説明

エアマイクロメータの測定ヘッド

【課題】ヘッド表面の摩耗を低減できると共に、ワークの被測定面への傷付きを防止することができるエアマイクロメータの測定ヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッドに設けた噴出孔からワークの被測定面に対しエアを噴出し、その背圧または差圧に基づき、ワークの内径、外径、或いは厚さなどを測定するエアマイクロメータの測定ヘッドである。ヘッド本体10の噴出孔3,3の近傍を除き、少なくともヘッド本体10の先端面11と外周面12に、DLC膜2がPVD法またはプラズマCVD法によりコーティングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの被測定面に対しエアを噴出し、その背圧または差圧に基づき、ワークの内径、外径、或いは厚さなどを測定するエアマイクロメータの測定ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの内径、外径などを測定するエアマイクロメータとして、下記特許文献1に示すような、背圧・差圧式のエアマイクロメータが知られている。
【0003】
このエアマイクロメータは、空気源から供給される空気を、固定オリフィス付きの2系統の管路に供給し、一方の管路を測定ヘッド用管路とし、他方の管路には別の固定オリフィスを設けて排気用管路とし、測定ヘッド用管路と排気用管路間を、差圧センサを設けたセンサ用管路で接続し、測定ヘッド用管路にはノズル孔を設けた測定ヘッドを接続して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−114511号公報
【特許文献2】特開2005−233697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のエアマイクロメータは、原理的にはワークに対し非接触の状態で配置した測定ヘッドから空気を噴出してワークの測定を行なうが、一般に、測定ヘッドは、ワークの内径を測定する場合、ワークの孔内に挿入され、或いはワークの外径を測定する場合、ワークの外周面を覆う位置に進入させることから、ワークの被測定面と測定ヘッドの外面が接触しやすく、それが繰り返されると、接触面に摩耗が生じやすい。
【0006】
そこで、上記特許文献2において、測定ヘッドの表面に、ショットピーニング処理を施して硬化層を形成することが提案されている。
【0007】
しかし、ショットピーニング処理により測定ヘッドの表面に硬化層を形成した場合、測定ヘッドの耐摩耗性は向上するものの、例えば、アルミニウム製のワークを測定する場合、ワークの被測定面と測定ヘッドの硬化層が接触し、特にショットピーニング処理によって測定ヘッドの表面にエンボス模様を形成した場合には、ワークの被測定面に非常に傷が付きやすくなる。また、ワークの孔の内面などが砥石により研磨され、砥粒がワーク内面に付着しているような場合、特にショットピーニング処理された測定ヘッドを使用すると、ワーク内面にアグレッシブ摩耗が発生し、ワークを傷付け易いという課題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ヘッド表面の摩耗を低減できると共に、ワークの被測定面への傷付きを防止することができるエアマイクロメータの測定ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエアマイクロメータの測定ヘッドは、ヘッド本体に設けた噴出孔からワークの被測定面に対しエアを噴出し、その背圧または差圧に基づき、ワークの内径、外径、或いは厚さなどを測定するエアマイクロメータの測定ヘッドにおいて、
該ヘッド本体の該噴出孔の近傍を除き、少なくともヘッド本体の表面におけるワークとの接触可能な部分に、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が蒸着によりコーティングされていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ヘッド表面におけるワークとの接触可能な部分に、DLC膜が形成されるので、DLC膜が持つ低摩擦性と高い耐摩耗性から、測定時に測定ヘッドの表面をワークの被測定面に接触させたとしても、測定ヘッドの摩耗は低減され、ワークの被測定面の傷付きも防止することができる。また、DLC膜は噴出孔の近傍を除いて形成されるので、測定精度の高いエアマイクロメータの測定ヘッドであっても、DLC膜がその測定に悪影響を与えることはない。
【0011】
ここで、上記DLC膜は、第1層をPVD法によりコーティングし、第2層をCVD法によりコーティングして、ダブルコートすることができる。これにより、DLC膜の低摩擦性と高い耐摩耗性を、より向上させることができる。
【0012】
また、上記ヘッド本体は、ワークの内径を測定する内径用の円柱形のヘッド本体とすることができ、円柱形のヘッド本体の場合、DLC膜は少なくともヘッド本体の先端面及び外周面に形成するとよい。
【0013】
また、上記ヘッド本体は、ワークの外径を測定する外径用のリング状のヘッド本体とすることができ、リング状のヘッド本体の場合、DLC膜は少なくともリング状のヘッド本体の内周面に形成することが好ましい。
【0014】
また、上記ヘッド本体は、ワークの外径を測定する外径用の挟み式の二股状のヘッド本体とすることができ、二股状のヘッド本体の場合、DLC膜は少なくとも二股状のヘッド本体の先端面及び二股内側面に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアマイクロメータの測定ヘッドによれば、ヘッド表面の摩耗を低減できると共に、ワークの被測定面への傷付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すエアマイクロメータの測定ヘッドであって、(a)はワーク内径測定用の円柱状のヘッド本体の側面図、(b)はその断面図である。
【図2】同測定ヘッドのヘッド本体の表面にDLC膜を成膜した状態の説明拡大断面図である。
【図3】同測定ヘッドの使用形態を示すは断面付き側面図である。
【図4】(a)はワーク外径測定用のリング状のヘッド本体の側面図、(b)はその断面図である。
【図5】(a)はワーク外径測定用の挟み式の二股状のヘッド本体の側面図、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は内径を測定するエアマイクロメータの測定ヘッド1の側面図と断面図を示しており、この測定ヘッド1は、円柱状のヘッド本体10を有し、ワークの孔にその円柱状のヘッド本体10を挿入し、その内径を測定するものである。
【0018】
図1に示すように、ヘッド本体10は、例えば特殊工具鋼SKS3(超硬合金)により、その末端に設けた接続部13と一体に、円柱形に形成される。接続部13の外周には接続用のねじが形成される。さらに、ヘッド本体10と接続部13の内部中心軸上には、空気流路4が形成され、この空気流路4の先端部は、ヘッド本体10の先端近傍の外周部に形成された2個の噴出孔3,3と連通接続されている。2個の噴出孔3,3は、ヘッド本体10の外周円の直径位置に形成されている。
【0019】
さらに、図1に示すように、2個の噴出孔3,3の周囲には、環状溝6,6が形成され、環状溝6,6は、その近傍を軸方向に通る軸方向溝5,5に接続されている。これにより、測定時、測定ヘッド1のヘッド本体10をワークの孔に挿入し、噴出孔3,3から空気を噴出させたとき、環状溝6,6及び軸方向溝5,5を通して空気を円滑に排気できるようになっている。
【0020】
さらに、ヘッド本体10の先端面11と外周面12には、図2のように、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)2が蒸着によりコーティングされている。ここで、DLC膜2は、噴出孔3,3の周囲近傍(環状溝6の内側)を除き、コーティングされている。つまり、DLC膜は噴出孔3,3の周囲近傍には形成されていない。また、DLC膜2は、PVD法とプラズマCVD法のダブルコートにより、基材であるヘッド本体10の表面に成膜され、第1層と第2層が重ねてコーティングされる。
【0021】
第1層は、PVD法であるアークイオンプレーティング法またはUBMS(アンバランスドマグネトロンスパッタ)法により、ヘッド本体10の先端面11と外周面12にコーティングする。例えばアークイオンプレーティング法により第1層をコートする場合、真空チャンバー内に、カーボン電極(カソード)を設置すると共に、カーボン電極と対向してアノードとなるヘッド本体を配置し、カーボン電極とヘッド本体(アノード)間に、アーク発生用の電源を接続する。このとき、ヘッド本体10の噴出孔3,3の周囲近傍を除きDLC膜をコーティングするため、噴出孔3,3の周囲にマスキングを施しておく。
【0022】
電源の投入により、カーボン電極とヘッド本体(アノード)間にアーク放電を発生させ、アーク放電により、カーボン電極の表面から炭素をイオン化してカーボンを蒸発させる。このとき、蒸発した炭素イオンはアノードのヘッド本体の表面に向かって堆積する。これにより、ヘッド本体10の先端面11と外周面12にDLC膜2の第1層がコーティングされる。噴出孔3,3の周囲近傍はマスキングされているので、噴出孔3,3の周囲近傍を除いて成膜される。ヘッド本体10の先端面11と外周面12に、PVD法によりコーティングされたDLC膜2の第1層は、その膜厚が例えば、約1μm〜〜約2μm程度であるが、良好な密着性を有し、さらに、その硬度は約2000〜5000Hvを非常に高く、良好な耐摩耗性を有し、DLC膜2の第1層としての優れた性能を発揮することができる。
【0023】
一方、第1層の上に成膜される第2層は、プラズマCVD法によりコーティングする。ヘッド本体10の先端面11と外周面12に、DLC膜2の第2層をコーティングする場合、チャンバー内に原料ガスとしてメタンガスを供給するようにし、チャンバー内に上部電極と下部電極が対向して設置され、高周波電源が両電極間に接続され、ヘッド本体10は下部電極上に配置される。上記と同様、ヘッド本体10の噴出孔3,3の周囲近傍を除き、第2層をコーティングするため、噴出孔3,3の周囲にマスキングを施しておく。
【0024】
プラズマCVD法により、ヘッド本体10の先端面11と外周面12にDLC膜2の第2層をコーティングする場合、チャンバー内に、原料ガスのメタンガスを供給する一方、上部電極と下部電極間に高周波電流を供給し、電極間にプラズマアークを発生させる。この電極間に発生するプラズマアークにより、チャンバー内のメタンガスの炭化水素イオンが加速されて、下部電極上のヘッド本体10の表面に衝突し、堆積する。
【0025】
これにより、ヘッド本体10の先端面11と外周面12に第2層が成膜され、第1層の上に第2層がダブルコーティングされる。第2層の膜厚は、第1層と同様に約1μm〜約2μmであるため、ダブルコートされたDLC膜2の膜厚は約2μm〜約4μmの厚さとなる。さらに、プラズマCVD法によるDLC膜2の第2層は、硬度が約1000〜2000Hvと第1層に比較して低いものの、良好なユニフォーミティー性を有し、表面粗さは低く滑らかであるため、DLC膜2の表面の摩擦係数は約0.15と非常に小さいものとなる。
【0026】
このように、ヘッド本体10の先端面11と外周面12にDLC膜2がダブルコートでコーティングされた測定ヘッド1は、図示しない例えば背圧・差圧式のエアマイクロメータに接続用チューブを介して接続され、ワークW1の孔に図3のように挿入され、ヘッド本体10の噴出孔3,3からワークW1の孔内に空気を噴出し、エアマイクロメータに内蔵された差圧センサにより2系統流路の差圧が検出され、その差圧からワークW1の内径が測定される。
【0027】
測定ヘッド1は、原理的にはワークに対し非接触でワークの内径などを測定するが、ヘッド本体10とワークW1内面との隙間は小さいため、ヘッド本体10の外周面や先端面がワークW1の孔の内面と接触する場合がある。しかし、ヘッド本体10の先端面と外周面に、DLC膜2がコーティングされているので、DLC膜2が持つ低摩擦性と耐摩耗性の高さから、測定時に測定ヘッド1の表面をワークW1の被測定面に接触させた場合でも、測定ヘッド1の摩耗は低減され、ワークW1の被測定面の傷付きも防止することができる。また、DLC膜2は噴出孔3,3の周囲近傍を除いて形成されるので、DLC膜が測定に悪影響を与えることはない。
【0028】
図4は、外径を測定するエアマイクロメータの測定ヘッド1Aの側面図と断面図を示しており、この測定ヘッド1Aは、リング状(環状)のヘッド本体20を有し、円柱状またはパイプ状のワークW2の外周部に、そのリング状のヘッド本体20を外嵌させるように挿通させ、ワークW2の外径を測定するものである。
【0029】
図4に示すように、ヘッド本体20は、例えば特殊工具鋼SKS3(超硬合金)により、その末端に設けた接続部23と一体に、環状に形成される。接続部23の外周には接続用のねじが形成される。さらに、ヘッド本体20と接続部23の内部には、空気流路24が形成され、この空気流路24の先端部は、ヘッド本体20内で両側に分岐し、リング状のヘッド本体20の円形孔の内面、つまりヘッド本体20内の内側空間の内周面21に形成された2個の噴出孔22、22と連通接続されている。内側に形成された2個の噴出孔22、22はリング状のヘッド本体20の円形空気の直径位置に配置されている。
【0030】
ヘッド本体20の噴出孔22,22が開口する内周面21には、上記と同様に、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)2が蒸着によりコーティングされている。ここで、DLC膜2は、噴出孔22,22の周囲近傍を除き、コーティングされる。つまり、DLC膜は噴出孔22,22の周囲近傍には形成されていない。DLC膜2は、上記と同様、PVD法とプラズマCVD法によりダブルコーティングされ、基材であるヘッド本体20の表面に、第1層と第2層が重ねてダブルコートされる。
【0031】
ヘッド本体20の内周面21に、上記と同様に、PVD法によりコーティングされたDLC膜2の第1層は、その膜厚が、例えば約1μm〜〜約2μm程度であるが、良好な密着性を有し、さらに、その硬度は約2000〜5000Hvと非常に高く、良好な耐摩耗性を有し、DLC膜2の第1層としての優れた性能を発揮することができる。
【0032】
さらに、ヘッド本体20の内周面21の第1層の上に、プラズマCVD法により第2層が成膜され、ダブルコーティングされる。第2層の膜厚は、第1層と同様に約1μm〜約2μmであるため、ダブルコートされたDLC膜2の膜厚は約2μm〜約4μmの厚さとなる。さらに、プラズマCVD法によるDLC膜(第2層)は、硬度が約1000〜2000Hvと第1層に比較して低いものの、良好なユニフォーミティー性を有し、表面粗さは低く滑らかであるため、DLC膜2の表面の摩擦係数は約0.15と非常に小さいものとなる。
【0033】
このように、ヘッド本体20の内周面21にDLC膜がコートされた測定ヘッド1Aは、図示しない例えば背圧・差圧式のエアマイクロメータに接続用チューブを介して接続され、円柱またはパイプ状のワークW2を、ヘッド本体20の円形内側空間に挿入するように、ヘッド本体20をワークW2の外周部に挿通させる。そして、ヘッド本体20の噴出孔22,22からワークW2の外周面に空気を噴出し、エアマイクロメータに内蔵された差圧センサにより2系統流路の差圧が検出され、その差圧からワークW2の外径が測定される。
【0034】
測定ヘッド1AをワークW2に外嵌させるように挿通させる際、ヘッド本体20の内周面21がワークW2の外周面と接触する場合があるが、ヘッド本体20の内周面21に、DLC膜がコーティングされるので、DLC膜が持つ低摩擦性と耐摩耗性の高さから、測定時に測定ヘッド1Aの表面をワークW2の被測定面に接触させた場合でも、測定ヘッド1Aの摩耗は低減され、ワークW2の被測定面の傷付きも防止することができる。また、DLC膜は噴出孔22,22の周囲近傍を除いて形成されるので、測定精度の高いエアマイクロメータの測定ヘッドとして使用された場合でも、DLC膜がその測定精度に悪影響を与えることはない。
【0035】
なお、このヘッド本体20では、内周面21にDLC膜をコーティングしたが、ヘッド本体20の外周面や外側平坦面にDLC膜を形成して、低摩擦性と耐摩耗性を付与することもできる。
【0036】
図5は、外径を測定する別のエアマイクロメータの測定ヘッド1Bの側面図と断面図を示しており、この測定ヘッド1Bは、二股のヘッド本体30を有し、円柱状またはパイプ状のワークW2の外周部に、その二股状に開口したヘッド本体30の開口部を外嵌させるように位置させ、ワークW2の外径を測定するものである。
【0037】
図5に示すように、ヘッド本体30は、例えば特殊工具鋼SKS3(超硬合金)により、その末端に設けた接続部33と一体に、先端を二股状に開口して形成される。接続部33の外周には接続用のねじが形成される。さらに、ヘッド本体30と接続部33の内部には、空気流路34が形成され、この空気流路34の先端部は、ヘッド本体30の二股部分で両側に分岐し、ヘッド本体30の二股状に開口した開口部の内面に形成された2個の噴出孔32、32と連通接続されている。二股開口部内側に形成された2個の噴出孔32、32はその内側に挿入される円柱状またはパイプ状のワークWの直径位置に配置されている。
【0038】
ヘッド本体30の噴出孔32,32が開口する二股内側面31及び先端面には、上記と同様に、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)2が第1層と第2層のダブルコートによりコーティングされる。ここで、DLC膜2は、噴出孔32,32の周囲近傍を除き、コーティングされる。つまり、DLC膜は噴出孔32,32の周囲近傍には形成されていない。
【0039】
DLC膜2は、上記と同様、PVD法とプラズマCVD法のダブルコートにより、基材であるヘッド本体30の表面に成膜され、第1層と第2層が重ねてコーティングされる。ヘッド本体30の二股内側面31及び先端面に、PVD法によりコーティングされたDLC膜2の第1層は、その膜厚が例えば、約1μm〜約2μm程度であるが、良好な密着性を有し、さらに、その硬度は約2000〜5000Hvと非常に高く、良好な耐摩耗性を有し、DLC膜2の第1層としての優れた性能を発揮することができる。
【0040】
さらに、ヘッド本体30の二股内側面31及び先端面の第1層の上に、第2層が、プラズマCVD法によりダブルコーティングされる。第2層の膜厚は、第1層と同様に約1μm〜約2μmであるため、ダブルコートされたDLC膜2の膜厚は約2μm〜約4μmの厚さとなる。プラズマCVD法によるDLC膜(第2層)は、硬度が約1000〜2000Hvと第1層に比較して低いものの、良好なユニフォーミティー性を有し、表面粗さは低く滑らかであるため、DLC膜2の表面の摩擦係数は約0.15と非常に小さいものとなる。
【0041】
このように、ヘッド本体30の二股内側面31及び先端面にDLC膜がコーティングされた測定ヘッド1Bは、図示しない例えば背圧・差圧式のエアマイクロメータに接続用チューブを介して接続され、円柱またはパイプ状のワークW2を、ヘッド本体30の二股空間内に挿入するように、二股状のヘッド本体30によりワークW2の外周部を挟むように適用する。そして、ヘッド本体30の噴出孔32,32からワークW2の外周面に空気を噴出し、エアマイクロメータに内蔵された差圧センサにより2系統流路の差圧が検出され、その差圧からワークW2の外径が測定される。
【0042】
測定ヘッド1BをワークW2に外嵌させるように挿通させる際、ヘッド本体30の二股内側面や先端面がワークW2の外周面と接触する場合があるが、ヘッド本体30の二股内側面31及び先端面に、DLC膜が形成されるので、DLC膜が持つ低摩擦性と耐摩耗性の高さから、測定時に測定ヘッド1Bの表面をワークWの被測定面に接触させた場合でも、測定ヘッド1Bの摩耗は低減され、ワークWの被測定面の傷付きも防止することができる。また、DLC膜は噴出孔32,32の周囲近傍を除いて形成されるので、測定精度の高いエアマイクロメータの測定ヘッドとして使用された場合でも、DLC膜がその測定に悪影響を与えることはない。
【0043】
なお、このヘッド本体30では、二股内側面31、先端面にDLC膜をコーティングしたが、ヘッド本体30の外側面にDLC膜を形成して、低摩擦性と耐摩耗性を付与することもできる。
【0044】
また、上記図1〜図5の実施形態では、DLC膜2をコーティングする際、噴出孔3,22、32の周囲をマスキングし、噴出孔3,22、32の周囲近傍を除き、ワークと接触可能な部位にDLC膜をコーティングし、これにより、噴出孔の周囲近傍にDLC膜を形成せず、DLC膜が測定に悪影響を与えないようにしたが、測定ヘッドを使用するエアマイクロメータの測定精度が、例えば±50μmと比較的ラフな場合、噴出孔の周囲近傍にコーティングされるDLC膜の測定精度への影響は少なく、噴出孔3,22、32の周囲をマスキングしてDLC膜2をコーティングする必要はない。
【符号の説明】
【0045】
1 測定ヘッド
2 DLC膜
3 噴出孔
4 空気流路
5 軸方向溝
6 環状溝
10 ヘッド本体
11 先端面
12 外周面
13 接続部
20 ヘッド本体
21 内周面
22 噴出孔
23 接続部
24 空気流路
30 ヘッド本体
31 二股内側面
32 噴出孔
33 接続部
34 空気流路
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体に設けた噴出孔からワークの被測定面に対しエアを噴出し、その背圧または差圧に基づき、ワークの内径、外径、或いは厚さなどを測定するエアマイクロメータの測定ヘッドにおいて、
該ヘッド本体の噴出孔の近傍を除き、少なくとも該ヘッド本体の表面におけるワークとの接触可能な部分に、DLC膜が蒸着によりコーティングされていることを特徴とするエアマイクロメータの測定ヘッド。
【請求項2】
前記DLC膜は、第1層をPVD法によりコーティングされ、第2層をCVD法によりコーティングして、ダブルコートされていることを特徴とする請求項1のエアマイクロメータの測定ヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド本体はワークの内径を測定する内径用の円柱形に形成され、前記DLC膜が少なくとも該ヘッド本体の先端面及び外周面に形成されたことを特徴とする請求項1記載のエアマイクロメータの測定ヘッド。
【請求項4】
前記ヘッド本体はワークの外径を測定する外径用のリング状に形成され、前記DLC膜が少なくとも該リング状のヘッド本体の内周面に形成されたことを特徴とする請求項1記載のエアマイクロメータの測定ヘッド。
【請求項5】
前記ヘッド本体はワークの外径を測定する外径用の挟み式の二股状に形成され、前記DLC膜が少なくとも該ヘッド本体の先端面及び内側面に形成されたことを特徴とする請求項1記載のエアマイクロメータの測定ヘッド。
【請求項6】
ヘッド本体に設けた噴出孔からワークの被測定面に対しエアを噴出し、その背圧または差圧に基づき、ワークの内径、外径、或いは厚さなどを測定するエアマイクロメータの測定ヘッドにおいて、
該ヘッド本体の表面における少なくともワークとの接触可能な部分に、DLC膜が蒸着によりコーティングされていることを特徴とするエアマイクロメータの測定ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−47603(P2012−47603A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190088(P2010−190088)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(595034433)東海挾範株式会社 (9)
【Fターム(参考)】