説明

エストロゲンの経皮デバイスおよび経皮送達

ポリマーマトリックスおよびエストロゲンを含む、エストロゲンの経皮投与のための経皮的薬物送達システムが記載される。そのようなシステムの作製方法および使用方法もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エストロゲンを経皮送達するための組成物および方法が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般には経皮的薬物送達システムに関連し、より詳しくは、エストロゲンを送達するための経皮的薬物送達システムに関連する。経皮システム(例えば、薬物を含有する感圧性接着剤を含むパッチ)を、皮膚を介して薬物を送達する手段として使用することが、広く知られている。しかしながら、特定の薬物、例えば、エストロゲンの送達のために設計された経皮的薬物送達システムが依然として求められており、また、所望される薬物動態学的特性を示す、より小さい経皮的薬物送達システムが依然として特に求められている。
【0003】
投薬形態物としての経皮送達システム(接着性パッチ)は、過去25年間にわたって膨大な数の特許出願の主題となっており、これらの特許出願は多くの特許をもたらしているが、それに比べると、市販製品をほとんどもたらしていない。当業者にとって、市販製品の数が比較的少ないことは、驚くべきことではない。規制上での障害、経済的障害および市場での障害が、市場における製品の数を制限することの一因となっているが、医師および患者の要求を満足させるための所望される物理的パラメーターおよび薬物動態学的パラメーターを達成する経皮送達システムを開発するという課題が、より困難になっている。市販製品の開発の期間中に検討されなければならないパラメーターには、薬物溶解性、薬物安定性(例えば、他の成分物質および/または環境との相互作用から生じるかもしれないような薬物安定性)、治療量の薬物が、意図された使用継続期間にわたって所望の送達速度で送達されること、解剖学的な適用部位における十分な接着、最小限の不快、刺激および感作を、使用期間中と、除去期間中および除去後との両方において伴う一体性(例えば、最小限の湾曲、しわ、層間剥離およびすべり)、ならびに、除去後における最小限の残留接着剤(または他の成分)が含まれ得る。寸法がまた、製造および患者の観点から重要となる場合があり、外観が患者の観点から重要となる場合がある。市販製品の開発の物理的な製造面および生産面(例えば、物質、設備および労働の同一性およびコスト)、ならびに、規制順守のために要求される支援分析方法もまた、重要となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商用の経皮的薬物送達システムを開発するときに検討される物理的パラメーターのうち、寸法、例えば、適用部位における表面積が、多くの場合、他の物理的要件および薬物動態学的要件によって、例えば、所望される薬物送達速度および1日投薬量などによって決定され、また、制限される。一般には、薬物送達を意図された治療継続期間にわたって目標治療レベルで達成する比較的「大きい」経皮的薬物送達システムを開発することの方が、受け入れられ得る薬物動態学的特性を依然として示すより小さい経皮的薬物送達システムを開発することよりも容易である。それにもかかわらず、寸法が様々なコスト(例えば、成分物質のコスト、包装材料のコスト、生産設備および製造設備のためのコスト、単位操業時間あたりの製品収量に対する労務費など)に直接に影響を与え、また、患者は一般には、より小さいシステムを、(より小さい表面はより少ない浸襲的接着剤の使用を可能にし得るので、審美的理由および快適さの両方のために)より大きいシステムよりも好むので、より小さい経皮的薬物送達システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態によれば、有効表面積を規定する薬物含有層を含み、かつ、エストラジオールを含有するポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムであって、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含み、かつ、該有効表面積に基づいて0.01mg/cm2/日を超えるエストラジオール流量を達成する経皮的薬物送達システムが提供される。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、アクリル接着剤、シリコーン接着剤および可溶性PVPを含むポリマーブレンドを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの総乾燥質量に基づいて、約2質量%〜25質量%のアクリル接着剤、約45質量%〜70質量%のシリコーン接着剤、約2質量%〜25質量%の可溶性PVP、約5質量%〜15質量%の浸透促進剤および約0.1質量%〜10質量%のエストラジオールを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約20質量%のアクリル接着剤、約56.9質量%のシリコーン接着剤、約7.5質量%の可溶性PVP、約6.0質量%のオレイルアルコール、約8.0質量%のジプロピレングリコールおよび約1.6質量%のエストラジオールを含む。いくつかの実施形態において、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤が、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤の総質量に基づいて、約1:2から約1:6までの比率で存在する。
【0006】
いくつかの実施形態において、浸透促進剤は、オレイルアルコールまたはジプロピレングリコールあるいは両方を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日および少なくとも7日からなる群から選択される期間にわたる治療効果的な量のエストラジオールを送達するために効果的な量のエストラジオールを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日からなる群から選択される量のエストラジオールを送達するために効果的な量のエストラジオールを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約10mg/cm2を超える塗布質量を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約12.5mg/cm2および約15mg/cm2からなる群から選択される塗布質量を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する、エストラジオールを含むポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムが提供される。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、エストラジオールを投与するための方法であって、それを必要とする対象の皮膚または粘膜に、本明細書中に記載されるような経皮的薬物送達システム、例えば有効表面積を規定する薬物含有層を含み、かつ、エストラジオールを含有するポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムを適用することを含む方法が提供され、該システムは、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含み、かつ、該有効表面積に基づいて0.01mg/cm2/日を超えるエストラジオール流量を達成する。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、エストロゲンを投与するための経皮的薬物送達システムを作製する方法であって、エストロゲンと、アクリル接着剤、シリコーン接着剤および可溶性PVPを含むポリマーブレンドとを含むポリマーマトリックスを形成すること、および、このポリマーマトリックスを支持体層に適用し、その結果、このシステムが、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含むようにすることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%である有効表面積を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約20質量%のアクリル接着剤、約56.9質量%のシリコーン接着剤、約7.5質量%の可溶性PVP、約6.0質量%のオレイルアルコール、約8.0質量%のジプロピレングリコールおよび約1.6質量%のエストラジオールを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、約10mg/cm2を超える塗布質量で支持体層に適用される。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックス塗布質量が、約12.5mg/cm2および約15mg/cm2からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、Vivelle−Dot(登録商標)(◆)と比較した、本発明による経皮送達システム(▲及び●)からの0〜81時間における経時的なエストラジオール流量(μg/cm2/時)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
経皮送達システムの分野は、多くの異なる競合する要因を、例えば、患者に対して依然として許容可能でありながら、臨床効力と、満足すべき耐摩耗性との両方を示す市販製品を開発するためにバランスさせる必要があるという問題に悩まされている。例えば、経皮送達システムの寸法を選択するときには、より小さい寸法に有利に働く要因(例えば、より低いコスト、より良好な接着性能および改善された審美性など)を、より大きい寸法に有利に働く要因(例えば、目標送達速度(流量)および1日用量など)に対してバランスさせることが必要である。Vivelle−Dot(登録商標)経皮エストラジオール製品(Noven Pharmaceuticals Inc.製)が、5つの異なる有効表面積(2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2)で入手可能であり、これらの有効表面積はそれぞれが、異なる量の薬物を1日あたり送達する(それぞれ、0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日)。これらのVivelle−Dot(登録商標)製品のそれぞれが0.156mg/cm2のエストラジオールを含む。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、Vivelle−Dot(登録商標)よりも小さい有効表面積を有し、しかし、Vivelle−Dot(登録商標)製品とほぼ同等である1日投薬量、または、それよりも大きい1日投薬量を達成する、エストロゲンを経皮送達するための経皮的薬物送達システムを提供する。例えば、本発明には、Vivelle−Dot(登録商標)製品とほぼ同等である1日投薬量をより小さい寸法のシステムで達成する経皮的薬物送達システムが含まれる。より小さいシステムを、1日投薬量を犠牲にすることなく提供できることが、著しい利点を表している。
【0016】
本出願人は、驚くべきことに、薬物含有接着剤層の塗布質量を増大することにより、単位面積あたりの流量が増大し、従って、同程度の1日投薬量を達成するより小さい経皮的薬物送達システムの開発が可能となったことを発見した。この結果は驚くべきことであった。なぜならば、塗布質量は、送達継続期間を制御するために典型的には選択されるが、塗布質量が送達速度に影響を与えることは一般には理解されていないからである。このように、塗布質量を増大させて、より長い期間にわたる送達を提供することが、当該技術分野では知られている一方で、塗布質量を増大することが送達速度または流量を増大させ得ること、従って、1日投薬量を維持しながら、より小さいシステムの開発を可能にし得ることは知られていなかった。
【0017】
いくつかの態様によれば、エストロゲンを経皮送達するための経皮的薬物送達システムおよび方法が提供される。特定の実施形態において、本発明のシステムは、他の知られているエストロゲンデバイス(例えば、Noven Pharmaceuticals Inc.によって製造されるVivelle−Dot(登録商標))よりも増大した流量を示し、従って、単位面積あたりの増大した薬物送達を示す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品によって示される0.01mg/cm2/日よりも大きい流量を示し、例えば、Vivelle−Dot(登録商標)製品の流量の約1.25倍(1.125倍〜1.375倍を含む;例えば、1.25倍)、約1.33倍(1.197倍〜1.463倍を含む;例えば、1.33倍)、約1.5倍(1.35倍〜1.65倍を含む;例えば、1.5倍)、約1.67倍(1.503倍〜1.837倍を含む;例えば、1.67倍)、約1.75倍(1.575倍〜1.925倍を含む;例えば、1.75倍)、約2倍(1.8倍〜2.2倍を含む;例えば、2倍)、約3倍(2.7倍〜3.3倍を含む;例えば、3倍)、約4倍(3.6倍〜4.4倍を含む;例えば、4倍)または約5倍(4.5倍〜5.5倍を含む;例えば、5倍)である流量を示す。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、他の知られているエストロゲンデバイスよりも大きい塗布質量を有する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、単位面積あたりのエストラジオールの量がVivelle−Dot(登録商標)製品の0.156mg/cm2のエストラジオールを超えるような塗布質量を有しており、例えば、Vivelle−Dot(登録商標)製品の塗布質量の約1.25倍(1.125倍〜1.375倍を含む;例えば、1.25倍)またはそれ以上、約1.33倍(1.197倍〜1.463倍を含む;例えば、1.33倍)またはそれ以上、約1.5倍(1.35倍〜1.65倍を含む;例えば、1.5倍)またはそれ以上、約1.67倍(1.503倍〜1.837倍を含む;例えば、1.67倍)またはそれ以上、約1.75倍(1.575倍〜1.925倍を含む;例えば、1.75倍)またはそれ以上、約2倍(1.8倍〜2.2倍を含む;例えば、2倍など)またはそれ以上、あるいは、約3倍(2.7倍〜3.3倍を含む;例えば、3倍)またはそれ以上である塗布質量を有する。従って、いくつかの態様によれば、本発明は、同程度の薬物送達を達成するためのより小さいデバイスの使用を可能にする。
【0018】
(定義)
本明細書中で使用される技術用語および科学用語は、別途定義されない限り、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。当業者に既知の様々な方法論が本明細書中では参照される。参照されるそのような知られている方法論を示す刊行物およびその他が、それらは全体が示されるかのように、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。当業者に既知の適切な物質および/または方法はどれも、本発明を実施する際には利用することができる。しかしながら、特定の物質および方法が記載される。下記の説明および実施例において参照される物質、試薬およびその他は、別途記されない限り、市販供給元から得ることができる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、物の単数形態は、単数である物だけを示すことが明示的に述べられる場合を除き、単数である物および複数である物の両方を示す。
【0020】
用語「約」、および、約の用語によって修飾されるか否かによらず、一般には範囲の使用は、包含される数字が、本明細書中に示されるまさにその数字に限定されず、引用された範囲に実質的に含まれ、その一方で、本発明の範囲から逸脱しない範囲を示すために意図されることを意味する。本明細書中で使用される場合、「約」は当業者によって理解され、かつ、それが使用される文脈においてある程度変化する。この用語が使用される文脈を考慮して当業者にとって明確でないこの用語の使用が存在するならば、「約」はその具体的な用語のプラス側10%またはマイナス側10%までを意味する。
【0021】
本明細書中で使用される表現「実質的に含まない(含有さない)」は一般には、記載されている組成物(例えば、経皮的薬物送達システム、ポリマーマトリックスなど)が、問題としている組成物の総質量に基づいて、約5質量%未満、約3質量%未満または約1質量%未満の除外成分を含むことを意味する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、ヒトを含めて、薬物治療を必要としているいずれかの動物を意味する。例えば、対象は、エストロゲンにより処置もしくは防止され得る状態に悩まされ続けている場合があり、または、そのような状態を発症する危険性がある場合があり、あるいは、エストロゲンを健康維持目的のために摂取し続けている場合がある。
【0023】
本明細書中で使用される場合、表現「治療効果的な量」および表現「治療的レベル」は、特定の薬理学的応答をもたらすような、対象における薬物投薬量または薬物血漿中濃度をそれぞれ意味し、該特定の薬理学的応答を得るために、該薬物がそのような処置の必要性のある対象において投与される。薬物の治療効果的な量または治療的レベルは、そのような投薬量がたとえ、当業者によって、治療効果的な量であると思われるとしても、本明細書中に記載される状態/疾患を処置することにおいて常に効果的であるとは限らないことが強調される。便宜的にすぎないが、例示的な投薬量、薬物送達量、治療効果的な量および治療的レベルが、成人のヒト対象に関して下記において提供される。当業者は、そのような量を、特定の対象および/または状態/疾患を処置するために必要とされるように、標準的な慣例に従って調節することができる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「有効表面積」は、経皮的薬物送達システムの薬物含有層の表面積を意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「塗布質量」は、経皮的薬物送達システムの有効表面積の単位面積あたりの薬物含有層の質量を示す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「エストロゲン」には、エストロゲン様ステロイド、例えばエストラジオール(17−β−エストラジオール)、安息香酸エストラジオール、エストラジオール17β−シピオナート、エストロピパート、エキレニン、エキリン、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、抱合型エストロゲン、エステル化エストロゲン、および、それらの混合物が含まれる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「流量」(これはまた、「透過速度」とも呼ばれる)は、皮膚または粘膜組織を通過する薬物の吸収として定義され、下記のフィックの第1の拡散法則によって記述される:
J = −D(dCm/dx)
式中、Jは流量(g/cm2/秒)であり、Dは、皮膚または粘膜を通過する薬物の拡散係数(cm2/秒)であり、dCm/dxは、皮膚または粘膜の両端での薬物の濃度勾配である。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「経皮(的)(transdermal)」は、皮膚または粘膜との直接の接触による薬物の送達、投与または適用を示す。そのような送達、投与または適用はまた、皮膚的(dermal)、経皮的(percutaneous)、経粘膜的(transmucosal)および口内(buccal)として知られている。本明細書中で使用される場合、「皮膚的(dermal)」には、皮膚および粘膜(口腔粘膜、口内粘膜、鼻腔粘膜、直腸粘膜および膣粘膜を含む)が含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「経皮的薬物送達システム」は、皮膚(または上記で記されるいずれかの他の表面)に適用されたとき、エストロゲンを放出する組成物を含むシステム(例えば、デバイス)を示す。経皮的薬物送達システムは、裏地層、薬物含有層および剥離ライナー層を含むことができる。いくつかの実施形態において、経皮的薬物送達システムは、実質的に非水性の固体形態であり、経皮的薬物送達システムが接触する表面に順応することができ、かつ、そのような接触を維持することができ、その結果、局所的適用を、有害な生理学的応答を伴うことなく、また、対象への局所適用の期間中における水の接触によって認められるほど分解されることなく容易にする。多くのそのようなシステムが当該技術分野では知られており、また、市販されている(例えば、経皮的薬物送達パッチ)。下記で記載されるように、1つの実施形態において、経皮的薬物送達システムは、感圧性接着剤または生体接着剤を含む薬物含有ポリマーマトリックスを含み、使用者(例えば、対象)の皮膚への直接の適用のために採用される。他の実施形態において、ポリマーマトリックスは非接着性であり、使用者の皮膚に対する適用および接着性のための別個の接着手段(例えば、別個の接着剤層)を備えることができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「ポリマーマトリックス」は、1つ以上の薬物を含有するポリマー組成物を示す。いくつかの実施形態において、マトリックスは感圧性接着剤ポリマーまたは生体接着剤ポリマーを含む。他の実施形態において、マトリックスは感圧性接着剤または生体接着剤を含まない。本明細書中で使用される場合、ポリマーは、ポリマーがそれ自体で接着剤の性質を有すならば、あるいは、ポリマーが、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加物の添加によって接着剤として機能するならば、「接着剤」である。従って、いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、感圧性接着剤ポリマーまたは生体接着剤ポリマーをそれに溶解または分散されたエストロゲンとともに含む。ポリマーマトリックスはまた、本明細書中に記載されるいずれかの粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加物の1つ以上を含むことができる。米国特許第6,024,976号は、本明細書中に記載される経皮システムに従って有用であるポリマーブレンドを記載する。米国特許第6,024,976号の全内容が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「感圧性接着剤」は、非常にわずかな圧力を加えることによりほとんどの基体に対して瞬間的に接着し、かつ、永久的に粘着性のままである粘弾性物を示す。ポリマーは、ポリマーがそれ自体で感圧性接着剤の性質を有すならば、あるいは、ポリマーが、粘着付与剤、可塑剤または他の添加物との混合によって感圧性接着剤として機能するならば、本明細書中で使用されるような用語の意味の範囲内において感圧性接着剤である。
【0032】
感圧性接着剤の用語にはまた、それぞれの得られる混合物が感圧性接着剤である、異なるポリマーの混合物、および、異なる分子量のポリマー、例えばポリイソブチレン(PIB)の混合物が含まれる。最後の場合において、混合物中のより低分子量のポリマーは、「粘着付与剤」であるとは見なされない(前記用語は、粘着付与剤が加えられるポリマーとは分子量以外で異なる添加物のために留保される)。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは室温で感圧性接着剤であり、経皮的薬物送達の技術分野において使用される接着剤のための他の望ましい特徴を有する。そのような特徴には、皮膚に対する良好な接着性、皮膚に対する実質的な外傷を伴うことなく剥がすことができるか、または、他の方法で取り除くことができること、粘着力を時間の経過とともに保持することなどが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、ガラス転移温度(Tg)が、示差走査熱量計を使用して測定されるとき、約−70℃〜0℃の間である。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「ゴム系感圧性接着剤」は、感圧性接着剤の性質を有し、かつ、少なくとも1つの天然エラストマーポリマーまたは合成エラストマーポリマーを含有する粘弾性物を示す。
【0035】
いくつかの実施形態において、経皮的薬物送達システムは1つ以上のさらなる層を含み、例えば、1つ以上のさらなるポリマーマトリックス層、あるいは、該経皮的薬物送達システムを使用者の皮膚に接着させる1つ以上の接着剤層を含む。他の実施形態において、経皮的薬物送達システムはモノリシックであり、このことは、経皮的薬物送達システムが、感圧性接着剤または生体接着剤をそれに溶解または分散される薬物とともに含むただ1つのポリマーマトリックス層を含み、速度制御膜を含まないことを意味する。
【0036】
経皮的薬物送達システムは、薬物不透過性の裏地層またはフィルムを含むことができる。いくつかの実施形態において、裏地層がポリマーマトリックス層の1つの面に隣接している。裏地層が存在するとき、裏地層は、ポリマーマトリックス層(および存在するいずれかの他の層)を環境から保護し、かつ、使用期間中における薬物の喪失および/または他の成分の環境への放出を妨げる。裏地層としての使用のために適切である様々な物質が当該技術分野では広く知られており、これらは、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニルおよびポリウレタンなどのフィルム、金属箔、不織布、布地、ならびに、市販されている積層体を含むことができる。典型的な裏地材は厚さが2マイクロメートル〜1000マイクロメートルの範囲にある。
【0037】
経皮的薬物送達システムは剥離ライナーを含むことができ、この場合、剥離ライナーは典型的には、裏地層と比較した場合、システムの反対側の面に隣接して位置する。剥離ライナーが存在するとき、剥離ライナーは、ポリマーマトリックス層および/または接着剤層を局所適用前に露出させるために使用前にシステムから除かれる。剥離ライナーとしての使用のために適切である様々な物質が当該技術分野では広く知られており、これらには、Bio−Release(登録商標)ライナーおよびSyl−off(登録商標)7610と呼ばれる、Dow Corning Corporationの市販されている製品、ならびに、3Mの1022 Scotch Pakが含まれる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「モノリシック(型の)」経皮的薬物送達システムは裏地層および/または剥離ライナーを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、経皮的薬物送達システムは、アクリルポリマー、シリコーンポリマーおよび/または可溶性PVPの1つ以上を含む感圧性の接着性ブレンドを含む薬物含有ポリマーマトリックス層を含み、例えば、アクリルポリマーおよびシリコーンポリマー;アクリルポリマーおよび可溶性PVP;シリコーンポリマーおよび可溶性PVP;または、アクリルポリマー、シリコーンポリマーおよび可溶性PVPを含む感圧性の接着性ブレンドを含む薬物含有ポリマーマトリックス層を含む。
【0040】
(アクリルポリマー)
用語「アクリルポリマー」は、本明細書では当該技術分野でのように、「ポリアクリラート」、「ポリアクリルポリマー」および「アクリル接着剤」と交換可能に使用される。アクリル系ポリマーは、様々なアクリル酸またはアクリル酸エステルのホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーなどのいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーは接着剤ポリマーである。他の実施形態において、アクリル系ポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加物の添加によって接着剤として機能する。用語「アクリルポリマー」は、本明細書中に記載されるようないずれか1つ以上のアクリルポリマーの組合せを含むことができ、例えば、1つ以上のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーおよび/またはマルチポリマーの組合せを含むことができる。
【0041】
アクリルポリマーはホモポリマーを含むことができ、および/または、コポリマー、ターポリマーおよび/またはマルチポリマーを含むことができる。例えば、アクリルポリマーは、様々なアクリル酸のホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーなどのいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、アクリルポリマーは、ポリマーマトリックスのポリマー含有量の約2質量%〜約95質量%(約3%〜約90%、および、約5%〜約85%を含む;例えば、2%〜95%、3%〜90%、および、5%〜85%)を構成する。いくつかの実施形態において、アクリルポリマーの量およびタイプは、使用されるエストロゲンのタイプおよび量に依存する。
【0042】
本発明を実施することにおいて有用であるアクリルポリマーには、アクリル酸系化合物の1つ以上のモノマーと、他の共重合可能なモノマーとのポリマーが含まれる。そのようなアクリルポリマーにまた、アルキルアクリラートおよび/またはアルキルメタクリラート、ならびに/あるいは、共重合可能な二次的モノマー、または、官能基を有する共重合可能なモノマーのコポリマーが含まれる。それらの官能基に基づくアクリル系ポリマーの組合せもまた意図される。官能基を有するアクリル系ポリマーには、モノ官能性のモノマー単位に加えて、修飾されていない官能基を有するさらなるモノマー単位を含有するコポリマーおよびターポリマーが含まれる。このようなモノマーはモノ官能性または多官能性であり得る。加えられるそれぞれのタイプのモノマーの量を変えることによって、得られるアクリルポリマーの粘着性を、当該技術分野では知られているように変化させることができる。いくつかの実施形態において、アクリルポリマーは、少なくとも50質量%のアクリラートモノマーまたはアルキルアクリラートモノマーと、0%〜20%の、アクリラートと共重合可能な官能性モノマーと、0%〜40%の他のモノマーとから構成される。
【0043】
使用することができるアクリラートモノマーには、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびに、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸グリシジル、および、対応するメタクリル酸エステルのいずれか1つ以上が含まれる。
【0044】
非官能性のアクリル系ポリマーには、修飾されていない官能基を有さないか、または、修飾されていない官能基を実質的に有さないいずれか1つ以上のアクリル系ポリマーが含まれ得る。
【0045】
使用することができる、上記のアルキルアクリラートまたはアルキルメタクリラートと共重合可能な官能性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸tert−ブチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチルおよびメタクリル酸メトキシエチルのいずれか1つ以上が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「官能性モノマーまたは官能基」は、アクリル系ポリマーを直接に修飾するか、または、さらなる反応のための部位を提供する反応性化学基を有する典型的にはアクリル系ポリマーにおけるモノマー単位である。官能基の例には、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、スルホキシル基およびアミノ基が含まれる。官能基を有するアクリル系ポリマーは、上記で記載される非官能性のモノマー単位に加えて、修飾されていない官能基を有するさらなるモノマー単位を含有する。このようなモノマーはモノ官能性または多官能性であり得る。典型的な官能基には、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基などが含まれる。典型的なカルボキシル官能性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびクロトン酸が含まれる。典型的なヒドロキシ官能性モノマーには、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシアミル、メタクリル酸ヒドロキシアミル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシルが含まれる。上記で記されるように、いくつかの実施形態において、いずれか1つ以上のアクリルポリマーはそのような官能基を含まない。
【0047】
本発明の実施において適切であるアクリル接着剤のさらなる詳細および例が、Satas、「アクリル接着剤」、Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology、第2版、396頁〜456頁(D.Satas編)、Van Nostrand Reinhold、New York(1989);「アクリル酸エステルポリマーおよびメタクリル酸エステルポリマー」、Polymer Science and Engineering、第1巻、第2版、234頁〜268頁、John Wiley&Sons(1984);米国特許第4、390、520号;および米国特許第4、994、267号に記載される(これらのすべてがそれらの全体において明白に参照により組み込まれる)。
【0048】
適切なアクリルポリマーにはまた、市販されている感圧性接着剤が含まれ、例えば、DURO−TAK(登録商標)の商標で、National Starch and Chemical Corporation(Bridgewater、N.J.)によって販売されるアクリル系接着剤(例えば、DURO−TAK(登録商標)87−2287、同87−4098、同87−2852、同87−2196、同87−2296、同87−2194、同87−2516、同87−2070、同87−2353、同87−2154、同87−2510、同87−9085、同87−9088および同73−9301)のいずれか1つ以上が含まれる。他の適切なアクリル接着剤には、EUDRAGIT(登録商標)の商標で、Roehm Pharma GmbH(Dermstadt、ドイツ)によって販売されるアクリル接着剤、Cytec Surface Specialties(St.Louis、Mo.)によって、GELVA(登録商標) Multipolymer Solutionの商標で販売されるアクリル接着剤(例えば、GELVA(登録商標)2480、同788、同737、同263、同1430、同1753、同1151、同2450、同2495、同3067、同3071、同3087および同3235)が含まれる。例えば、反応性の官能性OH基をポリマー鎖に有するヒドロキシ官能性接着剤を使用することができる。このタイプの接着剤の限定されない市販例には、GELVA(登録商標)737、同788および同1151と、DURO−TAK(登録商標)87−2287、同87−4287、同87−2510および同87−2516との両方が含まれる。上記で記されるように、いずれか1つ以上のアクリルポリマーを使用することができる。
【0049】
(シリコンポリマー)
「シリコーン系」ポリマーの用語は、本明細書中で使用されるような、また、当該技術分野では知られているようなシロキサン、ポリシロキサンおよびシリコーンの各用語と交換可能に使用される。適切なシリコーン系ポリマーもまた、感圧性接着剤であり得る。従って、いくつかの実施形態において、シリコーン系ポリマーは接着剤ポリマーである。他の実施形態において、シリコーン系ポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加物の添加によって接着剤として機能する。本明細書中に記載される任意のシリコンポリマーも、または、2つ以上の任意の組合せも使用することができる。
【0050】
適切なポリシロキサンには、(i)ポリマーまたはゴム、および、(ii)粘着性付与樹脂の2つの主要な成分に基づくシリコーン感圧性接着剤が含まれる。ポリシロキサン接着剤は、ゴムを、典型的には高分子量のポリジオルガノシロキサンを、三次元のケイ酸塩構造を生じさせるために、適切な有機揮発性溶媒、例えば酢酸エチルまたはヘプタンにおける縮合反応により樹脂で架橋することによって調製することができる。樹脂対ポリマーの比率を、ポリシロキサン接着剤の物理的特性を改変するために調節することができる。Sobieski他、「シリコーン感圧性接着剤」、Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology、第2版、508頁〜517頁(D.Satas編)、Van Nostrand Reinhold、New York(1989)。
【0051】
例示的なシリコーン系ポリマーが、感圧性接着剤を含めて、接着剤である(例えば、局所適用の部位に粘着することができる)。低下したシラノール濃度を有するシリコーン系ポリマーの例示的な例には、シリコーン系接着剤(およびキャップ処理された(capped)ポリシロキサン接着剤)が含まれ、例えば、米国再発行特許第35,474号および米国特許第6,337,086号(これらはそれらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる)に記載され、かつ、Dow Corning Corporation(Dow Corning Corporation、Medical Products、Midland、Michigan)から、BIO−PSA(登録商標)7−4100、同7−4200および同7−4300の製品シリーズとして市販されているシリコン系接着剤、ならびに、適合し得る有機揮発性溶媒(例えば、酢酸エチルまたはヘプタンなど)とともに製造され、それらのBIO−PSA(登録商標)7−4400シリーズ、同7−4500シリーズおよび同7−4600シリーズのもとで市販されている非感作性の感圧性接着剤などが含まれる。
【0052】
本明細書中に記載されるポリマーマトリックスおよび組成物および方法において有用であるシリコーン感圧性接着剤のさらなる詳細および例が下記の米国特許において言及される:米国特許第4,591,622号、同第4,584,355号、同第4,585,836号および同第4,655,767号(これらはすべてが特に、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる)。シリコーン流体もまた、本明細書中に記載されるポリマーマトリックスおよび方法における使用のために意図されることもまた理解しなければならない。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリシロキサンは、ポリマーマトリックスのポリマー含有量の約9%〜約97%(約8%〜約97%、および、約14%〜約94%を含む;例えば、9%〜97%、8%〜97%、および、14%〜94%)を構成する。
【0054】
(可溶性PVP)
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは可溶性PVPを含む。可溶性PVPは、接着剤タイプの経皮的薬物送達システムにおける薬物、例えばエストラジオールの結晶化を防止することにおいて非常に効果的であることが見出されている。可溶性PVPはまた、薬物の経皮透過速度を調節することができる。本明細書中に記載される任意の可溶性PVPも、または、2つ以上の任意の組合せも使用することができる。
【0055】
用語「PVP」または用語「ポリビニルピロリドン」は、N−ビニルピロリドンをモノマー単位として含有するポリマーを示し、典型的には、N−ビニルピロリドンをモノマー単位として含有するホモポリマーまたはコポリマーのどちらも示す。典型的なPVPポリマーが、ホモポリマーのPVP、および、コポリマーであるビニルアセタートビニルピロリドンである。様々なホモポリマーPVPが、Povidone、Polyvidone、Polyvidonum、Polyvidonum可溶型およびポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)を含めて様々な名称で製薬業界には知られている。コポリマーであるビニルアセタートビニルピロリドンが、Copolyvidon、CopolyvidoneおよびCoplyvidonumとして製薬業界には知られている。用語「可溶性」は、PVPに関して使用されるとき、ポリマーは水に可溶性であり、一般には実質的に架橋されておらず、約2,000,000未満の分子量を有することを意味する。概略的には、Buhler、KOLLIDON(登録商標):POLYVINYLPRYRROLIDONE FOR THE PHARMACEUTICAL INDUSTRY、BASF Aktiengesellschaft(1992)を参照のこと。
【0056】
使用される可溶性PVPの量およびタイプは、存在するエストロゲンの量およびタイプ、ならびに、接着剤のタイプに依存し得るが、日常的な実験により容易に決定することができる。典型的には、PVPはポリマーマトリックスの総質量に基づいて約1質量%〜約20質量%の量で存在し、好ましくは約5質量%〜約15質量%の量で存在する。しかしながら、PVPの量は、使用される具体的な薬物に依存して、また、ブレンドの所望される特性に依存して、20%を超えることができ、例えば、40%にまですることができる。可溶性PVPは、5,000〜100,000、および、7,000〜54,000を含めて、約2,000〜1,100,000の分子量を有することができる。いくつかの実施形態において、可溶性PVPは、17,000〜90,000、例えば、17,000〜60,000の分子量を有し、約17,000〜約90,000の分子量及び約17,000〜約60,000の分子量を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、可溶性PVPをゴム系の感圧性接着剤およびポリアクリラートポリマーとともに含み、例えば、アクリルポリマー、ポリシロキサンおよび可溶性PVPのブレンドを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、薬物送達の速度に影響を及ぼすために選ばれる。より具体的には、可溶性のポリビニルピロリドンを含む複数のポリマーを、この場合、これらのポリマーは薬物についての異なる溶解性パラメーターを有してもよく、また、互いに非混和性であってもよく、ポリマーマトリックスにおける薬物の溶解性を調節するために、従って、システムにおける薬物の最大濃度を制御するために、また、真皮を通過する薬物送達を調整するために選択することができる。
【0058】
それぞれのポリマー成分の量を、例えば、アクリル系ポリマーおよびシリコーン系ポリマーの量を、システムからの、皮膚を通過する薬物の送達速度に影響を及ぼすために、ポリマーマトリックスにおける薬物の飽和濃度を改変するように調節することができる。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーおよびシリコーン系ポリマーが、約2:98〜約96:4(約2:98〜約90:10、および、約2:98〜約86:14を含む;例えば、2:98〜96:4、2:98〜90:10、および、2:98〜86:14)の質量比で使用される。
【0059】
経皮的薬物送達システムにおけるエストロゲンの質量による濃度は、ポリマーマトリックスの総質量に基づいて、典型的には、約0.1%〜約50%(約0.1%〜約40%、および、約0.3%〜約30%を含む;例えば、0.1%〜50%、0.1%〜40%、および、0.3%〜30%)である。いくつかの実施形態において、エストロゲンはエストラジオールであり、ポリマーマトリックスの総質量に基づいて、約0.1%〜10%(約0.1%〜約5%を含む;例えば、0.1%〜10%、および、0.1%〜5%)の量で存在する。経皮的薬物送達システムへのエストロゲンの高負荷または低負荷が行われるかどうかにかかわらず、感圧性接着剤組成物を、剪断、粘着および剥離での許容され得る接着特性を維持するために配合することができる。
【0060】
(他の成分)
経皮的薬物送達システムは下記成分のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0061】
1つの実施形態において、ポリマーマトリックスは1つ以上の浸透促進剤を含む。「浸透促進剤」は、皮膚を通過する薬物の送達を促進させることが知られている薬剤である。このような薬剤はまた、促進剤、アジュバントおよび収着促進剤と呼ばれており、総称して本明細書中では「促進剤」として示される。このクラスの薬剤には、例えば、水分を保持する角質層の能力を変化させることによって、あるいは、皮膚を柔らかにすることによって、あるいは、皮膚の透過性を改善することによって、あるいは、浸透補助剤または毛包開口剤として作用することによって、あるいは、境界層を含む皮膚の状態を変化させることによって、経皮吸収を改善するという機能を有する薬剤を含めて、多様な作用機構を有する薬剤が含まれる。
【0062】
例示的な浸透促進剤には、多価アルコール、例えば、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール;オイル、例えば、オリーブ油、スクアレンおよびラノリン;脂肪エーテル、例えば、セチルエーテルおよびオレイルエーテル;脂肪酸エステル、例えば、ミリスチン酸イソプロピル;水分を保持する角質の能力に影響を及ぼす尿素および尿素誘導体、例えば、アラントイン;角質の透過性に影響を及ぼす極性溶媒、例えば、ジメチイデシルホスホキシド(dimethyidecylphosphoxide)、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトニド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミド;角質を軟化するサリチル酸;浸透補助剤であるアミノ酸;毛包開口剤であるニコチン酸ベンジル;ならびに、皮膚の表面状態および投与された薬物を変化させるより高分子量の脂肪族界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸塩が含まれるが、これらに限定されない。他の薬剤には、オレイン酸およびリノール酸、アスコルビン酸、パンテノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェリル、オレイン酸プロピル、ならびに、パルミチン酸イソプロピルが含まれる。
【0063】
1つの実施形態において、浸透促進剤がオレイルアルコールである。別の実施形態において、浸透促進剤がグリコールであり、例えば、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはポリエチレングリコールである。他の実施形態において、浸透促進剤は、少なくとも2つの浸透促進剤の混合物を含む。例えば、浸透促進剤は、オレイルアルコールと、1つ以上の多価アルコール(例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール)とを含むことができる。例えば、浸透促進剤は、オレイルアルコールと、ジプロピレングリコールとを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、浸透促進剤が、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、ポリマーマトリックスの乾燥質量比で約30質量%に至るまで(27質量%〜33質量%に至るまでを含む;例えば、30質量%に至るまで)、または、約20%に至るまで(18質量%〜22質量%に至るまでを含む;例えば、20質量%に至るまで)、または、約10質量%に至るまで(9質量%〜11質量%に至るまでを含む;例えば、10質量%に至るまで)、または、約5質量%に至るまで(4.5質量%〜5.5質量%に至るまでを含む;例えば、5質量%に至るまで)の量で使用される。いくつかの実施形態において、浸透促進剤が約5%〜約15%(4.5%〜16.5%を含む;例えば、5%〜15%)の量で使用される。特定の実施形態において、浸透促進剤は、オレイルアルコールおよびジプロピレングリコールの混合物を含み、この場合、これらを合わせた量が約14%(12.6%〜15.4%を含む;例えば、ポリマーマトリックスの14質量%)に達する。ポリマーマトリックスはさらに、経皮的薬物送達システムにおける使用のために知られている様々な増粘剤、フィラーおよび他の添加物または成分を含むことができる。
【0065】
ポリマーマトリックスに組み込まれるエストロゲンの量は、具体的な薬物、所望される治療効果、および、本システムがその間にわたって治療をもたらさなければならない期間に依存して変化する。ほとんどの薬物について、薬物の皮膚通過が送達における律速段階である。本システムにおける薬物の最少量が、本システムがその間にわたって治療をもたらさなければならない期間において皮膚を通過する薬物の量に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、エストロゲンの経皮送達のためのシステムが、約1日、約3日、約7日またはそれ以上の期間にわたって使用される。従って、1つの実施形態において、本発明のシステムは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間またはそれ以上を含めて、1日から、3日まで、7日まで、または、それ以上までの期間にわたる治療効果的な量の薬物を送達するために十分な量の薬物(例えば、エストラジオール)を含む。いくつかの実施形態において、エストラジオールの治療効果的な量は約0.025mg/日〜0.1mg/日(0.0225mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.025mg/日〜0.1mg/日)であり、例えば、約0.025mg/日(0.0225mg/日〜0.0275mg/日を含む;例えば、0.025mg/日)、約0.0375mg/日(0.03375mg/日〜0.04125mg/日を含む;例えば、0.0375mg/日)、約0.05mg/日(0.045mg/日〜0.055mg/日を含む;例えば、0.05mg/日)、約0.075mg/日(0.0675mg/日〜0.0825mg/日を含む;例えば、0.075mg/日)、および、約0.1mg/日(0.09mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.1mg/日)などである。従って、いくつかの実施形態において、経皮的薬物送達システムは、1日あたり少なくとも約0.025mgから少なくとも約0.1mg(0.0225mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.025mg/日〜0.1mg/日)のエストラジオールの送達を達成するために効果的な量のエストラジオールを含む。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、1日あたり少なくとも約0.025mgから少なくとも約0.1mgのエストラジオール(0.0225mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.025mg/日〜0.1mg/日)の送達を達成するために効果的な量のエストラジオールを含み、例えば、約0.025mg/日(0.0225mg/日〜0.0275mg/日を含む;例えば、0.025mg/日)、約0.0375mg/日(0.03375mg/日〜0.04125mg/日を含む;例えば、0.0375mg/日)、約0.05mg/日(0.045mg/日〜0.055mg/日を含む;例えば、0.05mg/日)、約0.075mg/日(0.0675mg/日〜0.0825mg/日を含む;例えば、0.075mg/日)、および、約0.1mg/日(0.09mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.1mg/日)などのエストラジオールの送達を達成するために効果的な量のエストラジオールを含む。上記で記されるように、いくつかの実施形態において、これらの割合が、少なくとも約3日および少なくとも約7日を含めて、少なくとも1日の適用継続期間にわたって達成され、例えば、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日および少なくとも7日の適用継続期間にわたって達成される。従って、例えば、経皮的薬物送達システムは、少なくとも約0.39mg〜少なくとも約1.56mgのエストラジオール(0.351mg〜1.716mgを含む;例えば、0.39mg〜1.56mg)を含むことができ、例えば、約0.39mg(0.351mg〜0.429mgを含む;例えば、0.39mg)、約0.585mg(0.5265mg〜0.6435mgを含む;例えば、0.585mg)、約0.78mg(0.702mg〜0.858mgを含む;例えば、0.78mg)、約1.17mg(1.053mg〜1.287mgを含む;例えば、1.17mg)、および、約1.56mg(1.404mg〜1.716mgを含む;例えば、1.56mg)のエストラジオールを含むことができる。いくつかの実施形態において、経皮的薬物送達システムはVivelle−Dot(登録商標)製品よりも少ない量のエストラジオールを含み、しかし、同程度の薬物送達を達成する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明による経皮的薬物送達システムは、約1.44mg(1.296mg〜1.584mgを含む;例えば、1.44mg)または約1.2mg(1.08mg〜1.32mgを含む;例えば、1.2mg)のエストラジオールを6cm2のデバイスにおいて含有することができ、かつ、約1.56mgのエストラジオールを10cm2のデバイスにおいて含有するVivelle−Dot(登録商標)製品に匹敵する薬物送達を達成することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、約2質量%〜約25質量%を含めて、約1質量%〜約70質量%の量のアクリル系ポリマーを含むポリマーマトリックスを含み、例えば、2質量%〜25質量%のアクリル系ポリマーを含むポリマーマトリックスを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、約45質量%〜約70質量%を含めて、約5質量%〜約70質量%の量のシリコーンポリマーを含むポリマーマトリックスを含み、例えば、45質量%〜70質量%のシリコーンポリマーを含むポリマーマトリックスを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、約2質量%〜約25質量%を含めて、約1質量%〜約30質量%の量の可溶性PVPを含むポリマーマトリックスを含み、例えば、2質量%〜25質量%の可溶性PVPを含むポリマーマトリックスを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、約4質量%〜約8質量%を含めて、約1質量%〜約10質量%の量のオレイルアルコールを含むポリマーマトリックスを含み、例えば、4質量%〜8質量%のオレイルアルコールを含むポリマーマトリックスを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づいて、約5質量%〜約10質量%を含めて、約1質量%〜約10質量%の量のジプロピレングリコールを含むポリマーマトリックスを含み、例えば、5質量%〜10質量%のジプロピレングリコールを含むポリマーマトリックスを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの総乾燥質量に基づいて、約2質量%〜25質量%のアクリル接着剤、約45質量%〜70質量%のシリコーン接着剤、約2質量%〜25質量%の可溶性PVP、約5質量%〜15質量%の浸透促進剤および約0.1質量%〜10質量%のエストラジオールを含む。特定の実施形態において、ポリマーマトリックスは、約20質量%(18質量%〜22質量%を含む;例えば、20質量%)のアクリル接着剤、約56.9質量%(51.21質量%〜62.59質量%を含む;例えば、56.9質量%)のシリコーン接着剤、約7.5質量%(6.75質量%〜8.25質量%を含む;例えば、7.5質量%)の可溶性PVP、約6.0質量%(5.4質量%〜6.6質量%を含む;例えば、6.0質量%)のオレイルアルコール、約8.0質量%(7.2質量%〜8.8質量%を含む;例えば、8.0質量%)のジプロピレングリコールおよび約1.6質量%(1.44質量%〜1.76質量%を含む;例えば、1.6質量%)のエストラジオールを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤が、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤の質量に基づいて、約1:2から、約1.7未満に至るまでの比率で、例えば、約1:6に至るまでの比率で存在する。例えば、いくつかの実施形態において、アクリル接着およびシリコーン接着剤が、アクリル接着およびシリコーン接着剤の質量に基づいて、約1:2、1:3、1:4、1:5、または、1:6の比率で存在する。特定の実施形態において、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤が、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤の質量に基づいて1:2.8の比率で存在する。
【0073】
上記で記されるように、ポリマーマトリックスが感圧性接着剤または生体接着剤を含む実施形態において、ポリマーマトリックスは、システムの接着剤部分(例えば、リザーバーデバイス)として役立ち得るか、あるいは、多層システムの1つ以上の層として役立ち得る。代替において、感圧性接着剤または生体接着剤をそれに溶解または分散された薬物とともに含むポリマーマトリックスは、モノリシック型デバイスを構成することができる。ポリマーマトリックスが接着剤を含まず、しかし、代わりに、例えばポリマーの薬物リザーバーを含む実施形態では、ポリマーマトリックスは、当業者には広く知られているように、1つ以上の接着剤層との組合せで、あるいは、周囲の接着剤部分との組合せで使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、ポリマーマトリックス層から本質的になる。「ポリマーマトリックス層から本質的になる」によって、本発明のシステムが、薬物送達に影響を及ぼす何らかの他の層、例えばさらなる速度制御ポリマー層、速度制御膜または薬物リザーバー層を含有しないことを意味する。しかしながら、ポリマーマトリックス層から本質的になるシステムは裏地層および/または剥離ライナーを含み得ることが理解される。
【0075】
上記で議論されるように、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、他の知られているエストロゲンデバイス、例えばNoven Pharmaceuticals Inc.によって製造されるVivelle−Dot(登録商標)よりも大きい流量を有しており、従って、有効表面積の単位面積あたりの増大した薬物送達を示す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品によって示される0.01mg/cm2/日よりも大きい流量を示し、例えば、Vivelle−Dot(登録商標)製品の流量の約1.25倍(1.125倍〜1.375倍を含む;例えば、1.25倍)、約1.33倍(1.197倍〜1.463倍を含む;例えば、1.33倍)、約1.5倍(1.35倍〜1.65倍を含む;例えば、1.5倍)、約1.67倍(1.503倍〜1.837倍を含む;例えば、1.67倍)、約1.75倍(1.575倍〜1.925倍を含む;例えば、1.75倍)、約2倍(1.8倍〜2.2倍を含む;例えば、2倍)、約3倍(2.7倍〜3.3倍を含む;例えば、3倍)、約4倍(3.6倍〜4.4倍を含む;例えば、4倍)または約5倍(4.5倍〜5.5倍を含む;例えば、5倍)である流量を示す。特定の実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品の流量の約1.67倍(1.503倍〜1.837倍を含む;例えば、1.67倍)である流量を示し、例えば、約0.0167mg/cm2/日(0.01503mg/cm2/日〜0.01837mg/cm2/日を含む;例えば、0.0167mg/cm2/日)である流量を示す。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、他の知られているエストロゲンデバイスよりも大きい塗布質量を有する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、有効表面積の単位面積あたりのエストラジオールの量がVivelle−Dot(登録商標)製品の0.156mg/cm2のエストラジオールを超えるような塗布質量を有しており、例えば、Vivelle−Dot(登録商標)製品の塗布質量の約1.25倍(1.125倍〜1.375倍を含む;例えば、1.25倍)またはそれ以上、約1.33倍(1.197倍〜1.463倍を含む;例えば、1.33倍)またはそれ以上、約1.5倍(1.35倍〜1.65倍を含む;例えば、1.5倍)またはそれ以上、約1.67倍(1.503倍〜1.837倍を含む;例えば、1.67倍)またはそれ以上、約1.75倍(1.575倍〜1.925倍を含む;例えば、1.75倍)またはそれ以上、約2倍(1.8倍〜2.2倍を含む;例えば、2倍)またはそれ以上、あるいは、約3倍(2.7倍〜3.3倍を含む;例えば、3倍)またはそれ以上である塗布質量を有する。特定の実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品の塗布質量の約1.25倍である塗布質量を有しており、例えば、約12.5mg/cm2(11.25mg/cm2〜13.75mg/cm2を含む;例えば、12.5mg/cm2)の塗布質量を有する。他の特定の実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品の塗布質量の約1.5倍である塗布質量を有しており、例えば、約15mg/cm2(13.5mg/cm2〜16.5mg/cm2を含む;例えば、15mg/cm2)の塗布質量を有する。
【0077】
本発明のシステムは、経皮適用のために適切である任意の形状または寸法であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のシステムはVivelle−Dot(登録商標)製品よりも小さく、しかし、同程度の1日投薬量を達成する。例えば、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品の有効表面積の0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.75倍、0.66倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.33倍、0.3倍、0.25倍、0.2倍または0.1倍の有効表面積を有することができる。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、Vivelle−Dot(登録商標)製品の寸法の約60%(54%〜66%を含む;例えば、60%)である有効表面積、例えば、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2または10cm2の約60%(54%〜66%を含む;例えば、60%)などである有効表面積を有しており、かつ、対応するVivelle−Dot(登録商標)製品のエストラジオールの1日投薬量に匹敵するエストラジオールの1日投薬量を送達する。1つの実施形態において、本発明のシステムは、約6cm2の有効表面積(5.4cm2〜6.6cm2を含む;例えば、6cm2)を有しており、かつ、10cm2のVivelle−Dot(登録商標)製品のエストラジオールの1日投薬量に匹敵するエストラジオールの1日投薬量を達成し、例えば、約0.1mg/日(0.09mg/日〜1.1mg/日を含む;例えば、1mg/日)を達成する。
【0078】
本明細書中に記載されるポリマーマトリックスは、当該技術分野において知られている方法によって調製することができる。ポリマーマトリックスは、当該技術分野において知られている方法によって様々なシステムにすることができる。例えば、ポリマーマトリックス物質を、当該技術分野において知られている方法によって裏地層および剥離ライナーに適用することができ、使用のために適切な寸法および形状にすることができる。
【0079】
例えば、ポリマーマトリックスが形成された後、ポリマーマトリックスを、当業者には知られているいずれかの様式で支持体層、例えば隔離体ライナー層または裏地層と接触させることができる。そのような技術には、カレンダー被覆、ホットメルト塗布、溶液塗布などが含まれる。
【0080】
例えば、ポリマーマトリックスを、ポリマーマトリックスの成分をブレンドし、このマトリックス物質を支持体層、例えば裏地層または剥離ライナーに適用し、そして、存在するならば、残留溶媒を除くことによって調製することができる。エストロゲンを任意の段階で加えることができる。1つの実施形態において、エストロゲンを含めて、すべてのポリマーマトリックス成分が一緒にブレンドされる。別の実施形態では、エストロゲン以外のポリマーマトリックス成分が一緒にブレンドされ、その後、エストロゲンがそれに溶解または分散される。工程の順序、成分の量、ならびに、撹拌または混合の量および時間が、熟練した専門家によって決定および最適化され得る。アクリルポリマー、ポリシロキサンおよび可溶性PVPを含む特定の実施形態の関連において例示される例示的な一般的方法は下記の通りである:
適量の可溶性PVP、溶媒、強化剤および有機溶媒(例えば、トルエン)が、容器において一緒にされ、完全に混合される。
次に、エストロゲンが混合物に加えられ、撹拌が、薬物が均一に混ざり合うまで行われる。
適量のポリシロキサンおよびアクリルポリマーが薬物混合物に加えられ、完全に混合される。
次に、配合物が、配合物が保護用の剥離ライナーに制御された指定の厚さで被覆される被覆操作に移される。その後、被覆された製造物が、すべての揮発性の加工用溶媒を追い出すためにオーブンに通される。その後、剥離ライナー上の乾燥した製造物が裏地材に取り付けられ、貯蔵のためにロールに巻かれる。適切な寸法および形成の「システム」がロール材から打ち抜かれ、その後、袋に入れられる。
【0081】
同様の方法を、本明細書中に記載されるような種々の成分を含むシステムを作製するために採用することができる。本明細書中に記載されるシステムを作製するために適切である他の製造方法が当該技術分野において知られている。
【0082】
いくつかの実施形態において、エストロゲン、例えばエストラジオールの経皮的薬物送達を、本明細書中に記載されるようなシステムをそれを必要とする対象の皮膚または粘膜に適用することによって行う方法が提供される。いくつかの実施形態において、本発明のシステムはエストラジオールを含み、該システムは少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日または少なくとも約7日の期間にわたって適用され、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間または7日間にわたって適用される。いくつかの実施形態において、本方法は、対象におけるエストロゲンの治療的レベルを適用期間の期間中において達成するために効果的である。上記で記されるように、典型的な投薬量は、1日あたり少なくとも約0.025mgのエストラジオールから、1日あたり少なくとも約0.1mgのエストラジオールにまで及び、例えば、1日あたり約0.025mg〜約0.1mgのエストラジオール(0.0225mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.025mg/日〜0.1mg/日)であり、例えば、約0.025mg/日(0.0225mg/日〜0.0275mg/日を含む;例えば、0.025mg/日)、約0.0375mg/日(0.03375mg/日〜0.04125mg/日を含む;例えば、0.0375mg/日)、約0.05mg/日(0.045mg/日〜0.055mg/日を含む;例えば、0.05mg/日)、約0.075mg/日(0.0675mg/日〜0.0825mg/日を含む;例えば、0.075mg/日)、および、約0.1mg/日(0.09mg/日〜0.11mg/日を含む;例えば、0.1mg/日)である。
【0083】
本明細書中に記載される実施形態は、限定的であることが意図されない。従って、例えば、具体的に記載される実施形態の様々な態様、特徴または成分はどれも、同様に具体的に記載される1つ以上の他のいずれかの態様、特徴または成分と組み合わせることができる。これらの組合せおよび並び替えのすべてが本発明の一部として意図される。
【実施例】
【0084】
下記の具体的な実施例が、本明細書中に記載される経皮的薬物送達システムおよびポリマーマトリックスを例示するものとして含まれる。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するために決して意図されない。本発明の他の態様が、本発明が関連する技術分野の当業者には明らかである。
【実施例1】
【0085】
下記の組成を有するポリマーマトリックスが調製される:
アクリル接着剤 20%
シリコーン接着剤 56.9%
Povidone(PVP) 7.5%
オレイルアルコール 6.0%
ジプロピレングリコール(USP) 8.0%
エストラジオール 1.6%
(すべての%が、全ポリマーマトリックスの乾燥質量に基づく質量%である)
【0086】
このポリマーマトリックスが、12.5mg/cm2(●)または15mg/cm2(▲)の塗布質量で剥離ライナーに適用される。
【0087】
ヒト死体皮膚透過研究を、角質層を通過する有効透過を定量的に求めるために行った。角質層を、熱分離技術によって、分層の冷凍保存死体皮膚から得た。直径が0.79cm(5/16”)のサンプルを積層体から四連で切り取り、角質層の1.27cm(1/2”)切断片に載せた。その後、これらのサンプルを改変Franz拡散セルに置いた。受器を、脱イオン水における0.9%NaClおよび0.01%NaN3の7.5mLで満たした。セルを一定の32℃で維持し、およそ300rpmで磁石撹拌した。指定された時点で、受器相のサンプルを受器相の完全な取り換えにより採取した。これらのサンプルを、Waters HPLC機器を利用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量した。C−8(15cm×4.6mm)の、5μm粒子寸法のカラム(HYPERSIL、MetaChem Technologies,Inc.(Torrance、Calif.)によって作製)を50℃(カラム温度)で使用した。
【0088】
図1は、Vivelle−Dot(登録商標)(◆)と比較して、本発明による経皮送達システム(▲、●)からの0〜81時間における経時的なエストラジオール流量(μg/cm2/時)を示す。
【0089】
結果は、本発明によるシステムはVivelle−Dot(登録商標)製品よりも大きい流量を有しており、かつ、その著しくより小さい寸法にもかかわらず、治療的な1日投薬量が達成できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効表面積を規定する薬物含有層を含み、かつ、エストラジオールを含有するポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムであって、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含み、かつ、有効表面積に基づいて0.01mg/cm2/日を超えるエストラジオール流量を達成する、経皮的薬物送達システム。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが、アクリル接着剤、シリコーン接着剤および可溶性PVPを含むポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、該ポリマーマトリックスの総乾燥質量に基づいて、約2質量%〜25質量%のアクリル接着剤、約45質量%〜70質量%のシリコーン接着剤、約2質量%〜25質量%の可溶性PVP、約5質量%〜15質量%の浸透促進剤および約0.1質量%〜10質量%のエストラジオールを含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項4】
前記浸透促進剤がオレイルアルコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項5】
前記浸透促進剤がジプロピレングリコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項6】
前記浸透促進剤がオレイルアルコールおよびジプロピレングリコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項7】
前記アクリル接着剤およびシリコーン接着剤が、該アクリル接着剤およびシリコーン接着剤の総質量に基づいて、約1:2から約1:6までの比率で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日および少なくとも7日からなる群から選択される期間にわたる治療効果的な量のエストラジオールを送達するために効果的な量のエストラジオールを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日からなる群から選択される量のエストラジオールを送達するために効果的な量のエストラジオールを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックスが、約20質量%のアクリル接着剤、約56.9質量%のシリコーン接着剤、約7.5質量%の可溶性PVP、約6.0質量%のオレイルアルコール、約8.0質量%のジプロピレングリコールおよび約1.6質量%のエストラジオールを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項11】
前記ポリマーマトリックスが、約10mg/cm2を超える塗布質量を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックスが、約12.5mg/cm2および約15mg/cm2からなる群から選択される塗布質量を有する、請求項11に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項13】
前記システムが、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項14】
エストラジオールを含有するポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムであって、該システムが、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する、経皮的薬物送達システム。
【請求項15】
エストラジオールを投与するための方法であって、それを必要とする対象の皮膚または粘膜に、請求項1〜14のいずれか1項に記載される経皮的薬物送達システムを適用することを含む、方法。
【請求項16】
エストラジオールを投与するための方法であって、それを必要とする対象の皮膚または粘膜に、有効表面積を規定する薬物含有層を含み、かつ、エストラジオールを含有するポリマーマトリックスを含む経皮的薬物送達システムを適用することを含み、前記システムが、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含み、かつ、有効表面積に基づいて0.01mg/cm2/日を超えるエストラジオール流量を達成する、方法。
【請求項17】
前記システムが、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%であって、1日あたり、それぞれ、約0.025mg/日、0.0375mg/日、0.05mg/日、0.075mg/日および0.1mg/日の量のエストラジオールを送達するために効果的である有効表面積を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エストロゲンを投与するための経皮的薬物送達システムを作製する方法であって、エストロゲンと、アクリル接着剤、シリコーン接着剤および可溶性PVPを含むポリマーブレンドとを含むポリマーマトリックスを形成すること、および、前記ポリマーマトリックスを支持体層に適用し、その結果、前記システムが、0.156mg/cm2を超えるエストラジオールを含むようにすることを含む、方法。
【請求項19】
前記システムが、2.5cm2、3.75cm2、5.0cm2、7.5cm2および10.0cm2からなる群から選択される寸法の約60%である有効表面積を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーマトリックスが、約20質量%のアクリル接着剤、約56.9質量%のシリコーン接着剤、約7.5質量%の可溶性PVP、約6.0質量%のオレイルアルコール、約8.0質量%のジプロピレングリコールおよび約1.6質量%のエストラジオールを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマーマトリックスが、約10mg/cm2を超える塗布質量で前記支持体層に適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーマトリックス塗布質量が、約12.5mg/cm2および約15mg/cm2からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−527697(P2011−527697A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517610(P2011−517610)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/050069
【国際公開番号】WO2010/006143
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500134562)ノーヴェン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】