説明

エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法

本発明は、エステル置換ジアリールカーボネートを製造するための界面法に関する。この方法は、第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む反応混合物であって、あるブライン濃度の水性相と有機相とを有する反応混合物を調製する段階と、反応混合物を反応させる段階であって、反応中に、(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、(ii)反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%から飽和ブライン溶液濃度までの範囲に収まるように、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を変えることによって水性相のブライン濃度を必要に応じて調整し、それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階とを含んでなり、反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製されると共に、90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分についてブライン濃度が15%以上に維持され、かつpHが9以上に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス−メチルサリチルカーボネート(BMSC)のようなエステル置換ジアリールカーボネートは、ジアリールカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物との溶融反応でポリカーボネートを製造する際に有用な出発原料であることが判明している。例えば、ビス−メチルサリチルカーボネートとビスフェノールAとの重合速度がビスフェノールAと非置換ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネート)との対応する重合速度より高いことを証明した米国特許第4323668号を参照されたい。その構造が簡単であるにもかかわらず、エステル置換ジアリールカーボネートの製法はほとんど報告されていない。
【0003】
ジアリールカーボネートの伝統的な製法は、配合水、酸受容体(例えば、水酸化ナトリウム)及び溶媒(例えば、塩化メチレン又はクロロホルム)を含む二相反応系中でヒドロキシ芳香族化合物(例えば、フェノール)をホスゲンガスと反応させることを含んでいる。ジフェニルカーボネート(DPC)を製造するために使用する典型的な界面条件では、水(配合水としても知られる)、塩化メチレン相、pH調節手段としての水酸化ナトリウム、及び触媒としてのトリエチルアミンが使用される。かかる条件下では、ほぼ定量的な収率でフェノールをDPCに転化させることが可能である。しかし、これらの同一条件をメチルサリチレートのようなエステル置換フェノールに適用しても、このエステル置換フェノールから対応するジアリールカーボネートへの控え目な転化しか起こらない。20%も過剰な量のホスゲンを使用しても、メチルサリチレートからビス−メチルサリチルカーボネートへの転化率が70〜75%を超えることはない。
【0004】
したがって、エステル置換ジアリールカーボネート全般の効率的な製造のための手段を発見することは望ましく、特にメチルサリチレート及びホスゲンからビス−メチルサリチルカーボネートを製造する極めて効率的な手段を発見することは望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許第4323668号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0132957号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0068086号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0087756号明細書
【特許文献5】米国特許第5091591号明細書
【特許文献6】米国特許第5151491号明細書
【特許文献7】米国特許第5276129号明細書
【特許文献8】米国特許第5525701号明細書
【特許文献9】米国特許第5696222号明細書
【特許文献10】米国特許第6177536号明細書
【特許文献11】米国特許第6252036号明細書
【特許文献12】米国特許第6300459号明細書
【特許文献13】米国特許第6303734号明細書
【特許文献14】米国特許第6399739号明細書
【特許文献15】米国特許第6403754号明細書
【特許文献16】米国特許第6410777号明細書
【特許文献17】米国特許第6417291号明細書
【特許文献18】米国特許第6420512号明細書
【特許文献19】米国特許第6420588号明細書
【特許文献20】米国特許第6469192号明細書
【特許文献21】米国特許第6500914号明細書
【特許文献22】米国特許第6506871号明細書
【特許文献23】米国特許第6518391号明細書
【特許文献24】米国特許第6525163号明細書
【特許文献25】米国特許第6548623号明細書
【特許文献26】米国特許第6590068号明細書
【特許文献27】米国特許第6600004号明細書
【特許文献28】米国特許第6653434号明細書
【特許文献29】米国特許第6706846号明細書
【特許文献30】米国特許第6710156号明細書
【特許文献31】米国特許第6723823号明細書
【特許文献32】米国特許第6734277号明細書
【特許文献33】米国特許第6747119号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2003/0060649号明細書
【特許文献35】特開平10−101786号公報
【特許文献36】特開平10−101787号公報
【特許文献37】特開平11−302228号公報
【特許文献38】特開2002−309015号公報
【特許文献39】特開平05−009282号公報
【特許文献40】国際公開第03/040208号パンフレット
【特許文献41】国際公開第03/106149号パンフレット
【特許文献42】特開2000−129112号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人らは、エステル置換ジアリールカーボネートを製造するための優れた方法を発見した。本発明は、エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法であって、一実施形態では、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む反応混合物であって、あるブライン濃度の水性相と有機相とを有する反応混合物を調製する段階と、
(b)反応混合物を反応させる段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%から飽和ブライン溶液濃度までの範囲に収まるように、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を変えることによって水性相のブライン濃度を必要に応じて調整し、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製されると共に、90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分についてブライン濃度が15%以上に維持され、かつpHが9以上に維持される方法を提供する。
【0006】
本発明は先行技術に対する改良である。本発明の方法は、ほぼ1:2のホスゲン/エステル置換フェノールモル比を使用して高い転化率及び選択率を可能にすることが判明した。本発明は、配合水を実質的に含まない高pHブライン環境中でホスゲンとエステル置換フェノールとを反応させる新規な方法を提供する。かかる方法で通例使用される配合水を低減させ、さらには排除すると共に、反応混合物中に高pHブライン溶液を導入することにより、ホスゲンの所要量を最小限に抑えながら、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネート生成物への転化率及び選択率が最大限まで高められる。
【0007】
図面の簡単な説明
図1は、pH値8で実施した実施例12〜14の結果を示している。
【0008】
図2は、pH値9で実施した実施例15〜17の結果を示している。
【0009】
図3は、pH値10で実施した実施例18〜20の結果を示している。
【0010】
図4は、転化率に対する配合水の効果を示している。
【0011】
図5は、選択率に対する配合水の効果を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態及びその実施例に関する以下の詳しい説明を参照することで本発明の理解を深めることができよう。本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0013】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0014】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0015】
「ポリカーボネート」とは、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物から導かれる繰返し単位を組み込んだポリカーボネートをいい、コポリエステルカーボネート(例えば、レソルシノール、ビスフェノールA及びドデカン二酸から導かれる繰返し単位を含むポリカーボネート)を包含する。本願の明細書及び特許請求の範囲中のいかなる部分も、前後関係から明らかに限定されない限り、ポリカーボネートを1種のジヒドロキシ残基のみに限定すると解すべきでない。したがって、本願は2種、3種、4種又はそれ以上の種類のジヒドロキシ化合物の残基を含むコポリカーボネートを包含する。
【0016】
「選択率」とは、望まない副生物ではなくエステル置換ジアリールカーボネート生成物に転化されるエステル置換フェノールの量をいう。これは、(エステル置換ジアリールカーボネートに転化されたエステル置換フェノールのモル数)/( 消費されたエステル置換フェノールの総モル数 )として計算される。
【0017】
「転化率」とは、エステル置換フェノール原料から生成されるエステル置換ジアリールカーボネートの総量をいう。これは、(エステル置換ジアリールカーボネートの重量)/((エステル置換ジアリールカーボネートの重量)+(エステル置換フェノールの重量)+(副生物の重量))として計算される。
【0018】
「配合水」は遊離配合水としても知られ、実施例では配合物中の塩化メチレンの重量を基準にした水の重量パーセントとして計算される。配合水は、水酸化ナトリウム水溶液の一部として反応混合物に添加される水を含まない。
【0019】
本願の明細書及び特許請求の範囲中の数値は平均値を表している。さらに、かかる数値は、同じ有効数字桁数に換算した場合に同一である数値、及びその値を求めるために本願で使用する測定技術の実験誤差未満だけしか記載の値と異ならない数値も包含すると理解すべきである。
【0020】
本発明では、副生物の生成及び過剰ホスゲンの使用を最小限に抑えると共に、転化率及び選択率を最大限まで高めながら、温和な反応温度下でエステル置換フェノール(例えば、メチルサリチレート)がエステル置換ジアリールカーボネート(例えば、ビス−メチルサリチルカーボネート)に効率よく転化されることが発見された。本発明の一実施形態は、エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法であって、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む反応混合物であって、あるブライン濃度の水性相と有機相とを有する反応混合物を調製する段階と、
(b)反応混合物を反応させる段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%から飽和ブライン溶液濃度までの範囲に収まるように、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を変えることによって水性相のブライン濃度を必要に応じて調整し、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製されると共に、90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分についてブライン濃度が15%以上に維持され、かつpHが9以上に維持される方法を提供する。
【0021】
エステル置換ジアリールカーボネート
本発明の一態様では、次の構造Iを有するエステル置換ジアリールカーボネートの製造方法が提供される。
【0022】
【化1】

式中、Rは各々独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。
【0023】
本発明の方法を用いて製造できるエステル置換ジアリールカーボネートの例には、ビス−メチルサリチルカーボネート(CAS登録番号82091−12−1)、ビス−エチルサリチルカーボネート、ビス−プロピルサリチルカーボネート、ビス−ブチルサリチルカーボネート、ビス−ベンジルサリチルカーボネート、ビス−メチル4−クロロサリチルカーボネートなどがある。通例、分子量が小さくかつ蒸気圧が高いという理由から、ビス−メチルサリチルカーボネートが溶融ポリカーボネート合成で使用するのに好ましい。
【0024】
エステル置換フェノール
本発明に従って使用されるエステル置換フェノールは、次の構造IIを有するフェノール類から選択される1種以上の化合物である。
【0025】
【化2】

式中、R及びRは構造Iに関して定義した通りであり、bは0〜4の整数である。
【0026】
本発明の方法のための出発原料として役立ち得るエステル置換フェノールの例には、フェニルサリチレート、メチルサリチレート、エチルサリチレート、プロピルサリチレート、ブチルサリチレート、ベンジルサリチレート、メチル4−クロロサリチレートなどがある。通例、メチルサリチレートが好ましい。
【0027】
触媒
本発明の方法に従えば、第三アミン触媒又は相間移動触媒或いはその両方を使用できることが判明した。これらの触媒は、エステル置換ジアリールカーボネート生成物の生成を促進すると共に、生成物中におけるエステル置換フェニルクロロホルメート中間体の存在を最小限に抑えるように働くことが判明した。
【0028】
相間移動触媒
好適な相間移動触媒は広く入手可能であり、アミンの第四アンモニウム塩、芳香族アミンの第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ポリエーテルなどがある。芳香族アミンの第四アンモニウム塩は、塩化N−ベンジルピリジニウム、塩化N−ベンジル−4−N’,N’−ピリジニウムなどで例示される。第四アンモニウム塩には、塩化ヘキサエチルグアニジニウムのようなヘキサアルキルグアニジニウム化合物がある。第四ホスホニウム塩は、酢酸テトラブチルホスホニウムなどで例示される。スルホニウム塩は、塩化トリメチルスルホニウムなどで例示される。ポリエーテルは、ポリエチレングリコール及びクラウンエーテル(例えば、18−クラウン−6など)で例示される。
【0029】
本発明の一実施形態では、相間移動触媒は次の構造IIIを有する第四アンモニウム化合物である。
【0030】
【化3】

式中、R〜Rは独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。好適な陰イオンXには、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン及び重炭酸イオンがある。
【0031】
が炭酸イオン又は硫酸イオンのような多価陰イオンである場合、構造III中の正電荷及び負電荷は適正にバランスされることは言うまでもない。例えば、構造III中のR〜Rの各々がメチル基であり、Xが炭酸イオンである場合、Xは1/2(CO−2)を表すことは言うまでもない。
【0032】
構造IIIを有する第四アンモニウム化合物であって、本発明の方法に従って相間移動触媒として使用するのに適した第四アンモニウム化合物の非限定的なリストは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム及び塩化デシルトリメチルアンモニウムで例示される。塩化メチルトリブチルアンモニウムがしばしば好ましい。
【0033】
相間移動触媒の使用量は、使用するエステル置換フェノール1モル当たり触媒0.1〜2モル%、好ましくは触媒0.25〜1.0モル%の範囲内にある。
【0034】
第三アミン触媒
本発明の別の実施形態では、エステル置換ジアリールカーボネート生成用の触媒として第三アミンが含まれる。本発明の触媒として使用される第三アミンは、下記の式IVを有する。
【0035】
【化4】

式中、R、R及びRは各々独立にC〜C18アルキル基又はC〜C18シクロアルキル基であるか、或いはR、R及びRは一緒になって、1種以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されてもよいC〜C20脂環式環を形成する。
【0036】
本発明の方法に従って触媒として使用するのに適した第三アミンの非限定的なリストは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン及び1,4−ジアザビシクロオクタンで例示される。トリエチルアミンがしばしば好ましい。通例、第三アミン触媒の使用量は0.01〜1モル%の範囲内にある。反応混合物を配合する際、反応混合物中に使用するエステル置換フェノールの総モル数を基準にして好ましくは0.01〜0.09モルのトリエチルアミンが添加される。
【0037】
方法
本発明の方法は、配合水を最大限に抑え、さらには排除すると共に、反応混合物のpH及びブライン濃度を調節することにより、エステル置換フェノールをホスゲンと接触させる場合にエステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネート生成物への転化率及び選択率を劇的に向上させるという意外な知見を示している。
【0038】
本発明の方法に従えば、ホスゲンのモル数とエステル置換フェノールのモル数との比として0.75:1.00、さらに好ましくは0.55:1.00、さらに一段と好ましくは0.50:1.00に相当する量でエステル置換フェノールをホスゲンと接触させる。ホスゲンとエステル置換フェノールとの反応は、有機溶媒並びに第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒の存在下で実施される。
【0039】
この接触は、好ましくは配合水を実質的に含まない環境中で行われる。本発明では、かかる配合水はホスゲン及びカーボネート中間体を加水分解する効果を有していて、かかる加水分解はホスゲンの一部を活性化ジアリールカーボネート生成のために利用できなくすることが判明した。したがって、配合水が多くなるほど、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネート生成物への転化のために必要なホスゲンは多くなる。反応混合物中には15%までの配合水が存在していてもよく、それでも90%の転化率及び98%の選択率が達成されることが判明した。しかし、反応混合物が10%未満(例えば、5%未満)の配合水を含む場合に転化率及び選択率は向上する。反応混合物は遊離配合水を含まないことが最も好ましい。
【0040】
工業用溶媒は水を含むことがあるが、これは「配合水」でないことが理解されよう。同様に、ホスゲン添加開始後の短い時間(例えば、5分未満、好ましくは1分未満の時間)にわたってブライン生成のために苛性アルカリを添加又は使用するのであれば、若干の水が存在していてもよい。配合水を含まない反応とは対照的に、比較例1は、反応混合物中に配合水が存在すると共に、ホスゲン添加中に25分間6.72g/分の速度でNaOH添加を行う反応を示している。この場合には、反応の初期部分中に実質的な加水分解が起こる結果として、転化率は54%にすぎない。(実施例セクションの表1を参照されたい。)
反応混合物のブライン濃度及びpHは、酸捕捉剤、好ましくは金属水酸化物、さらに好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液の添加で調節される。好適なアルカリ金属水酸化物には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムがある。5〜50重量%のNaOHを含む水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0041】
pH及びブライン濃度は、通例、反応混合物の反応全体を通じて所望のレベルに維持される。溶液のブライン濃度及びpHを測定して維持するためにはいくつかの方法が使用でき、特に限定されない。通例、反応混合物のpH及びブライン濃度は物質収支計算で算出される。本発明の一実施形態では、物質収支計算に基づき、反応全体を通じてpH及びブライン濃度を所望のレベルに維持する初期ブライン仕込量が反応混合物に導入される。別法として、反応混合物のpH及びブライン濃度は、反応全体を通じて添加できる金属水酸化物の量及び濃度を変化させることで調節してもよい。金属水酸化物は粉末として反応混合物に添加してもよいが、金属水酸化物を溶液として添加することが好ましい。本発明の方法の一実施形態に従えば、反応混合物のpH及びブライン濃度を測定する方法は、スリップ流れを通して反応混合物から試料を抜き取り、所要の適当な測定を実施し、金属水酸化物溶液の所要の添加を行うことで実施できる。反応混合物に添加される金属水酸化物溶液の濃度を調整する方法は特に限定されず、下記の非限定的な例で実施できる。
【0042】
(1)異なる濃度の金属水酸化物溶液を含む多数のタンクを用意し、反応混合物に添加すべき量をいずれか1つのタンク又はその組合せから選択するか、或いは
(2)所望濃度及び量の金属水酸化物溶液を与えるのに十分な量の水で濃厚金属水酸化物溶液を希釈する。
【0043】
反応混合物の調製に際しては、ホスゲン反応体とブラインの形態でない水との共存が排除され又は最小限に抑えられるようにしながら、反応体がまとめて添加される。この要件を除けば、添加の順序は重要でない。反応混合物の調製方法の非限定的な例を下記に示す。
【0044】
(1)有機相の反応体(ホスゲン、エステル置換フェノール、有機溶媒及び触媒)を混合し、次いでブラインの添加で反応を開始する。
【0045】
(2)エステル置換フェノール、有機溶媒、触媒及びブラインを混合し、次いでホスゲンを導入する。
【0046】
(3)エステル置換フェノール、有機溶媒、ブライン及びホスゲンを混合し、次いで触媒を導入する。
【0047】
(4)ホスゲン、有機溶媒、触媒及びブラインを混合し、次いでエステル置換フェノールを導入する。
【0048】
(5)エステル置換フェノール、有機溶媒及び触媒を混合し、次いでホスゲン及びブラインを計量しながら導入して反応を開始する。
【0049】
これらの方法のいずれかにより、反応混合物の初期調製時にホスゲンがブラインの形態でない水に顕著に暴露されないようにして配合を行うことを、本明細書中では「配合水を含まない」反応混合物及び操作であるという。「顕著に暴露されない」とは、暴露時間及び暴露量がホスゲンの分解を最小限に抑えることを意味する。このように、「配合水」は配合物中におけるブラインの使用とは区別される。
【0050】
本発明の方法に従えば、反応混合物のブライン濃度は反応時間の少なくとも一部分について15%と飽和ブライン溶液との間に維持され、さらに好ましくは20〜25%に維持される。反応混合物のブライン濃度を調節する目的は、エステル置換フェノールから塩への転化を最大限に高めてホスゲンと効率よく反応させることにある。反応混合物のブライン濃度は、反応のできるだけ多くの部分についてこのような高い濃度に維持することが好ましい。
【0051】
反応混合物は、ホスゲンとエステル置換フェノールとの反応時間の少なくとも一部分について9.0以上のpHに維持される。(図1,2及び3を参照されたい。)反応中にpHを高い値に調節する目的は、pHが9.0を下回ると、エステル置換ジアリールカーボネート生成物の生成速度が劇的に低下するからである。したがって、反応混合物のpHは反応のできるだけ多くの部分について9.0以上の値に維持することが好ましい。本発明の一実施形態では、反応混合物のpHは9.0〜13.5に維持され、さらに好ましくは11〜13.5に維持される。
【0052】
反応混合物には溶媒が添加される。溶媒は有機溶媒であることが好ましく、有機溶媒はハロゲン化溶媒又は非ハロゲン化溶媒である。好ましい有機溶媒は塩化メチレンである一方、好ましい非ハロゲン化溶媒はトルエンである。
【0053】
エステル置換フェノールは、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネート生成物への転化を可能にするのに十分な長さの接触時間にわたってホスゲンと接触させる。ホスゲンとエステル置換フェノールとの接触時間は、10〜100%のエステル置換フェノールをエステル置換ジアリールカーボネート生成物に転化させるのに十分な長さを有することが好ましい。転化率は90%を超えることが好ましく、最も好ましくは99%を超える。本発明の一実施形態では、90%を超える転化率を生み出すための接触時間は5〜60分の範囲内にある。ホスゲンをエステル置換フェノールの溶液に添加する本発明のさらに別の実施形態では、反応時間はホスゲンの添加速度で制限される。
【0054】
エステル置換フェノールとホスゲンとの接触は、周囲温度未満、周囲温度又は周囲温度超で行うことができる。本発明の一実施形態では、エステル置換フェノールは0〜50℃、好ましくは10〜40℃の温度でホスゲンと接触させる。
【0055】
本発明の方法は、時には、エステル置換ジアリールカーボネート及びエステル置換フェニルクロロホルメート中間体を含む生成物混合物を生じることがある。初期ホスゲン添加の終点近くで反応混合物に第三アミン触媒を添加すれば、エステル置換フェニルクロロホルメート中間体からエステル置換ジアリールカーボネート生成物への転化を推進することが判明した。また、このような二次触媒添加後に追加のホスゲン添加を行えば、反応混合物は二次触媒添加を行わない場合よりも短い時間で99%を超える転化率に達することも判明した。このような第三アミン触媒及びホスゲンの後期添加は任意であり、それはエステル置換フェニルクロロホルメートからエステル置換ジアリールカーボネートへの縮合速度を高めることが判明した。したがって本発明は、下記のようなエステル置換ジアリールカーボネートの製造方法及びかかる方法で製造されるエステル置換ジアリールカーボネートも提供する。この方法は、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む第一の反応混合物を調製する段階であって、前記第一の反応混合物は有機相及び水性相を含み、第一の反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製される段階と、
(b)第一の反応混合物を反応させることで第二の反応混合物を調製する段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)水性相はブライン濃度を有していて、水性相のブライン濃度は、必要に応じて、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を、反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%と飽和ブライン溶液との間にあるように変化させることによって調整される段階と、
(c)第一の反応混合物に導入されるエステル置換フェノール1モル当たり0.50モル%以上の第三アミン触媒を第二の反応混合物に添加する段階と、
(d)第二の反応混合物を反応させる段階であって、前記第二の反応混合物は有機相及び水性相を含み、前記水性相はpH及びブライン濃度を有していて、第二の反応混合物の反応中に、
(i)水性相のpHは、必要に応じて、第二の反応混合物の反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となる量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによって調整されると共に、
(ii)水性相のブライン濃度は、必要に応じて、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を、第二の反応混合物の反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%と飽和ブライン溶液との間にあるように変化させることによって調整され、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分について第一及び第二の反応混合物のブライン濃度が15%以上に維持され、かつ第一及び第二の反応混合物のpHが9以上に維持される。
【0056】
通例、エステル置換フェニルクロロホルメートの量は少なく、使用するエステル置換フェノールの総モル数を基準にして1モル%未満であるが、生成物中におけるその存在は望ましくない。ホスゲン化段階の終点近くで添加される少量の第三アミン及び追加仕込量のホスゲンは、残留クロロホルメートを生成物に転化させるための効率的な手段を提供する。二次触媒添加で使用する第三アミン触媒の量は、使用するエステル置換フェノールの総モル数を基準にして0.50モル%以上である。また、二次触媒添加後に、第一の反応混合物に導入したエステル置換フェノール1モル当たり0.075モル%の追加ホスゲンを反応混合物に導入すれば、エステル置換ジアリールカーボネートの生成速度が高まることも判明した。
【0057】
上記に詳述した通り、本願の方法の意外な利益は、配合水を実質的に含まない環境中並びに本明細書中に記載された高pH及びブライン条件下でホスゲンとエステル置換フェノールとを反応させることで、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネート生成物への高レベルの選択率及び転化率が達成されることである。先行技術に係るエステル置換ジアリールカーボネートの製造方法は、転化率レベルが低い上に望ましくない副生物の生成レベルが高いので、本発明より望ましくない。エステル置換ジアリールカーボネートの製造に伴う主な望ましくない副生物の一種は、エステル置換フェノールの三量体である。三量体は下記の式を有する。
【0058】
【化5】

本発明は、転化率を最大限に高めながらこの三量体の生成を最小限に抑えるという利益をもたらす。好ましくは本発明は、選択率が98%を超え、さらに好ましくは99%を超える方法を提供する。選択率は、(エステル置換ジアリールカーボネートに転化されたエステル置換フェノールのモル数)/( 消費されたエステル置換フェノールの総モル数 )として計算される。
【実施例】
【0059】
以上、本発明を詳しく説明してきたが、以下に実施例を示す。これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではなく、単に本発明を例示し代表するものと解すべきである。実施例に関しては、下記の計算を行った。
【0060】
「選択率」とは、望まない副生物ではなくエステル置換ジアリールカーボネート生成物に転化されるエステル置換フェノールの量をいう。これは、(エステル置換ジアリールカーボネートに転化されたエステル置換フェノールのモル数)/( 消費されたエステル置換フェノールの総モル数 )として計算される。
【0061】
「転化率」とは、エステル置換フェノール原料から生成される生成物の総量をいう。これは、(エステル置換ジアリールカーボネートの重量)/((エステル置換ジアリールカーボネートの重量)+(エステル置換フェノールの重量)+(副生物の重量))として計算される。
【0062】
「配合水」は遊離配合水としても知られ、ここでは配合物中のジクロロメタンの重量を基準にした水の重量パーセントとして計算される。
【0063】
装置
2リットルのガラス反応器に、1対の六枚羽根インペラー、再循環ループ、還流冷却器、並びにCOCl及びNaOH溶液の添加ポートを装備した。再循環ループ中にはpH電極を取り付けた。
【0064】
例1(比較例)
反応器に、500mlの塩化メチレン、350mlの水、メチルサリチレート(213g、1.40モル)及びトリエチルアミン(1.42g、0.014モル)を仕込んだ。ホスゲン(83.1g、0.84モル)を2.77g/分の速度で30分間添加すると共に、ホスゲンの総量が70gになるまで50%水酸化ナトリウムを6.72g/分の速度で添加し、次いで反応の残部については速度を8.96g/分に高めた。全部で209gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
【0065】
例2(比較例)
反応器に、500mLの塩化メチレン、278mLの水、メチルサリチレート(213g、1.40モル)及びトリエチルアミン(1.42g、0.014モル)を仕込んだ。ホスゲン(103.9g、1.05モル)を3.46g/分の速度で30分間添加した。反応中に約12のpHを維持するのに十分な速度で50%水酸化ナトリウムを添加し、全部で218gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
【0066】
例3(実施例)
反応器に、500mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(213g、1.40モル)及びトリエチルアミン(1.42g、0.014モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(103.9g、1.05モル)を3.46g/分の速度で30分間添加した。反応中に約12のpHを維持するのに十分な速度で22%水酸化ナトリウムを添加し、全部で469gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
【0067】
例4(実施例)
反応器に、500mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(213g、1.40モル)及びトリエチルアミン(0.033g、0.00033モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(90g、0.91モル)を3.46g/分の速度で26分間添加した。22%水酸化ナトリウムを約300gが添加されるまで12.72g/分の速度で添加し、次いで約12のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で346gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。86.5gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(0.73g、0.0072モル)を反応混合物に添加した。
【0068】
例5(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(246g、1.617モル)及びトリエチルアミン(0.062g、0.00062モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(104g、1.05モル)を4.0g/分の速度で26分間添加した。22%水酸化ナトリウムを約385gが添加されるまで15.44g/分の速度で添加し、次いで約12のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で433gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。91.1gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.6g、0.016モル)を反応混合物に添加した。
【0069】
例6(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(246g、1.617モル)及びトリエチルアミン(0.031g、0.00031モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(104g、1.05モル)を4.0g/分の速度で26分間添加した。22%水酸化ナトリウムを約337gが添加されるまで15.44g/分の速度で添加し、次いで約12のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で435gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。91.1gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.6g、0.016モル)を反応混合物に添加した。
【0070】
例7(実施例)
反応器に、500mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(213g、1.40モル)及び塩化メチルトリブチルアンモニウム(4.4gの75%水溶液、0.014モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(83.1g、0.84モル)を3.46g/分の速度で24分間添加した。22%水酸化ナトリウムを13.99g/分の速度で添加し、全部で335gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。ホスゲン添加の完了から1分後、トリエチルアミン(1.42g、0.014モル)を添加し、反応混合物をさらに6分間撹拌した。
【0071】
例8(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(246g、1.617モル)及びトリエチルアミン(0.031g、0.00031モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(112g、1.13モル)を4.0g/分の速度で28分間添加した。22%水酸化ナトリウムを、約9.2のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で457gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。104gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.6g、0.016モル)を反応混合物に添加した。
【0072】
例9(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(246g、1.617モル)及びトリエチルアミン(0.031g、0.00031モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(112g、1.13モル)を4.0g/分の速度で28分間添加した。22%水酸化ナトリウムを、約10.2のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で476gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。104gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.6g、0.016モル)を反応混合物に添加した。
【0073】
例10(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、メチルサリチレート(246g、1.617モル)及びトリエチルアミン(0.031g、0.00031モル)を仕込んだ。この配合物中には水を使用しなかった。ホスゲン(112g、1.13モル)を4.0g/分の速度で28分間添加した。22%水酸化ナトリウムを、約11のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で505gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。104gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.6g、0.016モル)を反応混合物に添加した。
【0074】
例11(実施例)
反応器に、470mlの塩化メチレン、100ミリの水、塩化ナトリウム(31.54g)、メチルサリチレート(213g、1.4モル)及びトリエチルアミン(0.054g、0.00053モル)を仕込んだ。ホスゲン(93.5g、1.05モル)を3.46g/分の速度で27分間添加した。22%水酸化ナトリウムを約422gが添加されるまで14.1g/分の速度で添加し、次いで約12のpHを維持するのに十分な可変速度で添加した。全部で433gの水酸化ナトリウム溶液を使用した。86.5gのホスゲンの添加後、追加量のトリエチルアミン(1.42g、0.014モル)を反応混合物に添加した。
【0075】
結果−例1〜11
例1〜11の結果を下記表1にまとめて示す。比較例1及び2は、配合水がエステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネートへの転化率及び選択率に対して悪影響を及ぼすことを実証している。実施例3〜11は、遊離配合水を最小限に抑えると共に、反応混合物の反応中にpH及びブライン濃度を高いレベルに調節することで、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネートへの高い転化率及び選択率を達成し得る本発明を実証している。
【0076】
【表1】


例12〜20
例12〜20では、pH値8、9及び10並びにブライン濃度値10%、15%及び22%でBMSCを製造した。反応混合物の配合時には、反応混合物に配合水を添加しなかった。転化率に関する結果を、表3、4及び5並びに図1,2及び3にまとめて示す。エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネートへの選択率の値を計算し、表2に示す。
【0077】
表3及び図1に示す通り、pH8及び様々なブライン濃度で反応を実施した場合、高いレベルの転化率は得られなかった。しかし、pH値9及び10では、所望の転化率が得られた(表4及び5並びに図2及び3を参照されたい)。
【0078】
例12〜20のすべてで、99%以上の選択率値が達成された(表2を参照されたい)。表2に示す通り、選択率は一定のpHの下ではブライン濃度と共に増加する。さらに、選択率は一定のブライン濃度の下ではpHの増加と共に減少する。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】


例21〜26
例21〜26では、9を超えるpH及び15%を超えるブライン濃度の下で本発明に従ってBMSCを製造した。反応混合物の配合時には、表6及び7に示す量の配合水を反応混合物に転化した。プロセス実験全体を通じて転化率を計算し、表6及び図4にまとめて示す。プロセス実験中にはまた、エステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネートへの選択率の値を重量%三量体生成量として計算し、表7及び図5に示す。
【0083】
表6及び7並びに図4及び5に示す通り、反応混合物中には15%までの配合水が存在していてもよく、それでも90%の転化率及び98%の選択率が達成される。
【0084】
例21〜26は、配合水を最小限に抑えることにより、副生物の生成を最小限に抑えながらエステル置換フェノールからエステル置換ジアリールカーボネートへの転化率が最大限に高められることを実証している。
【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】pH値8で実施した実施例12〜14の結果を示す。
【図2】pH値9で実施した実施例15〜17の結果を示す。
【図3】pH値10で実施した実施例18〜20の結果を示す。
【図4】転化率に対する配合水の効果を示す。
【図5】選択率に対する配合水の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法であって、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む反応混合物であって、あるブライン濃度の水性相と有機相とを有する反応混合物を調製する段階と、
(b)反応混合物を反応させる段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%から飽和ブライン溶液濃度までの範囲に収まるように、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を変えることによって水性相のブライン濃度を必要に応じて調整し、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製されると共に、90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分についてブライン濃度が15%以上に維持され、かつpHが9以上に維持される、方法。
【請求項2】
選択される触媒が第三アミンであり、第三アミン触媒及びエステル置換フェノールが0.01〜0.09のモル比で反応混合物に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エステル置換フェノール及びホスゲンが、ホスゲンのモル数とエステル置換フェノールのモル数との比として0.50:1.00〜0.75:1.00のモル比で反応混合物に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
反応混合物の反応中に、ブライン濃度が反応の少なくとも一部で20〜25%の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ブライン濃度が15%を超えかつpHが9を超える反応の部分が、98%を超える転化率を達成するのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
反応混合物の反応中に、10〜100%のエステル置換フェノールをエステル置換ジアリールカーボネートに転化させるのに十分な時間ホスゲン及びエステル置換フェノールを接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
エステル置換ジアリールカーボネートが次の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化1】

式中、Rは各々独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。
【請求項8】
エステル置換ジアリールカーボネートがビス−メチルサリチルカーボネートである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エステル置換フェノールが次の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化2】

式中、RはC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは0〜4の整数である。
【請求項10】
エステル置換フェノールが、フェニルサリチレート、メチルサリチレート、エチルサリチレート、イソプロピルサリチレート及びベンジルサリチレートからなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第三アミン触媒が次の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化3】

式中、R、R及びRは各々独立にC〜C18アルキル基又はC〜C18シクロアルキル基であるか、或いはR、R及びRは一緒になって、1種以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されてもよいC〜C20脂環式環を形成する。
【請求項12】
第三アミン触媒が、トリエチルアミン、トリメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン及び1,4−ジアザビシクロオクタンからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第三アミン触媒がトリエチルアミンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
選択される触媒が相間移動触媒であり、次の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化4】

式中、R〜Rは独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項15】
相間移動触媒が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム及び塩化デシルトリメチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
相間移動触媒が塩化メチルトリブチルアンモニウムである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
反応混合物の反応中に、pHが反応の少なくとも一部で11〜13.5である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
反応混合物が10%未満の配合水を用いて調製される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
反応混合物が5%未満の配合水を用いて調製される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
反応混合物が配合水を用いずに調製される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
エステル置換ジアリールカーボネートの製造方法であって、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む第一の反応混合物を調製する段階であって、前記第一の反応混合物は有機相及び水性相を含み、第一の反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製される段階と、
(b)第一の反応混合物を反応させることで第二の反応混合物を調製する段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)水性相はブライン濃度を有していて、水性相のブライン濃度は、必要に応じて、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を、反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%と飽和ブライン溶液との間にあるように変化させることによって調整される段階と、
(c)第一の反応混合物に導入されるエステル置換フェノール1モル当たり0.50モル%以上の第三アミン触媒を第二の反応混合物に添加する段階と、
(d)第二の反応混合物を反応させる段階であって、前記第二の反応混合物は有機相及び水性相を含み、前記水性相はpH及びブライン濃度を有していて、第二の反応混合物の反応中に、
(i)水性相のpHは、必要に応じて、第二の反応混合物の反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となる量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによって調整されると共に、
(ii)水性相のブライン濃度は、必要に応じて、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を、第二の反応混合物の反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%と飽和ブライン溶液との間にあるように変化させることによって調整され、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分について第一及び第二の反応混合物のブライン濃度が15%以上に維持され、かつ第一及び第二の反応混合物のpHが9以上に維持される、方法。
【請求項23】
第一の反応混合物の調製のために選択される触媒が第三アミンであり、第三アミン触媒と第一の反応混合物に導入されるエステル置換フェノールとのモル比が0.01〜0.09である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
エステル置換フェノール及びホスゲンが、ホスゲンのモル数とエステル置換フェノールのモル数との比として0.50:1.00〜0.75:1.00のモル比で両反応混合物に導入される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
第一及び第二の反応混合物の水性相が15%を超えるブライン濃度及び9を超えるpHに維持される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
第一及び第二の反応混合物の反応中に、ブライン濃度が両反応の少なくとも一部で20〜25%の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項27】
ブライン濃度が15%を超えかつpHが9を超える第一及び第二の反応混合物の反応の部分が、98%を超える選択率及び98%を超える転化率を達成するのに十分である、請求項22記載の方法。
【請求項28】
エステル置換ジアリールカーボネートが次の構造を有する、請求項22記載の方法。
【化5】

式中、Rは各々独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。
【請求項29】
エステル置換ジアリールカーボネートがビス−メチルサリチルカーボネートである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
エステル置換フェノールが次の構造を有する、請求項22記載の方法。
【化6】

式中、RはC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは0〜4の整数である。
【請求項31】
エステル置換フェノールが、フェニルサリチレート、メチルサリチレート、エチルサリチレート、イソプロピルサリチレート及びベンジルサリチレートからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第三アミン触媒が次の構造を有する、請求項22記載の方法。
【化7】

式中、R、R及びRは各々独立にC〜C18アルキル基又はC〜C18シクロアルキル基であるか、或いはR、R及びRは一緒になって、1種以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されてもよいC〜C20脂環式環を形成する。
【請求項33】
第三アミン触媒が、トリエチルアミン、トリメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン及び1,4−ジアザビシクロオクタンからなる群から選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
第三アミン触媒がトリエチルアミンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
第一の反応混合物の調製のために選択される触媒が相間移動触媒であり、次の構造を有する、請求項23記載の方法。
【化8】

式中、R〜Rは独立にC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項36】
相間移動触媒が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム及び塩化デシルトリメチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
相間移動触媒が塩化メチルトリブチルアンモニウムである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
第一及び第二の反応混合物の反応中に、第一及び第二の反応混合物のpHが反応の少なくとも一部で11〜13.5である、請求項1記載の方法。
【請求項39】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項22記載の方法。
【請求項40】
第一の反応混合物が10%未満の配合水を用いて調製される、請求項22記載の方法。
【請求項41】
反応混合物が5%未満の配合水を用いて調製される、請求項22記載の方法。
【請求項42】
反応混合物が配合水を用いずに調製される、請求項22記載の方法。
【請求項43】
段階(c)がさらに、第一の反応混合物に導入されるエステル置換フェノール1モル当たり0.75モル%以上の追加ホスゲンを添加することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項44】
エステル置換ジアリールカーボネート残基を含むポリカーボネートであって、エステル置換ジアリールカーボネートは、
(a)第三アミン触媒及び相間移動触媒からなる群から選択される触媒と、ホスゲンと、エステル置換フェノールと、有機溶媒とを含む反応混合物であって、あるブライン濃度の水性相と有機相とを有する反応混合物を調製する段階と、
(b)反応混合物を反応させる段階であって、反応中に、
(i)水性相があるpHを有していて、反応の少なくとも一部でpHが9.0以上となるように所定量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加することによってpHを必要に応じて調整し、
(ii)反応の少なくとも一部でブライン濃度が15%から飽和ブライン溶液濃度までの範囲に収まるように、pHを維持するために添加されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度を変えることによって水性相のブライン濃度を必要に応じて調整し、
それによってエステル置換ジアリールカーボネートを生成する段階と
を含んでなり、
反応混合物は15%未満の配合水を用いて調製されると共に、90%以上の転化率及び98%以上の選択率でエステル置換ジアリールカーボネートを生成するのに十分なプロセス部分についてブライン濃度が15%以上に維持され、かつpHが9以上に維持される方法で製造される、ポリカーボネート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−508361(P2008−508361A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524934(P2007−524934)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/027517
【国際公開番号】WO2006/017550
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】