説明

エスカレータ

【課題】エスカレータにおいて、輸送人数と設置スペースを維持しつつ、利用者の踏段上の歩行を防止することができるようにする。
【解決手段】エスカレータ10は、二列に併設された1人用の踏段16と、併設された踏段16の間に設けられた欄干14上にスライド可能に取り付けられる移動手摺18とを有する。この構成により、2人用タイプのエスカレータと同様の輸送人数と設置スペースを維持しつつ、利用者50の踏段16上の歩行を防止することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエスカレータに関し、踏段と移動手摺の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータは、利用者を輸送する装置である。エスカレータは、一般的に、乗り口と降り口とからなる一対の乗降口の間を無端状に連結される複数の踏段と、踏段の両側に設けられた欄干上にスライド可能に取り付けられる無端状の移動手摺と、踏段と移動手摺をそれぞれ回動させる駆動装置とを有する。駆動装置の動作により、移動手摺に手を掛けて、循環走行する踏段に乗った利用者が、一方の乗降口から他方の乗降口へと移動する。
【0003】
エスカレータには、多くの利用者を輸送するため、2人の利用者が1つの踏段に並んで乗ることができるタイプ(以降、単に「2人用タイプ」と記す)のものがある。通常、エスカレータでは踏段の上を歩くことが禁止されている。しかし、2人用タイプのエスカレータにおいては、踏段の一方側が利用者の歩行用スペースとして使用される例がある。
【0004】
下記特許文献1には、踏段と、踏段の両側に設けられた1対の欄干と、これらの欄干上に取り付けられる移動手摺とを有する乗客コンベアが2台併設されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−293489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2人用タイプのエスカレータにおいては、上述したように踏段の一方側が利用者の歩行用スペースとして使用される場合があるので、そのスペースを歩く利用者がバランスを崩したり、踏段につまずいたりして転倒する可能性がある。さらに、そのスペースを歩く利用者が、他の利用者、例えば踏段の他方側に乗っている利用者に接触してしまい、予期せぬ事故が発生する可能性がある。このため、エスカレータに、踏段上の歩行が危険であるという注意を促すアナウンスをする音声発生器を設けるなどして、事故を未然に防止する対策を行なっている。しかし、利用者の踏段上の歩行を完全に防止することはできない。
【0007】
このような問題を解決するため、1人の利用者のみが1つの踏段に乗ることができるタイプ(以降、単に「1人用タイプ」と記す)のエレベータを採用することも考えられる。しかし、エレベータの輸送人数が大幅に低下してしまう。
【0008】
2人用タイプのエスカレータと同等の輸送人数を確保するため、上記特許文献1のようにエスカレータを2台併設させることも考えられる。しかし、1人用タイプのエスカレータを2台併設させるための設置スペースは、2人用タイプのエスカレータの設置スペースよりも大幅に増加してしまう。
【0009】
本発明の目的は、輸送人数と設置スペースを維持しつつ、利用者の踏段上の歩行を防止することができるエスカレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対の乗降口の間を二列に併設された1人用の踏段と、併設された踏段の間に設けられた欄干上にスライド可能に取り付けられる移動手摺とを有することを特徴とする。
【0011】
また、欄干に対向する、各列の踏段の端部側に設けられ、利用者の落下を防止する落下防止壁を有することができる。
【0012】
また、一方の列の踏段と他方の列の踏段とは、互いに、利用者が乗る踏板が半ステップずれた状態で設けられることができる。
【0013】
また、二列の踏段は、同一の駆動レールによりガイドされることができる。
【0014】
また、このエスカレータのトラスは、2人用タイプのエスカレータのトラスと同等の幅とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエスカレータによれば、輸送人数と設置スペースを維持しつつ、利用者の踏段上の歩行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るエスカレータの構成を示す図である。
【図2】図1のA方向から見た図である。
【図3】踏段の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るエスカレータの実施形態について、図を用いて説明する。一例として、異なる高さの床に掛け渡されるエスカレータを挙げ、このエスカレータの構成について説明する。なお、本発明は、このエスカレータに限らず、同じ高さの床に掛け渡される移動コンベア、いわゆる動く歩道にも適用することができる。
【0018】
図1は、本実施形態に係るエスカレータ10の構成を示す図である。エスカレータ10は、このエスカレータ10の自重及び荷重を支えるトラス12を有する。トラス12は、図1に示されるように、建物の上階床と下階床との間に掛け渡される。トラス12は、上階床に接続する上階側水平部12aと、下階床に接続する下階側水平部12bと、これらの水平部12a,12bの間に設けられる傾斜部12cとを有する。上階側水平部12a及び下階側水平部12bには、それぞれ機械室が設けられる。
【0019】
また、トラス12には、欄干14がトラス12の長手方向に沿って立設されている。さらに、トラス12には、複数の踏段16が上階側水平部12aと下階側水平部12bとの間を循環移動可能に設けられている。欄干14には、手摺レール(図示せず)が設けられている。手摺レールには、移動手摺18が走行可能に掛け渡されている。移動手摺18の走行は、手摺レールによって案内される。
【0020】
上階側水平部12aの機械室には、駆動源であるモータ20と、主駆動スプロケット22と、上部スプロケット24と、主手摺駆動スプロケット26と、制御装置28とがそれぞれ設けられている。一方、下階側水平部12bの機械室には、下部スプロケット30が設けられている。モータ20の回転軸には、出力用スプロケット(図示せず)が取り付けられている。モータ20の動作は、制御装置28によって制御される。
【0021】
モータ20の出力用スプロケットと主駆動スプロケット22とには、無端状の主駆動チェーン32が巻き掛けられている。主駆動スプロケット22と上部スプロケット24と主手摺駆動スプロケット26とは、いずれも同期して回転可能に、同一の回転軸上に配置される。上部スプロケット24と下部スプロケット30とには、走行方向に互いに隣り合う踏段16同士を連結する無端状の踏段チェーン34が巻き掛けられている。この構成により、モータ20の駆動力が、駆動チェーン32、主駆動スプロケット22を介して、踏段チェーン34に伝達され、踏段16が走行する。
【0022】
傾斜部12cの上階側水平部12aの近傍には、第1手摺駆動スプロケット36と、移動手摺18を駆動させる手摺駆動装置38とが設けられている。第1手摺駆動スプロケット36と主手摺駆動スプロケット26とは、無端状の第1手摺駆動チェーン40を介して互いに接続されている。そして、手摺駆動装置38と第1手動駆動スプロケット36とは、無端状の第2手摺駆動チェーン42を介して互いに接続されている。この構成により、モータ20の駆動力が、主駆動チェーン32、主駆動スプロケット22、主手摺駆動スプロケット26、第1手摺駆動チェーン40、第1手摺駆動スプロケット36及び第2手摺駆動チェーン42を介して、手摺駆動装置38に伝達され、移動手摺18が走行する。
【0023】
このように構成されるエスカレータ10においては、制御装置28により制御されたモータ20の出力により、踏段16と移動手摺18を互いに同期させて循環走行させることができる。
【0024】
本実施形態のエスカレータ10は、一対の乗降口の間を二列に併設された1人用の踏段16の間に欄干14が設けられ、この欄干14上に移動手摺18が取り付けられている。このように、2列の踏段16間に移動手摺18を設けることにより、通常、一対、すなわち2つ必要な移動手摺18の数が1つに削減される。よって、エスカレータ10の構成が簡略化される。また、この簡略化により、2人用タイプのエスカレータと同様の輸送人員を確保しつつ設置スペースを維持することができる。さらに、二列の踏段16は共に1人用であるので、踏段16の一方側が利用者の歩行用スペースとして使用されることがなく、利用者の踏段16上の歩行を防止することができる。
【0025】
上述したエスカレータ10の特徴的な構成について、図2を用いて説明する。図2は、図1のA方向から見た図である。
【0026】
1人用の踏段16が二列に並列されている。1人用の踏段16とは、図2に示されるように、踏段16の幅方向において、利用者50が1人のみ乗ることができる大きさを有する踏段16のことであり、例えば踏段16の幅が600mmである。このような1人用の踏段16においては、この踏段16の一方側が利用者の歩行用スペースとなることがない。
【0027】
二列に並列される踏段16の間には、欄干14が立設されている。そして、この欄干14上には、移動手摺18が取り付けられている。この構成により、各踏段16に乗る利用者は、共通の移動手摺18に手を掛けることができる。
【0028】
また、一方の列の踏段16と他方の列の踏段16とは、図2に示されるように、互いに、利用者50が乗る踏板が半ステップずれた状態で設けられる。このように、隣り合う踏段16が走行方向に対してずれて配置されることにより、それらの踏段16にそれぞれ乗る利用者50の位置がずれるので、移動手摺18上で、これらの利用者50の手が触れてしまうことを抑制することができる。
【0029】
一方、欄干14に対向する、各列の踏段16の端部側、すなわちエスカレータ10の幅方向の両端部には落下防止壁52が立設されている。この落下防止壁52により、エスカレータ10からの利用者50の落下を防止することができる。なお、欄干14と落下防止壁52とには、スカートガードが設けられる。
【0030】
このように構成されるエスカレータ10のトラス12は、2人用タイプのものと同等の幅であることが好適である。これにより、2人用タイプのエスカレータと同様の輸送人員を確保しつつ設置スペースを維持することができる。
【0031】
次に、踏段16の構成について、図3を用いて説明する。一例として、二列に並んだ踏段16であって、走行方向に互いにずれた踏段16を1個ずつ挙げ、これらの踏段16の構成について説明する。
【0032】
踏段16は、利用者50が乗る踏板54と、踏段16のけあげ部分であるライザ56とを有する。また、踏段16は、前輪である一対の駆動ローラ58と、後輪である一対の追従ローラ60とをそれぞれ有する。駆動ローラ58は、踏段16の幅方向に伸びるステップ軸62に回転可能に支持され、このステップ軸62が踏段チェーン34に接続される。ステップ軸62は、各踏段16に設けられる。そして、踏段チェーン34の駆動により、駆動ローラ58と追従ローラ60は、トラス12内に設けられた駆動レール64と追従レール66によりそれぞれ案内され、踏段16が循環走行する。
【0033】
このように、二列の踏段16は、異なる踏段チェーンではなく、同一の踏段チェーン34により駆動される。そして、二列の踏段16は、異なる駆動レールではなく、同一の駆動レール64によりガイドされる。
【0034】
このように構成されるエスカレータ10によれば、踏段16が併設されているにもかかわらず、従来のエスカレータの踏段を駆動させる駆動機構をそのまま利用して、二列の踏段16を走行させることができる。
【0035】
本実施形態においては、一方の列の踏段16と他方の列の踏段16とは、互いに、利用者50が乗る踏板54が半ステップずれた状態で設けられる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。一方の列の踏段16と他方の列の踏段16とが、走行方向においてずれずに設けられてもよい。この場合、一方の列の踏段16と他方の列の踏段16とには共通のステップ軸が設けられる。
【符号の説明】
【0036】
10 エスカレータ、14 欄干、16 踏段、18 移動手摺、50 利用者、52 落下防止壁、64 駆動レール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の乗降口の間を二列に併設された1人用の踏段と、
併設された踏段の間に設けられた欄干上にスライド可能に取り付けられる移動手摺と、
を有することを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータにおいて、
欄干に対向する、各列の踏段の端部側に設けられ、利用者の落下を防止する落下防止壁を有する、
ことを特徴とするエスカレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエスカレータにおいて、
一方の列の踏段と他方の列の踏段とは、互いに、利用者が乗る踏板が半ステップずれた状態で設けられる、
ことを特徴とするエスカレータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のエスカレータにおいて、
二列の踏段は、同一の駆動レールによりガイドされる、
ことを特徴とするエスカレータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のエスカレータにおいて、
このエスカレータのトラスは、2人用タイプのエスカレータのトラスと同等の幅である、
ことを特徴とするエスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195267(P2011−195267A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63950(P2010−63950)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】