エスカレータ枠の製造方法
【課題】必要な強度を確保しつつ、製作が容易で、かつ高精度のエスカレータ枠の製造方法の提供。
【解決手段】上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、型鋼(10)の1つの構成辺(10b)を残し他の構成辺(10a)に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部R1を含んで形成される切込み11を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成するようにしたものである。
【解決手段】上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、型鋼(10)の1つの構成辺(10b)を残し他の構成辺(10a)に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部R1を含んで形成される切込み11を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成するようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上階床と下階床との間に跨って架設されるエスカレータ枠は、複数の型鋼が組み合わされ、いわゆるトラス構造により形成される。このようなエスカレータ枠には、上階床と平行となる上部平行部、下階床と平行となる下部平行部、および上部平行部と下部平行部とを結ぶ傾斜部とを有するとともに、上部平行部と傾斜部とが交わる位置、および下部平行部と傾斜部とが交わる位置には所定角度の折点が形成される。
【0003】
図12は従来のエスカレータ枠の製造方法を示す斜視図、図13は図12に示すエスカレータ枠の要部断面図、図14は他の従来のスカレータ枠の製造方法を示す側面図である。
【0004】
従来、前述した折点を形成する方法として、図12および図13に示すように、型鋼、例えばL字状の断面形状を有する山形鋼40の1つの構成辺の途中まで切込み41を入れ、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、溶接を行ない折点を形成するものや、図14に示すように、所定の角度の切り口を有する複数の型鋼51〜55を突合せ、次いで、溶接を行い折点を形成するものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の前者のものでは、L字状の断面形状を有する山形鋼の1つの構成辺の途中までしか切込みが入っておらず、残された1つの構成辺および板厚が均一ではない隅角部に圧力を加えて曲げ加工する必要があることから、捩れが生じ、高精度の曲げ加工が難しいという問題があった。また、突合せ構造の後者のものでは、溶接量が多いことから熱変形が大きくなり、精度が低下するといった問題があった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、必要な強度を確保しつつ、製作が容易で、かつ高精度のエスカレータ枠の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される切込みを設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項1に係る発明では、切込みを型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成するとともに、この切込みは残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される。これによって、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。一方、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部が形成され、この開先部に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠として必要な強度を確保することもできる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記型鋼に略I字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明では、型鋼に略I字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を内角とした折点を形成することができる。
【0011】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記型鋼に略V字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を外角とした折点を形成することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明では、型鋼に略V字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を外角とした折点を形成することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の請求項4に係る発明は、接合部を内角とした前記折点に、三角板を溶着することを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明では、略I字状の断面形状を有する切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成したときに生じる三角形状の空隙に三角板を溶着することで強度を高めることができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る発明は、上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成され、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みをそれぞれ設け、次いで、略I字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を内角として所定の角度に曲げ加工を施し、かつ、略V字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を外角として所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明では、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みを型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成するとともに、これらの切込みは残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される。これによって、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。また、型鋼に略I字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を内角とした折点を形成するとともに、型鋼に略V字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を外角とした折点を形成し、これによって、上階床と平行となる上部平行部、下階床と平行となる下部平行部、および上部平行部と下部平行部とを結ぶ傾斜部とを有するエスカレータ枠を形成することができる。さらに、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部が形成され、この開先部に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠として必要な強度を確保することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易、かつ高精度の曲げ加工が可能となるとともに、溶接量を比較的少なくすることができ、これによって、高精度のエスカレータ枠を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第1の実施形態であり、略I字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図、図2は図1のエスカレータ枠に接合部を内角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図、図3は略V字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図、図4は図3のエスカレータ枠に接合部を外角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図、図5はエスカレータ枠に設けられる切込みの状態を示す縦断面図、図6は本発明が適用されるエスカレータ枠の概略全体図、図7はエスカレータ枠の概略要部拡大図、図8は接合部を内角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図、図9は接合部を外角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【0020】
エスカレータ枠1は、図6に示すように、複数の型鋼が組み合わされ、いわゆるトラス構造により形成される。このようなエスカレータ枠1には、上階床と平行となる上部平行部2、下階床と平行となる下部平行部3、および上部平行部1と下部平行部3とを結ぶ傾斜部4とを有するとともに、上部平行部2と傾斜部4とが交わる位置、および下部平行部3と傾斜部4とが交わる位置には所定角度の折点A、B、C、Dが形成される。なお、この実施形態では、図5に示すように、高さ寸法125mmの第1の構成辺10a、幅寸法75mmの第2の構成辺10bからなるL字状の断面形状を有する山形鋼10を用いてエスカレータ枠1が形成されるものとする。
【0021】
そして、第1の実施形態のものでは、折点Aおよび折点Cを形成する場合、図1に示すように、山形鋼10に略I字状の断面形状を有する切込み11を入れる。この切込み11は、図5に示すように、高さ寸法125mmを有する第1の構成辺10aの全長に亘り形成されるとともに、幅寸法75mmを有する第2の構成辺10bのうち、例えば25mmの幅寸法に亘って形成される。これにより、切込み11は隅角部R1を含んで形成されることとなる。次いで、図2に示すように、切込み11を設けた山形鋼10の接合部が内角となるようにして所定の角度に曲げ加工を施す。この後、図8に示すように、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に形成される開先部12を含む要部を溶接するとともに、図7に示すように、接合部を内角とした折点を形成したときに生じる三角形状の空隙に三角板13を溶着し、接合部を内角とした折点Aおよび折点Cを形成する。
【0022】
一方、折点Bおよび折点Dを形成する場合、図3に示すように、山形鋼10に略V字状の断面形状を有する切込み14を入れる。この切込み14は前述したものと同様、高さ寸法125mmを有する第1の構成辺10aの全長に亘り形成されるとともに、幅寸法75mmを有する第2の構成辺10bのうち、例えば25mmの幅寸法に亘って形成される。これにより、切込み14は隅角部R1を含んで形成されることとなる。次いで、図4に示すように、切込み14を設けた山形鋼10の接合部が外角となるようにして所定の角度に曲げ加工を施す。この後、図9に示すように、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に形成される開先部15を含む要部を溶接し、接合部を外角とした折点Bおよび折点Dを形成する。
【0023】
第1の実施形態によれば、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。また、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部12、15が形成され、この部位に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠1として必要な強度を確保することもできる。このように、容易、かつ高精度の曲げ加工が可能となるとともに、溶接量を比較的少なくすることができ、これによって、高精度のエスカレータ枠1を実現することができる。
【0024】
図10は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第2の実施形態を示す斜視図である。
【0025】
第2の実施形態は、図10に示すように、第1の構成辺20a、第2の構成辺20b、第3の構成辺20c、および第4の構成辺20dからなる口字状の断面形状を有する角鋼20を用いてエスカレータ枠が形成されるものである。この場合、第2の構成辺20bを残し他の構成辺、すなわち、第1の構成辺20a、第3の構成辺20c、および第4の構成辺20dに連続して形成されるとともに、第2の構成辺20bと交わる隅角部R2、R3を含んで形成される切込み21を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成する。
【0026】
図11は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第3の実施形態を示す斜視図である。
【0027】
第3の実施形態は、図11に示すように、第1の構成辺30a、第2の構成辺30b、および第3の構成辺30cからなるコ字状の断面形状を有する溝型鋼30を用いてエスカレータ枠が形成されるものである。この場合、第2の構成辺30bを残し他の構成辺、すなわち、第1の構成辺20aおよび第3の構成辺20cに連続して形成されるとともに、第2の構成辺20bと交わる隅角部R4を含んで形成される切込み31を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第1の実施形態であり、略I字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のエスカレータ枠に接合部を内角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図である。
【図3】略V字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3のエスカレータ枠に接合部を外角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図である。
【図5】エスカレータ枠に設けられる切込みの状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明が適用されるエスカレータ枠の概略全体図である。
【図7】エスカレータ枠の概略要部拡大図である。
【図8】接合部を内角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【図9】接合部を外角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【図10】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第3の実施形態を示す斜視図である
【図12】従来のエスカレータ枠の製造方法を示す斜視図である。
【図13】図12に示すエスカレータ枠の要部断面図である。
【図14】他の従来のスカレータ枠の製造方法を示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 エスカレータ枠
2 上部平行部
3 下部平行部
4 傾斜部
10 山形鋼
11、14、21、31 切込み
12、15 開先
13 三角板
20 角鋼
30 溝型鋼
A、B、C、D 折点
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上階床と下階床との間に跨って架設されるエスカレータ枠は、複数の型鋼が組み合わされ、いわゆるトラス構造により形成される。このようなエスカレータ枠には、上階床と平行となる上部平行部、下階床と平行となる下部平行部、および上部平行部と下部平行部とを結ぶ傾斜部とを有するとともに、上部平行部と傾斜部とが交わる位置、および下部平行部と傾斜部とが交わる位置には所定角度の折点が形成される。
【0003】
図12は従来のエスカレータ枠の製造方法を示す斜視図、図13は図12に示すエスカレータ枠の要部断面図、図14は他の従来のスカレータ枠の製造方法を示す側面図である。
【0004】
従来、前述した折点を形成する方法として、図12および図13に示すように、型鋼、例えばL字状の断面形状を有する山形鋼40の1つの構成辺の途中まで切込み41を入れ、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、溶接を行ない折点を形成するものや、図14に示すように、所定の角度の切り口を有する複数の型鋼51〜55を突合せ、次いで、溶接を行い折点を形成するものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の前者のものでは、L字状の断面形状を有する山形鋼の1つの構成辺の途中までしか切込みが入っておらず、残された1つの構成辺および板厚が均一ではない隅角部に圧力を加えて曲げ加工する必要があることから、捩れが生じ、高精度の曲げ加工が難しいという問題があった。また、突合せ構造の後者のものでは、溶接量が多いことから熱変形が大きくなり、精度が低下するといった問題があった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、必要な強度を確保しつつ、製作が容易で、かつ高精度のエスカレータ枠の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される切込みを設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項1に係る発明では、切込みを型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成するとともに、この切込みは残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される。これによって、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。一方、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部が形成され、この開先部に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠として必要な強度を確保することもできる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記型鋼に略I字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明では、型鋼に略I字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を内角とした折点を形成することができる。
【0011】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記型鋼に略V字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を外角とした折点を形成することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明では、型鋼に略V字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を外角とした折点を形成することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の請求項4に係る発明は、接合部を内角とした前記折点に、三角板を溶着することを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明では、略I字状の断面形状を有する切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成したときに生じる三角形状の空隙に三角板を溶着することで強度を高めることができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る発明は、上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成され、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みをそれぞれ設け、次いで、略I字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を内角として所定の角度に曲げ加工を施し、かつ、略V字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を外角として所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明では、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みを型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成するとともに、これらの切込みは残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される。これによって、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。また、型鋼に略I字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を内角とした折点を形成するとともに、型鋼に略V字状の断面形状を有する切込みを入れることで、接合部を外角とした折点を形成し、これによって、上階床と平行となる上部平行部、下階床と平行となる下部平行部、および上部平行部と下部平行部とを結ぶ傾斜部とを有するエスカレータ枠を形成することができる。さらに、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部が形成され、この開先部に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠として必要な強度を確保することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易、かつ高精度の曲げ加工が可能となるとともに、溶接量を比較的少なくすることができ、これによって、高精度のエスカレータ枠を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第1の実施形態であり、略I字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図、図2は図1のエスカレータ枠に接合部を内角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図、図3は略V字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図、図4は図3のエスカレータ枠に接合部を外角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図、図5はエスカレータ枠に設けられる切込みの状態を示す縦断面図、図6は本発明が適用されるエスカレータ枠の概略全体図、図7はエスカレータ枠の概略要部拡大図、図8は接合部を内角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図、図9は接合部を外角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【0020】
エスカレータ枠1は、図6に示すように、複数の型鋼が組み合わされ、いわゆるトラス構造により形成される。このようなエスカレータ枠1には、上階床と平行となる上部平行部2、下階床と平行となる下部平行部3、および上部平行部1と下部平行部3とを結ぶ傾斜部4とを有するとともに、上部平行部2と傾斜部4とが交わる位置、および下部平行部3と傾斜部4とが交わる位置には所定角度の折点A、B、C、Dが形成される。なお、この実施形態では、図5に示すように、高さ寸法125mmの第1の構成辺10a、幅寸法75mmの第2の構成辺10bからなるL字状の断面形状を有する山形鋼10を用いてエスカレータ枠1が形成されるものとする。
【0021】
そして、第1の実施形態のものでは、折点Aおよび折点Cを形成する場合、図1に示すように、山形鋼10に略I字状の断面形状を有する切込み11を入れる。この切込み11は、図5に示すように、高さ寸法125mmを有する第1の構成辺10aの全長に亘り形成されるとともに、幅寸法75mmを有する第2の構成辺10bのうち、例えば25mmの幅寸法に亘って形成される。これにより、切込み11は隅角部R1を含んで形成されることとなる。次いで、図2に示すように、切込み11を設けた山形鋼10の接合部が内角となるようにして所定の角度に曲げ加工を施す。この後、図8に示すように、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に形成される開先部12を含む要部を溶接するとともに、図7に示すように、接合部を内角とした折点を形成したときに生じる三角形状の空隙に三角板13を溶着し、接合部を内角とした折点Aおよび折点Cを形成する。
【0022】
一方、折点Bおよび折点Dを形成する場合、図3に示すように、山形鋼10に略V字状の断面形状を有する切込み14を入れる。この切込み14は前述したものと同様、高さ寸法125mmを有する第1の構成辺10aの全長に亘り形成されるとともに、幅寸法75mmを有する第2の構成辺10bのうち、例えば25mmの幅寸法に亘って形成される。これにより、切込み14は隅角部R1を含んで形成されることとなる。次いで、図4に示すように、切込み14を設けた山形鋼10の接合部が外角となるようにして所定の角度に曲げ加工を施す。この後、図9に示すように、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に形成される開先部15を含む要部を溶接し、接合部を外角とした折点Bおよび折点Dを形成する。
【0023】
第1の実施形態によれば、型鋼の1つの構成辺、すなわち板厚が均一となる平板部分のみを曲げればよく、容易、かつ高精度で曲げ加工を行なうことができる。また、曲げ加工による型鋼の角度変化で必然的に開先部12、15が形成され、この部位に溶接を行なうことで強度を高め、比較的少ない溶接量でエスカレータ枠1として必要な強度を確保することもできる。このように、容易、かつ高精度の曲げ加工が可能となるとともに、溶接量を比較的少なくすることができ、これによって、高精度のエスカレータ枠1を実現することができる。
【0024】
図10は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第2の実施形態を示す斜視図である。
【0025】
第2の実施形態は、図10に示すように、第1の構成辺20a、第2の構成辺20b、第3の構成辺20c、および第4の構成辺20dからなる口字状の断面形状を有する角鋼20を用いてエスカレータ枠が形成されるものである。この場合、第2の構成辺20bを残し他の構成辺、すなわち、第1の構成辺20a、第3の構成辺20c、および第4の構成辺20dに連続して形成されるとともに、第2の構成辺20bと交わる隅角部R2、R3を含んで形成される切込み21を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成する。
【0026】
図11は本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第3の実施形態を示す斜視図である。
【0027】
第3の実施形態は、図11に示すように、第1の構成辺30a、第2の構成辺30b、および第3の構成辺30cからなるコ字状の断面形状を有する溝型鋼30を用いてエスカレータ枠が形成されるものである。この場合、第2の構成辺30bを残し他の構成辺、すなわち、第1の構成辺20aおよび第3の構成辺20cに連続して形成されるとともに、第2の構成辺20bと交わる隅角部R4を含んで形成される切込み31を設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第1の実施形態であり、略I字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のエスカレータ枠に接合部を内角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図である。
【図3】略V字状の断面形状を有する切込みを設けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3のエスカレータ枠に接合部を外角とした曲げ加工を施した状態を示す斜視図である。
【図5】エスカレータ枠に設けられる切込みの状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明が適用されるエスカレータ枠の概略全体図である。
【図7】エスカレータ枠の概略要部拡大図である。
【図8】接合部を内角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【図9】接合部を外角とした曲げ加工を施した際に形成される開先部を示す側面図である。
【図10】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るエスカレータ枠の製造方法の第3の実施形態を示す斜視図である
【図12】従来のエスカレータ枠の製造方法を示す斜視図である。
【図13】図12に示すエスカレータ枠の要部断面図である。
【図14】他の従来のスカレータ枠の製造方法を示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 エスカレータ枠
2 上部平行部
3 下部平行部
4 傾斜部
10 山形鋼
11、14、21、31 切込み
12、15 開先
13 三角板
20 角鋼
30 溝型鋼
A、B、C、D 折点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、
前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される切込みを設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としたエスカレータ枠の製造方法。
【請求項2】
前記型鋼に略I字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成することを特徴とした請求項1記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項3】
前記型鋼に略V字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を外角とした折点を形成することを特徴とした請求項1記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項4】
接合部を内角とした前記折点に、三角板を溶着することを特徴とした請求項2記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項5】
上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、
前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成され、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みをそれぞれ設け、次いで、略I字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を内角として所定の角度に曲げ加工を施し、かつ、略V字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を外角として所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としたエスカレータ枠の製造方法。
【請求項1】
上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、
前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成される切込みを設け、次いで、所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としたエスカレータ枠の製造方法。
【請求項2】
前記型鋼に略I字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を内角とした折点を形成することを特徴とした請求項1記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項3】
前記型鋼に略V字状の断面形状を有する前記切込みを設け、接合部を外角とした折点を形成することを特徴とした請求項1記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項4】
接合部を内角とした前記折点に、三角板を溶着することを特徴とした請求項2記載のエスカレータ枠の製造方法。
【請求項5】
上階床と下階床との間に跨って架設され、複数の型鋼が組み合わされて形成されるエスカレータ枠の製造方法において、
前記型鋼の1つの構成辺を残し他の構成辺に連続して形成されるとともに、残された1つの構成辺と交わる隅角部を含んで形成され、略I字状の断面形状を有する切込みおよび略V字状の断面形状を有する切込みをそれぞれ設け、次いで、略I字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を内角として所定の角度に曲げ加工を施し、かつ、略V字状の断面形状を有する切込み部にあって、接合部を外角として所定の角度に曲げ加工を施し、この後、少なくとも開先部に溶接を行ない折点を形成することを特徴としたエスカレータ枠の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−100380(P2010−100380A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272095(P2008−272095)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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