説明

エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイド

【課題】金属及び、樹脂摩耗粉を、ハンドレール裏面の駆動輪走行範囲に付着させないことにより、ハンドレール裏面の摩擦係数を維持することで、ハンドレール裏面の清掃を必要としないエスカレーターハンドレール摺動走行ガイドを提供する。
【解決手段】エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、摺動走行ガイド中央部の凹部幅Aとハンドレールを駆動する駆動輪幅Bの関係が、少なくともA>(B+α)である構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエスカレーターにおいては、乗客を乗せるステップと同期して同方向に移動するハンドレールを設け、このハンドレールにより乗客が転倒しないようにしている。このハンドレールは、ハンドレール駆動装置部における駆動輪でハンドレールを挟圧して、駆動輪とハンドレール裏面との摩擦力でハンドレールを駆動させている。
【0003】
また、ハンドレールは、無端状で、金属及び、樹脂材の摺動走行ガイド上を摺動し回転する。このハンドレールの走行においては、ハンドレールの裏面は、摺動走行ガイドとの摩擦により、摺動走行ガイド及び、ハンドレールの裏面自身を摩耗させ、ハンドレール裏面は、摺動ガイド材の金属摩耗粉及び、樹脂摩耗粉、ハンドレール裏面摩耗粉が付着する。
【0004】
ここで、ハンドレール裏面に金属摩耗粉及び、樹脂摩耗粉などの摩耗粉が付着するとハンドレール裏面の摩擦係数が低下し、前記駆動輪とハンドレール間でスリップが生じ、ハンドレールの停止事故に繋がる。
【0005】
従って、ハンドレール裏面における駆動輪走行面は、摩擦係数を一定以上維持する必要がある。
【0006】
このような、前記ハンドレール裏面の駆動輪走行面の摩擦係数の維持方法としては、エスカレーターを停止させハンドレールを取外し、ブラシでハンドレール裏面を清掃する方法、また、エスカレーターを稼動させて清掃する方法としては、円筒上のブラシを備えた裏面清掃器具を用いた方法がある(特許文献1)。
【0007】
また、清掃ブラシ基盤に調節ネジを設け、ブラシとハンドレール裏面の接触圧力の調節設備を設けた裏面清掃器具がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−48484号 (段落19〜24、図3)
【特許文献2】特開平5−246679号(段落12、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記ハンドレール裏面の清掃方法においては、ブラシにより除去した摩耗粉、ゴミ等を自動でハンドレールの外側に排出できないこと。またさらには、ブラッシングによりハンドレール裏面を傷つけてしまう。
【0009】
また、一旦、ハンドレール裏面に金属及び、樹脂摩耗粉が付着すると、ハンドレール走行時ハンドレール裏面は、駆動輪上を通過する時、駆動輪走行範囲においては、駆動輪の挟圧力により摩耗粉が押し固められ、ブラシでは全てを除去するのは困難である。
【0010】
本発明の目的は、金属及び、樹脂摩耗粉が、ハンドレール裏面の駆動輪走行範囲に付着させないことにより、ハンドレール裏面の清掃を必要としないエスカレーターハンドレール摺動走行ガイドを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、
本発明の請求項1では、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイド中央部の凹部幅Aとハンドレールを駆動する駆動輪幅Bの関係が、少なくともA>(B+α)である構造にすることを特徴とした。これにより、ハンドレール裏面は、駆動輪走行面は、摺動走行ガイドと接触することなく走行することができる。
【0012】
また請求項2では、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイドの断面方向に少なくとも1つ以上の凹み部と、凹み部は摺動走行ガイドの断面方向に傾斜をもつ構造にしたことを特徴とした。これにより、ハンドレール裏面の摺動走行ガイド接触部においては、摺動走行ガイドの摩耗粉が前記凹み部に落ちる。
【0013】
また、前記凹み部を摺動走行ガイド断面方向に傾斜を持つ構造とした為、ハンドレール走行振動により、摺動走行ガイドの摩耗粉が摺動走行ガイド上に溜まることなく、ハンドレールが走行することができる。
【0014】
また請求項3では、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイド材は、導電性物質を含み、導電性を有することを特徴とした。 これによりハンドレールの裏面と摺動走行ガイド間で静電気を発生させることなくハンドレールが走行することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1による効果としては、
ハンドレール裏面の駆動輪走行面は、摺動走行ガイドと接触することなく走行することにより、ハンドレール裏面の駆動輪走行面に、摺動走行ガイドの摩耗粉が付着させることなく、ハンドレールを走行することができる。これにより、ハンドレール裏面の清掃をすることなくハンドレール裏面の摩擦係数を維持することができる。
【0016】
請求項2による効果としては、
摺動走行ガイドの断面方向に少なくとも1つ以上の凹み部と、凹み部は摺動走行ガイドの断面方向に傾斜をもつ構造にしたことにより、ハンドレール裏面の摺動走行ガイド接触部においては、摺動走行ガイドの摩耗粉が前記凹み部に落ちること。
【0017】
また、前記凹み部を摺動走行ガイド断面方向に傾斜を持つ構造とした為、ハンドレール走行振動により、摺動走行ガイドの摩耗粉が摺動走行ガイド上に溜まることなく、ハンドレールが走行する為、摺動走行ガイド摩耗粉は、常に摺動走行ガイド上から排泄される為、摩耗粉とハンドレール裏面のガイド摺動部への摩耗粉付着を低減させ、さらに摩耗粉がハンドレール裏面の駆動輪走行面に転写することなくハンドレールが走行出来る。これにより、ハンドレール裏面の摩擦係数を維持することができる。
【0018】
請求項3による効果としては、
摺動走行ガイド材は、導電性物質を含み、導電性を有することを特徴とした。上記構造とすることで、ハンドレールの裏面と摺動走行ガイド間で静電気を発生させることなくハンドレールが走行でき、摺走行ガイド摩耗粉が静電気によりハンドレール裏面に付着することをなくすことが可能となる。これにより、ハンドレール裏面の摺動走行ガイドとの接触部分においても摩耗粉の付着を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明になるハンドレールの摺動走行面の清掃方法の実施形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るエスカレーターの全体概要図。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係るハンドレール駆動装置部における、ハンドレール裏面の駆動輪走行面と、駆動輪の概要図。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係る摺動走行ガイドの断面図及び、ハンドレール裏面における駆動輪走行面を示すハンドレール断面図。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態に係る摺動走行ガイドの断面図・側面図及び、斜視図。
【0024】
図5は、ハンドレール走行におけるハンドレール裏面と摺動走行ガイド間での静電気発生概要を示す図。
【0025】
図1において、一般に、搬送装置、例えばエスカレーター1のハンドレール2は図1に示すように、上部機械室内に設けられたエスカレーター駆動用ドライビングマシン101駆動回転を、ドライビングチェーン102でハンドレール駆動スプロケット103の回転をハンドレール駆動チェーン104でハンドレール駆動装置105に伝達し、このハンドレール駆動装置105に伝達されて回転する駆動輪106で、無端状に配置されたハンドレール2を挟圧し、駆動輪106の回転を利用してハンドレール2は、摺動走行ガイド3上を稼動する。
【0026】
図2において、ハンドレール駆動装置部105のハンドレール裏面の駆動輪走行面201と駆動輪106の間において、ハンドレール2には、ハンドレール2の自重及び、摺動走行ガイド面上(図示せず)を走行することにより、ハンドレール走行方向とは逆むきの走行抵抗F4が生じる。また、駆動輪106は、ハンドレール2を走行させるグリップ力を保つ為、ハンドレールに挟圧力P5を負荷する構造である。ここで、ハンドレール裏面の駆動輪走行面201の摩擦係数μ6が著しく低下すると、前記駆動輪106と、ハンドレール裏面の駆動輪走行面201の間で摩擦力が無くなり、スリップが生じる。以上のような概要によりハンドレールは走行する。
【0027】
図3において、摺動走行ガイド3は、ハンドレール裏面のハンドレール湾曲部202と接触し、摺動走行ガイド3は、中央部が凹型301で、ハンドレール2の駆動輪走行面201と否接触となる構成とし、中央部の凹型部301で摺動走行ガイド3とエスカレーター欄干7とを締結ねじ8で締結される構造とした。
【0028】
また、摺動走行ガイド3は、ハンドレールの駆動輪走行面201と否接触となるように摺動走行ガイド凹部の非接触部寸法A302と駆動輪寸法B107の関係をA>(B+α)となる構造とした。上記構造により、ハンドレール2が走行することが可能な為、ハンドレール裏面の駆動輪走行面201上に、摺動走行ガイド3の摩耗粉が付着しないことにより、ブラシ清掃などを使用することなく、駆動輪走行面201の摩擦係数を維持することができる。
【0029】
図4において、摺動走行ガイド3は、断面方向に、凹型溝303を構成した。また、前記凹型溝303は、ガイド断面方向に傾斜勾配を持つ構造とした。
【0030】
上記構造により、摺動走行ガイド3の摩耗粉は、ハンドレール2の走行に伴い、凹型溝303に運ばれる。また、凹型溝303は、傾斜勾配構造とすることにより、摩耗粉が、摺動走行ガイド3上に堆積することなく、ハンドレール2が走行できる為、摺動走行ガイド3の摩耗粉は、常に摺動走行ガイド3上から排泄される為、摩耗粉とハンドレール裏面のガイド摺動部(図示せず)への摩耗粉の再付着をさせないことが可能となる。これにより、摩耗粉がハンドレール裏面のガイド摺動部(図示せず)に過剰に堆積することが無いため、ハンドレール裏面の駆動輪走行面201に転写することなくハンドレール2が走行可能となる。これにより、ハンドレール裏面の摩擦係数を維持することができる。
【0031】
図5において、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイド材は、カーボンの粒子を材料中に含ませる構造とした。これにより、摺動走行ガイドは、導電性を有する。上記構造にすることにより、ハンドレールの裏面と摺動走行ガイド間で静電気9を発生させることなくハンドレールが走行することが可能となる。これにより、静電気9によりハンドレール裏面に付着することをなくすことができ、ハンドレール裏面の摺動走行ガイド3との接触部分において摩耗粉の付着を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るエスカレーターの全体概要図。
【図2】本発明の実施形態に係るハンドレール駆動装置部における、ハンドレール裏面の駆動輪走行面と、駆動輪の概要図。
【図3】本発明の実施形態に係る摺動走行ガイドの断面図及び、ハンドレール裏面における駆動輪走行面を示すハンドレール断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る摺動走行ガイドの断面図・側面図及び、斜視図。
【図5】ハンドレール走行におけるハンドレール裏面と摺動走行ガイド間での静電気発生概要を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 エスカレーター
101 エスカレーター駆動用ドライビングマシン
102 ドライビングチェーン
103 ハンドレール駆動スプロケット
104 ハンドレール駆動チェーン
105 ハンドレール駆動装置
106 駆動輪
107 駆動輪寸法B
2 ハンドレール
201 ハンドレール裏面の駆動輪走行面
202 ハンドレール裏面のハンドレール湾曲部
3 摺動走行ガイド
301 摺動走行ガイドの中央部凹型
302 ガイド凹部の非接触部寸法A
303 凹型溝
4 走行抵抗F
5 挟圧力P
6 摩擦係数μ
7 エスカレーター欄干
8 締結ねじ
9 静電気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイド中央部の凹部幅Aとハンドレールを駆動する駆動輪幅Bの関係が、少なくともA>(B+α)の関係である構造にすることを特徴とする、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイド。
【請求項2】
エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイドの断面方向に少なくとも1つ以上の凹み部と、凹み部は摺動走行ガイドの断面方向に傾斜をもつ構造にしたことを特徴とする、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイド。
【請求項3】
エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイドにおいて、
摺動走行ガイド材は、導電性物質を含み、導電性を有することを特徴とする、エスカレーターハンドレールの摺動走行ガイド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−238263(P2007−238263A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62601(P2006−62601)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】