説明

エキシトン阻止層を有するリン光OLED

エレクトロルミネッセンス・デバイスは、カソードと、アノードと、その両者の間に位置する発光層(LEL)とを備えていて、その発光層が、リン光発光体を含むとともに、そのリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きな三重項エネルギーをそれぞれが持つ少なくとも1種類の正孔輸送共同ホストおよび少なくとも1種類の電子輸送共同ホストを含んでおり、さらに、三重項エネルギーが2.5eV以上である正孔輸送材料を含むエキシトン阻止層を上記発光層のアノード側に隣接して備えている。本発明により、低電圧で輝度効率の大きな光を出すデバイスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシトン阻止層と、正孔輸送材料および電子輸送材料を含むとともにリン光発光体を含む発光層とを備えていて、望ましいエレクトロルミネッセンス特性(例えば高い輝度効率、高い電力効率、低い動作電圧)を提供できる有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて、電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とで構成されている。このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0003】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。この明細書では、“有機EL素子”という用語に、アノード電極とカソード電極に挟まれたいろいろな層が含まれる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子の内部で注入された正孔と電子が再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが出る。
【0004】
正孔輸送層と電子輸送層の間に有機発光層(LEL)を含む3層有機ELデバイスも提案されている。それは例えば、Tangら(J. Applied Physics、第65巻、3610ページ、1989年)によって開示されているものである。発光層は、一般に、ゲスト材料(ドーパントとしても知られる)をドープされたホスト材料からなる。さらに、アメリカ合衆国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が向上した。
【0005】
OLEDデバイスにおいて有用であることが報告されている多くの発光材料は、励起した一重項状態から蛍光を発生させる。励起した一重項状態は、OLEDデバイスの内部で形成されるエキシトンがエネルギーをドーパントの一重項励起状態に移動させるときに作り出すことができる。しかしELデバイスの中で発生するエキシトンのほんの25%だけが一重項エキシトンである。残りのエキシトンは三重項であるため、エネルギーをドーパントに移動させてドーパントの一重項励起状態を作り出すことはできない。その結果、エキシトンの75%は発光プロセスで使用されないため、効率が大きく低下する。
【0006】
三重項エキシトンは、エネルギーが十分に低い三重項励起状態を有するのであれば、エネルギーをドーパントに移動させることができる。ドーパントの三重項状態が発光性であるならば、リン光を発生させることができる。多くの場合、一重項エキシトンは、エネルギーを同じドーパントの最低一重項励起状態に移動させることもできる。一重項励起状態は、項間交差プロセスによって緩和して発光性三重項励起状態になることができる場合がしばしばある。したがってホストとドーパントを適切に選択することにより、OLEDデバイスの中で生成される一重項エキシトンと三重項エキシトンの両方からエネルギーを回収し、非常に効率的なリン光を発生させることができる。リン光発光という用語は、発光メカニズムがリン光であるエレクトロルミネッセンスを指すのに用いることもある。
【0007】
ドーパントの励起状態を作り出すことのできる別の方法は、正孔をドーパントに捕獲させた後に電子と再結合させるか、電子を捕獲させた後に正孔と再結合させるという連続プロセスである。どちらの場合にも、ドーパントの励起状態が直接作り出される。一重項状態と三重項状態、蛍光、リン光、項間交差については、J.G. CalvertとJ.N. Pitts, Jr.、『光化学』(ワイリー社、ニューヨーク、1966年)に記載されており、S.R. Forrestとその共同研究者の論文(例えばM.A. Baldo、D.F. O'Brien、M.E. Thompson、S.R. Forrest、Phys. Rev. B、第60巻、14422ページ、1999年;M.A. Baldo、S.R. Forrest、Phys. Rev. B、第62巻、10956ページ、2000年)にもさらに詳しく記載されている。
【0008】
たいていの有機化合物では、三重項状態からの発光は一般に非常に弱い。なぜなら、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移はスピンによって禁止されているからである。しかし強いスピン-軌道結合相互作用を有する状態を持つ化合物は、三重項励起状態から一重項基底状態への強い発光(リン光)が可能である。例えばfac-トリス(2-フェニル-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(Ir(ppy)3)は緑色の光を出す(K.A. King、P.J. Spellane、R.J. Watts、J. Am. Chem. Soc.、第107巻、1431ページ、1985年;M.G. Colombo、T.C. Brunold、T. Reidener、H.U. Gudel、M. Fortsch、H.-B. Burgi、Inorg. Chem.、第33巻、545ページ、1994年)。リン光材料がIr(ppy)3であり、ホストが4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)である場合に高効率の有機エレクトロルミネッセンス・デバイスになることが明らかにされている(M.A. Baldo、S. Lamansky、P.E. Burrows、M.E. Thompson、S.R. Forrest、Appl. Phys. Lett.、第75巻、4ページ、1999年;T. Tsutsui、M.-J. Yang、M. Yahiro、K. Nakamura、T. Watanabe、T. Tsuji、Y. Fukuda、T. Wakimoto、S. Miyaguchi、Jpn. J. Appl. Phys.、第38巻、L1502ページ、1999年)。リン光材料と、そのような材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス・デバイスに関するさらに別の開示事項は、アメリカ合衆国特許第6,303,238 B1号、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/02714 A2、WO 03/040256 A2、WO 04/016711 A1に見いだされる。
【0009】
リン光OLEDデバイスの効率、電圧、動作安定性を改善するのにホスト混合物が使用されてきた。H. Azizらは、アメリカ合衆国特許第6,392,250 B1号、アメリカ合衆国特許公開2003/0104242 A1、アメリカ合衆国特許公開2003/0134146 A1に、リン光を出す2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II)(PtOEP)ドーパントが含まれるとともに、ほぼ同じ質量%のNPBとAlqがホスト材料として含まれる発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス・デバイスを開示している。R. Kwongらも、アメリカ合衆国特許公開2002/0074935 A1に、PtOEPまたはビス(ベンゾチエニル-ピリジナト-N^C)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)がドーパントとして含まれるとともに、ほぼ同じ割合のNPBとAlqがホスト材料として含まれる発光層を有するデバイスを開示している。アメリカ合衆国特許公開2004/0155238では、OLEDデバイスの発光層は、広いバンド・ギャップを持つ不活性なホスト・マトリックスを、電荷保持材料およびリン光発光体と組み合わせて含んでいる。電荷保持化合物は、正孔または電子を移動させることができ、電荷保持化合物とリン光発光体は、極性が反対の電荷を輸送するように選択される。しかしこの場合には、開示されているこれらの材料を用いた青色OLEDデバイスでかなりの量のリン光発光体を使用する必要があるが、それでも高電圧の問題は解決されない。
【0010】
M. Furugoriらは、アメリカ合衆国特許公開2003/0141809に、発光層の中でホスト材料を別の正孔輸送材料または電子輸送材料と混合したリン光デバイスを開示している。この文書には、複数のホスト化合物を用いたデバイスが所定の電圧においてより多くの電流とより大きな効率を示すことが記載されているが、報告されている輝度のデータは極めて凡庸である。fac-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムがコアになったデンドリマーをベースとした効率的な単層-溶液処理リン光OLEDデバイスが、T. Anthopoulos他、Appl. Phys. Lett.、第82巻、4824ページ、2003年に記載されている。T. Igarashiらは、WO 04/062324 A1において、少なくとも1種類の電子輸送化合物と、少なくとも1種類の正孔輸送化合物と、リン光ドーパントとを含む発光層を備えるリン光デバイスを開示している。さまざまな材料が青色発光体および緑色発光体のための共同ホストとしてテストされた結果、高効率デバイスが報告されている。しかし開示されているOLEDの輝度効率と電力効率はさらに改善することができる。
【0011】
純粋なホストを有するリン光OLEDデバイスにおける大きな発光効率は、通常は、正孔阻止材料を発光層とカソードの間に組み込んで正孔の移動を制限し、電子-正孔再結合とその結果発生するエキシトンを発光層に限定することによって得られる(例えばアメリカ合衆国特許第6,097,147号を参照のこと)。
【0012】
純粋なホストとリン光材料を用いたリン光OLEDデバイスは、電子-正孔再結合イベントを発光層に限定するのを助けるため、正孔阻止層に加え、三重項エネルギーのレベルが適切な少なくとも1種類の正孔輸送層を、発光層のアノード側に隣接した位置に備えることができる。この特徴により、デバイスの効率をさらに大きくすることができる。多くのリン光材料で用いるのに適したエネルギー・レベルを持つ正孔輸送材料の例として、4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA;日本国特開2003-092186Aを参照のこと)、ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)メタン(MPMP;WO 02/02714とWO 03/040257を参照のこと)、N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン(日本国特開2004-139819Aとアメリカ合衆国特許公開2004/018910 A1を参照のこと)などがある。しかしこれらの材料だけを使用するのでは、エレクトロルミネッセンス・デバイスにおいて可能な最適な性能は得られない。
【0013】
M. Thompsonらは、アメリカ合衆国特許公開2004/0048101において、電子阻止層と、純粋なホストおよびリン光発光体が含まれた発光層とを備える青色リン光OLEDデバイスと白色リン光OLEDデバイスを開示している。電子阻止層を正孔輸送層と発光層の間に挿入することによって電子の漏れをなくせるため、輝度効率が大きくなる。fac-トリス(1-フェニルピラゾラト- N,C2')イリジウム(III)(Irppz)とイリジウム(III)ビス(1-フェニルピラゾラト-N,C2')(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-O,O)(ppz2Ir(dpm))が、適切な電子阻止材料として知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
こうした進歩にもかかわらず、デバイスの効率を向上させ、駆動電圧を低下させるとともに、動作安定性などの他の特徴を改善することが相変わらず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、カソードと、アノードと、その両者の間に位置する発光層(LEL)とを備えていて、その発光層が、リン光発光体を含むとともに、そのリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きな三重項エネルギーをそれぞれが持つ少なくとも1種類の正孔輸送共同ホストおよび少なくとも1種類の電子輸送共同ホストを含んでおり、さらに、三重項エネルギーが2.5eV以上である正孔輸送材料を含むエキシトン阻止層を上記発光層のアノード側に隣接して備えるOLEDデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデバイスは、効率が改善され、駆動電圧が低下している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
エレクトロルミネッセンス・デバイスは上記のようにまとめられる。このデバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層のいずれか、またはオプションであるこれらの層のうちの2つ以上を備えることもできる。
【0018】
本発明によれば、ELデバイスの発光層は、正孔輸送材料からなる少なくとも1種類の共同ホストと、電子輸送材料からなる少なくとも1種類の共同ホストと、1種類以上のリン光発光体とを含んでいる。効率を向上させるエキシトン阻止層は、発光層のアノード側に隣接させて配置する。
【0019】
適切な共同ホスト材料は、三重項エキシトンの移動が、ホスト材料からリン光発光体へは効率的に起こるが、リン光発光体からホスト材料へは効率的に起こらないものを選択せねばならない。したがってリン光発光体の三重項エネルギーは、それぞれの共同ホスト材料の三重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。一般に、三重項エネルギーが大きいというのは、光学的バンド・ギャップが大きいことを意味する。しかし共同ホスト材料のバンド・ギャップは、発光層に電荷キャリアを注入する際に許容できないほどの障壁が発生したり、OLEDデバイスの駆動電圧が許容できないほど大きくなったりしないように選択せねばならない。
【0020】
デバイスの膜の形状、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、発光層は2種類以上のホスト材料を含んでいる。発光層は、優れた正孔輸送特性を有する第1の共同ホスト材料と、優れた電子輸送特性を有する第2の共同ホスト材料を含んでいることが非常に望ましい。
【0021】
望ましい正孔輸送共同ホストとしては、その共同ホストの三重項エネルギーが使用するリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きくなっていさえすれば適切な任意の正孔輸送化合物が可能であり、例えばトリアリールアミンやカルバゾールがある。
【0022】
本発明で共同ホストとして使用される正孔輸送化合物の適切な1つのクラスは、芳香族第三級アミンである。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0023】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(1):
【化1】

で表わされるものがある。ただし、Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン、シクロアルキレン、アルキレンなど)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリールである場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0024】
構造式(1)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(2):
【化2】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール、アルキルのいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキルを完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリールを表わし、そのアリールは、構造式(3):
【化3】

に示したように、ジアリール置換されたアミノによって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に、アリールの中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0025】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(3)に示したように、アリーレンを通じて結合した2つのジアリールアミノが挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(4):
【化4】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に選択したアリーレン(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の中から選択され;
R1〜R4は、独立に選択したアリールである。
【0026】
典型的な一実施態様では、R1〜R4のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0027】
上記の構造式(1)、(2)、(3)、(4)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を環に含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール基とアリーレン基は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0028】
有用な化合物の代表例として以下のものがある。
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD);
4,4'-ビス-ジフェニルアミノ-テルフェニル;
2,6,2',6'-テトラメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-ベンジジン。
【0029】
適切な一実施態様では、正孔輸送共同ホストは、一般式(5)の材料を含んでいる。
【0030】
【化5】

【0031】
一般式(5)において、Ar1〜Ar6は、独立に、芳香族基(例えばフェニルまたはトリル)を表わし;
R1〜R12は、独立に水素であるか、独立に選択した置換基(例えば、1〜4個の炭素原子を含むアルキル、アリール、置換されたアリール)を表わす。
【0032】
適切な材料の例として以下のものが挙げられるが、これですべてではない。
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン。
【0033】
望ましい一実施態様では、正孔輸送共同ホストは、一般式(6)の材料を含んでいる。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(6)において、
R1とR2は置換基を表わすが、R1とR2が合わさって環を形成することもでき(例えばR1とR2をメチルにすること、またはR1とR2が合わさってシクロヘキシル環を形成することができる);
Ar1〜Ar4は、独立に選択した芳香族基(例えばフェニルまたはトリル)を表わし;
R3〜R10は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールを表わす。
【0036】
適切な材料の例として以下のものが挙げられるが、これですべてではない。
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン;
4,4'-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)]-ベンゼンアミン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-メチルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-3-フェニルプロパン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)メタン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)エタン;
4-(4-ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;
4,4'-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0037】
正孔輸送共同ホストとして用いるのに適したトリアリールアミンの有用な1つのクラスとして、一般式(7)で表わされるカルバゾール誘導体がある。
【0038】
【化7】

【0039】
一般式(7)において、
Qは、独立に、窒素、炭素、アリール、置換されたアリールのいずれかを表わすが、フェニルであることが好ましく;
R1は、アリールまたは置換されたアリールであることが好ましく、それ以上にフェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニルであることが好ましく;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかであり;
nは、1〜4の中から選択される。
【0040】
一般式(7)を満たすカルバゾールの別の有用なクラスは、一般式(8)で表わされる。
【化8】

ただし、nは1〜4の整数であり、
Qは、窒素、炭素、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかである。
【0041】
有用な置換されたカルバゾールの代表例として以下のものがある。
4-(9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン(TCTA);
4-(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン;
9,9'-[5'-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル][1,1':3',1"-テルフェニル]-4,4"-ジイル]ビス-9H-カルバゾール。
【0042】
適切な一実施態様では、正孔輸送共同ホストは、一般式(9)の材料を含んでいる。
【0043】
【化9】

【0044】
一般式(9)において、
nは1〜4の中から選択され;
Qは、独立に、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかを表わし;
R1〜R6は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかである。
【0045】
適切な材料の例として以下のものがある。
9,9'-(2,2'-ジメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP);
9,9'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス-9H-カルバゾール(CBP);
9,9'-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール(mCP);
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール;
9,9',9"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-9H-カルバゾール;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン。
【0046】
本発明における正孔輸送共同ホストの最適濃度は実験によって決定することができ、発光層に含まれる正孔輸送共同ホスト材料と電子輸送共同ホスト材料の合計値の10〜60質量%の範囲が可能であるが、15〜30質量%の範囲であることがしばしば見られる。
【0047】
望ましい電子輸送共同ホストとしては、その三重項エネルギーが使用するリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きくなっていさえすれば適切な任意の電子輸送化合物が可能であり、例えばベンズアゾール、フェナントロリン、1,3,4-オキサジアゾール、トリアゾール、トリアジン、トリアリールボランがある。
【0048】
ベンズアゾールの好ましい1つのクラスが、Jianmin Shiらによってアメリカ合衆国特許第5,645,948号と第5,766,779号に記載されている。このような化合物は、構造式(10)によって表わされる。
【0049】
【化10】

【0050】
構造式(10)において、
nは2〜8の中から選択され;
Zは、独立に、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を有するアリール、またはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、これら以外の複素環系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Xは、炭素、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかからなる結合単位であり、多数のベンズアゾールを共役または非共役に結合させる。
【0051】
有用なベンズアゾールの一例は、以下の一般式(11)で表わされる2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)である。
【0052】
【化11】

【0053】
共同ホストとして用いるのに適した電子輸送材料の別の1つのクラスとして、一般式(12)で表わされるさまざまな置換されたフェナントロリンがある。
【0054】
【化12】

【0055】
一般式(12)において、R1〜R8は、独立に、水素、アルキル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり、R1〜R8のうちの少なくとも1つは、アリールまたは置換されたアリールである。
【0056】
適切な材料の例は、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-フェナントロリン(BCP)(一般式(13)参照)と4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)(一般式(14)参照)である。
【0057】
【化13】

【0058】
本発明において電子輸送共同ホストとして機能するトリアリールボランは、一般式(15)を持つ化合物:
【化14】

の中から選択することができる。ただし、
Ar1〜Ar3は、独立に、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基であり、その環には置換基が含まれていてもよい。上記の構造を有する化合物は、一般式(16)の化合物:
【化15】

(ただし、R1〜R15は、独立に、水素、フルオロ、シアノ、トリフルオロメチル、スルホニル、アルキル、アリール、置換されたアリールのいずれかである)の中から選択することが好ましい。
【0059】
トリアリールボランの特別な代表例として以下のものがある。
【0060】
【化16】

【0061】
本発明における電子輸送共同ホストは、置換された1,3,4-オキサジアゾールの中から選択することができる。有用な置換されたオキサジアゾールの代表例は、以下のものである。
【0062】
【化17】

【0063】
本発明における電子輸送共同ホストは、置換された1,2,4-トリアゾールの中から選択することもできる。有用なトリアゾールの一例は、一般式(22)で表わされる3-フェニル-4-(1-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾールである。
【0064】
【化18】

【0065】
本発明における電子輸送共同ホストは、置換された1,3,5-トリアジンの中から選択することもできる。適切な材料の例は、以下のものである。
2,4,6-トリス(ジフェニルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリカルバゾロ-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(N-フェニル-2-ナフチルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(N-フェニル-1-ナフチルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
4,4',6,6'-テトラフェニル-2,2'-ビ-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス([1,1':3',1"-テルフェニル]-5'-イル)-1,3,5-トリアジン;
【0066】
本発明における電子輸送共同ホストの最適濃度は実験によって決定することができ、40〜90質量%の範囲が可能であるが、70〜85質量%の範囲であることがしばしば見られる。
【0067】
すでに説明したように、リン光発光体を用いたOLEDデバイスは、共同ホストとリン光発光体を含む発光層に三重項エキシトンを限定するのを助けるため、少なくとも1つのエキシトン阻止層108(図1)を、発光層109のアノード側に隣接した位置に備えることができる。エキシトン阻止層が三重項エキシトンを限定できるためには、この層の材料の三重項エネルギーがリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きい必要がある。そうなっていなくて発光層に隣接する層に含まれるどの材料の三重項エネルギーもリン光発光体の三重項エネルギーよりも低い場合には、その材料はしばしば発光層の中で励起状態が抑えられることになり、デバイスの輝度効率が低下する。電子が発光層からエキシトン阻止層に逃げるのをエキシトン阻止層が阻止することで、そのエキシトン阻止層が電子-正孔再結合イベントを発光層に限定するのも助けていることが望ましい場合もある。エキシトン阻止層がこの電子阻止特性を持つためには、この層の材料の固体状態電子親和性が、発光層に含まれる材料の電子親和性よりも少なくとも0.1eV、好ましくは少なくとも0.2eV大きい必要がある。
【0068】
われわれは、選択したエキシトン阻止材料の三重項エネルギーが2.5eV以上だと、発光層に共同ホストとリン光発光体を用いたOLEDデバイスの輝度収率と電力効率を著しく改善できることを見いだした。
【0069】
三重項エネルギーは、例えばS.L. Murov、I. Carmichael、G.L. Hug、『光化学ハンドブック』(第2版、マルセル・デッカー社、ニューヨーク、1993年)に記載されているように、いくつかある手段のうちの任意の手段で容易に測定される、
【0070】
化合物の三重項状態は計算することもできる。分子の三重項状態のエネルギーは、その分子の基底状態のエネルギー(E(gs))と、その分子の最低三重項状態のエネルギー(E(ts))の差として定義される(どちらも単位はeV)。これらのエネルギーは、ガウシャン98(ガウシャン社、ピッツバーグ、ペンシルヴェニア州)コンピュータ・プログラムに含まれているB3LYP法を利用して計算できる。B3LYP法で使用される基本セットは、以下のように定義される。すなわち、MIDI!(MIDI!が定義されているすべての原子に対して用いる)と、6-31G*(6-31G*で定義されているが、MIDI!では定義されていないすべての原子に対して用いる)と、LACV3PまたはLANL2DZという基本セットと擬ポテンシャル(MIDI!または6-31G*で定義されていない原子に対して用いられ、LACV3Pのほうが好ましい)である。残るすべての原子に関しては、公開されている任意の基本セットと擬ポテンシャルを用いることができる。MIDI!、6-31G*、LANL2DZは、ガウシャン98コンピュータ・コードに含まれているものが用いられ、LACV3Pは、Jaguar4.1(シュレーディンガー社、ポートランド、オレゴン州)コンピュータ・コードに含まれているものが用いられる。各状態のエネルギーは、その状態の最小エネルギー構造に関して計算される。2つの状態のエネルギー差は(式1)によってさらに変更されて、三重項状態のエネルギー(E(t))が得られる。
E(t) = 0.84×(E(ts) - E(gs)) + 0.35 (式1)
【0071】
ポリマー材料またはオリゴマー材料では、十分なサイズの1つのモノマーまたはオリゴマーで三重項エネルギーを計算すれば十分であり、追加のユニットがリン光発光材料の三重項エネルギーの計算値を実質的に変化させることはない。
【0072】
所定の化合物に関する三重項状態のエネルギーの計算値は、一般に実験値からいくらかずれている可能性がある。したがって計算値は、適切な材料を選択する際の大まかなガイドとしてだけ利用すべきである。
【0073】
エキシトン阻止層の厚さは1〜500nmが可能であり、10〜300nmが適している。この範囲の厚さは、製造の際に制御することが比較的容易である。
【0074】
エキシトン阻止層108は、大きな三重項エネルギーを持つことに加え、正孔を発光層109に輸送することができねばならない。
【0075】
アノードと発光層の間にあるエキシトン阻止層に堆積される正孔輸送材料は、エキシトン阻止材料の三重項エネルギーが2.5eV以上であれば、本発明で共同ホストとして使用される正孔輸送化合物と同じでも異なっていてもよい。エキシトン阻止層は、2種類以上の化合物を含むことができる。その化合物は、混合物として堆積させること、または別々の層に分割することができる。
【0076】
エキシトン阻止材料は、1種類以上のトリアリールアミン基を持つ化合物を含むことができ、その化合物の三重項エネルギーは、リン光材料の三重項エネルギーよりも大きくて2.5eV以上である。三重項エネルギーに関するこのような条件を満たすには、その化合物が芳香族縮合環(例えばナフタレン)を含んでいてはならない。
【0077】
本発明においてエキシトン阻止材料として機能する置換されたトリアリールアミンは、化学式(23)を持つ化合物の中から選択することができる。
【0078】
【化19】

【0079】
化学式(23)において、Areは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールの中から選択され;
R1〜R4は、独立に選択したアリールであり;
ただしAreとR1〜R4は、芳香族炭化水素縮合環を含んでおらず;
nは1〜4の整数である。
【0080】
適切な一実施態様では、エキシトン阻止材料は、一般式(24)の材料:
【化20】

を含んでいる。ただしAr1〜Ar6は、独立に、芳香族基(例えばフェニルまたはトリル)を表わし;
R1〜R12は、独立に、水素であるか、独立に選択した置換基(例えば1〜4個の炭素原子を含むアルキル、アリール、置換されたアリール)を表わすが;
R1〜R12とAr1〜Ar6は、芳香族炭化水素縮合環を含んでいない。
【0081】
エキシトン阻止層108において有用な材料の例として以下のものが挙げられるが、これですべてではない。
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン。
【0082】
望ましい一実施態様では、エキシトン阻止層に含まれる材料は、一般式(25)の中から選択する。
【0083】
【化21】

【0084】
一般式(25)において、R1とR2は置換基を表わす。ただしR1とR2は、合わさって環を形成することができる。例えばR1とR2をメチルにすること、またはR1とR2が合わさってシクロヘキシル環を形成することができる。Ar1〜Ar4は、独立に選択した芳香族基(例えばフェニルまたはトリル)を表わす。R3〜R10は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール
を表わす。望ましい一実施態様では、R1〜R2、Ar1〜Ar4、R3〜R10は、芳香族縮合環を含んでいない。
【0085】
このような材料をいくつか挙げると以下のようになるが、これですべてではない。
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC):
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン;
4,4'-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)]-ベンゼンアミン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-メチルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-3-フェニルプロパン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)メタン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)エタン;
4-(4-ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;
4,4'-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0086】
本発明のエキシトン阻止層に関する条件を満たす1つの材料はTAPCである。三重項エネルギーは、構造的に関連した化合物であるトリフェニルアミンの三重項エネルギーとほぼ等しく、3.0eVであるS.L. Murov、I. Carmichael、G.L. Hug、『光化学ハンドブック』(第2版、マルセル・デッカー社、ニューヨーク、1993年)。緑色リン光材料の三重項エネルギーは一般に約2.5eVであり、青色リン光材料の三重項エネルギーは約2.8eVになる可能性がある。したがってTAPCは、三重項エネルギーが3.0eV未満の緑色リン光材料または青色リン光材料とともに用いるのであれば、エキシトン阻止層の三重項エネルギーが2.5eVを超えるという条件を満たす。この条件は、特徴的なリン光が黄色、オレンジ色、赤色のいずれかである場合に一般的であるように、リン光材料の三重項エネルギーがさらに低い場合にも満たされる。エキシトン阻止材料に対する三重項エネルギーの条件が満たされない化合物の一例はNPBである。
【0087】
適切な一実施態様では、エキシトン阻止材料は、一般式(26)の材料:
【化22】

を含んでいる。ただし、
nは1〜4の整数であり;
QはN、C、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1は、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかであるが、R2〜R7は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない。
【0088】
エキシトン阻止材料は、一般式(27):
【化23】

の中から選択されることがさらに望ましい。ただし、
nは1〜4の整数であり;
QはN、C、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾールのいずれかであるが、R2〜R7は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない。
【0089】
このような材料をいくつか挙げると以下のようになるが、これですべてではない。
4-(9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン(TCTA);
4-(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン;
9,9'-[5'-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル][1,1':3',1"-テルフェニル]-4,4"-ジイル]ビス-9H-カルバゾール。
【0090】
適切な一実施態様では、エキシトン阻止材料は、一般式(28)の材料:
【化24】

を含んでいる。ただし、
nは1〜4の整数であり;
Qは、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかであるが、R1〜R6は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない。
【0091】
このような材料をいくつか挙げると以下のようになるが、これですべてではない。
9,9'-(2,2'-ジメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP);
9,9'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス-9H-カルバゾール(CBP);
9,9'-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール(mCP);
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール;
9,9',9"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-9H-カルバゾール;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン;
9-フェニル-9H-カルバゾール。
【0092】
エキシトン阻止層108は、単独で使用すること、または正孔輸送層107とともに使用することができる。
【0093】
この明細書に記載したように、正孔輸送共同ホスト材料と、電子輸送共同ホスト材料と、少なくとも1種類のリン光発光体をエキシトン阻止層と組み合わせて用いると、非常に大きな輝度効率と低い駆動電圧が得られることが見いだされた。
【0094】
一実施態様では、リン光発光材料と、その発光材料のための共同ホストとを含む発光層と、アノードに隣接する正孔注入層を、エキシトン阻止層とともに用いる。正孔注入層は、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているように、プラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーを含むことが好ましい。さらに別の一実施態様では、リン光発光材料と、その発光材料のための共同ホストとを含む発光層と、発光層のカソード側に位置する正孔阻止層110を、エキシトン阻止層とともに用いる。
【0095】
本発明によれば、ELデバイスの発光層109は、正孔輸送共同ホスト材料と、電子輸送共同ホスト材料と、1種類以上のリン光発光体を含んでいる。リン光発光ゲスト材料は、一般に、発光層の1〜20質量%の量が存在している。この量は、発光層の2〜8質量%であることが好ましい。いくつかの実施態様では、リン光錯体ゲスト材料を1種類以上のホスト材料と結合させることができる。ホスト材料はポリマーでもよい。便宜上、この明細書ではリン光発光ゲスト材料をリン光材料またはリン光発光体と呼ぶ。
【0096】
特に有用なリン光材料は、以下の一般式(29):
【化25】

で表わされる。ただし、
Aは、少なくとも1個の窒素原子を含む、置換された、または置換されていない複素環であり;
Bは、置換された芳香族環、置換されていない芳香族環、置換された複素芳香族環、置換されていない複素芳香族環、Mに結合したビニルCを含む環のいずれかであり;
X-Yは、アニオン性二座リガンドであり;
MがRhまたはIrのときには、mが1〜3の整数、nが0〜2の整数で、m+n=3となっており;
MがPtまたはPdのときには、mが1〜2の整数、nが0〜1の整数で、m+n=2となっている。
【0097】
一般式(29)の化合物は、中心にある金属原子が、その金属原子が1つ以上のリガンドの炭素原子または窒素原子に結合することによって形成された環状単位に含まれていることを示す意味で、C,N-(またはC^N-)シクロメタル化錯体と呼ぶことができる。一般式(29)に含まれる複素環Aとしては、置換されているか置換されていないピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、インドール環、インダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環が挙げられる。一般式(29)に含まれる環Bとして、置換されているか置換されていないフェニル環、ナフチル環、チエニル環、ベンゾチエニル環、フラニル環が挙げられる。一般式(29)に含まれる環Bは、ピリジンなどのN含有環でもよい。ただし、そのN含有環は、一般式(29)からわかるように、N原子ではなくC原子を通じてMと結合している。
【0098】
一般式(29)においてm=3、n=0であるトリス-C,N-シクロメタル化錯体の一例は、トリス(2-フェニル-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)であり、その立体図を面異性体(fac体)または稜異性体(mer体)として以下に示す。
【0099】
【化26】

【0100】
一般に、面異性体は稜異性体よりもリン光の量子収率が大きいことがしばしば見られるため、面異性体のほうが好まれる。一般式(29)によるトリス-C,N-シクロメタル化リン光材料の別の例は、トリス(2-(4'-メチルフェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(3-フェニルイソキノリナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(1-(4'-メチルフェニル)イソキノリナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(2-((5'-フェニル)-フェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)、トリス(2-フェニル-3,3'-ジメチル)インドラト-N,C2')イリジウム(III)、トリス(1-フェニル-1H-インダゾラト-N,C2')イリジウム(III)である。
【0101】
トリス-C,N-シクロメタル化リン光材料には、一般式(29)においてモノアニオン性二座リガンドX-Yが別のC,N-シクロメタル化リガンドである化合物も含まれる。例として、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2')(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')(1-フェニルイソキノリナト-N,C2')イリジウム(III)などがある。2つの異なるC,N-シクロメタル化リガンドを含むこのようなトリス-C,N-シクロメタル化錯体は、以下のステップによって容易に合成することができる。まず最初に、ビス-C,N-シクロメタル化二イリジウム二ハロゲン化物錯体(または同様の二ロジウム錯体)をNonoyamaの方法(Bull. Chem. Soc. Jpn、第47巻、767ページ、1974年)に従って製造する。次に、第2の異なるC,N-シクロメタル化リガンドの亜鉛錯体を、ハロゲン化亜鉛をそのシクロメタル化リガンドのリチウム錯体またはグリニャール試薬と反応させることによって調製する。第3に、このようにして形成された第2のC,N-シクロメタル化リガンドの亜鉛錯体を、すでに得られているビス-C,N-シクロメタル化二イリジウム二ハロゲン化物錯体と反応させ、2つの異なるC,N-シクロメタル化リガンドを含むトリス-C,N-シクロメタル化錯体を形成する。このようにして得られる2つの異なるC,N-シクロメタル化リガンドを含むトリス-C,N-シクロメタル化錯体は、適切な溶媒(例えばジメチルスルホキシド)の中で加熱することによって変換し、金属(例えばIr)に結合したC原子がすべて互いにシスである異性体にすることが望ましい。
【0102】
一般式(29)に従う適切なリン光材料は、C,N-シクロメタル化リガンドに加え、C,N-シクロメタル化リガンドではないモノアニオン性二座リガンドX-Yも含むことができる。一般的な例は、β-ジケトン酸塩(例えばアセチルアセトネート)とシッフ塩基(例えばピコリネート)である。一般式(29)に従うこのような混合リガンド錯体の例としては、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)などがある。
【0103】
一般式(29)に従う他の重要なリン光材料としては、C,N-シクロメタル化Pt(II)錯体である例えばシス-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)ピリジナト-N,C3')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)キノリナト-N,C5')白金(II)、(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')白金(II)(アセチルアセトネート)などがある。
【0104】
一般式(29)に従うC,N-シクロメタル化リン光材料の発光波長(色)は、主として錯体の最低エネルギー光遷移によって支配されているため、C,N-シクロメタル化リガンドとして何を選択するかによって決まる。例えば2-フェニル-ピリジナト-N,C2'錯体は一般に緑色の光を出すのに対し、1-フェニル-イソキノリノラト-N,C2'錯体は一般に赤色の光を出す。2つ以上のC,N-シクロメタル化リガンドを有する錯体の場合には、発光は、最も長い発光波長の性質を持つリガンドの発光になろう。発光波長は、C,N-シクロメタル化リガンド上の置換基の効果によってさらにシフトさせることができる。例えばN含有環A上の適切な位置で電子供与性基が置換されていたり、C含有環B上に電子求引性基があったりすると、置換されていないC,N-シクロメタル化リガンド錯体と比べて発光が青色側にシフトする傾向がある。電子求引性がより強い一般式(29)の一座アニオン性リガンドX、Yを選択しても、C,N-シクロメタル化リガンド錯体の発光が青色側にシフトする傾向がある。電子求引性を有するモノアニオン性二座リガンドと、電子求引性置換基の両方をC含有環B上に備えた錯体の例として、ビス(4',6'-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)、ビス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(テトラキス(1-ピラゾリル)ボレート)などがある。
【0105】
一般式(29)に従うリン光材料の中心にある金属原子は、m+n=3だとRhまたはIr、m+n=2だとPdまたはPtが可能である。好ましい金属原子はIrとPtである。なぜならこれら金属原子は、第3遷移元素系列の元素ではより強いスピン-軌道結合相互作用が一般に得られるためにより大きなリン光量子効率を与える傾向があるからである。
【0106】
一般式(29)で表わされる二座C,N-シクロメタル化錯体に加え、多座C,N-シクロメタル化リガンドを含む適切なリン光発光体が多数ある。本発明で用いるのに適した三座リガンドを有するリン光発光体は、アメリカ合衆国特許第6,824,895 B1号およびアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,238号(係属中)と、その中の参考文献に開示されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。本発明で用いるのに適した四座リガンドを有するリン光発光体は、以下の一般式:
【化27】

で表わされる。ただし、
MはPtまたはPdであり;
R1〜R7は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7は、合わさって環基を形成していてもよく;
R8〜R14は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14は、合わさって環基を形成していてもよく;
Eは、以下に示すもの:
【化28】

の中から選択した架橋基を表わし、
その中にあるRとR'は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、RとR'は合わさって環基を形成していてもよい。
【0107】
望ましい一実施態様では、本発明で用いるのに適した四座C,N-シクロメタル化リン光発光体は、以下の一般式:
【化29】

で表わされる。ただし、
R1〜R7は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7は、合わさって環基を形成していてもよく;
R8〜R14は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14は、合わさって環基を形成していてもよく;
Z1〜Z5は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、Z1とZ2、Z2とZ3、Z3とZ4、Z4とZ5は、合わさって環基を形成していてもよい。
【0108】
本発明で用いるのに適した四座C,N-シクロメタル化リガンドを有するリン光発光体の具体例として、以下に示す化合物X、Y、Zがある。
【0109】
【化30】

【0110】
四座C,N-シクロメタル化リガンドを有するリン光発光体は、適切な有機溶媒(例えば氷酢酸)の中で四座C,N-シクロメタル化リガンドを望ましい金属の塩(例えばK2PtCl4)と反応させて四座C,N-シクロメタル化リガンドを有するリン光発光体を形成することによって合成できる。テトラアルキルアンモニウム塩(例えば塩化テトラブチルアンモニウム)を相間移動触媒として用いて反応を促進することができる。
【0111】
他のリン光材料として、C,N-シクロメタル化リガンドを含まないものが知られている。マレオニトリルジチオレートと、Pt(II)、Ir(I)、Rh(I)のいずれかとのリン光錯体が報告されている(C.E. Johnson他、J. Am. Chem. Soc.、第105巻、1795ページ、1983年)。Re(I)トリカルボニルジイミン錯体も強いリン光を出すことが知られている(M. WrightonとD.L. Morse、J. Am. Chem. Soc.、第96巻、998ページ、1974年;D.J. Stufkens、Comments Inorg. Chem.、第13巻、359ページ、1992年;V.W.W. Yam、Chem. Commun.、789ページ、2001年)。シアノ・リガンドと、ビピリジル・リガンドまたはフェナントロリン・リガンドとの組み合わせを含むOs(II)錯体もリン光を出すことが、ポリマーOLEDにおいて明らかにされている(Y. Ma他、Synthetic Metals、第94巻、245ページ、1998年)。
【0112】
ポルフィリン錯体(例えば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II))も有用なリン光材料である。
【0113】
有用なリン光材料のさらに別の例として、三価のランタニド(例えばTb3+、Eu3+)の配位錯体がある(J. Kido他、Chem. Lett.、657ページ、1990年;J. Alloys and Compounds、第192巻、30ページ、1993年;Jpn. J. Appl. Phys.、第35巻、L394ページ、1996年;Appl. Phys. Lett.、第65巻、2124ページ、1994年)。
【0114】
適切なリン光材料とその合成法に関する追加情報を見いだすことができるのは、アメリカ合衆国特許第6,303,238 B1号、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0182441 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0072964 A1、アメリカ合衆国特許第6,413,656 B1号、アメリカ合衆国特許第6,687,266 B1号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0086743 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0121184 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0059646 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0054198A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、ヨーロッパ特許第1 238 981 A2号、ヨーロッパ特許第1 244 155 A2号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0100906 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068526 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068535 A1、日本国特開2003/073387A、日本国特開2003/073388A、アメリカ合衆国特許第6,677,060 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0235712 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0013905 A1、アメリカ合衆国特許第6,733,905 B2号、アメリカ合衆国特許第6,780,528 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0040627 A1、日本国特開2003/059667A、日本国特開2003/073665A、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0121638 A1、ヨーロッパ特許第1 371 708 A1号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/010877 A1、WO 03/040256 A2、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0096138 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0173896 A1、アメリカ合衆国特許第6,670,645 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0068132 A1、WO 04/015025 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0072018 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0134984 A1、WO 03/079737 A2、WO 04/020448 A1、WO 03/091355 A2、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,402号、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,712号、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,738号、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,238号、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,246号(現在は認められている)、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,207号(現在は認められている)、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/729,263号(現在は認められている)、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/879,412号、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/879,657号である。
【0115】
適切な一実施態様では、ELデバイスは、白色光を発生させる手段を備えている。この手段は、補助発光体、白色発光体、フィルタ手段などを備えることができる。このELデバイスは、蛍光発光材料も含むことができる。
【0116】
望ましい一実施態様では、ELデバイスは、ディスプレイ装置の一部である。別の適切な一実施態様では、ELデバイスは、エリア照明装置の一部である。
【0117】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。特に断わらない限り、置換可能な1つの水素を含む基(その中には化合物または錯体が含まれる)に言及する場合、その中には置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数個の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質をその置換基が失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいて、例えば、2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルがある);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0118】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引性基、電子供与性基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0119】
当業者であれば、特定の基が電子供与性であるか電子受容性であるかを十分に判断できる。電子供与性と電子受容性の最も一般的な指標は、ハメットσ値である。水素はハメットσ値がゼロであるが、電子供与性基は負のハメットσ値を持ち、電子受容性基は正のハメットσ値を持つ。『ランゲの化学ハンドブック』、第12版、マグロウヒル社、1979年、表3-12、3-134〜3-138ページ(その内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に、一般的な多数の基に関するハメットσ値がリストにされている。ハメットσ値は、フェニル環置換に基づいて割り当てられるが、電子供与性基と電子受容性基を定性的に選択するための実際的なガイドとなる。
【0120】
適切な電子供与性基は、-R'、-OR'、-NR'(R")の中から選択することができる。ただし、R'は6個までの炭素原子を含む炭化水素であり、R"は、水素またはR'である。電子供与性基の例として、メチル、エチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-NHCH3、-N(C6H5)2、-N(CH3)(C6H5)、-NHC6H5などがある。
【0121】
適切な電子受容性基は、シアノ置換基、α-ハロアルキル置換基、α-ハロアルコキシ置換基、アミド置換基、スルホニル置換基、カルボニル置換基、カルボニルオキシ置換基、オキシカルボニル置換基のうちで、10個までの炭素原子を含むものからなるグループの中から独立に選択することができる。例として、-CN、-F、-CF3、-OCF3、-CONHC6H5、-SO2C6H5、-COC6H5、-CO2C6H5、-OCOC6H5などがある。
【0122】
デバイスの一般的な構造
【0123】
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、またはこれらの組み合わせを用いた多くのOLEDデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0124】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。OLEDにとっての必須の条件は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光層とが存在していることである。追加の層を使用することができ、それについては後でさらに詳しく説明する。
【0125】
本発明による典型的な構造を図1に示してある。これは小分子デバイスにおいて特に有用である。この構造は、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、エキシトン阻止層108と、発光層109と、正孔阻止層110と、電子輸送層111と、カソード113を備えている。これらの層について以下に詳細に説明する。基板101をカソード113に隣接した位置にすることや、基板101が実際にアノード103またはカソード113を構成することも可能であることに注意されたい。アノード103とカソード113に挟まれた有機層を、便宜上、有機EL素子と呼ぶ。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが望ましい。
【0126】
OLEDのアノード103とカソード113は、導電体160を通じて電圧/電流源150に接続されている。OLEDは、アノード103とカソード113の間に、アノード103がカソード113と比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノード103から有機EL素子に注入され、電子はカソード113から有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0127】
基板
【0128】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板101の上に形成されて、カソード113またはアノード103が基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板101と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノード103であることが一般的であるが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板101は、どの方向に光を出したいかに応じ、過光性または不透明にすることができる。透光特性は、基板101を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。基板101は、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。これは、一般に、TFTがOLED層の下に設けられるアクティブ・マトリックス基板の場合である。しかし基板101は、少なくとも光を出す画素化領域において、大部分が透明な材料(例えばガラスまたはポリマー)でできている必要がある。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(例えばシリコン)、セラミック、回路板材料などがある。この場合にも、基板101は、アクティブ・マトリックスTFTの設計に見られるように、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0129】
アノード
【0130】
望むエレクトロルミネッセンス光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノード103は、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード103として用いることができる。EL光をカソード113だけを通して見るような用途では、アノード103の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電性材料としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0131】
カソード
【0132】
アノード103だけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソード113は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード用材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード用材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード用材料の別のクラスとして、カソードと、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)とを備えていて、カソードの上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。アルカリ金属をドープしたETL材料(例えばLiをドープしたAlq)は、有用なEILの別の一例である。他の有用なカソード用材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0133】
カソードを通して発光を見る場合、カソード113は、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード用材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0134】
正孔注入層(HIL)
【0135】
正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107の間に設けることができる。正孔注入層は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層107に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層105で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばMTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。正孔注入層を本発明で用いることが好ましく、それはプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーであることが望ましい。
【0136】
プラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーを含む正孔注入層の厚さは、0.2〜15nmの範囲が可能であり、0.3〜1.5nmの範囲であることが好ましい。
【0137】
正孔輸送層(HTL)
【0138】
一般に、発光層に加え、アノードと発光層の間に正孔輸送層を堆積させると有用である。アノードと発光層の間にあるこの正孔輸送層に堆積させる正孔輸送材料は、本発明の共同ホストとして使用する正孔輸送化合物と同じでも異なっていてもよい。場合によっては正孔輸送層に正孔注入層が含まれていてもよい。正孔輸送層は、2種類以上の正孔輸送化合物を含むことができる。この化合物は、混合物として堆積されるか、別々の層に分割される。
【0139】
有機ELデバイスの正孔輸送層は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0140】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(30):
【化31】

で表わされるものがある。ただし、Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン、シクロアルキレン、アルキレンなど)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリールである場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0141】
構造式(30)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(31):
【化32】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール、アルキルのいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキルを完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリールを表わし、そのアリールは、構造式(32):
【化33】

に示したように、ジアリール置換されたアミノによって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に選択したアリールである。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0142】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(32)に示したように、アリーレンを通じて結合した2つのジアリールアミノが挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(33):
【化34】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に選択したアリーレン(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の整数であり;
R1、R2、R3、R4は、独立に選択したアリールである。
【0143】
典型的な一実施態様では、R1、R2、R3、R4のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0144】
上記の構造式(30)、(31)、(32)、(33)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を環に含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0145】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(31)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(33)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン;
4-(9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン(TCTA);
4-(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン;
9,9'-(2,2'-ジメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP);
9,9'-[1,1'-ビフェニル]4,4'-ジイルビス-9H-カルバゾール(CBP);
9,9'-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール(mCP);
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス-[N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン。
【0146】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料を含む)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0147】
正孔輸送層が、異なる組成の2つ以上のサブ層を含むことも可能である。その場合の各サブ層の組成は上に説明した通りである。
【0148】
正孔輸送層の厚さは、10〜500nmにすることができ、50〜300nmが好ましい。
【0149】
エキシトン阻止層(EBL)
【0150】
エキシトン阻止層についてはすでに説明した。
【0151】
発光層(LEL)
【0152】
少なくとも1種類の正孔輸送共同ホストと、少なくとも1種類の電子輸送共同ホストと、少なくとも1種類のリン光発光体とを含む本発明の発光層についてはすでに説明した。
【0153】
蛍光発光材料と蛍光発光層(LEL)
【0154】
本発明のリン光発光体に加え、他の発光材料(例えば蛍光材料)もOLEDデバイスで使用することができる。“蛍光”という用語は、一般にあらゆる発光材料を記述するのに用いられているが、ここでは、一重項励起状態から光を出す材料を意味する。蛍光材料は、リン光材料と同じ層で使用すること、または隣接した層で使用すること、または隣接した画素で使用すること、またはこれらの任意の組み合わせで使用することができる。本発明のリン光材料の性能に悪い影響を与えるであろう材料を選択しないように注意せねばならない。当業者であれば、望まないのにリン光が消滅することがないよう、リン光材料と同じ層または隣接する層に存在する材料の濃度と三重項エネルギーを適切に選択せねばならないことが理解できよう。
【0155】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は、蛍光材料またはリン光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。後者の場合、光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。蛍光発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0156】
ホスト材料および発光材料は、非ポリマー小分子でも、ポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))でもよい。ポリマーの場合には、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させること、または発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。ホスト材料は、膜の形成、電気的特性、発光効率、動作寿命、製造しやすさを改善するために互いに混合することができる。ホストは、優れた正孔輸送特性を持つ材料と、優れた電子輸送特性を持つ材料を含むことができる。
【0157】
ゲスト発光材料として蛍光材料を選択する際の重要な1つの関係は、ホストと蛍光材料の一重項励起エネルギーの比較である。蛍光材料の一重項励起エネルギーがホスト材料の一重項励起エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。一重項励起エネルギーは、一重項発光状態と基底状態の間のエネルギー差として定義される。発光しないホストに関しては、基底状態と同じ電子スピンの最低励起状態を、発光状態であると考える。
【0158】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0159】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(金属キレート化オキシノイド化合物(一般式(30))としても知られる)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0160】
【化35】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、少なくとも2つの縮合芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす)。
【0161】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、三価の金属(アルミニウム、ガリウムなど)、別の金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0162】
Zは、少なくとも2つの芳香族縮合環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0163】
有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0164】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式(35))は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0165】
【化36】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、各環上にある、以下に示すグループの中から選択した1個以上の置換基を表わす。
グループ1:水素、または1〜24個の炭素原子を有するアルキル;
グループ2:5〜20個の炭素原子を有するアリールまたは置換されたアリール;
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルいずれかの芳香族縮合環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の複素芳香族縮合環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子を有するヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:1〜24個の炭素原子を有するアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、ホウ素、シアノ。
【0166】
代表例として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンと2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンがある。他のアントラセン誘導体もLELにおけるホストとして役に立つ可能性があり、例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体がある。
【0167】
ベンズアゾール誘導体(一般式(36))は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0168】
【化37】

ただし、nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ならびに他の複素環式系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Xは、炭素、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかからなる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに結合させる。Xは、その複数のベンズアゾールと共役していてもいなくてもよい。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)である。
【0169】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号と日本国特開08-333569に記載されているスチリルアリーレン誘導体も、青色を発光させるための有用なホスト材料である。例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンと4,4'-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1'-ビフェニル(DPVBi)は、青色を発光させるための有用なホスト材料である。
【0170】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。有用な材料の代表例としては、以下のものがあるが、これですべてではない。
【0171】
【化38】

【0172】
【化39】

【0173】
【化40】

【0174】
【化41】

【0175】
正孔阻止層(HBL)
【0176】
本発明のOLEDデバイスは、適切なホストと輸送材料に加え、少なくとも1つの正孔阻止層110も電子輸送層111と発光層109の間に備えていて、エキシトンと再結合イベントが、共同ホストとリン光発光体を含む発光層に限定されるようにすることができる。この場合、正孔が共同ホストから正孔阻止層に移動する際にエネルギー障壁が存在せねばならない一方で、電子は、正孔阻止層を容易に通過してホスト材料とリン光発光体を含む発光層へと移動できねばならない。第1の条件は、正孔阻止層110のイオン化電位が発光層109のイオン化電位よりも望ましくは0.2eV以上大きいことを要請する。第2の条件は、正孔阻止層110の電子親和力が発光層109の電子親和力を大幅に上回ることはなく、望ましくは発光層の電子親和力よりも小さいか、発光層の電子親和力よりも約0.2eV以上大きくはないことを要請する。
【0177】
正孔阻止層を特徴的な発光が緑である電子輸送層(例えば以下に説明するAlq含有電子輸送層)とともに用いる場合、正孔阻止層材料の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーに関する条件により、正孔阻止層の特徴的な発光は、電子輸送層の特徴的な発光よりも短い波長の発光(例えば青、紫、紫外)になる。したがって、正孔阻止層材料の特徴的な発光は、青、紫、紫外のいずれかであることが望ましい。さらに、絶対に必要というわけではないが、正孔阻止材料の三重項エネルギーは、リン光材料の三重項エネルギーよりも大きいことが望ましい。適切な正孔阻止材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/41512、WO 01/93642 A1に記載されている。有用な正孔阻止材料の具体例を2つ挙げると、バトクプロイン(BCP)とビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。BCPの特徴的な発光は紫外領域であり、BAlqの特徴的な発光は青である。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528に記載されているように、BAlq以外の金属錯体も正孔とエキシトンを阻止することが知られている。さらに、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0175553 A1には、この目的でfac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2')イリジウム(III)(Irppz)を用いることが記載されている。
【0178】
正孔阻止層を利用する場合、その厚さは2〜100nmにすることができる。この厚さは5〜10nmであることが好ましい。
【0179】
電子輸送層(ETL)
【0180】
同様に、カソードと発光層の間に電子輸送層を配置することが通常は望ましい。カソードと発光層の間にあるこの電子輸送層に堆積される電子輸送材料は、電子輸送共同ホスト材料と同じでも異なっていてもよい。電子輸送層は、1種類以上の電子輸送化合物を含むことができる。その化合物は、混合物として堆積させること、または別々の層に分割することができる。
【0181】
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層を形成する際に用いる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。考慮するオキシノイド化合物の例は、以下の構造式(37)を満たすものである。
【0182】
【化42】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、少なくとも2つの縮合芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0183】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(アルミニウム、ガリウムなど)、遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0184】
Zは、少なくとも2つの芳香族縮合環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0185】
有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0186】
電子輸送層で用いるのに適した他の電子輸送材料は、上記の一般式(37)で表わされるアルミニウム錯体である。このアルミニウム錯体は、本発明において電子輸送共同ホストとしても用いられる。
【0187】
電子輸送層で用いるのに適した他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。構造式(36)を満たすベンズアゾールも、有用な電子輸送材料である。
【0188】
【化43】

ただし、nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ならびに他の複素環式系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Xは、炭素、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかを含んでいる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。有用なベンズアゾールの一例は、Shiらのアメリカ合衆国特許第5,766,779号に開示されている2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)(一般式(11)を参照のこと)である。
【0189】
電子輸送層で用いるのに適した他の電子輸送材料は、トリアジン、トリアゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、これらの誘導体、ポリベンゾビスアゾール、ピリジンをベースとした材料、キノリンをベースとした材料、シアノ含有ポリマー、過フッ化材料の中から選択することができる。
【0190】
電子輸送層に、または電子輸送層のうちでカソードに隣接した部分にアルカリ金属をドープして電子注入障壁を低下させ、そのことによってデバイスの駆動電圧をより小さくすることもできる。この目的に適したアルカリ金属として、リチウムとセシウムがある。
【0191】
正孔阻止層と電子輸送層の両方をOLEDデバイスで利用する場合、電子は電子輸送層を容易に通過して正孔阻止層に入ることができねばならない。したがって電子輸送層の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力を大幅に上回ってはならない。電子輸送層の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力よりも小さいか、それよりも0.2eV以上は大きくないことが好ましい。
【0192】
電子輸送層を利用する場合、その厚さは2〜100nmにすることができる。この厚さは5〜50nmであることが好ましい。
【0193】
他の有用な有機層とデバイスの構造
【0194】
発光層109〜電子輸送層111は、場合によっては単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。正孔阻止層110と電子輸送層111を単一の層にし、正孔またはエキシトンを阻止するとともに、電子輸送をサポートする機能を担わせることもできる。従来技術では、発光材料を正孔輸送層107に含めうることも知られている。この場合、正孔輸送材料はホストとして機能することができる。多くの材料を1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを作ることができる。例えば青色発光材料と黄色発光材料の組み合わせ、シアン色発光材料と赤色発光材料の組み合わせ、赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料の組み合わせがある。白色発光デバイスが記載されているのは、例えばヨーロッパ特許第1 187 235号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、アメリカ合衆国特許第5,503,910号、アメリカ合衆国特許第5,405,709号、アメリカ合衆国特許第5,283,182号であり、白色発光デバイスに適切なフィルタを取り付けてカラー発光をさせることができる。
【0195】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0196】
有機層の堆積
【0197】
上記の有機材料は、その有機材料の形態に適した任意の方法で堆積させることが好ましい。小分子の場合、昇華または蒸発を通じてうまく堆積するが、他の手段(例えば溶媒からのコーティング。そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)で堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華または蒸発によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0198】
封止
【0199】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。本発明に従って構成したELデバイスでは、これらのうちのどの密封法または封入法を用いてもよい。
【0200】
光学的最適化
【0201】
本発明のOLEDデバイスでは、発光特性の向上を望むのであれば、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、ELデバイスの表面に、またはELデバイスの一部として特別に設けることができる。
【0202】
本発明の実施態様により、より高い輝度収率、より低い駆動電圧、より高い電力効率といった優れた特徴を提供できる。また本発明において有用な有機金属化合物の実施態様により、広い範囲の色相を提供することができる。その中には、(マルチカラー・ディスプレイを提供するために直接に、またはフィルタを通じて)白色光を出させるのに役立つ色相も含まれる。本発明の実施態様により、エリア照明装置を提供することもできる。
【0203】
本発明とその利点は、以下の実施例によってさらによく理解することができよう。
【0204】
デバイスの例1〜4:
【0205】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス1)を以下のようにして構成した。
【0206】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を約85nmの厚さにコーティングしたガラス基板を、順番に、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露した。
【0207】
2.プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0208】
3.次に、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが37.5nmの正孔輸送層(HTL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0209】
4.次に、4,4',4"-トリス(カルバゾリル)-トリフェニルアミン(TCTA)からなる厚さが37.5nmのエキシトン阻止層(EBL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0210】
5.次に、エキシトン阻止層の上に、厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。このLELは、電子輸送共同ホストとしての2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)と、正孔輸送共同ホストとしてのTCTA(LELに含まれる全共同ホストの30質量%の濃度)と、リン光発光体としてのfac-トリス(2-フェニル-ピリジナト-N,C2’)イリジウム(III) [すなわちIr(ppy)3](全共同ホスト材料の6質量%の濃度)の混合物からなる。これらの材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0211】
6.次に、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)からなる厚さが10nmの正孔阻止層(HBL)を別のタンタル・ボートから蒸着した。
【0212】
7.次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ40nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上方に堆積させた。この材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0213】
8.Alq層の上に、MgとAgが10:1の体積比になったカソードを220nm堆積させた。
【0214】
上記の一連の操作により、ELデバイスの堆積が完成した。したがってデバイス1は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。次に、周囲環境から保護するため、このデバイスを、乾燥グローブ・ボックスの中で乾燥剤とともに密封した。
【0215】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス2)をデバイス1と同じ方法で製造したが、エキシトン阻止層でTCTAの代わりにNPBを使用した点が異なっている。その結果、デバイス2は、NPBだけからなる厚さ75nmのHTLを備えることになる。デバイス2は、以下の構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(75nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。この例は、エキシトン阻止層に三重項エネルギーの大きな(2.5eV超)材料を選択することの重要性を示している。
【0216】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス3)をデバイス1と同じ方法で製造したが、正孔阻止層(HBL)でTPBIの代わりにビス(2-メチル-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)を使用した点が異なっている。その結果、デバイス3は、以下の構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|BAlq(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。この例は、正孔阻止層における材料の選択を、望ましいリン光ドーパントの三重項エネルギーと比較した三重項エネルギーに基づいて行なうことの重要性をさらに示している。
【0217】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス4)をデバイス1と同じ方法で製造したが、LELにTCTAが含まれていないことと、Ir(ppy)3のための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。デバイス4は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|TPBI+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0218】
このようにして形成したデバイスを、動作電流密度1mA/cm2にて、効率と色に関してテストした。その結果を、輝度収率(cd/A)およびCIE(国際照明委員会)座標として表1に示してある。
【0219】
ELデバイスの評価結果
【表1】

【0220】
表1からわかるように、LELの中に共同ホストとしてTPBIとTCTAを組み込み、そのLELのそれぞれの側にエキシトン阻止層がある本発明のELデバイス1は、共同ホストが同じでエキシトン阻止層がLELの片側にだけある比較用デバイスよりも輝度収率が大きかった。正孔輸送層と発光層の間に三重項エネルギーの大きな材料の層が存在していることは、三重項エキシトンをLELの内部に効果的に閉じ込めてエキシトンがHTLの中に拡散する可能性を阻止する上で極めて重要である。EBLがなければ、HTLに流入して失われる三重項エキシトンによってエレクトロルミネッセンスが著しく少なくなろう。EBL層に適した材料は、その三重項エネルギーのレベルがリン光ドーパントの三重項エネルギーのレベルよりも大きくなるように選択せねばならない(本発明の説明を参照のこと)。TCTAの三重項エネルギーの計算値は約2.85eVであり、Ir(ppy)3の三重項エネルギー(約2.5eV)よりも大きい。TCTAは正孔を輸送することも知られている。したがってTCTAは、EBL材料の条件を満たす。
【0221】
三重項エキシトンが拡散してETLに流入することも考慮する必要がある。デバイス3は、LELのアノード側に隣接しているEBLに加え、LELと電子輸送層の間にBAlqからなる正孔阻止層を備えている。しかしBAlqの三重項エネルギーの計算値は2.37eVであり、使用するリン光発光体の三重項エネルギーよりも小さい。デバイス3の輝度効率は、本発明のデバイス1の輝度効率よりも低い。この実施例は、カソード側に三重項エネルギーが発光体よりも大きな阻止層を組み込むことによってデバイスの性能をはるかに向上させうることを示している。
【0222】
本発明のデバイス1により、Ir(ppy)3のためのホストが純粋なTPBIであるデバイス4と比べ、より大きな輝度収率とより小さな駆動電圧も得られる。
【0223】
デバイスの例5〜6:
【0224】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス5)をデバイス1と同じ方法で製造したが、約1質量%のリチウムを電子輸送Alq材料と同時に堆積させた点が異なっている。
【0225】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス6)をデバイス5と同じ方法で製造したが、Alq層にリチウムが含まれていない点が異なっている。
【0226】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表2に示してある。
【0227】
ELデバイス5と6の評価結果
【表2】

【0228】
デバイス5と6を比較した表2の結果から、本発明を実施するにあたってアルカリ金属ドーパントであるリチウムを電子輸送層に組み込むことで駆動電圧がさらに低下することがわかる。
【0229】
デバイスの例7〜8:
【0230】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス7)をデバイス1と同じ方法で製造したが、NPB層を堆積させず、1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC)からなる厚さ75nmのエキシトン阻止層を厚さ37.5nmのTCTA層の代わりに堆積させた点が異なっている。TAPCは、LELにおいてもTCTAの代わりに全共同ホストの20質量%の濃度で用いられる。したがってデバイス7は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|TAPC(75nm)|(TPBI+20質量%のTAPC)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0231】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス8)をデバイス7と同じ方法で製造したが、TAPCがLELに含まれていないことと、Ir(ppy)3のための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。
【0232】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表3に示してある。
【0233】
ELデバイス7と8の評価結果
【表3】

【0234】
発光層において緑色リン光ドーパントとしてのIr(ppy)3と共同ホスト材料を使用し、さらにエキシトン阻止層を備えるデバイス7は、リン光ドーパントのためのホストが純粋なTPBIであるデバイス8と比べて輝度収率が高く、駆動電圧が低い。
【0235】
デバイスの例9〜10:
【0236】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス9)をデバイス1と同じ方法で製造したが、LELにおいて4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)をTCTAの代わりに使用した点が異なっている。デバイス9は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NBP(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|(TPBI+30質量%のMTDATA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0237】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス10)をデバイス9と同じ方法で製造したが、MTDATA がLELに含まれていないことと、Ir(ppy)3のための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。
【0238】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表4に示してある。
【0239】
ELデバイス9と10の評価結果
【表4】

【0240】
デバイスの例11〜12:
【0241】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス11)をデバイス1と同じ方法で製造したが、LELと正孔阻止層において2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)をTPBIの代わりに使用した点が異なっている。共同ホストの正孔輸送材料は、濃度が50質量%のTCTAであった。デバイス11は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NBP(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|(BCP+50質量%のTCTA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|BCP(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0242】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス12)をデバイス11と同じ方法で製造したが、TCTAがLELに含まれていないことと、Ir(ppy)3のための純粋なホストとしてBCPを使用した点が異なっている。
【0243】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表5に示してある。
【0244】
ELデバイス11と12の評価結果
【表5】

【0245】
ここでも、発光層において緑色リン光ドーパントとしてのIr(ppy)3と共同ホスト材料を使用し、さらにエキシトン阻止層を備えるデバイス11は、リン光ドーパントのためのホストが純粋なBCPであるデバイス12と比べて輝度収率が高く、駆動電圧が低い。
【0246】
デバイスの例13〜14:
【0247】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス13)をデバイス1と同じ方法で製造したが、LELと正孔阻止層において[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス[ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-ボラン](BMDBB)をTPBIの代わりに使用した点が異なっている。共同ホストの正孔輸送材料は、LELに含まれる全共同ホスト材料の20質量%の濃度のTCTAであった。デバイス13は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NBP(37.5nm)|TCTA(37.5nm)|(BMDBB +20質量%のTCTA)+6質量%のIr(ppy)3(35nm)|BMDBB(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0248】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス14)をデバイス13と同じ方法で製造したが、TCTAがLELに含まれていないことと、Ir(ppy)3のための純粋なホストとしてBMDBBを使用した点が異なっている。
【0249】
デバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表6に示してある。
【0250】
ELデバイス13と14の評価結果
【表6】

【0251】
発光層において緑色リン光ドーパントとしてのIr(ppy)3と共同ホスト材料を使用し、さらにエキシトン阻止層を備える本発明のデバイス13は、リン光ドーパントのためのホストが純粋なBMDBBであるデバイス14と比べて輝度収率が高く、駆動電圧が低い。
【0252】
デバイスの例15〜16:
【0253】
これらのデバイスでは、fac-トリス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)[すなわちIr(F2ppy)3]を青色リン光発光体として使用する。
【0254】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス15)を以下のようにして構成した。
【0255】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を約85nmの厚さにコーティングしたガラス基板を、順番に、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露した。
【0256】
2.プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0257】
3.次に、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが75nmの正孔輸送層(HTL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0258】
4.次に、4,4',4"-トリス(カルバゾリル)-トリフェニルアミン(TCTA)からなる厚さが10nmのエキシトン阻止層(EBL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0259】
5.次に、エキシトン阻止層の上に、厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。このLELは、電子輸送共同ホストとしての2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)と、正孔輸送共同ホストとしてのTCTA(LELに含まれる全共同ホストの30質量%の濃度)と、リン光発光体としてのIr(F2ppy)3(全共同ホスト成分の8質量%の濃度)の混合物からなる。これらの材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0260】
6.次に、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)からなる厚さが10nmの正孔阻止層(HBL)を別のタンタル・ボートから蒸着した。
【0261】
7.次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ20nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上方に堆積させた。この材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0262】
8.Alq層の上に、MgとAgが10:1の体積比になったカソードを220nm堆積させた。
【0263】
上記の一連の操作により、ELデバイスの堆積が完成した。したがってデバイス15は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(75nm)|TCTA(10nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+8質量%のIr(F2ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(20nm)|Mg:Ag(220nm)。次に、周囲環境から保護するため、このデバイスを、乾燥グローブ・ボックスの中で乾燥剤とともに密封した。
【0264】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス16)をデバイス15と同じ方法で製造したが、エキシトン阻止層においてNPBをTCTAの代わりに使用した点が異なっている。その結果、デバイス16は、NPBだけからなる厚さ85nmのHTLを備える。デバイス16は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(85nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+8質量%のIr(F2ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(20nm)|Mg:Ag(220nm)。この例は、発光層のアノード側に隣接したエキシトン阻止層のために三重項エネルギーの大きな(2.5eV超)材料を選択することが本発明において重要であることを示している。
【0265】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表7に示してある。
【0266】
ELデバイス15と16の評価結果
【表7】

【0267】
Ir(F2ppy)3を共同ホストにおける青色リン光発光体として使用し、さらにエキシトン阻止層を備える本発明のデバイス15は、発光層のアノード側に隣接したエキシトン阻止層がないデバイス16と比べて輝度収率が著しく高かった。
【0268】
デバイスの例17〜18:
【0269】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス17)をデバイス15と同じ方法で製造したが、発光層に約6質量%のIr(F2ppy)3を同時に堆積させた点が異なっている。デバイス17は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(75nm)|TCTA(10nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+6質量%のIr(F2ppy)3(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(20nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0270】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス18)をデバイス17と同じ方法で製造したが、LELにTCTAが含まれていないことと、青色リン光発光体のための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。
【0271】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表8に示してある。
【0272】
ELデバイス17と18の評価結果
【表8】

【0273】
Ir(F2ppy)3を共同ホストに含まれる青色リン光発光体として使用し、さらにエキシトン阻止層を備える本発明のデバイス17は、リン光発光体を純粋なホストにドープした比較用デバイス18と比べて輝度収率が著しく高く、動作電圧が低かった。
【0274】
デバイスの例19〜20:
【0275】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス19)を以下のようにして構成した。
【0276】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を約85nmの厚さにコーティングしたガラス基板を、順番に、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露した。
【0277】
2.プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0278】
3.次に、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが65nmの正孔輸送層(HTL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0279】
4.次に、4,4',4"-トリス(カルバゾリル)-トリフェニルアミン(TCTA)からなる厚さが10nmのエキシトン阻止層(EBL)を、抵抗器で加熱したタンタル・ボートから蒸着した。
【0280】
5.次に、エキシトン阻止層の上に、厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。このLELは、電子輸送共同ホストとしての2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)と、正孔輸送共同ホストとしてのTCTA(LELに含まれる全共同ホスト材料の30質量%の濃度)と、リン光発光体としての化合物Y(全共同ホスト材料の4質量%の濃度)の混合物からなる。これらの材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0281】
6.次に、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)からなる厚さが10nmの正孔阻止層(HBL)を別のタンタル・ボートから蒸着した。
【0282】
7.次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ40nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上方に堆積させた。この材料も、タンタル・ボートから蒸着した。
【0283】
8.Alq層の上に、MgとAgが10:1の体積比になったカソードを220nm堆積させた。
【0284】
上記の一連の操作により、ELデバイスの堆積が完成した。したがってデバイス19は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(65nm)|TCTA(10nm)|(TPBI+30質量%のTCTA)+4質量%の化合物Y(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。次に、周囲環境から保護するため、このデバイスを、乾燥グローブ・ボックスの中で乾燥剤とともに密封した。
【0285】
【化44】

【0286】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス20)をデバイス19と同じ方法で製造したが、TCTAがLELに含まれていないことと、化合物Yのための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。その結果、デバイス20は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(65nm)|TCTA(10nm)|TPBI+4質量%の化合物Y(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0287】
このようにして形成したセルを電流密度1mA/cm2で動作させ、効率と色に関してテストした。その結果を、輝度収率(cd/A)およびCIE(国際照明委員会)座標として表9に示してある。
【0288】
ELデバイス19と20の評価結果
【表9】

【0289】
表9からわかるように、TPBI材料とTCTA材料を共同ホストとして組み込んだ本発明のELデバイス19は、ホストが純粋なTPBIであるデバイス20と比べて輝度収率が高く、駆動電圧が低かった。
【0290】
デバイスの例21〜22:
【0291】
本発明の条件を満たすELデバイス(デバイス21)をデバイス19と同じ方法で製造したが、LELにおいて4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)をTCTAの代わりに使用した点が異なっている。デバイス21は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(65nm)|TCTA(10nm)|(TPBI+30質量%のMTDATA )+4質量%の化合物Y(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0292】
本発明の条件を満たさない比較用ELデバイス(デバイス22)をデバイス21と同じ方法で製造したが、LELにMTDATAが含まれていないことと、化合物Yのための純粋なホストとしてTPBIを使用した点が異なっている。デバイス22は、以下の層構造を有する:ITO|CFx(1nm)|NPB(65nm)|TCTA(10nm)|TPBI+4質量%の化合物Y(35nm)|TPBI(10nm)|Alq(40nm)|Mg:Ag(220nm)。
【0293】
これらのデバイスを一定の電流密度1mA/cm2で動作させ、電圧と輝度特性を測定した。その結果を表10に示してある。
【0294】
ELデバイス21と22の評価結果
【表10】

【0295】
表10からわかるように、TPBI材料とTCTA材料を共同ホストとして組み込んだ本発明のELデバイス21は、ホストが純粋なTPBIであるデバイス22と比べて輝度収率が高く、駆動電圧が低かった。
【0296】
この明細書で言及した特許とそれ以外の刊行物の全内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。本発明を特にいくつかの好ましい実施態様を参照して詳しく説明してきたが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、さまざまな変形や変更をなしうることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】本発明を利用できる典型的なOLEDデバイスの断面図である。
【符号の説明】
【0298】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
108 エキシトン阻止層(EBL)
109 発光層(LEL)
110 正孔阻止層(HBL)
111 電子輸送層(ETL)
113 カソード
150 電源
160 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、その両者の間に位置する発光層(LEL)とを備えていて、その発光層が、リン光発光体を含むとともに、そのリン光発光体の三重項エネルギーよりも大きな三重項エネルギーをそれぞれが持つ少なくとも1種類の正孔輸送共同ホストおよび少なくとも1種類の電子輸送共同ホストを含んでおり、さらに、三重項エネルギーが2.5eV以上である正孔輸送材料を含むエキシトン阻止層を上記発光層のアノード側に隣接して備えるOLEDデバイス。
【請求項2】
上記エキシトン阻止層が、置換されたトリアリールアミンをエキシトン阻止材料として含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
上記エキシトン阻止層に含まれる上記エキシトン阻止材料が、2つ以上のトリアリールアミン基を含んでいるが、芳香族炭化水素縮合環は含んでいない、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
上記トリアリールアミンが一般式:
【化1】

の中から選択される(ただし、
Areは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールの中から選択され;
R1〜R4は、独立に選択したアリールであるが、AreとR1〜R4は芳香族炭化水素縮合環を含んでおらず;
nは1〜4の整数である)、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
上記エキシトン阻止層が一般式:
【化2】

で表わされる(ただし、
R1とR2は、独立に置換基を表わすが、R1とR2が合わさって環を形成することもでき;
Ar1〜Ar4は、独立に選択した芳香族基を表わし;
R3〜R10は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールを表わすが、R1〜R2、Ar1〜Ar4、R3〜R10は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない)、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
R3〜R10が、独立に、水素または炭化水素置換基を表わし、R1とR2が合わさって炭化水素環を形成する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
上記エキシトン阻止層に含まれる材料が置換されたカルバゾールである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
上記エキシトン阻止層に含まれる材料が一般式:
【化3】

で表わされる(ただし、
nは1〜4の整数であり;
Qは、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1〜R6は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかであるが、R1〜R6は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない)、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
上記エキシトン阻止層に含まれる材料が一般式:
【化4】

で表わされる(ただし、
nは1〜4の整数であり;
Qは、N、C、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1は、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかであるが、R2〜R7は芳香族炭化水素縮合環を含んでいない)、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
上記エキシトン阻止層に含まれる材料の選択が、
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン;
4,4'-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)]-ベンゼンアミン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-メチルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-3-フェニルプロパン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)メタン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)エタン;
4-(4-ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;
4,4'-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン;
4-(9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン(TCTA);
4-(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン;
9,9'-[5'-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル][1,1':3',1"-テルフェニル]-4,4"-ジイル]ビス-9H-カルバゾール;
9,9'-(2,2'-ジメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP);
9,9'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス-9H-カルバゾール(CBP);
9,9'-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール(mCP);
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール;
9,9',9"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-9H-カルバゾール;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン;
9-フェニル-9H-カルバゾールからなるグループの中からなされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
上記正孔輸送共同ホストが置換されたトリアリールアミンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
上記正孔輸送共同ホストが一般式:
【化5】

で表わされる(ただし、Areは、独立に選択したアルキレンまたはアリーレンであり;
R1〜R4は、独立に選択したアリールであり;
nは1〜4の整数である)、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
上記正孔輸送共同ホストが一般式:
【化6】

で表わされる(ただし、R1とR2は、独立に置換基を表わすが、R1とR2が合わさって環を形成することもでき;
Ar1〜Ar4は、独立に選択した芳香族基を表わし;
R3〜R10は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールを表わす)、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
上記正孔輸送共同ホストが、置換されたカルバゾールである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
上記正孔輸送共同ホストが、一般式:
【化7】

で表わされる(ただし、nは1〜4の整数であり;
Qは、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1〜R6は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかである)、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
上記正孔輸送共同ホストが一般式:
【化8】

で表わされる(ただし、nは1〜4の整数であり;
Qは、N、C、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R1は、フェニル、置換されたフェニル、ビフェニル、置換されたビフェニル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり;
R2〜R7は、独立に、水素、アルキル、フェニル、置換されたフェニル、アリールアミン、カルバゾール、置換されたカルバゾールのいずれかである)、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
上記正孔輸送共同ホストの選択が、
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD);
4,4'-ビス-ジフェニルアミノ-テルフェニル;
2,6,2',6'-テトラメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-ベンジジン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
N,N-ビス[2,5-ジメチル-4-[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]-2,5-ジメチル-N'-(3-メチルフェニル)-N'-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン;
4,4'-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)]-ベンゼンアミン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-4-メチルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル)-3-フェニルプロパン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)メタン;
ビス[4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル](4-メチルフェニル)エタン;
4-(4-ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;
4,4'-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン;
4-(9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン(TCTA);
4-(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)-N,N-ビス[4(3-フェニル-9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-ベンゼンアミン;
9,9'-[5'-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル][1,1':3',1"-テルフェニル]-4,4"-ジイル]ビス-9H-カルバゾール;
9,9'-(2,2'-ジメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル)ビス-9H-カルバゾール(CDBP);
9,9'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス-9H-カルバゾール(CBP);
9,9'-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール(mCP);
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール;
9,9',9"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-9H-カルバゾール;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン;
9,9'-(1,4-フェニレン)ビス[N,N-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン];
9-[4-(9H-カルバゾル-9-イル)フェニル]-N,N,N',N'-テトラフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミンからなるグループの中からなされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
上記正孔輸送共同ホストが、その正孔輸送共同ホストと上記電子輸送共同ホストの合計の5〜70質量%の濃度で上記発光層の中に存在している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
上記正孔輸送共同ホストが、その正孔輸送共同ホストと上記電子輸送共同ホストの合計の15〜30質量%の濃度で上記発光層の中に存在している、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
上記電子輸送共同ホストが一般式:
【化9】

で表わされる(ただし、nは2〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル;5〜20個の炭素原子を有するアリール、またはヘテロ原子で置換されたアリール;ハロ;芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Xは、炭素、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、複素環、置換された複素環のいずれかからなる結合単位である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
nが2〜3であり、ZがNRであり、R'が水素である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
上記電子輸送共同ホストが一般式:
【化10】

で表わされる、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
上記電子輸送共同ホストが一般式:
【化11】

で表わされる(ただし、R1〜R8は、独立に、水素、アルキル、アリール、置換されたアリールのいずれかであり、しかもR1〜R8のうちの少なくとも1つはアリールまたは置換されたアリールである)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
上記電子輸送共同ホストが、一般式:
【化12】

のうちの一方から選択される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
上記電子輸送共同ホストが、一般式:
【化13】

で表わされる(ただし、Ar1〜Ar3は、独立に、置換基を含んでいてもよい芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
上記電子輸送共同ホストの選択が、以下の一般式:
【化14】

の中からなされる、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
上記電子輸送共同ホストが、置換された1,3,4-オキサジアゾールを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
上記電子輸送共同ホストが、一般式:
【化15】

のうちの一方から選択される、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
上記電子輸送共同ホストが、置換された1,2,4-トリアゾールを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
上記電子輸送共同ホストが、一般式:
【化16】

を持つ置換されたトリアゾールまたは置換されていないトリアゾールである、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
上記電子輸送共同ホストが、置換された1,3,5-トリアジンを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項32】
上記電子輸送共同ホストの選択が、
2,4,6-トリス(ジフェニルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリカルバゾロ-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(N-フェニル-2-ナフチルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(N-フェニル-1-ナフチルアミノ)-1,3,5-トリアジン;
4,4',6,6'-テトラフェニル-2,2'-ビ-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス([1,1':3',1"-テルフェニル]-5'-イル)-1,3,5-トリアジンからなるグループの中からなされる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
上記発光層のカソード側に隣接する上記リン光発光体の三重項エネルギーよりも大きい三重項エネルギーを持つ電子輸送材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
上記リン光発光体が、Re、Os、Ru、Ir、Rh、Pt、Pdいずれかのリン光化合物である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項35】
上記リン光化合物が一般式:
【化17】

で表わされる(ただし、Aは、少なくとも1個の窒素原子を含む、置換された、または置換されていない複素環であり;
Bは、置換された芳香族環、置換されていない芳香族環、置換された複素芳香族環、置換されていない複素芳香族環、Mに結合したビニルCを含む環のいずれかであり;
X-Yは、アニオン性二座リガンドであり;
MがRhまたはIrのときには、mが1〜3の整数、nが0〜2の整数で、m+n=3となっており;
MがPtまたはPdのときには、mが1〜2の整数、nが0〜1の整数で、m+n=2となっている)、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
NがMに配座している上記複素環Aが、置換されているか置換されていないピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、インドール環、インダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環である、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
上記環Bが、置換されているか置換されていないフェニル環、ナフチル環、チエニル環、ベンゾチエニル環、フラニル環である、請求項35に記載のデバイス。
【請求項38】
上記環Bが、1〜2個のF原子、または1〜2個のCF3基、または1個のF原子と1個のCF3基でさらに置換されたフェニル環である、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
上記環Bが、M-C結合に対してパラ位で、置換されているか置換されていないフェニル基またはナフチル基でさらに置換されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
上記モノアニオン性二座リガンドX-Yが、アセチルアセトネート、ピコリネート、テトラキス(1-ピラゾリル)ボレートの中から選択される、請求項35に記載のデバイス。
【請求項41】
上記リン光化合物の選択が、
トリス(2-フェニル-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(2-(4'-メチルフェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(3-フェニルイソキノリナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(1-(4'-メチルフェニル)イソキノリナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(2-((5'-フェニル)-フェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III);
ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート);
ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)-ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート);
ビス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート);
ビス(2-(4',6'-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(テトラキス(1-ピラゾリル)ボレート);
ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2')(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(2-フェニル-3,3'-ジメチル)インドラト-N,C2')イリジウム(III);
トリス(1-フェニル-1H-インダゾラト-N,C2')イリジウム(III)の中からなされる、請求項35に記載のデバイス。
【請求項42】
上記発光層が、以下の一般式:
【化18】

で表わされる少なくとも1種類のリン光発光体を含む(ただし、
MはPtまたはPdであり;
R1〜R7は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7は、合わさって環基を形成していてもよく;
R8〜R14は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14は、合わさって環基を形成していてもよく;
Eは、以下に示すもの:
【化19】

の中から選択した架橋基を表わし、
その中にあるRとR'は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、RとR'は合わさって環基を形成していてもよい)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項43】
少なくとも1種類のリン光発光体が一般式:
【化20】

で表わされる(ただし、
R1〜R7は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7は、合わさって環基を形成していてもよく;
R8〜R14は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14は、合わさって環基を形成していてもよく;
Z1〜Z5は、水素または独立に選択した置換基を表わすが、Z1とZ2、Z2とZ3、Z3とZ4、Z4とZ5は合わさって環基を形成していてもよい)、請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
少なくとも1種類のリン光発光体の選択が、以下の一般式:
【化21】

【化22】

で表わされる化合物X、Y、Zの中からなされる、請求項43に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2008−524848(P2008−524848A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546742(P2007−546742)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/044099
【国際公開番号】WO2006/076092
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】