説明

エアブラストインジェクタ

【課題】第2噴射孔より加圧空気とともに噴射される燃料の噴射量の誤差を小さく抑えることのできるエアブラストインジェクタを提供する。
【解決手段】第2ニードル8の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料を第2噴射孔6へ導く第2ニードル内通路9が設けられており、第1インジェクタ1の第1噴射孔3は、第2ニードル内通路9の上端部に向けて燃料の噴射を行なう。第1インジェクタ1は、第1噴射孔3から噴射された燃料を第2ニードル内通路9へ注入する燃料ノズル10を備えている。この燃料ノズル10は、第2ニードル内通路9と軸方向にオーバーラップするものであり、第1インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2ニードル内通路9に供給されて第2噴射孔6へ導かれる。これにより、第1インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2噴射孔6へ導かれるまでの時間と量が安定し、燃料の噴射精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧空気とともに液体燃料を噴射させるエアブラストインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(燃料の燃焼エネルギーにより回転トルクを発生する内燃機関)に搭載される燃料噴射装置では、燃費向上およびエミッション低減を目的として、液体燃料を微粒化してインジェクタより噴射する技術が望まれる。
液体燃料の微粒化を達成するインジェクタとして、エアブラストインジェクタが知られている。エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタと、この第1インジェクタから噴射された液体燃料と加圧空気を一緒に噴射させる第2インジェクタとから構成される複合インジェクタであり、加圧空気が第2噴射孔(第2インジェクタの噴射口)を通過する際に音速化することで、加圧空気とともに噴射される液体燃料を微粒化するものである。
【0003】
具体的に、従来技術におけるエアブラストインジェクタの要部構造を、図5(b)を参照して説明する。なお、符号は後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一機能物に同一符号を付したものである。
第1インジェクタ1の第1噴射孔3(燃料噴射孔)は、第2インジェクタ2の第2ニードル8に設けられた第2ニードル内通路9と対向配置されており、第1噴射孔3は第2ニードル内通路9の端部に向けて燃料の噴射を行なう(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
第1インジェクタ1の第1噴射孔3から噴射される液体燃料は、図5(b)の矢印に示すように、第1噴射孔3の周囲に飛散する。その結果、(i)第1インジェクタ1から噴射された噴射燃料の一部は第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられるものの、(ii)他の多くの噴射燃料は第2ニードル8の周囲の部材に付着する。
(i)第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられた噴射燃料は、第2ニードル内通路9を伝わって、第2インジェクタ2の第2噴射孔(エアブラスト噴射孔)へ導かれるため、第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられてから、その燃料が第2噴射孔へ導かれる時間と量に大きな誤差は生じない。
(ii)しかるに、第2ニードル8の周囲の部材に付着した燃料は、第2ロアボディ34および第2アッパーボディ35の内壁表面や、第2アッパーボディ35と第2可動コア42の隙間、第2ニードル8の外壁表面など、種々の凹凸壁面や隙間を伝わって落下し、最終的に第2噴射孔へ導かれる。このため、第2ニードル8の周囲の部材に燃料が付着してから、その燃料が第2噴射孔へ導かれるまでの時間と量には、大きな誤差が生じてしまう。
【0005】
一方、エアブラストインジェクタの第2インジェクタ2は、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料と一緒に加圧空気を噴射するものである。
このため、上述したように、第2ニードル8の周囲の部材に付着した燃料が、第2インジェクタ2の第2噴射孔へ導かれるまでの時間と量に大きな誤差が生じてしまうと、第2インジェクタ2から加圧空気とともに噴射される燃料の噴射量に大きな誤差が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−325383号公報
【特許文献2】特開平10−159689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、第2噴射孔より加圧空気とともに噴射される燃料の噴射量の誤差を小さく抑えることのできるエアブラストインジェクタの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[請求項1の手段]
請求項1のエアブラストインジェクタにおける第1インジェクタは、第1噴射孔から噴射された液体燃料を、第2インジェクタの第2ニードル内通路へ供給する燃料ノズルを備える。この燃料ノズルは、第1インジェクタの第1噴射孔から第2インジェクタの第2ニードル内通路の内部まで伸びるものであり、燃料ノズルと第2ニードル内通路とが軸方向にオーバーラップして配置される。
【0009】
このように、第1インジェクタに燃料ノズルを設けることにより、第1インジェクタから噴射される全ての液体燃料を、第2インジェクタの第2ニードル内通路の内部に噴射供給することができ、第1インジェクタから噴射された液体燃料が第2ニードルの周囲の部材に付着するのを防ぐことができる。
その結果、第1インジェクタから噴射された全ての液体燃料を安定して第2噴射孔へ導くことができ、第2噴射孔より噴射される燃料の噴射精度を高めることができる。
【0010】
[請求項2の手段]
請求項2のエアブラストインジェクタにおける燃料ノズルは、第1ノズルボディの端部に固定されるノズル固定部を備える。そして、第1インジェクタの第1噴射孔の周囲は、ノズル固定部と第1ノズルボディとの間でシールされる。
これにより、第1インジェクタから噴射された燃料が、燃料ノズルの先端(第2ニードル内通路に挿し込まれている端部)とは別の箇所から漏れ出て第2ニードルの周囲の部材に付着する不具合を確実に回避することができる。
【0011】
[請求項3の手段]
請求項3のエアブラストインジェクタにおける燃料ノズルの通路面積は、第1噴射孔の通路面積より大きく設けられる。これにより、第1インジェクタから噴射される燃料の噴射量が、燃料ノズルの影響によって変化する不具合を回避することができる。
【0012】
[請求項4の手段]
請求項4のエアブラストインジェクタにおいて第2インジェクタ内に加圧供給された空気は、第2ニードル内通路と燃料ノズルとの間に形成される環状隙間を通って第2噴射孔に導かれる。
これにより、第2インジェクタの第2ニードルの外周部位に、加圧空気を第2噴射孔へ導く通路を形成する必要がなくなり、加工コストを低減することができる。
【0013】
また、第2インジェクタを電磁アクチュエータで開閉駆動する場合では、第2ニードルを駆動する第2可動コア(第2インジェクタのアーマチャコア)が第2ニードルに固定される。その場合、加圧空気が、第2ニードル内通路と燃料ノズルとの間の環状隙間を通って第2噴射孔に導かれるため、第2可動コアに、加圧空気を第2噴射孔へ導く空気通路を形成する必要がなくなり、第2可動コアに作用する磁気吸引力を高めることができ、第2インジェクタの作動応答性を高めることができる。あるいは、第2可動コアを小型化でき、第2インジェクタを小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアブラストインジェクタの断面図である。
【図2】第1インジェクタと第2インジェクタの駆動例を示すタイムチャートである。
【図3】第1インジェクタにおける燃料の流れを示す説明図である。
【図4】第2インジェクタにおける加圧空気の流れを示す説明図である。
【図5】本発明が適用されたエアブラストインジェクタの要部断面図、および本発明が適用されていないエアブラストインジェクタの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
エアブラストインジェクタは、加圧された液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0016】
第1インジェクタ1は、外部より内部へ加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔3を有する第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4内に配置されて第1噴射孔3の開閉を行なう第1ニードル5とを備えるものであり、例えば電磁アクチュエータや、ピエゾアクチュエータ等の駆動手段により作動制御される。
第2インジェクタ2は、外部より加圧供給された空気とともに第1インジェクタ1から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔6を有する第2ノズルボディ7と、この第2ノズルボディ7内に配置されて第2噴射孔6の開閉を行なう第2ニードル8とを備えるものであり、第1インジェクタ1と同様、例えば電磁アクチュエータや、ピエゾアクチュエータ等の駆動手段により作動制御される。
【0017】
第2インジェクタ2における第2ニードル8の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料を第2噴射孔6へ導くための第2ニードル内通路9が設けられている。
また、第1インジェクタ1の第1噴射孔3と、第2インジェクタ2の第2ニードル内通路9の端部開口とが対向配置されるものであり、第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の端部に向けて燃料の噴射が行なわれる。
そして、第1インジェクタ1は、第1噴射孔3から噴射された液体燃料を、第2インジェクタ2の第2ニードル内通路9へ供給する燃料ノズル10を備える。この燃料ノズル10は、第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の内部まで伸びるものであり、燃料ノズル10が第2ニードル内通路9と軸方向にオーバーラップして配置され、第1インジェクタ1から噴射される液体燃料の全てが、燃料ノズル10を通って第2インジェクタ2の第2ニードル内通路9の内部に噴射供給される。
【実施例1】
【0018】
次に、エアブラストインジェクタの具体的な一例を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。また、以下の実施例では、図1の上側を上、図1の下側を下と称して説明するが、実際のエンジンへの搭載方向は、第2インジェクタ2内の燃料が重力によって第2噴射孔6へ向かうように、エアブラストインジェクタの上端より、エアブラストインジェクタの下端が、天地方向の下側(地側)に配置されるものである。
【0019】
エアブラストインジェクタは、直噴エンジンに搭載されるものであり、例えばガソリン等の燃料をエンジンの気筒内(燃焼室内)に直接噴射供給するものであって、各気筒毎に搭載される。
エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0020】
(第1インジェクタ1の説明)
実施例1の第1インジェクタ1は、燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料供給管を介して第1インジェクタ1の上端に設けられた燃料導入口11より内部に供給される。
燃料ポンプは、燃料タンクから第1インジェクタ1に燃料を導く燃料供給管の途中に配置されるものであり、燃料タンク内の燃料を吸引して所定圧力へ加圧し、第1インジェクタ1に向けて圧送するものである。また、燃料ポンプは、第1インジェクタ1に向けて吐出される燃料の圧力を、所定の目標圧力(例えば、550kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0021】
第1インジェクタ1は、略円筒形状を呈するものであり、上端から燃料を受け、内部の燃料通路を経由して下端から燃料を噴射する。
第1インジェクタ1は、燃料の噴射と停止を実行する第1噴射ノズル12、この第1噴射ノズル12に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第1スプリング13、この第1スプリング13の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第1電磁駆動部14、略筒状を呈して第2インジェクタ2の上部に挿入固定される第1ロアボディ15、略筒状を呈して第1ロアボディ15の上部に同軸上に配置される第1アッパーボディ16を備えており、第1アッパーボディ16の上端に設けられた燃料導入口11から内部に流入した燃料は、第1ロアボディ15を通って第1噴射ノズル12の下端に向けて供給される。
【0022】
第1噴射ノズル12は、第1ロアボディ15の下部に固定されて第2インジェクタ2の内部に挿入配置される第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4の内部に挿入されて上下方向へ摺動自在に支持される第1ニードル5とを含んで構成される。
第1ノズルボディ4の軸中心には、上方から下方へ向けて燃料を導く第1ノズル孔17が穿設されており、第1ノズル孔17の下端に設けられた弁座の中心には、第1ノズルボディ4の先端部から第2インジェクタ2の内部に向けて燃料を噴射するための第1噴射孔3が形成されている。
【0023】
第1ノズル孔17は、第1ニードル5との間に燃料通路を形成して、上方から供給された燃料を弁座側へ導くものである。
第1噴射孔3は、第1ノズルボディ4の下端の軸中心において上下方向に貫通する1つの貫通穴であり、弁座の上面に入口が開口して、出口が第1ノズルボディ4の先端部の外面に開口している。
【0024】
第1ニードル5は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第1ノズル孔17の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
具体的に、第1ニードル5の上端は、第1ロアボディ15の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第1可動コア18(第1電磁駆動部14におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第1ニードル5の上端が第1ロアボディ15の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第1可動コア18には、上下方向を連通する燃料通路18aが形成されており、第1可動コア18の上側の燃料を、第1可動コア18の下側へ導くように設けられている。
一方、第1ニードル5の下側には、径方向外側へ膨出する第1大径摺動部19が形成されており、この第1大径摺動部19が第1ノズル孔17の内周面によって摺動自在に支持される。なお、第1大径摺動部19には、外周面の一部をカットした形状の面取部(あるいは上下方向に連通する溝部)19aが設けられており、第1大径摺動部19の上側の燃料を、第1大径摺動部19の下側へ導くように設けられている。
【0025】
第1ニードル5の下端には、第1ノズル孔17の下端に設けられた弁座に着座可能なシート部が設けられている。このシート部が弁座に着座することにより、第1ノズル孔17と第1噴射孔3との連通を遮断し、シート部が弁座から離座することにより、第1ノズル孔17と第1噴射孔3とを連通して、第1噴射孔3から燃料の噴射を行なう。
ここで、弁座とシート部との当接部(着座部分)には、シート部が弁座に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。
なお、シート部の形状は、略円錐形状に限られるものではなく、略円錐台形状、あるいは略半球状など、線シールが可能な形状であればいずれの形状であっても良い。また、弁座とシート部のシール方法としては、線シールに限らず、円錐面の当接でシールするものであっても良い。
【0026】
第1スプリング13は、第1ニードル5を下方へ押し付けて、シート部を弁座に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第1スプリング13は、第1可動コア18と、筒状を呈する第1バネストッパ21との間で圧縮された状態で組付けられたものである。ここで、第1バネストッパ21は、第1アッパーボディ16の内周面に固定された第1磁気吸引筒25(後述する)の内周面に圧入あるいはネジ込み等により固定されたものである。
【0027】
第1電磁駆動部14は、磁力によって第1ニードル5を上方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第1コイル22、この第1コイル22の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第1可動コア18、この第1可動コア18を上方へ磁気吸引するための磁路を形成する第1固定子を備える。
【0028】
第1固定子は、第1ロアボディ15と第1アッパーボディ16の間に挟まれて配置される第1非磁性筒23と、この第1非磁性筒23の下部において第1可動コア18と径方向の磁気の受け渡しを行なう第1磁気受渡筒24と、第1可動コア18を上方へ磁気吸引する第1磁気吸引筒25と、第1コイル22の周囲を覆う第1ヨーク26とを備える。
なお、第1固定子を構成する部材のうち、第1非磁性筒23を除く他の部材(第1磁気受渡筒24、第1磁気吸引筒25、第1ヨーク26)は、全て磁性体金属(例えば、鉄)によって形成されるものである。
ここで、第1固定子は、第1ロアボディ15および第1アッパーボディ16の一部を利用したものであり、第1ロアボディ15の上部が第1磁気受渡筒24として利用され、第1アッパーボディ16が第1磁気吸引筒25と第1ヨーク26の磁気結合を行なう部材として利用されている。
【0029】
第1非磁性筒23は、第1アッパーボディ16と同径の筒体であり、第1磁気吸引筒25と第1磁気受渡筒24(第1ロアボディ15の一部)とが、第1可動コア18を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第1磁気吸引筒25は、第1アッパーボディ16の内周面に結合された筒状を呈し、第1磁気吸引筒25の下面と第1可動コア18の上面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第1コイル22が通電されると、第1磁気吸引筒25が第1可動コア18を磁気吸引するものである。
【0030】
第1ヨーク26は、第1コイル22の外周を覆って、第1コイル22の周囲に磁路を形成する部材であり、第1コイル22が通電されると、第1ヨーク26→第1アッパーボディ16および第1磁気吸引筒25→第1可動コア18→第1磁気受渡筒24(第1ロアボディ15の一部)→再び第1ヨーク26に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0031】
第1ヨーク26は、絶縁性の第1樹脂部材27によりモールドされており、第1ヨーク26をモールドする第1樹脂部材27の一部には、外部接続用の第1コネクタ28が設けられている。この第1コネクタ28は、第1インジェクタ1の作動制御を行なうECU(エンジン・コントロール・ユニットの略:図示しない)と接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第1コイル22の両端にそれぞれ接続される端子28aがモールドされている。
【0032】
(第2インジェクタ2の説明)
実施例1の第2インジェクタ2は、エアポンプにより加圧された空気が、圧縮空気供給管を介して第2インジェクタ2の上部の側面より内部に供給される。
エアポンプは、大気中の空気を吸引して所定圧力へ加圧し、第2インジェクタ2に向けて圧送するものである。また、エアポンプは、第2インジェクタ2に向けて吐出される空気の圧力を、所定の目標圧力(燃料ポンプから第1インジェクタ1へ供給される燃料圧力よりも低い圧力:例えば、300kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0033】
第2インジェクタ2は、第1インジェクタ1の下側において、第1インジェクタ1と同軸に配置された略円筒形状を呈するものであり、上部に配置された第1インジェクタ1から噴射燃料を受けるとともに、エアポンプから加圧空気の供給を受ける。そして、この第2インジェクタ2は、第2インジェクタ2の上部に供給された加圧空気と液体燃料(以下では、第2インジェクタ2に供給された加圧空気と第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とを合わせて「エア混合燃料」と称して説明する)を、内部通路を経由させて下端へ導き、下端から噴射させるものである。
【0034】
第2インジェクタ2は、エア混合燃料の噴射と停止を実行する第2噴射ノズル31、この第2噴射ノズル31に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第2スプリング32、この第2スプリング32の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第2電磁駆動部33、略筒状を呈してエンジンのシリンダヘッド等に挿入固定される第2ロアボディ34、略筒状を呈して第2ロアボディ34の上部に同軸上に配置される第2アッパーボディ35を備えている。
【0035】
第2アッパーボディ35は、上述したように略筒形状を呈するものであり、その上部に第1インジェクタ1の下部が挿入配置される。第1インジェクタ1を第2アッパーボディ35に固定する一例として、この実施例では、第1ロアボディ15の外周にフランジ部15aを設け、第2アッパーボディ35の上面と、第2アッパーボディ35の上面に締結される取付プレート36との間でフランジ部15aを挟み付けることで、第1インジェクタ1を第2アッパーボディ35に固定している。なお、第1インジェクタ1の固定手段は、適宜変更可能なものである。
また、第2アッパーボディ35の側面には、エアポンプで加圧された空気を内部に導くエア導入通路37が形成されている。そして、第2アッパーボディ35の内部に供給された加圧空気は、第2噴射ノズル31の下端まで充填供給される。
【0036】
第2噴射ノズル31は、第2ロアボディ34の下部にリテーニングナット38を用いて締結固定される第2ノズルボディ7と、この第2ノズルボディ7の内部に挿入されて上下方向へ摺動自在に支持される第2ニードル8とを含んで構成される。
第2ノズルボディ7は、先端部が気筒内に露出するように挿入配置されるものであり、その軸中心には、上方から下方へ向けて貫通する筒形状の第2ノズル孔39が形成されている。そして、第2ノズル孔39の下端には、エア混合燃料を気筒内に噴射供給する第2噴射孔6が形成されており、この第2噴射孔6は、下方に向けて拡径したテーパ形状に設けられている。
【0037】
第2ノズル孔39は、第2ニードル8との間に上下方向を連通する外周通路41を形成するものであり、外周通路41に供給された加圧空気や液体燃料を第2噴射孔6へ導くものである。
第2ニードル8は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第2ノズル孔39の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
【0038】
具体的に、第2ニードル8の上端は、第2アッパーボディ35の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第2可動コア42(第2電磁駆動部33におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第2ニードル8の上端が第2アッパーボディ35の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第2可動コア42には、上下方向を連通するための通路は形成されておらず、第2ニードル8の外周に何らかの要因で付着した液体燃料は、第2可動コア42の外周面の摺動クリアランスを介して下方へ伝わることで外周通路41へ導かれる。
【0039】
一方、第2ニードル8の下側には、径方向外側へ膨出する第2大径摺動部43が形成されており、この第2大径摺動部43が第2ノズル孔39の内周面によって摺動自在に支持される。なお、第2大径摺動部43には、外周面の一部をカットした形状の面取部(あるいは上下方向に連通する溝部)43aが設けられており、第2大径摺動部43の上下の外周通路41を連通するように設けられている。
【0040】
第2ニードル8の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料を第2噴射孔6へ導く第2ニードル内通路9が設けられている。
この第2ニードル内通路9は、第2ニードル8の上端より下側の途中まで穿設された中心孔9aと、この中心孔9aの下端から径方向外側へ分岐して外周通路41に連通する径方向孔9bとで構成されている。この径方向孔9bは、中心側から外方向に向かうに従って下方に傾斜する傾斜穴として設けられている。また、中心孔9aの最下端部は、径方向孔9bに連通して設けられ、第2噴射孔6の開弁後において、中心孔9aの最下端部に液体燃料が貯溜しないように設けられている。
【0041】
第2ニードル内通路9の上端の開口は、第1インジェクタ1の第1噴射孔3と同一軸線上に開口するものであり、第1噴射孔3と、第2ニードル内通路9の上端の開口とが対向配置されて、第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の上端部に向けて燃料の噴射が行なわれる(第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の内部に燃料を吹き入れる構造については後述する)。
【0042】
第2ニードル8の下端には、第2噴射孔6を開閉する弁傘44が設けられている。この弁傘44の外径寸法は、第2噴射孔6の外径寸法より大径に設けられており、弁傘44が第2噴射孔6の開口縁に着座することにより、外周通路41と外部(気筒内)との連通が遮断され、弁傘44が第2噴射孔6の開口縁から離座することにより、外周通路41と外部が連通して、第2噴射孔6からエア混合燃料が気筒内に噴射される。
ここで、弁傘44と当接する第2噴射孔6の開口縁には、弁傘44が第2噴射孔6の開口縁に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。なお、第2噴射孔6の形態、および第2ニードル8における弁体(第2噴射孔6を開閉するバルブ部)の形態は、この実施例に示すものに限定されるものではなく、適宜変更可能なものである。
【0043】
第2スプリング32は、第2ニードル8を上方へ押し上げて、弁傘44を第2噴射孔6の開口縁に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第2スプリング32は、第2ニードル8の外周面に取り付けられた第2バネストッパ45と、第2ノズルボディ7の上端面との間で圧縮された状態で組付けられたものである。なお、第2バネストッパ45は、第2ニードル8の外周面に取り付けられるクリップリング(Eリング、Cリング等)45aによって支持されるものである。
【0044】
第2電磁駆動部33は、磁力によって第2ニードル8を下方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第2コイル46、この第2コイル46の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第2可動コア42、この第2可動コア42を下方へ磁気吸引するための磁路を形成する第2固定子を備える。
【0045】
第2固定子は、第2ロアボディ34と第2アッパーボディ35の間に挟まれて配置される第2非磁性筒47と、この第2非磁性筒47の上部において第2可動コア42と径方向の磁気の受け渡しを行なう第2磁気受渡筒48と、第2可動コア42を下方へ磁気吸引する第2磁気吸引部49と、第2コイル46の周囲を覆う第2ヨーク51とを備える。
なお、第2固定子を構成する部材のうち、第2非磁性筒47を除く他の部材(第2磁気受渡筒48、第2磁気吸引部49、第2ヨーク51)は、全て磁性体金属(例えば、鉄など)によって形成されるものである。
ここで、第2固定子は、第2ロアボディ34および第2アッパーボディ35の一部を利用するものであり、第2ロアボディ34の上部が第2磁気吸引部49として利用され、第2アッパーボディ35の下部が第2磁気受渡筒48として利用されている。
【0046】
第2非磁性筒47は、第2アッパーボディ35の下部と同径の筒体であり、第2磁気吸引部49(第2ロアボディ34の一部)と第2磁気受渡筒48(第2アッパーボディ35の一部)とが、第2可動コア42を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第2磁気吸引部49は、第2可動コア42の下面と対向配置され、第2可動コア42の下面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第2コイル46が通電されると、第2磁気吸引部49が第2可動コア42を磁気吸引するものである。
【0047】
第2ヨーク51は、第2コイル46の外周を覆って、第2コイル46の周囲に磁路を形成する部材であり、第2コイル46が通電されると、第2ヨーク51→第2磁気吸引部49(第2ロアボディ34の一部)→第2可動コア42→第2磁気受渡筒48(第2アッパーボディ35の一部)→再び第2ヨーク51に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0048】
第2ヨーク51は、絶縁性の第2樹脂部材52によりモールドされており、第2ヨーク51をモールドする第2樹脂部材52の一部には、外部接続用の第2コネクタ53が設けられている。この第2コネクタ53は、第2インジェクタ2の作動制御を行なうECUと接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第2コイル46の両端にそれぞれ接続される端子53aがモールドされている。
【0049】
ECUは、制御処理、演算処理を行なうCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM、SRAMまたはEEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成された周知構造のマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータの指示により第1コイル22および第2コイル46の通電制御を実施するインジェクタ駆動回路とを含んで構成される。
マイクロコンピュータには、ECUに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンの運転状態等に応じた信号)に応じて第1、第2コイル22、46の通電を制御するインジェクタ制御プログラムが搭載されている。
【0050】
このインジェクタ制御プログラムは、ECUに読み込まれた車両の運転状態から、運転状態に応じた噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量の算出を行なうとともに、算出された噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量が得られるように、第1、第2コイル22、46の通電制御を実施するものである。
具体的に、インジェクタ制御プログラムは、算出された噴射量が得られるように第1コイル22の通電期間を制御するとともに、算出された噴射タイミングで燃料噴射が実施されるように第2コイル46の通電開始時期を制御するものである。
なお、以下では、具体的な一例として、図2に示すように、先ず第1コイル22へ第1インジェクタ1の駆動信号を出力して第1インジェクタ1から第2インジェクタ2内に燃料の供給を行ない、続いて第2コイル46へ第2インジェクタ2の駆動信号を出力してエア混合燃料を第2インジェクタ2から気筒内へ噴射させる例を示す。この図2に示す第1、第2インジェクタ1、2の駆動パターンは、実施例を説明するための一例であって、限定されるものではなく、第2インジェクタ2の第2噴射孔6から、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料と一緒に加圧空気を噴射できるものであれば良い。
【0051】
(実施例1の背景技術)
上述したように、第2ニードル8の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料を第2噴射孔6へ導く第2ニードル内通路9が設けられており、第2インジェクタ2の上部に同軸上に配置された第1インジェクタ1は、第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の上端部に向けて燃料の噴射を行なう。
ここで、従来技術であれば、図5(b)の矢印に示すように、第1インジェクタ1の第1噴射孔3から噴射された液体燃料は、第2アッパーボディ35内に飛散する。その結果、噴射燃料の一部は第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられるものの、他の多くの噴射燃料は第2ニードル8の周囲の部材(第2アッパーボディ35や第2可動コア42等)に付着する。
第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられた噴射燃料は、第2ニードル内通路9を伝わり、第2噴射孔6へ導かれる。このため、第2ニードル内通路9の内部に吹き入れられてから、その燃料が第2噴射孔6へ導かれる時間と量は安定しており、大きな誤差は生じない。
【0052】
しかし、第2ニードル8の周囲の部材に付着した燃料は、第2アッパーボディ35や第2可動コア42の表面に沿って落下したり、第2アッパーボディ35と第2可動コア42の間の摺動クリアランスを伝わって落下するなど、種々の凹凸壁面や隙間を伝わって落下するものであるため、第2ニードル8の周囲の部材に燃料が付着してから、その燃料が第2噴射孔6へ導かれるまでの時間と量は安定せず、大きな誤差が生じてしまう。
このように、従来技術であれば、第2ニードル8の周囲の部材に付着した燃料が第2噴射孔6へ導かれるまでの時間と量に大きな誤差が生じることで、第2噴射孔6より噴射される燃料の噴射量に大きな誤差が生じる可能性がある。
【0053】
(実施例1の特徴技術)
上記の不具合を回避する手段として、この実施例1のエアブラストインジェクタは、次の技術を採用している。
この実施例1の第1インジェクタ1には、第1噴射孔3から噴射された液体燃料を第2ニードル内通路9へ供給する燃料ノズル10が設けられている。
この燃料ノズル10は、鉄やステンレス等の金属、あるいは耐熱耐油性等に優れた樹脂部材よりなり、第1噴射孔3から第2ニードル内通路9の内部まで伸びる中空の細いパイプである。そして、第2インジェクタ2に対して第1インジェクタ1が組付けられた状態において、燃料ノズル10の下側が第2ニードル内通路9の上側と軸方向(上下方向)にオーバーラップするように設けられている。
なお、第2ニードル内通路9と燃料ノズル10の軸方向のオーバーラップ量(長さ)は、燃料ノズル10の下端から噴射された液体燃料が、第2ニードル内通路9の上端の開口部より外部へ吹きこぼれしない長さに設定されている。
【0054】
ここで、ECUが、図2に示す駆動パターンにより第1、第2インジェクタ1、2を駆動制御する際のエアブラストインジェクタの作動を説明する。
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射を実施する直前に、第1インジェクタ1を作動させる。
この第1インジェクタ1の作動を図3を参照して説明する。ECUによって第1コイル22の通電が開始されると、磁力により第1可動コア18が上方へ磁気吸引される。そして、第1可動コア18を上方へ駆動する磁気吸引力が、第1ニードル5に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第1可動コア18が上方に移動し、第1可動コア18に結合されている第1ニードル5がリフトアップを開始する。そして、第1ニードル5が弁座から離座すると、第1ノズルボディ4の第1ノズル孔17に供給された加圧燃料が第1噴射孔3から噴射される。
第1噴射孔3より噴射された燃料は、燃料ノズル10を通って、第2インジェクタ2の第2ニードル内通路9の内部に供給される。即ち、燃料ノズル10によって、第1インジェクタ1の噴射燃料が第2インジェクタ2の第2ニードル内通路9の内部のみに注入される。
【0055】
ECUによって第1コイル22の通電が停止されると、第1可動コア18を上方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。すると、第1スプリング13の付勢力により第1可動コア18と第1ニードル5が下降を開始する。そして、第1ニードル5が下降して弁座に着座すると、第1ノズル孔17と第1噴射孔3の連通が遮断されて、第1噴射孔3からの燃料噴射が停止し、第2ニードル内通路9の内部への燃料供給(燃料注入)が停止される。
【0056】
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射させる際に、第2インジェクタ2を作動させる。
この第2インジェクタ2の作動を図4を参照して説明する。ECUによって第2コイル46の通電が開始されると、磁力により第2可動コア42が下方へ磁気吸引される。そして、第2可動コア42を下方へ駆動する磁気吸引力が、第2ニードル8に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第2可動コア42が下方に移動し、第2可動コア42に結合されている第2ニードル8が下降を開始する。そして、第2ニードル8の下端に設けられた弁傘44が第2噴射孔6の開口縁から離座すると、外周通路41とエンジンの気筒内とが連通し、加圧空気とともに、第2ニードル内通路9を通って外周通路41の下部へ案内された液体燃料が、第2噴射孔6からエンジンの気筒内に噴射される。
【0057】
このとき、加圧空気が第2噴射孔6と弁傘44との間の隙間を通過する際に空気圧縮されることで、第2噴射孔6から噴射する空気の速度が音速に達し、加圧空気とともに噴射される燃料を微粒化させる。
ECUによって第2コイル46の通電が停止されると、第2可動コア42を下方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。すると、第2スプリング32の付勢力により第2可動コア42と第2ニードル8が上昇を開始する。そして、第2ニードル8が上昇して弁傘44が第2噴射孔6の開口縁に着座すると、外周通路41とエンジンの気筒内との連通が遮断されて、第2噴射孔6からエンジンの気筒内へのエア混合燃料の噴射が停止される。
【0058】
実施例1のエアブラストインジェクタは、上述したように、第1インジェクタ1に燃料ノズル10を設けたことにより、図5(a)に示すように、第1インジェクタ1から噴射される全ての液体燃料を、第2インジェクタ2における第2ニードル内通路9の内部に噴射供給することができ、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料が第2ニードル8の周囲の部材に付着するのを回避することができる。
その結果、第1インジェクタ1から噴射される全ての液体燃料を、第2ニードル内通路9を介して第2噴射孔6へ安定して導くことができ、第1インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2噴射孔6へ導かれるまでの時間と量が安定する。その結果、第2噴射孔6の開弁中に高い精度の燃料を噴射することができ、燃料の噴射精度を高めることができる。
【0059】
(実施例1の他の特徴技術1)
燃料ノズル10には、この燃料ノズル10を第1ノズルボディ4に固定する手段として、ノズル固定部54が一体に設けられている。この実施例に示すノズル固定部54は、図1等に示すように、略カップ形状を呈するものであるが、形状や材質などは限定されるものではない。ノズル固定部54の中心部には、燃料ノズル10が下方へ伸びて設けられている。そして、ノズル固定部54を第1ノズルボディ4の下端に嵌め合わせて、溶接等の固定技術で第1ノズルボディ4に固定することで、燃料ノズル10が第1噴射孔3に連通した状態で第1インジェクタ1に取り付けられる。
このように、ノズル固定部54を第1ノズルボディ4の端部に固定することで、第1噴射孔3の周囲が全周に亘ってノズル固定部54と第1ノズルボディ4との間でシールされる。これにより、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、燃料ノズル10の先端(第2ニードル内通路9に挿し込まれている端部)とは別の箇所から漏れ出て第2ニードル8の周囲の部材に付着する不具合を回避することができる。
【0060】
(実施例1の他の特徴技術2)
燃料ノズル10の通路面積は、第1噴射孔3の通路面積より大きく設けられる。即ち、第1噴射孔3の内径寸法をA、燃料ノズル10の内径寸法をBとした場合、A<Bの関係に設けられている。これにより、第1インジェクタ1から噴射される燃料に燃料ノズル10が影響を与える不具合を回避することができ、第1インジェクタ1から噴射される燃料の噴射量が、燃料ノズル10の影響によって変化する不具合が生じない。
【0061】
(実施例1の他の特徴技術3)
この実施例1のエアブラストインジェクタは、エア導入通路37から第2アッパーボディ35の内部に供給された加圧空気が、第2ニードル内通路9と燃料ノズル10との間に形成される環状隙間55を通って第2噴射孔6に導かれる。そのため、環状隙間55の通路面積(開口面積)は、第2噴射孔6の開弁中に第2噴射孔6から噴射される加圧空気量が通過可能な面積に設けられている。即ち、燃料ノズル10の外径寸法および第2ニードル内通路9の内径寸法は、必要加圧空気量が確保できる寸法に設けられている。
【0062】
ここで、第2ニードル内通路9と燃料ノズル10の軸方向のオーバーラップ量は、上述したように、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、第2ニードル内通路9の上端の開口部より外部へ吹きこぼれない長さを確保するものである。しかるに、オーバーラップ量を長く設定することで、環状隙間55を通過する加圧空気の通過抵抗が増すことになる。このため、第2ニードル内通路9と燃料ノズル10の軸方向のオーバーラップ量は、必要以上に長くしないように設定されている。
【0063】
このように、第2アッパーボディ35の内部に供給された加圧空気を環状隙間55を介して第2噴射孔6に導く構成を採用することにより、第2ニードル8の外周に設けられる第2可動コア42に、加圧空気を第2噴射孔6へ導く空気通路を形成する必要がなくなり、加工コストを低減することができる。
【0064】
また、第2アッパーボディ35の内部に供給された加圧空気を環状隙間55を介して第2噴射孔6に導くことにより、第2可動コア42に、加圧空気を第2噴射孔6へ導く通路を形成する必要がなくなる。このため、第2可動コア42に作用する磁気吸引力を高めることができ、第2インジェクタ2の作動応答性を高めることができる。あるいは、第2可動コア42を小型化することが可能になり、第2インジェクタ2を小型化し、結果的にブラストインジェクタの小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上記の実施例では、別体に設けられた燃料ノズル10を第1ノズルボディ4に固定する例を示したが、第1ノズルボディ4の一部に燃料ノズル10を設けても良い。
上記の実施例では、燃料ノズル10を一定の径で設ける例を示したが、第2ニードル内通路9に挿入される下側だけ小径に設けるなど、燃料ノズル10は上下方向に一定の径でなくても良い。
【0066】
上記の実施例では、エアブラストインジェクタを直噴エンジンに用いる例を示したが、気筒内に吸気を供給する吸気通路(シリンダヘッドに形成された吸気ポート等)の内部に燃料を噴射するインジェクタに、本発明が適用されたエアブラストインジェクタを用いても良い。
上記の実施例では、第1、第2インジェクタ1、2の駆動手段として電磁アクチュエータ(第1電磁駆動部14および第2電磁駆動部33)を用いる例を示したが、第1、第2インジェクタ1、2の駆動手段は電磁アクチュエータに限定されるものではなく、ピエゾアクチュエータなど他の駆動手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 第1インジェクタ
2 第2インジェクタ
3 第1噴射孔
4 第1ノズルボディ
5 第1ニードル
6 第2噴射孔
7 第2ノズルボディ
8 第2ニードル
9 第2ニードル内通路
10 燃料ノズル
54 ノズル固定部
55 環状隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔(3)を有する第1ノズルボディ(4)、この第1ノズルボディ(4)内に配置されて前記第1噴射孔(3)の開閉を行なう第1ニードル(5)を備える第1インジェクタ(1)と、
外部より加圧供給された空気とともに前記第1インジェクタ(1)から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔(6)を有する第2ノズルボディ(7)、この第2ノズルボディ(7)内に配置されて前記第2噴射孔(6)の開閉を行なう第2ニードル(8)を備える第2インジェクタ(2)とを具備し、
前記第2ニードル(8)の内部に、前記第1インジェクタ(1)が噴射した燃料を前記第2噴射孔(6)へ導く第2ニードル内通路(9)が設けられ、
前記第1噴射孔(3)と前記第2ニードル内通路(9)の端部開口とが対向配置されて、前記第1噴射孔(3)から前記第2ニードル内通路(9)の端部に向けて燃料の噴射が行なわれるエアブラストインジェクタにおいて、
前記第1インジェクタ(1)は、前記第1噴射孔(3)から噴射された液体燃料を前記第2ニードル内通路(9)へ供給する燃料ノズル(10)を備え、
この燃料ノズル(10)は、前記第1噴射孔(3)から前記第2ニードル内通路(9)の内部まで伸び、前記燃料ノズル(10)と前記第2ニードル内通路(9)とが軸方向にオーバーラップして配置されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記燃料ノズル(10)は、前記第1ノズルボディ(4)の端部に固定されるノズル固定部(54)を備え、
前記第1噴射孔(3)の周囲は、前記ノズル固定部(54)と前記第1ノズルボディ(4)との間でシールされることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記燃料ノズル(10)の通路面積は、前記第1噴射孔(3)の通路面積より大きく設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
外部より前記第2インジェクタ(2)内に加圧供給された空気は、前記第2ニードル内通路(9)と前記燃料ノズル(10)との間に形成される環状隙間(55)を通って前記第2噴射孔(6)に導かれることを特徴とするエアブラストインジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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