説明

エステル−ベースのコンクリート表面凝結遅延剤

コンクリートまたは他の水和性セメント質組成物の表面を凝結遅延する本発明の組成物および方法は、液体状態で噴霧適用可能な連続的非水性担体相内に粒子状態で含まれるか、または分散された不連続相として含まれる少なくとも1種のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルの使用が関与する。硬化凝結遅延剤はより低いpHを達成するために役立ち、そして従来の酸を含有する表面凝結遅延剤と比べた場合、表面凝結遅延剤の噴霧適用中に曇の刺激を回避するために役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コンクリート表面の凝結遅延化(retarding)に関し、そして特にコンクリート、モルタルおよび他の水和性セメント質材料に適用するための油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキルエステルを含んでなる表面凝結遅延剤(retarder)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の説明
表面凝結遅延剤は、セメントおよびコンクリート組成物の表面を処理するために使用される組成物である。例えば骨材を含有する新しいコンクリートを注入し、そして平らにし、次いで凝結遅延剤をその表面に水溶液として約200g/mの割合で噴霧する。数時間後、処理された表面を高圧のジェット水流で洗浄して未硬化セメントを除去し、そして骨材を表面に露出させることができる。
【0003】
特許文献1(Mauchamp et al.)は、表面凝結遅延剤活性分(例えばリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸またはヘプタグルコン酸を含む酸−ベースの化合物)が植物油誘導体、例えばC−C30脂肪酸のモノおよびジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪族アルコール、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミドおよびトールオイル誘導体中に懸濁された組成物を開示した。この組成物は、セメントの効果的浸食(etching)のために、凝結遅延剤活性分がセメント表面に浸透できる好機を提供する湿潤フィルムコーティングの噴霧適用を可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,037,367B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願者は、酸−ベースの凝結遅延剤の腐食効果を最少とし、しかも凝結遅延剤処理がコンクリート上に噴霧適用される場合に曇(fog)の刺激を回避すると同時に、コンクリート表面に明瞭な浸食を得るために、pH中性、または少なくとも低下した酸性度(decreased acidity)の新規表面凝結遅延剤組成物および方法が必要であると考える。
【0006】
本発明の目的は、そのような新規組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、液体状態で噴霧適用可能な連続的非水性担体相に分布された、粒子状態かまたは不連続液体相として含まれる少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルを含んでなる新規な表面凝結遅延剤組成物を提供する。
【0008】
本発明の例示的なヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルは、クエン酸のアルキルエステル、酒石酸のアルキルエステル、リンゴ酸のアルキルエステル、没食子酸の
アルキルエステル、グリコール酸のアルキルエステル、グルコン酸のアルキルエステル、乳酸のアルキルエステル、マンデル酸のアルキルエステル、サリチル酸のアルキルエステル、および4−ヒドロキシブタン酸のアルキルエステルからなる群から選択することができる。
【0009】
本発明の好適なヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルは、アルファ−ヒドロキシカルボニル基またはヒドロキシカルボン酸のアルキル−エステルを有する。最も好適であるのは、クエン酸のアルキルエステル(例えばクエン酸トリエチル)および酒石酸のアルキルエステル(例えば酒石酸ジエチル)である。
【0010】
連続的な非水性油/溶剤または油/担体の担体液体相は、石油−ベースの溶剤、植物油、動物油またはそれらの混合物または誘導体を含んでなることができる。
【0011】
本発明の例示的方法は、コンクリートまたはモルタルまたは他の水和性セメント質材料の硬化を遅延するようにそれらの表面に該新規表面凝結遅延剤組成物を噴霧適用することを含んでなる。該凝結遅延剤組成物が上に適用された該セメント質材料の表面部分は、次いで表面材料の凝結遅延化部分を除去するためにジェット水流を噴霧することにより除去することができる。またこの組成物は、コンクリート組成物を型に注入する前にコンクリートの型に適用し、そして離型コーティングとして使用することができる。
【0012】
本発明は酸性度がより少ない(less acidic)pHレベルを可能にするという点で、従来技術に優る利点を提供すると考える。エステル−ベースの凝結遅延剤成分が固体粉末状態で使用される別の利点は、原料を時間がかかる粉砕工程を必要としない固体粒子で得ることができるので、製造工程で凝結遅延剤粒子を噴霧適用性液体担体により容易に取り込むことができる点である。
【0013】
さらに本発明のアルキルエステル−ベースのヒドロキシカルボキシ表面凝結遅延剤化合物は、コンクリート組成物のpHが上がると強い活性で機能すると考えられ、これによりコンクリート材料でより鋭い浸食が達成されると考えられる「潜在的」な凝結遅延能を与える。
【0014】
従来の硬化凝結遅延剤、顔料、充填材および他の成分を、所望するように硬化凝結遅延剤組成物と混合することができる。
【0015】
本発明の他の特徴および利点を、以下にさらに詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的態様の詳細な説明
本明細書で使用するように、用語「セメント」および「セメント質組成物」(これは「セメント組成物」と同義語である)は、水和性セメント結合材を含んでなるペースト、モルタルおよびコンクリート組成物を称すると理解される。用語「ペースト」、「モルタル」および「コンクリート」は、技術用語である:「ペースト」は水和性セメント結合材(通常、排他的ではないがポートランドセメント、メーソンリーセメントまたはモルタルセメント、そしてこの結合材には石灰岩、消石灰、フライアッシュ、粉砕高炉スラグ、ポゾランおよび煙霧シリカ、またはそのようなセメントに一般的に含まれる他の材料を含んでよい)および水からなる混合物である。「モルタル」はさらに細骨材(例えば砂)を含むペーストであり、そして「コンクリート」はさらに粗骨材(例えば石砂利、石)を含むモルタルである。本発明で使用するセメント質組成物は、特定のセメント組成物を形成させるために応用できるように、必要量の特定材料、例えば水和性セメント、水および細骨材および/または粗骨材を混合することにより形成することができる。
【0017】
本明細書または特許請求の範囲に記載する成分のすべての割合は、特に示さない限り組成物の総重量に対する。
【0018】
前記に要約したように、本発明の例示的な表面凝結遅延剤組成物は、油/溶剤可溶性または油分散性であり、部分的および/または全(par)エステルを含む少なくとも1種のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルを含んでなる。必ずしもではないが好ましくはそのようなアルキルエステルは周囲温度で水不溶性でよく、そして少なくとも1もしくは複数の末端カルボン酸(−COOH)基を有する。最も好ましいのは、アルファ−ヒドロキシカルボニル基[−CR−(OH)−C(=)−]を有するアルキルエステルまたはヒドロキシカルボン酸のアルキルエステルである。
【0019】
本発明での使用に適すると考えられるヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルの例は、クエン酸のアルキルエステル(クエン酸はまた、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、HOOCCHC(OH)(COOH)CHCOOH・HO)としても知られている);酒石酸のアルキルエステル(酒石酸はまたジヒドロキシコハク酸、HOOC(CHOH)COOHとしても知られている);リンゴ酸のアルキルエステル(リンゴ酸はまたヒドロキシコハク酸、COOHCHCH(OH)COOHとしても知られている);没食子酸のアルキルエステル(没食子酸はまた3,4,5,−トリヒドロキシ安息香酸、C(OH)COOHとしても知られている);グリコール酸はまたアルキルエステル(グリコール酸はヒドロキシ酢酸、CHOHCOOHとしても知られている);グルコン酸のアルキルエステル(グルコン酸は式CHOH(CHOH)COOHにより表すことができる);乳酸のアルキルエステル(乳酸は式CHCHOHCOOHにより表すことができる);マンデル酸のアルキルエステル(マンデル酸は式CCHOHCOOHにより表すことができる);サリチル酸のアルキルエステル(サリチル酸は式C(OH)COOH)により表すことができる);および4−ヒドロキシブタン酸のアルキルエステルからなる群から選択される。
【0020】
前述のように、本発明の好適なアルキルエステル表面凝結遅延剤化合物には、クエン酸、酒石酸のエステルまたはそれらの混合物を含む。本発明者は、クエン酸および酒石酸の多数のエステルが市販されており、そしてそれらは本発明での使用に適すると考える。例えばクエン酸メチルおよび酒石酸メチル、クエン酸エチルおよび酒石酸エチル、およびクエン酸ブチルおよび酒石酸ブチルが市販されている。またクエン酸アセチルトリブチルおよび酒石酸ジベンジルも入手できる。
【0021】
エステルがコンクリート中のセメントのアルカリ性環境により分解され得る事実を考慮すると、このエチル形(例えばクエン酸エチル、酒石酸エチル)がこれらの中で最も好適である。
【0022】
本発明のアルキルエステルを含有するヒドロキシカルボキシ組成物は、油/溶剤可溶性および/または油分散性である。換言すると、それらは非水性の油/溶剤液体または油担体液体と適合性であるので、それらは液体として噴霧適用可能な連続的非水性担体相内に溶解され得、かつ/またはその中に分散された固体粒子として運ばれることができる。
【0023】
担体または溶剤として機能する連続液体相は、石油−ベースの、または植物油、動物油もしくは鉱物油から誘導されるもの、またはそれらの誘導体でよく、そして好ましくは周囲温度で噴霧適用可能である。連続的な油担体液体(例えば植物油)または油溶剤(例えば石油系樹脂)の量は、好ましくは液体適用性表面凝結遅延剤組成物の総重量の1〜98%、より好ましくは組成物の総重量の25〜92%、そして最も好ましくは組成物の総重量の50〜90%である。
【0024】
連続的な液体担体相内に分散、溶解または別の方法で分布されるアルキルエステル表面凝結遅延剤成分の総量は、表面凝結遅延剤と一般的に使用される他の化合物(例えば顔料および充填材)を含め、好ましくは組成物の総重量に基づき1%〜20%の範囲の量で含まれる。
【0025】
石油−ベースの溶剤または液体担体が環境的観点から望ましくない場合、Mauchamp et al.の米国特許第7,037,367B2号明細書に開示されているように植物油−ベースまたは鉱物油−ベースの液体担体を使用することができる。本明細書で定義するように、用語「植物油」は(液体、ペーストまたは固体状態のいずれでも)、植物の種子、果実または堅果、および樹液のある木から抽出された産物を意味する(例えばバラゴムノキの樹液、カエデ、リグノスルホネート、松の木の樹液)。植物油は一般に混合グリセリドの混合物になると考えられる(例えばHawley’s Condensed Chemical Dictionary,Ed.N.Irving Sax,Richard J.Lewis,Sr.,11th Ed.(Von Nostrand Reinhold Company,New York 1987),page 1219を参照にされたい)。植物油には限定するわけではないが:菜種油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、落花生油、グレープシード油、トウモロコシ油(例えば、トウモロコシ胚芽油を含む)、キャノーラ油、ココヤシ油、亜麻仁油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、アーモンド油、アボカド油、キリ油(china wood oil)、ココア油、サフラワー油、ヘンプ種油、胡桃油、けし油、オイチシカ油(例えばブラジルのオイチシカ樹木、Licania rigidaの種子からの発現により得られる)、パームナッツ油、えの油、ペカン油、桐油(tung oil)、およびパインタール油がある。菜種油を使用する場合、この量は組成物の総重量の50%以上の量となることができる。
【0026】
例えば本発明の例示的組成物は、好適なエステル−ベースのヒドロキシカルボキシ化合物として酒石酸ジエチルまたはクエン酸トリエチルを含んでなり、そしてこれらのいずれかまたは双方が場合により、糖(例えばグルコネート、シュクロース)のような従来の凝結遅延剤と組み合わされ、そして菜種油のような植物油に分散されることができ、ここで凝結遅延剤:油の比率は組成物の総重量に基づき10:90〜90:10、そしてより好ましくは20:80〜80:20となることができる。
【0027】
さらなる態様では、凝結遅延剤活性分を分散するための植物油誘導体は、C−C30脂肪酸のモノおよびジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C300脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコール、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミドおよびトールオイル誘導体の群から選択することができる。
【0028】
Mauchamp et al.により注記されているように、本発明の目的に有用と考えられる有望な植物油および動物油誘導体の一覧はやや大きい。例となる一覧はNielsen et al.の国際公開第WO85/05066号パンフレット(国際公開番号)、国際出願PCT/CK85/00043号パノフレットの第16頁から始まる。そしてまたこれらも本発明のエステル−ベースのヒドロキシカルボキシ硬化遅延剤成分を分散するか、または別の方法で運ぶために適していると考えられる。
【0029】
この誘導体には酢酸ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸オクチル、酢酸イソオクチル、酢酸セチル、酢酸ドデシル、酢酸トリデシル;酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸アミル、酪酸ヘキシル、酪酸ヘプチル、酪酸イソヘプチル、酪酸オクチル、酪酸イソオクチル、酪酸2−エチルヘキシル、酪酸ノニル、酪酸イソノニル、酪酸セチル、酪酸イソセチル;ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸イソブチル、ヘキサン酸アミル、ヘキサン酸ヘキシル、ヘキサン酸
ヘプチル、ヘキサン酸イソヘプチル、ヘキサン酸オクチル、ヘキサン酸2−エチルヘキシル、ヘキサン酸ノニル、ヘキサン酸イソニニル、ヘキサン酸セチル、ヘキサン酸イソセチル;オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、オクタン酸プロピル、オクタン酸イソプロピル、オクタン酸ブチル、オクタン酸イソブチル、オクタン酸アミン、オクタン酸ヘキシル、オクタン酸ヘプチル、オクタン酸イソヘプチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸イソオクチル、オクタン酸2−エチルヘキシル、オクタン酸ノニル、オクタン酸イソノニル、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル;2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、2−エチルヘキサン酸イソブチル、2−エチルヘキサン酸イソアミル、2−エチルヘキサン酸ヘキシル、2−エチルヘキサン酸ヘプチル、2−エチルヘキサン酸イソヘプチル、2−エチルヘキサン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸イソオクチル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸ノニル、2−エチルヘキサン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル;デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸イソプロピル、デカン酸ブチル、デカン酸イソブチル、デカン酸イソアミル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチル、デカン酸イソヘプチル、デカン酸オクチル、デカン酸イソオクチル、デカン酸2−エチルヘキシル、デカン酸ノニル、デカン酸イソノニル、デカン酸セチル、デカン酸イソセチル;ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸イソアミル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ヘプチル、ラウリン酸イソヘプチル、ラウリン酸オクチル、ラウリン酸イソオクチル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸ノニル、ラウリン酸イソノニル、ラウリン酸セチル、ラウリン酸イソセチル;オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸イソアミル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸イソヘプチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸イソオクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸ノニル、オレイン酸イソノニル、オレイン酸セチル、オレイン酸イソセチル;コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、コハク酸ジイソアミル、コハク酸ジヘキシル、コハク酸ジヘプチル、コハク酸ジイソヘプチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソオクチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、コハク酸ジノニル、コハク酸ジイソノニル、コハク酸ジセチル、コハク酸ジイソセチル;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソアミル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジイソヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソブチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸アミル、ミリスチン酸ヘキシル、ミリスチン酸ヘプチル、ミリスチン酸イソヘプチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸ノニル、ミリスチン酸イソノニル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸イソセチル;パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソブチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸アミル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘプチル、パルミチン酸イソヘプチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸イソノニル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソセチル;ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸イソヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ノニル、ステアリン酸イソノニル、ステアリン酸セチルおよびステアリン酸イソセチルがある。
【0030】
本発明に有用な植物油は、精油でもよい。用語「精油」とは、元の花または果実に特徴的な香りまたは風味(すなわち本質的性質)を含む油を意味し、そして称する。精油は通
常、花または葉の水蒸気蒸留により、あるいは外皮または他の部分(例えば幹、花、小枝等)の冷圧搾により得られる。例示的な精油にはオレンジ、グレープフルーツ、レモン、柑橘類および松ノ木(pinetree)がある。
【0031】
本発明の他の例示的な表面凝結遅延剤組成物では、エステル−ベースのヒドロキシカルボキシ硬化遅延剤化合物は、植物油またはその誘導体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用できる動物油またはその誘導体に分散させることができる。用語「動物油」とは任意の動物性物質、例えば骨または他の身体成分から得られる産物(油、ワックスまたは固体状であっても)を称する。例には、ラード油、骨油、ニシン油、タラ肝油、牛脚油、イワシ油、ラノリン油、魚油、羊毛油、タロー油および蜜蝋がある。動物油の誘導体には好ましくはC−C30脂肪酸のモノおよびジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコール、C−C30脂肪族アミン、C−C30族脂肪アミドおよびトールオイル誘導体を含む(植物油誘導体の考察において上に提供した一覧も参照にされたい)。
【0032】
さらに動物油および植物油の混合物が様々な目的に使用できることも企図される。例えば松ノ木油は羊毛油の臭いを覆い隠す、または遮蔽するために使用することができる。例示的な表面凝結遅延剤組成物は、ヒマワリメチルエステル(40%)、羊毛油(25%)、シュクロース(9%)、酸化鉄(2%)、珪藻土(22%)および松ノ木油(2%)を含んでなることができる(すべての割合は組成物の総重量に基づく)。
【0033】
さらに例示的な表面凝結遅延剤組成物では、凝結遅延剤活性分が2種以上の異なる植物油中に分散されてもよい。すなわち例えば、活性分は植物油ならびに植物油誘導体を含んでなる連続的な油担体相中に分散されるか、または別の方法で分布されることができる。植物油(1もしくは複数)および/または動物油(1もしくは複数)は、好ましくは連続的な担体相として機能し、その担体相の中に1もしくは複数の凝結遅延剤活性分が不連続相として全体に懸濁または別の方法で分散される。
【0034】
さらに別の例示的表面凝結遅延剤組成物では、1もしくは複数のエステル−ベースの硬化遅延剤を、1もしくは複数の従来の硬化遅延剤(例えばグルコン酸ナトリウム)と1もしくは複数の油中で合わせることができる。
【0035】
また石油系溶剤および樹脂も、表面凝結遅延剤を溶剤和するかまたは懸濁するために使用でき、そしてこれらは単独で、または上に挙げた植物油、鉱物油および/または動物油と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
さらに例示的な本発明の表面凝結遅延剤組成物には、炭酸カルシウム、二酸化珪素、砂、雲母、タルク、粘土(例えばカオリン)、硫酸バリウム、ナトリウム シリコアルミネート、アルミナ、炭酸バリウム、ドロマイト(これはカルシウムおよびマグネシウムの炭酸塩、CaMg(CO)、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土(kieslguhr)(珪藻土:diatomaceous earth)または前記の任意の混合物を含む充填材等を包含することができる。全充填材含量は、例えば表面凝結遅延剤組成物の総重量に基づき0〜50%でよい。
【0037】
さらに例示的な本発明の表面凝結遅延剤組成物には、1もしくは複数の顔料、着色剤または染料、例えば二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化亜鉛、カーボンブラック、あるいは他の顔料または着色剤を、組成物の総重量に基づき0〜30%の量で含むことができる。適用する人が噴霧適用中などに特定の標的とするセメント質表面が表面凝結遅延剤組成物で処理されたことを視覚的に確認できるように、少なくとも1つの顔料、着色剤または染料を使用することが望ましい。
【0038】
本発明の他の例示的な表面凝結遅延剤組成物は、追加でソルビトール、ホウ酸(またはその塩)、アルキルホスフェート、タンパク質およびカゼインのような他の成分を含むことができる。これらの追加成分は、流動性、粘性および/または表面張力のような表面凝結遅延剤組成物の様々な特性に影響を及ぼすために使用できる。したがってさらなる態様には、1もしくは複数の流動性モディファイヤーおよび/または粘性モディファイヤーを含む。
【0039】
本発明の方法の例は、表面凝結遅延剤組成物のコーティングをコンクリートのような水和性セメント質材料表面上に適用することを含んでなる。この組成物はローラーにより適用され得るが、処理すべき表面に直接噴霧適用することが好ましい。続いて処理した表面部分は高圧洗浄機またはホースを使用して洗い流して、処理し、除去した表面部分の下の浸食部分を露出させることができる。
【0040】
また本発明の方法の例は、表面凝結遅延剤組成物のコーティングをコンクリート型の内側に適用し、コンクリートを型に注ぎ、そして引き続き成形されたコンクリートを型から取り出すことを含む。
【0041】
本明細書では本発明を限定数の態様を使用して記載するが、これらの具体的態様は本明細書で別な様に記載され、そして特許請求されるように本発明の範囲を限定することを意図していない。記載した態様からの修飾形および変更形が存在する。さらに詳細には、以下の実施例が特許請求する発明の態様の具体的説明として与えられる。本発明は実施例で説明される具体的詳細に限定されないと理解すべきである。実施例ならびに明細書中の残る記載の部および割合は、他に特定しない限り重量百分率による。
【0042】
さらに明細書または特許請求の範囲で言及する特定の特性の組、測定単位、条件、物理的状態または百分率を表すような数の範囲は、参考により文字による表現で本明細書に含めることを意図しており、あるいはまたそのように引用される任意の範囲内にある任意の数のサブセットを含むそのような範囲の中にある任意の数字を意図している。例えば下限RLおよび上限RUを含む数値範囲が開示される場合はいつも、その範囲の中にある任意の数Rが具体的に開示される。特にこの範囲内にある以下の数値Rが具体的に示される:R=RL+k(RU−RL)、ここでkは1%の増量を伴う1%〜100%の範囲で変動可能であり、例えばkは1%、2%、3%、4%、5%.........50%、51%、52%......95%、96%、97%、98%、99%または100%である。さらに上記のように算出した任意の2つの数字Rにより表される数値範囲も具体的に開示される。
【実施例】
【0043】
実施例1
コンクリート表面の凝結遅延に使用するための噴霧適用可能な組成物を、以下の配合で作成した:菜種油(50.5%)、菜種油のメチルエステル(40%)、酒石酸ジエチル(6%)、二酸化チタン(3%)および煙霧シリカ(0.5%)。この配合は、この酸形態(クエン酸、酒石酸)を使用する場合のように、粒状物質を粉砕する必要なく得られた。この組成物は周囲温度で、200グラム/mの速度で新しいコンクリートに噴霧適用した。組成物は酸形態を使用した時と比べて満足な達成度を示し、そして噴霧から生じる曇りが刺激的にならなという利点を与えた。
【0044】
実施例2
以下の配合は、型(コンクリート型)の内面への噴霧に使用するために成功することが分かった:コロフォン(30%)、炭化水素溶剤(48%)(沸騰範囲:100〜160
度C)、クエン酸トリエチル(10%)、二酸化チタン(4%)および沈降シリカ(8%)。炭化水素溶剤にコロフォンを溶解した後、配合物の残りをミキサーで高速で分散したが、粉砕は必要なかった。この配合物は、コンクリート型中で表面凝結遅延剤としてよく機能することが観察された。クエン酸トリエチルの代わりにクエン酸を使用するには、粉砕工程を要しただろう。
【0045】
実施例3
表面凝結遅延剤組成物は、石油基材の溶剤で運ばれるエステル−ベースの表面凝結遅延剤を使用して配合した。以下の成分を以下の温度および以下の量を使用して合わせた:脂肪族溶剤(140℃〜160℃、BP:48%)、石油樹脂(125℃、SP:23%)、微粉化雲母(7%)、二酸化チタン(2.4%)、微粉化タルク(10%)およびクエン酸トリエチル(8%)。
【0046】
前記実施例および態様は、具体的説明の目的のみに提示し、本発明の範囲を限定することを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートまたは他の水和性セメント質材料の表面を凝結遅延する方法であって、コンクリートまたはモルタルまたは他の水和性セメント質材料の硬化を遅らせるようにそれらの表面に、あるいは別にコンクリートまたはモルタルまたは他の水和性セメント質材料が入れられる型の表面に表面凝結遅延剤組成物を噴霧適用し;そして引き続き該表面凝結遅延剤組成物が適用された該セメント質材料の表面部分を、表面材料の凝結遅延した部分を取り除くためにジェット水流を噴霧することにより除去するか、または別の方法で該セメント質材料を該型の表面から取り出すことを含んでなり、該表面凝結遅延剤組成物が、液体状態で噴霧適用可能な連続的非水性担体相に分布された、粒子状態かまたは不連続液体相として含まれる少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルを含んでなる上記方法。
【請求項2】
上記少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、アルファ−ヒドロキシカルボニル基を有するアルキルエステルおよびまたはヒドロキシカルボン酸のアルキル−エステルまたはそれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、クエン酸のアルキルエステル、酒石酸のアルキルエステル、リンゴ酸のアルキルエステル、没食子酸のアルキルエステル、グリコール酸のアルキルエステル、グルコン酸のアルキルエステル、乳酸のアルキルエステル、マンデル酸のアルキルエステル、サリチル酸のアルキルエステル、または4−ヒドロキシブタン酸のアルキルエステルを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、クエン酸のアルキルエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記クエン酸のアルキルエステルがクエン酸トリエチルである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記少なくとも1種の油/溶剤可溶性または油分散性のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、酒石酸のアルキルエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記酒石酸のアルキルエステルが酒石酸ジエチルである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記少なくとも1種のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、クエン酸トリエチルおよび酒石酸ジエチルの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
さらに:(A)炭酸カルシウム、二酸化珪素、砂、雲母タルク、粘土、硫酸バリウム、ナトリウム シリコアルミネート、アルミナ、炭酸バリウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土を含んでなる、選択される少なくとも1種の充填剤、またはそれらの混合物;(B)二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化亜鉛、カーボンブラックを含んでなる顔料、着色剤または染料をからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤、またはそれらの混合物をさらに含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記の連続的非水性担体相が、石油−ベースの溶剤、植物油、動物油、鉱物油、または前記の混合物もしくは誘導体を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記少なくとも1種のヒドロキシカルボキシ化合物のアルキル−エステルが、植物油中
に分散された固体粒子状態で含まれる酒石酸ジエチル、クエン酸トリエチルまたはそれらの混合物を含んでなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記植物油が菜種油であり、そして上記組成物がさらに二酸化チタンを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに通常の硬化遅延剤を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記表面凝結遅延剤組成物がコンクリート、モルタルまたは他の水和性セメント質組成物上に噴霧適用され、そして該表面部分が水を噴霧することにより除去される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500138(P2012−500138A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523459(P2011−523459)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006578
【国際公開番号】WO2010/020857
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】