説明

エスカレーター制御装置

【課題】エスカレーターの一定期間内の運転状況を解析して、運転制御を自動で行うことができるエスカレーター制御装置を、簡潔な構成により得る。
【解決手段】エスカレーター制御装置において、エスカレーターを駆動するモーターと、前記モーターを流れるモーター電流値を検出するモーター電流検出装置と、前記モーター電流検出装置により検出された所定の一定期間内における前記モーター電流値を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記モーター電流値から前記エスカレーターの運転状況を解析する解析手段と、前記解析手段により解析された前記所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況に基づいて、前記モーターの動作を制御するモーター制御装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーター制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエスカレーター制御装置においては、乗降口で人を検出したら起動し、所定時間が経過したら停止するとともに、エスカレーターの運転方向、運転速度及び運転時間は係員が乗降口付近のスイッチの操作や監視室からの遠隔操作で設定されるものや、運転速度や運転方向は予め設定された内容に従い運転され、運転方向、運転時間及び運転速度を変更したい場合等は、スイッチ操作等により行うようにしたものが知られている。
また、従来におけるエスカレーター制御装置においては、乗降口付近に設置された乗客センサーにより検出される乗客の検出回数と重量センサーにより検出される重量と監視カメラからの画像とを一定期間、日付、曜日、時間毎に記憶し、この一定期間の記憶に基づき、エスカレーターの運転状況を解析して、運転方向、運転速度、自動運転時間及び運転傾向を設定した運転スケジュールデータテーブルを運転スケジュールデータ作成手段により作成し、この作成された運転スケジュールデータテーブルに従って、エスカレーター運転制御手段により、運転制御を行うようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−143450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のエスカレーター制御装置においては、エスカレーターの運転方向、運転時間及び運転速度を変更したい場合等は、係員がスイッチ操作などを行う必要があり、煩雑な手数が掛かるという課題や、使用頻度に関係なく設定された運転方向、運転速度及び運転時間に従って運転されるため、輸送効率は必ずしも良いとはいえないという課題がある。
また、特許文献1に示された従来におけるエスカレーター制御装置においては、乗客センサー、重量センサー及び監視カメラが構成として必要であり、これらのセンサーを備えたエスカレーターにしか適用できないという課題や、これらのセンサーを備えることにより構成が複雑となるという課題がある。
【0005】
この発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、エスカレーターの一定期間内の運転状況を解析して、運転制御を自動で行うことができるエスカレーター制御装置を、簡潔な構成により得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、エスカレーター制御装置においては、エスカレーターを駆動するモーターと、前記モーターを流れるモーター電流値を検出するモーター電流検出装置と、前記モーター電流検出装置により検出された所定の一定期間内における前記モーター電流値を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記モーター電流値から前記エスカレーターの運転状況を解析する解析手段と、前記解析手段により解析された前記所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況に基づいて、前記モーターの動作を制御するモーター制御装置と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明はエスカレーター制御装置において、エスカレーターを駆動するモーターと、前記モーターを流れるモーター電流値を検出するモーター電流検出装置と、前記モーター電流検出装置により検出された所定の一定期間内における前記モーター電流値を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記モーター電流値から前記エスカレーターの運転状況を解析する解析手段と、前記解析手段により解析された前記所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況に基づいて、前記モーターの動作を制御するモーター制御装置と、を備えた構成としたことで、エスカレーターの一定期間内の運転状況を解析して、運転制御を自動で行うことができるエスカレーター制御装置を、簡潔な構成により得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1及び実施の形態2に関するもので、エスカレーター制御装置の全体構成を示すブロック図である。図2は、この発明の実施の形態1に関するもので、エスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
図において、エスカレーター本体1にはエスカレーターを駆動するモーター2が設けられており、このモーター2の動作はモーター制御装置3により制御されている。前記モーター2を流れるモーター電流値はモーター電流検出装置4により検出され、このモーター電流検出装置4により検出された前記モーター電流値は、記憶装置5により記憶される。この記憶装置5により記憶された前記モーター電流値は、演算装置6により曜日毎にその平均値が算出され、ここで算出された平均値も前記記憶装置5に記憶される。解析手段7においては、前記モーター電流値及びモーター電流値の前記平均値から前記エスカレーターの運転状況が解析される。なお、ここでいう運転状況とは、具体的には、エスカレーターを利用する乗客数並びにエスカレーターの運転方向及び運転時間のことを指す。そして、前記エスカレーター本体1の図示しない上側乗降口及び下側乗降口付近には、乗降口を通過する乗客を検出する乗客センサー8が、それぞれ設けられている(一方の図示は省略されている)。
【0009】
9は、同一の階床を結んで設置され、前述の構成を持つ複数のエスカレーター制御装置同士を、互いに通信可能に接続する通信装置で、前記モーター電流値から前記解析手段7により解析されたエスカレーターの運転状況を互いに通信する。そして、各エスカレーター制御装置の前記通信装置9には、乗客の誘導を行う誘導手段であるアナウンス装置及び行先表示装置が設けられている。すなわち、10は前記通信装置9から出力される情報を受けて音声アナウンスを行うアナウンス装置、11は前記通信装置9から出力される情報を受けて行先表示を行う行先表示装置である。
【0010】
可変速運転するエスカレーターにおいて通常の自動運転は以下のようにして行われる。
停止中にエスカレーターに乗り込もうとして人が近づいたとき前記乗客センサー8が人を検出すると、検出した情報を元に運転方向を決定して予め設定された運転速度で前記モーター制御装置3により前記モーター2を駆動してエスカレーターを運転させる。すなわち、前記下側乗降口付近に設置された前記乗客センサー8が人を検知した場合には、UP(上昇)方向に運転され、前記上側乗降口付近に設置された前記乗客センサー8が人を検知した場合には、DN(下降)方向に運転される。
その後、予め設定された運転時間を経過すると、前記モーター制御装置3により前記モーター2を停止してエスカレーターを停止させる。
【0011】
そして、運転状況の解析は、以下のようにして行われる。
まず、前述した通常の自動運転中における前記モーター2を流れる前記モーター電流値を前記モーター電流検出装置4により検出して、所定の一定期間内における前記モーター電流値を前記記憶装置5に記憶する。
次に、前記解析手段7において、記憶された前記モーター電流値に基づいてエスカレーターの運転状況を解析する。具体的には、前記モーター電流値の向き、例えば電源として三相交流を用いている場合にはその相順、から、エスカレーターの運転方向、すなわち人の流れる方向、を解析する。そして、前記モーター電流値の絶対値から前記モーター2にかかる負荷を求めることにより、エスカレーターに乗っている乗客数を解析する。また、前記モーター電流値の継続時間からエスカレーターの運転時間を解析する。
また、前記演算装置6により曜日毎に前記モーター電流値の平均値が算出され、この算出された平均値も前記記憶装置5に記憶されるとともに、この平均値を元に前述と同様にして、前記解析手段7は曜日毎のエスカレーターの運転方向、乗客数、運転時間を解析する。
【0012】
以上のようにして前記所定の一定期間内の曜日毎、時間帯毎に解析されたエスカレーターの運転状況に基づき、前記モーター制御装置3は前記モーター2の動作を制御することにより、エスカレーターの運転を制御する。
具体的には、運転方向について、解析された人の流れる方向に基づいて設定、すなわち、上方向に向かう人が多い時間帯はUP(上昇)方向に設定し、下方向に向かう人が多い時間帯はDN(下降)方向に設定する。そして、運転速度については、人の量が多い時間帯に予め少し運転速度を上げるように設定して、輸送効率を上げる。また、運転時間については、人の量が少ない時間帯に予め自動運転時間を短くなるように設定して、エネルギーの消費を削減する。
【0013】
図2は、この実施の形態におけるエスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
エスカレーター起動中において(ステップS0)、ステップS1で前記モーター電流検出装置4により前記モーター2を流れる前記モーター電流値を検出する。
次に、ステップS2に移り、ステップS1で検出した前記モーター電流値の絶対値が、所定の電流値以上であるか否かを判断する。ここで、判断の基準となる所定の電流値は、過剰負荷か否かの判断基準である所定の乗客数から予め算出される。つまり、このステップS2においては、エスカレーターに乗っている乗客数が所定の乗客数以上であるか否かについて判断がなされる。
ステップS2の判断において、前記モーター電流値の絶対値が前記所定の電流値を超えていないと判断された場合は、エスカレーターに乗っている乗客数が前記所定の乗客数を超えていないと判断して、ステップS6へと進み、エスカレーターの運転を継続する。
一方、ステップS2の判断において、前記モーター電流値の絶対値が前記所定の電流値を超えていると判断された場合は、エスカレーターに乗っている乗客数が前記所定の乗客数を超えていると判断して、ステップS3へと進む。
ステップS3では、前記通信装置9は、エスカレーターに乗っている乗客数が前記所定の乗客数を超えていると判断されたという情報を受けて、前記アナウンス装置10より、乗客に対して当該号機とは別の他号機へと移動するように促す旨のアナウンスを行う。
そして、ステップS4へと移行して、前記通信装置9は、前記行先表示装置11より、乗客に対して当該号機とは別の他号機へと移動するように促す旨の行先表示を行った後、ステップS5へと進む。
このステップS5においては、前記当該号機の前記通信装置9は、前記他号機の前記通信装置9へと前記当該号機の運転状況、特に負荷状況(エレベーターに乗っている乗客数に関する情報)を送信する。前記他号機の前記通信装置9がこの情報を受け取ると、前記他号機の前記モーター制御装置3はエスカレーターの運転速度を上げるように前記他号機の前記モーター2を制御する。
そして、ステップS6へと移行してエスカレーターの運転を継続し、再びステップS1からステップS6までの工程を繰り返す。
【0014】
以上のように構成されたエスカレーター制御装置においては、エスカレーターを駆動するモーターを流れる電流値を元にして、所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況を解析することにより運転制御を自動で行うことで、人を無駄なく輸送することができるエスカレーター制御装置を、簡潔な構成により得ることが可能である。
また、所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況解析情報を元に、運転制御を自動で行うことができるため、エスカレーターの運転時間、運転速度や運転方向を変更するために係員がスイッチ操作などを行う必要がなく、煩雑な手数が掛かることがない。
さらにまた、ある特定のエスカレーター号機に載っている乗客数が所定の乗客数を超えた場合に、乗客を他号機へと誘導するとともに、乗客が誘導された他号機の運転速度を上げることにより、ある特定のエスカレーター号機への負荷集中を避け、人を効率よく輸送することができる。
【0015】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に関するもので、エスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
ここで説明する実施の形態2は、実施の形態1の構成において、モーターの電流値が所定の正常値の範囲外となった場合に、当該エスカレーターを停止するとともに、他号機のエスカレーターへと乗客を誘導するように構成したものである。
【0016】
図3は、この実施の形態におけるエスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
エスカレーター起動中において(ステップS10)、ステップS11で前記モーター電流検出装置4により前記モーター2を流れる前記モーター電流値を検出する。
次に、ステップS12に移り、ステップS11で検出した前記モーター電流値が、所定の正常値の範囲内であるか否かを判断する。このステップS12の判断において、前記モーター電流値が前記所定の正常値の範囲内であると判断された場合は、エスカレーターに異常は発生していないと判断して、ステップS13へと進んでエスカレーターの運転を継続し、ステップS11へと戻る。
一方、ステップS12の判断において、前記モーター電流値が前記所定の正常値の範囲内でないと判断された場合は、エスカレーターに異常が発生していると判断して、ステップS14へと進み、当該エスカレーター号機の運転を停止する。
その後、次のステップS15では、前記通信装置9は、前記モーター電流値が前記所定の正常値の範囲内でないと判断されたという情報を受けて、前記アナウンス装置10より、乗客に対して当該号機に異常が発生している旨及び当該号機とは別の他号機へと移動するように促す旨のアナウンスを行う。
そして、ステップS16へと移行して、前記通信装置9は、前記行先表示装置11より、乗客に対して当該号機に異常が発生している旨及び当該号機とは別の他号機へと移動するように促す旨の行先表示を行った後、ステップS17へと進む。
このステップS17においては、前記当該号機の前記通信装置9は、前記他号機の前記通信装置9へと前記当該号機に異常が発生している旨の情報を送信する。前記他号機の前記通信装置9がこの情報を受け取ると、前記他号機の前記モーター制御装置3はエスカレーターの運転速度を上げるように前記他号機の前記モーター2を制御する。
【0017】
以上のように構成されたエスカレーター制御装置においては、ある特定のエスカレーター号機のモーター電流値が所定の正常値の範囲外となった場合に、当該号機を停止して乗客を他号機へと誘導するとともに、乗客が誘導された他号機の運転速度を上げることにより、エスカレーターの異常を検出することができ、かつ、異常発生時においても人を効率よく輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1及び実施の形態2におけるエスカレーター制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
【図3】この発明の実施の形態2におけるエスカレーター制御装置の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0019】
1 エスカレーター本体
2 モーター
3 モーター制御装置
4 モーター電流検出装置
5 記憶装置
6 演算装置
7 解析手段
8 乗客センサー
9 通信装置
10 アナウンス装置
11 行先表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターを駆動するモーターと、
前記モーターを流れるモーター電流値を検出するモーター電流検出装置と、
前記モーター電流検出装置により検出された所定の一定期間内における前記モーター電流値を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記モーター電流値から前記エスカレーターの運転状況を解析する解析手段と、
前記解析手段により解析された前記所定の一定期間内におけるエスカレーターの運転状況に基づいて、前記モーターの動作を制御するモーター制御装置と、を備えたことを特徴とするエスカレーター制御装置。
【請求項2】
前記記憶装置により記憶された前記モーター電流値の曜日毎の平均値を算出する演算装置を備え、
前記記憶装置は、前記演算装置により算出された前記平均値を記憶し、
前記解析手段は、前記記憶装置に記憶された前記平均値から前記エスカレーターの曜日毎の運転状況を解析することを特徴とする請求項1に記載のエスカレーター制御装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記モーター電流値の向きから前記エスカレーターの運転方向を解析し、前記モーター電流値の絶対値から前記エスカレーターに乗っている乗客数を解析し、前記モーター電流値の継続時間からエスカレーターの運転時間を解析することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエスカレーター制御装置。
【請求項4】
前記解析手段により解析された前記エスカレーターの前記運転状況を当該エスカレーター号機とは別の他号機と互いに通信する通信装置を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエスカレーター制御装置。
【請求項5】
前記通信装置に、乗客を誘導する誘導手段を備え、
前記モーター電流値の絶対値が所定の電流値以上であると判断された場合に、前記誘導手段により前記他号機へと乗客を誘導するとともに、前記他号機の運転速度を上げることを特徴とする請求項4に記載のエスカレーター制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143647(P2009−143647A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320715(P2007−320715)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】