説明

エアトラップチャンバ壁付き上部キャップ

【課題】高圧蒸気滅菌時に蒸気加熱により接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)の変形を防止し、血液の泡立ちによる血液の凝固がなく、該変形で起こる品質への信頼低下のないエアトラップチャンバ上部キャップの提供。
【解決手段】本発明のエアトラップチャンバ上部キャップは、血液を体外循環させて処理する血液回路の途中に設置されるエアトラップチャンバ1において、該チャンバの上部キャップ4の天面外側に有する複数の接続部7が壁8で固定されている。また複数の接続部7、7間を固定する壁8は直線状又は/及び湾曲状からなり、かつ壁8は複数であってもよい。更に壁8はブリッジ状であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析のように体外循環によって血液処理を行うときに用いられる血液回路に設置されているエアトラップチャンバに関し、更に詳しくはエアトラップチャンバの上部に設けられる、いわゆる上部キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液回路に設置されるエアトラップチャンバ2には、血液が流入するメインチューブ、圧力モニターライン、液面調整ライン、生食の補液ライン、抗凝固剤や増血剤等の薬剤投与のためのラインやアクセスポートが接続部7に接続されている。図6のa、図6のbに示されるように、それらのラインやアクセスポートは、エアトラップチャンバ2のキャップ4の天面部やエアトラップチャンバの本体3の側面部に設けられている接続部に固定・取り付けが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このようなエアトラップチャンバを有する血液回路は医療器具の一種であるので、滅菌してから人や動物に使用されている。

【特許文献1】特開昭62-181054号公報(公報第1頁右欄背景技術1行〜8行、図2)
【特許文献2】特開2005-95230(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のように血液回路は、回路中にエアトラップチャンバを有しており、これらはポリ塩化ビニール等樹脂で成形されており、しかも血液回路の滅菌はほとんど高圧蒸気滅菌が採用されているため、滅菌時には蒸気加熱されるので、変形されやすくなる。特にエアトラップチャンバの上部キャップには、メインチューブ、圧力モニターライン、液面調整ライン、生食の補液ライン、抗凝固剤や増血剤等の薬剤投与のための各種ラインやアクセスポート(以下、メインチューブ、各種ライン、アクセスポートを総称した場合、被接続部という。)が接続されているので、被接続部の接続により上部キャップの接続部には、被接続部の自重による負荷が掛かっている。そのため接続部が変形しやすくなっており、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱により接続部が変形してしまう恐れがある。この接続部の変形が起こると、被接続部が折れ曲がり、ラインの内腔が歪んで小さくなり、補液や薬剤投与がスムーズにできなくなったり、メインチューブが折れ曲がったりすることで血液の流れを遮断したり、血液の流れが変わり、血液はエアトラップチャンバの意図した位置へ流れず、その結果血液の泡立ちが増えて血液が凝固しやすくなったりするばかりでなく、更には各種ラインや特にアクセスポート等を直結した場合などは、自重による負荷がかかり上部キャップの接続部は傾き、それに伴い上部キャップの底面(天面部自体)が変形する。この傾きや変形は見た目も悪く、品質への信頼低下を惹起する恐れがあるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者は、上記の問題点について種々検討したところ、高圧蒸気滅菌時、蒸気加熱により接続部に接続された被接続部の自重による該接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)が変形するのを防止するには、接続部間に壁又はブリッジ等の補強部材を設けることによって解決されることを見出し、ここに本発明をなすに至った。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱により接続部に接続された、被接続部の自重による該接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの
底面(天面部自体)が変形するのを防止し、これら変形によって惹起される血液の流れの遮断や血液の流れの変わるのが防止されて血液の泡立ちによる血液の凝固がなく、前記変形で起こる見た目の悪さ、品質への信頼低下を惹起することのないエアトラップチャンバ上部キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)血液を体外循環させて処理する血液回路の途中に設置されるエアトラップチャンバにおいて、該チャンバの上部キャップの天面外側に有する複数の接続部が壁で固定されていることを特徴とするエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。
(2)複数の接続部間を固定する壁は直線状又は/及び湾曲状からなり、かつ壁は複数であってもよいことを特徴とする請求項1に記載のエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。
(3)壁はブリッジ状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。
【発明の効果】
【0007】
(1)本願発明の第1項に記載のエアトラップチャンバ上部キャップは、血液を体外循環させて処理する血液回路の途中に設置されるエアトラップチャンバにおいて、該チャンバの上部キャップの天面外側に有する複数の接続部が壁で固定されていることを特徴とするもので、このように複数の接続部が壁で固定されていることにより、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱により、被接続部で接続された接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)が変形することがなく、したがって、被接続部の自重による変形で起こる血液の流れの遮断や血液の流れの変わるのが防止されて血液の泡立ちによる血液の凝固がなく、これら変形による見た目の悪さ、品質への信頼低下のないという格別の効果を奏するものである。
【0008】
(2)本願発明の第2項に記載のエアトラップチャンバ上部キャップは、前記第1項において、複数の接続部間を固定する壁は直線状又は/及び湾曲状からなり、かつ壁は複数であってもよいことを特徴とし、これにより壁の形状が違っても接続部は十分補強されて、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱によっても接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)の変形は起こらないという優れた効果を奏するものである。
【0009】
(3)本願発明の第3項に記載のエアトラップチャンバ上部キャップは、前記第1項又は第2項において、壁はブリッジ状であることにより、接続部は十分補強され、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱によっても接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)の変形は起こらず、しかも樹脂原料が節約され、経済的であるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について図面を用いて具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。図1は、本発明の壁付上部キャップを有するエアトラップチャンバを示す斜視図である。図2は、図1のエアトラップチャンバの壁付上部キャップを示す平面図である。図3は、図2におけるエアトラップチャンバの壁付上部キャップのA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。図4は、図3において、壁付上部キャップの内部構造が異なる別の実施形態におけるA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。図5のa乃至eは、図3の壁付上部キャップの接続部の一箇所に被接続部を接続した断面図である。図5のaはゴムボタンを、図5のbはニードルレスアクセスポートを、図5のcはロック式ニードルレスアクセスポートを、図5のdはヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポートを、図5のeは蓋付きロック式ニードルレスアクセスポートをそれ
ぞれ接続した断面図である。なお、ゴムボタンは断面図が記載され、その他の被接続部は側面図が記載されている。図6のaは従来知られているエアトラップチャンバを示す斜視図であり、図6のbは図6のaの平面図である。
【0011】
図1、図2において、本発明のエアトラップチャンバ1は、円筒3の内部にフィルター6が設置され、前記円筒の上部には上部キャップ4を有し、下部には下部キャップ5を有している。上部キャップ4には、天面外部に上方に向かって接続部71、72、73を有している。これらの接続部において、接続部71と接続部72、接続部72と接続部73及び接続部73と接続部71の間には、壁8が設けられ、これらの壁8により接続部7,7間は固定されており、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱によっても接続部の変形は起こらない。この壁8としては壁81の外側のみ設けてもよい。また被接続部の重量がより大きいことで接続部の変形を防止効果を高める必要があるときは、壁81を肉厚にすることで対処はできる。しかし、壁81を肉厚にすることで射出成型後の樹脂の冷却時のヒケによる底面の変形が起こる恐れがあるので、より肉薄の壁81及び壁82を二重に設けることが好ましい。これにより接続部間は強固に固定され、接続部の変形が防止され、それに伴い上部キャップの底面(天面部自体)の変形をも防止する。またこれらの壁8は、断面からみて、直線状であってもまた湾曲上であってもよい。特に形状には限定されない。更に壁8は、ブリッジ状(図示していない。)に形成されてもよく、これにより強度には遜色なく、天面部と壁8間に空洞が形成されることにより原料樹脂が節約でき、経済的である。
【0012】
図3は、図2におけるエアトラップチャンバの壁付上部キャップのA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。図4は、図3において、壁付上部キャップの内部構造が異なる別の実施形態におけるA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。図3、図4では、接続部72と接続部73は、壁8により強固に固定され、これら接続部7の長さが異なる場合には、例えば、接続部72の上端まで壁8を設けるのがよい。
【0013】
図5は、エアトラップチャンバの壁付上部キャップの接続部73,72に被接続部を接続した例を示した断面図であり、図5のaは、接続部73にゴムボタン9を設けた断面図であり、接続部73を使用しない場合に、エアトラップチャンバ内の圧力保持やゴミや塵埃の混入を防ぐために蓋をしておく場合である。図5のbは、接続部の一箇所にニードルレスアクセスポート10を接続したものであり、ニードルレスアクセスポート10は側面図で記載されている。このニードルレスアクセスポート10にシリンジ〈注射筒〉先端部を直接挿入する。 図5のcは、接続部の一箇所にロック式ニードルレスアクセスポート11を接続した場合であり、ロック式ニードルレスアクセスポート11は、側面図で記載されている。このロック式ニードルレスアクセスポート11は、ロック式シリンジ〈注射筒〉先端部を直接挿入し、ロックする。図5のdは、接続部の一箇所にヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポート12を接続した場合であり、ヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポート12は側面図で記載されている。このヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポート12は、ヒンジキャップ14を有し、ニードルレスアクセスポートによりシリンジ〈注射筒〉先端部を直接挿入しないとき、このヒンジキャップ14は、塵埃の混入や万が一血液が漏れ出てきた場合に、これを防ぐカバーの役目を果たす。図5のeは、蓋付きロック式ニードルレスアクセスポート13を接続した場合であり、蓋付きロック式ニードルレスアクセスポート13は、側面図で記載されている。この蓋付きロック式ニードルレスアクセスポート13は、シリンジ〈注射筒〉先端部を直接挿入し、ロックしないとき、蓋15をすることにより塵埃の混入を防ぐカバーの役目を果たす。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明のエアトラップチャンバ上部キャップは、接続部間を壁により固定したので、接続に被接続部を接続した後、高圧蒸気滅菌時の蒸気加熱によっても接続部の変形およびそれに伴い上部キャップの底面(天面部自体)が変形する恐れはなく、品質の向上したエア
トラップチャンバが得られるので、医療器具の分野に格別の貢献ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の壁付上部キャップを有するエアトラップチャンバを示す斜視図である。
【図2】図1のエアトラップチャンバの壁付上部キャップを示す平面図である。
【図3】図2におけるエアトラップチャンバの壁付上部キャップのA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。
【図4】図3において、壁付上部キャップの内部構造が異なる別の実施形態におけるA−A′の一点鎖線で切断した断面図である。
【図5】図5のa乃至eは図3の壁付上部キャップの接続部の一箇所に被接続部を接続した断面図であり、図5のaの被接続部は断面図であり、図5のb乃至eの各被接続部は側面図である。図5のaは、被接続部はゴムボタンである本発明を示す断面図である。図5のbは、被接続部はニードルレスアクセスポートである本発明を示す断面図である。図5のcは、被接続部はロック式ニードルレスアクセスポートである本発明を示す断面図である。図5のdは、被接続部はヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポートである本発明を示す断面図である。図5のeは、被接続部は蓋付きロック式ニードルレスアクセスポートである本発明を示す断面図である。
【図6】図6のaは、従来知られているエアトラップチャンバを示す斜視図である。図6のbは、図6のaの平面図である。
【符号の説明】
【0016】
1、2 エアトラップチャンバ
3 エアトラップチャンバ筒
4 上部キャップ
5 下部キャップ
6 フィルター
7、71、72、73 接続部
7a、7b 突起部
8、81、82 壁又はブリッジ
9 ゴムボタン
10 ニードルレスアクセスポート
11 ロック式ニードルレスアクセスポート
12 ヒンジキャップ付きニードルレスアクセスポート
13 蓋付きロック式ニードルレスアクセスポート
14 ヒンジキャップ
15 蓋
16 メインチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を体外循環させて処理する血液回路の途中に設置されるエアトラップチャンバにおいて、該チャンバの上部キャップの天面外側に有する複数の接続部が壁で固定されていることを特徴とするエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。
【請求項2】
複数の接続部間を固定する壁は直線状又は/及び湾曲状からなり、かつ壁は複数であってもよいことを特徴とする請求項1に記載のエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。
【請求項3】
壁はブリッジ状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアトラップチャンバ壁付き上部キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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