説明

エアフィルター及びそれを用いた空気処理装置

【課題】抗菌性及び抗ウィルス性を具備するエアフィルターを提供することである。
【解決手段】ウコギ科人参から抽出されたエキス成分が担持されたことを特徴とするエアフィルター及びそれを用いた空気処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性基材にウコギ科人参から抽出されたエキス成分(ウコギ科人参エキス)が含有されたことを特徴とするエアフィルター及びそれを用いた空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、MRSAやO157といった新種の細菌による肝炎乃至食中毒、あるいは、サーズウィルスやトリインフルエンザウィルスといった新種のウィルスによるウィルス性疾患が問題となっている。生活環境からそれらの新種又は既知の細菌やウィルスを除去し、それらへの感染を避けるのが急務である。空気清浄機等に用いるエアフィルターは空気の質に直接関係するため、抗菌性や抗ウィルス性といった機能が要求されている。
【0003】
従来からの技術としては茶のカテキンを担持(含有)させたフィルター(例えば、特許文献1参照)や酵素を担持させたフィルター(例えば、特許文献2参照)等がエアフィルターとして開示されているが、なお抗菌性や抗ウィルス性には不十分である。
【特許文献1】特開2000−5531号公報
【特許文献2】特開2003−210919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景技術で達成されていないエアフィルターの抗菌性や抗ウィルス性に関する課題を解決するものであり、通気性基材にウコギ科人参から抽出したエキス成分(ウコギ科人参エキス)を担持させ、抗菌性や抗ウィルス性に優れたエアフィルターを提供することを目的とする。さらには、エアフィルターを用いた空気処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)本発明は、通気性基材にウコギ科人参から抽出されたエキス成分(ウコギ科人参エキス)が含有されたことを特徴とするエアフィルターに関する。
(2)より好ましくは、エアフィルター中のジンセノサイド類含有量が、0.1g/m2以上、5.0g/m2以下であるエアフィルターに関する。
(3)本発明は、また、上記(1)または(2)のいずれかに記載のエアフィルターが装着されたことを特徴とする空気処理装置に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエアフィルターは、通気性基材にウコギ科人参エキスを担持して得られる。エアフィルターが、抗ウィルス性、抗菌性を有している。これらは全く予想外の効果である。また、ウコギ科人参エキスは独特の臭気を持つため、エアフィルターに用いることはこれまで誰も思い付かなかった訳であるが、本発明のエアフィルターやそれを用いた空気処理装置において臭気問題はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のエアフィルターについて詳細に説明する。
【0008】
本発明において、ウコギ科人参エキスとは、ウコギ科人参の葉、種子、茎、根、支根、花等から抽出されたエキスである。
【0009】
ウコギ科人参エキスには他の天然物抽出エキスには見られない多数の生理活性物質が含まれている。その一例として次のものが挙げられる。
(1)脂溶性成分
パナキシノール(パナセン)、ステロール、脂肪酸類が挙げられる。
(2)サポニン類
サポニン(ジンセノサイド類)やサポニゲンである。含まれるサポニンの多くはダマラン骨格を有する4環性トリテルペンである。サポニゲンとしては5環性トリテルペンのオレアノール酸等がある。サポニゲンは酸により加水分解し、パナキサジオールやパナキサトリオールの形で存在する事もある。
(3)その他
糖類、炭水化物、アミノ酸、ペプチド、アルカロイド、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0010】
ウコギ科人参エキスを担持してなるエアフィルターは、これら特有の成分の強力な複合作用によって、抗ウィルスや抗菌作用を発現するものと推測される。
【0011】
ウコギ科人参エキスの抽出法には特に制限はなく、これまでに開示された方法によって得ることができる。一例を上げると、本発明にウコギ科人参エキスを用いる場合は、水、エチルアルコール、アセトン、エチルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、酢酸等の溶剤を用いて、ウコギ科人参より抽出することができるため、好ましい。抽出操作は特に制限はないが、例えば、ウコギ科人参エキスを効率的に抽出可能な量の溶媒を用いて抽出すればよい。また、抽出操作は10〜80℃の温度で、1〜24時間行うのが更に好ましい。
【0012】
本発明に用いるウコギ科人参エキスは、上記のようにして得られた抽出液をそのまま用いても良いし、必要に応じ、常法に従って精製、濃縮、乾燥した成分を粉体として用いても良く、更に水等で希釈したものを用いても良い。シクロデキストリンを加え、エキス中の成分を包接させてもよい。
【0013】
なお、上記の抽出法などにより得たエキスを高速液体クロマトグラフィーなどで分析すると、用いるエキスの品質確認が出来る。更に、本発明のエアフィルター中に含有されるウコギ科人参エキス成分の分析にも上記の抽出法をそのまま応用出来る。すなわち、フィルターから抽出操作して得た液を分析する事により、フィルター製造後の品質確認による安定生産が可能となる。
【0014】
ウコギ科人参エキスを用いて一定の品質のエアフィルターを得るためには、ウコギ科人参の部位(葉、種子、茎、根、花等)により抽出エキス中の各種成分含有量に差があるという問題があった。
【0015】
ウコギ科人参エキス中には、先に述べた様に各種のサポニン類、糖(オリゴ糖など)、脂溶性成分、アミノ酸類、更にはビタミン類、微量元素等が含まれる。また、臭気成分としてピラジン類やセスキテルペン類等が含まれる。臭気成分は活性炭処理等の公知の方法によりウコギ科人参エキス中の含有量を減らすことが好ましいが、特に臭気成分を減らす処理をしなかったウコギ科人参エキスであっても本発明に好ましく用いられる。
【0016】
なお、ウコギ科人参には様々な種(例えば、高麗人参、オタネ人参、西洋人参、田七人参、竹節人参、広東人参、エゾウコギ等)、亜種がある。また、ウコギ科人参と同様の成分を含有する植物であれば、それらからのエキスも本発明に用いるエキスとして利用出来る。ウコギ科人参エキスとそれらを混合してもよい。エキス中の成分比率による品質管理は上記と同様である。なお、ウコギ科人参は野生でも、栽培/培養されたものでもよいが、一定の品質のものを安定して入手するため、及び環境保護の観点からは栽培/培養されたものを用いることが好ましい。また、ウコギ科人参の根がエキス抽出時の原料に含まれていることは、用いるエキスの量的確保の点からも含有成分の安定化の面からも好ましい。
【0017】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ウコギ科人参エキス中の成分であるジンセノサイド類の含有量を一定範囲内に保つ事により一定の品質のエアフィルターを製造出来る事を見出した。このジンセノサイド類の含有量はエアフィルターにも反映される。次にその詳細を述べる。
【0018】
本発明のエアフィルターへのウコギ科人参エキス含有量は、ジンセノサイド類含有量として、エアフィルターに対し、好ましくは0.1g/m2以上、、より好ましくは、0.5g/m2以上である。この下限を下回る含有量の場合、抗ウィルス性など本発明による効果が充分でない場合がある。一方、本発明のエアフィルターへのウコギ科人参エキス含有量は、ジンセノサイド類含有量として、5.0g/m2以下、より好ましくは3.0g/m2以下である。この範囲の量のウコギ科人参エキスをエアフィルターに含有させることにより、抗菌性、抗ウィルス性の効果が満足な程度に得られるため好ましい。ジンセノサイド類としての上記含有量の上限を上回ると抗菌性、抗ウィルス性などの効果は得られるものの、ウコギ科人参エキス自体の臭気が敏感な人には不快に感じられる恐れがある。また、エアフィルターが必要以上に高価なものとなる。なお、実際に製造工程での管理指標とするものは、特定のジンセノサイドでもよい。この場合、用いるエキス中のジンセノサイド類の総量と指標ジンセノサイドとの比率をあらかじめ知っておき、換算する。例えば、高麗人参等では、ジンセノサイドRb1を指標と出来るが、そのジンセノサイド類の総量に対する比率は用いるエキス毎に求める。ジンセノサイドRb1に限らず他のジンセノサイド類を指標としてもよい。
【0019】
ウコギ科人参エキスのエアフィルターへの含有量が好ましいかどうかを知る簡便な手段としては、先に述べたジンセノサイド類の含有量測定による方法がある。なお、好ましいエキス含有量の上限については分析よりはエキス特有の臭気の有無による官能検査が簡便である。より厳密に言うと、わずかに臭気が感じられる場合もそれが好ましい場合は良しとし、不快臭であれば不可とする。一方、含有量測定による方法を採用する場合は、予め、エキス中のジンセノサイド類含有量を測定しておくと、エキス含有量からジンセノサイド類含有量を換算して求めることが出来、好便である。
また、各種の植物抽出エキスを扱うなどの製造現場において、ウコギ科人参エキスと他の素材との取り違え防止のためには、エキスないしそれを含有するエアフィルターから、例えば、前記サポニン類等のウコギ科人参エキスに特有の含有成分を検出する事によりウコギ科人参エキスと確認出来る。
【0020】
次に本発明に用いる通気性基材について説明する。本発明において、使用される通気性基材の材質に特に制限はなく、使用する装置、機器の形状に対応するものであれば良い。平面状、又は立体状いずれの形状のものを用いても良い。
【0021】
平面上のものは、その一例として、シート状のものが挙げられる。織物、編み物、不織布、紙、ネット、通気性フォーム、金属多孔質体、開孔を施したフィルム等のシート状物から適宜選択することができるが、安価で、繊維配合、目付、厚みなどを制御しやすい点、穴開け加工等の後加工を行いやすい点から、不織布が好ましい基材の一つとして挙げられる。不織布の製法としてはスパンボンド法、メルトブロー法、乾式法(サーマルボンド法、レジンボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法)、湿式法等の方法から少なくとも一つの方法を選択し用いることができる。必要に応じて、これらの複数の方法を組み合わせることができる。
【0022】
本発明で用いる通気性基材としてのシートにウコギ科人参エキスを含有(担持)させる方法としては、ウコギ科人参エキスを通気性基材表面にできるだけ均一に形成できる方法であれば特に制限はなく、溶液あるいは分散液として、上記の通気性基材に塗工、含浸またはスプレーなどの方法によって付与し、溶媒や分散媒を乾燥等の方法で除去し、ウコギ科人参エキスを担持させる方法が例示される。溶液あるいは分散液の溶媒としては、ウコギ科人参エキス抽出に用いる各種溶媒などが挙げられる。また、基材の原料となる樹脂や金属などに練り混みなどの手段によって担持させる方法も挙げられる。また、上記の方法以外に湿式抄紙法における内添のように原料繊維をシート化する過程で、ウコギ科人参エキスを内添担持させる方法も挙げられる。
【0023】
ウコギ科人参エキス自体の基材への固着は強固であるが、より定着を強固にする場合、他の成分との併用や着色等により製品の外観を向上させる場合などには、ウコギ科人参エキスによる効果を阻害しない範囲において、少量のバインダー(接着剤)を用いることは好ましい方法の一つである。水性バインダーについて具体例を挙げる。水溶性のものとしては、例えば、ポリビニルアルコールやデンプンなどが挙げられる。また、水分散性のものとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンラテックスなどが挙げられる。
また、必要に応じて、ウコギ科人参エキスの基材への担持をより安定にし、抗菌性、抗ウィルス性の効果をより長時間一定して持続させ、かつ、ウコギ科人参エキス臭を緩和するため、多孔質の粉末(例えば、活性炭やゼオライトの粉末など)を通気性基材中に含有させてもよい。
【0024】
また、これらのウコギ科人参エキスを担持させたシートと他のシートを貼り合わせ等の方法で複合化したものも、平面状の基材として好ましい材料の一つである。
【0025】
本発明で用いる通気性基材の他形状としては立体形状のものがあり、ハニカム状、コルゲート状、プリーツ状のものが例示される。これらの基材を構成するための素材としては、先に挙げたシート状物を加工する他に、通気性に乏しいポリオレフィンやポリエステル等のプラスチックシート、アルミや銅などの金属板、厚紙等であってもよい。
【0026】
ウコギ科人参エキスを立体形状への加工前の段階で含有させる方法の他に、立体形とした後、スプレー等の方法で含有させる方法も好ましい。
【0027】
なお、必要に応じて、本発明の趣旨を逸脱せず、他の性能を付加する目的において、抵アレルゲン、脱臭、より一層の抗菌、防黴、より一層の抗ウィルス、防虫、殺虫、消臭、芳香、感温、保温、畜温、蓄熱、発熱、吸熱、防水、耐水、撥水、疎水、親水、除湿、調湿、吸湿、撥油、親油、油などの吸着、および水や揮発性薬剤などの蒸散または徐放などの各種機能を新たに付加したものでも良い。
【0028】
本発明で用いる通気性基材に、更に、脱臭機能、除塵機能、耐微生物機能、芳香付加機能、マイナスイオン付加機能の少なくとも1つの機能を付加させることも好ましい。
【0029】
本発明のエアフィルターは、空調機、空気清浄機、掃除機、除湿機、乾燥機、加湿機、換気扇、扇風機、熱交換装置等の、機械による強制給排気による空気処理装置に装着使用することで細菌やウィルスの無い、あるいはより少ない環境を与えるなどの好ましい効果が得られる。あるいは、自然給排気のための外気流入口(通気口や窓など)に本発明のエアフィルターを用いてもよい。空気清浄機等の場合、脱臭、除塵等の要求される機能をそれぞれの機能を持ったフィルターの併用によって得てもよい。
【0030】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本実施例に限定されるものではない。
【0031】
なお、次に述べる実施例1〜6においては、ウコギ科人参エキスとして、丸善製薬製の商品名高麗人参エキスパウダーMF(ジンセノサイド類含有量は、このエキスパウダー中の、25質量%であった。)を水に溶かし、10%水溶液として用いた。
【0032】
(実施例1〜6)
通気性基材として、40g/m2のポリエステルスパンボンド不織布を用い、該不織布に上記のウコギ科人参エキス水溶液をスプレー法にて均一塗布し、120℃で乾燥することにより、各実施例のエアフィルターを作製した。なお、エキスとしての含有量としては、4.0g/m2(実施例1)、2.0g/m2(実施例2)、8.0g/m2(実施例3)、12.0g/m2(実施例4)、0.4g/m2(実施例5)、20.0g/m2(実施例6)の6水準とした。
これらのエキスの含有量は、ジンセノサイド類含有量としては、1.0g/m2(実施例1)、0.5g/m2(実施例2)、2.0g/m2(実施例3)、3.0g/m2(実施例4)、0.1g/m2(実施例5)、5.0g/m2(実施例6)である。
【0033】
(比較例1)
実施例で用いたポリエステルスパンボンド不織布に、エキスを塗布せず比較例1のエアフィルターとした。
【0034】
(比較例2)
実施例1で用いたウコギ科人参エキス水溶液に替えて、茶葉から抽出した市販のカテキンエキス(伊藤園社製、商品名テアフラン)を水溶液として使用する点を除いて、実施例1と同様の方法により、比較例2のエアフィルターを作製した。(実施例2と、比較例2のエアフィルター中のエキス含有量は対応しているが、比較例2で用いたエキスにはジンセノサイド類が含まれていない。)
【0035】
以上、実施例1〜6のエアフィルター、比較例1〜2のエアフィルターを下記の性能試験に従って評価し、その結果を表1に示した。なお、下記各試験は、25℃、50%RH(相対湿度)の条件で行なった。ウィルス不活化試験については実施例1のエアフィルターを各実施例の代表とし、比較例2のエアフィルターと対比した。
【0036】
[ウィルス不活性化試験]
実施例1及び比較例2で得たエアフィルターをそれぞれ3cm×3cmの大きさに裁断して検体とし個々に試験した。検体に、インフルエンザウィルス浮遊液を滴下し、室温にて保存し、24時間後のウィルス感染価を測定した。詳細は以下の通りである。
1.試験ウィルス
インフルエンザウィルスA型(H1N1)を使用した。
2.使用細胞
MDCK(NBL−2)細胞 ATCC CCL−34株(大日本製薬社製)を使用した。
3.使用培地
3−1.細胞増殖培地
Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたものを使用した。
3−2.細胞維持培地
Eagle MEM=1000ml、10%炭酸水素ナトリウム水溶液=34ml、L−グルタミン(30g/l)=9.8ml、100×MEM用ビタミン液=30ml、10%−アルブミン=20ml、トリプシン(5mg/ml)=2mlの組成の培地を使用した。
4.ウィルス浮遊菌の調整
4−1.細胞の培養
細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養フラスコ内に単層培養した。
4−2.ウィルスの接種
単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルスを接種した。次に、細胞維持培地を加えて37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。
4−3.ウィルス浮遊液の調製
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000rpm×10分間)し、得られた上澄み液をウイスル浮遊液とした。
5.試料の調製
実施例1及び比較例2で得たエアフィルターをそれぞれ3cm×3cmの大きさに裁断した検体を湿熱滅菌(121℃×15分間)したものを試料とした。
6.試験操作
試料にウィルス浮遊液0.2mlを滴下し、室温にて保存した。また、プラスチックシャーレを対照試料として、同様に試験した。
7.ウィルスの洗い出し
24時間保存した後、試料中のウィルス浮遊液を細胞維持培地2mlで洗い出した。
8.ウィルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、洗い出し液およびその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して洗い出し液1ml当たりのウィルス感染価に換算した。ウィルス接種直後(対照)および24時間保存後(試料)の洗い出し液1ml当たりのTCID50の対数値(logTCID50/ml)を比較し、ウィルス不活性化性能の指標とした。なお、logTCID50/ml<1.5を検出限界とした。
【0037】
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品などの試験方法に準拠して、実施例1〜6及び比較例1〜2で得たエアフィルターより得た各検体の抗菌力試験を行った。試験菌種は、大腸菌および黄色ぶどう球菌を用いた。抗菌力は抗菌活性値を指標とした。
【0038】
【表1】

【0039】
以上より、本発明のエアフィルターは、抗ウィルス性および抗菌性を兼ね備えた多機能のエアフィルターであり、それを空気処理機(空気清浄機など)に用いることなどにより、好ましい環境を提供出来る。また、特に人体の呼吸器等への影響や臭気の問題は無い。
例えば、各実施例のエアフィルターを市販の空気清浄機のフィルターに替えて運転してしばらくしても室内で臭気を感じた者はいなかった。
【0040】
更に補足すれば、本発明のエアフィルターにより得られる抗ウィルス性や抗菌性効果は少なくともエアフィルター上で発現しているので、それを装着した空気処理装置等によりウィルスや細菌について改善された大気が室内に供給される事は明らかである。
【0041】
一方、茶葉抽出エキスは、ウコギ科人参エキス中の含有成分とは構造が相違する3−ヒドロキシフラバン構造を有する成分を含有しているが、茶葉抽出エキスを用いたエアフィルターは、十分な抗菌性を有するものの、抗ウィルス性は不十分なことが確認された。本文中で詳述したウコギ科人参エキス特有の諸成分が極めて有効に作用した結果、当該差異が生じたものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のエアフィルターは、抗ウィルス性および抗菌性を具備しているので、空調機、空気清浄機、掃除機、除湿機、乾燥機、加湿機、換気扇、熱交換装置等の各種空気処理装置のエアフィルターに利用出来る。また、加湿機の加湿エレメント、あるいはマスク、ウェットワイパー、フロアワイパーにも利用出来る可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性基材にウコギ科人参から抽出されたエキス成分が含有されてなることを特徴とするエアフィルター。
【請求項2】
エアフィルター中のジンセノサイド類含有量が、0.1g/m2以上、5.0g/m2以下である請求項1に記載のエアフィルター。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエアフィルターが装着されたことを特徴とする空気処理装置。

【公開番号】特開2007−90286(P2007−90286A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285572(P2005−285572)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】