説明

エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法

【課題】エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基化合物を持つ窒素含有五員芳香族環で失活させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月20日に出願した米国仮特許出願第60/603423号の権利を主張するものである。
【0002】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法に関する。この方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つ一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることを含む。
【背景技術】
【0003】
単一の「エキソ−オレフィン」、「1,1−二置換」オレフィン又は「メチルビニリデン」末端基を含む一官能性開始剤を用いて製造された線状ポリオレフィンは、特定の末端官能基を含む重合体を製造するための有用な前駆体である。多官能性開始剤を用いて製造された重合体は、多数のエキソ−オレフィン末端基を有することになる。特定の末端基を含む重合体は潤滑油添加剤として有用である。ヘテロ原子を含む官能化重合体の一例としてポリイソブテニルコハク酸無水物がある。末端官能基は、更に反応を進めることができる重合体を製造するためにも望ましいものである。
【0004】
従来のイオン重合は、アニオン重合またはカチオン重合であると言える。アニオン重合は、塩基の存在下でカルボアニオンにより進行し、電子吸引基を持つ単量体に好都合である。カチオン重合は、酸の存在下でカルベニウムイオンとも呼ばれるカルボカチオンにより進行し、電子供与基を持つ単量体に好都合である。
【0005】
従来の重合系と同様に、リビング重合系もアニオン重合またはカチオン重合のいずれかである。従来の重合とリビング重合の相違は、理想的なリビング重合が連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しで進行することにある。リビング重合系は、単量体と開始剤の供給比を制御することで重合度を制御でき、また二種以上の異なる単量体の逐次添加によってブロック共重合体を生成させる能力が生じるから、商業的に非常に重要である。単量体を使い尽くすまで重合は続くが、重合体は将来的に何時でも追加の単量体を付加する能力を保持している。多数のそのような系が当該分野ではよく知られている。
【0006】
更に発展したものが、従来の単量体を用いる準リビングカチオン重合系である。準リビング重合では一定の限定条件、例えば無水の試薬が要求される。準リビングカチオン重合は、連鎖移動反応の速度はゼロに近いが連鎖停止反応は存在し、ただし可逆的であるという点で、真のリビング重合とは異なっている。準リビングカチオン重合の重要な一例が、イソブチレンの準リビングカチオン重合である。
【0007】
一般に、イソブチレンの準リビングカチオン重合によって狭い分子量分布が生じて、「tert−クロリド」末端基とも呼ばれる2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を含む一種類の主要な重合体生成物が生じる。ある一定条件下では、少量のオレフィン異性体が生成することもある。
【0008】
一方、従来のBF3を用いたイソブチレンの重合では二種類の主要なオレフィン異性体、例えば高反応性のエキソ−オレフィン異性体と、「三置換」異性体または「エンドオレフィン」異性体とも呼ばれる、比較的非反応性の2−メチル−1−プロペニル異性体とが生成する。さらに、従来のイソブチレンの重合では分子量分布又は多分散性指数が大きい重合体が生じる。
【0009】
エキソ−オレフィン異性体だけの製造はこれまで、従来の重合条件では達成できなかった。
【0010】
エキソ−オレフィン末端基だけを含むポリイソブチレンを製造するには二つの確立された方法がある。一つの方法は、重合後反応でtert−クロリドを末端基とするポリイソブチレンから、カリウムtert−ブトキシドを用いて化学的にハロゲン化水素を取り去ることを含む(特許文献1)。もう一つの方法は、準リビングイソブチレンをメタリルトリメチルシランでその場で失活させて、活性なリビングカルベニウムイオンをエキソ−オレフィン末端基に変換することを含む(非特許文献1)。
【0011】
上記の方法を使用して多官能性開始剤を用いて、エキソ−オレフィン末端基を一個より多く含むポリイソブチレン重合体を製造することができる。
【0012】
ポリイソブチレン重合体を含むポリオレフィンの製造は当該分野ではよく知られている。多数の特許文献に、エキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体の製造方法が記述されているが、一種以上の窒素含有五員芳香族環化合物を用いて準リビングカチオン重合系を失活させることを利用する方法については全く記述が無い。
【0013】
特許文献2には、分子量分布が狭く、重量平均分子量、M(w)と数平均分子量、M(n)との比が1に近い重合体の製造方法が開示されている。
【0014】
特許文献3には、平均重合度が10乃至100で、理論上可能な末端二重結合の割合が三塩化アルミニウムを用いて製造された生成物よりも高いイソブテン重合体が開示されている。また、この特許文献には、開始剤として三フッ化ホウ素を用いてイソブテン重合体を製造する方法も開示されている。
【0015】
特許文献1には、線状重合体の場合には両末端に、あるいは星形重合体の場合には全末端に、不飽和またはヒドロキシル基のいずれかを持つポリイソブチレンの合成が開示されている。この方法は、テレケリック(末端反応性)二ハロゲンポリイソブチレンの溶液を還流する工程、カリウムt−ブトキシドなどの強塩基の溶液を添加する工程、そして撹拌してテレケリックジオレフィンポリイソブチレンを生成させる工程を含む。
【0016】
特許文献4には、予備開始剤およびカチオン重合に有効な触媒を単量体と混合して、分子量を制御しながらカチオン重合を行う方法が開示されている。その後、得られたリビングポリマーは所望通りに処理される。
【0017】
特許文献5には、第三級塩素でキャップしたポリイソブチレンを求電子置換によりアリルトリメチルシランでアリル化することにより、アリル末端ポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。合成は、三塩化ホウ素を触媒としてモノ又はオリゴ第三級クロリド「イニファ」で始まるイソブチレンの重合で開始され、次いで同じ反応容器にヘキサン、アリルトリメチルシランおよび四塩化チタンが添加される。
【0018】
特許文献6及び7には、有機酸又はそのエステルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0019】
特許文献8及び9には、有機エーテルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0020】
特許文献10には、四塩化チタン、およびピリジンまたは非ヒンダードアルキルピリジンから選ばれた電子対供与体の存在下でカチオン重合により、アルファ−オレフィンまたは共役アルカジエンを含む弾性重合体を製造する方法が開示されている。重合体は分子量分布が非常に狭く単モードである。
【0021】
特許文献11には、アジド、シアノ、カルボニルアミノ又はチオカルボニルアミノ末端基など所望の窒素含有官能基で官能化した高分子物質を直接合成する方法が開示されている。重合と官能化は実質的に同時に起こる。
【0022】
特許文献12には、ポリオレフィン中間ブロックとスチレン末端ブロックを有するブロック共重合体を製造するために、リビングポリオレフィン、特にはポリイソブチレンの鎖末端から開始して、芳香族、好ましくはスチレン単量体をリビング重合させる方法が開示されている。
【0023】
特許文献13には、単一工程でリビングポリイソブチレンを硫酸アセチルでスルホン化することにより、スルホン酸末端ポリイソブチレンを一ポットで製造する方法が開示されている。この方法は、ルイス酸を用いて「イニファ」開始カルボカチオン重合を行って重合体を生成させた後、スルホン化することを含む。
【0024】
特許文献14及び15には、置換又は非置換ジフェニルアルキレン、メトキシスチレン、トランス−スチルベン、1−イソプロペニルナフタレンおよび2,4−ジメチルスチレンからなる群より選ばれる重合不可能な単量体からなる一種もしくは二種以上のキャップ化合物で、リビングポリマーをキャップすることが開示されている。
【0025】
特許文献16には、凝縮相で開始剤系の存在下でイソブチレンまたはイソブチレン含有単量体混合物をカチオン重合することにより、重合体鎖のうちの少なくとも60%が少なくとも1個のオレフィン不飽和末端基を持つポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。
【0026】
特許文献17には、リビング重合条件下で好適な単量体をカチオン重合してその重合をN置換ピロールで失活させることにより、単分散テレケリック重合体を製造する方法が開示されている。N置換ピロールを含む官能化重合体は、燃料添加剤および/または潤滑油添加剤として用いることができる。
【0027】
特許文献18には、カチオン重合によりリビングカルボカチオン重合系を一種もしくは二種以上の芳香族環系と反応させて製造した重合体を官能化する方法、および該方法の置換又は非置換反応生成物を、潤滑油又は燃料組成物および添加剤濃縮物に例えば分散剤、清浄剤または酸化防止剤またはVI向上剤として使用することが開示されている。
【0028】
非特許文献2。その著者は、低純度の2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(DTBP)の存在下でエキソ−オレフィン生成を観察した後、準リビングポリイソブチレンからのβ−プロトン脱離について研究を行っている。著者は脱離が、DTBP中に6×10-6モル/リットルの濃度で存在する立体障害のある環状イミン塩基の存在によるとした。この不純度を2−tert−ブチルピリジン(TBP)を用いてシミュレートして、後者のTBPを重合の開始時に(すなわち、単量体の存在下で)反応器に添加すると、結果として3時間の反応時間後に約65%の脱離が生じてエキソ−オレフィンだけが生成することを発見した。脱離の程度が20%又はそれ以上に達すると、1H NMRとGPC両方の分析では著しいカップリングが観察された。バエ及びファウストは、TBPなど立体障害のある塩基による脱離は望ましくなく、避けるべきであるというはっきりした考えを持っていた。この論文の最初の段落には次のように要約されている:「最後に、強塩基もβ−プロトンを脱離しうるが、回避すべきである。」その後に著者は、「その犯人」としてDTBP中の環状イミン塩基の不純度に言及している。最後に著者は論文全体を要約して、脱離工程は運動速度定数の測定を容易にするかもしれないが、重合体製造のためには回避すべきであると述べている:「明確に規定した巨大分子の合成ではβ−プロトン脱離を回避すべきであるが、一方でこの工程の拡散制御を明らかにできるなら、活性中心の濃度を決定する新規な方法となり、それから絶対生長速度定数を計算することが可能になる。」
【0029】
【特許文献1】米国特許第4342849号明細書
【特許文献2】欧州特許第341012号明細書
【特許文献3】米国特許第4152499号明細書
【特許文献4】米国特許第4393199号明細書
【特許文献5】米国特許第4758631号明細書
【特許文献6】米国特許第4910321号明細書
【特許文献7】米国特許第5122572号明細書
【特許文献8】米国特許第4929683号明細書
【特許文献9】米国特許第5066730号明細書
【特許文献10】米国特許第5219948号明細書
【特許文献11】米国特許第5336745号明細書
【特許文献12】米国特許第5428111号明細書
【特許文献13】米国特許第5448000号明細書
【特許文献14】米国特許第5637647号明細書
【特許文献15】米国特許第5677386号明細書
【特許文献16】米国特許出願第10/433439号、出願公開第2004/0015029A1号明細書
【特許文献17】米国特許出願第10/600898号、出願公開第2004/0260033A1号明細書
【特許文献18】国際出願第PCT/EP/05472号、国際公開第WO99/09074号パンフレット
【非特許文献1】M.ロス(M. Roth)及びH.メイヤー(H. Mayr)著、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」、1996年、第29巻、p.6104、
【非特許文献2】ヤング・チェオル・バエ(Young Cheol Bae)及びルドルフ・ファウスト(Rudolf Faust)著、「イソブチレンのリビングカチオン重合における遊離塩基によるβ−プロトン脱離(β-Proton elimination by Free Bases in the Living cationic Polymerization of Isobutylene)」、マクロモレキュルズ、1997年、第30巻、p.7341−7344
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法に関する。この方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つ一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることを含む。また、この方法は、重合体生成物を生成させるために失活剤を添加することになるカチオン性の準リビングポリオレフィンポリマーを、ルイス酸および電子供与体または共通イオン塩又はその前駆体を使用して生成させることも含む。
【課題を解決するための手段】
【0031】
つまり、本発明は、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法であって、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、芳香族環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることからなる方法に関する、ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではない:
(a)2,4−ジメチルピロール、
(b)1,2,5−トリメチルピロール、
(c)2−フェニルインドール、
(d)2−メチルベンズイミダゾール、
(e)1,2−ジメチルイミダゾール、
(f)2−フェニルイミダゾール、および
(g)2,4,5−トリフェニルイミダゾール。
【0032】
失活を、約−130℃乃至約10℃の範囲の温度で行うことが好ましい。より好ましくは失活を約−80℃乃至約0℃の温度で行い、更に好ましくは失活を約−72℃乃至約−10℃の温度で行う。最も好ましくは失活を約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う。
【0033】
ポリオレフィンはポリイソブチレンであることが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい態様では、ポリオレフィンをその場で製造する。
【0035】
本発明の態様に用いられる窒素含有五員芳香族環は置換ピロールである。
【0036】
本発明の方法に用いられる置換ピロールは下記一般式を有する。
【0037】
【化1】

【0038】
式中、(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は、組として独立に、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0039】
上記の方法でR1およびR4はメチルであり、そしてR2およびR3は水素であることが好ましい。
【0040】
上記方法の別の好ましい態様では、R1、R2、R3およびR4はメチルである。
【0041】
上記方法の別の好ましい態様では、R1およびR2はメチルであり、そしてR3とR4は縮合ベンゾ環を形成している。
【0042】
好ましい態様では置換ピロールは下記式を有する。
【0043】
【化2】

【0044】
本発明の別の態様に用いられる窒素含有五員芳香族環は、置換イミダゾールである。
【0045】
本発明の方法で置換イミダゾールは下記一般式を有する。
【0046】
【化3】

【0047】
式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜8の脂肪族環を形成している。
【0048】
上記方法の別の好ましい態様では、R1はメチルであり、R2は水素であり、そしてR3はtert−ブチルである。
【0049】
本発明の方法で窒素含有五員芳香族環のアルキル基は、炭素原子約1〜約20個を有することが好ましい。より好ましくは、アルキル置換窒素含有五員芳香族環のアルキル基は炭素原子約1〜約12個を有する。最も好ましくは、アルキル置換窒素含有五員芳香族環のアルキル基は炭素原子約1〜約4個を有する。
【0050】
上記本発明の方法では、tert−クロリド鎖末端またはtert−クロリド鎖末端とオレフィン鎖末端との両者を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物を、ルイス酸の存在下で窒素含有五員芳香族環で失活させることにより、ポリオレフィンを製造する。
【0051】
本発明のまた別の態様では、tert−クロリド鎖末端を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物を、ルイス酸の存在下で窒素含有五員芳香族環で失活させることにより、ポリオレフィンを製造する。
【0052】
ルイス酸は、チタンまたはホウ素のハロゲン化物であることが好ましい。より好ましくは、ルイス酸はハロゲン化チタンである。最も好ましくは、ルイス酸は四塩化チタンである。好ましい四塩化チタンの濃度は、プロトン性不純物、電子供与体、共通イオン塩又はその前駆体および失活剤又は失活剤群を一緒にした濃度を二倍以上上回る。
【0053】
本発明の方法を使用して得られたポリオレフィン生成物は、エキソ−オレフィン鎖末端を全鎖末端に基づき1%乃至100%の範囲で有する。好ましくは、ポリオレフィン生成物は少なくとも3%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、より好ましくは少なくとも20%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、更に好ましくは少なくとも50%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、また更に好ましくは少なくとも70%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、そしてまた更に好ましくは90%のエキソ−オレフィン鎖末端を有する。最も好ましくは、ポリオレフィン生成物は全鎖末端に基づき少なくとも99%のエキソ−オレフィン鎖末端を有する。
【0054】
本発明の方法で準リビングポリオレフィンポリマーは、ルイス酸の存在下でかつ準リビング重合に適した反応条件下で少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体を開始剤と接触させることにより生成させる。少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体は、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンのうちの少なくとも一種からなることが好ましい。より好ましくは、少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体はイソブチレンである。
【0055】
本発明の方法では、二種以上の異なるカチオン重合可能な単量体を用いることができる。
【0056】
本発明の方法で開始剤は、一官能性であっても多官能性であってもよい。好ましくは、開始剤は一官能性または二官能性である。より好ましくは、開始剤は一官能性である。
【0057】
本発明の方法で一官能性開始剤は、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセトキシ−2−フェニルプロパン、2−プロピオノキシ−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオノキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンのうちの少なくとも一種からなる。
【0058】
本発明の方法で二官能性開始剤としては、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、および1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンを挙げることができる。
【0059】
本発明の方法で多官能性開始剤の例としては、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンがある。
【0060】
本発明の方法でポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは、約1.01乃至約3.0の範囲で存在する。好ましくは、ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは約1.1乃至約2.0の範囲で存在する。より好ましくは、ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは1.5未満である。
【0061】
また、本発明は、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法であって、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、芳香族環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物であって、ルイス酸と予備反応させた窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることからなる更なる方法にも関する、ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではない:
(a)2,4−ジメチルピロール、
(b)1,2,5−トリメチルピロール、
(c)2−フェニルインドール、
(d)2−メチルベンズイミダゾール、
(e)1,2−ジメチルイミダゾール、
(f)2−フェニルイミダゾール、および
(g)2,4,5−トリフェニルイミダゾール。
【0062】
上記方法の好ましい態様では、ルイス酸はTiCl4である。
【0063】
上記方法の更に好ましい態様では、窒素含有五員芳香族環化合物は2,5−ジメチルピロールである。
【0064】
上記方法の別の好ましい態様では、窒素含有五員芳香族環化合物は2,3−ジメチルインドールである。
【発明の効果】
【0065】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に失活剤として使用される置換ピロールおよび置換イミダゾールなどの窒素含有五員芳香族環化合物が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることが判明した。如何なる理論にもとらわれずに、これらの失活剤は、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0067】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、一般に炭素原子数1〜約20の直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基を意味する。直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基の幾つかの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等がある。
【0068】
「芳香族又は脂肪族縮合環」は、本明細書で使用するとき、ピロール又はイミダゾール環の2個の隣接炭素原子で形成された環を意味し、こうして形成された環はピロール又はイミダゾール環に縮合している。縮合芳香族環の例としては、ピロール環またはイミダゾール環に縮合したベンゾ基がある。縮合脂肪族環は、ピロール環またはイミダゾール環に縮合した如何なる環状構造であってもよい。
【0069】
「分枝アルキル」は、本明細書で使用するとき、アルキル基が分子の残部に結合している位置を表す炭素原子が、第三級又は第四級炭素原子のいずれかであるアルキル基を意味する。「第三級炭素」は、本明細書で使用するとき、3個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。「第四級炭素」は、本明細書で使用するとき、4個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。
【0070】
「カルベニウムイオン」又は「カルボカチオン」は、本明細書で使用するとき、3個のsp2結合置換基と空のp軌道を持つ正に荷電した炭素原子を意味する。
【0071】
【化4】

【0072】
「連鎖移動反応」は、本明細書で使用するとき、一つの重合鎖の生長の停止とそれに伴う別の重合鎖の起こりうる開始を意味する。
【0073】
「共通イオン塩」は、本明細書で使用するとき、生長したカルベニウムイオンと対イオンの対の解離を防ぐために、準リビングカチオン重合混合物に任意に添加されるイオン性の塩を意味する。共通イオン塩のアニオンは、生長した鎖末端の対イオンと同じである。共通イオン塩のカチオンは、一般にはテトラ−n−ブチルアンモニウムイオンのような脂肪族第四級アンモニウムカチオンであり、有機媒体への溶解度を与える。
【0074】
「共通イオン塩前駆体」は、本明細書で使用するとき、準リビングカチオン重合混合物に任意に添加されて、ルイス酸とのその場での反応により、生長した鎖末端の対アニオンと同じ対アニオンを発生させるイオン性の塩を意味する。一例として塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムがある。
【0075】
「制御した分子量分布」は、本明細書で使用するとき、所望の分子量分布を有するポリオレフィン重合体を意味する。分子量分布又は多分散性指数(PDI)は、本明細書では重合体鎖の平均分子量を数平均分子量で割算することにより、Mw/Mnで算出される。
【0076】
「カップリング生成物」は、本明細書で使用するとき、PIBエキソ−オレフィン鎖末端にPIB末端カルベニウムイオンが付加した生成物を意味する。カップリング生成物の数平均分子量は、主重合体生成物の数平均分子量のおよそ二倍である。
【0077】
「カップリング」は、本明細書で使用するとき、ポリイソブチレンエキソ−オレフィン鎖末端にポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが付加することを意味する。
【0078】
「従来の重合」は、本明細書で使用するとき、オレフィンを含む連鎖反応重合が、連鎖伝達粒子としてイオン、アニオン又はカチオンのいずれかによって進行する重合を意味する。重合は、連鎖開始、連鎖生長、連鎖移動および連鎖停止の工程で進む。
【0079】
「二EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、2個の別個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。二EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含む。
【0080】
「二置換オレフィン」又は「エキソ−オレフィン」又は「メチルビニリデン」は、本明細書で使用するとき、下記に示すようにエキソ−オレフィン鎖末端を含むオレフィン重合体鎖を意味する。
【0081】
【化5】

【0082】
「EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、1個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含む。
【0083】
「電子供与体」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて、ルイス酸と完全に錯体を作る、またはルイス酸と全く錯体を作らないのいずれかである塩基性及び/又は求核物質を意味する。電子供与体の濃度は、プロトン性不純物、例えば水の濃度を上回る。
【0084】
「求電子芳香族置換又はEAS」は、本明細書で使用するとき、EAS生成物が生成する工程を意味する。
【0085】
「gem−ジメチル炭素」は、本明細書で使用するとき、下記の構造で示すように、ポリオレフィン重合体鎖末端のカルベニウムイオンまたはクロリド結合炭素に対してアルファ位にある2個のメチル炭素を意味する。
【0086】
【化6】

【0087】
「炭化水素基」は、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。
【0088】
「開始剤」は、本明細書で使用するとき、重合を開始して重合体鎖の先端の原子価を満たす化学部分、もしくはそのような部分を供給する分子を意味する。一官能性開始剤が使用されるなら、鎖末端(CE)濃度は開始剤の濃度に等しい。多官能性開始剤では、開始剤の官能価がxであるとき鎖末端濃度は開始剤濃度のx倍に等しい。
【0089】
「ルイス酸」は、本明細書で使用するとき、一対の電子を受容して共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0090】
「リビング重合」は、本明細書で使用するとき、測定可能な連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しに進行する重合を意味する。
【0091】
「窒素含有五員芳香族環」は、本明細書で使用するとき、芳香族環に少なくとも1個の窒素原子、最大で芳香族環に2個の窒素原子を含み、かつ約1〜約20個の炭素原子を含む約2個のアルキル基乃至約4個のアルキル基が環に結合しているピロール類およびイミダゾール類を意味する。
【0092】
「準リビング重合」は、本明細書で使用するとき、可逆的な連鎖停止反応は作動しうるが、不可逆的な連鎖停止反応と連鎖移動反応はゼロに近いリビング重合を意味する。
【0093】
「失活剤」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて生長鎖末端と反応する化学化合物を意味する。
【0094】
「ポリオレフィン」は、本明細書で使用するとき、一種以上のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、スチレン、イソブチレン等の付加重合によって生成する重合体を意味する。
【0095】
「プロトン性不純物」は、本明細書で使用するとき、重合反応混合物中の酸性水素原子をその構造に含む不純物、例えば水を意味する。
【0096】
「位置特異的」は、本明細書で使用するとき、幾つかの可能な異性生成物のうちの一種だけ又は殆ど一種だけを与える化学反応を意味する。
【0097】
「停止」は、本明細書で使用するとき、ルイス酸の分解により重合工程または失活反応を停止させる化学反応を意味する。
【0098】
「停止剤」は、本明細書で使用するとき、重合工程または失活反応を停止させるが、同時に新たな重合体鎖を開始できない化学化合物を意味する。停止剤として多数のアルコールを使用することができる。
【0099】
「tert−クロリド」は、ポリオレフィン重合体鎖の2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を意味する。
【0100】
特に断わらない限り、パーセントは全て質量%である。
【0101】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に失活剤として使用される置換ピロールおよび置換イミダゾールなどの窒素含有五員芳香族環化合物が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることを測定した。如何なる理論にもとらわれずに、これらの失活剤は下記に示すように、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【0102】
【化7】

【0103】
米国特許出願第10/600898号明細書に開示されているような求電子芳香族置換(EAS)メカニズムで準リビングカチオン重合を失活させる、非常に似通った構造の失活剤が先行技術で知られているので、この結果は予測し得ないものであった。最も高いEAS収量を与える化合物は一般に、環の有利な位置に位置する電子供与基で置換されている。これらの置換基は、例えばポリイソブチレンカルベニウムイオンが環のオレフィンと反応したときに生じる、フリーデル・クラフツ中間体を安定化させると考えられる。
【0104】
本発明に使用される失活剤は、一官能性開始剤が使用されようと多官能性開始剤が使用されようとそれとは無関係に、オレフィン鎖末端とtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィン重合体をエキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換することができる。さらに、この変換速度は一官能性開始剤でも二官能性開始剤でも同じである。一官能性開始剤の2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンで開始したカチオン性の準リビングポリイソブチレン鎖に失活剤を添加した後15分以内で、100%の変換が観察された。同様の結果は、二官能性開始剤の1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼンでも得られた。
【0105】
全鎖末端に基づき高濃度のエキソ−オレフィン鎖末端を含むポリイソブチレン重合体の製造では、温度依存性が観察された。反応温度を上げると、カップリングを抑えることでエキソ−オレフィンの収量が増加することが分かった。データは、基本的に定量のエキソ−オレフィン変換が−60℃及び−50℃ではカップリング無しに15分以内で達成されたことを示している。だが、−70℃では1H NMRおよびGPCスペクトルで若干のカップリングが観察された。カップリングは、1H NMRスペクトルでは百万分の4.85部ピークのエキソ−オレフィンピークよりほんの上方領域の4.82に中心があるピークとして見つけられ、またGPCスペクトルでも主ピークに低溶離量の肩として表示される。
【0106】
本発明の方法で重要なのは、準リビング重合とそれに続く失活の条件を設計する際に一定の原則を見い出していることである。如何なる理論にもとらわれずに、所望の脱離反応は、カルベニウムイオンと既に生成したエキソ−オレフィンとの反応によるカップリング生成物の生成と常に競合していると考えられる。従って、脱離に有利でカップリングに不利な条件を探し出さなければならない。
【0107】
高い反応温度が脱離に有利でカップリングに不利であることは分かっている。イソブチレンの準リビングカチオン重合では、活性カルベニウムイオンと休止状態のtert−クロリド鎖末端間の平衡が存在する。系の温度が上がると、この平衡は休止状態の鎖末端に益々有利になるが、これは脱離及びカップリングの速度を同等程度まで下げることになる。だが、高温は失活剤とルイス酸の間の錯体の平衡を非錯化失活剤の方にずらすことにもなり、それが脱離を起こさせる動因であると思われる。よって、温度の上昇は所望の反応に競合的な利点をもたらす。ただし、エキソ−オレフィン生成物にはエンドオレフィンが低い割合で混入し始めるから、温度を無制限に上げることはできない。
【0108】
鎖末端濃度、並びにそれと失活剤濃度およびルイス酸濃度との関係も重要である。高い鎖末端濃度は、低分子量が目的であるときに必要になるが、オレフィンカップリングに優先的に有利である、というのはその工程が重合体鎖では二次的なものだからである。従って、所望の優勢な脱離速度を維持するためには、失活剤濃度および/または温度を上げるべきである。だが、これらの変化は両方とも、カルベニウムイオンの濃度を低下させ、よって鎖末端のエキソ−オレフィン変換を減ずるという望ましくない影響を及ぼす。失活剤濃度の増加は失活剤とルイス酸の間の錯体形成によりルイス酸の濃度を減少させ、そしてこれがカルベニウムイオン濃度を強く減少させることになる、というのは後者はおよそルイス酸濃度の二乗で変化するからである。従って、低分子量を目的とする処方では、高い失活剤濃度および高いルイス酸濃度で配合するべきで、好ましくは高温で実施する。目的の分子量が何であれカップリングを減らす得策は、追加の希釈剤で反応体全部を希釈することである。
【0109】
充分な濃度の塩基性電子供与体が存在する場合、失活剤濃度が準リビング鎖末端濃度のほんの一部であるときに、エキソ−オレフィン鎖末端への完全な変換が得られることが判明している。このことは、これらの条件下で失活剤がカルベニウムイオンからプロトンを取り去り、続いてプロトンを電子供与体に移すこと、すなわち、失活剤が脱離の触媒としてのみ作用して、電子供与体はプロトン受容体として働くことを示唆している。(鎖末端に対して)化学量論濃度未満の失活剤の使用は、本発明の方法を実施する際に経済的利点をもたらすことになる。一方、塩基性電子供与体が不在で、例えば後者の代わりに共通イオン塩又はその前駆体が存在するとき、鎖末端の完全なエキソ−オレフィン変換には化学量論濃度又はそれ以上の失活剤が必要になることが判明している。これらの条件下では、失活剤は触媒とプロトン受容体両方として働く。
【0110】
[エキソ−オレフィン末端基を鎖に含むポリオレフィン重合体の一般的な製造方法]
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造の代表的な方法を記載する。
【0111】
本発明の方法は、バッチ法、連続法、半バッチ法、もしくは当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。
【0112】
重合反応は不活性ガス中で実質的に無水の環境で行う。次のような反応体を反応器に充填する:
1)希釈剤、
2)開始剤、
3)電子供与体、または共通イオン塩又はその前駆体、
4)一種もしくは二種以上の単量体、および
5)ルイス酸、一般にはチタン又はホウ素のハロゲン化物からなる。
【0113】
反応混合物を、約−130℃乃至約10℃の範囲の所望の温度で平衡にする。本発明の方法は、任意の所望の圧力で、大気圧、減圧または過圧で行うことができる。
【0114】
重合反応の進行を、反応混合物中に残っている単量体の量の測定によりその場でモニタする。単量体の高度の変換を観察した後、失活剤を添加する前に失活前の鎖末端組成を測定するために一部(アリコート)を取り出す。アリコートの重合反応を所望の温度で平衡にした適当なアルコールで停止させる。
【0115】
6)一種もしくは二種以上の窒素含有五員環失活剤を、反応混合物に添加して重合反応を失活させる。
【0116】
所望の生成物を得るために反応体の濃度を変えることができるが、エキソ−オレフィン鎖末端を高い収量で得るためにはある一定の反応体比が重要であることが分かっている。その比を下記に記す。
【0117】
単量体と開始剤のモル比は、約3:1乃至約20000:1の範囲にある。好ましくは、単量体と開始剤のモル比は約5:1乃至約2000:1の範囲にある。より好ましくは、単量体と開始剤のモル比は約10:1乃至150:1である。単量体と開始剤のモル比が、ポリオレフィンの最終的な分子量を制御する。
【0118】
ルイス酸と鎖末端のモル比は、約0.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と鎖末端のモル比は約2:1乃至約200:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と鎖末端のモル比は約2:1乃至15:1である。
【0119】
ルイス酸と電子供与体のモル比は、約1.1:1乃至約10000:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と電子供与体のモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と電子供与体のモル比は約4:1乃至30:1である。
【0120】
ルイス酸と失活剤のモル比は、約1.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と失活剤のモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と失活剤のモル比は約2:1乃至15:1である。
【0121】
失活剤と鎖末端のモル比は、約0.25:1乃至約20:1の範囲にある。好ましくは、失活剤と鎖末端のモル比は約0.5:1乃至約5:1の範囲にある。より好ましくは、失活剤と鎖末端のモル比は約0.5:1乃至4:1である。
【0122】
ポリオレフィン重合体のエキソ−オレフィン鎖末端の濃度を測定するために、失活剤を添加したのち様々な時間間隔で反応混合物から追加のアリコートを取り出す。全てのアリコート試料および残った反応混合物で、所望の温度で平衡にした適当なアルコールを用いて重合反応を停止させる。
【0123】
エキソ−オレフィン鎖末端の濃度を、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端の濃度と共に1H NMRを使用して定める。EAS生成物、二EAS生成物およびカップリング生成物の量を定性的に求めるために、GPCスペクトルも取る。
【0124】
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用するのに適した化合物を記載する。
【0125】
[希釈剤]
希釈剤はその極性により、生長種のイオン化平衡および交換速度に影響を及ぼし、極性はその誘電率から見積もることができる。一般に、誘電率の低い溶媒はイオン対が解離し難いので好ましい。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、凝固点がかなり低くて好ましい重合温度で使用できる低沸点のアルカン類および一又は多ハロゲン化アルキル類が挙げられる。具体的な溶媒としては、カチオン重合に使用できる代表的な液体希釈剤または溶媒の若干の例を挙げると、アルカン類(一般にはC2−C10アルカン、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナンおよびノルマルデカンなどのノルマルアルカン、およびイソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタンおよび2,3−ジメチルブタン等を含む分枝アルカン)、アルケン及びハロゲン化アルケニル類(例えば、塩化ビニル)、二硫化炭素、クロロホルム、塩化エチル、塩化n−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、二酸化硫黄、無水酢酸、四塩化炭素、アセトニトリル、ネオペンタン、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエテン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、または1,3−ジクロロプロパン、ニトロ−アルカン類(例えば、ニトロプロパン)を挙げることができる。混合溶媒(例えば、上記に挙げたものの組合せ)も使用することができる。
【0126】
[開始剤]
リビング及び準リビングカルボカチオン重合の開始剤化合物は、当該分野ではよく知られている。開始剤は、所望とする生成物に応じて一官能性であっても多官能性であってもよい。所望の重合体が線状であるなら、一官能性及び二官能性開始剤が用いられる。星形重合体を製造するには、開始剤は2個より多い反応部位を持つべきである。考えられる開始剤化合物は、一般式(X’−CRabnc(ただし、Ra、RbおよびRcは独立に、アルキル基、芳香族基、アルキル芳香族基のうちの少なくとも一種からなり、同じでも異なっていてもよく、そしてX’は、アセテート、エテレート、ヒドロキシル基またはハロゲンである)で表すことができる。Rcの価数はnであり、nは1〜4の整数である。Ra、RbおよびRcは、炭素原子1〜約20個、好ましくは炭素原子1〜約8個を含む炭化水素基であることが好ましい。X’はハロゲンであることが好ましく、より好ましくは塩素である。場合によっては、Ra、RbおよびRcの構造を生長種または単量体に似せて選択することが好ましく、例えば、ポリスチレンには1−フェニルエチル誘導体、あるいはポリイソブチレンには2,4,4−トリメチルペンチル誘導体である。好適な化合物としては例えば、ハロゲン化クミル、ジクミル及びトリクミル、特には塩化物、すなわち、2−クロロ−2−フェニルプロパン、すなわち塩化クミル;1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(塩化クミル);1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(塩化クミル);2,4,4−トリメチル−2−クロロペンタン;2−アセチル−2−フェニルプロパン、すなわち酢酸クミル;2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、すなわちプロピオン酸クミル;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、すなわちクミルメチルエーテル;1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(クミルメチルエーテル);1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(クミルメチルエーテル)、および類似化合物を挙げることができる。その他の好適な例は米国特許第4946899号明細書に見い出すことができる。特に好ましい例は、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン(bDCC)である。
【0127】
全反応混合物における鎖末端の濃度は、約0.0001モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、鎖末端の濃度は約0.001モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、鎖末端の濃度は約0.005モル/リットル乃至約0.5モル/リットルの範囲にある。
【0128】
[電子供与体]
電子供与体は、従来の重合系をリビング及び/又は準リビングカチオン重合系に変えることが明らかになっている。本発明に用いられる電子供与体は、特別な化合物又は化合物の部類にはっきりと限定されるわけではない。例としては、ピリジン類およびアルキルアミン類、非プロトン性アミド類、スルホキシド類、エステル類、および金属原子に酸素原子が結合している金属化合物等を挙げることができる。ピリジン化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、およびピリジンが挙げられる。N,N−ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルトルイジンも用いることができる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。スルホキシド化合物の例としてはジメチルスルホキシドがある。ジエチルエーテルはエーテル化合物の例であり、そして酢酸メチルおよび酢酸エチルはエステル化合物の例である。リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸エステル化合物も用いることができる。チタン酸テトライソプロピルなどの酸素含有金属化合物も電子供与体として使用できる。
【0129】
全反応混合物における電子供与体の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約0.1モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、電子供与体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、電子供与体の濃度は約0.002モル/リットル乃至約0.02モル/リットルの範囲にある。
【0130】
[共通イオン塩及び共通イオン塩前駆体]
電子供与体に加えてもしくはその代わりに、共通イオン塩又は塩前駆体を任意に反応混合物に添加することができる。一般にこれらの塩は、イオン強度を高め、遊離イオンを抑え、そして配位子交換体と有利に相互作用させるために使用される。特に好ましいのは共通イオン塩前駆体、例えば塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NCl)である。
【0131】
全反応混合物における共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は、約0.0005モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.0005モル/リットル乃至約0.025モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.007モル/リットルの範囲にある。
【0132】
[単量体]
本発明の方法に使用するのに適した単量体は、炭化水素単量体、すなわち水素原子と炭素原子だけを含む化合物、特にはオレフィンおよびジオレフィンであり、通常は炭素原子数約2〜約20のものであるが、好ましくは約4〜約8のものである。この方法は、そのような単量体を重合して、異なってはいても分子量が均一な重合体、例えば約300乃至100万g/モルを越える重合体を生成させるのに用いることができる。そのような重合体は、分子量が約200乃至10000g/モルの低分子量液体又は粘性重合体であってもよいし、あるいは分子量が約100000乃至1000000g/モル又はそれ以上の固体ワックス状乃至塑性又は弾性物質であってもよい。好適な単量体としては、イソブチレン、スチレン、ベータピネン、イソプレン、ブタジエンなどの化合物、およびこれらの種の置換化合物等を挙げることができる。特に好ましい単量体は、イソブチレン、2−メチル−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンである。更に好ましい単量体はイソブチレンである。単量体の混合物も使用することができる。
【0133】
全反応混合物における単量体の濃度は、約0.01モル/リットル乃至約5.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、単量体の濃度は約0.1モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、単量体の濃度は約0.3モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。最も好ましくは、単量体の濃度は0.5モル/リットルである。
【0134】
[ルイス酸]
本発明のための触媒として適したルイス酸としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタン及びホウ素、特には四塩化チタンおよび三塩化ホウ素が挙げられる。ハロゲン化チタン、特には四塩化チタンを使用することが好ましい。ルイス酸の強度とその濃度は特定の単量体に対して調整すべきである。さらに、これらルイス酸の強度は求核添加剤を用いて調整することができる。場合によってはこれらルイス酸は補助開始剤とも呼ばれる。開始剤系に存在するルイス酸の量は変えることができる。ただし、適切な重合及び失活速度を遂行できるほどルイス酸の濃度が充分であることが望ましい。生成した重合体を沈殿させるほどルイス酸濃度を高くすべきではない。
【0135】
全反応混合物におけるルイス酸の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約3.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.005モル/リットル乃至約1.5モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.05モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。
【0136】
[失活剤]
本発明のポリオレフィンの製造に使用が考えられる失活剤は、窒素含有五員芳香族環化合物であり、例えば置換ピロールおよび置換イミダゾールがある。
【0137】
本発明の方法に用いられる置換ピロールは下記一般式を有する。
【0138】
【化8】

【0139】
式中、(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は両者とも、各組独立に、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0140】
本発明の別の態様に用いられる窒素含有五員芳香族環は、置換イミダゾールである。
【0141】
本発明の方法で置換イミダゾールは下記一般式を有する。
【0142】
【化9】

【0143】
式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜8の脂肪族環を形成している。
【0144】
本発明の方法に用いることができるその他の窒素含有五員芳香族環化合物の構造を下記に記す。下記の構造は例としてのみ意図したものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0145】
【化10】

【0146】
全反応混合物における失活剤の濃度は、約0.0001モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、失活剤の濃度は約0.001モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、失活剤の濃度は約0.005モル/リットル乃至約0.5モル/リットルの範囲にある。
【0147】
[停止剤]
本発明の重合反応を停止させるのに、任意の可溶性アルコールを使用することができる。好ましいのは、炭素原子約1〜約8個を含むモノアルコール類である。
【実施例】
【0148】
[実施例1] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造
頭上機械撹拌器と白金抵抗温度計を備えた250ミリリットル四つ口丸底フラスコを、ATR−FTIRプローブの端部に取り付けたが、ストレイ、R.F.(Storey, R.F.)及びトーマス、Q.A.(Thomas, Q.A.)著、「マクロモレキュルズ」、2003年、第36巻、p.5065−5071に記載されているように、プローブは導光管によりにFTIR分光計に接続されている。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のMブラウン・グローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。大気のバックグラウンド・スペクトルを取って、それ以後に収集した全てのスペクトルから差し引いた。次に、フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン85ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル57ミリリットル、
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.357ミリリットル、および
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.175ミリリットル。
【0149】
丸底フラスコの内容物を平衡にし、そして−60℃で平衡にしたイソブチレン6.1ミリリットルの添加に先立って、887cm-1の基準吸光度を決定するために、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)データをおよそ10分間に渡って継続して取った。
【0150】
次に、撹拌を続けながら、四塩化チタン1.37ミリリットルをフラスコに加えた。反応を進行させ、887cm-1のイソブチレンピークをその場でFTIRでモニタすることで測定したところおよそ95%の高い変換に至った。フーリエ変換赤外分光法によるモニタに用いた方法については後で記載する。失活前のアリコートおよそ5−10ミリリットルをガラスピペットを用いてフラスコから取り出し、−60℃で平衡にした無水メタノール4ミリリットルを含むシンチレーション・バイアルに入れて、重合反応を停止させた。このアリコートを用いて2,5−ジメチルピロールによる失活反応の基準を決定し、また失活剤無しの場合の構造及び分子量的特徴の基準とした。
【0151】
イソブチレン変換が99%の時点で、丸底フラスコの重合反応を2,5−ジメチルピロール0.3ミリリットルを添加することにより失活させた。失活後のアリコートおよそ5−10ミリリットルを、2,5−ジメチルピロールの添加後様々な時間間隔で、−60℃で平衡にした無水メタノール4ミリリットルを含むシンチレーション・バイアルに入れることにより停止させた。
【0152】
次に、丸底フラスコには2,5−ジメチルピロールの添加後91.9分の時点で、−60℃で平衡にしたメタノールを適当な量加えて残りの重合反応混合物を停止させた。
【0153】
アリコート試料および最終的に停止させた反応混合物を室温まで放温し、揮発成分を蒸発させた。各アリコート試料にヘキサン1−2ミリリットルを加えると、重合体がメタノールに沈殿した。各アリコート試料からポリイソブチレンを回収し、そして残存する如何なる不純物も除去するために、ボルテックス混合機を用いて新鮮なメタノールと一緒にかき混ぜてメタノールをデカントした。各アリコートから回収したポリイソブチレン試料を室温の減圧オーブンに少なくとも24時間入れて、残っていた如何なる溶媒も取り除いた。
【0154】
下記第1表は、実施例1−20および比較例A−Dで使用した反応体の量をまとめて示す。
【0155】
下記第2表は、実施例1−20および比較例A−Dで使用した反応体のモル濃度をまとめて示す。
【0156】
下記第1表及び第2表では、反応体について以下の略語を用いている。
TMPClは、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンの略語である。
bDCCは、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼンの略語である。
25DMPyは、2,5−ジメチルピロールの略語である。
2345TeMPyは、2,3,4,5−テトラメチルピロールの略語である。
2MInは、2−メチルインドールの略語である。
23DMInは、2,3−ジメチルインドールの略語である。
125TMPyは、1,2,5−トリメチルピロールの略語である。
1MPyは、1−メチルピロールの略語である。
24DMPyは、2,4−ジメチルピロールの略語である。
2,5−DMPy/TiCl4は、2,5−ジメチルピロールと四塩化チタンの混合物の略語である。
【0157】
実施例1−20および比較例A−Eで使用した希釈剤は、ヘキサンと塩化メチルの容量比60:40の混合物であった。
【0158】
以下に、下記第1表及び第2表で用いた上付き文字「a−h」の説明を記す。
a:これらの失活剤は室温で固体である。失活剤をまず、予備冷却したMeClおよそ10ミリリットルに溶解し、得られた溶液を反応媒体に加えた。失活剤を溶解するのに用いた溶媒の容量は全反応容量に含まれていない。
b:これらの反応では、2,6−ジメチルピリジンの代わりに共通イオン塩のテトラ−n−ブチルアンモニウム塩を用い、そしてこれら表のセルの質量はその特定の使用量を示す。塩をまず、予備冷却した塩化メチルおよそ10ミリリットルに溶解し、得られた溶液を反応媒体に加えた。
c:これらの反応では反応器は60ミリリットル管であった。
d:括弧内の数字は、重合反応そして予備反応させた失活剤/TiCl4も一緒にした後の最終濃度である。
e:重合反応そして予備反応させた失活剤/TiCl4も一緒にした後の最終条件である。
f:重合反応器に添加する前に、TiCl41.062gおよび希釈剤0.0475リットルと25分間予備反応させた。
g:重合反応そして予備反応させた失活剤/TiCl4も一緒にした後の最終容量である。
h:これらの反応では、2,6−ジメチルピリジンの代わりに共通イオン塩のテトラ−n−ブチルアンモニウム塩を用い、そしてこれら表のセルのモル濃度はその使用濃度を示す。塩をまず、予備冷却した塩化メチルおよそ10ミリリットルに溶解し、得られた溶液を反応媒体に加えた。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
【表4】

【0163】
以下に記載するように、1H NMRおよびGPCを使用してポリイソブチレン試料の分析を行った。
【0164】
(イソブチレンのフーリエ変換赤外分光法によるモニタ方法)
重合反応の後で、887cm-1のイソブチレンピークをフーリエ変換赤外分光法によりモニタした。この方法については、ストレイ、R.F.及びトーマス、Q.A.著、「マクロモレキュルズ」、2003年、第36巻、p.5065−5071に記載されている。
【0165】
1H NMRデータの収集方法)
ブルカー(Bruker)AC−300(300MHz)分光光度計を使用して、試料濃度CDCl3中3%乃至5%(質量/質量)を用いて、1H NMRスペクトルを収集した。末端基の分析のために1H NMRスペクトルを使用した。以降の項に記載するように1H NMR積分を用いて、エキソ−オレフィン、エンド−オレフィン、tert−クロリドおよびカップリングオレフィンの鎖末端の割合を得た。
【0166】
(GPCデータの収集方法)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnを決定するためにGPCデータを使用した。オレフィンカップリング生成物を定性的に検出するためにもGPCを使用した。
【0167】
(ポリイソブチレン生成物の鎖末端の量の割合の計算方法)
ポリイソブチレン試料中のエキソ−オレフィン、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端、およびEAS、二EAS及びカップリング生成物の割合を、1H NMR積分を用いて定めた。これら六種で100%の鎖末端を表すと仮定した。場合によっては、1H NMRスペクトルの定性的検査によりEAS、二EAS及びカップリング生成物は存在しないと思われ、またGPCクロマトグラムで重合体主ピークの低溶離量側に肩が無いのを確認することによっても、二EAS及びカップリング生成物については存在しないと思われた。以下に、二つの方法を記す。カップリング生成物が検出されたときは「一般的方法」を使用し、カップリング生成物が存在しないと思われたときは「特別な方法」を使用した。
【0168】
(一般的方法)
エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0169】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
+2Acoupled) (1)
【0170】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは4.63ppmにおけるエキソ−オレフィン共鳴の面積であり、そしてAtert-Clは下記のようにして算出した。
【0171】

tert-Cl=(A1.65-1.72/6)−Aendo (2)
【0172】
ここで、A1.65-1.72はエンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端のgem−ジメチルプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積である。EAS又は二EAS生成物が存在する場合に、その積分面積は各状況に基づいて見積り、他のピークが入り組んでいないピークに基づいて積分を求め、そしてその特徴的なピークを持つプロトンの数に基づいて面積を規格化した。方程式(1)で二EAS及びカップリング生成物両方に2の係数が見られるが、その理由はこれら生成物いずれの発生にも2個のポリイソブチレン鎖が消費される、という事実にあることに留意されたい。Acoupledは下記のようにして算出した。
【0173】

coupled=(A5.0-4.75−A4.5-4.75)/2 (3)
【0174】
ここで、A5.0-4.75はエキソ−オレフィンプロトンのうちの1個とカップリング生成物の2個の同等なプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積であり、そしてA4.5-4.75はもう一方のエキソ−オレフィンプロトンに関係したピークの積分面積である。
【0175】
(特別な方法)
カップリング生成物が定性的に存在しない場合には、エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0176】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
(1)
【0177】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは百万分の4.63部と4.85部における2つのエキソ−オレフィン共鳴の平均面積であり、そしてAtert-Cl、AEASおよびAdi-EASは「一般的方法」に記載したのと同じようにして算出した。
【0178】
下記第3表に、上記実施例1で製造したポリイソブチレン試料について得られた1H NMRの結果を全末端基のモル%で記す。
【0179】
第 3 表
──────────────────────────────────
失活時間
(2,5−ジメチルピロール添加後の分)
──────────────────────────────────
失活前 15.9 30.9 45.3 61.3 75.3
──────────────────────────────────
エキソ−オレフィン収量(モル%)
──────────────────────────────────
8 99 100 100 100 100
──────────────────────────────────
【0180】
第3表のデータは、鎖末端のほぼ定量的なエキソ−オレフィン変換が、2,5−ジメチルピロールの添加後15.9分で達成されたことを示している。
【0181】
[実施例2] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載したようにして上記第1表に列挙した条件でポリイソブチレンを製造した。実施例2の条件は、温度を10℃高くし、反応容量を150ミリリットルから400ミリリットルに増やしたこと以外は上記実施例1で用いた条件と同じであった。
【0182】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0183】
下記第4表に、上記実施例2で製造したポリイソブチレン試料について得られた1H NMRの結果を全末端基のモル%で記す。
【0184】
第 4 表
──────────────────────────
失活前 失活時間
(分) (2,5−ジメチルピロール添加後の分)
──────────────────────────
0 10 15 60
──────────────────────────
エキソ−オレフィン収量(モル%)
──────────────────────────
18 100 100 100
──────────────────────────
【0185】
[実施例3] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:反応時間−40℃
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例3の条件は、温度が−40℃で全反応容量が150ミリリットルの代わりに200ミリリットルであったこと以外は実施例1の条件と同じである。
【0186】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0187】
その結果を第5表に示すが、2,5−ジメチルピロールでの失活によって−40℃でカップリング無しにエキソ−オレフィンが生成したが、反応時間全体は緩やかであり、追加時間によって完全に失活させることができたことが明らかであった。
【0188】
[実施例4] 二官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:目的分子量6000グラム/モル
実施例1に記載した方法および第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例4の条件は、一官能性開始剤の2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンの代わりに、二官能性開始剤の1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼンを用い、そして反応容量を150ミリリットルから350ミリリットルに増やしたこと以外は実施例1の条件と同様であった。条件は全て第1表に記載した。
【0189】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0190】
上記実施例4で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端のモル%で計算した。
【0191】
[実施例5] 二官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの大規模製造:目的分子量4000グラム/モル
実施例4に記載した方法および第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例5の条件は、開始剤濃度と失活剤濃度を高めたこと以外は実施例4の条件と同じである。反応容量を増やしたが、目的分子量を4000g/モルに下げた。
【0192】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0193】
上記実施例5で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端のモル%で計算した。
【0194】
[実施例6] 二官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの大規模製造:目的分子量2000グラム/モル
開始剤濃度と失活剤濃度を高めたこと以外は、上記実施例5に記載したようにしてポリイソブチレンを製造した。正確な条件は第1表に記載した。
【0195】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0196】
上記実施例6で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端のモル%で計算した。
【0197】
その結果を第5表に示すが、鎖末端濃度と失活剤濃度の増加によって、対応するルイス酸濃度の増加無しではエキソ−オレフィン生成速度の減速が起きたことが明らかであった。
【0198】
[実施例7] 四塩化チタン濃度のポリイソブチレン製造への影響:目的分子量2000グラム/モル
四塩化チタンの濃度を高めたこと以外は、上記実施例6のようにしてポリイソブチレンを製造した。正確な条件は第1表に記載した。
【0199】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0200】
上記実施例7で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。
【0201】
その結果を第5表に示すが、ルイス酸濃度を倍にしたことによってエキソ−オレフィン生成速度が上がったが、高い鎖末端濃度のためにカップリングが生じたことが明らかであった。
【0202】
[実施例8] 四塩化チタン濃度と温度のポリイソブチレン製造への影響
実施例7の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例8の条件は、四塩化チタンの濃度を二倍にし、温度を−50℃に上げたこと以外は実施例7の条件と同じである。
【0203】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0204】
上記実施例8で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。
【0205】
その結果を第5表に示すが、ルイス酸濃度と温度の増加によって、エキソ−オレフィン生成に関連してカップリング速度が減少したことが明らかであった。
【0206】
[実施例9] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:その他の全条件を一定にして失活剤濃度二倍の影響
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例9の条件は、2,5−ジメチルピロールの濃度を二倍にしたこと以外は実施例1の条件と同じである。
【0207】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0208】
上記実施例9で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。
その結果を第5表に示すが、失活剤濃度の増加によって、対応するルイス酸濃度の増加無しではエキソ−オレフィン生成速度の減速が起きたことが明らかであった。
【0209】
[実施例10] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:その他の全条件を一定にして失活剤濃度二倍及びルイス酸濃度二倍の影響
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例10の条件は、2,5−ジメチルピロールの濃度を二倍にし、四塩化チタンの濃度を二倍にしたこと以外は実施例1の条件と同じである。
【0210】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0211】
上記実施例10で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。その結果を第5表に示すが、許容可能なエキソ−オレフィン生成速度を維持するためには、失活剤濃度の増加に、対応するルイス酸濃度の増加が伴わなければならないことが明らかであった。
【0212】
[実施例11] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:反応規模の影響
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例11の条件は、実施例10の規模(全反応容量)が実施例1のおよそ3倍であること以外は実施例1の条件と同じである。
【0213】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0214】
上記実施例11で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。その結果を第5表に示すが、反応の規模は基本的にはその結果に影響しないことが明らかであった。
【0215】
[実施例12] 一官能性開始剤と2,3,4,5−テトラメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造
室温で固体の2,3,4,5−テトラメチルピロールを、予備冷却した塩化メチル溶液として加えたこと以外は、実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例12の条件は、失活剤の同一性、その反応器への導入の仕方および反応の規模以外は実施例1の条件と同様である。
【0216】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0217】
上記実施例12で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。この実施例は好ましい本発明の態様であることを示した。その結果を第5表に示すが、2,3,4,5−テトラメチルピロールの有効性は、2,5−ジメチルピロールと比べて実質的に同じであることが明らかであった。
【0218】
[実施例13] 一官能性開始剤と2,3−ジメチルインドールを用いたポリイソブチレンの製造
室温で固体の2,3−ジメチルインドールを、予備冷却した塩化メチル溶液として加えたこと以外は、実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例13の条件は、失活剤の同一性以外は実施例12の条件と同様であった。
【0219】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0220】
実施例13で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。
【0221】
[実施例14] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:失活剤と鎖末端のモル比0.5:1.0
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例19の条件は、失活剤と鎖末端のモル比が1.4:1.0の代わりに0.5:1.0であり、全反応容量が150ミリリットルの代わりに200ミリリットルであったこと以外は実施例1の条件と同じである。
【0222】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0223】
その結果を第5表に示すが、生成したエキソ−オレフィンのモル数が、反応に加えた2,5−ジメチルピロールのモル数を上回ったことが明らかであった。如何なる理論にもとらわれずに、2,5−ジメチルピロールがカルベニウムイオンからプロトンを取り去り、続いてプロトンを電子供与体に移したと考えられる。失活剤は脱離の触媒として働き、そして電子供与体はプロトン受容体として働いていた。
【0224】
[実施例15] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:失活剤と鎖末端のモル比0.5:1.0、電子供与体を共通イオン塩前駆体と交換
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例15の条件は、電子供与体の代わりに共通イオン塩前駆体を用いたこと以外は実施例14の条件と同じであった。
【0225】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0226】
その結果を第5表にまとめて示すが、電子供与体が不在の場合には、失活剤が触媒とプロトン受容体の両方として働いたことが明らかであった。また、結果は、32%のエキソ−オレフィン収量と34%のカップリング生成物収量との和は全部で49%の鎖が失活剤で脱離したことを示すので、失活剤と鎖末端との反応が定量的であったことも示した。失活剤の枯渇によって脱離速度がカップリング速度に比べて劇的に減少するから、カップリングが高い割合で起きた。結果は、鎖末端の完全なエキソ−オレフィン変換には、塩基性電子供与体不在の場合には化学量論濃度又はそれ以上の失活剤が必要であることを示唆している。
【0227】
[実施例16] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:失活剤と鎖末端のモル比1.4:1.0、電子供与体を共通イオン塩前駆体と交換
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例16の条件は、失活剤と鎖末端のモル比が0.5:1.0の代わりに1.4:1.0であったこと以外は実施例15の条件と同じであった。
【0228】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0229】
その結果を第5表に示すが、電子供与体不在の場合には、失活剤が触媒とプロトン受容体の両方として働いたことが明らかであった。エキソ−オレフィン変換は殆ど完全であり、そして過剰の失活剤を用いたためにカップリングが相当に低減した。
【0230】
[実施例17] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:反応温度は−70℃である
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例17の条件は、温度が−60℃の代わりに−70℃であったこと以外は実施例1の条件と同じである。
【0231】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0232】
その結果を第5表に示すが、低い温度、特に−70℃及びそれ以下が望ましくないことにカップリングを促進したことが明らかであった。
【0233】
[実施例18] 一官能性開始剤とカルバゾールを用いたポリイソブチレンの製造
250ミリリットル四つ口丸底フラスコに、頭上機械撹拌器と白金抵抗温度計を備え付けた。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のグローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。次に、フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン108ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル72ミリリットル、
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、
−60℃で平衡にしたイソブチレン16.4ミリリットル、そして
丸底フラスコの内容物を−60℃で平衡にした。
【0234】
撹拌を続けながら、次に四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに加えた。反応を12分間進行させた後、重合溶液20ミリリットルを4本の60ミリリットル試験管に入れ、ねじ込みキャップを付した。
【0235】
各試験管で更に4分間重合を続行させ(反応は全部で16分間)、この時点で4本の試験管のうちの1本をメタノール5ミリリットルで停止させて、失活剤添加前の比較例とした。残りの3本の溶液を、時々振とうしながら8分間反応を続行させ(反応は全部で24分間)、この時点で反応重合物を含む試験管のうちの1本にカルバゾール0.094gを添加した。カルバゾールを添加した後、残りの重合物のうちの1つをメタノール5ミリリットルで停止させて、別の比較例とした。カルバゾール失活反応を15分間進行させ、この時点で反応を停止させるためにメタノール5ミリリットルを加えた。次に、最後の重合試験管をメタノール5ミリリットルで停止させて、最終比較例とした。失活剤非含有反応物を用いて失活反応の比較基準とし、また失活剤無しの場合の構造及び分子量的特徴の基準とした。
【0236】
[実施例19] 一官能性開始剤と2,5−ジメチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造:失活前の2,5−ジメチルピロールと四塩化チタンの予備反応
反応器の配置、ATR−FTIRプローブと導光管、FTIR分光計と分光学的方法及び分析、定温ヘプタン浴並びにグローブボックスは、実施例1に記載したのと同じであった。250ミリリットル反応フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン85.5ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル57ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、および
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル。
【0237】
887cm-1の基準吸光度を決定し、次に−60℃で平衡にしたイソブチレン8.18ミリリットルを250ミリリットル反応フラスコに加えた。
【0238】
別の500ミリリットル二つ口フラスコに下記の反応体を充填した。
−60℃で平衡にしたヘキサン28.5ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル19ミリリットル、および
室温で平衡にした2,5−ジメチルピロール0.57ミリリットル。
両フラスコを−60℃のヘプタン浴で平衡にした。
【0239】
次に、四塩化チタン1.2ミリリットルを250ミリリットル反応フラスコに加えた後、直ちに四塩化チタン0.62ミリリットルを500ミリリットルフラスコに加えた。
【0240】
25分の重合時間経過後に、失活前のアリコート(5−10ミリリットル)を250ミリリットル反応フラスコの内容物から取り出し、予備冷却したメタノール10−15ミリリットルで停止させ、次に500ミリリットルフラスコの内容物を250ミリリットル反応フラスコに注入することで重合を失活させた。1、3、5、8、15及び30分でアリコートを取り出し、予備冷却メタノールで停止させた。60分で反応器の残りの内容物を予備冷却メタノールを用いて停止させた。
【0241】
ポリイソブチレン試料を、実施例1で得たポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。得られたデータを下記第5表にまとめて示す。
【0242】
[実施例20] 一官能性開始剤と2−メチルインドールを用いたポリイソブチレンの製造:インドール置換の失活反応への影響
室温で固体の2−メチルインドールを、予備冷却した塩化メチル溶液として加えたこと以外は、実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。
【0243】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0244】
実施例20で製造したポリイソブチレン試料では、1H NMRデータを使用してエキソ−オレフィンを全鎖末端の%で計算した。データは、2−メチルインドールがエキソ−オレフィンポリイソブチレンを少量生成させることを示している。
【0245】
[比較例A−C] 一官能性開始剤を用いたポリイソブチレンの製造:ピロール構造の失活反応への影響
実施例18の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。比較例A−Cの条件は、全反応容量が40ミリリットルであり、失活剤濃度が0.015Mであり、そして温度が−70℃であったこと以外は実施例18の条件と同様であった。
【0246】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0247】
その結果を第5表に示すが、ピロール環のアルキル置換基の配置が生成物の構造に著しい影響を与えたことが明らかであった。最も注目すべきことには、ピロールおよび1−メチルピロールで失活させた反応ではエキソ−オレフィンポリイソブチレンが生じないで、むしろEAS及び二EAS生成物が生じた。
【0248】
[比較例D] 一官能性開始剤を用いたポリイソブチレンの製造:ピロール構造の失活反応への影響
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。比較例Dの条件は、反応の全容量およびピロール化合物の構造以外は実施例1の条件とほぼ同様である。
【0249】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0250】
その結果を第5表に示すが、1,2,5−トリメチルピロールは、−60℃の2,5−ジメチルピロールに比べて効果のない失活剤であったことが明らかであった。1,2,5−トリメチルピロールで得られた主生成物はtert−クロリドポリイソブチレンであった。
【0251】
【表5】

【0252】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、芳香族環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類とイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法、ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではない:
(a)2,4−ジメチルピロール、
(b)1,2,5−トリメチルピロール、
(c)2−フェニルインドール、
(d)2−メチルベンズイミダゾール、
(e)1,2−ジメチルイミダゾール、
(f)2−フェニルイミダゾール、および
(g)2,4,5−トリフェニルイミダゾール。
【請求項2】
ポリオレフィンをその場で製造する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒素含有五員芳香族環化合物が置換ピロールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
置換ピロールが下記一般式を有する請求項3に記載の方法:
【化1】

[式中、(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は、それぞれ組として独立に、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している]。
【請求項5】
1とR4がメチルであり、そしてR2とR3が水素である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1、R2、R3およびR4がメチルである請求項4に記載の方法。
【請求項7】
置換ピロールが下記式を有する請求項4に記載の方法。
【化2】

【請求項8】
ポリオレフィンがポリイソブチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
失活を約−130℃乃至約10℃の範囲の温度で行う請求項1に記載の方法。
【請求項10】
失活を−80℃乃至約0℃の範囲の温度で行う請求項9に記載の方法。
【請求項11】
失活を−70℃乃至約−10℃の範囲の温度で行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
失活を約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う請求項11に記載の方法。
【請求項13】
置換ピロール環のアルキル基のそれぞれが炭素原子1〜約12個を有する請求項4に記載の方法。
【請求項14】
置換ピロール環のアルキル基のそれぞれが炭素原子1〜約4個を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
tert−クロリド鎖末端またはtert−クロリド鎖末端とオレフィン鎖末端との両者を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物をルイス酸の存在下で失活させることにより、ポリオレフィンを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
準リビングポリオレフィンポリマー生成物がtert−クロリド鎖末端を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ルイス酸がハロゲン化チタン又はハロゲン化ホウ素である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ルイス酸がハロゲン化チタンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
準リビングポリオレフィンポリマーを、ルイス酸の存在下、かつ準リビング重合に適した反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体を開始剤と接触させることにより、生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体が、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンのうちの少なくとも一種からなる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体がイソブチレンである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
異なる二種類のカチオン重合可能な単量体を用いる請求項20に記載の方法。
【請求項24】
開始剤が多官能性である請求項20に記載の方法。
【請求項25】
開始剤が二官能性である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
二官能性開始剤が、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、および1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンのうちの少なくとも一種からなる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
開始剤が一官能性である請求項20に記載の方法。
【請求項28】
一官能性開始剤が、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセトキシ−2−フェニルプロパン、2−プロピオノキシ−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオノキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンのうちの少なくとも一種からなる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
窒素含有五員芳香族環が置換イミダゾールである請求項1に記載の方法。
【請求項30】
置換イミダゾールが下記一般式を有する請求項29に記載の方法:
【化3】

[式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜8の脂肪族環を形成している]。
【請求項31】
1がメチルで、R2が水素で、そしてR3がtert−ブチルである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが約1.01乃至約3.0の範囲で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項33】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが約1.1乃至約2.0の範囲で存在する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが1.5未満である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、芳香族環に結合した少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物であって、ルイス酸と予備反応させた窒素含有五員芳香族環化合物で失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法、ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではない:
(a)2,4−ジメチルピロール、
(b)1,2,5−トリメチルピロール、
(c)2−フェニルインドール、
(d)2−メチルベンズイミダゾール、
(e)1,2−ジメチルイミダゾール、
(f)2−フェニルイミダゾール、および
(g)2,4,5−トリフェニルイミダゾール。
【請求項36】
ルイス酸がTiCl4である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
窒素含有五員芳香族環化合物が2,5−ジメチルピロールである請求項35に記載の方法。
【請求項38】
置換ピロールが2,3−ジメチルインドールである請求項4に記載の方法。
【請求項39】
ポリオレフィンが少なくとも20%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項40】
ポリオレフィンが少なくとも50%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項41】
ポリオレフィンが少なくとも70%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−510854(P2008−510854A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528045(P2007−528045)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/029582
【国際公開番号】WO2006/023742
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(504239353)ザ・ユニバーシティー・オブ・サザン・ミシシッピ (9)
【Fターム(参考)】