説明

エアフィルタを備えた送風装置及びエアフィルタ

【課題】部品点数を削減することができるとともに、エアに含まれる炭酸ガスの濃度を良好な応答性で正確に検出することができるエアフィルタを備えた送風装置を提供する。
【解決手段】エアダクト11内にエアフィルタ17を設けた送風装置において、エアフィルタ17と吹出口との間に位置するように、エアダクト11の内壁11aに炭酸ガスセンサ19を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両に搭載される空気調和装置や空気清浄装置(エアピュリファイア)等の送風装置において、エアに含まれる炭酸ガス濃度を検出するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば乗用車等の車両において、車室内の炭酸ガスの濃度を検出するための炭酸ガスセンサとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この特許文献1の従来構成においては、センサのハウジングの内部にガス検出室が形成されるとともに、同ハウジングの側壁にはガス検出室内にエアを導入するための透孔が形成されている。また、前記ガス検出室を挟んで、ハウジングの一端部には赤外線発光素子が配置されるとともに、他端部にはバンドパスフィルタ及び赤外線検出素子が配置されている。そして、赤外線検出素子により赤外線発光素子から照射される赤外線が検出されて、ガス濃度を示す検出信号が出力される。なお、赤外線は炭酸ガスに吸収されるため、その吸収量を検出すれば炭酸ガス濃度を判別できる。
【特許文献1】特開2006−275980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記炭酸ガスセンサにおいては、ハウジングの側壁の透孔を介してハウジング内のガス検出室のエアが不断に入れ替えられるように構成されている。このため、エアとともにガス検出室内に塵埃等の異物が侵入するおそれがある。このように異物が侵入した場合には、その異物が赤外線の光路を遮って、炭酸ガスの濃度を正確に行い得ないおそれがある。
【0004】
このような問題に対処するため、ハウジングの透孔部分に塵埃除去用のフィルタを配置して、ガス検出室内への塵埃等の侵入を防止することも考えられる。しかしながら、このように構成した場合には、部品点数が増えるばかりでなく、前記フィルタの部分における圧力損失により、ガス検出室と外部との間のエアの入れ替えに支障をきたし、炭酸ガス濃度の検出応答性が悪くなる。さらに、フィルタに塵埃等が集積して目詰まりが発生することにより、炭酸ガス濃度の検出応答性がさらに悪化するおそれもあった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、センサ用のフィルタを設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制できるとともに、エアに含まれる炭酸ガスの濃度を良好な応答性で正確に検出することができるエアフィルタを備えた送風装置及びエアフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、エアフィルタを備えた送風装置において、前記エアフィルタの下流側であって、同エアフィルタと吹出口との間の位置に炭酸ガスセンサを配置したことを特徴とする。ここで、炭酸ガスセンサは炭酸ガス濃度を光学的に検出するタイプのものを指す。
【0007】
従って、このエアフィルタを備えた送風装置によれば、送風装置のエアフィルタと別に、センサ用のフィルタを設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。また、エアに含まれる塵埃等の異物が送風装置のエアフィルタにより濾過されて、炭酸ガスセンサの検出領域に侵入しないため、炭酸ガスの濃度を正確に検出することができる。さらに、センサ用のフィルタが設けられていないため、炭酸ガスセンサの検出領域へのエアの入れ替えを円滑に行うことができて、炭酸ガス濃度の検出応答性の悪化を招くおそれを抑制することができる。
【0008】
前記の構成において、前記炭酸ガスセンサをエアダクトの内壁に設けるとよい。
また、前記の構成において、エアフィルタにおけるエア流の下流側の位置に、炭酸ガスセンサを設けるとよい。
【0009】
さらに、前記エアフィルタを、枠体と、その枠体内に収容されたエレメントとにより構成した場合は、前記炭酸ガスセンサを前記枠体に設けるとよい。
前記炭酸ガスセンサを前記枠体に代えてエレメントに設けてもよい。
【0010】
また、この発明においては、送風装置に装着されるエアフィルタにおいて、エア流の下流側の位置に炭酸ガスセンサを設けたことを特徴とする。
そして、エアフィルタを、枠体と、その枠体内に収容されたエレメントとにより構成した場合は、前記炭酸ガスセンサを前記枠体に設けるとよい。
【0011】
前記の構成において、炭酸ガスセンサを前記枠体に代えてエレメントに設けてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、センサ用のフィルタを設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制することができるとともに、エアに含まれる炭酸ガスの濃度を良好な応答性で正確に検出することができるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の送風装置は、車両の空気調和装置を構成するものであって、この送風装置においては、エアダクト11の入口側端部に内気導入口12と外気導入口13とが分岐形成されている。両導入口12,13の内端には切替ダンパ14が回動可能に配置されている。そして、この切替ダンパ14が図1に実線で示す位置と鎖線で示す位置とに切替配置されることにより、内気導入口12及び外気導入口13が選択的に開閉されて、エアダクト11内に車室内のエアまたは車室外のエアが導入される。
【0014】
前記エアダクト11内にはブロアファン15が配置され、このブロアファン15がブロア用モータ16にて回転されることにより、前記内気導入口12または外気導入口13からのエアがエアダクト11内に吸引されて、エアダクト11内にエア流が発生される。ブロアファン15に対してエア流の上流側に配置されるように、エアダクト11内にはエアフィルタ17が着脱可能に配置され、このエアフィルタ17によって、導入エアに含まれる塵埃等の異物が濾過される。
【0015】
前記ブロアファン15に対してエア流の下流側に配置されるように、エアダクト11にはエアの温度を調節するための図示しないエパポレータやヒータ等を含む空気調和器が接続されている。エアダクト11の出口側端部には車室内に向かって開口する図示しない吹出口が形成され、前記エアフィルタ17によって濾過されるとともに、空気調和器で温度調整されたエアがこの吹出口から車室内に吹き出される。
【0016】
図1に示すように、前記エアフィルタ17よりもエア流の下流側においてエアダクト11の内壁11aには炭酸ガスセンサ19が配置されている。そして、この炭酸ガスセンサ19によって、吹出口から吹き出されるエア中の炭酸ガス濃度が検出される。なお、炭酸ガスセンサ19は図1に実線で示すように、ブロアファン15の下流側の位置に配置されても、2点鎖線で示すように、エアフィルタ17とブロアファン15との間の位置に配置されても、いずれでもよい。ただし、ただし、車室内からの外乱光や、車室内ダストからの悪影響を避けるために、炭酸ガスセンサ19は前記吹出口から離れてエアフィルタ17に近いダクト奥部に配置されることが好ましい。
【0017】
図2に示すように、この炭酸ガスセンサ19においては、筒状のハウジング20の内部にガス検出室21が形成されている。ハウジングの側壁には複数の透孔22が対向状に形成され、これらの透孔22を介してガス検出室21内のエアが入れ替えられる。ガス検出室21の一方の端部に位置するように、ハウジング20には赤外線発光素子23が配置されている。赤外線発光素子23に対向してガス検出室21の他方の端部に位置するように、ハウジング20には光学フィルタ24及び赤外線検出素子25が配置されている。そして、赤外線発光素子23から照射される赤外線が光学フィルタ24を介して赤外線検出素子25により検出される。すなわち、ガス検出室21内のエアに含まれる炭酸ガスの濃度に応じて、特定波長の赤外線の吸収量を示す検出信号が赤外線検出素子25から出力される。
【0018】
次に、前記のように構成された送風装置における炭酸ガスセンサ19の検出動作を説明する。
さて、この送風装置の運転時には、ブロアファン15の回転により、内気導入口12または外気導入口13を介して、エアダクト11内に車室内のエアまたは車室外のエアが導入される。導入されたエアはエアフィルタ17により濾過された後、図示しない空気調和器により温度や湿度が調和されて、吹出口から車室内に吹き出される。
【0019】
この場合、炭酸ガスセンサ19のハウジング20のガス検出室21内に透孔22を通してエアが進入するとともに、そのエアは別の透孔22を介してガス検出室21から抜け出る。そして、このガス検出室21内において、赤外線検出素子25により赤外線発光素子23からの赤外線が受光され、エア中の炭酸ガス濃度を示す検出信号が赤外線検出素子25から出力される。
【0020】
そして、この検出信号に基づいて、図示しない制御装置によりエア中の炭酸ガス濃度のレベルが判別され、炭酸ガス濃度が所定の閾値を越えた場合には、例えば警報動作が実行されたりする。
【0021】
そして、この実施形態においては、以下の効果がある。
(1) この炭酸ガス濃度の検出においては、エアダクト11内のエアに含まれる塵埃等の異物が送風装置のエアフィルタ17によって濾過される。そのため、炭酸ガスセンサ19のハウジング20上の透孔22の部分にセンサ用のフィルタが設けられていなくても、塵埃等の異物がハウジング20のガス検出室21内に侵入するおそれはほとんどない。よって、赤外線検出素子25による炭酸ガス濃度の検出を正確に行うことができる。
【0022】
(2) また、ハウジング20の透孔22の部分にセンサ用のフィルタが設ける必要がないため、そのセンサ用のフィルタによって圧力損失が生じるようなことを回避できる。よって、エアがガス検出室21の内外を円滑に通過するため、赤外線検出素子25による炭酸ガス濃度の検出応答性を良好に保つことができる。
【0023】
(3) さらに、センサ用のフィルタを設ける必要がないため、部品点数を削減することもできる。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態及び変形例においては、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0024】
この第2実施形態では、図3及び図4に示すように、送風装置のエアフィルタ17におけるエレメント32の下流側の位置に、炭酸ガスセンサ19が設けられている。
すなわち、エアフィルタ17は、枠体31と、その枠体31内に着脱可能に収容されたエレメント32とから構成されている。エレメント32は、シート状の濾材32aをプリーツ状に折り曲げることによって形成されている。そして、エレメント32よりもエア流の下流側に配置されるように、枠体31内の中央部に炭酸ガスセンサ19が取り付けられている。この炭酸ガスセンサ19はエレメント32のプリーツの山部間に位置している。なお、前記枠体31の外側面には、前記炭酸ガスセンサ19と電気接続されたコネクタ39が取り付けられている。そして、エアフィルタ17がエアダクト11内に装着されたときに前記コネクタ39がエアダクト11側の図示しないコネクタに電気接続されて、炭酸ガスセンサ19が図示しない前記制御装置に接続される。
【0025】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
また、この第2実施形態においては、炭酸ガスセンサ19を送風装置のエアフィルタ17にあらかじめ組み込めばよいため、送風装置に炭酸ガスセンサを組み込む必要がなく、送風装置の組み付け作業が面倒になることを防止できる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
この第3実施形態においては、図5に示すように、前記第2実施形態の場合と同様に、エアフィルタ17が枠体31とエレメント32とから構成されている。そして、炭酸ガスセンサ19が、枠体31内の端部に位置している。
【0027】
従って、この第3実施形態においても、前記第2実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を説明する。
【0028】
この第4実施形態においては、図6及び図7に示すように、エアフィルタ17が平板状濾材33aと波形状濾材33bとからなる積層材33を渦巻状に巻回して、全体として円柱状のハニカム構造をなすように形成されている。すなわち、渦巻状に配置された積層材33の平板状濾材33a間には、波形状濾材33bにより複数のエア通路が区画形成されている。そして、前記エア通路のうちで、1つおきに隣接する第1エア通路40については、エア流上流側が開口されるとともに、下流側が封止材41によりに封止されている。これに対して、残りの第2エア通路42については、エア流上流側が封止材41により封止されるとともに、下流側が開口されている。この構成により、エアフィルタ17の導入側端部には第1通気口43が形成されるとともに、導出側端部には第2通気口44が形成されている。
【0029】
そして、図7に矢印で示すように、エアは、エアフィルタ17の第1通気口43から各第1エア通路40に導入されて、平板状濾材33a又は波形状濾材33bを通過することにより濾過される。その後、エアは、エアフィルタ17の第2通気口44から導出される。
【0030】
そして、炭酸ガスセンサ19が、積層材33の渦巻形状の中心部における第2エア通路42内に取り付けられている。また、この実施形態の炭酸ガスセンサ19はバッテリ内蔵型の送信機45を有するとともに、エアダクト11は受信機46有している。そして、送信機45はあらかじめ決められた時間毎に炭酸ガス濃度を測定する定時測定機能を有する。その測定結果は送信機45により送信されて、受信機46により受信される。受信機46は制御装置の入力側に接続されているため、受信された検出データが制御装置に入力されて、この制御装置により炭酸ガス濃度のレベルが判別される。
【0031】
従って、この第4実施形態においても、前記第1〜第3実施形態に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を説明する。
【0032】
この第5実施形態においては、図8に示すように、エアフィルタ17が枠36内に張設された所定厚さのウェブ状濾材34により構成されている。このウェブ状濾材34におけるエア流の下流側の表面には凹部35が形成され、この凹部35内に前記第4実施形態と同様な定時測定機能と送信機能とを有する炭酸ガスセンサ19が収容配置されている。
【0033】
従って、この第5実施形態においても、前記第4実施形態に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0034】
・ この発明を空気調和装置以外の送風装置,例えばエアピュリファイアにおいて具体化すること。
・ 前記2,第3実施形態において、エアフィルタ17の枠体31に対する炭酸ガスセンサ19の取付位置を、例えば枠体31の下面等の異なった位置に変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態の送風装置の断面図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】第2実施形態におけるエアフィルタの分解斜視図。
【図4】図3のエアフィルタの断面図。
【図5】第3実施形態の送風装置の断面図。
【図6】第4実施形態のエアフィルタの斜視図。
【図7】第4実施形態の送風装置の断面図。
【図8】第5実施形態のエアフィルタの部分断面図。
【符号の説明】
【0036】
11…エアダクト、11a…内壁、15…ブロアファン、17…エアフィルタ、19…炭酸ガスセンサ、20…ハウジング、23…赤外線発光素子、25…赤外線検出素子、31…枠体、32…エレメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタを備えた送風装置において、
前記エアフィルタの下流側であって、同エアフィルタと吹出口との間の位置に炭酸ガスセンサを配置したことを特徴とするエアフィルタを備えた送風装置。
【請求項2】
前記炭酸ガスセンサをエアダクトの内壁に設けたことを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタを備えた送風装置。
【請求項3】
エアフィルタにおけるエア流の下流側の位置に、炭酸ガスセンサを設けたことを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタを備えた送風装置。
【請求項4】
前記エアフィルタを、枠体と、その枠体内に収容されたエレメントとにより構成し、前記炭酸ガスセンサを前記枠体に設けたことを特徴とする請求項3に記載のエアフィルタを備えた送風装置。
【請求項5】
前記炭酸ガスセンサを前記枠体に代えてエレメントに設けたことを特徴とする請求項4に記載のエアフィルタを備えた送風装置。
【請求項6】
送風装置に装着されるエアフィルタにおいて、
エア流の下流側の位置に炭酸ガスセンサを設けたことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項7】
枠体と、その枠体内に収容されたエレメントとを備え、前記炭酸ガスセンサを前記枠体に設けたことを特徴とする請求項6に記載のエアフィルタ。
【請求項8】
炭酸ガスセンサを前記枠体に代えてエレメントに設けたことを特徴とする請求項7に記載のエアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−267683(P2008−267683A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110727(P2007−110727)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】