エスカレータ
【課題】運転指令の内容とステップの移動状態とに基づき、必要に応じてステップの移動を制動することができるエスカレータを提供することである。
【解決手段】エスカレータは、ステップチェーンと、ステップと、上部スプロケット軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、電動機と、電動機からの動力を減じて出力する軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットの間に設けられた主駆動伝達チェーンと、ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、電磁ブレーキ部の軸に固定された制動用スプロケットと、上部スプロケット軸上に固定された自走防止用スプロケットと、制動用スプロケットと自走防止用スプロケットの間に設けられた自走防止チェーンと、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて電磁ブレーキ部を制御する制御部とを備える。
【解決手段】エスカレータは、ステップチェーンと、ステップと、上部スプロケット軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、電動機と、電動機からの動力を減じて出力する軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットの間に設けられた主駆動伝達チェーンと、ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、電磁ブレーキ部の軸に固定された制動用スプロケットと、上部スプロケット軸上に固定された自走防止用スプロケットと、制動用スプロケットと自走防止用スプロケットの間に設けられた自走防止チェーンと、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて電磁ブレーキ部を制御する制御部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、エスカレータに係り、特に、上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとを有するエスカレータに関する。
【背景技術】
【０００２】
現在、商業施設等の様々な場所にエスカレータが設置されている。エスカレータの構造の一例として、上方側の乗降口部には、上部スプロケットが設けられ、下方側の乗降口部には、下部スプロケットが設けられている。そして、上部スプロケットと下部スプロケットとの間には、無端状のステップチェーンが巻き掛けられ、ステップチェーンにはステップが連結されている。一方、エスカレータの駆動源として電動機が設置されおり、電動機の出力からの動力が減速機によって減速され、その動力は減速機の出力軸に固定された原動機スプロケットと、上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンによって上部スプロケットに伝達されている。そして、電動機の回転を機械的に制動する機械式制動装置が設けられ、主駆動伝達チェーンの不具合に対応して制動している。
【０００３】
特許文献１には、乗客コンベヤー装置が開示されている。ここでは、複数本の伝動条体が並列に配置されて乗客コンベヤーの搬送帯を駆動する巻掛伝動機構と、上記伝動条体のそれぞれに配置されて対向した上記伝動条体の破断を検出して動作する破断検出器を備えると述べられている。さらに、これらの破断検出器に接続されて上記破断検出器の動作数が所定値をこえたときに動作する破断数検出装置と、この破断数検出装置の動作を介して作動して上記乗客コンベヤーの運転を異常時制御する異常時制御装置を備えると述べられている。そして、異常時制御装置を作動して乗客コンベヤーの運転を異常時停止するものとしたことが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００３−３３５４９３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
上記特許文献１の構成によれば、エスカレータの主駆動伝達チェーンに不具合があった場合でもステップの移動を制動することができるため安全性を確保している。しかし、万が一にでも、運転指令と実際のステップの移動状態とがずれてしまう可能性もあるため、より安全性を確保することが望まれる。
【０００６】
本発明の目的は、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づき必要に応じてステップの移動を制動することができるエスカレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明に係るエスカレータは、上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状のステップチェーンと、ステップチェーンに連結され循環駆動されるステップと、上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、電動機と、電動機からの動力の回転速度を減じて動力を出力する出力軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンと、ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、電磁ブレーキ部の出力軸に固定された制動用スプロケットと、上部スプロケットと同軸上に固定された自走防止用スプロケットと、制動用スプロケットと自走防止用スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の自走防止チェーンと、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて異常があると判断したときに電磁ブレーキ部を制御する制御部と、を備える。
【０００８】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、運転指令が出ていないにもかかわらずステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【０００９】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、所定の速度範囲内でステップが移動するように運転指令が出ているにもかかわらず所定の速度範囲内から外れているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【００１０】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、運転指令によって指令されるステップの移動方向と反対方向にステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
上記構成は、電磁ブレーキ部を制御する制御部を備えている。これにより、運転指令の内容とステップの移動状態に基づき異常があると判断したときにステップの移動を制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の第１実施形態であるエスカレータを示す図である。
【図２】図１において矢印Ａ方向からドライブユニットを見た様子を示す図である。
【図３】図２において矢印Ｂ方向から駆動部を見た様子を示す図である。
【図４】図２において矢印Ｃ方向から制動部を見た様子を示す図である。
【図５】エスカレータの制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【００１４】
図１は、本発明の第１実施形態であるエスカレータ１０を示す図である。エスカレータ１０は、移動手摺６と、ステップ８と、ステップチェーン１２と、方向速度検出器１７と、上部スプロケット２２を含んだドライブユニット２０と、下部スプロケット１６と、制御部３０を含んで構成される。
【００１５】
移動手摺６は、エスカレータ１０を利用する乗客が手を添え又は掴まる部分である。移動手摺６は長手方向の両端部を接合して無端状となっている。
【００１６】
ステップチェーン１２は、上部スプロケット２２と下部スプロケット１６との間に巻き掛けて取り付けられる無端状のチェーンであって、ドライブユニット２０からの駆動力によって循環駆動される。
【００１７】
下部スプロケット１６は、下方側の乗降口部１４に設けられる歯車であり、上部スプロケット２２と協働してステップチェーン１２を循環駆動させる。
【００１８】
ステップ８は、乗客が一人または二人乗れる程度の大きさを有し、ステップチェーン１２に連結される。エスカレータ１０が運転状態のときは、複数のステップ８の踏板面が水平な状態を保ちつつ循環駆動される。また、ステップ８にはスリップ防止のための溝が複数設けられている。
【００１９】
方向速度検出器１７は、ステップ８の移動を監視できる位置に取り付けられ、ステップ８の移動速度を検出するとともにステップ８の移動方向を検出し、制御部３０に対してそれらの情報を伝達する装置である。
【００２０】
図２は、図１において矢印Ａ方向からドライブユニット２０を見た様子を示す図である。ドライブユニット２０は、上部スプロケット軸２１と、上部スプロケット軸２１に固定された２つの上部スプロケット２２と、駆動部２２０と、制動部２１０とを含んで構成される。駆動部２２０は、主駆動伝達スプロケット２２２と、電動機２３０と、減速機２２８と、原動機スプロケット２２６と、主駆動伝達チェーン２２４とを含んで構成される。制動部２１０は、電磁ブレーキ部２１８と、制動用スプロケット２１６と、自走防止用スプロケット２１２と、自走防止チェーン２１４とを含んで構成される。
【００２１】
上部スプロケット２２は、上方側の乗降口部１８に設けられる駆動歯車であり、駆動部２２０からの動力により、下部スプロケット１６と協働してステップチェーン１２を循環駆動する。
【００２２】
図３は、図２において矢印Ｂ方向から駆動部２２０を見た様子を示す図である。主駆動伝達スプロケット２２２は、２つの上部スプロケット２２が固定される上部スプロケット軸２１において一方側の上部スプロケット２２よりも端部側に固定される歯車であり、その直径は上部スプロケット２２よりも少し小さい。
【００２３】
電動機２３０は、電気エネルギを機械エネルギに変換して生成された動力を電動機出力軸２３１から出力する装置である。電動機２３０には、主駆動伝達チェーン２２４の不具合に応じて電動機出力軸２３１の回転を機械的に制動する機械式制動装置（図示しない）が設けられている。
【００２４】
減速機２２８は、減速機入力軸２２７から入力された動力の回転速度を減じた動力を減速機出力軸２２５から出力する装置である。減速機出力軸２２５には、主駆動伝達スプロケット２２２よりも小さい直径の歯車である原動機スプロケット２２６が固定されている。
【００２５】
主駆動伝達チェーン２２４は、主駆動伝達スプロケット２２２と原動機スプロケット２２６との間に巻き掛けられるチェーンである。電動機チェーン２２９は、電動機出力軸２３１に固定されたスプロケット（図示しない）と減速機入力軸２２７に固定されたスプロケット（図示しない）との間に巻き掛けられるチェーンである。
【００２６】
図４は、図２において矢印Ｃ方向から制動部２１０を見た様子を示す図である。自走防止用スプロケット２１２は、主駆動伝達スプロケット２２２とほぼ同径の歯車であり、上部スプロケット軸２１において、主駆動伝達スプロケット２２２が取り付けられた側と反対側であって他方側の上部スプロケット２２よりも端部側に取り付けられる。
【００２７】
電磁ブレーキ部２１８は、ブレーキコイル２１８ａとブレーキシュー２１８ｂとを含んで構成される。ブレーキコイル２１８ａが励磁されると、電磁ブレーキ出力軸２１５の周囲に配置されるブレーキシュー２１８ｂが電磁ブレーキ出力軸２１５に接触して摩擦し、電磁ブレーキ出力軸２１５の回転を制動する機能を有する。電磁ブレーキ出力軸２１５には、自走防止用スプロケット２１２よりも直径が小さい制動用スプロケット２１６が固定されている。自走防止チェーン２１４は、自走防止用スプロケット２１２と制動用スプロケット２１６との間に巻き掛けられるチェーンである。
【００２８】
制御部３０は、ドライブユニット２０に対して運転指令を与えて、エスカレータ１０のステップ８を所定の速度範囲内で移動させるように運転し、あるいはステップ８の移動を停止させる機能を有する。また、制御部３０は、エスカレータ１０をステップ８の移動方向が上方側から下方側に移動する方向となる降りエスカレータ、あるいはステップ８の移動方向が下方側から上方側に移動する方向となる昇りエスカレータとなるように制御する。そして、制御部３０は、方向速度検出器１７からの情報に基づいて、ドライブユニット２０に対して運転指令をしていないにもかかわらずステップ８が移動していないかどうか、およびステップ８の移動速度が指令した所定の速度範囲内の速度に入っているか否か、およびステップ８の移動方向が指令した方向と一致しているか否かを判断する機能を有する。
【００２９】
続いて、上記構成からなるエスカレータ１０の動作について、図１〜図５を参照して説明する。図５は、エスカレータ１０の制御部３０の動作を示すフローチャートである。制御部３０は、ドライブユニット２０に対して運転指令を出しているか否かを判断する（Ｓ２）。ドライブユニット２０に対して運転指令を出している場合は、Ｓ６に進む。
【００３０】
ドライブユニット２０に対して、運転指令を出していない場合は、ステップ８が移動しているか否かを判断する（Ｓ４）。そして、ステップ８が移動していると判断したときは、Ｓ１０へと進む。また、ステップ８が移動していないと判断したときは、リターン処理へと進む。
【００３１】
次に、ステップ８の移動方向が指令された方向と一致するか否かを判断する（Ｓ６）。そして、ステップ８の移動方向が指令された方向と一致しないと判断すれば、Ｓ１０へと進む。それから、ステップ８の移動速度が指令された所定の速度範囲内にあるか否かを判断する（Ｓ８）。
【００３２】
そして、ステップ８の移動速度が所定の速度範囲内にあれば、リターン処理へと進む。ステップ８の移動速度が所定の速度範囲内になければ、電磁ブレーキ部２１８に対して制動するように指令を与える（Ｓ１０）。そして、電磁ブレーキ部２１８は、電磁ブレーキ出力軸２１５の回転動作を停止させ、その制動力が制動用スプロケット２１６と自走防止チェーン２１４を介して自走防止用スプロケット２１２に伝達される。これにより、自走防止用スプロケット２１２と上部スプロケット軸２１を介して上部スプロケット２２の回転動作を停止することができる。したがって、制御部３０の運転指令とステップ８の移動状態とに基づいて、必要に応じてステップ８の移動を制動することができる。
【符号の説明】
【００３３】
６ 移動手摺、８ ステップ、１０ エスカレータ、１２ ステップチェーン、１４ 下方側の乗降口部、１６ 下部スプロケット、１７ 方向速度検出器、１８ 上方側の乗降口部、２０ ドライブユニット、２１ 上部スプロケット軸、２２ 上部スプロケット、３０ 制御部、２１０ 制動部、２１２ 自走防止用スプロケット、２１４ 自走防止チェーン、２１５ 電磁ブレーキ出力軸、２１６ 制動用スプロケット、２１８ａ ブレーキコイル、２１８ｂ ブレーキシュー、２１８ 電磁ブレーキ部、２２０ 駆動部、２２２ 主駆動伝達スプロケット、２２４ 主駆動伝達チェーン、２２５ 減速機出力軸、２２６ 原動機スプロケット、２２７ 減速機入力軸、２２８ 減速機、２２９ 電動機チェーン、２３０ 電動機、２３１ 電動機出力軸。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、エスカレータに係り、特に、上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとを有するエスカレータに関する。
【背景技術】
【０００２】
現在、商業施設等の様々な場所にエスカレータが設置されている。エスカレータの構造の一例として、上方側の乗降口部には、上部スプロケットが設けられ、下方側の乗降口部には、下部スプロケットが設けられている。そして、上部スプロケットと下部スプロケットとの間には、無端状のステップチェーンが巻き掛けられ、ステップチェーンにはステップが連結されている。一方、エスカレータの駆動源として電動機が設置されおり、電動機の出力からの動力が減速機によって減速され、その動力は減速機の出力軸に固定された原動機スプロケットと、上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンによって上部スプロケットに伝達されている。そして、電動機の回転を機械的に制動する機械式制動装置が設けられ、主駆動伝達チェーンの不具合に対応して制動している。
【０００３】
特許文献１には、乗客コンベヤー装置が開示されている。ここでは、複数本の伝動条体が並列に配置されて乗客コンベヤーの搬送帯を駆動する巻掛伝動機構と、上記伝動条体のそれぞれに配置されて対向した上記伝動条体の破断を検出して動作する破断検出器を備えると述べられている。さらに、これらの破断検出器に接続されて上記破断検出器の動作数が所定値をこえたときに動作する破断数検出装置と、この破断数検出装置の動作を介して作動して上記乗客コンベヤーの運転を異常時制御する異常時制御装置を備えると述べられている。そして、異常時制御装置を作動して乗客コンベヤーの運転を異常時停止するものとしたことが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００３−３３５４９３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
上記特許文献１の構成によれば、エスカレータの主駆動伝達チェーンに不具合があった場合でもステップの移動を制動することができるため安全性を確保している。しかし、万が一にでも、運転指令と実際のステップの移動状態とがずれてしまう可能性もあるため、より安全性を確保することが望まれる。
【０００６】
本発明の目的は、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づき必要に応じてステップの移動を制動することができるエスカレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明に係るエスカレータは、上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状のステップチェーンと、ステップチェーンに連結され循環駆動されるステップと、上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、電動機と、電動機からの動力の回転速度を減じて動力を出力する出力軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンと、ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、電磁ブレーキ部の出力軸に固定された制動用スプロケットと、上部スプロケットと同軸上に固定された自走防止用スプロケットと、制動用スプロケットと自走防止用スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の自走防止チェーンと、運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて異常があると判断したときに電磁ブレーキ部を制御する制御部と、を備える。
【０００８】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、運転指令が出ていないにもかかわらずステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【０００９】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、所定の速度範囲内でステップが移動するように運転指令が出ているにもかかわらず所定の速度範囲内から外れているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【００１０】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、制御部は、運転指令によって指令されるステップの移動方向と反対方向にステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
上記構成は、電磁ブレーキ部を制御する制御部を備えている。これにより、運転指令の内容とステップの移動状態に基づき異常があると判断したときにステップの移動を制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の第１実施形態であるエスカレータを示す図である。
【図２】図１において矢印Ａ方向からドライブユニットを見た様子を示す図である。
【図３】図２において矢印Ｂ方向から駆動部を見た様子を示す図である。
【図４】図２において矢印Ｃ方向から制動部を見た様子を示す図である。
【図５】エスカレータの制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【００１４】
図１は、本発明の第１実施形態であるエスカレータ１０を示す図である。エスカレータ１０は、移動手摺６と、ステップ８と、ステップチェーン１２と、方向速度検出器１７と、上部スプロケット２２を含んだドライブユニット２０と、下部スプロケット１６と、制御部３０を含んで構成される。
【００１５】
移動手摺６は、エスカレータ１０を利用する乗客が手を添え又は掴まる部分である。移動手摺６は長手方向の両端部を接合して無端状となっている。
【００１６】
ステップチェーン１２は、上部スプロケット２２と下部スプロケット１６との間に巻き掛けて取り付けられる無端状のチェーンであって、ドライブユニット２０からの駆動力によって循環駆動される。
【００１７】
下部スプロケット１６は、下方側の乗降口部１４に設けられる歯車であり、上部スプロケット２２と協働してステップチェーン１２を循環駆動させる。
【００１８】
ステップ８は、乗客が一人または二人乗れる程度の大きさを有し、ステップチェーン１２に連結される。エスカレータ１０が運転状態のときは、複数のステップ８の踏板面が水平な状態を保ちつつ循環駆動される。また、ステップ８にはスリップ防止のための溝が複数設けられている。
【００１９】
方向速度検出器１７は、ステップ８の移動を監視できる位置に取り付けられ、ステップ８の移動速度を検出するとともにステップ８の移動方向を検出し、制御部３０に対してそれらの情報を伝達する装置である。
【００２０】
図２は、図１において矢印Ａ方向からドライブユニット２０を見た様子を示す図である。ドライブユニット２０は、上部スプロケット軸２１と、上部スプロケット軸２１に固定された２つの上部スプロケット２２と、駆動部２２０と、制動部２１０とを含んで構成される。駆動部２２０は、主駆動伝達スプロケット２２２と、電動機２３０と、減速機２２８と、原動機スプロケット２２６と、主駆動伝達チェーン２２４とを含んで構成される。制動部２１０は、電磁ブレーキ部２１８と、制動用スプロケット２１６と、自走防止用スプロケット２１２と、自走防止チェーン２１４とを含んで構成される。
【００２１】
上部スプロケット２２は、上方側の乗降口部１８に設けられる駆動歯車であり、駆動部２２０からの動力により、下部スプロケット１６と協働してステップチェーン１２を循環駆動する。
【００２２】
図３は、図２において矢印Ｂ方向から駆動部２２０を見た様子を示す図である。主駆動伝達スプロケット２２２は、２つの上部スプロケット２２が固定される上部スプロケット軸２１において一方側の上部スプロケット２２よりも端部側に固定される歯車であり、その直径は上部スプロケット２２よりも少し小さい。
【００２３】
電動機２３０は、電気エネルギを機械エネルギに変換して生成された動力を電動機出力軸２３１から出力する装置である。電動機２３０には、主駆動伝達チェーン２２４の不具合に応じて電動機出力軸２３１の回転を機械的に制動する機械式制動装置（図示しない）が設けられている。
【００２４】
減速機２２８は、減速機入力軸２２７から入力された動力の回転速度を減じた動力を減速機出力軸２２５から出力する装置である。減速機出力軸２２５には、主駆動伝達スプロケット２２２よりも小さい直径の歯車である原動機スプロケット２２６が固定されている。
【００２５】
主駆動伝達チェーン２２４は、主駆動伝達スプロケット２２２と原動機スプロケット２２６との間に巻き掛けられるチェーンである。電動機チェーン２２９は、電動機出力軸２３１に固定されたスプロケット（図示しない）と減速機入力軸２２７に固定されたスプロケット（図示しない）との間に巻き掛けられるチェーンである。
【００２６】
図４は、図２において矢印Ｃ方向から制動部２１０を見た様子を示す図である。自走防止用スプロケット２１２は、主駆動伝達スプロケット２２２とほぼ同径の歯車であり、上部スプロケット軸２１において、主駆動伝達スプロケット２２２が取り付けられた側と反対側であって他方側の上部スプロケット２２よりも端部側に取り付けられる。
【００２７】
電磁ブレーキ部２１８は、ブレーキコイル２１８ａとブレーキシュー２１８ｂとを含んで構成される。ブレーキコイル２１８ａが励磁されると、電磁ブレーキ出力軸２１５の周囲に配置されるブレーキシュー２１８ｂが電磁ブレーキ出力軸２１５に接触して摩擦し、電磁ブレーキ出力軸２１５の回転を制動する機能を有する。電磁ブレーキ出力軸２１５には、自走防止用スプロケット２１２よりも直径が小さい制動用スプロケット２１６が固定されている。自走防止チェーン２１４は、自走防止用スプロケット２１２と制動用スプロケット２１６との間に巻き掛けられるチェーンである。
【００２８】
制御部３０は、ドライブユニット２０に対して運転指令を与えて、エスカレータ１０のステップ８を所定の速度範囲内で移動させるように運転し、あるいはステップ８の移動を停止させる機能を有する。また、制御部３０は、エスカレータ１０をステップ８の移動方向が上方側から下方側に移動する方向となる降りエスカレータ、あるいはステップ８の移動方向が下方側から上方側に移動する方向となる昇りエスカレータとなるように制御する。そして、制御部３０は、方向速度検出器１７からの情報に基づいて、ドライブユニット２０に対して運転指令をしていないにもかかわらずステップ８が移動していないかどうか、およびステップ８の移動速度が指令した所定の速度範囲内の速度に入っているか否か、およびステップ８の移動方向が指令した方向と一致しているか否かを判断する機能を有する。
【００２９】
続いて、上記構成からなるエスカレータ１０の動作について、図１〜図５を参照して説明する。図５は、エスカレータ１０の制御部３０の動作を示すフローチャートである。制御部３０は、ドライブユニット２０に対して運転指令を出しているか否かを判断する（Ｓ２）。ドライブユニット２０に対して運転指令を出している場合は、Ｓ６に進む。
【００３０】
ドライブユニット２０に対して、運転指令を出していない場合は、ステップ８が移動しているか否かを判断する（Ｓ４）。そして、ステップ８が移動していると判断したときは、Ｓ１０へと進む。また、ステップ８が移動していないと判断したときは、リターン処理へと進む。
【００３１】
次に、ステップ８の移動方向が指令された方向と一致するか否かを判断する（Ｓ６）。そして、ステップ８の移動方向が指令された方向と一致しないと判断すれば、Ｓ１０へと進む。それから、ステップ８の移動速度が指令された所定の速度範囲内にあるか否かを判断する（Ｓ８）。
【００３２】
そして、ステップ８の移動速度が所定の速度範囲内にあれば、リターン処理へと進む。ステップ８の移動速度が所定の速度範囲内になければ、電磁ブレーキ部２１８に対して制動するように指令を与える（Ｓ１０）。そして、電磁ブレーキ部２１８は、電磁ブレーキ出力軸２１５の回転動作を停止させ、その制動力が制動用スプロケット２１６と自走防止チェーン２１４を介して自走防止用スプロケット２１２に伝達される。これにより、自走防止用スプロケット２１２と上部スプロケット軸２１を介して上部スプロケット２２の回転動作を停止することができる。したがって、制御部３０の運転指令とステップ８の移動状態とに基づいて、必要に応じてステップ８の移動を制動することができる。
【符号の説明】
【００３３】
６ 移動手摺、８ ステップ、１０ エスカレータ、１２ ステップチェーン、１４ 下方側の乗降口部、１６ 下部スプロケット、１７ 方向速度検出器、１８ 上方側の乗降口部、２０ ドライブユニット、２１ 上部スプロケット軸、２２ 上部スプロケット、３０ 制御部、２１０ 制動部、２１２ 自走防止用スプロケット、２１４ 自走防止チェーン、２１５ 電磁ブレーキ出力軸、２１６ 制動用スプロケット、２１８ａ ブレーキコイル、２１８ｂ ブレーキシュー、２１８ 電磁ブレーキ部、２２０ 駆動部、２２２ 主駆動伝達スプロケット、２２４ 主駆動伝達チェーン、２２５ 減速機出力軸、２２６ 原動機スプロケット、２２７ 減速機入力軸、２２８ 減速機、２２９ 電動機チェーン、２３０ 電動機、２３１ 電動機出力軸。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状のステップチェーンと、
ステップチェーンに連結され循環駆動されるステップと、
上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、
電動機と、
電動機からの動力の回転速度を減じて動力を出力する出力軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、
主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンと、
ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、
電磁ブレーキ部の出力軸に固定された制動用スプロケットと、
上部スプロケットと同軸上に固定された自走防止用スプロケットと、
制動用スプロケットと自走防止用スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の自走防止チェーンと、
運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて異常があると判断したときに電磁ブレーキ部を制御する制御部と、
を備えるエスカレータ。
【請求項２】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、運転指令が出ていないにもかかわらずステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【請求項３】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、所定の速度範囲内でステップが移動するように運転指令が出ているにもかかわらず所定の速度範囲内から外れているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【請求項４】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、運転指令によって指令されるステップの移動方向と反対方向にステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【請求項１】
上方側の乗降口部に設けられた上部スプロケットと下方側の乗降口部に設けられた下部スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状のステップチェーンと、
ステップチェーンに連結され循環駆動されるステップと、
上部スプロケットと同軸上に固定された主駆動伝達スプロケットと、
電動機と、
電動機からの動力の回転速度を減じて動力を出力する出力軸に固定された原動機スプロケットを有する減速機と、
主駆動伝達スプロケットと原動機スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の主駆動伝達チェーンと、
ステップの移動を制動する電磁ブレーキ部と、
電磁ブレーキ部の出力軸に固定された制動用スプロケットと、
上部スプロケットと同軸上に固定された自走防止用スプロケットと、
制動用スプロケットと自走防止用スプロケットとの間に巻き掛けられた無端状の自走防止チェーンと、
運転指令の内容とステップの移動状態とに基づいて異常があると判断したときに電磁ブレーキ部を制御する制御部と、
を備えるエスカレータ。
【請求項２】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、運転指令が出ていないにもかかわらずステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【請求項３】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、所定の速度範囲内でステップが移動するように運転指令が出ているにもかかわらず所定の速度範囲内から外れているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【請求項４】
請求項１に記載のエスカレータにおいて、
ステップの移動方向と移動速度とを検出する方向速度検出部をさらに備え、
制御部は、運転指令によって指令されるステップの移動方向と反対方向にステップが移動しているときにステップの移動を制動するように電磁ブレーキ部を制御することを特徴とするエスカレータ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１０−１５９１５２（Ｐ２０１０−１５９１５２Ａ）
【公開日】平成２２年７月２２日（２０１０．７．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−３５８９（Ｐ２００９−３５８９）
【出願日】平成２１年１月９日（２００９．１．９）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年７月２２日（２０１０．７．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１月９日（２００９．１．９）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
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