説明

エストロゲンの処理装置

【課題】分解性微生物を効率的に、かつ高密度に固定化した固定化担体を用い、廃水中の微量エストロゲンを効率的に処理する装置を提供する。
【解決手段】被処理水を供給する供給口と処理水を排出する排出口とを備え、アニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体にエストロゲン分解微生物を固定化した固定化物2を内部に備える分解除去反応槽を含んでなる、エストロゲン処理装置1により被処理水中の微量のエストロゲンを効率的に分解および除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲンを安定かつ効率的に低濃度まで分解除去する技術に関する。特に本発明は、下廃水および河川水などの環境水中に含まれる17β-エストラジオールやエストロンなどのエストロゲンを安定かつ効率的に低濃度まで分解除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水やその処理水が流入する河川流域において、血中ビテロジェニン濃度の上昇や卵胞の形成など、雄性魚の雌性化の兆候が確認されている。これらの原因として、下水や廃水中に存在する人畜由来のエストロゲンが影響している可能性が指摘されている。実際、ng/lオーダーの極低濃度の17β―エストラジオールやエストロンを添加した清水中で飼育した雄性魚に雌性化の兆候が確認されている。
【0003】
一方、多くの河川では17β―エストラジオールやエストロンが1ng/l以上の濃度で検出されている。また経口避妊薬(ピル)の主成分であるエチニルエストラジオールなどの合成エストロゲンも生活廃水や環境水から検出されるケースがある。
【0004】
このように環境水中に高い頻度でエストロゲンが検出される理由として、下水処理の問題が挙げられる。すなわち、一般に下水処理場では、活性汚泥処理法等の好気的な生物処理法により汚水を処理しているが、この好気性生物処理では17β-エストラジオールやエストロンなど天然エストロゲンの除去が不安定であり、十分除去できない場合が多いことが知られている。特にエストロンは処理水中に残留しやすく、環境影響が懸念されている。
【0005】
このように天然エストロゲンまたは合成エストロゲンによる河川や湖沼など水環境における生態系への悪影響が懸念されることから、下水などの環境水中に存在するエストロゲンをng/lレベル以下まで除去する技術が必要である。
【0006】
このような技術として、オゾン処理法、促進酸化法、活性炭吸着法、逆浸透膜分離法などの処理技術が効果的であることがすでに確認されている。しかしこれらの技術は一部の下水処理場において、処理水の再利用を目的とした高度処理法として適用されているものであり、希薄なエストロゲンを含む多大な下水処理水の全量をこのような高度処理法によって処理することは効率的に不利であり、多大なエネルギーや莫大なコストを要するなどの問題があった。
【0007】
一方、生物学的な処理技術は低コストであるものの、代表的な生物処理方法である活性汚泥法は、先に述べたように、17β―エストラジオールなどの天然エストロゲンの除去率が低い。さらに17β-エストラジオールの酸化体であるエストロンは生物処理水中に17β-エストラジオールより残留しやすいことが指摘されている。エストロンは、17β-エストラジオールに次いで高いエストロゲン活性を有しているため、17β-エストラジオールとともにその対策が必要である。
【0008】
これらの現状に鑑み、エストロゲンを分解処理する微生物の探索が広く行われている。具体的には、非特許文献1記載のNovosphingobium属ARI-1株、非特許文献2記載のRodococcus属細菌、特許文献1記載のNovosphingobium属細菌、およびSphingomonas属細菌などが知られている。
【非特許文献1】Applied Environmental Microbiology, Apr. 2002, p2057-2060
【非特許文献2】Applied Environmental Microbiology, Sep. 2004, p5283-9
【特許文献1】特開2004−261123号公報〔発明が解決しようとする課題〕
【0009】
しかしながら、これらの微生物を水処理に利用する場合、反応槽に分解微生物を直接投入し、被処理水と接触させることになるが、分解微生物は処理水とともに流出してしまうために、常に分解微生物を投入し続けなければならず、非効率であった。このことは、活性汚泥を有する反応槽に分解微生物を投入する場合であっても同様である。
【0010】
そのため、分解微生物を何らかの担体に固定化して、被処理水と接触させる方法が提案されており、固定化微生物を用いる水処理方法として、固定床型のリアクターによる方法、浮遊担体を用いた方法などが知られている。
【0011】
まず、固定床型のリアクターによる方法とは、生物膜ろ過法に代表されるように、活性炭やアンスラサイト、セラミックス、珪砂、セメントボールなど粒状物を反応槽に詰め、そこに被処理水を通水する方法である。しかし、この方法は、比較的長い時間をかけて担体表面に微生物を増殖させるものであり、特定の分解微生物を効率的に固定化することは困難であった。さらにこれらの担体内部は反応に関与しないため、非効率であった。
【0012】
また、浮遊担体を用いた方法とは、水中に浮遊させながら反応する浮遊担体を用いて水処理を行う方法である。この場合、担体にはポリアクリルアミドゲル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アガロース、デキストリンゲルなどのポリマーが利用され、付着固定化もしくは包括固定化等の固定化方法が採用されている。付着固定化の場合、ポリウレタンフォーム、セルローススポンジ等のスポンジ粒状物などを用いることが可能であるが、このような素材を用いた付着固定化では、前述の固定床型と同様に、特定の分解微生物を特異的に固定化することが困難であった。一方、包括固定化の場合、微生物をポリマーに練り込んで形成するため、十分な量の微生物を担持することができるものの、固定化担体の調製が煩雑であり、固定化工程において微生物が死滅あるいは不活性化するという重大な問題があった。さらに、このようなポリマーを利用する場合、担体内部への基質の移動が制限されてしまうため、低濃度のエストロゲンを効率的に除去するには不都合であった。このように、これらの担体は、分解能力の高い分解微生物を効率的に固定化することが困難である場合が多く、そのうえ担体内部が反応に関与しないため、反応槽への担体投入量が容積比で20%〜50%にも及ぶことが一般的であった。そのため、大量の微生物固定化担体を一度に調製しなければならなかった。
【0013】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決し、分解微生物を効率的に、かつ高密度に固定化した固定化担体を用い、廃水中の微量のエストロゲンを効率的に処理する技術を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
【0014】
上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明者等は、比較的温和な条件で、効率的、高密度に分解微生物を担体に固定化せしめ、また排水中に微量に存在するエストロゲンを効率的に分解除去する処理装置および処理方法を完成させた。
【0015】
1つの観点からは、本発明は、被処理水を供給する供給口と処理水を排出する排出口とを備え、アニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体にエストロゲン分解微生物を固定化した固定化物を内部に備える分解除去反応槽を含んでなる、エストロゲン処理装置である。図1に本発明の処理装置の概要を示す。
【0016】
本発明においては、反応槽中の固定化物の量は特に限定されないが、エストロゲン分解除去反応槽の容量に対してかさ容積比で0.5%以上20%以下とすることが望ましい。一般に反応槽あたりの固定化物量が多いほど反応速度は速くなり、反応槽を小さくできるが、高価な固定化物を多量に調整する必要が生じる。また、固定化物を反応槽内に浮遊させて処理する処理方法の場合、固定化物の投入量を上げると、固定化物間の接触によって固定化物の磨耗や劣化が生じやすく効果の持続が望めないうえ、大きな撹拌動力が必要である。さらに既存の担体の多くは、反応に関与しない容積が多く、担体投入量を多くすると反応槽あたりの処理効率は低下する。そのため、活性の高い固定化物を少量投入することが理想である。一方、固定化物を高濃度に充填する固定床型の処理方法の場合、懸濁物質によって目詰まりを生じることから、逆洗浄などの対策を講じる必要があるが、本固定化物をかさ容積比20%以下で投入する場合においてはこのような問題を生じることはない。本法の担体は、反応に関与しない部分が小さく、微生物の固定化率が高いことから単位容積あたりの分解活性も高い。そのため、担体投入率はかさ容積比で0.5%以上であれば、効率的な処理が可能である。
【0017】
また本発明においては、固定化物の形状は特に限定されず、例えば、シート状、粒子状、ハニカム状にすることができ、シート状であることが特に好ましい。また、本発明の固定化物は、積層して使用することも可能であり、シート状の固定化物を積層して固定化物層とすることが好ましい。また、シート状の固定化物を使用する場合、反応槽内を流れる被処理水の流れ方向とシート状固定化物のシート面とが平行に配置されることが好ましい。さらに本発明においては、固定化物をカートリッジ式の固定化物ユニットとすることもできる。
【0018】
また本発明に使用する担体は、エストロゲン分解微生物を保持できるものであれば特にその材質、形状等は問わないが、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基から選ばれる1種類以上の官能基を有する側鎖が導入されたアニオン交換基を有するグラフト重合材料であることが好ましい。また、本発明に使用する担体の基材も特に限定されないが、好ましくは、織布、不織布、繊維材料から選ばれる1つ以上を基材とすることができる。
【0019】
本発明に使用するエストロゲン分解微生物としては、好ましくはNovoshingobium属の細菌、Sphingomonas属の細菌、Rodococcus属の細菌を使用することができ、特に好ましくはNovoshingobium sp. JEM-1株(FERM P-19234)、Sphingomonassp. JEM-3株(FERM P-19235)を使用することができる。本発明のエストロゲン分解微生物は、1種類で使用することもでき、また、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
本発明のエストロゲン処理装置は、固定化物のエストロゲン分解除去能を賦活化する賦活化槽を含んでいてもよい。この際、エストロゲン分解除去反応槽を賦活化槽として使用することも可能である。
【0021】
さらに、本発明のエストロゲン処理装置は、処理装置の効率的な運転を目的として、固定化物中のエストロゲン分解微生物の存在量をモニターするモニタリング装置を含んでいてもよい。固定化物中のエストロゲン分解微生物のモニタリング法は、特に限定されないが、定量PCR法を好ましく適用することができる。
【0022】
また他の観点からは、本発明は、上記のエストロゲン処理装置を使用するエストロゲンの処理方法である。1つの観点からは、本発明は、エストロゲン分解微生物をアニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体に固定化させた固定化物と、エストロゲンを含む被処理水とを接触させる工程を含んでなる、エストロゲンの処理方法である。さらに、本発明のエストロゲン処理方法は、必要に応じて、固定化物のエストロゲン分解除去能を賦活化する工程、および/または、固定化物中のエストロゲン分解微生物の存在量をモニターする工程を含んでいてもよい。
〔発明の効果〕
【0023】
本発明は、上述したような構成を有することにより以下の効果を生じる。すなわち、本発明の微生物固定化物は、エストロゲン分解微生物の付着性に優れ、温和な条件で微生物を固定化でき、エストロゲン分解活性の高い分解微生物を高密度に保持することができる。また本発明の固定化物は透水性に優れ、微量のエストロゲンであっても固定化物内部へ容易に移動できるため、短時間でエストロゲンの分解除去処理することができ、処理槽容積の縮小も可能になる。従って、このような固定化物を含んでなる本発明のエストロゲン処理装置は、水中の微量のエストロゲンを効率的に分解および除去することが可能である。
【発明の実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における被処理水とは、エストロゲンを含むあらゆる種類の水が含まれ、例えば、下水の生物処理水、高度処理水、河川水、湖沼水などが挙げられる。また本発明におけるエストロゲンとは、一般に卵胞ホルモン類などと呼ばれることもある、ステロイド骨格を有するすべての女性ホルモン、その代謝物、およびその化学的誘導体を意味する。本発明のエストロゲンとしては、具体的には、17β―エストラジオール、エストロン、エストリオール、17α−エチニルエストラジオール、エキリン、エキレニン、およびその代謝物が含まれる。また、エストロゲンの化学的誘導体である、ホモエストロン、ドワジノールなども本発明のエストロゲンに含まれる。
【0025】
本発明におけるエストロゲン分解微生物とは、エストロゲン分解能を有する微生物を意味する。本発明に用いるエストロゲン分解微生物としては、好ましくはNovoshingobium属、Sphingomonas属、Rodococcus属の微生物を使用することができ、さらに好ましくは低濃度エストロゲンを効率的に分解できるNovoshingobium sp. JEM-1株(FERM P-19234)、Sphingomonassp. JEM-3株(FERM P-19235)を使用することができる。また、Novoshingobium sp. JEM-1株(FERM P-19234)やSphingomonas sp. JEM-3株(FERM P-19235)と同等のエストロゲン分解能力を有する微生物であれば、本発明に好適に用いることができる。また、本発明のエストロゲン分解微生物は、1種類で使用することもでき、また、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明においては、エストロゲン分解微生物を担体に固定化した固定化物によって、水中のエストロゲンを分解除去する。そして、エストロゲンを効率的に分解除去するためには、エストロゲン分解微生物の分解活性を低下させることなく、微生物を担体に高濃度で固定化する必要がある。そこで本発明においては、アニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体を、エストロゲン分解微生物の固定化担体として利用する。本発明のアニオン交換基を有するグラフト重合材料とは、グラフト重合を利用して基材にグラフト側鎖及び上記アニオン交換基を付与して製造されたものである。このようなアニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体としては、例えば、EPIX-A膜(イー・シー・イー製)などを使用することができる。
【0027】
本発明においてグラフト重合とは、幹となる単量体単位のところどころに他種の単量体単位が側鎖として配列した構造をもつ重合体を生成する方法を意味する。本発明においては、公知のあらゆるグラフト重合法を使用することができるが、放射線グラフト重合が好ましい。ここで放射線グラフト重合とは、基材に放射線を照射して開始させる重合方法であって、基材上の重合開始点からモノマー(単量体)を重合させ側鎖を導入する重合方法である。一般に放射線グラフト重合においては、放射線の照射により基材にラジカルを発生させ、そのラジカルをもとに重合が開始され、グラフト側鎖が基材に導入される。したがって、放射線グラフト重合によれば、ポリオレフィンのような表面に水酸基(ヒドロキシ基)等の官能基を持たない基材であっても、種々の官能基を有するグラフト側鎖を導入することができ、基材に対して種々の化学修飾を行うことが可能である。
【0028】
微生物の処理対象物質と微生物担体に導入された官能基(アニオン交換基)とが相互作用する場合、微生物担体内部で処理対象物質の吸着濃縮が起こるため、微生物による処理が効率的に行われる。これは、エストロゲンのような比較的低濃度の汚染物質を除去する場合に特に有効である。このように、放射線グラフト重合を利用することにより本願発明の極めて優れた効果を得ることができる。
【0029】
なお、使用できる放射線としては、例えば、γ線、電子線、β線、α線、紫外線、X線、中性子線などの高エネルギー放射線を挙げることができるが、γ線や電子線が好ましい。
また、グラフト重合によって得られるグラフト重合物においては、グラフト(graft)が「接ぎ木」と訳されるように、グラフト側鎖の一端が基材に共有結合で強固に結合される一方、他端は結合に関与しないため、側鎖のモビリティーが大きい。このため、特にアニオン交換基という親水性の大きな官能基を有する本発明のグラフト側鎖は、水処理のような水溶液系で膨潤し、より効率的に機能を発揮することができる。特に、本発明の微生物担体は、水溶液中での微生物吸着及び保持(固定化)をその目的の1つとしているため、水溶液中で膨潤するアニオン交換基を有するグラフト側鎖は、微生物固定化物を水中で使用する場合、極めて有効である。これは、アニオン交換基による正の電荷とともに、グラフト側鎖が担体基材の表面を覆うことによって微生物吸着に適したより親和性の高い表面状態が提供されるためである。
【0030】
本発明の複合繊維においては、公知のあらゆる材料を使用することができる。本発明の複合繊維に使用することのできる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるハロゲン化ポリオレフィン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体に代表されるオレフィンとハロゲン化ポリオレフィンとの共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)に代表されるオレフィンと他の単量体との共重合体、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどを挙げることができる。好ましくはポリオレフィン、さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを使用することができる。
【0031】
また、本発明においては、通水性、および、被処理水中の処理対象物質(エストロゲン)と固定化された微生物との接触効率の観点から、複合繊維基材が複合繊維集合体であることが好ましく、複合繊維集合体としては、複合繊維を含んでなる織布または不織布がより好ましい。本発明において繊維集合体を用いると、基材である繊維集合体が有している様々な特性(例えば、空隙が大きい、比表面積が大きい、微生物担持量が大きい、通水時の圧力損失が小さい、成形加工が容易など)を活かすことができるため、好ましい。ここで、不織布については、繊維が十分に絡合して流出または脱落しないものであればよいが、例えば、強度が要求される用途においては熱融着処理等により繊維同士が部分的に接着加工されているものが好ましい。
本発明においては、グラフト重合により複合繊維基材に導入される側鎖はアニオン交換基を有する。これは、多くの微生物が通常負に帯電していることから、繊維基材にアニオン交換基を導入して正に帯電させて、担体への微生物の吸着速度や吸着量を大きくし、脱落を少なくするためである。このような構成を採用することにより担体は、微生物を吸着させて水処理等に適用する場合、迅速に担持操作を行うことができる。なお、カチオン交換基を導入すると担体が負に帯電するので本発明には適していない。本発明の微生物担体が担持する微生物は特に限定されないが、負に帯電している微生物が好ましい。本発明の担体は、単一の種類の微生物を担持することもできるが、複数の種類の微生物を担持することも可能である。
【0032】
本発明において好適なアニオン交換基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基及び第四級アンモニウム基から選択される1種以上を挙げることができる。単純に負に帯電する微生物を正に帯電する微生物担体に吸着させるのであれば、より正に帯電しやすい第四級アンモニウム基が微生物担体上の官能基として最も好ましい。ところが、同時に塩基性も強くなることから、微生物に対する悪影響が現れる可能性がある。特に、第四級アンモニウム基が抗菌剤等に用いられる長鎖アルキル基をもつものの場合には、微生物による分解活性を利用する用途には不適である。微生物の活性を失うことなく微生物を担持し、汚染物質を分解するなどの特定の機能を発揮させるには第三級アミノ基の方が好ましい場合もある。一般的には、第三級アミノ基より第二級又は第一級アミノ基(アミノ基)になると吸着力が弱くなる。どの種類のアニオン交換基を量的にどれだけ導入するかは、用途、要求性能などに応じて、決定することができる。このような理由から、本発明のアニオン交換基としては、弱塩基性アニオン交換基が好ましく、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基から選ばれる1種類以上の官能基が特に好ましい。
【0033】
グラフト側鎖にアニオン交換基を導入する方法としては、(1)アニオン交換基を有するモノマーをグラフト重合により導入する方法、(2)アニオン交換基を有しないモノマーをグラフト重合により導入した後、アニオン交換基に転換する方法が知られており、本発明においてはいずれの方法も採用できる。アニオン交換基を有するモノマーとして、例えば、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)などがある。また、イオン交換基に転換可能なモノマーとしてスチレン(St)、グリシジルメタクリレート(GMA)、アクリル酸グリシジル、クロロメチルスチレン(CMS)、ビニルピリジン(VP)などがある。
【0034】
本発明においては、グラフト側鎖は、アニオン交換基がイオン交換容量として0.5meq/g以上であることことが好ましい。アニオン交換容量が0.5meq/g以上の場合、十分な量の微生物を担持することができ、微生物の処理対象である物質の吸着が可能なためである。この交換容量以下の場合、十分な帯電が得られずまた基材の親水化が不十分のため、微生物担持量や汚染物質吸着量の低下が生じるおそれがある。なお、本明細書においてイオン交換容量とは、イオン交換体の単位重量当たりの交換基の総数を意味する。
【0035】
また、少なくとも0.5meq/g以上の値を得るには、グラフト率(重量増加率)が30%以上であることが好ましい。


本発明において固定化物とは、エストロゲン分解微生物を担体に固定化した物である。固定化の方法および態様は特に限定されないが、例えば、以下の方法により固定化することができる。すなわち、本発明の微生物担体基材を、1cm角程度に細かく切断し、またはそのまま微生物培養物(培養液)と接触させることにより、簡単に微生物を担体へ吸着固定させることが可能である。この場合、接触時間に特に制限はないが、1分間以上、好ましくは1時間〜3時間、工程によっては、担体を培養液中に一昼夜放置することも可能である。このような方法によって得られた微生物固定化物は、通常の洗浄などを行ってもエストロゲン分解微生物が担体から脱離することはない。こうして作製した微生物固定化物は、分解微生物が基材の表面に均一に固定化されていることが好ましい。例えば、透水性に優れる不織布等を基材とした場合、分解微生物が基材の表面に均一に固定化されていると、被処理水中のエストロゲンと微生物とが効率的に接触できることから、エストロゲンを含む被処理水を固体化物に接触させることにより迅速にエストロゲンを分解除去することが可能である。
【0036】
微生物固定化物と被処理水との接触方法には特に制限はなく、必要に応じて撹拌等を行うこともできる。接触方法としては、例えば、細かく切断したものを反応槽に投入し攪拌して接触させることも可能であり、また、シート状の固定化物を積層、充填し、そこに被処理水を通過させる方法も有効である。前者の場合、固定化物の投入量に特に制限はないが、かさ容積比で0.5%〜5%の量で効率的なエストロゲンの分解が可能であり、従来のポリマー系担体を用いる場合と比較して圧倒的に少ない投入量でエストロゲンを分解除去することができる。このとき、反応槽あたりの膜面積は、10〜75m2/m3である。後者の場合、シート状固定化物のシート面と平行に被処理水を通水すると、シート状固定化物の閉塞が生じにくいため、より安定した水処理が可能である。この場合、被処理水は、固定化物層の上部から流下させることも可能であるし、水平方向に通水することも可能である。このときの担体投入量は、かさ容積比で10〜30%が最適であるが、これに限定されるものではない。また、本発明においては、微生物固定化物の投入量を増やすことにより処理時間を短縮することが可能であり、それによって結果的に反応槽を大幅に小型化することが可能である。本発明においては、シート状の固定化担体を積層するように充填すると分解微生物を高密度に固定化することができるため、より短時間でエストロゲンを処理することが可能になり、特に好適である。さらに、担体として不織布を用いる場合、透水性に優れ、目詰まりしにくいうえ、固定化した微生物との接触性が高いことから、効率的な処理を実現できる。
【0037】
その一例として、シート状固定化物を高密度に充填したカートリッジ型の反応槽を図2に示す。カートリッジの内部を被処理水が通過する間に被処理水中のエストロゲンを分解できる。この場合、本発明による分解微生物固定化物を用いることで、高速で被処理水が流過する場合においても、固定化物の空隙が閉塞することなく、短時間で微量のエストロゲンを処理することが可能である。
【0038】
また、本発明のエストロゲン処理装置は、固定化物のエストロゲン分解除去能を賦活化する賦活化槽を含んでいてもよい。この際、エストロゲン分解除去反応槽を賦活化槽として使用することも可能である。この際の賦活化方法としては、賦活化剤を固定化物に接触させて賦活化することができる。賦活化剤としては、例えば、1mg/L以上のエストロゲンを含む液体(排水でもよい)を用いることができる。
【0039】
さらに、本発明のエストロゲン処理装置は、処理装置内のエストロゲン分解微生物の存在量をモニターするモニタリング機構を含んでいてもよい。モニタリング機構は、担体に付着固定化した微生物からDNAを抽出する工程と抽出したDNAを鋳型として分解微生物に特有の遺伝子をPCR反応によって増幅する工程を有し、増幅された遺伝子を検出する機構を備えた装置を用いる。この場合、処理装置内のエストロゲン分解微生物の存在量をモニターし、処理装置内に残存する分解微生物量に応じて、分解微生物の賦活化や固定化物の交換を行うよう制御することもできる。すなわち、本発明のエストロゲン処理装置は、処理装置内に残存する分解微生物量に応じて、分解微生物の賦活化や固定化物の交換を行うよう制御する制御部を含んでいてもよい。このようなモニタリング機構や賦活化槽を備えたエストロゲン処理装置は、効率的な運転を行うことができるため、特に好適である。図3に、モニタリング機構と賦活化槽を備えた本発明のエストロゲン処理装置の一例を示す。
【実施例】
【0040】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本実施例の記載は本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]分解微生物の固定化
エストロゲン分解微生物として、Sphingomonas.sp JEM-1、JEM-2、JEM-3株を使用した。これらの分解微生物は、200mLのNB培地(Difco製)で対数増殖後期まで培養したものを、担体への固定化に使用した。固定化担体には、弱塩基性のアニオン交換性不織布(EPIX-A膜;イー・シー・イー製)を使用した。EPIX-A膜は、芯材としてポリエチレンテレフタラート(PET)、鞘材としてポリエチレン(PE)を用いた芯鞘構造をもつ不織布を基材として、放射線グラフト重合法により第三級アミノ基(-NR2)を有するグラフト側鎖を導入したものである。この不織布担体を7.5mm角に切断したものを200mLの分解微生物の培養液中に浸漬し、約12時間振とう培養を行った。この担体を培養液から取り出し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、処理試験に使用した。対照系としては、分解微生物を含まない同様のNB培地に担体を約12時間浸漬し、同様に洗浄したものを用いた。
【0041】
分解微生物の培養液に不織布担体を浸漬したところ、分解微生物の菌体濃度と相関する吸光度(OD660nm)が速やかに減少した(図4)。これは、不織布担体を浸漬することにより分解微生物が短時間に担体表面に吸着したため、培養液中の菌体濃度が減少したものと考えられる。また、OD660nmの減少量から担体への微生物付着量を算出した。結果を以下の表1に示す。3株の分解微生物の中でJEM-1が最も高密度で担体に付着することがわかった。図5として示すJEM-1が付着した担体の電子顕微鏡(SEM)写真画像から、JEM-1が不織布繊維の表面に均一に付着したことがわかる。
【0042】
【表1】

[実施例2]エストロゲンの分析
エストロゲン(エストロン、17β―エストラジオール)の分析については、液体クロマトグラフ−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)を用いる以下の方法によって行った。
【0043】
まず反応試料液の一定量に内部標準物質として(17β-estradiol-16,16,17-d3 (Aldrich製)、estrone-16,16-d2 (CDN Isotopes製))を添加した。そしてセップパックコンセントレーター(Waters)を用いて、この溶液を固相抽出カラム(オアシスHLBプラス、Waters)に通液し、カラムを純水で洗浄、脱水した後、メタノールで分析対象物を溶出させた。この溶出液をさらに濃縮したのち、ジエチルエーテルで抽出し、50wt%メタノールで置換してLC/MS/MSによる測定を行った。なお、1回にサンプリングする試料液量を500mlとした場合、定量下限値は、17β-エストラジオールで1.0ng/l、エストロンで0.6ng/lであった。また、担体に吸着したエストロゲンは、メタノールで抽出した後、上記水溶液試料と同様の前処理を行い、LC/MS/MSによって測定した。
【0044】
LC/MS/MSの測定条件を以下に示す。
高速液体クロマトグラフィーはHP1100システム(Hewlett Packard製)を使用した。カラムはL-カラムODS(2.1mm×150mm,5μm;化学物質評価研究機構製)を使用し,カラムオーブン温度を40℃に設定した。移動相はアセトニトリル/水の系を用い,40%アセトニトリル/水から80%アセトニトリル/水へ2分間でリニアにグラジエントをかけ,流速0.2ml/minで流した。また,ポストカラムで0.05%アンモニア/メタノールを0.03ml/minで添加し,質量分析計へ導入した。試料の注入量は20μlとした。
【0045】
質量分析計にはQuattro II(Micromass製)を用い,イオン化法はエレクトロスプレー法のネガティブイオンモード,イオン源温度100℃,コーン電圧50Vとした。また,MS/MSの衝突ガスにはアルゴンガスを使用し,衝突エネルギーは38eVとした。MRM(multiple reaction monitoring)モードの測定イオンとしてE2はm/z271→145,E1はm/z269→145,E3はm/z287→171,E2-d3はm/z274→145,E1-d2はm/z271→145,E3-d2はm/z289→173を設定した。
【0046】
[実施例3]回分処理実験試験
分解微生物固定化物のエストロン分解能力を評価するため、回分処理試験を行った。回分処理試験には、ペプトン、酢酸を主成分とする合成排水にエストロンを加え、BOD 20mg/L、エストロン濃度10μg/Lに調製したものを試料液として使用した。この試料液1.25Lを攪拌機付反応槽(20℃)に入れ、分解微生物固定化物を加えて、攪拌しながら処理試験を行った。なお回分処理試験における担体投入量(面積比)は、18m2/m3である。そして、一定時間ごとに上澄液を取り出して、残存するエストロン濃度を測定した。
【0047】
測定結果を図6に示す。分解微生物を固定化していない対照系においても、試験開始1時間の間でエストロンが減少した。このことから、エストロンはこの不織布担体に吸着するものと考えられる。一方、分解微生物固定化物を用いたものでは、試験開始1時間以降も継続してエストロンを低減させた。特にJEM-1またはJEM-3を固定化したものはいずれも減少速度が速く、10μg/Lのエストロンを3時間で数百分の一にまで低減させた。JEM-1固定化担体は、この回分試験終了後、数日おきに被処理液を入れ替えて、同様の実験を繰り返し行った。その結果、エストロンに対する分解処理能力は18日目以降も残存し、分解処理能力が長期間維持することが示された(図7)。また同様に、エストロンを添加した下水二次処理水を試料液として試験を行った場合も、同程度の低減率でエストロンを分解除去することが可能であった。
【0048】
さらに、微生物固定化物投入量の影響を評価するため、前述の方法によって調製した微生物固定化物を用い、反応槽への投入量を変えて、回分処理試験を行った。結果を図8に示す。図8から理解できるように、微生物固定化物投入量の増加に伴って処理水中のエストロン濃度が減少した。なお、図8中、Cはエストロンの測定値(濃度)、C0はエストロンの初期濃度を表す。
【0049】
[実施例4]分解微生物固定化物充填カラムを用いるエストロゲン処理装置
前述の方法で調製した分解微生物固定化物をカラム(45ml)に充填し、エストロンを10000ng/L含む廃水を通水した。このときの分解微生物固定化物の投入量は、かさ容積比で15%とした。流速は水理学的滞留時間(HRT)が0.5分、1分、5分、10分になるように設定した。対照系として、分解微生物を固定化していない不織布担体を充填したカラムを用意し、同様な試験を行った。この結果、HRTの延長によって処理水中のエストロン濃度は低下したが、HRTが1分の場合でも90%近い除去率を示した(図9)。
【0050】
[実施例5]カートリッジ型固定化物層ユニットを用いるエストロゲン処理装置
20cm×50cmの弱塩基性アニオン交換性不織布60枚(EPIX-A膜 イー・シー・イー)を10LのJEM-1培養液を含む容器に浸漬し、2時間緩やかに攪拌した。得られたJEM-1固定化物を取り出し、脱塩素水道水で洗浄後、図2に示すようにカートリッジ内部に固定した。カートリッジは、ポリ塩化ビニル製で300×200×600mmの立方体とし、下水処理場最終沈殿池の越流水が流過する水路に設置した。この時、かさ容積比は20%である。この水路の水位は15cm、流速は1m/minであった。カートリッジ前後のエストロン濃度を表2に示す。このように、カートリッジを通過する短い時間(約0.5分)に、エストロンを効率的に処理することができた。
【0051】
【表2】

[実施例6]下水処理水の連続処理
下水処理水を用いた連続処理試験の概要を表3に示す。試験はウォータージャケット(20℃)付の完全混合型反応槽(有効容積0.9L)を使用した。排水(被処理水)は実験プラントの下水二次処理水にエストロン(E1)を連続的に添加して濃度50ng/L程度にしたものを使用した。HRTは30分間に設定した。処理系列は表4に示す3系列を用意した。R1およびR2はJEM-1固定化物を投入し、R3は対照として分解菌を固定化していない担体を投入した。R2の担体は1週間に一回、新しく調製したJEM-1固定化担体と交換した。採水は、担体投入後2〜3日目と6〜7日目の各24時間で、コンポジットサンプルとして行った。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

JEM-1固定化物を用い、下水二次処理水中のエストロンを連続処理した結果を図10に示す。なお縦軸のエストロゲン濃度はエストロン、17β―エストラジオールの合計値を示す。二次処理水中のエストロゲン濃度(エストロン+17β―エストラジオール)が上昇した28〜35日目を除き、被処理水の17β―エストラジオールは数ng/Lレベルと低かった。分解微生物を固定化していない対照系のR3においても、運転期間を通して4割程度が除去された。対象系においても処理の経過とともに担体表面に微生物の付着が進むことから、エストロゲンの減少は吸担体への吸着と微生物分解の両方の影響が考えられる。一方、JEM-1を固定化したR1は、開始当初90%以上の高い除去率が得られた。さらに1週間後においても除去率は80%を示したが、2週間後の除去率は対照系(R3)と同レベルまで低下した。一方、R2では、1週間ごとに新たに調製した固定化物と交換した結果、80%以上の除去率で安定して処理することができた。1週間連続処理したJEM-1固定化物に付着残存するエストロゲンを測定した結果、付着したエストロンは被処理水から除去されたエストロンの0.1%程度であったことから、被処理水から除去されたエストロゲンはJEM-1によって分解されたと考えられる。
【0054】
[実施例7]分解微生物のモニタリング機構を含むエストロゲン処理装置
担体に付着した分解微生物の量を16S rDNA遺伝子を標的としたリアルタイムPCR法で測定した。固定化物からのDNAの抽出は、DNA抽出キット(Dneasy、QIAGEN)を使用し、担体をハサミで細かく切断した後に、キット添付のマニュアルに従って行った。
【0055】
定量PCR法は、リアルタイムPCR装置であるロッシュ・ダイアグノスティック株式会社製のLight Cyclerを用いて定量検出を行った。ここでは、分解微生物JEM-1を特異的に検出するプライマーとして、EB2F(配列番号1)及びEB2R(配列番号2)を利用した。PCR反応は同社製Light Cycler DNA Master SYBR Green Iキット(商標)を使用し、そのマニュアルに従って行った。
【0056】
実験期間中、R1の固定化物に固定化されたJEM-1量の経時変化を図11に示す。固定化物に固定化された分解微生物は運転期間を通して徐々に減り続けた。
[実施例8]分解微生物の賦活化槽を含むエストロゲン処理装置
図3に、モニタリング装置、賦活化工程を組み込んだ処理装置を示す。前述の方法によって分解微生物量を確認し、分解微生物が減少(5×108cells/cm2以下まで)していた場合、ポンプの停止、もしくはバルブを閉めて一時的に流入を停止し、反応槽に賦活化剤を供給した。この態様においては、賦活化時に反応槽を賦活化槽として使用した。賦活化剤にはエストロン溶液を用い、反応槽内(賦活化槽内)の濃度が1mg/Lになるまで添加した。そして、24時間曝気を行い、分解微生物の賦活化を行った。賦活化終了後の処理水中のエストロン濃度は、10ng/L以下であった。そして、被処理水の供給を再開し、処理を継続した。その結果、賦活化後も安定して、被処理水中のエストロンを80%以上除去できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明のエストロゲン処理装置の概略図である。
【図2】図2は、カートリッジ型微生物固定化担体の概略図である。
【図3】図3は、エストロゲン分解除去反応槽、賦活化槽、モニタリング機構を含んでなるエストロゲン処理装置の概略図である。
【図4】図4は、不織布担体による分解微生物の固定化を表すグラフである。
【図5】図5は、JEM-1株を固定化した不織布担体の電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、固定化微生物によるエストロンの分解を示すグラフである。
【図7】図7は、JEM-1固定化担体によるエストロン分解能の安定性を示すグラフである。
【図8】図8は、エストロン分解率に対する担体投入量の影響を示すグラフである。
【図9】図9は、分解微生物固定化カラムによるエストロンの処理を示すグラフである。
【図10】図10は、JEM-1固定化担体によるエストロゲンの連続処理の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、連続処理におけるエストロゲン分解微生物の量の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を供給する供給口と処理水を排出する排出口とを備え、アニオン交換基を有するグラフト重合材料を含んでなる担体にエストロゲン分解微生物を固定化した固定化物を内部に備える分解除去反応槽を含んでなる、エストロゲン処理装置。
【請求項2】
前記固定化物が、前記反応槽の容量に対して容積比で0.5%以上20%以下である、請求項1に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項3】
前記固定化物が、シート状の固定化物を積層した形態の固定化物層であり、前記反応槽内の被処理水の流れ方向が該固定化物層を構成するシート状の固定化物のシート面と平行になるように配置されている、請求項1又は2に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項4】
前記固定化物がカートリッジ式の固定化物ユニットである、請求項1〜3に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項5】
前記アニオン交換基が、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基から選ばれる1種類以上の官能基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項6】
前記担体が、織布、不織布、繊維材料から選ばれる1つ以上を基材としてグラフト重合により側鎖が導入されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項7】
前記エストロゲン分解微生物が、Novoshingobium属の微生物および/またはSphingomonas属の微生物から選ばれる1種類以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項8】
前記エストロゲン分解微生物が、Novoshingobium sp. JEM-1株(FERM P-19234)、Sphingomonas sp. JEM-3株(FERM P-19235)から選ばれる1種類以上である、請求項7に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項9】
前記固定化物のエストロゲン分解除去能を賦活化する賦活化槽を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項10】
前記固定化物のエストロゲン分解微生物の存在量をモニターするモニタリング機構をさらに含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエストロゲン処理装置。
【請求項11】
前記モニタリング機構が定量PCR法を利用したものである、請求項10に記載のエストロゲン処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−7569(P2007−7569A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192464(P2005−192464)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【Fターム(参考)】