説明

エクチョッ調味料およびその製造方法

【課題】本発明は、(a)液状のエクチョッを脱色および脱臭する段階;(b)前記(a)のエクチョッを濃縮し、エクチョッに含まれている塩を結晶で析出する段階;(c)前記(b)のエクチョッ濃縮液と結晶塩を分離する段階;および(d)前記(b)および(c)の段階を1回以上繰り返す段階を含むエクチョッ調味料を製造する方法および前記方法によって製造されたエクチョッ調味料に関するものである。
【解決手段】本発明のエクチョッ調味料は、総窒素含量が高く、原料と工程上で化学的添加物が全く含まれていない天然調味素材であって、うま味と旨味感が優れて合成添加物として分類されるMMGおよび核酸の代替素材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然調味素材としてのエクチョッ(韓国式魚醤)調味料を製造する方法および前記方法によって製造されたエクチョッ調味料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康と天然志向に対する消費者の要求が大きくなりながら加工食品全般にわたって天然原料の使用を増やし、化学的食品添加物の使用を排除しようとする努力が加速化されている。特に調味料およびラーメンソースに代表されるシーズニング(seasoning)分野ではMSG(Monosodium glutamate)の無添加要求および天然調味料の必要性増加によって既存の代表的な旨味素材として使用されたMSG、IMP(inosine mono-phosphate)、GMP(guanosine mono-phosphate)など合成添加物の使用を排除し、天然原料の中から素材自体がうま味を発現するとか、うま味やその他風味を増進させる素材を求めるための研究が非常に活発に行われている。現在まで旨味感を発現する合成添加物を代替する天然系の味素材として最も広く使用されているのが酵母抽出物(yeast extract)である。酵母抽出物は、酵母醗酵を通じて培養された酵母を自家消化させて酵母自体が持っている蛋白質を分解して味成分を持ったペプチド(peptide)で分解した天然調味素材である。しかし、酵母抽出物は、酵母の種類に応じて品質が千差万別であり、MSGなどの合成調味素材の代替素材であり、最近に開発された高品質酵母抽出物は、全量輸入産で、価格がとても高くて使用上の経済的制約が伴っている。
【0003】
その間に各種文献を通じて明らかになったところでは、MSGやIMP、GMPの代りに味を出す天然旨味素材は、蛋白質の分解産物から起因したペプチド形態の素材が大部分である。蛋白質を基質として分解酵素による分解産物や醤油、味噌、または魚醤などの醗酵食品から生成される500〜1000kDTペプチドなどがうま味を出し、その他の風味を増進させる効果があると報告されている。前記で言及した醤油、味噌、または魚醤などの伝統醗酵食品などは、醗酵と熟成過程を通じて独特の自体的な風味を発散し、蛋白質分解ペプチドなどが深い味を出してくれるが、その単品素材としては食品産業において、その間に広く使用されてきたMSG、IMP、GMPなどであり、これらが旨味機能性がとても強い素材などを代替することは不可能である。なぜなら、醤油、味噌、または魚醤のような伝統醗酵食品などは、天然素材のうち、相対的に味成分をたくさん持っているが、化学調味料に比べて味成分の測定指標として使用されている総窒素(total nitrogen)含量が低く、醗酵中に腐敗を防止するために塩を多量に使用して相対的に塩の含量が高いからである。下記の表1には、これらの伝統醗酵食品の総窒素含量と塩含量とを比較した。
【表1】

【0004】
ここで、総窒素含量(TN)は、蛋白質分解食品の味成分の測定指標であって、蛋白質の含量が高いほどアミノ酸およびペプチドから由来した味成分をたくさん含有しているということを意味する。また、伝統醗酵食品は、色相が濃く、醗酵中に発生される特有の臭い成分によって汎用的に食品産業全般にわたって使用するには限界がある。
【0005】
MSGとIMP、GMPは、単品では無色、無味、無臭であるが、食品に少量だけ添加してもうま味と深い味を付与する効果が卓越である。したがって、MSG、IMP、GMPを代替するための天然調味素材になるためには、素材自体的に持っている特有の風味と味が弱いながらも味成分をたくさん含んでいなければならない。このような観点で伝統醗酵素材などが調味機能性が優れた味素材になるためには、前記で言及した高塩、濃い色相、固有の強い風味などの問題を解決してこそ可能である。
【0006】
一方、様々な伝統醗酵素材などのうち、特に魚醤と呼ばれるエクチョッは、動物性蛋白質醗酵素材であって、蛋白質だけでなく、水産物にたくさん含有している核酸含量が植物性原料で醗酵した素材などよりも豊かで官能的な側面から優れており、液状であるため素材として加工するための適性が良い。また、価格が相対的に安くて商業的経済性を考慮してみる時、天然味素材としての価値が十分にある。
【0007】
このような側面で、値段の安いカタクチイワシエクチョッを原料として活用して天然味素材を開発しようとする努力があってきた。例えば、大韓民国公開特許第2004−85104号では、大カタクチイワシ、中カタクチイワシ、小カタクチイワシ、乾ワカメ、乾昆布を主原料とした天然旨味料の製造方法およびその組成物に関して開示している。しかし、前記公開特許は、カタクチイワシ、乾ワカメ、乾昆布などの天然材料をひいて配合した粉末原料などの混合物に関するものであって、本発明の目的と製造物の特性が全く相異していることを見せた。また、前記特許は、天然材料を使用して混合粉末を製造するが、MSGおよび合成調味料を代替するほどの旨味感発現に対する機能性は不足なものと判断され、粉末状製品が水溶液上で溶解力がないから多様な食品に適用するのが制限されるという問題点がある。大韓民国登録特許第10−0774537号では、機能性カタクチイワシエクチョッおよびその製造方法に関して開示している。具体的に前記特許は、製造したカタクチイワシ醗酵原液を脱臭した後、ブドウ糖を添加してカタクチイワシ醗酵調味料を製造する方法に関するものであって、工程中に重炭酸ナトリウムの添加で完全な天然旨味素材とはいえず、本発明と最終製品でも製造物の特性と成分含量において差を多く見せている。全体的には、既存のカタクチイワシエクチョッよりもTN含量を50%向上させる工程を通じて総窒素含量とアミノ酸の含量とを増加させる工程が含まれているが、相変らずエクチョッとして持っている高い塩含量と、液状として持っている低い固形分含量によって多様な加工食品に汎用的な調味素材として使用するのに制限が伴うので、合成調味料を代替するには不足である。また、味成分自体の濃度が低いから旨味感発現にも限界を見せている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、伝統醗酵素材のうち、エクチョッを用いて合成調味素材を代替しようと努力し、その結果、連続的な濃縮および脱塩工程の簡単な方法でカタクチイワシエクチョッという原料を使用したと全然推定できないほどさっぱりした風味と官能的に優れた旨味感の発現を見せながらも従来の合成旨味素材を代替できるエクチョッ調味料を完成し、本発明を完成するようになった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの目的は、(a)液状のエクチョッを脱色および脱臭する段階、(b)前記(a)のエクチョッを濃縮し、エクチョッに含有されている塩を結晶で析出する段階、(c)前記(b)のエクチョッ濃縮液と結晶塩とを分離する段階、および(d)前記(b)および(c)の段階を1回以上繰り返す段階を含むエクチョッ調味料を提供することである。
【0010】
本発明の他の一つの目的は、前記方法によって製造された天然調味素材としてのエクチョッ調味料を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエクチョッ調味料は、天然素材であるエクチョッを簡単な方法で製造することができ、天然調味素材であるが、MSG、IMP、GMPなどの合成旨味素材と同等な水準以上の優れた旨味感の発現を示し、その合成調味素材および現在の販売されている天然調味素材を代替することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例によるエクチョッ調味料の製造工程を簡単に図式化したものである。原材料であるエクチョッから段階的濃縮および脱塩工程を通じて旨味感の発現に核心的な役割を果たすエクチョッの蛋白質成分を濃縮化した一連の過程を図式化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一つの態様として、本発明は、天然調味素材として下記の段階を含むエクチョッ調味料を製造する方法に関するものである。
(a)液状のエクチョッを脱色および脱臭する段階、
(b)前記(a)のエクチョッを濃縮し、エクチョッに含有されている塩を結晶で析出する段階、
(c)前記(b)のエクチョッ濃縮液と結晶塩とを分離する段階、および
(d)前記(b)および(c)の段階を1回以上繰り返す段階。
【0014】
本発明の"エクチョッ"は、動物性蛋白質の醗酵物であって、魚醤ともいう。前記の動物性蛋白質は、魚類から由来するのが好ましい。前記魚類は、これに制限されるのではないが、カタクチイワシ、太刀魚、イカナゴ、海老などを含む。
【0015】
本発明の"調味料"は、食べ物を作る主材料である食品に添加して食べ物の味をそそりながら調節する物質であって、特にうま味またはこうばしい味を出す旨味物質をいう。したがって、本発明で便宜上調味料というのは、旨味料を含む意味で理解する。本発明の調味料は、天然旨味素材で構成されており、従来の合成旨味素材を代替するためである。
【0016】
本発明の前記(a)段階は、液状のエクチョッを脱色および脱臭する段階である。前記脱色および脱臭工程は、当該分野における公知の方法を用い、一つの具体的な実施では活性炭を使用する。前記の活性炭を使用する場合、活性炭は、エクチョッの全体重量対比0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.2重量%を使用する。また、前記の活性炭を使用する場合、常温以上の温度、好ましくは50〜60℃の温度で1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは2〜3時間放置する。活性炭を使用する場合、最終産物であるエクチョッ調味料の官能を良くするために、エクチョッの全体重量対比3〜5重量%のケイソウ土を前記活性炭が添加されたエクチョッに添加し、これをフィルタープレスを通過させてろ過することによって活性炭を除去することができる。
【0017】
本発明の前記(b)段階は、前記(a)段階の脱色および脱臭されたエクチョッを濃縮し、エクチョッに含有されている塩を結晶で析出する段階である。
【0018】
前記濃縮は、エクチョッ内の固体粒子のサスペンション濃度を増加させることであって、このような濃縮方法は、一般的に濃縮器を用いるとか、沈降促進剤または凝集剤のような添加剤を投与して濃縮することができる。しかし、本発明の天然調味素材の目的上、どんな添加剤の投与無しに濃縮器を用いて濃縮するのが好ましい。具体的な一つの態様として、前記濃縮は、エクチョッを50〜60℃で加熱し、濃縮器を用いて濃縮する。前記50℃未満または60℃超過の温度でもエクチョッの濃縮は可能であるが、50℃未満の温度で濃縮する場合、濃縮になる時間が多く所要されて生産費用の上昇が発生するので好ましくない。また、前記60℃超過の温度で濃縮する場合、エクチョッの色相が暗くなるから製品の品質が減少して好ましくない。
【0019】
前記の濃縮過程中にエクチョッに含まれた塩の溶解度が飽和状態になると、過飽和された塩は微細な結晶で析出される。その析出された過飽和の塩結晶は、下記の(c)段階で除去するようになる。
【0020】
前記の濃縮によってエクチョッの濃度は、蛋白質基準で濃縮前エクチョッの濃度に比べて約200〜400%増加し、好ましくは250〜300%増加する。しかし、このような濃度の増加は、最終製品であるエクチョッ調味料の総窒素含量の濃度に応じて多様に調節できるだろう。
【0021】
本発明の前記(c)段階は、前記(b)段階のエクチョッ濃縮液と結晶塩とを分離する段階である。
【0022】
前記(c)段階の分離は、遠心分離、電気分解および連続式脱塩濃縮法などの当該分野で適用可能な多様な方法を用いて行うことができる。本発明の一つの具体的な態様として、前記分離は、遠心分離をしながら水を添加する方法によって行われる。遠心分離をしながら水を添加するようになると、エクチョッ濃縮液が瞬間的に水に溶けながら結晶塩と層分離される。具体的に、前記遠心分離は、低速、好ましくは100〜1,000rpm、より好ましくは400〜600rpmの速度で行い、前記水の量は、少量、好ましくはエクチョッ濃縮液の重量対比20〜40重量%である。
【0023】
本発明の前記(d)段階は、(b)〜(c)段階を1回以上、好ましくは1〜10回、より好ましくは1〜8回、さらに好ましくは1〜5回、最も好ましくは2〜3回繰り返す段階である。
【0024】
前記(d)段階は、最終製品であるエクチョッ調味料の総窒素含量に応じて決定される。例えば、前記(d)段階で1回行われたエクチョッ調味料は、本発明の製造方法を行う前の本来のエクチョッと比較する時、総窒素含量が3.8〜4.0%であって、約2.8〜3.0倍増加する。また、前記(d)段階で2回行われたエクチョッ調味料は、本発明の製造方法を行う前の本来のエクチョッと比較する時、総窒素含量が5.0〜5.3%であって、約3.7〜3.9倍増加する。したがって、最終製品であるエクチョッ調味料の総窒素含量に応じて前記(d)段階の繰返し回収を適切に調節できるだろう。また、最終製品であるエクチョッ調味料が粉末などの固体状の場合、下記(e)段階などによって最終製品であるエクチョッ調味料の総窒素含量が増加され得ることがあるので、これを考慮して前記(d)段階の繰返し回収を適切に調節できるだろう。
【0025】
一つの具体的な態様として、本発明は、前記段階によって製造されたエクチョッ調味料を固体状で提供することである。
【0026】
具体的に、本発明は、前記(d)段階以後にエクチョッ濃縮液を乾燥して粉末化する(e)段階を更に含むことができる。
【0027】
前記(e)段階の粉末化方法は、食品分野における公知の粉末方法を用いることができる。例えば、真空乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥または凍結乾燥などによる粉末化方法などがある。前記の粉末化方法によって本発明のエクチョッ調味料は、粉末形態で最終消費者に提供され得るだろう。また、前記粉末化工程によってエクチョッ調味料は、液状のエクチョッ調味料に比べて総窒素含量および塩の含量が増加することができる。
【0028】
また、本発明の一つの具体的な態様として、前記(e)段階の粉末化工程前にエクチョッの炭化防止と粉末化以後の流通上固化および吸湿防止のために賦形剤を添加する段階を更に含むことができる。
【0029】
前記賦形剤は、エクチョッの炭化を防止するためのものであって、ブドウ糖、デキストリン、澱粉、乳糖などがあるが、食品公典上許容可能な賦形剤として最終エクチョッ調味料の目的に適合した賦形剤ならばどれも可能である。
【0030】
他の一つの態様として、本発明は、前記方法によって製造されたエクチョッ調味料を提供することである。
【0031】
本発明の前記方法によって製造されたエクチョッ調味料は、総窒素含量が調味料全体含量の2.8%以上、好ましくは3.0%以上、より好ましくは3.0〜7.0%であり、塩含量が23%以上、好ましくは23〜45%、より好ましくは25〜45%である。したがって、本発明のエクチョッ調味料は、本来のエクチョッに比べて総窒素含量が約3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは5倍以上増加した。また、本発明のエクチョッ調味料は、調味感を発現するのに密接な関連性があることと知られているグルタミン酸含量においても本来のエクチョッに比べて約3倍増加した。また、本発明のエクチョッ調味料は、現在の販売されている天然調味料と比較しても総窒素含量がより優れており、グルタミン酸および塩含量が同等な水準である。したがって、本発明のエクチョッ調味料は、天然調味素材として有用である。
【0032】
本発明のエクチョッ調味料は、一般的に使用する調味料の形態、すなわち、液状または固体状の形態で製品化され得る。好ましい形態では液状または固体粉末である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【0034】
実施例1:総窒素含量(TN)が5.0であるエクチョッ調味料の製造
1−1.原料の用意
醗酵機間が30ヶ月以上の韓国の済州道産カタクチイワシエクチョッをハ・ソンジョン総合食品で購入した。購入したカタクチイワシエクチョッの総窒素含量(TN)は、1.35〜1.40%であった。また、カタクチイワシエクチョッのO.D(Optical density)値および臭い強度を測定した。O.D値は、溶液色相の濃い程度と量の相関関係を見せるので、これを通じてカタクチイワシエクチョッの明るさが分かり、一般的な水のO.D値は0である。前記測定結果を下記表2に示した。
【0035】
1−2.脱臭および脱色工程
実施例1−1のカタクチイワシエクチョッにエクチョッの全体重量対比1.0%の活性炭を添加し、50〜60℃の温度で2時間放置した。以後、活性炭を除去するためにエクチョッの全体重量対比3〜5%のケイソウ土を添加し、フィルタープレスでろ過を行った。このような過程を経たカタクチイワシエクチョッは、初期のエクチョッよりも色相がはるかに明るくなったし、エクチョッ特有の臭いも減少した。また、活性炭は、液状活性炭よりも粉末活性炭で色相の吸着力が優れており、脱色に効果的なものとして示された。前記脱色および脱臭過程を経たカタクチイワシエクチョッのO.D値および臭い強度を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0036】
表2

【0037】
前記の表2からわかるように、エクチョッの反応前後の色相を比較してみると、吸光度が0.785の水準から0.08に顕著に減少した。このような結果は、エクチョッの色相が明るくなったということを意味する。また、臭い強度も前記処理を通じてエクチョッ固有の臭いが全くしなかった。
【0038】
1−3.1次濃縮
前記の実施例1−2で脱色および脱臭されたエクチョッを濃縮するために、先ず、50〜60℃で加温を行った。温度が60℃まで上がると連続式減圧濃縮器で濃縮を始め、53〜55brixになると1次濃縮を完了した。温度が上昇すると、製品の色相が暗くなるから温度を50〜60℃で一定に維持するようにした。濃縮過程中に塩の溶解度が飽和状態になりながら一部過飽和された塩は、微細な結晶で析出されるようになるのに次の工程でこれを除去した。
【0039】
1−4.1次脱塩
前記実施例1−3で濃縮されたエクチョッを遠心分離機に入れて一部過飽和されて析出された塩を除去した。500rpm以上の速度で遠心分離しながら少しの水を瞬間的に投入すると、蛋白質成分が溶けて既に結晶化されている塩と分離される。遠心分離機工程が終わった後、塩とエクチョッ濃縮液とを分離して置いた。1次脱塩後のエクチョッの成分を分析した結果、総窒素含量(TN)が3.8〜4.0%であり、塩含量は24〜25%と測定された。前記総窒素含量および塩含量は、食品公典上で明示されたケルダール法(kjeldahl method)およびモール法(mohr method)を用いて測定した。
【0040】
1−5.2次濃縮および脱塩
1次脱塩を終えたエクチョッ濃縮液を再び連続式真空濃縮管に投入して50〜60℃の温度水準で65brixになるまで濃縮を行った。濃縮後、実施例1−4と同様に500rpm速度で遠心分離機を用いて脱塩を行って総窒素含量(TN)が5.0〜5.3%、塩含量が21〜23%程度のエクチョッ濃縮液を完成した。濃縮を行うと、過飽和された塩は析出され、溶解された塩は同じ含量で存在し、蛋白質含量の総窒素含量だけ増加するようになるので、1次および2次濃縮を通じて増加された総窒素含量を含有するエクチョッ濃縮液を獲得することができた。
【0041】
このエクチョッ濃縮液は、使用の目的に合うように本過程で終了して高い総窒素含量のエクチョッペースト(paste)で使用が可能であり、完製品に適用する時、使い勝手のために下記のように粉末工程を経て粉末化して使用が可能である。
【0042】
実施例2:エクチョッ粉末調味料製造
2−1.賦形剤混合
実施例1で製造した塩と分離された濃縮液とは、真空濃縮粉末化(vacuum drying)過程を経る前にデキストリンと混合する。この時、デキストリンを混合する理由は、真空濃縮粉末化過程中にエクチョッが炭化することを防止し、色相の変化を減らすためである。濃縮液の総固形分対比10%に該当するマルトデキストリン(Maltodextrin)を投入して攪拌機があるタンクで濃縮液とよく混ざるように20分間攪拌を行った。
【0043】
2−2.乾燥工程
本発明者は、エクチョッ濃縮液を粉末化するために下記のように乾燥工程を全て2つの方法で行った。
(1)真空乾燥(Vacuum drying)
前記実施例2−1の賦形剤を混合したエクチョッ濃縮液を完全に乾燥するためにエクチョッ濃縮液を減圧式真空乾燥器(Vacuum drying)に入れ、85〜90℃の温度条件と700mmHgの圧力下で5時間乾燥を行った。乾燥後、水分含量は、2%未満で乾燥が完璧になった。真空乾燥されたブロック(block)は、粉末で作るために粉末用粉砕機(Hammermill)に入れてひいて40mesh以上を通過できる大きさで粉末を作った。
(2)噴霧乾燥(Spray drying)
噴霧乾燥を行うためには、投入条件が40〜45brixであるので、前記実施例2−1の賦形剤を混合したエクチョッ濃縮液を加水して40〜45brix濃度で調節した。そして、エクチョッ濃縮液の温度を50℃に合わせた後、160℃で予熱させておいた噴霧乾燥器に投入して噴霧乾燥を行った。
【0044】
実施例3:本発明のエクチョッ調味料と初期エクチョッとの成分比較
前記で製造された本発明のエクチョッ調味料が天然調味素材としての確保成果を確認するために、原料として使用された初期のエクチョッと成分および官能的特性を比較した。
表3

初期に総窒素含量1.35〜1.40%で始まったエクチョッが濃縮と脱塩過程を経りながら総窒素含量が6.5〜7.0%まで上昇した。総窒素含量が5倍程度増加したので、味成分が5倍程度上昇したことと判断できる。また、旨味感を発現するのに最も密接な関連があるアミノ酸であるグルタミン酸(Glutamic acid)含量も1.7%から4.9%で3倍に増加した。
【0045】
実施例4:本発明のエクチョッ調味料と販売されている天然調味料との成分比較
本発明のエクチョッ調味料が天然調味素材として有効であるか否かを確認するために、天然調味素材中で商業的に最も広く使用されている酵母抽出粉末(yeast extract powder)のうち、酵母専門企業であるD社の酵母抽出粉末を選択して本発明のエクチョッ調味料と成分含量を比較した。
表4

成分分析の結果、本発明のエクチョッ粉末は、グルタミン酸含量が4.9%で、D社の酵母抽出粉末と比較して同等な水準の数値を見せ、総窒素含量は、相対的に10%優位の含量を見せた。塩は、ほとんど同等な水準で示された。このような結果から推して見る時、本発明品は商業的に広く使用される酵母抽出粉末に比べて味成分の指標であるグルタミン酸および総窒素含量で同等な水準以上の成分含量の結果を見せ、天然調味素材としての機能性を確保したと評価することができた。
【0046】
実施例5:本発明のエクチョッ調味料の料理食品での官能評価
本発明のエクチョッ調味料が実際料理食品で天然素材として調味機能性がどうなのか確認するために、メニューに適用した後、官能評価を通じてその属性を分析してみた。メニューは、韓国料理メニューの中でワカメスープ、洋食メニューの中では貝スープ(clam chowder soup)で2種類を選択して適用した。官能評価は、パネル46人を対象に行い、5点尺度法によって行った。
【0047】
5−1.ワカメスープの官能評価
水にふやかしたワカメを10重量%で入れて沸かしたワカメスープに実験群としてエクチョッ粉末を0.4重量%添加し、対照群として通常的に家庭で最も多く使用している天然調味料中の一つである韓国醤油を1.0重量%添加した。塩は、最終0.6重量%に補正してスープの味付けをした。官能評価属性項目は、全般味、うま味、こうばしい味、濃い味、風味、塩味で大きく6個の項目で行った。これに対する結果を表5に示した。
表5

前記表において、aおよびbは、統計学的に有意的な差があるということを意味する。例えば、3.88aおよび3.80aといえば、3.88と3.80の二つの点数が統計学的に有意的な差がなく、同じ値で見られることを意味する。
前記の官能検査結果から分かるように、エクチョッ粉末を入れた群が全般味、うま味、こうばしい味、濃い味、風味の側面で有意的な差があるように優位を見せた。各項目別評価属性は、スープの味を基準として天然調味素材などで核心的に評価する属性に属する。このような結果から一つの興味深いことは、塩味属性で2つの群が実質的には同じ塩含量を持っているが、官能的に感じるのにエクチョッ粉末を入れた群があまり塩辛くなく評価されたという点である。これは調味機能性が高ければ相対的に塩味属性が減るという既存の理論と符合する結果を見せてくれると見られる。上記の結果を通じて天然調味素材として機能性が優れたものであると評価できる。
【0048】
1−2.貝スープ(Clam chowder soup)
貝スープの用意は、クリームスープベースに貝柱、玉ネギ、ジャガイモを適量入れてコショウで味付けをした後に対照群と実験群にそれぞれMSGとエクチョッ粉末を0.2重量%、0.5重量%ずつ入れてサンプルを用意した。対照群と実験群のMSGとエクチョッ粉末の添加量は、単独原料の水溶液上で呈味機能性実験に基づいて決定されたものであった。MSGは、水溶液上で0.1%〜0.5%、官能の時に0.2%で明らかに呈味機能性が発揮され始め、エクチョッ粉末は0.5%で呈味機能性が発揮され始めた。最終製品の塩濃度は、0.6重量%に調整した。官能評価属性項目は、全般味、うま味、貝風味、クリーム味、脂っこい味、塩味で6個の項目に対して評価を行った。これの結果を下記表6に示した。下記の表において、aおよびbは、統計学的に有意的な差があるということを意味する。例えば、3.85aおよび3.80aといえば、3.85と3.80の二つの点数が統計学的に有意的な差がなく、同じ値であると見られるということを意味する。
表6

【0049】
前記の貝スープに対する官能評価結果を見ると、対照群がクリーム味、脂っこい味で有意的な差で優位を見せ、実験群は全般味、貝風味で優位を見せた。うま味と塩味の場合は、少しの点数差があったが、有意的な差がないことと示された。エクチョッ粉末を入れた実験群は、対照群に比べて貝風味を向上させる効果があり、相対的に脂っこい味が少なくて全般味が優位であることと示された。
【0050】
呈味力が優れた合成調味素材であるMSGと本発明のエクチョッ粉末との効果を比較してみると、料理適用の時、官能属性で同様な様相を見せていないが、料理固有の風味を向上させ、うま味を付与しながら全体的な味の調和度は助ける方向を、味を変化させるから全体的には全般味が良くなった結果として示された。これで本発明品は、合成調味素材の代替にも効果があるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のエクチョッ調味料は、天然素材であるエクチョッを簡単な方法で製造することができ、天然調味素材であるが、MSG、IMP、GMPなどの合成旨味素材と同等な水準以上の優れた旨味感の発現を示し、その合成調味素材および現在の販売されている天然調味素材を代替することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液状のエクチョッを脱色および脱臭する段階、
(b)前記(a)のエクチョッを濃縮し、エクチョッに含有されている塩を結晶で析出する段階、
(c)前記(b)のエクチョッ濃縮液と結晶塩とを分離する段階、および
(d)前記(b)および(c)の段階を1〜5回繰り返す段階を含むエクチョッ調味料を製造する方法。
【請求項2】
前記(a)段階の脱色および脱臭は、活性炭の添加によったことであり、
前記活性炭は、エクチョッの全体重量対比0.5〜2.0重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(b)段階は、50〜60℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(c)段階は、遠心分離、電気分解または連続式脱塩濃縮法のうち、いずれか一つ以上の方法によったことである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(d)段階以後にエクチョッ濃縮液を乾燥して粉末化する(e)段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち、いずれか一つの方法によって製造されたエクチョッ調味料。
【請求項7】
エクチョッ調味料は、総窒素含量(TN)が調味料の全体含量から3.0〜7.0%であることを特徴とする請求項6に記載のエクチョッ調味料。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513211(P2012−513211A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543413(P2011−543413)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007282
【国際公開番号】WO2010/074431
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511153921)シージェイ チェイルジェダング コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】