説明

エアロゾル搬送用流路および粉体分級装置

【課題】気体と混合状態にて搬送される原料粉体を、粉体のサイズまたは密度に応じて複数種類の粉体に分級する粉体分級処理において、円形状から長方形状への流路断面の変換、または長方形状から円形状への流路断面の変換を、流路断面における原料粉体の流れの均一性を保ちながら行う。
【解決手段】円形状流路断面を有する供給用原料粉体流路と、分級部における長方形状流路断面の分級用原料粉体流路とが、コートハンガー型流路により接続され、コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に流路断面を変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルを搬送するための流路構造に関し、特に、気体と混合状態にて搬送される原料粉体(エアロゾル)を、粉体のサイズまたは密度(もしくは比重)に応じて分離することで、原料粉体を複数種類の粉体に分級する粉体分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料粉体を気体に混合させて搬送して、粉体のサイズまたは密度に応じて複数の種類の粉体に分級するような粉体分級装置として様々な構成のものが知られている。
【0003】
例えば、原料粉体を細粉と粗粉とに分級処理するような粉体分級装置では、原料粉体として例えばミクロンオーダーの粒径分布を含む、いわゆる微細な粉体が取り扱われる。また、このような原料粉体では凝集作用が生じ易いため、細粉と粗粉とに分級処理を行う前に原料粉体を解砕して分散させるような分散処理が行われる。
【0004】
粉体分級システムにおいて、原料粉体の投入装置(例えば、定量フィーダなど)から原料粉体の分級装置までの間に例えばエジェクタを配置させ、エジェクタ内に原料粉体を通過させることで原料粉体の分散処理を行うような構成が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような従来の分級システムでは、原料粉体の投入装置に比較的近い位置にエジェクタを備えた分散機が配置され、エジェクタにて分散処理が行われた状態の原料粉体が管路内を通って分級装置に供給される。そのため、分級装置では、解砕して分散された状態の原料粉体に対して分級処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−68577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、分級処理が行われる原料粉体の対象が多様化しており、さらに原料粉体から細粉や粗粉(あるいは高密度粉体や低密度粉体)を高い分級精度でもって分級し、所定の粒径(あるいは密度)範囲の粉体を選択的に確実に取り出したいという要望が増えつつある。また、このような分級精度の向上とともに、分級の処理能力についても向上させることが求められている。
【0008】
分級システムにおいて、処理能力を向上させるためには、長方形状流路断面を有する分級装置を用いることが好ましい。一般的には、他の形状に比して流路内壁面の表面積が小さい円形状流路(管路)を通じて原料粉体が分級装置に供給されることが多い。そのため、分級の処理能力に加えて精度についても向上させるためには、円形状流路断面を長方形状流路断面に円滑に変換して、流路断面における原料粉体の流れの均一性を保つ必要がある。また、原料粉体以外のエアロゾルの搬送においてもこのような流路断面の形状変換に際して、エアロゾルの流れの均一性が保たれることが望ましい。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、気体と混合状態にて搬送される原料粉体を、粉体のサイズまたは密度(もしくは比重)に応じて複数種類の粉体に分級する粉体分級処理において、円形状から長方形状への流路断面の変換、または長方形状から円形状への流路断面の変換を、流路断面における原料粉体の流れの均一性を保ちながら行うことができる粉体分級装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、このような流路断面の変換を行うことができるエアロゾル搬送用流路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、円形状流路断面を有する第1エアロゾル流路と、長方形状流路断面を有する第2エアロゾル流路と、第1エアロゾル流路と第2エアロゾル流路とを接続するコートハンガー型流路と、コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に、または、長方形状流路断面から円形状流路断面に流路断面を変換する、エアロゾル搬送用流路を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、長方形状流路断面を有する分級用原料粉体流路を、長方形状流路断面を有する第1粉体流路と第2粉体流路とのそれぞれに分岐して、原料粉体を第1粉体と第2粉体とに分級する分級部と、円形状流路断面を有する供給用原料粉体流路と、供給用原料粉体流路と分級用原料粉体流路とを接続するコートハンガー型流路と、を備え、コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に流路断面を変換する、粉体分級装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、長方形状流路断面を有する分級用原料粉体流路を、長方形状流路断面を有する第1粉体流路と第2粉体流路とのそれぞれに分岐して、原料粉体を第1粉体と第2粉体とに分級する分級部と、円形状流路断面を有する回収用粉体流路と、第1粉体流路または第2粉体流路と、回収用粉体流路とを接続するコートハンガー型流路と、を備え、コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、長方形状流路断面から円形状流路断面に流路断面を変換する、粉体分級装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、コートハンガー型流路として、複数のコートハンガー型流路がトーナメント方式にて連結された連結流路が用いられる、第2態様または第3態様に記載の粉体分級装置を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、連結流路において、隣接するコートハンガー型流路のそれぞれの長方形状流路断面の一辺が接するように、複数のコートハンガー型流路がトーナメント方式にて連結されている、第4態様に記載の粉体分級装置を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、コートハンガー型流路は、両端縁部分の流路断面の厚さが中央部分の流路断面の厚さよりも大きく、流路断面の中心に対して対称形状を有する、第2態様から第5態様のいずれか1つに記載の粉体分級装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一の態様によれば、円形状流路断面を有する第1エアロゾル流路と、長方形状流路断面を有する第2エアロゾル流路とがコートハンガー型流路により接続され、コートハンガー型流路が、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に流路断面を変換している。また、長方形状流路断面から円形状流路断面に流路断面を変換している。したがって、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、流路断面の形状を円形状と長方形状との間で円滑に変換できる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、円形状流路断面を有する供給用原料粉体流路と、分級部における長方形状流路断面の分級用原料粉体流路とが、コートハンガー型流路により接続され、コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に流路断面を変換している。したがって、分級部において長方形状流路断面を採用して処理能力の向上を図ることができる。それとともに、流路断面における原料粉体の流れの均一性を保ちながら流路断面の形状を円形状と長方形状との間で円滑に変換でき、分級部における分級精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一の実施の形態にかかる粉体分級システムのフロー図
【図2A】本発明の実施の形態の粉体分級装置の外観正面図
【図2B】本発明の実施の形態の粉体分級装置の外観側面図
【図3】本発明の実施の形態の粉体分級装置の分解図
【図4】本発明の実施の形態の粉体分級装置内における各流れの模式図
【図5A】本発明の実施の形態の分級部の外観側面図
【図5B】図5Aの分級部のA−A線断面図
【図6】本発明の実施の形態のコートハンガー型流路の外観図および断面図
【図7A】図6のコートハンガー型流路の断面図(上流側)
【図7B】図6のコートハンガー型流路の断面図(中間部分)
【図7C】図6のコートハンガー型流路の断面図(下流側)
【図8】本発明の実施の形態の変形例にかかるコートハンガー型流路の外観図および断面図
【図9】本発明の実施の形態の変形例にかかるコートハンガー型流路の模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の一の実施の形態にかかる粉体分級装置を備える粉体分級システムの主要な構成について、図1に示すフロー図を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、粉体分級システム1は、定量フィーダ2と、分散機3と、粉体分級装置4と、細粉回収用バグフィルタ5と、粗粉回収用バグフィルタ6と、真空ポンプ7と、クリーンエア供給部8とを備えている。
【0023】
本実施の形態にかかる粉体分級システム1では、例えば0.1μm〜数十μmの粒径分布を含むような原料粉体を気体に混合させた状態(すなわち、固気混合状態)にて搬送して、粉体分級装置4にて細粉(第2粉体:例えば粒径0.1μm〜1μm程度)と粗粉(第1粉体:例えば1μmを超える粒径)に分級して回収するシステムである。
【0024】
このような原料粉体としては、ファインセラミックス、金属材料、高分子材料、電池・電子材料、複合材料、医薬品材料、食品材料など、電子、エネルギ、医療、食品などの各種技術分野にて用いられる無機物および有機物の微粉を対象とするものである。原料粉体から特定の仕様(サイズ、密度など)の粉体を選択的に取り出す処理が本発明の粉体分級処理である。また、原料粉体に含まれる特定の仕様の粉体以外の異物を、原料粉体から取り除く処理についても本発明の粉体分級処理に含まれる。
【0025】
定量フィーダ2は、粉体分級システム1内に対して、原料粉体を定量供給する装置であり、本実施の形態では、例えばマイクロフィーダが用いられる。
【0026】
分散機3はエジェクタを備え、定量フィーダ2にて定量供給された原料粉体をエジェクタ内に通過させることにより解砕して分散させる。分散機3としてはこのように原料粉体を解砕・分散する機能を有する装置であればよく、エジェクタ以外の構成を採用しても良い。
【0027】
粉体分級装置4は、分散機3にて分散されて気体と混合状態にて搬送される原料粉体に対して、慣性力を用いて細粉と粗粉とに選択的に分級する装置である。この粉体分級装置4には、分散部9および分級部10が備えられおり、装置内に供給された原料粉体に対して、分散部9にて再度分散処理を行った後、分級部10にて分級処理を行う。また、粉体分級装置4には、クリーンエア供給部8が接続されており、装置内にクリーンエアが供給される。クリーンエア供給部8より供給されるクリーンエアの流れにより原料粉体が取り囲まれた状態にて分級部10にて分級処理が行われるため、分級部10の内壁面に原料粉体が付着することが防止され、高い分級精度を得ることができる。なお、粉体分級装置4の詳細な構成については後述する。
【0028】
細粉回収用バグフィルタ5は、粉体分級装置4にて分級された細粉を含む粉体気流を濾過して細粉を回収する。同様に、粗粉回収用バグフィルタ6は、粉体分級装置4にて分級された粗粉を含む粉体気流を濾過して粗粉を回収する。
【0029】
図1に示すように、粉体分級システム1において、上述したそれぞれの装置構成は管路(原料粉体の搬送用配管)にて接続されている。真空ポンプ7は、粉体分級システム1の管路全体の下流側端部に接続されており、管路内を吸引することにより、管路内が負圧に保たれて原料粉体の気流による搬送が行われる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ7を用いた真空吸引搬送方式を採用した例について説明するが、原料粉体の搬送方法はその他方式を採用しても良く、例えば、圧縮空気を用いた圧送方式を採用しても良い。
【0030】
細粉回収用バグフィルタ5および粗粉回収用バグフィルタ6のそれぞれの出口の管路上には、開度調節弁5a、6a、流量計5b、6b、および圧力計5c、6cが設けられている。また、クリーンエア供給部8の管路上においても開度調節弁8a、流量計8b、および圧力計8cが設けられている。それぞれの流量計および圧力計が適切な値を示すようにそれぞれの開度調節弁を調節することで、クリーンエア、細粉、粗粉の各流れのバランスを制御できる。
【0031】
次に、粉体分級装置4の構成について図面を参照しながら説明する。粉体分級装置4の外観図(正面図)を図2Aに示し、外観図(側面図)を図2Bに示し、分解図を図3に示す。なお、図3の分解図では、図2Aおよび図2Bの粉体分級装置4の外観図に示す構成部材の中の主要な構成部材について示している。
【0032】
図2A、図2Bおよび図3に示すように、粉体分級装置4は、原料粉体導入部11と、分散板押さえ部材12と、分散板13と、分散板受け部材14と、整流板15と、整流板押さえ部材16と、合流部17と、分離部18と、クリーンエア導入部19と、細粉排出部20と、粗粉排出部21とを備えている。
【0033】
原料粉体導入部11は、定量フィーダ2および分散機3より管路を経由して搬送される原料粉体の投入口となっている。原料粉体導入部11は、管路との接続部分である円形状断面の原料粉体の流路を長方形状断面の流路に変換する、いわゆるコートハンガー型流路を有する。
【0034】
本実施の形態では、分散板13と、この分散板13を上流側および下流側から挟むようにして保持する分散板押さえ部材12および分散板受け部材14とにより、分散部9が構成されている。分散板押さえ部材12は原料粉体導入部11に接続されており、原料粉体導入部11よりの長方形状断面の流れにて原料粉体が分散部9に供給される。分散板13は複数のエジェクタが横一列に隣接配置された構成を有しており、それぞれのエジェクタ内に原料粉体を通過させることで、原料粉体を解砕して分散させる機能を有する。
【0035】
クリーンエア導入部19はクリーンエア供給部8と管路にて接続され、粉体分級装置4におけるクリーンエアの導入口となっている。分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16は、クリーンエア導入部19に接続されたクリーンエアの流路を形成する。クリーンエア流路は、分散部9の原料粉体流路の外周全体を囲み、原料粉体流路と区分された流路として形成される。クリーンエア流路には整流板15が配置され、整流板15は上流側および下流側から分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16により挟まれて保持される。なお、整流板15は、例えば網状の金属部材を積層して構成される。
【0036】
合流部17は分散板受け部材14と接続され、その内側に原料粉体流路を有するとともに、分離部18の内側に配置されることにより、分離部18との内壁面との間で原料粉体流路を囲むクリーンエア流路を形成する。合流部17の下流側先端にて、原料粉体流路とクリーンエア流路とが連通され、分離部18内にて原料粉体の流れを囲むようなクリーンエアの流れが形成される。
【0037】
特に図2Bに示すように、分離部18内では、図示下方側へ向かう原料粉体流路22が、下方へ向かう粗粉流路24(第1粉体流路)と大略横方向に分岐された細粉流路23(第2粉体流路)とに分岐されている。この流路の分岐部分において、慣性力を利用した原料粉体の分級処理が行われ、細粉流れおよび粗粉流れの分離が行われる。なお、本実施の形態では、合流部17および分離部18により分級部10が構成されている。分級部10の詳細な構成については後述する。
【0038】
分離部18の細粉流路23は細粉排出部20に接続され、粗粉流路24は粗粉排出部21に接続される。また、細粉排出部20は管路を介して細粉回収用バグフィルタ5に接続され、粗粉排出部21は管路を介して粗粉回収用バグフィルタ6に接続される。
【0039】
ここで、粉体分級装置4における原料粉体およびクリーンエアなどのそれぞれの流路について、概略的に図4に示す。
【0040】
図4に示すように、粉体分級装置4に供給された原料粉体の流路は、原料粉体導入部11にて、円形状断面の流路25から長方形状断面の流路26へと変換されて、分散板13へと導かれる。分散板13内のそれぞれのエジェクタを通過した原料粉体は、合流部17(および分散板受け部材14)内の長方形状断面の流路27へと吐出される。
【0041】
一方、クリーンエア導入部19から粉体分級装置4に供給されたクリーンエアは、分散板押さえ部材12内にて、長方形状断面の原料粉体流路26を囲むような枠断面状の流路28となって、合流部17の外周へと導かれる。
【0042】
合流部17の外周では、下流側へ向かって枠状断面のクリーンエア流路28の外径が絞られて、合流部17の先端にて原料粉体流路27とクリーンエア流路28とが合流し、その外周全体がクリーンエアにより囲まれた原料粉体流路22となる。
【0043】
その後、分離部18内において、原料粉体流路22が細粉流路23と粗粉流路24とに分岐され、この分岐部分にて原料粉体が細粉と粗粉とに分級される。
【0044】
次に、分級部10(合流部17および分離部18)の詳細な構成について、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図5Aは分級部10の外観側面図であり、図5Bは図5AにおけるA−A線断面図である。
【0045】
図5Aおよび図5Bに示すように、分級部10は、分離部18の内部空間に合流部17が挿入配置されることにより構成されている。合流部17は、その中央に上下方向に貫通する原料粉体流路27を有しており、分散部9からの原料粉体がこの原料粉体流路27を通じて分離部18内に供給される。また、合流部17の外壁部と分離部18の内壁部との間に枠状断面を有するクリーンエア流路28が形成されており、分離部18内に供給される原料粉体の流れの外周全体を囲むように、このクリーンエア流路28を通じてクリーンエアが分離部18内に供給される。なお、クリーンエア流路28の気流は、整流板15を通過する際に整流されて、気流の乱れが抑制される。
【0046】
分離部18内の原料粉体とクリーンエアの合流部分では、長方形状断面の原料粉体流路22が形成されている。この原料粉体流路22は、分岐部分30にて、同じく長方形状断面の粗粉流路24と細粉流路23とに分岐されている。
【0047】
図5Aに示すように、分離部18内の内壁部である互いに対向する第1壁部(壁面)と第2壁部(壁面)とにより、原料粉体流路22はその長方形状断面におけるそれぞれの長辺が画定されている。第1壁部には、分岐部分30にて長方形状開口部33が形成されており(特に、図5B参照)、この開口部33を通じて細粉流路23が原料粉体流路22に連通されている。また、第1壁部および第2壁部は分岐部分30よりもさらに図示下方に延在しており、粗粉流路24の長方形状断面におけるそれぞれの長辺が第1壁部および第2壁部により画定されている。
【0048】
なお、図4および図5Bでは、粗粉流路24の長辺方向の幅が略一定状態にて図示下方に向けて延在するような場合、すなわち直線状の流路として延在する場合を例として説明している。なお、このような粗粉流路24の形態は直線状の流路に限られず、例えば、図2Aおよび図3に示すように下方に向かって長辺方向の幅が減少するように絞られた流路としても良い。また、所定の距離だけ直線状の流路として、その後絞られた流路としても良い。
【0049】
次に、粉体分級装置4における原料粉体導入部11について詳細に説明する。上述したように原料粉体導入部11は、円形状断面の流路25を長方形状断面の流路26に変換して、長方形状流路断面を有する原料粉体の流れを分散板13へ導入する、いわゆるコートハンガー型流路を構成している。ここで、原料粉体導入部11においてコートハンガー型流路を形成する流路形成部材51を図6に示す。なお、図6に示す流路形成部材51が2個、対向して重ね合わせることにより、その内側にコートハンガー型流路50が形成される。
【0050】
図6において、(A)は流路形成部材51の正面図(流路形成側)、(B)は上面図、(C)は下面図、(D)は(A)におけるB−B線断面図、(E)は(A)におけるC−C線断面図を示す。また、図6(A)に示す流路形成部材51を2個、対向して重ね合わせて形成したコートハンガー型流路50の断面図(流れ方向に直交する断面)を図7A〜図7Cに示す。図7Aは、図6(A)のD−D線断面に相当する断面図であり、図7Bは、図6(A)のE−E線断面に相当する断面図であり、図7Cは、図6(A)のF−F線断面に相当する断面図である。
【0051】
図6に示すように、流路形成部材51には、円形状断面の流路25を長方形状断面の流路26に変換する正面視にて大略三角形状の流路(コートハンガー型流路)50が形成されている。この大略三角形状の流路50により、円形状断面の流路25における流路幅が、この流路幅よりも大きな長方形状断面の流路26における流路幅となるように拡大される。流路50の拡大角(大略三角形の頂角)は、例えば鋭角に設定される。
【0052】
図6(A)に特に示すように、流路形成部材51は、流路50の中央部分において平面視にて三角形状の平面として形成された平面部52と、平面部52の両端部分に沿って形成された溝部53とにより画定される。図6(E)に示すように、それぞれの溝部53は、平面部52よりも深く掘り下げられて形成されている。また、図6(A)に示すように、それぞれの溝部53は、上流側から下流側へと向かうにしたがって、その幅が減少するように形成されており、流路50の下流側端部の手前にて溝部53が終端する。
【0053】
流路50の断面形状は、図7Aに示すように上流部分では円形状断面となっており、図7Cに示すように下流部分では長方形状断面となっている。また、上流部分と下流部分との中間部分では、図7Bに示すように、対向する平面部52にて画定される長方形状流路54の両端縁部分に、対向する溝部53にて画定される長方形状流路55が配置された一体的な断面形状を有している。両端縁側の流路55の厚みD1は、中央側の流路54の厚みD2よりも大きく形成されており、流路50は流路断面の中心に対して対称形状を有する。
【0054】
このようなコートハンガー型流路50では、流路50の入口から出口に至るまで、流路50の中央部分を通過する流れと端縁部分を通過する流れとの圧力損失に大きな差が生じないようにその断面形状が設定される。したがって、コートハンガー型流路50では、円形状断面の流路25にて導入される原料粉体の流れを、流路断面において流れの均一性を保ちながら、円形状から長方形状の流れへと徐々に変換し、最終的に長方形状断面の流路26に合致した原料粉体の流れを形成することができる。したがって、原料粉体の流れの均一性を保ちながら原料粉体を分散板13に導入することができ、分散板13にて効率的な分散処理を行うことができる。また、このような分散処理が行われた原料粉体の流れを、長方形状断面の原料粉体流路27を通じて分級部10に導入することができるため、分級部10では均一な原料粉体の流れに対して分級処理を行えるため、分級精度を向上できる。
【0055】
なお、本実施の形態のコートハンガー型流路50は、上述のような構成のみに限定されず、その他様々な構成を採用できる。例えば、図8(A)〜(C)に示すように、同一形状を有する2つのコートハンガー型流路をトーナメント方式にて連結した連結流路60としても良い。なお、図8において、(A)は連結流路60の正面図、(B)は連結流路60の上面図、(C)は(A)の連結流路60におけるG−G線断面図である。
【0056】
具体的には、図8に示すように、連結流路60は、流路形成部材61を2個対向させて重ね合わせて形成される。流路形成部材61には、図6にて説明したコートハンガー型流路50が隣接して配置されている(なお、図6の流路50と同じ構成については同じ参照符号を付してその説明を省略する)。さらに、2つのコートハンガー型流路50の入口であるそれぞれの円形状断面の流路62は、その上流側にて1つの円形状断面の流路25として連結されている。また、2つのコートハンガー型流路50の出口である長方形状断面の流路63は、その下流側にて、長方形状断面の一辺が接するように互いに隣接して配置されている。そのため、それぞれの流路63から吐出される原料粉体の流れを、一体的な流れとすることができる。また、連結流路60は、その断面中心に対して対称形状にて形成されている。
【0057】
このように、複数のコートハンガー型流路をトーナメント方式にて連結した連結流路60では、比較的大流量の流れを短い流路長さにて、流れの均一性を保ちながら、円形状断面から長方形状断面の流路へと変換することができる。したがって、長方形状流路断面のアスペクト比(短辺長さに対する長辺長さの比)が大きいような流路に対して、このような連結流路60を適用することが効果的である。また、流路の対称性、すなわち、流路断面の各位置における圧力損失の均一性を考慮すれば、トーナメント方式にて連結させるコートハンガー型流路の個数は、2の乗数(例えば、2個、4個、8個)の個数であることが好ましい。
【0058】
なお、図8では、同一形状のコートハンガー型流路50をトーナメント方式にて連結するような場合について説明したが、トーナメント方式にて連結する場合には、必ずしも同一形状のコートハンガー型流路を用いる場合に限らず、異なる形状を用いるような場合であっても良い。例えば、原料粉体の流れの慣性を考慮して、流れが均一となるように各流路間や一対の溝部53間において流れの抵抗の差異を個別に設定しても良い。例えば、図9に示す4つのコートハンガー型流路50をトーナメント方式にて連結した連結流路70を用いて具体的に説明する。なお、図9では、各流路やコートハンガー型流路などを模式的に示している。
【0059】
図9に示すように、連結流路70は、4つのコートハンガー型流路50A〜50Dがトーナメント方式にて連結された構成を有している。最上流における1つの円形状断面の流路71は、2つの円形状断面の流路72A、72Bに分岐され、さらにそれぞれの流路72A、72Bは、2つの円形状断面の流路73A〜73D(すなわち、合計4つの流路)に分岐され、個々の流路73A〜73Dが、4つのコートハンガー型流路50A〜50Dの入口に接続されている。
【0060】
このような構成の連結流路70では、流路が分岐されているため、分岐された後の流路において、分岐前の流れによる慣性の影響を受けることになる。例えば、流路72Aから流路73A、73Bへの分岐を参照すると、流路72Aにおける流れの慣性の影響により、流路73Bよりも流路73Aの方が、原料粉体が流れやすくなる。また、流路73Aからコートハンガー型流路50A内へ導入された原料粉体の流れは、流路73Aにおける流れの慣性の影響を受けて、左右の溝部53a、53b間では、溝部53bよりも溝部53aの方が、原料粉体が流れやすくなる。さらに、4つのコートハンガー型流路50A〜50Dの間では、流路50B、50Cよりも流路50A、50Dの方が、原料粉体が流れやすくなる。
【0061】
このような流れの慣性による影響を考慮して、流路73Aの流路断面積を流路73Bの流路断面積よりも小さく設定して流れの抵抗を設けることにより、流路73A、73Bにおける流れを均一にできる。また、コートハンガー型流路50Aにおいて、溝部53aの流路断面積を溝部53bの流路断面積よりも小さく設定することで、それぞれの流れを均一にできる。さらに、4つのコートハンガー型流路50A〜50Dにおいて、それぞれの出口である長方形状断面の流路63A〜63Dの流路断面積(開口面面積)を、流路63A、63Dが、流路63B、63Cよりも小さく設定することで、それぞれの流れを均一にできる。
【0062】
特に、このような原料粉体の流れは、粘性が低く高速の流れであるため、バルブなどの流量調整装置を用いずに、それぞれの流路断面積などを調整して流れを均一化することが好ましい。
【0063】
なお、上述の説明では、コートハンガー型流路を用いて、円形状流路断面から長方形状流路断面へと流路形状を変換するような場合を例として説明したが、コートハンガー型流路において上流側と下流側とを逆向きに用いて、長方形状流路断面から円形状流路断面へと流路形状を変換するようにしても良い。例えば、原料粉体の分級処理が行われた後、長方形状流路断面を有する細粉流路23や粗粉流路24に、このようなコートハンガー型流路を接続して、円形状流路断面へと流路形状を変換することができる。また、トーナメント方式を採用した連結流路についても、このように逆向きに用いても良い。
【0064】
また、上述の実施の形態では、コートハンガー型流路50の入口に接続される管路(円形状断面流路)が、粉体分級装置4に原料粉体を供給する供給用原料粉体流路となっており、細粉流路23および粗粉流路24に接続されるそれぞれのバグフィルタ5、6へ向かう管路(円形状断面流路)が、粉体分級装置4にて分級された粉体を回収する回収用粉体流路となっている。また、細粉流路23と粗粉流路24とに分岐される分岐部分30よりも上流側に位置される長方形状断面を有する流路22、26、27が、分級用原料粉体流路となっている。
【0065】
また、本実施の形態では、粉体分級装置4が、分散部9を備えるような場合を例としたが、分散部を備えない粉体分級装置にも本発明のコートハンガー型流路を適用できる。すなわち、コートハンガー型流路にて長方形状流路断面に変換された原料粉体の流れを、分級部10に直接導入しても良い。
【0066】
上述の実施の形態では、粉体分級装置4が、原料粉体を粉体サイズに応じて分離して、粗粉(第1粉体)と細粉(第2粉体)とに分級するような場合を例として説明したが、本発明の粉体分級装置は、このような場合についてのみ限定されない。本発明の粉体分級装置にて、原料粉体を粉体密度に応じて分離して、原料粉体を高密度粉体(第1粉体)と低密度粉体(第2粉体)とに分級するような場合であっても良い。
【0067】
また、本発明のコートハンガー型流路は、粉体分級装置に適用する場合のみに限定されず、上述した原料粉体の流れ以外のエアロゾルの流れ(エアロゾル搬送用流路)にも適用することができる。
【0068】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 粉体分級システム
2 定量フィーダ
3 分散機
4 粉体分級装置
5 細粉回収用バグフィルタ
6 粗粉回収用バグフィルタ
7 真空ポンプ
8 クリーンエア供給部
9 分散部
10 分級部
13 分散板
17 合流部
18 分離部
22 原料粉体流路
23 細粉流路
24 粗粉流路
30 分岐部分
33 開口部
50 コートハンガー型流路
51 流路形成部材
52 平面部
53 溝部
60 連結流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状流路断面を有する第1エアロゾル流路と、
長方形状流路断面を有する第2エアロゾル流路と、
第1エアロゾル流路と第2エアロゾル流路とを接続するコートハンガー型流路と、
コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に、または、長方形状流路断面から円形状流路断面に流路断面を変換する、エアロゾル搬送用流路。
【請求項2】
気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、
長方形状流路断面を有する分級用原料粉体流路を、長方形状流路断面を有する第1粉体流路と第2粉体流路とのそれぞれに分岐して、原料粉体を第1粉体と第2粉体とに分級する分級部と、
円形状流路断面を有する供給用原料粉体流路と、
供給用原料粉体流路と分級用原料粉体流路とを接続するコートハンガー型流路と、を備え、
コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、円形状流路断面から長方形状流路断面に流路断面を変換する、粉体分級装置。
【請求項3】
気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、
長方形状流路断面を有する分級用原料粉体流路を、長方形状流路断面を有する第1粉体流路と第2粉体流路とのそれぞれに分岐して、原料粉体を第1粉体と第2粉体とに分級する分級部と、
円形状流路断面を有する回収用粉体流路と、
第1粉体流路または第2粉体流路と、回収用粉体流路とを接続するコートハンガー型流路と、を備え、
コートハンガー型流路は、流路断面におけるエアロゾルの流れの均一性を保ちながら、長方形状流路断面から円形状流路断面に流路断面を変換する、粉体分級装置。
【請求項4】
コートハンガー型流路として、複数のコートハンガー型流路がトーナメント方式にて連結された連結流路が用いられる、請求項2または3に記載の粉体分級装置。
【請求項5】
連結流路において、隣接するコートハンガー型流路のそれぞれの長方形状流路断面の一辺が接するように、複数のコートハンガー型流路がトーナメント方式にて連結されている、請求項4に記載の粉体分級装置。
【請求項6】
コートハンガー型流路は、両端縁部分の流路断面の厚さが中央部分の流路断面の厚さよりも大きく、流路断面の中心に対して対称形状を有する、請求項2から5のいずれか1つに記載の粉体分級装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200617(P2012−200617A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64472(P2011−64472)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000129183)株式会社カワタ (120)
【Fターム(参考)】