説明

エスカレータの欄干支持装置

【課題】デッキ内スペースを確保できるエスカレータの欄干支持装置を提供する。
【解決手段】エスカレータの踏段移動方向に沿って設けられたデッキ内に設けられ、欄干パネルを受け入れて支持する支持溝を持つパネル保持具を備えたエスカレータの欄干支持装置において、パネル保持具の支持溝内に設けられ、くさび作用によって支持溝内に挿入された欄干パネルを押圧して支持する押さえ板を備えたエスカレータの欄干支持装置。
【効果】デッキ内の省スペース化を実現し、デッキ内に例えば照明装置などを挿入するためのスペースを確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエスカレータの欄干パネルをデッキ内で支持する欄干パネル支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータの欄干内に照明装置を挿入する場合、欄干パネル支持装置は、トラスの主梁の上方に手摺と欄干パネルを支持するパネル保持具と押え板と押し付けボルトにより構成し、押し込みボルトにより押え板の正面すなわちスカートガード側から押し込まれた押さえ板によって欄干パネルの下端部を挟持するようにしていた。照明装置は蛍光灯の光を拡散板によって拡散する構成となっていて、スカートガード側から見て押さえ板および押し込みボルトの手前に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−20183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のエスカレータの欄干パネル支持装置においては、欄干内に照明装置を挿入するためなどの理由でデッキ内の省スペース化が必要な場合に、スカートガード側からの押し込みボルトの締め付けにより押え板を欄干パネルに押し当てて支持しているために、デッキ内にスペースを確保することは困難であった。
【0005】
従ってこの発明の目的は、デッキ内の省スペース化を実現し、デッキ内のスペースを確保することができるエスカレータの欄干支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のエスカレータの欄干支持装置によれば、エスカレータの踏段移動方向に沿って設けられたデッキ内に設けられ、欄干パネルを受け入れて支持する支持溝を持つパネル保持具を備えたエスカレータの欄干支持装置において、上記パネル保持具の上記支持溝内に設けられ、くさび作用によって上記支持溝内に挿入された上記欄干パネルを押圧して支持する押さえ板を備えたことを特徴とするエスカレータの欄干支持装置が得られる。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエスカレータの欄干支持装置によれば、デッキ内の省スペース化を実現し、デッキ内にスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明のエスカレータの欄干支持装置の一実施の形態を適用したエスカレータを示す概略斜視図である。
【図2】図1のエスカレータにおけるエスカレータの欄干支持装置の位置を示す概略側面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿ったエスカレータの欄干支持装置を示す断面図である。
【図4】図3のエスカレータの欄干支持装置のパネル保持具と押さえ板とを示す斜視図である。
【図5】この発明のエスカレータの欄干支持装置の別の実施の形態を示す図3と同様の断面図である。
【図6】この発明のエスカレータの欄干支持装置のまた別の実施の形態を示す概略側面図である。
【図7】図6の線VII−VIIに沿ったエスカレータの欄干支持装置の正面断面図である。
【図8】図6の線VIII−VIIIに沿ったエスカレータの欄干支持装置の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1および2において、エスカレータは、乗場1から延びて矢印Aで示す踏段移動方向に循環して移動する多数の踏段2と、踏段2の両側に踏段移動方向Aに沿って設けられ、スカートガード3、インナーデッキ4およびアウターデッキ5で構成されたデッキ6と、デッキ6内で踏段移動方向Aに沿ってほぼ等間隔に設けられたこの発明のエスカレータの欄干支持装置7と、欄干支持装置7によって支持されてデッキ6から上方に延びた欄干パネル8と、欄干パネル8の周囲に設けられて、踏段2と同期して走行する手摺9とを備えている。デッキ6には、スカートガード3の上部に踏段2を照明する照明装置21が設けられている。
【0010】
図3および4にはエスカレータの欄干支持装置7の詳細構造の一例を示してある。欄干支持装置7は、デッキ6内に設けられて、欄干パネル8を受け入れて支持する支持溝10を持つほぼU字形断面のパネル保持具11を備えている。パネル保持具11は、そのフランジ12によって、デッキ6内でトラス13に固着されたブラケット14に取付ボルト15によって取り付けられている。欄干パネル8は下縁部がパッキング16によって覆われてパネル保持具11の支持溝10内に挿入されており、後に詳しく説明する押さえ板17のくさび作用によって支持溝10内に押圧されて支持されている。
【0011】
パネル保持具11の頂部の欄干パネル8の外側には、欄干パネル8に沿って設けられたアウターデッキ5が、ビスと止め金などの締結具18によって固定されており、また欄干パネル8の内側には同様の締結具19によってインナーデッキ4が固定されている。インナーデッキ4の内側には、パネル保持具11に取り付けられたブラケット20によって照明装置21が設けられていて、インナーデッキ4の照明装置21に対応する位置には、アクリル板などの光拡散板22が設けられている。
【0012】
欄干支持装置7において、パネル保持具11のほぼU字形の支持溝10の中に設けられている押さえ板17は、欄干パネル8にパッキング16を介して対向する支持面23と、支持面23に対して反対側の面に設けられて支持溝10の欄干パネル8を支持してない側の内面24との間にくさび形成空間25を形成するくさび斜面26と、くさび斜面26の終端部(図3で上部)に段差部として設けられ、欄干パネル8に対して垂直な端面27とを備えている。パネル保持具11の支持溝10の開口部は、欄干パネル8に向かって延びたフランジ部28を持っていて、フランジ部28の内面は、押さえ板17の端面27に対向して当接する押さえ板係止案内面29となっている。押さえ板係止案内面29は、欄干パネル8を含む面に対して垂直である。
【0013】
欄干支持装置7はさらに、押さえ板17のくさび斜面26とパネル保持具11の支持溝10の内面24との間に形成されているくさび形成空間25内に受け入れられて、押さえ板17をパネル保持具11と欄干パネル8との間に押し込む押し込みボルト30を備えている。押し込みボルト30は、欄干パネル8を含む面に平行な面内で、下から上に垂直方向に延びるようにパネル保持具11の支持溝10の内面24に接して配置されており、くさび形成空間25内に侵入する円錐形の先端31を持っている。先端31の斜面の傾斜角度はくさび斜面26と同じ傾斜角度である。押し込みボルト30の幹部32にはパネル保持具11に形成したネジ穴33にねじ係合したネジ部34が設けられていて、ストッパナット35も設けられている。
【0014】
このように構成された欄干支持装置7において、押し込みボルト30の頭部を適当な工具で回転させて進退させれば、押し込みボルト30の円錐形の先端31の円錐面がくさび形成空間25に対して進退し、押さえ板17のくさび斜面26上を滑って、押さえ板17をパネル保持具11の逃げ止め係り代である押さえ板係止案内面29の案内作用によって欄干パネル8を含む面に対して垂直方向に案内して、押さえ板17を欄干パネル8に対して押圧あるいは後退させ、欄干パネル8を欄干支持装置7に対して着脱することができるようになる。
【0015】
このように、この欄干支持装置7によれば、欄干支持装置7をトラス13の上方のスペースを生かして配置できるので、デッキ6内の省スペース化を実現することができ、例えば照明装置21のためのスペースをデッキ6内に確保することができる。また、押し込みボルト30は、欄干パネル8を含む面に垂直な方向ではなく、欄干パネル8の面に平行に下から上に向かって延びており、下方から締付けることができるようにされているので、省スペース化がさらに促進できる。
【0016】
実施の形態2.
図5に示すエスカレータの欄干支持装置7においては、パネル保持具11のフランジ部28上で支持溝10内に形成された押さえ板係止案内面36が、欄干パネル8を含む面に対して垂直でなく傾斜しており、図示の例では踏段移動方向A(図2参照)に平行な軸心を持つ円筒面である。また、支持溝10内に設けられた押さえ板37が、円筒レンズ形あるいは蒲鉾形の部材であって、欄干パネル8に対向する平坦な支持面38と、支持溝10内で押さえ板係止案内面36と接触する円筒面であるくさび斜面39とを備えていて、押さえ板37がくさびの作用をする。
【0017】
欄干支持装置7はまた、押さえ板37に接触して、押さえ板37をパネル保持具11の押さえ板係止案内面36に対して押圧させる押し込みボルト40を備えている。押し込みボルト40は、その軸心が踏段移動方向Aに対して垂直な平面内で欄干パネル8を含む面に対して傾斜していて、ほぼ下から上に斜めに延びていて、パネル保持具11にネジ部41でねじ係合して支持溝10内に入り込み、押さえ板37のくさび斜面39とは反対側の円筒面である押圧面42に当接した半球状の先端43を持っている。押し込みボルト40にはストッパナット44も設けられている。その他の構成は図1〜4に示すものと同様である。
【0018】
このように、この欄干支持装置7においても、欄干支持装置7をトラス13の上方のスペースを生かして配置できるので、デッキ6内の省スペース化を実現することができ、例えば照明装置21のためのスペースをデッキ6内に確保することができる。特に、押し込みボルト40は、欄干パネル8を含む面に垂直な方向からでなく、ほぼ下方から締付けることができるようになるので、省スペース化がさらに促進できる。また、くさび作用をする押さえ板37、パネル保持具11の押さえ板係止案内面36および押し込みボルト40が、いずれもデッキ6内で欄干パネル8の外側に配置されていて、欄干支持装置7がインナーデッキ4内のスペースを占めてしまうことがない。
【0019】
実施の形態3.
図6〜8に示すエスカレータの欄干支持装置7においては、押し込みボルト45が、パネル保持具11に対して踏段移動方向Aに進退するものであり、パネル保持具11の支持溝10内に設けられた押さえ板係止案内面46および47ならびに押さえ板48および49が、踏段移動方向Aに複数個直列に配置されている。すなわち、押さえ板係止案内面46および47は、パネル保持具11の支持溝10の内面24の、パッキング16を介して欄干パネル8を支持する側の面と対向する面に形成されており、支持溝10内に挿入された欄干パネル8との間に同方向に傾斜した同様の2つのくさび形成空間を形成している。
【0020】
押さえ板48および49はそれぞれ、欄干パネル8にパッキング16を介して対向する平坦な支持面50と、支持溝10内でそれぞれの押さえ板係止案内面46および47と接触するくさび斜面51と、支持面50とくさび斜面51との間でくさび形の先端を形成する先端面52と、くさび形の後端を形成する後端面53とを備えている。押さえ板係止案内面46および47には、それぞれ押さえ板48および49が接触できるように配置されていて、押さえ板48の先端面52は押さえ板49の後端面53に当接しており、押さえ板49の先端面52とパネル保持具11の端壁54との間には遊び空間55が設けられている。押さえ板48の後端面53は、パネル保持具11の端壁56にねじ係合した押し込みボルト45の先端57に当接している。
【0021】
2つの押さえ板48および49の支持面50と、パッキング16で覆われた欄干パネル8との間には共通の一枚の当て板58が設けられている。当て板58は、その両端面でパネル保持具11の端壁54および56の内面に当接し、両側面でパネル保持具11の支持溝10の底壁とフランジ部の内面に当接していて、所定の位置に保持される。その他の構成は図1〜5に示すものと同様である。
【0022】
このように構成された欄干支持装置7において、押し込みボルト45を回転させて進めれば、その先端57が押さえ板48の後端面53を押し、押さえ板48はくさび斜面51を押さえ板係止案内面46に沿って滑らせつつ、欄干パネル8に向かって押圧される。これと同時に押さえ板48は先端面52で押さえ板49の後端面53を押圧するため、押さえ板49も同様に欄干パネル8に向かって押圧される。2つの押さえ板48および49のくさび作用による押圧力は共通のあて板58を介して欄干パネル8に作用してこれを支持することができる。押し込みボルト45を緩めれば、欄干パネル8を欄干支持装置7から容易に取り外すことができる。
【0023】
このように、この欄干支持装置7によれば、欄干支持装置7をトラス13の上方のスペースを生かして配置できるので、デッキ6内の省スペース化を実現することができ、例えば照明装置21のためのスペースをデッキ6内に確保することができる。特に、押し込みボルト45は、欄干パネル8を含む面に垂直な方向からでなく、踏段移動方向から締付けることができるようになるので、省スペース化がさらに促進できる。また押え板48および49はエスカレータの傾斜部では重力によって自身でくさび空間内に滑り落ちるので、押し込みボルト45を締付けなくても、欄干パネル8の滑り落ちを防止できる。
【0024】
以上に図示して説明したエスカレータの欄干支持装置は単なる例であって様々な変形が可能であり、またそれぞれの具体例の特徴を全てあるいは選択的に組み合わせて用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明はエスカレータの欄干支持装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0026】
6 デッキ、7 欄干支持装置、8 欄干パネル、10 支持溝、11 パネル保持具、17、37、48、49 押さえ板、23、38、50 支持面、24 内面、25 くさび形成空間、26、39、51 くさび斜面、30、40、45 押し込みボルト、29、36、46、47 押さえ板係止案内面、31、43 先端、A 踏段移動方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの踏段移動方向に沿って設けられたデッキ内に設けられ、欄干パネルを受け入れて支持する支持溝を持つパネル保持具を備えたエスカレータの欄干支持装置において、
上記パネル保持具の上記支持溝内に設けられ、くさび作用によって上記支持溝内に挿入された上記欄干パネルを押圧して支持する押さえ板を備えたことを特徴とするエスカレータの欄干支持装置。
【請求項2】
上記押さえ板を上記パネル保持具と上記欄干パネルとの間に押し込む押し込みボルトを備えたことを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項3】
上記パネル保持具が押さえ板係止案内面を備え、
上記押さえ板が、上記欄干パネルに対向する支持面と、上記支持溝の内面との間に上記押し込みボルトを受け入れるくさび形成空間を形成するくさび斜面とを備え、
上記押し込みボルトが、上記くさび形成空間内に侵入する円錐形の先端を持つことを特徴とする請求項2に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項4】
上記パネル保持具が上記支持溝内に押さえ板係止案内面を備え、
上記押さえ板が、上記欄干パネルに対向する支持面と、上記支持溝内で上記押さえ板係止案内面と接触するくさび斜面とを備え、
上記押し込みボルトが、上記押さえ板に接触し、上記押さえ板を上記押さえ板係止案内面に対して押圧させる先端を持つことを特徴とする請求項2に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項5】
上記パネル保持具が上記支持溝内に押さえ板係止案内面を備え、
上記押さえ板が、上記欄干パネルに対向する支持面と、上記支持溝内で上記押さえ板係止案内面と接触するくさび斜面とを備え、
上記押し込みボルトが、上記パネル保持具に対して踏段移動方向に進退するものであることを特徴とする請求項2に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項6】
上記押さえ板係止案内面および上記押さえ板が複数個直列に、踏段移動方向に列べて配置されていることを特徴とする請求項5に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項7】
上記押し込みボルトが、上記欄干パネルを含む面に平行な面内に配置されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のエスカレータの欄干支持装置。
【請求項8】
上記押し込みボルトが、下から上に垂直方向に延びていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のエスカレータの欄干支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−32050(P2011−32050A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180607(P2009−180607)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】