説明

エスカレータ用治具

【課題】より好適に端末ガイドを手前側に移動させるエスカレータ用治具を提供することである。
【解決手段】無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールの端部に設けられ移動手摺の張力に抗して設けられる端末ガイドが移動手摺の幅方向に沿って磨耗し、移動手摺のうち磨耗した端末ガイドに対応する部分が他の部分に比べて前記幅方向にずれてしまった場合に、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるためのエスカレータ用治具50であって、一方端側に設けられ、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側の部位に係合する係合部56と、他方端側に設けられ、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるために外力が与えられる第1延伸部52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ用治具に係り、特に、移動手摺を案内する移動手摺案内レールの端部に設けられる端末ガイドを手前側に移動させるエスカレータ用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等といった種々の場所においてエスカレータが設置されている。エスカレータには、無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールが設けられている。さらに、その移動手摺案内レールの端部には、移動手摺の張力に抗して設けられる端末ガイドが取り付けられている。そして、エスカレータを長時間使用すると、移動手摺の摺動によって端末ガイドが幅方向に磨耗する。このように、端末ガイドがその幅方向に磨耗してしまうと、無端状の移動手摺のうち磨耗した端末ガイドに対応する部分が他の部分に比べて幅方向にずれてしまうこととなり、その状態でさらにエスカレータの使用を続けてしまうと、端末ガイドの周辺に位置する駆動ローラ等が傷んでしまうといった問題がある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、乗客コンベアの移動手摺の張力調整方法として、無端状に連結されて循環移動する踏み段と、上記踏み段を挟むように立設された一対の欄干と、上記欄干の外周縁部および下部側に設けられ、該欄干の下部側に設けられた折り返し側の一部に分断部を有する手摺レールと、一端が上記分断部に臨む上記手摺レールの一方の端部に固定され、かつ他端が固定位置を長さ方向に移動可能に上記分断部に臨む上記手摺レールの他方の端部に締着固定されて該手摺レールの分断部に架設され、該他端の締着を緩めて該固定位置を移動させることで架設長さが調整される可撓性ガイドと、無端状に形成され、上記手摺レールおよび可撓性ガイドに案内されて循環移動する移動手摺と、上記欄干の下部と上記踏み段との隙間を塞口するインナーデッキボードと、を備える構成が開示されている。そして、上記可撓性ガイドの上部側の上記インナーデッキボードの部位を取り外す工程と、上記可撓性ガイドの他端と上記手摺レールとの締着を緩める工程と、供給される作動媒体の圧力がピストンロッドによる押圧力として出力される押圧手段を、該ピストンロッドが上記可撓性ガイドの背面を略垂直に押圧するように上記乗客コンベアの固定部に固定する工程を備える構成が開示されている。さらに、上記押圧手段に所定圧の上記作動媒体を供給して上記ピストンロッドにより上記可撓性ガイドを介して上記移動手摺を押圧し、該移動手摺に所定の張力を発生させる工程と、上記可撓性ガイドの他端と上記手摺レールとを締着固定する工程と、上記作動媒体の供給を停止して上記押圧手段を取り外し、上記インナーデッキボードを取り付ける工程と、を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−239269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、エスカレータの長期間の使用により、端末ガイドが磨耗することで移動手摺の一部がずれてしまった場合に、端末ガイドの近傍に配置される駆動ローラ等が傷んでしまうことがある。そのため、磨耗した端末ガイドを移動手摺の張力に抗して手前側に移動させることで、移動手摺のずれを修正する必要があるが、エスカレータの設置場所によっては、端末ガイドを手前側に移動させるために必要な作業スペースが狭く、作業効率が悪くなってしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、より好適に端末ガイドを手前側に移動させるエスカレータ用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエスカレータ用治具は、無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールの端部に設けられ移動手摺の張力に抗して設けられる端末ガイドが移動手摺の幅方向に沿って磨耗し、移動手摺のうち磨耗した端末ガイドに対応する部分が他の部分に比べて前記幅方向にずれてしまった場合に、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるためのエスカレータ用治具であって、一方端側に設けられ、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側の部位に係合する係合部と、他方端側に設けられ、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるために外力が与えられる外力受け部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、他方端側に設けられ、端末ガイドを前記幅方向の奥側に押し付けるために外力が与えられる押し付け部を備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、押し付け部は、端末ガイドのうち前記幅方向の手前側端面の外形に沿った凹部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、係合部は、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側端面に線接触で係合する外形を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、係合部は、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側端面に点接触で係合する外形を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、合成繊維を含んで構成されるナイロンガイドである端末ガイドを手前側に移動させることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るエスカレータ用治具において、係合部は、ナイロンガイドのうち前記幅方向の奥側端面の外形に沿った凹部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成のエスカレータ用治具によれば、端末ガイドのうち、移動手摺の幅方向の奥側の部位に係合部を係合させ、さらに、外力受け部に外力を与えることで、端末ガイドを上記幅方向の手前側に移動させることができる。これにより、より好適に端末ガイドを手前側に移動させることができる。
【0015】
上記構成の押し付け部を有するエスカレータ用治具によれば、端末ガイドを手前側に移動させる機能と奥側に移動させる機能といった2つの機能をあわせもたせることができる。
【0016】
上記構成の端末ガイドの奥側端面に線接触で係合する係合部を有するエスカレータ用治具によれば、端末ガイドの奥側端面との接触面積が少ないため、外力が与えられたときに滑って係合しなくなってしまうことを抑制することができる。
【0017】
上記構成の端末ガイドの奥側端面に点接触で係合する係合部を有するエスカレータ用治具によれば、端末ガイドの奥側端面との接触面積がより少ないため、外力が与えられたときに滑って係合しなくなってしまうことをより好適に抑制することができる。
【0018】
上記構成の端末ガイドのうち幅方向の手前側端面の外形に沿った凹部を有する押し付け部を備えるエスカレータ用治具によれば、押し付け部の凹部と端末ガイドの手前側端面とがより好適に係合する。したがって、幅方向の奥側方向に沿った外力を与えることでより好適に端末ガイドを奥側に移動させることができる。
【0019】
上記構成のナイロンガイドの奥側端面の外形に沿った凹部を有する係合部を備えるエスカレータ用治具によれば、係合部とナイロンガイドの奥側端面とがより好適に係合する。したがって、外力受け部に外力を与えることでより好適にナイロンガイドを手前側に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態において、エスカレータの構成を示す図である。
【図2】図1において移動手摺の進行方向に垂直な断面図、すなわちA−A線断面図に相当する移動手摺と支え部の関係を示している。
【図3】図1において、移動手摺の進行方向に垂直な断面図、すなわち、B−B線断面図に相当する駆動ローラと加圧ローラとの関係を示したものである。
【図4】図1における一点鎖線Eの領域の拡大図である。
【図5】図4において駆動ローラと加圧ローラとを取り除いた状態の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態において、エスカレータ用治具を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、ナイロンガイドを手前側に移動させるためにエスカレータ用治具を用いている様子を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、エスカレータ用治具の第1変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において、エスカレータ用治具の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。なお、以下では、第2延伸部の係合部は、例えば、丸みを帯びた奥側端面に沿う凹部を有するものとして説明したが、丸みを帯びた奥側端面に限定されず、その他の形状の奥側端面、例えば、平坦な奥側端面である場合には、平坦な奥側端面に沿った凹部を設けてもよく、また、平坦な奥側端面である場合には、特別に凹部を設けずに第2延伸部の手前側平面部を係合部としてもよい。
【0022】
図1は、エスカレータ10の構成を示す図である。エスカレータ10は、高低差のある乗場床6と降場床8との間で乗客4を移動させる装置である。エスカレータ10は、乗客4が乗るステップ12と、それぞれのステップ12が連結されるステップチェーン14と、ステップチェーン14を駆動する主駆動装置16と、移動手摺70と支え部30とを含む欄干部20と、ナイロンガイド200と、移動手摺70を駆動する手摺駆動装置140とを含んで構成される。手摺駆動装置140は、駆動ローラ100と加圧ローラ120とを含んで構成されるが詳細な説明は後述する。
【0023】
ステップ12は、乗客4が一人または二人乗れる程度の大きさを有する。エスカレータ10が運行する際には、複数のステップ12は、地面に対して水平な状態を保ちつつ移動する。また、ステップ12にはスリップ防止のための溝が複数設けられている。
【0024】
ステップチェーン14は、図示されていない適当な軸部材を介して、それぞれのステップ12を連結し、主駆動装置16の駆動力をそれぞれのステップ12に伝達するものである。また、ステップチェーン14は、エスカレータ10のステップ12の左右両側に1本ずつ配置されている。
【0025】
主駆動装置16は、エスカレータ10を駆動する駆動力を出力する装置で、例えば、電動機と減速歯車等から構成される。主駆動装置16により出力された駆動力は、図示されていない駆動伝達手段を介してステップチェーン14及び図示されていない移動手摺チェーンを介して駆動ローラ100に伝達される。
【0026】
欄干部20は、無端状の移動手摺70と、ステップ12が移動する際に乗客4の体がエスカレータ10の外に出ることを防止する支え部30から構成されている。移動手摺70は、乗客4が手を添え、または掴まる部分であり、支え部30は移動手摺70を案内する機能を有する。また、支え部30は、移動手摺案内レール42と、内側板32で構成される。なお、移動手摺案内レール42は、駆動ローラ100の両端近傍において途切れた端部を有している。
【0027】
ここで、移動手摺70と支え部30との関係の構成を詳細に説明する。図2は、図1において移動手摺70の進行方向に垂直な断面図、すなわちA−A線断面図に相当する移動手摺70と支え部30の関係を示している。移動手摺70は、芯地である鋼芯64と、その周囲を被覆したキャンバス積層部68と、さらに、その外側に配置された表層部66とを含んで構成されている。表層部66の材料としては、手触りが良いもの、例えば生ゴム等を用いることができる。キャンバス積層部68は、適当な強度を確保するため、例えばキャンバス地を用いることができる。
【0028】
移動手摺案内レール42は、略C字状断面の移動手摺70の内側に配置され、移動手摺70の内側面形状とほぼ同じ形状の外形を有する。さらに、移動手摺70の内側面に移動手摺案内レール42の外周面が接触し、これにより移動手摺70が摺動するときに進路を外すことがないように案内される。
【0029】
内側板32は、エスカレータ10の両側面を構成することになるので、装飾的な観点や適当な強度を確保するため、例えば、ガラスパネルやステンレスを素材として構成される。なお、移動手摺案内レール42と内側板32とは、ボルト等の接続部材を用いて接続されている。
【0030】
再び図1に戻って、手摺駆動装置140について説明する。手摺駆動装置140は、上記のように移動手摺70を駆動する機能を有し、駆動ローラ100と加圧ローラ120とを含んで構成される。
【0031】
手摺駆動装置140においては、移動手摺70を挟んで複数の駆動ローラ100に対向する位置に複数の加圧ローラ120が配置される。これら複数の加圧ローラ120を構成する1つの加圧ローラ120は、複数の駆動ローラ100を構成する1つの駆動ローラ100と対を成すように並んでいる。駆動ローラ100は、主駆動装置16より出力された駆動力により駆動され、また、加圧ローラ120は、対応する駆動ローラ100に向かって、移動手摺70を図示していない加圧手段によって押し付け、駆動ローラ100の駆動に従って回転する。
【0032】
移動手摺70は、無端状に配置され、移動手摺70の帰路側において、駆動ローラ100が矢印D方向に回転することにより、加圧ローラ120との間に挟みこまれた移動手摺70が図1の矢印C方向に移動する。
【0033】
図3は、図1において、移動手摺70の進行方向に垂直な断面図、すなわち、B−B線断面図に相当する駆動ローラ100と加圧ローラ120との関係を示したものである。駆動ローラ100及び加圧ローラ120は、例えば、材料がウレタン等で構成されている。駆動ローラ100は、移動手摺70に沿う形で配置され、加圧ローラ120は、図3でWと示される移動手摺70の幅方向において、移動手摺70を挟んで駆動ローラ100に対向して配置される。
【0034】
図4は、図1における一点鎖線Eの領域の拡大図である。図5は、図4において駆動ローラ100と加圧ローラ120とを取り除いた状態の斜視図である。ナイロンガイド200は、駆動ローラ100と移動手摺案内レール42の端部42aとの間に形成された空隙77において移動手摺案内レール42の端部42aに取り付けられる。なお、移動手摺案内レール42の他方側の端部にも同様のナイロンガイド200(図1参照)が取り付けられているが、ここでは図4,5を用いて、一方側の端部42aに設けられるナイロンガイド200について説明する。
【0035】
ナイロンガイド200は、上面のほぼ全域にわたって平坦化された平面部202と、ナイロンガイド200を移動手摺案内レール42に取り付けるための取付部206とを含んで構成される。平面部202は、移動手摺案内レール42の幅とほぼ同じ幅Xを有し、移動手摺案内レール42の両端部とほぼ同じ高さYを有する箱型形状である。平面部202は、駆動ローラ100と移動手摺案内レール42の端部42aとの間の空隙の長さRよりも少しだけ短い奥行きの長さZである。なお、平面部202の表側端面203と裏側端面204とはそれぞれ丸みを帯びた端面である。
【0036】
取付部206は、平面部202の上面の端部から移動手摺案内レール42に向けて延伸する部材である。また、取付部206の側面を構成する手前側端面205と奥側端面209とはそれぞれ少し丸みを帯びた端面である。そして、移動手摺案内レール42に設けられたネジ穴に対して、孔部207を介してボルト208を締め付けることでナイロンガイド200を移動手摺案内レール42に取り付けることができる。また、孔部207は、幅X方向に沿った径が長さZ方向に沿った径に比べて大きい略楕円形状であり、ボルト208を緩めて平面部202を幅X方向(換言すれば、移動手摺70の幅W方向)に沿ってスライドさせることが可能である。ここで、ナイロンガイド200は、適当な強度を確保するため合成繊維を含んで構成される。なお、ナイロンガイド200およびナイロンガイド200の上部に設けられるボルト208をあわせて端末ガイドと呼ぶこととする。
【0037】
ここで、ナイロンガイド200は、無端状の移動手摺70の張力に抗して移動手摺案内レール42に取り付けられており、移動手摺70がナイロンガイド200に対して摺動するため、例えば移動手摺70の内側面とナイロンガイド200の表側端面203との摩擦によって、ナイロンガイド200の表側端面203が削られることがある。したがって、このようなナイロンガイド200の表側端面203が削られた状態では、無端状の移動手摺70のうち、ナイロンガイド200の表側端面203に対応する部分が他の部分とずれて奥側に位置し、移動手摺70が駆動ローラ100に対して摺動するため、駆動ローラ100が傷んでしまうことがある。
【0038】
図6は、エスカレータ用治具50を示す図である。エスカレータ用治具50は、上記のようにナイロンガイド200の表側端面203が削られてしまった場合に、ナイロンガイド200を手前側に移動させるための治具である。エスカレータ用治具50は、本体部54と、第1延伸部52と、係合部56を有する第2延伸部55とを含んで構成される。
【0039】
本体部54は、ナイロンガイド200の幅Xの少なくとも2倍以上の長さである長さL1を有し、断面形状が正方形(断面積S=L0×L0)である棒部材である。本体部54は、適当な強度が必要であることから、例えば、ステンレスを含んで構成される。
【0040】
第1延伸部52は、本体部54の一方側の端部から矢印J方向に延伸し、平面部202の高さYよりも3倍以上の長さである長さL2を有する棒部材である。ここで、第1延伸部52の断面形状は、本体部54の断面形状と同じであり正方形(断面積S=L0×L0)である。第1延伸部52には、金槌9(図7参照)等によって外力を与えるための平板部52aを有している。
【0041】
第2延伸部55は、本体部54の他方側の端部から矢印K方向に延伸し、平面部202の高さYよりも3倍以上の長さである長さL3を有する棒部材である。ここで、第2延伸部55の断面形状は、本体部54の断面形状と同じであり正方形(断面積S=L0×L0)である。そして、第2延伸部55は、ナイロンガイド200の奥側端面209に係合する係合部56を有している。係合部56は、第2延伸部55のうち、手前側(図7参照)に設けられ、ナイロンガイド200の奥側端面209の外形に沿った形状の凹部を有している。
【0042】
上記構成のエスカレータ用治具50の作用について図1〜図7を用いて説明する。図7は、ナイロンガイド200を手前側に移動させるためにエスカレータ用治具50を用いている様子を示す図である。エスカレータ10を長時間使用していると、移動手摺70のナイロンガイド200に対する摺動により、ナイロンガイド200の表側端面203が削られる。そして、ナイロンガイド200の表側端面203が削られた分だけ、移動手摺70が奥側にずれてしまう。
【0043】
ここで、エスカレータ10の保守作業員は、係合部56をナイロンガイド200の奥側端面209に係合させる。そして、ナイロンガイド200の上部に設けられるボルト208を緩めた後に、金槌9等を用いて平板部52aを必要な力で叩くことで、第1延伸部52に手前側に向かう外力を与える。これにより、ナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。したがって、エスカレータ用治具50によれば、エスカレータ10が、例えばナイロンガイド200の奥側と建物壁等の隙間が小さく、保守を行うための作業スペースが狭くなってしまうような所に設置される場合であっても、好適にナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。
【0044】
次に、エスカレータ用治具50の第1変形例であるエスカレータ用治具51について説明する。図8は、エスカレータ用治具51を示す図である。エスカレータ用治具51とエスカレータ用治具50との相違は、押し付け部53のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0045】
押し付け部53は、本体部54の一方側の端部から矢印P方向(換言すれば、本体部54の長手方向)に向かって延伸する棒部材である。ここで、押し付け部53は、本体部54の断面形状と同じであり、正方形(断面積S=L0×L0)である。押し付け部53の先端部53aは、ナイロンガイド200の手前側端面205の外形に沿った形状の凹部を有している。
【0046】
続いて、エスカレータ用治具51の作用について、図8等を用いて説明する。エスカレータ用治具51もエスカレータ用治具50と同様に係合部56と第1延伸部52とを有するため、ナイロンガイド200の表側端面203が削れてしまった場合に、ナイロンガイド200を好適に手前側に移動させることができる。ここで、保守作業員がナイロンガイド200を手前側移動する場合において、例えば、ナイロンガイド200を手前側に移動させすぎてしまった場合に、ナイロンガイド200を逆に奥側に移動させて微調整したい場合もある。この場合に、エスカレータ用治具51によれば、押し付け部53の先端部53aをナイロンガイド200の手前側端面205に嵌め込み、第2延伸部55の平板部55aを金槌9(図7参照)で叩くことで(換言すれば、奥側方向への外力を与えることで)、ナイロンガイド200を奥側に移動させることも可能であるため、ナイロンガイド200の位置を微調整することができる。
【0047】
次に、エスカレータ用治具50の第2変形例であるエスカレータ用治具60について説明する。図9(a)は、エスカレータ用治具60の構成を示す図である。図9(b)は、矢印G方向からエスカレータ用治具60を見た様子を示す図である。エスカレータ用治具60とエスカレータ用治具50との相違は、係合部66を有する第2延伸部65のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0048】
第2延伸部65は、本体部54の他方側の端部から矢印Q方向に沿って延伸し、さらに先端部に向かって先細りする係合部66を有する部材である。したがって、第2延伸部65の係合部66は、ナイロンガイド200の奥側端面209に線接触で係合することができる。
【0049】
続いて、エスカレータ用治具60の作用について、図9(a)(b)等を用いて説明する。エスカレータ10を長時間使用していると、上述のように、ナイロンガイド200の表側端面203が削られるため、移動手摺70が奥側にずれてしまうことがある。
【0050】
ここで、エスカレータ10の保守作業員は、係合部66をナイロンガイド200の奥側端面209に線接触で係合させる。さらに、ナイロンガイド200の上部に設けられるボルト208を緩めた後に、金槌9(図7参照)を用いて平板部52aを必要な力で叩くことで、第1延伸部52に対して手前側方向に向かう外力を与える。これにより、ナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。したがって、エスカレータ用治具60によれば、エスカレータ10が例えばナイロンガイド200の奥側と建物壁等の隙間が小さく、作業スペースが狭くなってしまうような所に設置される場合であっても、好適にナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。さらに、エスカレータ用治具60の係合部66は、ナイロンガイド200の奥側端面209と線接触しているため、金槌9で平板部52aを叩いた場合であっても面接触している場合に比べてすべりにくく、より好適にナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。
【0051】
なお、上記エスカレータ用治具60の係合部66は、図9(b)に示されるようにナイロンガイド200の奥側端面209と線接触するような先細り形状を有するものとして説明したが、図9(c)に示されるようにナイロンガイド200の奥側端面209と点接触するような先細り形状の係合部67を有するものであってもよい。この場合、係合部67とナイロンガイド200の奥側端面209との接触面積はさらに少なくなるため、金槌9で平板部52aを叩いた場合であっても面接触している場合に比べてすべりにくく、さらに好適にナイロンガイド200を手前側に移動させることができる。
【符号の説明】
【0052】
4 乗客、6 乗場床、8 降場床、9 金槌、10 エスカレータ、12 ステップ、14 ステップチェーン、16 主駆動装置、20 欄干部、30 支え部、32 内側板、42 移動手摺案内レール、42a 端部、50,51,60 エスカレータ用治具、52 延伸部、52a,55a 平板部、53 押し付け部、53a 先端部、54 本体部、55 延伸部、56,66,67 係合部、64 鋼芯、65 延伸部、66 表層部、68 キャンバス積層部、70 移動手摺、77 空隙、100 駆動ローラ、120 加圧ローラ、140 手摺駆動装置、200 ナイロンガイド、202 平面部、203 表側端面、204 裏側端面、205 手前側端面、206 取付部、207 孔部、208 ボルト、209 奥側端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールの端部に設けられ移動手摺の張力に抗して設けられる端末ガイドが移動手摺の幅方向に沿って磨耗し、移動手摺のうち磨耗した端末ガイドに対応する部分が他の部分に比べて前記幅方向にずれてしまった場合に、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるためのエスカレータ用治具であって、
一方端側に設けられ、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側の部位に係合する係合部と、
他方端側に設けられ、端末ガイドを前記幅方向の手前側に移動させるために外力が与えられる外力受け部と、
を備えることを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータ用治具において、
他方端側に設けられ、端末ガイドを前記幅方向の奥側に押し付けるために外力が与えられる押し付け部を備えることを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータ用治具において、
押し付け部は、端末ガイドのうち前記幅方向の手前側端面の外形に沿った凹部を有することを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項4】
請求項1に記載のエスカレータ用治具において、
係合部は、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側端面に線接触で係合する外形を有することを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項5】
請求項1に記載のエスカレータ用治具において、
係合部は、端末ガイドのうち前記幅方向の奥側端面に点接触で係合する外形を有することを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項6】
請求項1に記載のエスカレータ用治具において、
合成繊維を含んで構成されるナイロンガイドである端末ガイドを手前側に移動させることを特徴とするエスカレータ用治具。
【請求項7】
請求項1に記載のエスカレータ用治具において、
係合部は、ナイロンガイドのうち前記幅方向の奥側端面の外形に沿った凹部を有することを特徴とするエスカレータ用治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−116542(P2011−116542A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277778(P2009−277778)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】