説明

エスカレータのトラス

【課題】クレーンなどを用いることなく運搬することができるエスカレータのトラスを提供する
【解決手段】トラスは、上階トラス構造体2、下階トラス構造体、中間トラス構造体に分割した状態で個々に運搬することができる。上階トラス構造体2は、主梁21と縦梁22と一対の横梁23とを備え、一対の横梁23には、エスカレータ幅方向に沿って延びる穴部24が設けられており、穴部24にフォークリフト100のフォーク102を挿通することで、上階トラス構造体2を容易に運搬することができる。また、下階トラス構造体についても上階トラス構造体2と同様の穴部が設けられているので穴部にフォークリフト100のフォーク102を挿通することで、下階トラス構造体も容易に運搬することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータのトラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータのトラスは、クレーンや大型揚重機によって吊り上げたり、あるいは、台車やラックに乗せることによって運搬されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、クレーンや大型揚重機によってトラスを吊り上げる場合では、吊り上げ作業に時間がかかることに加え、上方が開放された特定のエリアでしか運搬できないという問題がある。また、トラスを台車やラックに乗せて運搬する場合では、トラスを台車やラックに載置する際にクレーンや大型揚重機が必要となり、上記した問題があることに加え、台車やラックにより運搬時の寸法が大きくなり取り回しにくくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−198648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたもので、クレーンなどを用いることなく運搬することができるエスカレータのトラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエスカレータのトラスは、フォークリフトのフォークがトラス幅方向に沿って挿通される穴部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるエスカレータのトラスの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すトラスにおける上階トラス構造体を示す正面図である。
【図3】図1に示すトラスにおける下階トラス構造体を示す正面図である。
【図4】図2に示す上階トラス構造体の運搬状態を示す図である。
【図5】図3に示す下階トラス構造体の運搬状態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるエスカレータのトラスにおける上階トラス構造体の搬送状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるエスカレータのトラスにおける下階トラス構造体を示す図である。
【図8】図7に示す下階トラス構造体の要部を拡大して示す図である。
【図9】本発明の第4の実施形態にかかるエスカレータのトラスにおける上階トラス構造体を示す図である。
【図10】図9に示す上階トラス構造体に設けられる取付治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に例示するエスカレータのトラス1は、建物等の設置構造物の上階と下階との間にわたって据え付けられるものであり、上階床に配置される上階トラス構造体2と、下階床に配置される下階トラス構造体3と、上階トラス構造体2および下階トラス構造体3との間に配置される中間トラス構造体4とを備える。
【0010】
トラス1は、上階トラス構造体2、下階トラス構造体3、中間トラス構造体4の各トラス構造体をエスカレータの長手方向に沿って連結することで構成される。このようなトラス1は、上階トラス構造体2、下階トラス構造体3、中間トラス構造体4に分割した状態で個々に運搬することができる。以下、上階トラス構造体2および下階トラス構造体3を運搬する場合を例として説明する。
【0011】
上階トラス構造体2は、設置構造物に据え付けられた状態で上階側の乗降部を構成する上水平部2aと、この上水平部2aから下方に向かって傾斜する上傾斜部2bとから構成され、上傾斜部2bの先端部2cが中間トラス構造体4の端部に連結される。
【0012】
上階トラス構造体2は、図2に示すように、エスカレータの長手方向に沿って配置された左右および上下位置の主梁21と、上下位置の主梁21を連結する縦梁22と、エスカレータ幅方向に対向する左右位置の主梁21を連結する一対の横梁23とを備える。
【0013】
一対の横梁23は、エスカレータの長手方向に所定間隔をあけて配置され、一対の横梁23の中心位置が上階トラス構造体2の重心G1に一致するようにエスカレータ幅方向に対向する主梁21の下面に固定されている。一対の横梁23には、エスカレータ幅方向に沿って延びる穴部24が設けられている。
【0014】
下階トラス構造体3は、設置構造物に据え付けられた状態で下階側の乗降部を構成する下水平部3aと、この下水平部3aから上方に向かって傾斜する下傾斜部3bとから構成され、下傾斜部3bの先端部3cが中間トラス構造体4の端部に連結される。
【0015】
下階トラス構造体3は、図3に示すように、エスカレータの長手方向に沿って配置された左右および上下位置の主梁31と、上下位置の主梁31をほぼ所定間隔毎に連結する縦梁32と、下側に配置されエスカレータ幅方向に対向する左右位置の主梁31を連結する一対の横梁33とを備える。
【0016】
一対の横梁33は、エスカレータの長手方向に所定間隔をあけて配置され、一対の横梁33の中心位置が下階トラス構造体3の重心G2に一致するようにエスカレータ幅方向に対向する主梁31の下面に固定されている。一対の横梁33には、エスカレータ幅方向に沿って延びる穴部34が設けられている。
【0017】
上記のような構成の上階トラス構造体2では、図4に示すように、上階トラス構造体2に設けられた一対の横梁23の穴部24にフォークリフト100のフォーク102を挿通することで、フォークリフト100で持ち上げ容易に運搬することができる。
【0018】
また、下階トラス構造体3についても、上階トラス構造体2と同様、図5に示すように、下階トラス構造体3に設けられた一対の横梁33の穴部34にフォークリフト100のフォーク102を挿通することで、フォークリフト100で持ち上げ容易に運搬することができる。
【0019】
以上のように、本実施形態のトラス1では、クレーンなどを用いることなくフォークリフトによる簡便な手段によって運搬が可能となるため、搬送時間を短縮できるとともに搬送できるエリアも広がり、エスカレータの組立作業性を向上することができる。
【0020】
しかも、穴部24、34を備えた一対の横梁23、33は、一対の横梁23、24の中心位置がトラス構造体2、3の重心G1、G2に一致するようにエスカレータ幅方向に対向する主梁21、31の下面に固定されている。そのため、トラス構造体2,3がフォークリフト100のフォーク102から脱落しにくくなり、安定してトラス構造体2,3を運搬することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、上階トラス構造体2および下階トラス構造体3を運搬する場合を例として説明したが、中間トラス構造体4の場合であっても、フォークリフトのフォークがエスカレータ幅方向に沿って挿通される穴部を、中間トラス構造体4において下側の左右位置に配された主梁に設けることで、フォークリフトによる簡便な手段によって運搬が可能となる。
【0022】
また、本実施形態では、トラス1が3分割できるよう構成されているが、2分割でも、4分割以上であってもよく、また、トラス1自体が小さい場合には分割することなくフォークリフトによって運搬できることはもちろんである。
【0023】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、上階トラス構造体2を運搬する場合を例として説明するが、下階トラス構造体3および中間トラス構造体4にも同様に適用することができる。
【0024】
本実施形態において運搬する上階トラス構造体2には、エスカレータを駆動するための駆動装置5や、踏段6や、踏段6を移動させるための駆動輪7や、踏段6を走行させるためのレール8などのエスカレータの構成部品が、取り付けられており、上階トラス構造体2の重心位置G1が重心位置G1’へエスカレータの長手方向(本実施形態では、図6において右方)に移動している。
【0025】
このように上階トラス構造体2の重心位置G1がエスカレータの長手方向に移動していると、一対の横梁23の中心位置が上階トラス構造体2の重心G1に一致しなくなり、このまま横梁23の穴部24にフォークリフト100のフォーク102を挿通してフォークリフト100で持ち上げようとするとバランスがとれず運搬できないおそれがある。
【0026】
そこで、図6に示すように、上階トラス構造体2には、おもり12を収納する釣合箱10が着脱可能に設けられている。この釣合箱10は、上階トラス構造体2の運搬時に設けられ、例えば、隣接するトラス構造体、つまり、中間トラス構造体4が連結される連結側の先端部2cに設けられる。
【0027】
なお、釣合箱10に収納するおもり12は、分銅のような専用のおもりであってもよく、あるいは、トラス構造体を連結するための固定部材やトラスを設置構造物に据え付ける際にトラスの高さを調整するための調整板などのエスカレータの構成部品であってもよい。
【0028】
本実施形態では、上階トラス構造体2の運搬時におもり12を収納した釣合箱10が、上階トラス構造体2に設けられているため、エスカレータの構成部品を取り付けることで重心位置G1が移動しても、その移動量に応じて釣合箱10に収納するおもり12の重量を適宜調整して一対の横梁23の中心位置に重心位置G1を一致させることができ、よって、安定して上階トラス構造体2を運搬することができる。
【0029】
また、上階トラス構造体2における連結側の先端部2cの近傍には、非連結側の先端部2dに比べて、運搬時に有効に活用されない空間(デットスペース)Sが大きくなるが(図6参照)、連結側の先端部2cに釣合箱10を設けることで、この活用されない空間に釣合箱10を配置することができるため、釣合箱10を設けても運搬作業性が悪化しにくい。
【0030】
しかも、釣合箱10に収納するおもり12を、上階トラス構造体2に取り付けられる前のエスカレータの構成部品とすることで、取り付け前のエスカレータの構成部品も同時に運搬することができる。
【0031】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0032】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図7および図8を参照して説明する。なお、本実施形態では、下階トラス構造体3を運搬する場合を例として説明するが、上階トラス構造体2や中間トラス構造体4にも同様に適用することができる。
【0033】
本実施形態では、フォークリフト100のフォーク102を挿通する穴部34が、エスカレータ幅方向に対向する左右位置に配された一対の主梁31に設けられている。左右位置に配された一対の主梁31に設けられた穴部34は、筒状の補強部材35によって連通されている。
【0034】
このような構成の下階トラス構造体3は、穴部34および補強部材35の中空部にフォークリフト100のフォーク102を挿通することで、フォークリフト100で持ち上げ容易に運搬することができる。
【0035】
しかも、本実施形態では、穴部34を設けても下階トラス構造体3の底部(つまり、下側の主梁31)より下方に突出する突起ができず、省スペース化を図ることができる。
【0036】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0037】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について、図9および図10を参照して説明する。なお、本実施形態では、上階トラス構造体2を運搬する場合を例として説明するが、上階トラス構造体2や中間トラス構造体4にも同様に適用することができる。
【0038】
本実施形態では、フォークリフト100のフォーク102を挿通する穴部24を備えた横梁23が、エスカレータ幅方向に対向する左右位置の主梁21に対して着脱可能に設けられている。
【0039】
詳細には、図9に示すように、横梁23は、横梁23より上方に延びる支柱52と、支柱52に穿設された軸穴54に挿通され横梁23に平行な軸回りに回動可能に設けられた回動軸56と、主梁21を下方より支持する受け部材58と、受け部材58に載置された主梁21を受け部材58に固定する固定ボルト60とともに取付治具50を構成している。受け部材58は、回動軸56に固定されており、回動軸56とともに横梁23に平行な軸回りに回動するように設けられている。なお、支柱52には、上方に所定間隔をあけて複数の軸穴54が穿設されてもよい。
【0040】
取付治具50は、図10に示すように、下側に配されたエスカレータ幅方向に対向する一対の主梁21を受け部材58の上に載置し、主梁21に設けた不図示のボルト穴に固定ボルト60を挿通しボルト留めすることで、上階トラス構造体2に固定される。
【0041】
本実施形態では、取付治具50は、受け部材58が回動軸56により横梁23に平行な軸回りに自由に回動可能に設けられているため、主梁21が水平面Hに対して傾斜している位置にもフォークリフト100のフォーク102を挿通する穴部24を配置することができ、主梁21における長手方向の任意の位置に穴部24を設けることができる。
【0042】
そのため、エスカレータを駆動するための駆動装置や、踏段や、踏段を移動させるための駆動輪や、踏段を走行させるためのレールなどが上階トラス構造体2に取り付けられ、上階トラス構造体2の重心G1がエスカレータの長手方向に移動しても、移動した重心位置に一対の横梁23の中心位置が一致する適切な位置に横梁23を設けることができ、安定して上階トラス構造体2を運搬することができる。
【0043】
また、支柱52には、上方に所定間隔をあけて複数の軸穴54が穿設させており、受け部材58から横梁23までの上下方向の距離を調整することができるため、主梁21が水平面Hに対して傾斜している位置に取付治具50を取り付けて一対の横梁23を配設しても、一対の横梁23を同一の水平面上に配設することができ、フォークリフトにより安定して運搬することができる。
【0044】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0045】
1…トラス 2…上階トラス構造体 3…下階トラス構造体
4…中間トラス構造体 10…釣合箱 12…おもり
21…主梁 22…縦梁 23…横梁
24…穴部 31…主梁 32…縦梁
33…横梁 34…穴部 50…取付治具
52…支柱 54…軸穴 56…回動軸
58…受け部材 60…固定ボルト 100…フォークリフト
102…フォーク G1…重心 G2…重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトのフォークがエスカレータ幅方向に沿って挿通される穴部を備えることを特徴とするエスカレータのトラス。
【請求項2】
前記穴部が、エスカレータ幅方向に対向する一対の梁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータのトラス。
【請求項3】
前記穴部は、エスカレータ幅方向に対向する一対の梁に着脱可能に架け渡された横梁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータのトラス。
【請求項4】
おもりを収納する釣合箱が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエスカレータのトラス。
【請求項5】
前記おもりがエスカレータの構成部品であることを特徴とする請求項4に記載のエスカレータのトラス。
【請求項6】
上階床に配置される上階トラス構造体と下階床に配設される下階トラス構造体と含む複数のトラス構造体に分割可能に設けられ、
前記上階トラス構造体および前記下階トラス構造体は、隣接する前記トラス構造体を連結する連結側の端部に前記釣合箱が設けられることを特徴とす請求項4又は5に記載のエスカレータのトラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−241078(P2011−241078A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116321(P2010−116321)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】