説明

エキソ−オレフィン鎖末端を高比率で含むポリオレフィンの製造方法

【課題】エキソ−オレフィン鎖末端を高い比率で含むポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化し、そしてイオン化したポリオレフィンを、一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環または一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンまたはそれらの混合物と反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月20日に出願した米国仮特許出願第60/603422号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を高い比率で含むポリオレフィンの製造方法に関する。この方法は、tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化し、そしてイオン化したポリオレフィンを、一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環または一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンまたはそれらの混合物と反応させることを含む。
【背景技術】
【0003】
単一の「エキソ−オレフィン」、「二置換」オレフィン又は「メチルビニリデン」末端基を含む一官能性開始剤を用いて製造された線状ポリオレフィンは、特定の末端官能基を含む重合体を製造するための有用な前駆体である。多官能性開始剤を用いて製造された重合体は、多数のエキソ−オレフィン末端基を有することになる。特定の末端基を含む重合体は潤滑油添加剤として有用である。ヘテロ原子を含む官能化重合体の一例としてポリイソブテニルコハク酸無水物がある。末端官能基は、更に反応を進めることができる重合体を製造するためにも望ましいものである。
【0004】
従来のイオン重合は、アニオン重合またはカチオン重合であると言える。アニオン重合は、塩基の存在下でカルボアニオンにより進行し、電子吸引基を持つ単量体に好都合である。カチオン重合は、酸の存在下でカルベニウムイオンとも呼ばれるカルボカチオンにより進行し、電子供与基を持つ単量体に好都合である。
【0005】
従来の重合系と同様に、リビング重合系もアニオン重合またはカチオン重合のいずれかである。従来の重合とリビング重合の相違は、理想的なリビング重合が連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しで進行することにある。リビング重合系は、単量体と開始剤の供給比を制御することで重合度を制御でき、また二種以上の異なる単量体の逐次添加によってブロック共重合体を生成させる能力が生じるから、商業的に非常に重要である。単量体を使い尽くすまで重合は続くが、重合体は将来的に何時でも追加の単量体を付加する能力を保持している。多数のそのような系が当該分野ではよく知られている。
【0006】
更に発展したものが、従来の単量体を用いる準リビングカチオン重合系である。準リビング重合では一定の限定条件、例えば無水の試薬が要求される。準リビングカチオン重合は、連鎖移動反応の速度はゼロに近いが連鎖停止反応は存在し、ただし可逆的であるという点で、真のリビング重合とは異なっている。準リビングカチオン重合の重要な一例が、イソブチレンの準リビングカチオン重合である。
【0007】
一般に、イソブチレンの準リビングカチオン重合によって狭い分子量分布が生じて、「tert−クロリド」末端基とも呼ばれる2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を含む一種類の主要な重合体生成物が生じる。ある一定条件下では、少量のオレフィン異性体が生成することもある。
【0008】
一方、従来のBF3を用いたイソブチレンの重合では二種類の主要なオレフィン異性体、例えば高反応性のエキソ−オレフィン異性体と、「三置換」異性体または「エンドオレフィン」異性体とも呼ばれる、比較的非反応性の2−メチル−1−プロペニル異性体とが生成する。さらに、従来のイソブチレンの重合では分子量分布又は多分散性指数が大きい重合体が生じる。
【0009】
エキソ−オレフィン異性体だけの製造は、これまでイソブチレンでは従来の重合条件で達成できなかった。
【0010】
エキソ−オレフィン末端基だけを含むポリイソブチレンを製造するには二つの確立された方法がある。一つの方法は、重合後反応でtert−クロリドを末端基とするポリイソブチレンから、カリウムtert−ブトキシドを用いて化学的にハロゲン化水素を取り去ることを含む(特許文献1)。もう一つの方法は、準リビングイソブチレンをメタリルトリメチルシランでその場で失活させて、活性なリビングカルベニウムイオンをエキソ−オレフィン末端基に変換することを含む(非特許文献1)。
【0011】
上記の方法を使用して多官能性開始剤を用いて、エキソ−オレフィン末端基を一個より多く含むポリイソブチレン重合体を製造することができる。
【0012】
ポリイソブチレン重合体を含むポリオレフィンの製造は当該分野ではよく知られている。多数の特許文献に、エキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体の製造方法が記述されているが、イオン化ポリオレフィンを窒素含有五員芳香族環化合物またはヒンダード第二級又は第三級アミンと反応させることを利用する方法については全く記述が無い。
【0013】
特許文献2には、分子量分布が狭く、重量平均分子量、M(w)と数平均分子量、M(n)との比が1に近い重合体の製造方法が開示されている。
【0014】
特許文献3には、平均重合度が10乃至100で、理論上可能な末端二重結合の割合が従来の生成物よりも高いイソブテン重合体が開示されている。また、この特許文献には、開始剤として三フッ化ホウ素を用いてイソブテン重合体を製造する方法も開示されている。
【0015】
特許文献1には、線状重合体の場合には両末端に、あるいは星形重合体の場合には全末端に、不飽和またはヒドロキシル基のいずれかを持つポリイソブチレンの合成が開示されている。この方法は、テレケリック(末端反応性)二ハロゲンポリイソブチレンの溶液を還流する工程、カリウムt−ブトキシドなどの強塩基の溶液を添加する工程、そして撹拌してテレケリックジオレフィンポリイソブチレンを生成させる工程を含む。
【0016】
特許文献4には、予備開始剤およびカチオン重合に有効な触媒を単量体と混合して、分子量を制御しながらカチオン重合を行う方法が開示されている。その後、得られたリビングポリマーは所望通りに処理される。
【0017】
特許文献5には、第三級塩素でキャップしたポリイソブチレンを求電子置換によりアリルトリメチルシランでアリル化することにより、アリル末端ポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。合成は、三塩化ホウ素を触媒としてモノ又はオリゴ第三級クロリド「イニファ」で始まるイソブチレンの重合で開始され、次いで同じ反応容器にヘキサン、アリルトリメチルシランおよび四塩化チタンが添加される。
【0018】
特許文献6及び7には、有機酸又はそのエステルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0019】
特許文献8及び9には、有機エーテルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0020】
特許文献10には、四塩化チタン、およびピリジンまたは非ヒンダードアルキルピリジンから選ばれた電子対供与体の存在下でカチオン重合により、アルファ−オレフィンまたは共役アルカジエンを含む弾性重合体を製造する方法が開示されている。重合体は分子量分布が非常に狭く単モードである。
【0021】
特許文献11には、アジド、シアノ、カルボニルアミノ又はチオカルボニルアミノ末端基など所望の窒素含有官能基で官能化した高分子物質を直接合成する方法が開示されている。重合と官能化は実質的に同時に起こる。
【0022】
特許文献12には、ポリオレフィン中間ブロックとスチレン末端ブロックを有するブロック共重合体を製造するために、リビングポリオレフィン、特にはポリイソブチレンの鎖末端から開始して、芳香族、好ましくはスチレン単量体をリビング重合させる方法が開示されている。
【0023】
特許文献13には、単一工程でリビングポリイソブチレンを硫酸アセチルでスルホン化することにより、スルホン酸末端ポリイソブチレンを一ポットで製造する方法が開示されている。この方法は、ルイス酸を用いて「イニファ」開始カルボカチオン重合を行って重合体を生成させた後、スルホン化することを含む。
【0024】
特許文献14及び15には、置換又は非置換ジフェニルアルキレン、メトキシスチレン、トランス−スチルベン、1−イソプロペニルナフタレンおよび2,4−ジメチルスチレンからなる群より選ばれる重合不可能な単量体からなる一種以上のキャップ化合物で、リビングポリマーをキャップすることが開示されている。
【0025】
特許文献16には、凝縮相で開始剤系の存在下でイソブテンまたはイソブテン含有単量体混合物をカチオン重合することにより、重合体鎖のうちの少なくとも60%が少なくとも1個のオレフィン不飽和末端基を持つポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。
【0026】
特許文献17には、リビング重合条件下で好適な単量体をカチオン重合してその重合をN置換ピロールで失活させることにより、単分散テレケリック重合体を製造する方法が開示されている。N置換ピロールを含む官能化重合体は、燃料添加剤および/または潤滑油添加剤として用いることができる。
【0027】
特許文献18には、カチオン重合によりリビングカルボカチオン重合系を一種以上の芳香族環系と反応させて製造した重合体を官能化する方法、および該方法の置換又は非置換反応生成物を、潤滑油又は燃料組成物および添加剤濃縮物に例えば分散剤、清浄剤または酸化防止剤またはVI向上剤として使用することが開示されている。
【0028】
非特許文献2において、その著者は、低純度の2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(DTBP)の存在下でエキソ−オレフィン生成を観察した後、準リビングポリイソブチレンからのβ−プロトン脱離について研究を行った。著者は脱離が、DTBP中に6×10-6モル/リットルの濃度で存在する立体障害のある環状イミン塩基の存在によるとした。この不純度を2−tert−ブチルピリジン(TBP)を用いてシミュレートして、後者のTBPを重合の開始時に(すなわち、単量体の存在下で)反応器に添加すると、結果として3時間の反応時間後に約65%の脱離が生じてエキソ−オレフィンだけが生成することを発見している。脱離の程度が20%又はそれ以上に達すると、1H NMRとGPC両方の分析では著しいカップリングが観察されている。著者(バエ及びファウスト)は、TBPなど立体障害のある塩基による脱離は望ましくなく、避けるべきであるというはっきりした考えを持っていた。この論文の最初の段落には次のように要約されている:「最後に、強塩基もβ−プロトンを脱離しうるが、回避すべきである。」その後に著者は、「その犯人」としてDTBP中の環状イミン塩基の不純度に言及している。最後に著者は論文全体を要約して、脱離工程は運動速度定数の測定を容易にするかもしれないが、重合体製造のためには回避すべきであると述べている:「明確に規定した巨大分子の合成ではβ−プロトン脱離を回避すべきであるが、一方でこの工程の拡散制御を明らかにできるなら、活性中心の濃度を決定する新規な方法となり、それから絶対生長速度定数を計算することが可能になる」。
【0029】
【特許文献1】米国特許第4342849号明細書
【特許文献2】欧州特許第341012号明細書
【特許文献3】米国特許第4152499号明細書
【特許文献4】米国特許第4393199号明細書
【特許文献5】米国特許第4758631号明細書
【特許文献6】米国特許第4910321号明細書
【特許文献7】米国特許第5122572号明細書
【特許文献8】米国特許第4929683号明細書
【特許文献9】米国特許第5066730号明細書
【特許文献10】米国特許第5219948号明細書
【特許文献11】米国特許第5336745号明細書
【特許文献12】米国特許第5428111号明細書
【特許文献13】米国特許第5448000号明細書
【特許文献14】米国特許第5637647号明細書
【特許文献15】米国特許第5677386号明細書
【特許文献16】米国特許出願第10/433439号、出願公開第2004/0015029A1号明細書
【特許文献17】米国特許出願第10/600898号、出願公開第2004/0260033A1号明細書
【特許文献18】国際出願第PCT/EP/05472号、国際公開第WO99/09074号パンフレット
【非特許文献1】M.ロス(M. Roth)及びH.メイヤー(H. Mayr)著、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」、1996年、第29巻、p.6104、
【非特許文献2】ヤング・チェオル・バエ(Young Cheol Bae)及びルドルフ・ファウスト(Rudolf Faust)著、「イソブチレンのリビングカチオン重合における遊離塩基によるβ−プロトン脱離(β-Proton elimination by Free Bases in the Living cationic Polymerization of Isobutylene)」、マクロモレキュルズ、1997年、第30巻、p.7341−7344
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を高い比率で含むポリオレフィンを製造する方法に関する。この方法は、tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化し、そしてイオン化したポリオレフィンを、一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物または一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンまたはそれらの混合物と反応させることを含む。
【課題を解決するための手段】
【0031】
つまり、本発明は、ポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端を含むポリオレフィン生成物を製造する方法であって、下記の工程からなる方法に関する:
(a)重合体鎖にtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンを、ルイス酸の存在下でイオン化する工程、そして
(b)イオン化したポリオレフィンを、環に少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物、もしくは炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミン、もしくはそれらの混合物と反応させて、それによりポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を得る工程、
ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではなく:
(i)2,4−ジメチルピロール、
(ii)2−フェニルインドール、
(iii)2−メチルベンズイミダゾール、
(iv)1,2−ジメチルイミダゾール、
(v)2−フェニルイミダゾール、および
(vi)2,4,5−トリフェニルイミダゾール、
またヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(i)トリエチルアミン、
(ii)トリ−n−ブチルアミン、
(iii)トリヘキシルアミン、
(iv)トリイソオクチルアミン、
(v)2−フェニルピリジン、
(vi)2,3−シクロドデセノピリジン、
(vii)ジ−p−トリルアミン、
(viii)キナルジン、および
(ix)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【0032】
ポリオレフィンはポリイソブチレンであることが好ましい。
【0033】
工程(a)および工程(b)を独立に、約−130℃乃至約10℃の範囲の温度で行うことが好ましい。より好ましくは、工程(a)および(b)を独立に約−80℃乃至約0℃の範囲の温度で行う。更に好ましくは、工程(a)及び(b)を別々に約−70℃乃至約−10℃の範囲の温度で行う。最も好ましくは、工程(a)及び(b)を別々に約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う。
【0034】
上記方法の一態様では、工程(b)の一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物は下記一般式を有する置換ピロールである。
【0035】
【化1】

【0036】
式中、(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであって、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は両者とも組として独立に、炭素原子数6〜10の芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0037】
1およびR4はメチルであり、そしてR2およびR3は水素であることが好ましい。
【0038】
上記方法の別の好ましい態様では、R1、R2、R3およびR4はメチルである。
【0039】
別の好ましい態様では、R1およびR2はメチルであり、そしてR3とR4は縮合ベンゾ環を形成している。
【0040】
好ましい態様では、置換ピロールは下記式を有する。
【0041】
【化2】

【0042】
本発明の別の態様に用いられる窒素含有五員芳香族環は、置換イミダゾールである。
【0043】
本発明の方法で置換イミダゾールは下記一般式を有する。
【0044】
【化3】

【0045】
式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0046】
上記方法の別の好ましい態様では、R1はメチルであり、R2は水素であり、そしてR3はtert−ブチルである。
【0047】
本発明の方法で窒素含有五員芳香族環のアルキル基は、炭素原子約1〜約20個を有することが好ましい。より好ましくは、アルキル置換複素芳香族のアルキル基は炭素原子約1〜約12個を有する。最も好ましくは、アルキル置換複素芳香族のアルキル基は炭素原子約1〜約4個を有する。
【0048】
工程(a)のルイス酸は、チタン又はホウ素のハロゲン化物であることが好ましい。より好ましくは、ルイス酸はハロゲン化チタンである。最も好ましくは、ルイス酸は四塩化チタンである。好ましい四塩化チタンの濃度は、プロトン性不純物、電子供与体、共通イオン塩又はその前駆体および失活剤又は失活剤群を一緒にした濃度を二倍以上上回る。
【0049】
上記方法で工程(b)のヒンダード第二級又は第三級アミンは、線状第二級又は第三級アミンであってもよいし、環状第二級又は第三級アミンであってもよいし、あるいは芳香族第二級又は第三級アミンであってもよい。
【0050】
上記方法の一態様では、工程(b)のヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0051】
【化4】

【0052】
式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2およびR3はその一つ以下で水素であるが、R1、R2およびR3全てが炭素数約3以下の線状アルキルということはない。
【0053】
上記方法でヒンダードアミンは、下記一般式を有する第三級又は第二級アミンである。
【0054】
【化5】

【0055】
式中、R6は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、その各々は炭素原子数1〜約6のアルキル基で置換されていてもよく、そしてR1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数7〜30のアルカリール、または炭素原子数7〜30のアラルキルである;ただし、R1、R2、R3およびR4が水素であるときには、R5は炭素原子数約4〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、またR5が水素であるときには、R1またはR2のうちの一方、およびR3またはR4のうちの一方が炭素原子数約4〜約20の分枝アルキルでない限り、R1、R2、R3およびR4は水素ではない。
【0056】
上記方法の特に好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第二級又は第三級アミンである。
【0057】
【化6】

【0058】
式中、R5は、水素またはメチルである。
【0059】
上記方法の別の好ましい態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0060】
【化7】

【0061】
式中、Rは、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、または炭素原子数約3〜約7の芳香族環又は脂肪族環である。
【0062】
上記方法の特に好ましい態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記式を有する。
【0063】
【化8】

【0064】
上記方法の更に好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第二級アミンである。
【0065】
【化9】

【0066】
上記方法の別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0067】
【化10】

【0068】
上記方法のまた別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0069】
【化11】

【0070】
本発明の方法の別の態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0071】
【化12】

【0072】
式中、R1は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、そしてR2、R3、R4、R7、R8およびR9は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、そしてR5およびR6のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20の線状アルキルである。
【0073】
上記方法の好ましい態様では、R5およびR6のうちの一方は水素である。
【0074】
上記方法の一態様では、アミンは下記一般式を有する。
【0075】
【化13】

【0076】
上記方法のまた別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0077】
【化14】

【0078】
式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2が縮合脂肪族環又は芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5が縮合脂肪族環又は芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである。
【0079】
上記方法の別の態様では、R1、R2、R3およびR4は水素であり、そしてR5はtert−ブチルである。
【0080】
本発明の方法の別の態様では、ヒンダードアミンは下記式(a)、(b)及び(c)を有する窒素含有複素芳香族環である。
【0081】
【化15】

【0082】
式(a)において、R1およびR4のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している、
【0083】
【化16】

【0084】
式(b)において、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである、および
【0085】
【化17】

【0086】
式(c)において、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである。
【0087】
上記方法の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0088】
【化18】

【0089】
上記方法のまた別の態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0090】
【化19】

【0091】
上記方法の更に別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0092】
【化20】

【0093】
上記方法の工程(b)でポリオレフィン生成物の重合体鎖のエキソ−オレフィン末端基は、全オレフィン収量のうちの約1%乃至約100%の範囲で存在する。好ましくは、工程(c)で重合体鎖のエキソ−オレフィン末端基は、全オレフィン収量のうちの少なくとも3%である。より好ましくは、工程(c)で重合体鎖のエキソ−オレフィン末端基は、全オレフィン収量のうちの少なくとも20%であり、更に好ましくは少なくとも50%であり、そして最も好ましくは少なくとも70%である。
【0094】
本発明のまた別の態様は、ポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を製造する方法であって、下記の工程からなる方法に関する:
(a)重合体鎖にtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンを、ルイス酸の存在下でイオン化する工程、そして
(b)イオン化したポリオレフィンを、環に少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物、もしくは炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンであって、ルイス酸と予備反応させた窒素含有芳香族アミン化合物またはヒンダード第二級又は第三級アミン、もしくはそれらの混合物と反応させて、それによりポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を得る工程、
ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではなく:
(i)2,4−ジメチルピロール、
(ii)2−フェニルインドール、
(iii)2−メチルベンズイミダゾール、
(iv)1,2−ジメチルイミダゾール、
(v)2−フェニルイミダゾール、および
(vi)2,4,5−トリフェニルイミダゾール、
またヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(i)トリエチルアミン、
(ii)トリ−n−ブチルアミン、
(iii)トリヘキシルアミン、
(iv)トリイソオクチルアミン、
(v)2−フェニルピリジン、
(vi)2,3−シクロドデセノピリジン、
(vii)ジ−p−トリルアミン、
(viii)キナルジン、および
(ix)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【0095】
上記方法の好ましい態様では、窒素含有五員芳香族環化合物は2,5−ジメチルピロールであり、そしてルイス酸は四塩化チタンである。
【0096】
上記方法の好ましい態様では、ルイス酸は四塩化チタンであり、そしてヒンダードアミンは1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンである。
【発明の効果】
【0097】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に反応剤として使用される置換ピロール類および置換イミダゾール類などの窒素含有五員芳香族環化合物、並びにヒンダード第二級及び第三級アミン類が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることを測定した。如何なる理論にもとらわれずに、これらの反応剤は、イオン化ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0099】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、一般に炭素原子数1〜約20の直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基を意味する。直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基の幾つかの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等がある。
【0100】
「芳香族又は脂肪族縮合環」は、本明細書で使用するとき、ピロール又はイミダゾール環の2個の隣接炭素原子で形成された環を意味し、こうして形成された環はピロール又はイミダゾール環に縮合している。縮合芳香族環の例としては、ピロール環またはイミダゾール環に縮合したベンゾ基がある。縮合脂肪族環は、ピロール環またはイミダゾール環に縮合した如何なる環状構造であってもよい。
【0101】
「分枝アルキル」は、本明細書で使用するとき、アルキル基が分子の残部に結合している位置を表す炭素原子が、第三級又は第四級炭素原子のいずれかであるアルキル基を意味する。「第三級炭素」は、本明細書で使用するとき、3個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。「第四級炭素」は、本明細書で使用するとき、4個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。
【0102】
「カルベニウムイオン」又は「カルボカチオン」は、本明細書で使用するとき、3個のsp2結合置換基と空のp軌道を持つ正に荷電した炭素原子を意味する。
【0103】
【化21】

【0104】
「連鎖移動反応」は、本明細書で使用するとき、一つの重合鎖の生長の停止とそれに伴う別の重合鎖の起こりうる開始を意味する。
【0105】
「共通イオン塩」は、本明細書で使用するとき、生長したカルベニウムイオンと対イオンの対の解離を防ぐために、準リビングカチオン重合混合物に任意に添加されるイオン性の塩を意味する。共通イオン塩のアニオンは、生長した鎖末端の対イオンと同じである。共通イオン塩のカチオンは、一般にはテトラ−n−ブチルアンモニウムイオンのような脂肪族第四級アンモニウムカチオンであり、有機媒体への溶解度を与える。
【0106】
「カップリング生成物」は、本明細書で使用するとき、PIBエキソ−オレフィン鎖末端にPIB末端カルベニウムイオンが付加した生成物を意味する。カップリング生成物の数平均分子量は、主重合体生成物の数平均分子量のおよそ二倍である。
【0107】
「カップリング」は、本明細書で使用するとき、ポリイソブチレンエキソ−オレフィン鎖末端にポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが付加することを意味する。
【0108】
「従来の重合」は、本明細書で使用するとき、オレフィンを含む連鎖反応重合が、連鎖伝達粒子としてイオン、アニオン又はカチオンのいずれかによって進行する重合を意味する。重合は、連鎖開始、連鎖生長、連鎖移動および連鎖停止の工程で進む。
【0109】
「二EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、2個の別個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。二EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含んでいる。
【0110】
「二置換オレフィン」又は「エキソ−オレフィン」又は「メチルビニリデン」は、本明細書で使用するとき、下記に示すようにエキソ−オレフィン鎖末端を含むオレフィン重合体鎖を意味する。
【0111】
【化22】

【0112】
「二価炭化水素基」は、本明細書で使用するとき、その分子の残部に対して2つの結合点を持つ炭化水素基を意味する。
【0113】
「EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、1個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含んでいる。
【0114】
「電子供与体」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて、ルイス酸と完全に錯体を作る、またはルイス酸と全く錯体を作らないのいずれかである塩基性及び/又は求核物質を意味する。電子供与体の濃度は、プロトン性不純物、例えば水の濃度を上回る。
【0115】
「求電子芳香族置換又はEAS」は、本明細書で使用するとき、EAS生成物が生成する工程を意味する。
【0116】
「gem−ジメチル炭素」は、本明細書で使用するとき、下記の構造で示すように、ポリオレフィン重合体鎖末端のカルベニウムイオンまたはクロリド結合炭素に対してアルファ位にある2個のメチル炭素を意味する。
【0117】
【化23】

【0118】
「炭化水素基」は、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。
【0119】
「ヒンダード第二級又は第三級アミン」は、本明細書で使用するとき、ルイス酸と完全には錯体を作れないほど充分な立体障害があるものの、カルベニウムイオンとの反応は可能であるぐらいの立体障害があるように、適切に置換された化合物を意味する。ヒンダードアミンは第三級アミンであることが好ましい。
【0120】
「ルイス酸」は、本明細書で使用するとき、一対の電子を受容して共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0121】
「リビング重合」は、本明細書で使用するとき、測定可能な連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しに進行する重合を意味する。
【0122】
「窒素含有五員芳香族環」は、本明細書で使用するとき、芳香族環に少なくとも1個の窒素原子、最大で芳香族環に2個の窒素原子を含み、かつ約1〜約20個の炭素原子を含む約2個のアルキル基乃至約4個のアルキル基が環に結合しているピロール類およびイミダゾール類を意味する。本発明に使用が考えられる窒素含有五員芳香族環化合物の例としては置換ピロール類がある。
【0123】
「準リビング重合」は、本明細書で使用するとき、可逆的な連鎖停止反応は作動しうるが、不可逆的な連鎖停止反応と連鎖移動反応はゼロに近いリビング重合を意味する。
【0124】
「ポリオレフィン」は、本明細書で使用するとき、一種以上のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、スチレン、イソブチレン等の重合体を意味する。
【0125】
「位置特異的」は、本明細書で使用するとき、幾つかの可能な異性生成物のうちの一種だけ又は殆ど一種だけを与える化学反応を意味する。
【0126】
「反応剤」は、本明細書で使用するとき、イオン化ポリオレフィンに添加されてイオン化ポリオレフィン鎖末端と反応する化学化合物を意味する。
【0127】
「停止」は、本明細書で使用するとき、ルイス酸の分解により重合工程または失活反応を停止させる化学反応を意味する。
【0128】
「停止剤」は、本明細書で使用するとき、重合工程または失活反応を停止させるが、同時に新たな重合体鎖を開始できない化学化合物を意味する。停止剤として多数のアルコールを使用することができる。
【0129】
「tert−クロリド」は、ポリオレフィン重合体鎖の2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を意味する。
【0130】
特に断わらない限り、パーセントは全て質量%である。
【0131】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に反応剤として使用される置換ピロール類および置換イミダゾール類などの窒素含有五員芳香族環化合物、並びにヒンダード第二級及び第三級アミン類が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることを測定した。如何なる理論にもとらわれることはないが、これらの反応剤は下記に示すように、イオン化ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【0132】
【化24】

【0133】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用される反応剤は、付加メカニズムでリビング重合を失活させることが知られているので、この結果は予測し得ないものであった。最も高い付加収量を与える化合物は一般に、環の有利な位置に位置する電子供与基で置換されている。これらの置換基は、例えばポリイソブチレン、カルベニウムイオンが環のオレフィンと反応したときに生じる、フリーデル・クラフツ中間体を安定化させると考えられる。
【0134】
本発明に使用される反応剤は、tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィン重合体をエキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換することができる。反応剤を添加した後15分以内に、100%の変換が観察された。
【0135】
[エキソ−オレフィン末端基を鎖に含むポリオレフィン重合体の一般的な製造方法]
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造の代表的な方法を記載する。
【0136】
本発明の方法は、バッチ法、連続法、半バッチ法、もしくは当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。
【0137】
重合反応は不活性ガス中で実質的に無水の環境で行う。次のような反応体を反応器に充填する:
1)tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィン、
2)希釈剤、
3)電子供与体または共通イオン塩、
4)単量体、および
5)ルイス酸、一般にはチタン又はホウ素のハロゲン化物からなる。
【0138】
反応混合物を、約−130℃乃至約10℃の範囲の所望の温度で平衡にする。本発明の方法は、任意の所望の圧力で、大気圧、減圧または過圧で行うことができる。
【0139】
6)一種もしくは二種以上の窒素含有五員環化合物またはヒンダード第二級及び第三級アミン反応剤を、反応混合物に添加してイオン化ポリオレフィン鎖末端と反応させる。
【0140】
ポリオレフィン重合体のエキソ−オレフィン鎖末端の濃度を測定するために、反応剤を添加したのち様々な時間間隔で反応混合物から追加の一部(アリコート)を取り出す。全てのアリコート試料および残った反応混合物において、所望の温度で平衡にした適当なアルコールを用いて反応を停止させる。
【0141】
所望の生成物を得るために反応体の濃度を変えることができるが、エキソ−オレフィン鎖末端を高い収量で得るためにはある一定の反応体比が重要であることが分かっている。その比を下記に記す。
【0142】
ルイス酸と鎖末端とのモル比は、約0.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至約200:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0143】
ルイス酸と電子供与体とのモル比は、約1.1:1乃至約10000:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約4:1乃至30:1である。
【0144】
ルイス酸と反応剤とのモル比は、約1.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と反応剤とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と反応剤とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0145】
反応剤と鎖末端とのモル比は、約0.25:1乃至約20:1の範囲にある。好ましくは、反応剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至約5:1の範囲にある。より好ましくは、反応剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至4:1である。
【0146】
エキソ−オレフィン鎖末端の濃度を、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端の濃度と共に1H NMRを使用して定める。EAS生成物、二EAS生成物およびカップリング生成物の量を定性的に求めるために、GPCスペクトルも取る。
【0147】
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用するのに適した化合物を記載する。
【0148】
[希釈剤]
希釈剤はその極性により、生長種のイオン化平衡および交換速度に影響を及ぼし、極性はその誘電率から見積もることができる。一般に、誘電率の低い溶媒はイオン対が解離し難いので好ましい。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、凝固点がかなり低くて好ましい重合温度で使用できる低沸点のアルカン類および一又は多ハロゲン化アルキル類が挙げられる。具体的な溶媒としては、カチオン重合に使用できる代表的な液体希釈剤または溶媒の若干の例を挙げると、アルカン類(一般にはC2−C10アルカン、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナンおよびノルマルデカンなどのノルマルアルカン、およびイソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタンおよび2,3−ジメチルブタン等を含む分枝アルカン)、アルケン及びハロゲン化アルケニル類(例えば、塩化ビニル)、二硫化炭素、クロロホルム、塩化エチル、塩化N−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、二酸化硫黄、無水酢酸、四塩化炭素、アセトニトリル、ネオペンタン、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエテン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、または1,3−ジクロロプロパン、ニトロ−アルカン(例えば、ニトロプロパン)を挙げることができる。混合溶媒(例えば、上記に挙げたものの組合せ)も使用することができる。
【0149】
[電子供与体]
電子供与体は、従来の重合系をリビング及び/又は準リビングカチオン重合系に変えることが明らかになっている。本発明に用いられるプロトン捕捉剤は、特別な化合物又は化合物の部類にはっきりと限定されるわけではない。例としては、ピリジン類およびn−アルキルアミン類、非プロトン性アミド類、スルホキシド類、エステル類、および金属原子に酸素原子が結合した金属化合物等を挙げることができる。ピリジン化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン;N,N−ジメチルアニリン、アニリンを挙げることができる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。スルホキシド化合物の例としてはジメチルスルホキシドがある。ジエチルエーテルはエーテル化合物の例であり、酢酸メチルおよび酢酸エチルはエステル化合物の例である。リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸エステル化合物も用いることができる。チタン酸テトライソプロピルなどの酸素含有金属化合物も電子供与体として使用できる。
【0150】
全反応混合物における電子供与体の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約0.1モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、電子供与体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、電子供与体の濃度は約0.002モル/リットル乃至約0.02モル/リットルの範囲にある。
【0151】
[共通イオン塩及び共通イオン塩前駆体]
電子供与体に加えてもしくはその代わりに、共通イオン塩又は塩前駆体を任意に反応混合物に添加することができる。一般にこれらの塩は、イオン強度を高め、遊離イオンを抑え、そして配位子交換体と有利に相互作用させるために使用される。特に好ましいのは共通イオン塩前駆体、例えば塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NCl)である。
【0152】
全反応混合物における共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は、約0.0005モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.0005モル/リットル乃至約0.025モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.007モル/リットルの範囲にある。
【0153】
[ルイス酸]
本発明のための触媒として適したルイス酸としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタン及びホウ素、特には四塩化チタンおよび三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、四塩化スズ、塩化亜鉛、および二塩化エチルアルミニウム等を挙げることができる。ハロゲン化チタン、特には四塩化チタンを使用することが好ましい。ルイス酸の強度とその濃度は特定の単量体に対して調整すべきである。さらに、これらルイス酸の強度は求核添加剤を用いて調整することができる。場合によってはこれらルイス酸は補助開始剤とも呼ばれる。
【0154】
開始剤系に存在するルイス酸の量は変えることができる。ただし、適切な重合及び失活速度を遂行できるほどルイス酸の濃度が充分であることが望ましい。生成した重合体を沈殿させるほどルイス酸濃度を高くすべきではない。
【0155】
全反応混合物におけるルイス酸の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約3.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.005モル/リットル乃至約1.5モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.05モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。
【0156】
[反応剤]
本発明のポリオレフィンの製造に使用が考えられる反応剤は、窒素含有五員芳香族環化合物であり、例えば置換ピロール類および置換イミダゾール類がある。
【0157】
本発明に用いられる置換ピロールは下記一般式を有する。
【0158】
【化25】

【0159】
式中、R1、R2、R3およびR4は下記の通りである:
(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は両者とも組として独立に、炭素原子数6〜10の芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0160】
本発明に用いられる置換イミダゾールは下記一般式を有する。
【0161】
【化26】

【0162】
式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している。
【0163】
本発明の方法に用いることができるその他の窒素含有五員芳香族環化合物の構造を下記に記す。下記の構造は例としてのみ意図したものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0164】
【化27】

【0165】
本発明のポリオレフィンの製造に使用が考えられる反応剤は、ヒンダード第二級又は第三級アミン化合物であってもよく、例えば2−tert−ブチルピリジン、n−トリブチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、およびN−メチルジフェニルアミンがある。
【0166】
本発明に反応剤として用いられるヒンダード第二級又は第三級アミンは、下記一般式を有する。
【0167】
【化28】

【0168】
式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2及びR3はその一つ以下で水素であり、またR1、R2およびR3の全てが炭素数約3以下の線状アルキルということはない。
【0169】
上記方法の好ましい態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0170】
【化29】

【0171】
式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2が縮合脂肪族環又は芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5が縮合脂肪族環又は芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである。
【0172】
本発明の方法に用いられるヒンダードアミンは、下記式(a)、(b)及び(c)を有する窒素含有複素芳香族環であってもよい。
【0173】
【化30】

【0174】
式(a)において、R1およびR4のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している、
【0175】
【化31】

【0176】
式(b)において、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである、および
【0177】
【化32】

【0178】
式(c)において、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである。
【0179】
本発明の方法に用いることができるその他のヒンダード第二級又は第三級アミンの構造を下記に記す。下記の構造は例としてのみ意図したものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0180】
【化33】

【0181】
【化34】

【0182】
全反応混合物における反応剤の濃度は、約0.0001モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、反応剤の濃度は約0.001モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、反応剤の濃度は約0.005モル/リットル乃至約0.5モル/リットルの範囲にある。
【0183】
[停止剤]
本発明の重合反応を停止させるのに、任意の可溶性アルコールを使用することができる。好ましいのは、炭素原子約1〜約8個を含むモノアルコール類である。
【実施例】
【0184】
[実施例1] 2,5−ジメチルピロールを用いたエキソ−オレフィン鎖末端を含むポリイソブチレンの製造
250ミリリットル四つ口丸底フラスコに、頭上機械撹拌器と白金抵抗温度計を備え付けた。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のMブラウン・グローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−62℃のヘプタン浴に浸漬した。次に、フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にした塩化メチル75ミリリットル、
−60℃で平衡にしたヘキサン113ミリリットル、
−60℃で平衡にした、100%のtert−クロリド鎖末端を含み、分子量がおよそ2000グラム/モルのポリイソブチレン6.03グラム、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル。
丸底フラスコの内容物を平衡にした。
【0185】
撹拌を続けながら、次に四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに加えた。15秒後に丸底フラスコの反応混合物に、反応剤の2,5−ジメチルピロール0.40ミリリットルを(希釈しないで室温で)加えた。2,5−ジメチルピロールの添加後に、一部(アリコート)およそ5〜10ミリリットルをガラスピペットを用いてフラスコから取り出し、そして−60℃で平衡にした無水メタノール4ミリリットルを含むシンチレーション・バイアルに入れて、反応を停止させた。
【0186】
次に、丸底フラスコに残っていた反応混合物には2,5−ジメチルピロール添加後223分の時点で、−60℃で平衡にした無水メタノールを適当な量加えて反応を停止させた。
【0187】
アリコート試料および最終的に停止させた反応混合物を室温まで放温した。次いで揮発成分を蒸発させた。各アリコート試料にヘキサン1〜2ミリリットルを加えると、重合体がメタノールに沈殿した。各アリコート試料からポリイソブチレンを回収し、そして残存する如何なる不純物も除去するために、ボルテックス内で新鮮なメタノールと一緒にかき混ぜてメタノールをデカントした。各アリコートから回収したポリイソブチレン試料を室温の減圧オーブンに少なくとも24時間入れて、残っていた如何なる溶媒も取り除いた。
【0188】
下記第1表及び第2表は、実施例1で使用した反応条件および反応体のモル量をまとめて示す。
【0189】
下記第1表及び第2表では、反応体について以下の略語を用いている。
TMPClは、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンの略語である。
25DMPyは、2,5−ジメチルピロールの略語である。
【0190】
実施例1で使用した希釈剤は、ヘキサンと塩化メチルの容量比60:40の混合物であった。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
以下に記載するように、1H NMRおよびGPCを使用してポリイソブチレン試料の分析を行った。
【0194】
1H NMRデータの収集方法)
ブルカー(Bruker)AC−300(300MHz)分光光度計を使用して、試料濃度CDCl3中3%乃至5%(質量/質量)を用いて、1H NMRスペクトルを収集した。末端基の分析のために1H NMRスペクトルを使用した。以降の項に記載するように1H NMR積分を用いて、エキソ−オレフィン、エンド−オレフィン、tert−クロリドおよびカップリングオレフィンの鎖末端の割合を得た。
【0195】
(GPCデータの収集方法)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnを決定するためにGPCデータを使用した。オレフィンカップリング生成物を定性的に検出するためにもGPCを使用した。
【0196】
(ポリイソブチレン生成物の鎖末端の量の割合の計算方法)
ポリイソブチレン試料中のエキソ−オレフィン、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端、およびEAS、二EAS及びカップリング生成物の割合を、1H NMR積分を用いて定めた。これら六種で100%の鎖末端を表すと仮定した。場合によっては、1H NMRスペクトルの定性的検査によりEAS、二EAS及びカップリング生成物は存在しないと思われ、またGPCクロマトグラムで重合体主ピークの低溶離量側に肩が無いのを確認することによっても、二EAS及びカップリング生成物については存在しないと思われた。以下に、二つの方法を記す。カップリング生成物が検出されたときは「一般的方法」を使用し、カップリング生成物が存在しないと思われたときは「特別な方法」を使用した。
【0197】
(一般的方法)
エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0198】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
+2Acoupled) (1)
【0199】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは4.63ppmにおけるエキソ−オレフィン共鳴の面積であり、そしてAtert-Clは下記のようにして算出した。
【0200】

tert-Cl=(A1.65-1.72/6)−Aendo (2)
【0201】
ここで、A1.65-1.72はエンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端のgem−ジメチルプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積である。EAS又は二EAS生成物が存在する場合に、その積分面積は各状況に基づいて見積り、他のピークが入り組んでいないピークに基づいて積分を求め、そしてその特徴的なピークを持つプロトンの数に基づいて面積を規格化した。方程式(1)で二EAS及びカップリング生成物両方に2の係数が見られるが、その理由はこれら生成物いずれの発生にも2個のポリイソブチレン鎖が消費される、という事実にあることに留意されたい。Acoupledは下記のようにして算出した。
【0202】

coupled=(A5.0-4.75−A4.5-4.75)/2 (3)
【0203】
ここで、A5.0-4.75はエキソ−オレフィンプロトンのうちの1個とカップリング生成物の2個の同等なプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積であり、そしてA4.5-4.75はもう一方のエキソ−オレフィンプロトンに関係したピークの積分面積である。
【0204】
(特別な方法)
カップリング生成物が定性的に存在しない場合には、エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0205】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
(1)
【0206】
ここで、Aendoは百万分の5.15部における単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは百万分の4.63部と4.85部における2つのエキソ−オレフィン共鳴の平均面積であり、そしてAtert-Cl、AEASおよびAdi-EASは「一般的方法」に記載したのと同じようにして算出した。
【0207】
下記第3表は、実施例1のポリイソブチレン生成物について得られた1H NMRデータをまとめて示す。鎖末端を全鎖末端のモル%で記す。
【0208】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程からなる、ポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を製造する方法:
(a)重合体鎖にtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンを、ルイス酸の存在下でイオン化する工程、そして
(b)イオン化したポリオレフィンを、環に少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物、もしくは炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミン、もしくはそれらの混合物と反応させて、それによりポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を得る工程、
ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではなく、
(i)2,4−ジメチルピロール、
(ii)2−フェニルインドール、
(iii)2−メチルベンズイミダゾール、
(iv)1,2−ジメチルイミダゾール、
(v)2−フェニルイミダゾール、および
(vi)2,4,5−トリフェニルイミダゾール、
また、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない、
(i)トリエチルアミン、
(ii)トリ−n−ブチルアミン、
(iii)トリヘキシルアミン、
(iv)トリイソオクチルアミン、
(v)2−フェニルピリジン、
(vi)2,3−シクロドデセノピリジン、
(vii)ジ−p−トリルアミン、
(viii)キナルジン、および
(ix)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【請求項2】
工程(a)と工程(b)とを独立に、約−130℃乃至約10℃の範囲の温度で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)と工程(b)とを独立に、約−80℃乃至約0℃の範囲の温度で行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)と工程(b)とを独立に、約−70℃乃至約−10℃の範囲の温度で行う請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)と工程(b)を独立に、約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物が、下記一般式を有する置換ピロールである請求項1に記載の方法:
【化1】


[式中、(a)R1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、R4は、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであり、そしてR3は、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(c)R2とR3は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成していて、そしてR1およびR4は独立に、炭素原子1〜約20個を含むアルキルであるか;あるいは
(d)R1とR2およびR3とR4は両者とも組として独立に、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の縮合脂肪族環を形成している]。
【請求項7】
1およびR4がメチルであり、そしてR2およびR3が水素である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1、R2、R3およびR4がメチルである請求項6に記載の方法。
【請求項9】
置換ピロールが下記式を有する請求項6に記載の方法。
【化2】


【請求項10】
窒素含有五員芳香族環が置換イミダゾールである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
置換イミダゾールが下記一般式を有する請求項10に記載の方法:
【化3】


[式中、R3は、炭素原子約4〜約20個を含む分枝アルキルであり、そして
(a)R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいは
(b)R1とR2は、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環、または炭素原子数4〜約8の脂肪族環を形成している]。
【請求項12】
1がメチルであり、R2が水素であり、そしてR3がtert−ブチルである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)でルイス酸がチタン又はホウ素のハロゲン化物である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)でルイス酸がハロゲン化チタンである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)でルイス酸が四塩化チタンである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリオレフィンがポリイソブチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)でイオン化ポリオレフィンを、一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンと反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ヒンダード第二級又は第三級アミンが下記一般式を有する請求項17に記載の方法。
【化4】

[式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2及びR3はその一つ以下が水素であり、またR1、R2およびR3の全てが炭素数約3以下の線状アルキルということはない]。
【請求項18】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項18に記載の方法。
【化5】

【請求項19】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項18に記載の方法。
【化6】

【請求項20】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項18に記載の方法。
【化7】



【請求項21】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項18に記載の方法。
【化8】

【請求項22】
ヒンダードアミンが下記一般式を有する第三級又は第二級アミンである請求項17に記載の方法:
【化9】

[式中、R6は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、その各々は炭素原子数1〜約6のアルキル基で置換されていてもよく、そしてR1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである;ただし、R1、R2、R3およびR4が水素であるときには、R5は炭素原子数約4〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、またR5が水素であるときには、R1またはR2のいずれか、およびR3またはR4のいずれかが炭素原子数約4〜約20の分枝アルキルでない限り、R1、R2、R3およびR4は水素ではない]。
【請求項23】
ヒンダードアミンが下記式の第二級又は第三級アミンである請求項22に記載の方法:
【化10】


[式中、R5は、水素またはメチルである]。
【請求項24】
ヒンダード第二級又は第三級アミンが下記一般式を有する請求項17に記載の方法:
【化11】



[式中、R1は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、そしてR2、R3、R4、R7、R8およびR9は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、そしてR5およびR6のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20の線状アルキルである]。
【請求項25】
5およびR6のうちの一方が水素である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アミンが下記式を有する請求項22に記載の方法。
【化12】


【請求項27】
ヒンダードアミンが下記一般式の第三級アミンである請求項17に記載の方法。
【化13】


[式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2とが縮合脂肪族または芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5とが縮合脂肪族又は芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである]。
【請求項28】
1が水素であり、そしてR5がtert−ブチルであり、そしてR2、R3およびR4が水素である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ヒンダードアミンが、下記式(a)、(b)または(c)を有する窒素含有複素芳香族環である請求項17に記載の方法:
【化14】


[式(a)において、R1およびR4のうちの一方は水素であって、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であって、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している]、
【化15】



[式(b)において、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである]、および
【化16】



[式(c)において、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである]。
【請求項30】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項1に記載の方法。
【化17】

【請求項31】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項29に記載の方法。
【化18】

【請求項32】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項29に記載の方法。
【化19】




【請求項33】
ポリオレフィン生成物のエキソ−オレフィン末端基が、全末端基の1%乃至約100%の範囲で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項34】
ポリオレフィン生成物が少なくとも3%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ポリオレフィン生成物が少なくとも20%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ポリオレフィン生成物が少なくとも50%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ポリオレフィン生成物が少なくとも70%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項36に記載の方法。
【請求項39】
下記の工程からなる、ポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を製造する方法:
(a)重合体鎖にtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンを、ルイス酸の存在下でイオン化する工程、そして
(b)イオン化したポリオレフィンを、環に少なくとも2個の炭化水素置換基を持つピロール類およびイミダゾール類から選ばれる一種もしくは二種以上の窒素含有五員芳香族環化合物、もしくは炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンであって、ルイス酸と予備反応させた窒素含有芳香族アミン化合物またはヒンダード第二級又は第三級アミン、もしくはそれらの混合物と反応させて、それによりポリオレフィン重合体鎖にエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィン生成物を得る工程、
ただし、窒素含有五員芳香族環は下記の化合物ではなく:
(i)2,4−ジメチルピロール、
(ii)2−フェニルインドール、
(iii)2−メチルベンズイミダゾール、
(iv)1,2−ジメチルイミダゾール、
(v)2−フェニルイミダゾール、および
(vi)2,4,5−トリフェニルイミダゾール、
また、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(i)トリエチルアミン、
(ii)トリ−n−ブチルアミン、
(iii)トリヘキシルアミン、
(iv)トリイソオクチルアミン、
(v)2−フェニルピリジン、
(vi)2,3−シクロドデセノピリジン、
(vii)ジ−p−トリルアミン、
(viii)キナルジン、および
(ix)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【請求項40】
ルイス酸が四塩化チタンであり、そして窒素含有五員芳香族環化合物が2,5−ジメチルピロールである請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ルイス酸が四塩化チタンであり、そして置換ピロールが2,3−ジメチルインドールである請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ルイス酸が四塩化チタンであり、そしてヒンダードアミンが1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンである請求項39に記載の方法。
【請求項43】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項39に記載の方法。
【請求項44】
窒素含有五員芳香族環化合物が2,5−ジメチルピロールである請求項39に記載の方法。

【公表番号】特表2008−510855(P2008−510855A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528046(P2007−528046)
【出願日】平成17年8月20日(2005.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/029583
【国際公開番号】WO2006/033739
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(504239353)ザ・ユニバーシティー・オブ・サザン・ミシシッピ (9)
【Fターム(参考)】