エアフィルタ及びその製造方法
【課題】 プラスチック製の枠体3を伝って油が濾材2の下流側へ流出することを阻止する。
【解決手段】上流側のウェット層6と下流側のドライ層7とを積層してなる濾材2をインサートとして外壁4及びリブ5を含む枠体3を射出成形する。ドライ層7には撥油加工を施する。ウェット層6の中で、枠体3が貫通する部分8に撥油加工を施し、残りの浸油部10にはビスカスオイル等の油を含浸させる。
【解決手段】上流側のウェット層6と下流側のドライ層7とを積層してなる濾材2をインサートとして外壁4及びリブ5を含む枠体3を射出成形する。ドライ層7には撥油加工を施する。ウェット層6の中で、枠体3が貫通する部分8に撥油加工を施し、残りの浸油部10にはビスカスオイル等の油を含浸させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用内燃機関等のエアフィルタ(エアエレメントとも呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2等に記載されているように、エアフィルタは、折り加工された濾材をインサートとして、この濾材を保持するプラスチック材である枠体が射出成形される。濾材は、油を含浸させた上流側のウェット層と油を含浸させずに撥油加工を施した下流側のドライ層と、を積層した構造となっており、ダストは主にウェット層において捕捉され、カーボン粒子は主にドライ層において効率よく捕捉される。
【特許文献1】特許平10−263348号公報
【特許文献1】特許2002−045624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
油が濾材の下流側へ流出することのないように下流側のドライ層に撥油加工が施されているものの、濾材が枠体と一体にインサート成形されるエアフィルタにあっては、ポリプロピレン等の比較的親油性の高いプラスチック材料からなる枠体が濾材を実質的に貫通するように成形されるので、油が枠体を伝って濾材の下流側表面ににじみ出て、濾材の下流側へ流出するおそれがある。特に、枠体が、濾材の四方を囲う外壁と、この外壁に架け渡されたリブと、を備える構成の場合、リブが比較的空気の流れ易い濾材の中央部に配置されるために、このリブを伝って油が下流側へ流出するおそれがある。本発明は、このように独自に知見した新規な技術的課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施されたエアフィルタであって、上記第1フィルタ層が、油が含浸される浸油部と、上記枠体が貫通する部分に撥油加工が施される撥油加工部と、を有することを特徴としている。
【0005】
第2の発明は、上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施され、かつ、上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有するエアフィルタの製造方法であって、上記リブは、下流側の第2フィルタ層上に金型を配置した状態で、上流側の第1フィルタ層上にのみ成形されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、枠体を伝って油が濾材の下流へ流出することを有効に阻止し得る新規なエアフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜5は、本発明の第1実施例に係るエアフィルタ1を示している。このエアフィルタ1は、多数回ジグザグ状に折り曲げられた濾材2と、この濾材2を保持する枠体3と、枠体3の周囲に設けられたパッキン30と、により構成されていて、自動車用内燃機関におけるエアクリーナのボディとカバーとの間に挟み込まれるようにして保持され、例えば図4の矢印Aで示す方向に空気が通過する。
【0008】
枠体3は、例えば、ポリプロピレン(PP)にタルクを含有させた合成樹脂製のプラスチック材であって、上記のパッキン30とともに濾材2をインサート(ワーク)として射出成形される。枠体3は、濾材2の四方を囲う矩形状の外壁4と、この外壁に架け渡されるリブ5と、から構成されている。外壁4は、図5に示すように、濾材2の折り方向(図4や図5の左右方向)両端の一対の端壁4Aと、濾材の折り方向に沿う一対の側壁4Bと、により構成されている。リブ5は、図5に示すように一対の端壁4Aに架け渡されており、濾材2の折り曲げ部分の間隔Pを適正に確保するように、濾材2の折り方向に沿って側壁4Bの幅方向中央に配置されている。また、この第1実施例では、リブ5が図3に示すように実質的に濾材2を積層方向Aに貫通・横断して形成されている。
【0009】
なお、この実施例のエアフィルタ1では、枠体3の形状を矩形状のもので説明したが、これに限られるものではなく、多面体状、円形状又はドーナツ状等に形成することができる。
【0010】
図1及び図2を参照して、濾材2は、上流側の第1フィルタ層としてのウェット層6と、下流側の第2フィルタ層としてのドライ層7と、を積層した2層構造をなしている。これらのウェット層6およびドライ層7は、いずれも濾紙からなり、それぞれ抄紙した2枚の紙の層を、漉き合わせ法によって1枚に接合したものである。ドライ層7には撥油加工が施される。例えば、撥油剤となるフッ素樹脂を溶かし込んだフェノール樹脂をキスロール加工等によりドライ層7の下流側の表面に塗布することにより、このドライ層7の表面からウェット層6に向かってほぼドライ層7の厚さ相当の深さまで撥油剤がフェノール樹脂とともに含浸される。
【0011】
そして、ウェット層6の中で、枠体3の外壁4が貫通する部分である第1撥油加工部8には、上記のドライ層7と同様に撥油加工が施されており、同様に、枠体3のリブ5が貫通する第2撥油加工部9にも撥油加工が施されている。これらの第1,第2撥油加工部8,9を除くウェット層6の大部分の浸油部10には、ビスカスオイル等の油が含浸される。例えば図6に示すように、折り加工機11により折り加工する前の濾材2Aに対し、その幅方向両縁部8Aと幅方向中央部9Aに対して、ローラ12で撥油剤となるフッ素樹脂を溶かし込んだフェノール樹脂が塗布される。これにより、折り加工後の濾材2においては、外壁4が貫通する幅方向両縁部に第1撥油加工部8が設けられ、リブ5が貫通する幅方向中央部に第2撥油加工部9が設けられる。
【0012】
浸油部10に対する油の含浸は、濾材2を折り加工した後に、浸油部10の表面にスプレー等により油を塗布することによって行われる。この際、撥油加工部8,9や枠体3には油が付着することのないようにマスキング処理が行われる。
【0013】
図7に示す比較例では、ウェット層6Hに撥油加工部が設けられておらず、枠体3が貫通する部分を含めてウェット層6H全体がビスカスオイル等の油が含浸された浸油部となっている。このような比較例では、枠体3のない部分では、矢印Y1に示すように撥油加工が施された下流側のドライ層7により油の下流への流出が阻止されるものの、枠体3の近傍では、矢印Y2に示すように、撥油加工されたドライ層7に比して親油性の高い枠体3を伝って油が濾材2の下流へ流出することになる。
【0014】
これに対して本実施例では、図1及び図2に示すように、ウェット層6の中で枠体3が貫通する部分である第1,第2撥油加工部8,9に撥油加工が施されており、つまり第1,第2撥油加工部8,9によって枠体3が浸油部10から遮断・隔離されているので、上記の比較例のように枠体3を伝って油が濾材2の下流に流出することがなく、エンジン側へ不用意に油が流出することを確実に防止することができる。加えて、枠体3が油から遮断されるため、油による枠体3の膨潤も抑制され、この膨潤によるエアフィルタ1の変形をも抑制することができる。
【0015】
なお、外壁4のうちで、濾材2の折り方向両側の端壁4Aに関しては、濾材2と幅広い領域で接合・一体化されているため、この端壁4Aを伝って油が下流側へ流出する可能性が低く、上記の撥油加工を省略しても良い。
【0016】
図8は、上記の比較例と本実施例について、エアフィルタをカーボンで一定量目詰まりさせた後に空気量を上げていき、オイルが下流側へ流出したときの空気量を測定することにより、オイルの濾材下流側への流れ易さを測定した結果を示している。同図に示すように、本実施例では、比較例に比して、オイルが下流側へ流出したときの空気量が大きく、オイルの下流側への流出が抑制されていることが確認された。
【0017】
図9〜11は、本発明の第2実施例に係るエアフィルタ21を示している。なお、上記第1実施例と同一構成要素には同じ参照符号を付し、重複する説明を適宜省略する。第1実施例と同様、エアフィルタ21は、ウェット層6とドライ層7からなる濾材2と、この濾材2を保持する枠体3とにより構成され、ウェット層6の中で枠体3の外壁4が貫通する第1撥油加工部8には撥油加工が施される。そして第2実施例では、枠体3のリブ5Aが濾材2を積層方向に貫通・横断しておらず、上流側のウェット層6上にのみ設けられている。インサート成形の際には、リブ5Aが下流側のドライ層7を貫通することのないように、下流側のドライ層7上に、濾材2表面のジグザグ形状に応じた櫛形状の金型22を配置し、この金型22により下流側のドライ層7の表面を塞いだ状態で射出成形が行われる。
【0018】
このような第2実施例によれば、リブ5Aが濾材2を積層方向に貫通・横断していないので、リブ5Aを伝って油が濾材2の下流側へ流出することがなく、第1実施例と同様、濾材2の下流側への油の流出を有効に阻止することができる。また、図11に示すようにリブ5Aがジグザグ形状をなす濾材2の上流側表面上に充填される形となっているので、第1実施例と同様、濾材2の折り曲げ部分の間隔Pが適正に確保され、かつ、リブ5Aが上流側のウェット層6上のみに設けられているので、第1実施例に比して材料費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係るエアフィルタを示す図5のI−I線に沿う断面対応図。
【図2】図5のII−II線に沿う断面対応図。
【図3】図5のIII−III線に沿う断面対応図。
【図4】図5のIV−IV線に沿う断面対応図。
【図5】上記第1実施例のエアフィルタを簡略的に示す斜視図。
【図6】上記第1実施例のエアフィルタの製造手順を示す説明図。
【図7】比較例に係るエアフィルタを示す断面図。
【図8】比較例と実施例とのオイル流出性の測定結果を示すグラフ。
【図9】本発明の第2実施例に係るエアフィルタを上流側から見た斜視図。
【図10】上記第2実施例に係るエアフィルタを下流側から見た斜視図。
【図11】図9のXI−XI線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0020】
1…エアフィルタ
2…濾材
3…枠体
4…外壁
5…リブ
6…ウェット層(第1フィルタ層)
7…ドライ層(第2フィルタ層)
8…第1撥油加工部
9…第2撥油加工部
10…浸油部
21…エアフィルタ
5A…リブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用内燃機関等のエアフィルタ(エアエレメントとも呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2等に記載されているように、エアフィルタは、折り加工された濾材をインサートとして、この濾材を保持するプラスチック材である枠体が射出成形される。濾材は、油を含浸させた上流側のウェット層と油を含浸させずに撥油加工を施した下流側のドライ層と、を積層した構造となっており、ダストは主にウェット層において捕捉され、カーボン粒子は主にドライ層において効率よく捕捉される。
【特許文献1】特許平10−263348号公報
【特許文献1】特許2002−045624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
油が濾材の下流側へ流出することのないように下流側のドライ層に撥油加工が施されているものの、濾材が枠体と一体にインサート成形されるエアフィルタにあっては、ポリプロピレン等の比較的親油性の高いプラスチック材料からなる枠体が濾材を実質的に貫通するように成形されるので、油が枠体を伝って濾材の下流側表面ににじみ出て、濾材の下流側へ流出するおそれがある。特に、枠体が、濾材の四方を囲う外壁と、この外壁に架け渡されたリブと、を備える構成の場合、リブが比較的空気の流れ易い濾材の中央部に配置されるために、このリブを伝って油が下流側へ流出するおそれがある。本発明は、このように独自に知見した新規な技術的課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施されたエアフィルタであって、上記第1フィルタ層が、油が含浸される浸油部と、上記枠体が貫通する部分に撥油加工が施される撥油加工部と、を有することを特徴としている。
【0005】
第2の発明は、上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施され、かつ、上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有するエアフィルタの製造方法であって、上記リブは、下流側の第2フィルタ層上に金型を配置した状態で、上流側の第1フィルタ層上にのみ成形されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、枠体を伝って油が濾材の下流へ流出することを有効に阻止し得る新規なエアフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜5は、本発明の第1実施例に係るエアフィルタ1を示している。このエアフィルタ1は、多数回ジグザグ状に折り曲げられた濾材2と、この濾材2を保持する枠体3と、枠体3の周囲に設けられたパッキン30と、により構成されていて、自動車用内燃機関におけるエアクリーナのボディとカバーとの間に挟み込まれるようにして保持され、例えば図4の矢印Aで示す方向に空気が通過する。
【0008】
枠体3は、例えば、ポリプロピレン(PP)にタルクを含有させた合成樹脂製のプラスチック材であって、上記のパッキン30とともに濾材2をインサート(ワーク)として射出成形される。枠体3は、濾材2の四方を囲う矩形状の外壁4と、この外壁に架け渡されるリブ5と、から構成されている。外壁4は、図5に示すように、濾材2の折り方向(図4や図5の左右方向)両端の一対の端壁4Aと、濾材の折り方向に沿う一対の側壁4Bと、により構成されている。リブ5は、図5に示すように一対の端壁4Aに架け渡されており、濾材2の折り曲げ部分の間隔Pを適正に確保するように、濾材2の折り方向に沿って側壁4Bの幅方向中央に配置されている。また、この第1実施例では、リブ5が図3に示すように実質的に濾材2を積層方向Aに貫通・横断して形成されている。
【0009】
なお、この実施例のエアフィルタ1では、枠体3の形状を矩形状のもので説明したが、これに限られるものではなく、多面体状、円形状又はドーナツ状等に形成することができる。
【0010】
図1及び図2を参照して、濾材2は、上流側の第1フィルタ層としてのウェット層6と、下流側の第2フィルタ層としてのドライ層7と、を積層した2層構造をなしている。これらのウェット層6およびドライ層7は、いずれも濾紙からなり、それぞれ抄紙した2枚の紙の層を、漉き合わせ法によって1枚に接合したものである。ドライ層7には撥油加工が施される。例えば、撥油剤となるフッ素樹脂を溶かし込んだフェノール樹脂をキスロール加工等によりドライ層7の下流側の表面に塗布することにより、このドライ層7の表面からウェット層6に向かってほぼドライ層7の厚さ相当の深さまで撥油剤がフェノール樹脂とともに含浸される。
【0011】
そして、ウェット層6の中で、枠体3の外壁4が貫通する部分である第1撥油加工部8には、上記のドライ層7と同様に撥油加工が施されており、同様に、枠体3のリブ5が貫通する第2撥油加工部9にも撥油加工が施されている。これらの第1,第2撥油加工部8,9を除くウェット層6の大部分の浸油部10には、ビスカスオイル等の油が含浸される。例えば図6に示すように、折り加工機11により折り加工する前の濾材2Aに対し、その幅方向両縁部8Aと幅方向中央部9Aに対して、ローラ12で撥油剤となるフッ素樹脂を溶かし込んだフェノール樹脂が塗布される。これにより、折り加工後の濾材2においては、外壁4が貫通する幅方向両縁部に第1撥油加工部8が設けられ、リブ5が貫通する幅方向中央部に第2撥油加工部9が設けられる。
【0012】
浸油部10に対する油の含浸は、濾材2を折り加工した後に、浸油部10の表面にスプレー等により油を塗布することによって行われる。この際、撥油加工部8,9や枠体3には油が付着することのないようにマスキング処理が行われる。
【0013】
図7に示す比較例では、ウェット層6Hに撥油加工部が設けられておらず、枠体3が貫通する部分を含めてウェット層6H全体がビスカスオイル等の油が含浸された浸油部となっている。このような比較例では、枠体3のない部分では、矢印Y1に示すように撥油加工が施された下流側のドライ層7により油の下流への流出が阻止されるものの、枠体3の近傍では、矢印Y2に示すように、撥油加工されたドライ層7に比して親油性の高い枠体3を伝って油が濾材2の下流へ流出することになる。
【0014】
これに対して本実施例では、図1及び図2に示すように、ウェット層6の中で枠体3が貫通する部分である第1,第2撥油加工部8,9に撥油加工が施されており、つまり第1,第2撥油加工部8,9によって枠体3が浸油部10から遮断・隔離されているので、上記の比較例のように枠体3を伝って油が濾材2の下流に流出することがなく、エンジン側へ不用意に油が流出することを確実に防止することができる。加えて、枠体3が油から遮断されるため、油による枠体3の膨潤も抑制され、この膨潤によるエアフィルタ1の変形をも抑制することができる。
【0015】
なお、外壁4のうちで、濾材2の折り方向両側の端壁4Aに関しては、濾材2と幅広い領域で接合・一体化されているため、この端壁4Aを伝って油が下流側へ流出する可能性が低く、上記の撥油加工を省略しても良い。
【0016】
図8は、上記の比較例と本実施例について、エアフィルタをカーボンで一定量目詰まりさせた後に空気量を上げていき、オイルが下流側へ流出したときの空気量を測定することにより、オイルの濾材下流側への流れ易さを測定した結果を示している。同図に示すように、本実施例では、比較例に比して、オイルが下流側へ流出したときの空気量が大きく、オイルの下流側への流出が抑制されていることが確認された。
【0017】
図9〜11は、本発明の第2実施例に係るエアフィルタ21を示している。なお、上記第1実施例と同一構成要素には同じ参照符号を付し、重複する説明を適宜省略する。第1実施例と同様、エアフィルタ21は、ウェット層6とドライ層7からなる濾材2と、この濾材2を保持する枠体3とにより構成され、ウェット層6の中で枠体3の外壁4が貫通する第1撥油加工部8には撥油加工が施される。そして第2実施例では、枠体3のリブ5Aが濾材2を積層方向に貫通・横断しておらず、上流側のウェット層6上にのみ設けられている。インサート成形の際には、リブ5Aが下流側のドライ層7を貫通することのないように、下流側のドライ層7上に、濾材2表面のジグザグ形状に応じた櫛形状の金型22を配置し、この金型22により下流側のドライ層7の表面を塞いだ状態で射出成形が行われる。
【0018】
このような第2実施例によれば、リブ5Aが濾材2を積層方向に貫通・横断していないので、リブ5Aを伝って油が濾材2の下流側へ流出することがなく、第1実施例と同様、濾材2の下流側への油の流出を有効に阻止することができる。また、図11に示すようにリブ5Aがジグザグ形状をなす濾材2の上流側表面上に充填される形となっているので、第1実施例と同様、濾材2の折り曲げ部分の間隔Pが適正に確保され、かつ、リブ5Aが上流側のウェット層6上のみに設けられているので、第1実施例に比して材料費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係るエアフィルタを示す図5のI−I線に沿う断面対応図。
【図2】図5のII−II線に沿う断面対応図。
【図3】図5のIII−III線に沿う断面対応図。
【図4】図5のIV−IV線に沿う断面対応図。
【図5】上記第1実施例のエアフィルタを簡略的に示す斜視図。
【図6】上記第1実施例のエアフィルタの製造手順を示す説明図。
【図7】比較例に係るエアフィルタを示す断面図。
【図8】比較例と実施例とのオイル流出性の測定結果を示すグラフ。
【図9】本発明の第2実施例に係るエアフィルタを上流側から見た斜視図。
【図10】上記第2実施例に係るエアフィルタを下流側から見た斜視図。
【図11】図9のXI−XI線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0020】
1…エアフィルタ
2…濾材
3…枠体
4…外壁
5…リブ
6…ウェット層(第1フィルタ層)
7…ドライ層(第2フィルタ層)
8…第1撥油加工部
9…第2撥油加工部
10…浸油部
21…エアフィルタ
5A…リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施されたエアフィルタであって、
上記第1フィルタ層が、油が含浸される浸油部と、上記枠体が貫通する部分に撥油加工が施される撥油加工部と、を有することを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有し、
このリブは、上記濾材の第1フィルタ層上にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施され、かつ、上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有するエアフィルタの製造方法であって、
上記リブは、下流側の第2フィルタ層上に金型を配置した状態で、上流側の第1フィルタ層上にのみ成形されることを特徴とするエアフィルタの製造方法。
【請求項1】
上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施されたエアフィルタであって、
上記第1フィルタ層が、油が含浸される浸油部と、上記枠体が貫通する部分に撥油加工が施される撥油加工部と、を有することを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有し、
このリブは、上記濾材の第1フィルタ層上にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
上流側の第1フィルタ層と下流側の第2フィルタ層とを積層してなる濾材と、この濾材をインサートとして成形される枠体と、を有し、上記第2フィルタ層に撥油加工が施され、かつ、上記枠体が、上記濾材を囲う外壁と、この外壁に架け渡されるリブと、を有するエアフィルタの製造方法であって、
上記リブは、下流側の第2フィルタ層上に金型を配置した状態で、上流側の第1フィルタ層上にのみ成形されることを特徴とするエアフィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−21276(P2007−21276A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202607(P2005−202607)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】
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