説明

エアフィルタ

【課題】フィルタ交換の作業性を向上させることができるエアフィルタを提供する。
【解決手段】本エアフィルタ1は、車両空調装置に用いられるエアフィルタであって、送風空気の通路を形成するケース3に挿入されるひだ折り状のろ材2と、前記ろ材の前記ケースへの挿入側のひだ折り端部2aを窄めるように拘束可能な挿入用拘束部11、及び該挿入用拘束部による前記ひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための挿入用操作部12を有する挿入用狭窄機構10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタに関し、さらに詳しくは、フィルタ交換の作業性を向上させることができるエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両空調装置に用いられるエアフィルタとして、車体側に設置されて送風空気の通路を形成するケースに対して挿脱されるものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
上記特許文献1及び2には、ひだ折り状のろ材部を枠部材に支持してなるエアフィルタが開示されている。
また、他の従来のエアフィルタとして、例えば、図10に示すように、枠部材を用いずに、ひだ折り状のろ材102のみからなるエアフィルタ101(「端板レスエアフィルタ」とも呼ばれる。)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−14704号公報
【特許文献2】特開平9−290630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ケースは、グローブボックスの奥方に設置されていたり、ダッシュボードの下部奥方に設置されていたりすることがある。この場合、フィルタ交換の際に、エアフィルタを比較的狭い空間を通してケースに対して挿脱する必要があり、その交換作業に時間がかかっていた。また作業者の手が汚れたり傷ついたりしてしまうことがある。
特に、上記エアフィルタ101の場合、ケース103にエアフィルタ101を挿入する際に、ろ材102のひだ折り端部102a,102bが拡がり、その横幅Aがケース103の挿入口103aの横幅Bより大きくなってしまい、極めて挿入し難いものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、フィルタ交換の作業性を向上させることができるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.車両空調装置に用いられるエアフィルタであって、
送風空気の通路を形成するケースに挿入されるひだ折り状のろ材と、
前記ろ材の前記ケースへの挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な挿入用拘束部、及び該挿入用拘束部による前記ひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための挿入用操作部を有する挿入用狭窄機構と、を備えることを特徴とするエアフィルタ。
2.前記ろ材の前記ケースへの反挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な取出用拘束部、及び該取出用拘束部による前記ひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための取出用操作部を有する取出用狭窄機構をさらに備える上記1.記載のエアフィルタ。
3.前記挿入用狭窄機構は、前記挿入用操作部に設けられ且つ該挿入用操作部が挿入用であることを表示する挿入用表示部をさらに有しており、前記取出用狭窄機構は、前記取出用操作部に設けられ且つ該取出用操作部が取出用であることを表示する取出用表示部をさらに有している上記2.記載のエアフィルタ。
4.前記挿入用拘束部は、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)より短い長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに仮止めされており、前記挿入用操作部は、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記挿入用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている上記1.記載のエアフィルタ。
5.前記取出用拘束部は、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)と同じ長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに取り付けられており、前記取出用操作部は、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記取出用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている上記2.記載のエアフィルタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエアフィルタによると、フィルタ交換の際に、挿入用拘束部によってろ材の挿入側のひだ折り端部が窄まるように拘束され、その拘束状態のエアフィルタがケースに挿入される。そして、挿入用操作部の操作によって挿入用拘束部によるひだ折り端部の拘束が解除されてケース内でひだ折り端部が広げられる。このように、挿入用狭窄機構によってろ材の挿入側のひだ折り端部を窄め得るようにしたので、エアフィルタを迅速且つ容易にケースに取り付けることができ、また作業者の手が汚れたり傷ついたりすることを抑制できる。さらに、ケースが他の部品の奥方に設置されている場合であっても、エアフィルタを比較的狭い空間を円滑に通してケースに取り付けることができる。その結果、エアフィルタの取付け作業性ひいてはフィルタ交換の作業性を向上させることができる。
また、取出用狭窄機構をさらに備える場合、フィルタ交換の際に、取出用操作部の操作によって取出用拘束部によりろ材の反挿入側のひだ折り端部が窄まるように拘束され、その拘束状態のエアフィルタがケースから取り出される。このように、取出用狭窄機構によってろ材の反挿入側のひだ折り端部を窄め得るようにしたので、エアフィルタを迅速且つ容易にケースから取り出すことができ、また作業者の手が汚れたり傷ついたりすることを抑制できる。さらに、ケースが他の部品の奥方に設置されている場合であっても、エアフィルタを比較的狭い空間を円滑に通してケースから取り出すことができる。その結果、エアフィルタの取出し作業性ひいてはフィルタ交換の作業性を向上させることができる。
また、前記挿入用狭窄機構が、挿入用表示部をさらに有しており、前記取出用狭窄機構が、取出用表示部をさらに有している場合は、挿入用表示部及び取出用表示部により作業者が挿入用操作部及び取出用操作部をより確実に識別でき、誤操作を防止することができる。
また、前記挿入用拘束部が、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)より短い長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに仮止めされており、前記挿入用操作部が、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記挿入用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている場合は、挿入用操作部の引っ張り操作によって、挿入用拘束部の長尺方向の中央部が反挿入側に向かって引っ張られると共に、挿入用拘束部の長尺方向の両端部がひだの挿通穴を介して中央に向かって引き寄せられる。これにより、挿入用拘束部の仮止め状態の両端部が外端側のひだから外れ、ケース内でひだ折り端部が自身の弾性でより円滑且つ均等に広げられる。従って、エアフィルタの取付け作業性ひいてはフィルタ交換の作業性をより向上させることができる。
さらに、前記取出用拘束部が、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)と同じ長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに取り付けられており、前記取出用操作部が、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記取出用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている場合は、取出用操作部の引っ張り操作によって、取出用拘束部の長尺方向の中央部が反挿入側に向かって引っ張られると共に、取出用拘束部の長尺方向の両端部がひだの挿通穴を介して中央に向かって引き寄せられる。これにより、取出用拘束部によりひだ折り端部がより確実且つ均等に窄められる。従って、エアフィルタの取出し作業性ひいてはフィルタ交換の作業性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.エアフィルタ
本実施形態1.に係るエアフィルタは、車両空調装置に用いられるエアフィルタであって、以下に述べるろ材及び挿入用狭窄機構を備える。このエアフィルタは、例えば、後述する取出用狭窄機構をさらに備えることができる。
【0009】
上記「ろ材」は、送風空気の通路を形成するケースに挿入されるひだ折り状である限り、その構造、平面形状、材質等は特に問わない。このろ材としては、例えば、不織布製、織物製、紙製等を挙げることができる。この不織布を構成する繊維材質としては、例えば、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0010】
尚、上記「ケース」は、車両空調装置を構成する限り、その構造、設置場所等は特に問わない。このケースは、例えば、ろ材の挿入口が形成された箱状のケース本体と、このケース本体の挿入口の側縁部に遥動自在に支持され且つ挿入口を開閉する蓋体と、を備えることができる。このケース本体の底壁の内面及び蓋体の裏面には、弾性を有するシール材が敷設されていることが好ましい。ろ材の挿入側及び反挿入側のひだ折り端部の気密性を高め得るためである。
【0011】
上記「挿入用狭窄機構」は、上記ろ材のケースへの挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な挿入用拘束部、及び挿入用拘束部によるひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための挿入用操作部を有する限り、その構造、狭窄形態、タイミング等は特に問わない。
上記挿入用拘束部の形状としては、例えば、ひも状(テープ又はフィルム状も含む。)、袋状、枠状、異形状等を挙げることができる。
上記挿入用操作部は、通常、上記挿入用拘束部に接続されている。この挿入用操作部の形状としては、例えば、ひも状(テープ又はフィルム状も含む。)、棒状、異形状等を挙げることができる。
【0012】
上記挿入用狭窄機構としては、例えば、上記挿入用拘束部が、非拘束状態のひだ折り端部の横幅(W)より短い長さを有するひも状に形成されており、且つ、ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部がひだ折り端部の外端側のひだに仮止めされており、上記挿入用操作部が、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記挿入用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている形態等を挙げることができる。
上記挿入用拘束部の長さは、非拘束状態のひだ折り端部の横幅(W)の30〜90%(特に50〜60%)の値に設定されていることが好ましい。ひだ折り端部を適当な大きさに窄ませ得ると共に、拘束解除時にひだ折り端部を円滑且つ均等に広げ得るためである。
上記挿通孔は、ひだ折り端部のそれぞれ全てのひだに形成されていることが好ましい。拘束解除時にひだ折り端部をより円滑に広げ得るためである。
上記挿入用拘束部の仮止め形態としては、例えば、熱溶着、接着(接着剤、テープ等による接着等)、係止等を挙げることができる。
なお、上記「ひだ折り端部の外端側のひだ」とは、ひだ折り端部の最外端のひだの他に、最外端のひだの内側近傍のひだも含むことを意図する。
【0013】
上記「取出用狭窄機構」は、上記ろ材のケースへの反挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な取出用拘束部、及び取出用拘束部によるひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための取出用操作部を有する限り、その構造、狭窄形態、タイミング等は特に問わない。
上記取出用拘束部の形状としては、例えば、ひも状(テープ又はフィルム状も含む。)、袋状、枠状、異形状等を挙げることができる。
上記取出用操作部は、通常、上記取出用拘束部に接続されている。この取出用操作部の形状としては、例えば、ひも状(テープ又はフィルム状も含む。)、棒状、異形状等を挙げることができる。
【0014】
上記取出用狭窄機構としては、例えば、上記取出用拘束部が、非拘束状態のひだ折り端部の横幅(W)と同じ長さを有するひも状に形成されており、且つ、ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部がひだ折り端部の外端側のひだに取り付けられており、取出用操作部が、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が取出用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている形態等を挙げることができる。
上記挿通孔は、ひだ折り端部のそれぞれ全てのひだに形成されていることが好ましい。拘束時にひだ折り端部をより確実且つ均等に窄め得るためである。
上記取出用拘束部の取り付け形態としては、例えば、熱溶着、接着(接着剤、テープ等による接着等)、係止等を挙げることができる。
なお、上記「ひだ折り端部の横幅(W)と同じ長さ」とは、ひだ折り端部の横幅(W)と略同じ長さであることを意図する。また、上記「ひだ折り端部の外端側のひだ」とは、ひだ折り端部の最外端のひだの他に、最外端のひだの内側近傍のひだも含むことを意図する。
【0015】
ここで、例えば、上記エアフィルタが上述の挿入用狭窄機構及び取出用狭窄機構を備える場合、上記挿入用狭窄機構は、挿入用操作部に設けられ且つ挿入用操作部が挿入用であることを表示する挿入用表示部をさらに有しており、上記取出用狭窄機構は、取出用操作部に設けられ且つ取出用操作部が取出用であることを表示する取出用表示部をさらに有していることができる。
上記挿入用表示部及び取出用表示部としては、例えば、(1)操作部の一端側に設けられたタグである形態、(2)操作部の表面側に形成された色彩、模様、形状等のうちの1種又は2種以上の組み合わせである形態等を挙げることができる。これらのうち、上記狭窄機構をより簡易な構造とすることができるといった観点から、上記(1)形態であることが好ましい。
【0016】
2.エアフィルタの取付方法
本実施形態2.に係るエアフィルタの取付方法としては、例えば、上記実施形態1.のエアフィルタの取付方法であって、上記挿入用狭窄機構の挿入用拘束部によってろ材の挿入側のひだ折り端部が窄まるように拘束されたエアフィルタを上記ケースに挿入し、その後、上記挿入用狭窄機構の挿入用操作部を操作して挿入用拘束部によるひだ折り端部の拘束を解除することを特徴とする形態等を挙げることができる。
【0017】
3.エアフィルタの取出方法
本実施形態3.に係るエアフィルタの取出方法としては、例えば、上記実施形態1.のエアフィルタの取出方法であって、上記取出用狭窄機構の取出用操作部を操作して取出用拘束部によりろ材の反挿入側のひだ折り端部を窄まるように拘束させ、その拘束状態のエアフィルタをケースから取り出すことを特徴とする形態等を挙げることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)エアフィルタの構成
本実施例に係るエアフィルタ1は、図1に示すように、不織布製でひだ折り状のろ材2、挿入用狭窄機構10及び取出用狭窄機構20を備えている。このろ材2は、グローブボックス(図示せず)の奥方に設置されて送風空気の通路を形成するケース3に挿入され収容され得る大きさに形成されている。このケース3は、ろ材2の挿入口4aが形成された箱状のケース本体4と、このケース本体4の挿入口4aの側縁部に遥動自在に支持され且つ挿入口4aを開閉する蓋体5とを備えている。このケース本体4の底壁の内面及び蓋体5の裏面には、スポンジ製で平板状のシール材6,6が敷設されている。なお、ケース本体4の上下面には、送風空気の通気孔(図示せず)が形成されている。
【0019】
上記挿入用狭窄機構10は、ろ材2のケース3への挿入側のひだ折り端部2aを窄めるように拘束可能な挿入用拘束部11、及びこの挿入用拘束部11によるひだ折り端部2aの拘束及び非拘束を切り替えるための挿入用操作部12を有している。
【0020】
上記挿入用拘束部11は、非拘束状態のひだ折り端部2aの横幅W(図2参照)の約50%の長さを有するひも状に形成されている。また、この挿入用拘束部11は、図3に示すように、ひだ折り端部2aのそれぞれのひだの高さ方向の中央部に形成された挿通孔13に挿通され、その両端部がひだ折り端部2aの最外端のそれぞれのひだに熱溶着部14により仮止めされている。したがって、挿入用拘束部11によりろ材2のひだ折り端部2aが予め拘束された状態とされている。また、熱溶着部14による仮止め強度は、挿入用操作部12の引っ張り操作により挿入用拘束部11の両端部が最外端のひだから外れるように設定されている。
【0021】
上記挿入用操作部12は、図1に示すように、ひも状に形成されており、その一端部が挿入用拘束部11の長尺方向の中央部に接続されており、その他端部がろ材2の反挿入側の外方まで延びている。この挿入用操作部12の他端側には、この操作部12が挿入用であることを表示する記号「IN」が記載されたタグ15(本発明に係る「挿入用表示部」として例示する。)が取り付けられている。
【0022】
上記取出用狭窄機構20は、ろ材2のケース3への反挿入側のひだ折り端部2bを窄めるように拘束可能な取出用拘束部21、及びこの取出用拘束部21によるひだ折り端部2bの拘束及び非拘束を切り替えるための取出用操作部22を有している。
【0023】
上記取出用拘束部21は、非拘束状態のひだ折り端部2bの横幅W(図2参照)と略同じ長さを有するひも状に形成されている。この取出用拘束部21は、図4に示すように、ひだ折り端部2bのそれぞれのひだの高さ方向の中央部に形成された挿通孔23に挿通され、その両端部がひだ折り端部2bの最外端のそれぞれのひだに熱溶着部24により取り付けられている。したがって、取出用拘束部21によりろ材2のひだ折り端部2bが予め拘束されていない状態とされている。また、熱溶着部24による取り付け強度は、取出用操作部22の引っ張り操作により取出用拘束部21の両端部が最外端のひだから外れないように設定されている。
【0024】
上記取出用操作部22は、図1に示すように、ひも状に形成されており、その一端部が取出用拘束部21の長尺方向の中央部に接続されており、その他端部がろ材2の反挿入側の外方に延びている。この挿入用操作部22の他端側には、この操作部22が取出用であることを表示する記号「OUT」が記載されたタグ25(本発明に係る「取出用表示部」として例示する。)が取り付けられている。
【0025】
(2)エアフィルタの交換作用
次に、上記構成のエアフィルタ1の交換作用について説明する。
先ず、ケース3にエアフィルタ1を取り付ける際には、挿入用拘束部11によりろ材2のひだ折り端部2aが拘束され、且つ、取出用拘束部21によりろ材2のひだ折り端部2bが拘束されていないエアフィルタ1(図1参照)を用意する。次に、図5に示すように、そのエアフィルタ1を、ろ材2のひだ折り端部2aを先端側としてグローブボックス内の比較的狭い空間を通してケース3内に挿入する。
【0026】
次いで、図6に示すように、ろ材2のひだ折り端部2aがケース本体4の底壁のシール材6に当接したら、タグ15の付いた挿入用操作部12の一端側を反挿入側に向かって引っ張る。すると、挿入用操作部12に連なる挿入用拘束部11の長尺方向の中央部が反挿入側に向かって引っ張られると共に、挿入用拘束部11の長尺方向の両端部が各ひだの挿通穴13を介して中央に向かって引き寄せられる。これにより、仮止め状態の挿入用拘束部11の両端部がひだ折り端部2aの最外端のひだから外れ、挿入用拘束部11によるひだ折り端部2aの拘束が解除され、ケース3内でろ材2のひだ折り端部2aが自身の弾性で広げられる。その後、挿入用操作部12及びこれに連なる挿入用拘束部11をケース3の外方に取り出してから、蓋体5を操作してケース本体4の挿入口4aを閉めると、ろ材2の両ひだ折り端部2a,2bがシール材6,6に圧接され、ケース3にエアフィルタ1が取り付けられることとなる。
【0027】
次に、ケース3からエアフィルタ1を取り出す際には、図7に示すように、蓋体5を操作してケース本体4の挿入口4aを開け、タグ25の付いた取出用操作部22の一端側を反挿入側に向かって引っ張る。すると、取出用操作部22に連なる取出用拘束部21の長尺方向の中央部が反挿入側に向かって引っ張られると共に、取出用拘束部21の長尺方向の両端部が各ひだの挿通穴23を介して中央に向かって引き寄せらる。これにより、取出用拘束部21によりろ材2のひだ折り端部2bが窄まるように拘束される。そして、その拘束状態のひだ折り端部2bを先端側として比較的狭い空間を通してケース3からエアフィルタ1が取り出されることとなる。
【0028】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例では、ろ材2に挿入用狭窄機構10を設け、フィルタ交換の際に、挿入用狭窄機構10によってろ材2の挿入側のひだ折り端部2aを窄めてケース3に取り付けるようにしたので、エアフィルタ1を迅速且つ容易にケース3に取り付けることができ、また作業者の手が汚れたり傷ついたりすることを抑制できる。さらに、ケース3が他の部品の奥方に設置されている場合であっても、エアフィルタ1を比較的狭い空間を円滑に通してケース3に取り付けることができる。その結果、エアフィルタ1の取付け作業性ひいてはフィルタ交換の作業性を向上させることができる。
【0029】
また、本実施例では、ろ材2に取出用狭窄機構20を設け、フィルタ交換の際に、取出用狭窄機構20によってろ材2の反挿入側のひだ折り端部2bを窄めてケース3から取り出すようにしたので、エアフィルタ1を迅速且つ容易にケース3から取り出すことができ、また作業者の手が汚れたり傷ついたりすることを抑制できる。さらに、ケース3が他の部品の奥方に設置されている場合であっても、エアフィルタ1を比較的狭い空間を円滑に通してケース3から取り出すことができる。その結果、エアフィルタ1の取出し作業性ひいてはフィルタ交換の作業性を向上させることができる。
【0030】
また、本実施例では、挿入用操作部12の一端側に挿入用であることを表示するタグ15を設け、取出用操作部22の一端側に取出用であることを表示するタグ25を設けたので、両タグ15,25により作業者が挿入用操作部12及び取出用操作部22をより確実に識別でき、それら誤操作を防止することができる。
【0031】
また、本実施例では、挿入用拘束部11を、非拘束状態のひだ折り端部2aの横幅Wより短い長さを有するひも状に形成し、且つ、ひだ折り端部2aの各ひだに形成された挿通孔13に挿通し、更に、その両端部をひだ折り端部2aの最外端の各ひだに仮止めし、挿入用操作部12を、ひも状に形成し、且つ、その一端部を挿入用拘束部11の長尺方向の中央部に接続したので、挿入用操作部12の引っ張り操作によって、挿入用拘束部11の長尺方向の中央部が反挿入側に向かって引っ張られると共に、挿入用拘束部11の長尺方向の両端部がひだの挿通穴13を介して中央に向かって引き寄せられる。これにより、仮止め状態の挿入用拘束部11の両端部を最外端のひだから外して、ケース3内でひだ折り端部2aを自身の弾性でより円滑且つ均等に広げることができる。従って、エアフィルタ1の取付け作業性ひいてはフィルタ交換の作業性をより向上させることができる。
【0032】
また、本実施例では、取出用拘束部21を、非拘束状態のひだ折り端部2bの横幅Wと同じ長さを有するひも状に形成し、且つ、ひだ折り端部2bの各ひだに形成された挿通孔23に挿通し、更に、その両端部をひだ折り端部2bの最外端の各ひだに取り付け、取出用操作部22を、ひも状に形成し、且つ、その一端部を取出用拘束部21の長尺方向の中央部に接続したので、取出用操作部22の引っ張り操作によって、取出用拘束部21の長尺方向の中央部が反挿入端側に引っ張られると共に、取出用拘束部21の長尺方向の両端部が各ひだの挿通穴23を介して中央に向かって引き寄せられる。これにより、取出用拘束部21によりひだ折り端部2bがより確実且つ均等に窄められる。従って、エアフィルタ1の取出し作業性ひいてはフィルタ交換の作業性をより向上させることができる。
【0033】
さらに、本実施例では、ケース本体4の底壁の内面及び蓋体5の裏面にシール材6,6を敷設したので、ケース3内に収容されたエアフィルタ1において、シール材6,6がろ材2の両ひだ折り端部2a,2bに圧接されるため、それらひだ折り端部2a,2bの気密性を高めることができる。なお、本実施例に係るエアフィルタ1では、各ひだを適正な姿勢に保ってひだ折り端部2a,2bにシール材を取り付けることが困難である。
【0034】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、熱溶着部14により挿入用拘束部11をひだに仮止めするようにしたが、これに限定されず、例えば、接着剤又は接着テープにより挿入用拘束部11をひだに仮止めするようにしてもよい。また、ひも状の挿入用拘束部11の両端部に挿通孔13より大きな固結び部を形成し、この固結び部により挿入用拘束部11をひだに仮止めするようにしてもよい。さらに、図8に示すように、テープ状の挿入用拘束部11’を採用する場合には、挿入用拘束部11’及びひだの間にフック及びループ等からなる面ファスナを設け、この面ファスナにより挿入用拘束部11’をひだに仮止めするようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、挿入用操作部12の操作によって、仮止め状態の挿入用拘束部11をひだから外して挿入用拘束部11による拘束を解除する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、挿入用拘束部11の一部(例えば、挿入用操作部12との連絡部)を他の部位より剛性の低い部位としておき、挿入用操作部12の操作によって、挿入用拘束部11の一部が破壊されて挿入用拘束部11による拘束を解除するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、挿入用拘束部11によりひだ折り端部2aを予め拘束する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、取出用狭窄機構20と略同様にして、挿入用操作部12の引っ張り操作によって、挿入用拘束部11でひだ折り端部2aを拘束するようにしてもよい。この場合、挿入用操作部11を更に強く引っ張り操作することによって、仮止め状態の挿入用拘束部11をひだから外して拘束を解除させるように構成することが好ましい。
【0037】
また、上記実施例では、挿入用拘束部11の両端部をひだ折り端部2aの最外端のひだに仮止めするようにしたが、これに限定されず、例えば、挿入用拘束部11の両端部をひだ折り端部2aの最外端のひだの内側近傍のひだ(例えば、最外端のひだから2番目又は3番目のひだ等)に仮止めするようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施例では、取出用拘束部21の両端部をひだ折り端部2bの最外端のひだに取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、挿入用拘束部21の両端部をひだ折り端部2bの最外端のひだの内側近傍のひだ(例えば、最外端のひだから2番目又は3番目のひだ等)に取り付けるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、ろ材2のひだ折り端部2a、2bのそれぞれ全てのひだに形成された挿通孔13,23に挿通される挿入用拘束部11及び取出用拘束部21を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、ひだ折り端部2a,2bの各ひだの外側を通る挿入用拘束部11’及び取出用拘束部21’としたり、ひだ折り端部の全ひだうのうちの一部のひだに形成された挿通孔に挿通される挿入用拘束部及び取出用拘束部としたりしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、ひも状の挿入用操作部11及び取出用操作部21を引っ張り操作してひだ折り端部2a,2bの拘束及び非拘束を切り替える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、棒状の挿入用操作部及び取出用操作部を押し込み操作してひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、挿入用表示部及び取出用表示部として記号を記載したタグ15,25を例示したが、これに限定されず、例えば、挿入用操作部12及び取出用操作部22の表面色や表面形状等を異ならせて両者を識別できるようにしてもよい。
【0042】
さらに、上記実施例では、横置型のケース3を例示したが、これに限定されず、例えば、縦置型や斜め置型のケースとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
車両空調装置の送風空気をろ過する技術として広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例に係るエアフィルタ及びケースの斜視図である。
【図2】非拘束状態のろ材の斜視図である。
【図3】エアフィルタの挿入側の要部斜視図である。
【図4】エアフィルタの反挿入側の要部斜視図である。
【図5】エアフィルタの取付け作用を説明するための説明図である。
【図6】エアフィルタの取付け作用を説明するための説明図である。
【図7】エアフィルタの取出し作用を説明するための説明図である。
【図8】その他の形態の挿入用拘束部を説明するための要部斜視図である。
【図9】その他の形態の挿入用狭窄機構を説明するための要部斜視図である。
【図10】従来のエアフィルタ及びケースの斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1;エアフィルタ、2;ろ材、2a,2b;ひだ折り端部、3;ケース、10;挿入用狭窄機構、11,11’;挿入用拘束部、12;挿入用操作部、13,23;挿通孔、15,25;タグ、20;取出用狭窄機構、21,21’;取出用拘束部、22;取出用操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両空調装置に用いられるエアフィルタであって、
送風空気の通路を形成するケースに挿入されるひだ折り状のろ材と、
前記ろ材の前記ケースへの挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な挿入用拘束部、及び該挿入用拘束部による前記ひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための挿入用操作部を有する挿入用狭窄機構と、を備えることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記ろ材の前記ケースへの反挿入側のひだ折り端部を窄めるように拘束可能な取出用拘束部、及び該取出用拘束部による前記ひだ折り端部の拘束及び非拘束を切り替えるための取出用操作部を有する取出用狭窄機構をさらに備える請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記挿入用狭窄機構は、前記挿入用操作部に設けられ且つ該挿入用操作部が挿入用であることを表示する挿入用表示部をさらに有しており、前記取出用狭窄機構は、前記取出用操作部に設けられ且つ該取出用操作部が取出用であることを表示する取出用表示部をさらに有している請求項2記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記挿入用拘束部は、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)より短い長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに仮止めされており、前記挿入用操作部は、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記挿入用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記取出用拘束部は、非拘束状態の前記ひだ折り端部の横幅(W)と同じ長さを有するひも状に形成されており、且つ、該ひだ折り端部のひだに形成された挿通孔に挿通され、更に、その両端部が該ひだ折り端部の外端側のひだに取り付けられており、前記取出用操作部は、ひも状に形成されており、且つ、その一端部が前記取出用拘束部の長尺方向の中央部に接続されている請求項2記載のエアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−262830(P2009−262830A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116175(P2008−116175)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】