓋部33にねじ込まれる。これにより、ピストン棒4aのぶれを軽減することができる。ピストン棒4aの先端部分には、所定の幅だけねじ溝が切られている。当該ねじ溝に調整ボルト42と先端部43とをねじ込む。その際、調整ボルト42を適切な位置で止めて、先端部43をねじ込めば、先端部43の位置を調整することができる。
【0062】
図14Aは、外枠ホルダー30の正面図である。図14Bは、外枠ホルダー30の平面図である。図14Cは、図14AにおけるA−A断面図である。図14Dは、図14AにおけるB−B断面図である。外枠ホルダー30は、左蓋部31と、略半管状部32と、右蓋部33とを含む。略半管状部32は、たとえば、塩ビパイプなどの樹脂パイプの一部をエアゾール缶60を出し入れ可能となるようにくり抜いた形状をしている(図14C参照)。なお、略半管状部32全体が樹脂成形されていてもよい。左蓋部31は、エアゾール缶6の底側に位置し、エアゾール缶6が底側から抜け出ないように、略半管状部32の一端にビスや接着剤などで固定されている。左蓋部31は、軽量化のために一部がくり抜かれていても良い。右蓋部33は、固定部41を固定するためのねじ穴33aを有する。右蓋部33は、略半管状部32の他端にビスや接着剤などで固定される。また、右蓋部33は、ピストン棒4aがねじ穴33aを貫通するように作動機構部4をビスや接着剤などで固定する。なお、外枠ホルダー30全体が樹脂で一体形成されていてもよい。外枠ホルダー30によって、エアゾール缶6及び容器保持部20が、外に飛び出さないように保持される。なお、右蓋部33及び/又は左蓋部31は、金属製であってもよい。
【0063】
図15は、抜き出し棒60を示す図である。抜き出し棒60は、液体の充填が終わった後、ピストン兼容器蓋部52を抜き出す(または、所定の位置まで戻す)ために利用する。抜き出し棒60の先端60aのねじ溝が、ねじ穴51aにねじ込まれる。ピストン兼容器蓋部52を戻した後、抽出路部54を外して、再度液体を収容することができる。なお、容器50の使用を一回限りにするのであれば、抜き出し棒固定部51は不要である。また、ピストン兼容器蓋部52を抜き出すための構成は、あくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0064】
次に、液体が充填される様子について説明する。図16Aは、容器保持部20及び容器50の各部材が装着されたときの様子を示す図である。図16Bは、エアゾール缶6、容器保持部20、及び容器50が外枠ホルダー30に設置されたときの状態を示す図である。なお、図面上、理解を容易にするために、収容されている液体のハッチングは省略している。
【0065】
下部容器保持部21は、エアゾール缶6の頭部に当接する形状を有しているので、ピストン棒4aからの押圧力が噴射用ステム6aに集中することを防止する。容器50はガイド枠体24及びスプリング23を挿通し、噴射用ステム6aと液体抽出先端部54aとが当接する。噴射用ステム6aが押し下がる最大の間隔がdであるとした場合、微調整溝21cを利用して、凸部53aと容器保持部20との間の間隔がdとなるように、下部保持部21と上部保持部22とを結合する。なお、この微調整はあくまでも補助的機能であり、各部材を樹脂成形などによって正確に製造すれば、下部保持部21を上部保持部22に完全にねじ込んだ状態で、凸部53aと容器保持部20との間の間隔がdとなるように製造できる。
【0066】
図16Cは、容器50が押進したときの状態を示す図である。容器50が押進すると、凸部53aと上部容器保持部22とが当接する。したがって、容器50は、dだけ押進して、噴射用ステム6aのバルブを押し下げることとなる。ガイド枠体24に穿孔されている孔24aの内径は、貯留部53の外径よりも小さい。したがって、容器50が押進する際、ガイド枠体24もdだけ押進することとなる。その際、スプリング23が縮む。よって、スプリング23によって、容器50に対して、押進力とは逆の反発力が加えられていることとなる。このように、スプリング枠体24と、スプリング23とは、容器50が押進する際に、反発力を加える弾性部として機能する。なお、弾性部が無くても、液体の充填は可能である。
【0067】
図16Cの状態で、作動機構部4の把持を一時中断した場合を考える。作動機構部4は、ピストン棒4aを後退させることを規制する後退規制部材4hを有している。スプリング23の反発力は、後退規制部材4hによる摩擦力よりも弱いものとしておく。これにより、一時中断した状態であっても、ピストン棒4aは下がらず、容器50に液体が収容されている状態で容器50が静止することとなる。すなわち、スプリング23が押圧され、かつ、噴射用ステム6aが押し下がった状態のままとなる。その後、液体の抽出が完了する位置までピストン棒4aが押進されると、後退部材4jは、後退規制部材4hに当接する。したがって、後退規制部材4hによる後退規制が解除され、第1及び第2の弾性部材4e,4gの反発力によって、ピストン棒4aは後退する。それに伴い、スプリング23及び噴射用ステム6aの反発力によって、容器50が後退し、噴射用ステム6aのバルブが閉じられ、噴射が防止される。また、スプリング23によって、噴射用ステム6aに過剰な圧力が加えられるのを防止する効果も得られる。また、外枠ホルダー30に、エアゾール缶6、容器収容部20、及び容器50を設置する際に、不用意に、容器50が噴射用ステム6aを押し下げてしまい、内容物が噴射されてしまうのを防止することができる。
【0068】
図17は、噴射用ステム6aと抽出路部54との当接部分を拡大した図である。図17(a)は、当接した状態を示す。図17(b)は、噴射用ステム6aが押し下がったときの状態を示す。液体抽出先端部54aは、抽出路部54に食い込む凹部である。したがって、噴射用ステム6aと液体抽出先端部54aとが当接している状況で、噴射用ステム6aは、抽出路部54内に食い込んでくる。よって、ピストン棒4aの押進が一時中断し、噴射用ステム6aのバルブが開いた状態であったとしても、エアゾール缶6の内容物が漏れることはない。図17(b)に示すように、噴射用ステム6aが押し下がった状態で、液体抽出先端部54aは、噴射用ステム座6cに当接するので、噴射用ステム6aの過剰な押し下げが防止され、結果、エアゾール缶6の破損を防止することができる。
【0069】
このように、第2の実施形態によれば、外枠ホルダー30、容器保持部20、及び容器50といった主要部材を樹脂成形などによって低コストに製造することができる。したがって、液体充填装置20を非常に低コストに提供することができる。また、軽量化も図られており、本発明者の試作では、エアゾール缶6を装着しない状態で、1キログラム未満となった。
【0070】
また、円柱状の容器保持部20を用いることによって、容器保持部20の設置が容易となり、ピストン棒4aに押圧される際に、容器50がぶれることを防止することができる。結果、エアゾール缶からの噴射漏れを防止することができる。また、容器50は、ピストン兼容器蓋部52を有するので、ピストン棒4aのぶれによる影響をほとんど受けない。
【0071】
また、容器保持部20に容器50が挿入される孔部22aを設けられているので、容器50のぶれは、ほとんど生じない。噴射用ステム6aが押し下がり切る以上に孔部22に挿入されることを規制するための凸部53aが容器50に設けられているので、容器50が過剰に押進されたとしても、容器50が噴射用ステム6aを押し続けることが防止される。結果、エアゾール缶6からの噴射漏れやエアゾール缶6の破損が防止される。
【0072】
容器50に反発力を加える弾性部がガイド枠体24及びスプリング23によって形成されているので、容器50が噴射用ステム6aに過剰な押進力を加えることを防止することができる。さらに、充填が終わった場合、容器50が押し戻されて、エアゾール缶6のバルブが閉じることとなり、噴射漏れを防止できる。また、外枠ホルダー30への設置時に、不用意に噴射用ステム6aが押し下げられてしまうことを防止できる。
【0073】
なお、第2の実施形態における構造は、噴射用ステム6aが押し下がらないタイプのエアゾール缶6に対しても適用できる。その場合、凸部53と容器保持部20との間の間隙dは不要である。また、第2の実施形態と同様、下部保持部21がエアゾール缶6の頭部に当接するようにして、容器50が移動しないようにする。
【0074】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の変形があり得る。
【0075】
本発明において、シーリングガンを流用して、液体充填装置1,10を製造することは、あくまでも実施形態の一例に過ぎない。当然、本発明は、シーリングガンを流用したものに限定されるものでなはいことは言うまでもない。
【0076】
本発明において、軽量化が図られている最大の原因は、外枠ホルダー3,30を断面形状が連続的な弧状となるものとし、外枠ホルダー3,30内に、容器保持部2,20を設置すると共に、エアゾール缶6を保持させ、さらに外枠ホルダー3,30の端部に作動機構部4を取り付けている点にある。従来であれば、注入するべき液体が収容されたシリンダを保持し、作動機構を取り付けるために、大がかりな台や器具を用いる必要があった。これらの台や器具は、ほとんどが金属製でなければならず、切削加工やプレス加工等によって提供されるものである。しかし、本発明では、このような大がかりな台を用いることなく、外枠ホルダー3,30を樹脂成形や既存のパイプの加工によって提供することができる。その上で、外枠ホルダー3,30を用いるだけで、エアゾール缶6及び容器5,50の保持、さらには、作動機構部4の取り付けまでも実現できる。したがって、非常に軽量化が図れ、低コストになる。
【0077】
外枠ホルダー3,30の形状としては、以下のような変形が考え得る。外枠ホルダー3の断面弧は半円よりも弧の長さが短くてもよい。逆に、外枠ホルダー3,30の断面弧は半円よりも弧の長さが長くても良い。このような多少の弧の長さ違いを考慮して、本明細書では、略半管状という。また、略半管状の外枠ホルダー3,30の一部がくり抜かれていてもよい。逆に、外枠ホルダー3,30は、完全な円筒状であってもよい。円筒状の場合、たとえば、作動機構部4とは逆側の端部からエアゾール缶6を挿入し、エアゾール缶6の底を取り外し可能に固定して、液体を充填すると良い。外枠ホルダー3,30を完全な円筒状にする場合、内部が視認できるように、外枠ホルダー3,30は、透明であるとよい。外枠ホルダー3,30は、網状や格子状であってもよい。外枠ホルダー3,30は、エアゾール缶6の軸方向又は軸方向と斜めに交差する方向に設けられた枠体だけでもよい。すなわち、外枠ホルダー3,30は、エアゾール缶の側面に沿った形状を有して、エアゾール缶6の軸芯6bがずれないように、エアゾール缶6を載置することができればよい。従来、エアゾール缶の側面に沿った形状を有する外枠ホルダーを用いた充填装置は存在しなかった。
【0078】
本発明において、エアゾール缶6のサイズは特に限定されない。たとえば、圧縮ガスが充填されている比較的小さいエアゾール缶に香水などの液体を充填して、オリジナルのエアゾール缶を製造してもよい。エアゾール缶のサイズに合わせた外枠ホルダーを用意すればよい。
【0079】
本発明の液体充填装置は、外枠ホルダーを覆う透明のカバーを取り外し可能に備えていても良い。
【0080】
本発明の液体注入装置を用いて、硬化剤を充填したエアゾール缶を用いて塗装をすれば、塗膜強度や乾燥時間という面において、優れた効果が得られる。
【0081】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、エアゾール製造業、塗装業、建築業、土木業等の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る液体充填装置1の構成を示す図
【図2】容器保持部2を他の角度から見たときの図
【図3】レバー4cを握ったときの様子を示す図
【図4】ピストン棒4aが移動する様子を示す拡大図
【図5】液体の抽出が完了する位置までピストン棒4aが押進されたときの様子を示す図
【図6】容器5が容器保持部2に装着され、エアゾール缶6の噴射用ステム6aの先端と液体抽出先端部5cとが当接されたときの様子を示す断面図
【図7】容器5が押進されたときの様子を示す断面図
【図8】液体の充填の開始から、終了までにおいて、容器5がどのように移動するかを詳細に示した図
【図9】容器5の変形例を示す図
【図10】他のタイプのエアゾール缶6を用いて液体を充填する際の様子を示す図
【図11】他のタイプのエアゾール缶6を用いて液体を充填する際の様子を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係る液体注入装置10の構成を示す図
【図13】容器保持部20、容器50、及びピストン棒先端部材40の部品を分解した図
【図14A】外枠ホルダー30の正面図
【図14B】外枠ホルダー30の平面図
【図14C】図14AにおけるA−A断面図
【図14D】図14AにおけるB−B断面図
【図15】抜き出し棒60を示す図
【図16A】容器保持部20及び容器50の各部材が装着されたときの様子を示す図
【図16B】エアゾール缶6、容器保持部20、及び容器50が外枠ホルダー30に設置されたときの状態を示す図
【図16C】容器50が押進したときの状態を示す図
【図17】噴射用ステム6aと抽出路部54との当接部分を拡大した図
【符号の説明】
【0084】
1,10 液体充填装置
2,20 容器保持部
2a 嵌着部材
2b 付設台
3,30 外枠ホルダー
3a エアゾール缶規制部材
3b 左面部
3c 右面部
4 作動機構部
4a ピストン棒
4b 把持体
4c レバー
4e 第1の弾性部材
4f 係止部材
4g 第2の弾性部材
4h 後退規制部材
4i 押し出し面部
4j 後退部材
43 先端部
42 調整ボルト
41 固定部
5,50 容器
5a,53 貯留部
5b 液体抽出路
5c,54a 液体抽出先端部
5d 蓋部材
51 抜き出し棒固定部
52 ピストン兼容器蓋部
53a 凸部
54 抽出路部
6 エアゾール缶
6b 軸芯
6c 噴射用ステム座
P1〜P4 止め部
21 下部保持部
21a,22a 孔部
21b ねじ溝
21c 微調整溝
22 上部保持部
23 スプリング
24 ガイド枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスが充填されているエアゾール缶へ液体を充填するための装置であって、
前記液体を収容するための容器を取り外し可能に保持するための容器保持部と、
前記エアゾール缶の側面に沿った形状を有し、前記エアゾール缶の軸芯がぶれないように前記エアゾール缶を取り外し可能に載置し、前記エアゾール缶の噴射用ステムの先端と前記容器の液体抽出先端とを当接させることができる位置に前記容器保持部を設置する外枠ホルダーと、
前記外枠ホルダーの端部に取り付けられ、前記容器に収容されている前記液体を押し出すためのピストン棒を有し、当該ピストン棒に対して押進力を与えるための作動機構部とを備える、液体充填装置。
【請求項2】
前記容器保持部は、前記ピストン棒からの押進力によって、前記容器を前記軸芯に沿って左右動可能に保持することを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項3】
前記作動機構部は、前記容器に収容されている前記液体の抽出が略完了する位置まで前記ピストン棒を押進した後、前記エアゾール缶のバルブが少なくとも閉じる長さ分、前記ピストン棒を後進させることを特徴とする、請求項2に記載の液体充填装置。
【請求項4】
前記作動機構部は、レバーを握る毎に前記ピストン棒が押進するトリガータイプの押し出し機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項5】
前記作動機構部は、前記ピストン棒を貫通しており、
回動可能な前記レバーを有する把持体と、
前記ピストン棒を挿通させる第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の後方に配置され、前記ピストン棒を挿通させると共に、前記レバーの一端及び前記把持体の第1の止め部に係止され、前記第1の弾性部材によって常時後方に向かって押圧されている係止部材と、
前記ピストン棒の後部で挿通された第2の弾性部材と、
前記ピストン棒を挿通させながら、前記把持体の第2の止め部に一端を係止され、前記第2の弾性部材の後方に傾斜させて配置される後退規制部材とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の液体充填装置。
【請求項6】
前記ピストン棒は、前記液体の抽出が略完了する位置まで押進されたときに前記後退規制部材に当接する後退部材を有することを特徴とする、請求項5に記載の液体充填装置。
【請求項7】
前記容器は、前記ピストン棒によって押進され得る蓋部材を有することを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項8】
前記外枠ホルダーは、略半管状であることを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項9】
前記外枠ホルダーは、前記エアゾール缶を出し入れ可能にパイプの一部がくり抜かれたような形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項10】
前記容器保持部は、前記外枠ホルダーの内径と略同一の外径を有する円柱状であることを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項11】
前記容器保持部は、前記容器の外径と略同一の内径を有する孔部を含み、
前記容器は、前記噴射用ステムが押し下がり切る以上に前記孔部に挿入されることを規制するための凸部を有することを特徴とする、請求項10に記載の液体充填装置。
【請求項12】
前記容器保持部は、挿入された前記容器が押進する際に、反発力を加える弾性部をさらに含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の液体充填装置。
【請求項13】
前記弾性部は、
前記容器保持部内をスライド可能で、前記容器の押進に応じて押進し得るガイド枠体と、
前記容器保持部内で前記ガイド枠体に対して、反発力を加えるスプリングとを有する、請求項12に記載の液体充填装置。
【請求項14】
前記液体は、硬化剤であることを特徴とする、請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項15】
請求項1に記載の液体充填装置の容器保持部に脱着可能な容器であって、
液体を溜めておく貯留部と、
前記貯留部に溜められている前記液体を抽出するための液体抽出路と、
前記エアゾール缶の噴射用ステムの先端に当接される液体抽出先端部とを備える、容器。
【請求項16】
エアゾール缶を製造するための製造方法であって、
請求項1に記載の液体充填装置に対して、液体が収容された容器を容器保持部に取り付ける工程と、
請求項1に記載の液体充填装置に対して、前記エアゾール缶を前記外枠ホルダーに取り付ける工程と、
作動機構部を作動させて、ピストン棒を押進させ、前記容器に収容されている前記液体を充填する工程とを備える、製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載の製造方法を用いて製造されたエアゾール缶を用いて、物品を塗装する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−196688(P2009−196688A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42254(P2008−42254)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【特許番号】特許第4145347号(P4145347)
【特許公報発行日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(508055412)
【Fターム(参考)】