説明

エソメプラゾールナトリウムのナトリウム塩の調製方法

2-(2-ピリジルメチルスルフィニル)-ベンズイミダゾール誘導体化合物のナトリウム塩の調製方法。a)エソメプラゾールを(C-C)-ケトン又はその混合物、ナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールと、又はエソメプラゾールナトリウムを(C-C)-ケトン又はその混合物及び(C-C)アルコールと組合せ;b)濾過により、反応媒体から、形成されたエソメプラゾールナトリウムを回収する工程を含む、スルホン不純物を実質的に含有しない、エソメプラゾールナトリウムの調製方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年2月12日に出願された米国仮特許出願第10382032号と、2010年3月15日に出願された米国仮特許出願第61313874号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、溶媒とナトリウム源の特定の組合せを使用する、スルホン不純物(5-メトキシ-2-[(S)-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルホニル]-1H-ベンズイミダゾール)を実質的に含有しないエソメプラゾールナトリウムを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エソメプラゾールは、化合物5-メトキシ-2-[(S)-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルフィニル]-1H-ベンズイミダゾールの国際一般名(INN)である。エソメプラゾールのCAS番号は119141-88-7であり、そのナトリウム塩のCAS番号は161796-78-7である。エソメプラゾールナトリウムの化学構造は以下のもの:

を含む。
【0004】
エソメプラゾール及びそのアルカリ塩は、AstraZenecにより開発されたプロトンポンプインヒビターである。それらは胃酸分泌の効果的なインヒビターであり、よって、胃酸関連疾患及び炎症性胃腸疾患(例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎及び胃炎)の予防及び治療に有用である。
【0005】
エソメプラゾールを調製する種々の方法が、従来技術で記載されている。これらの方法の中でも、光学分割剤を使用してラセミオメプラゾールを分割させることを含む方法があり、商業的利用性に関しては、キラル試薬を使用してエソメプラゾールの前駆体を非対称的に酸化させる方法が好ましい。
【0006】
スルフィド中間体をスルホキシド化合物に転換させる酸化反応に伴う主な問題は、過剰酸化、すなわちスルホキシドからスルホンへの酸化である。反応規模の増加に関し、エナンチオ選択性酸化のプロセスにより、常に、可変量のスルホン不純物の形成に至る(例えば、国際公開第2003/089408号)。スルホン不純物の除去は、多くの場合、従来からの精製方法、例えば結晶化では困難であることがわかっており、よって、高品質で多量のエソメプラゾール及びその塩を得るためには、時間がかかり、コストが高いプロセスを実施しなければならない。
【0007】
国際公開第1994/27988号には、2つのオメプラゾールエナンチオマーの特定のNa、Mg2+、Li、K、Ca2+、及びN(R)4+塩が記載されている。実施例1において、エソメプラゾールナトリウムは、メチルエチルケトンとトルエンの混合物を使用し、水酸化ナトリウムとエソメプラゾールとを反応させ、エソメプラゾールナトリウムを沈殿させることにより調製される。エソメプラゾールナトリウムに関する主題は、欧州特許第1020460号として公開されている、対応する欧州特許出願第652872号の分割出願で請求されている。
【0008】
国際公開第1996/025235号の実施例11において、エソメプラゾールナトリウムは、メチルイソブチルケトン(MIK)/アセトニトリルの混合物にて、水酸化ナトリウムとエソメプラゾールとを反応させ、エソメプラゾールナトリウムを結晶化させることにより調製される。
【0009】
国際公開第2007/012650号の実施例41において、重水素化メトキシ基を有するエソメプラゾールナトリウムは、メチルイソブチルケトン/イソプロパノールの混合物にて、水酸化ナトリウムとエソメプラゾールとを反応させ、エソメプラゾールナトリウムを沈殿させることにより調製される。
【0010】
国際出願第2006/001753号の実施例1.1ないし1.3において、種々の固体状形態のエソメプラゾールナトリウムは、それぞれトルエン/メタノール、トルエン/エタノール及びトルエン/イソプロパノールの混合物にて、水酸化ナトリウムとエソメプラゾールとを反応させることにより調製される。
【0011】
国際公開第2008/149204号の実施例15には、水酸化ナトリウム水にエソメプラゾールを溶解させ、塩化メチレンで抽出し、溶媒を蒸留し、続いてエタノールを添加して蒸留し、酢酸エチルを添加して蒸留し、最終的に酢酸エチルから結晶化させることにより、エソメプラゾールナトリウムを調製することが記載されている。実施例16には、塩基としてナトリウムエトキシド、溶媒として酢酸エチルを使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製が記載されている。
【0012】
最後に、国際公開第2009/040825号の実施例1−IIIには、メタノールにおいて、水酸化ナトリウムとエソメプラゾールとを反応させることによる、エソメプラゾールナトリウムの調製が記載されている。
【0013】
上述の公報に記載された条件でのエソメプラゾールナトリウムの調製では、国際公開第2009/040825号に記載のプロセスを除き、スルホン不純物に対してエソメプラゾールナトリウムの精製度合いが低いことが示されている。しかしながら、この公報に記載のプロセスはメタノール溶媒に対して生じることが実証されている。この事実により、メタノール溶媒を脱溶媒和化合物に転換させるさらなる工程が必要であるという欠点が示された。さらに、メタノール溶媒和物を脱溶媒させた場合、結晶構造が失われ、得られたエソメプラゾールナトリウムが非晶質形態になってしまう。
【0014】
よって、反応媒体から、エソメプラゾールナトリウムを結晶化又は沈殿させることを含む、エソメプラゾールナトリウムを調製するためのいくつかの方法が当該技術分野で知られているが、結晶化/沈殿、有機化合物を精製するために使用される通常の技術で、スルホン不純物に関して十分な精製結果は得られていない。
【0015】
他の公報には、溶媒除去、エソメプラゾールナトリウムの単離のための残留物への種々の溶媒の添加、及び得られた懸濁液からの生成物の濾過による、エソメプラゾールナトリウムの調製、及び生成物の単離について記載されている。しかしながら、反応媒体を完全に蒸留することを含むこれらの方法は、溶媒の蒸発後、少量での操作は、多くの場合、攪拌が困難であると思われるために、工業的規模での製造には適していない。また、過剰加熱の問題、粗物質の分解の問題、及び残存する溶媒の除去が困難であることに関する問題にも係る。さらに、最終生成物を単離するために、さらなる工程を実施する必要がある。公報の中でも、この種の単離条件は記載されており、以下の通りである:
【0016】
国際公開第2003/089408号には、溶媒として、メチルイソブチルケトンにおいて、水酸化ナトリウム水溶液又はナトリウムメトキシド溶液30%w/vとエソメプラゾールとを反応させ、溶媒を完全に蒸留し、ついでスルホン不純物を含有する得られた残留物を、スルホン不純物を精製するために、ケトンとニトリルから選択される有機溶媒を含有する溶媒系で処理することによるエソメプラゾールナトリウムの調製が記載されている。実施例に従えば、この精製は、最初アセトニトリル、ついでアセトンに、エソメプラゾールナトリウムを懸濁させることにより達成される。
【0017】
国際公開第2004/052882号には、溶媒として、水中でエソメプラゾールナトリウムを調製し、ついで水を蒸留し、アセトニトリルで処理することが記載されている。
【0018】
国際公開第2004/002982号には、メタノールにおいてエソメプラゾールと水酸化ナトリウムとを反応させ、溶媒を完全に除去し、ついでジイソプロピルエーテルで得られた固形物を処理することが記載されている。
【0019】
国際公開第2007/013743号には、メチルイソブチルケトンとアセトニトリルの混合物で、エソメプラゾールナトリウムの残留物を処置することが記載されている。
【0020】
最後に、米国特許出願公開第20070259921号には、エソメプラゾールナトリウムのいくつかの結晶形態、及びそれらの調製方法が記載されており、それらのいくつかは、ケトン、アルコール及び他の溶媒、及びナトリウム塩基の使用を含む。全ての実施例には、さらなる溶媒の添加前に、反応溶媒を蒸留することを含むプロセスが記載されている。
【0021】
よって、当該技術分野で知られていることから、スルホン不純物を除去し、高収率で実施される、エソメプラゾールナトリウムの精製プロセスの開発は、この化合物の工業的製造にとって今だ大きな関心事であることが分かる。
【発明の概要】
【0022】
本発明者は、(C-C)-ケトン又はその混合物、ナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールを使用する、エソメプラゾールからのエソメプラゾールナトリウムの調製により、知られた反応及び沈殿条件により除去することが困難な不純物であるエソメプラゾール粗物質中に存在するスルホン不純物を除去することが可能になることを見いだした。この不純物は、2-(2-ピリジルメチルスルフィニル)-ベンズイミダゾール誘導体、特にエソメプラゾールを調製するための、当該技術分野で知られているほとんどのプロセスで実施されるスルフィド基の酸化反応において生成される過剰酸化の結果である。
【0023】
スルホン不純物なる用語は、以下の式

を有する化合物5-メトキシ-2-[(S)-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルホニル]-1H-ベンズイミダゾールに相当する。
【0024】
同様に、エソメプラゾールナトリウムは、少なくとも1の(C-C)-ケトン及び(C-C)-アルコールの混合物において結晶化により精製することがまたできる。
【0025】
精製に関するこれらの結果は、使用される特定の条件、特にケトンとアルコールの組合せにと、より達成されるもので、用いられる溶媒系にエソメプラゾールナトリウムが溶解してプロセスが進行する点によって達成される。
【0026】
種々の溶媒からの沈殿により、スルホン不純物からエソメプラゾールナトリウムを精製するためのいくつかの試みが当該技術分野でなされているが、いずれもスルホンレベルの大幅な低減に成功していないため、この特定の条件の選択は、当該技術分野に対する重要な貢献であると考えられる。
【0027】
よって、本発明の方法は、一般に付加的な精製の必要がなく、スルホン不純物を実質的に含有しないエソメプラゾールナトリウムの調製を実施するための、簡単で経済的な代替法を示す。
【0028】
よって、本発明は、次の工程:a)エソメプラゾールを(C-C)-ケトン又はその混合物、ナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールと組合せ;又はエソメプラゾールナトリウムを(C-C)-ケトン又はその混合物、及び(C-C)アルコールと組合せ;b)濾過により、反応媒体から、形成されたエソメプラゾールナトリウムを回収することを含む、0.5%w/w以下の5-メトキシ-2-[(S)-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルホニル]-1H-ベンズイミダゾールの含有量であることを意味する、スルホン不純物を実質的に含有しない、エソメプラゾールナトリウムの調製方法に関する。特に、本方法は、a)(C-C)-ケトン又はその混合物にエソメプラゾールが入った溶液とナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールとを組合せ;又はa)(C-C)-ケトン又はその混合物、及び(C-C)アルコールにエソメプラゾールナトリウムを溶解させ、溶液を形成させ;b)濾過により、(C-C)-ケトン又はその混合物及び(C-C)アルコールを含有する工程a)の反応媒体から、形成されたエソメプラゾールナトリウムを回収することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
「スルホン不純物を実質的に含有しない」なる用語は、エソメプラゾールナトリウム中のスルホン含有量が塩の0.5%w/wを超えない、つまり0.5%w/w以下であることをここでは示す。
【0030】
好ましくは、スルホン含有量は、塩の0.3%w/wの塩を超えない。より好ましくは、スルホン含有量は塩の0.2%w/wを超えない。さらに好ましくは、スルホン含有量は0.1%w/wを超えない。さらにより好ましくは、スルホン不純物は存在しない、又は分析方法、例えばHPLCにより検出されない。
【0031】
好ましくは、エソメプラゾールとナトリウムアルコキシドとのモル比は、1:1〜1:1.2で使用される。より好ましくは、1:1のモル比で使用される。
【0032】
ナトリウムアルコキシドは、固形物として又は(C-C)アルコール溶液として使用することができる。好ましい実施態様では、本発明の方法の工程a)では、エソメプラゾールは、(C-C)-ケトン又はその混合物、ナトリウムアルコキシド及び(C-C)アルコールと組合せられる。本方法の他の好ましい実施態様では、工程a)では、エソメプラゾールは、(C-C)-ケトン又はその混合物、(C-C)アルコールにナトリウムアルコキシドが入った溶液と組合せられる。好ましくは、(C-C)-ケトンはメチルイソブチルケトンである。
【0033】
本方法のより好ましい実施態様では、ナトリウムアルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウム tert-ブトキシド、及びナトリウム 1−ペントキシドからなる群から選択される。よって、ナトリウムアルコキシドなる用語は、(C-C)-アルコキシドを意味する。本方法の他のより好ましい実施態様では、ナトリウム(C-C)-アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びナトリウム tert-ブトキシドから選択される。本方法のさらなる他のより好ましい実施態様では、ナトリウム(C-C)-アルコキシドはナトリウムメトキシドである。
【0034】
(C-C)アルコールの例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソアミルアルコール、及びフルフリルアルコールが含まれる。好ましくは(C-C)アルコールが使用される。より好ましくは、(C-C)アルコールは、メタノール、エタノール、又はtert-ブタノールである。さらに好ましくは、(C-C)アルコールはメタノールである。
【0035】
適切な(C-C)-ケトンの例には、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、又はシクロヘキサノンが含まれる。好ましいケトンは、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、及びアセトンである。
【0036】
好ましくは、出発エソメプラゾールに関して、(C-C)-ケトン/(C-C)-アルコールの量は、3〜18ml/gを含む。
【0037】
好ましくは、(C-C)-ケトンの量は全溶媒の93−98%v/vを含み、(C-C)-アルコールの量は全溶媒の2%−7%v/vを含む。より好ましくは、(C-C)-ケトンの量は全溶媒の93−97%v/vを含み、(C-C)-アルコールの量は全溶媒の3%−7%v/vを含む。
【0038】
特定の実施態様では、本方法は、(C-C)-ケトン、好ましくはメチルイソブチルケトンにエソメプラゾールを溶解させ、ついで(C-C)-アルコールにナトリウムアルコキシドが入った溶液を添加し、エソメプラゾールナトリウムを形成を生じさせることを含む。また、固形状のナトリウムアルコキシドと(C-C)-アルコールを使用することもできる。反応は幅広い範囲の温度、一般的には10℃〜使用される溶媒の還流温度で実施することができる。好ましくは、本方法のこの特定の実施態様は、室温で実施される。エソメプラゾールナトリウムの懸濁液が得られ、濾過により反応媒体から単離される。
【0039】
特定の実施態様では、(C-C)-ケトンは、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、及びアセトンから選択され、(C-C)-アルコールはメタノールである。好ましくは、メチルイソブチルケトン/メタノール、メチルエチルケトン/メタノール、又はアセトン/メタノールの量は、4〜10ml/出発エソメプラゾールのgを含む。より好ましくは、前記量は6.5−7.5ml/gを含む。好ましくは、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、又はアセトンの量は、全溶媒の93−94%v/vであり、メタノールの量は全溶媒の6%−7%v/vである。
【0040】
本発明の方法の好ましい実施態様では、工程a)では、メチルイソブチルケトンとアセトンの混合物が使用される。本方法の他の好ましい実施態様では、工程a)では、メチルエチルケトンとアセトンの混合物が使用される。これらの好ましい実施態様では、スルホン不純物のより良好な精製を得ることができる。さらに、出発物質として使用されるエソメプラゾール粗物に存在する場合、R-エソメプラゾール不純物の高度精製が達成されることが見いだされた。
【0041】
アセトンは、ナトリウムアルコキシド及び(C-C)-アルコールの添加後、又は前に添加することができる。好ましい実施態様では、アセトンは、エソメプラゾールとメチルイソブチルケトン、ナトリウムアルコキシド、及び(C-C)-アルコールを組合せた後に添加される。他の好ましい実施態様では、アセトンは、エソメプラゾールナトリウムとメチルイソブチルケトン、及び(C-C)-アルコールを組合せた後に添加される。
【0042】
これらの実施態様では、メチルイソブチルケトンとアセトンの混合物、又はメチルエチルケトンとアセトンの混合物が使用され、好ましくは(C-C)-アルコールはメタノールである。また好ましくは、出発エソメプラゾールに関して、メチルイソブチルケトン/アセトン/メタノールの全量、又はメチルエチルケトン/アセトン/メタノールの全量は、7〜18ml/gを含む。より好ましくは、メチルイソブチルケトン/アセトン/メタノールの全量は10〜15.5ml/gを含み、さらに好ましくは10ml/gである。
【0043】
また好ましくは、メチルイソブチルケトン/アセトン/メタノールの混合物、又はメチルエチルケトン/アセトン/メタノールの混合物は、溶媒の全量に関し、20%〜60%v/vの量のアセトンを含有する。より好ましくは、混合物中のアセトンの量は、30%〜50%v/vを含む。さらに好ましくは、混合物中のアセトンの量は50%v/vである。好ましくは、メタノールの量は、溶媒の全量に関し、2%−7%v/vを含む。より好ましくは、メタノールの量は、全溶媒の3%−6%v/vを含む。
【0044】
反応混合物の濃度、温度、及びメチルイソブチルケトン/アセトン/メタノール又はメチルエチルケトン/アセトン/メタノールの容量比に応じて、エソメプラゾールナトリウム固形物は、塩基又はアセトンの添加時、又は塩基又はアセトンの添加が完了してすぐに形成される。
【0045】
反応は、広範囲の温度で実施することができる。好ましくは、室温で実施される。
【0046】
他の好ましい実施態様では、本発明の調製方法は、(C-C)-アルキルエーテル、例えばメチル tert-ブチルエーテル(MTBE)又はイソプロピルエーテル(iPrO)、(C-C)-アルカン、例えばヘプタン又はヘキサン、又は(C-C)-シクロアルカン、例えばシクロヘキサンからなる群から選択される抗溶媒(アンチソルベント)の添加をさらに含む。抗溶媒の添加により、精製を実施することなく、良好な収率が得られる。好ましくは、抗溶媒はMTBE又はiPrOである。
【0047】
(C-C)-ケトン/(C-C)-アルコール/抗溶媒は、任意の順序でエソメプラゾールと混合することができる。
【0048】
特定の実施態様では、(C-C)-ケトン/(C-C)-アルコール/抗溶媒の混合物は、メチルイソブチルケトン/アセトン/メタノール/抗溶媒である。好ましくは、この好ましい実施態様における溶媒の全量は、8〜21ml/出発エソメプラゾールのgを含む。より好ましくは、出発エソメプラゾールに関し、溶媒の全量は12〜17ml/gを含む。さらに好ましくは、溶媒の全量は12〜15ml/gを含む。
【0049】
より好ましくは、溶媒の全量に関するアセトンの量は、20%〜50%v/vを含む。さらに好ましくは、アセトンの量は25%〜45%v/vを含む。さらにより好ましくは、アセトンの量は40−45%v/vを含む。好ましくは、溶媒の全量に関する抗溶媒の量は、8%〜30%v/vを含む。より好ましくは、抗溶媒の量は10%〜25%v/vを含む。さらにより好ましくは、抗溶媒の量は10−15%v/vを含み、またさらに好ましくは、抗溶媒の量は12−14%v/vを含む。好ましくは、メタノールの量は、溶媒の全量に関し2%−7%v/vを含む。より好ましくは、メタノールの量は3%−6%v/vを含む。さらにより好ましくは、メタノールの量は3−4%v/vを含む。
【0050】
他の特定の実施態様では、(C-C)-ケトン/(C-C)-アルコール/抗溶媒の混合物は、アセトン/メタノール/抗溶媒である。他の特定の実施態様では、(C-C)-ケトン/(C-C)-アルコール/抗溶媒の混合物は、メチルイソブチルケトン/メタノール/抗溶媒である。好ましくは、抗溶媒はメチル tert-ブチルエーテルである。また好ましくは、溶媒の全量に関する抗溶媒の量は8%〜30%v/vを含む。より好ましくは、抗溶媒の量は10%〜25%v/vを含む。さらに好ましくは、抗溶媒の量は10−15%v/vを含む。好ましくは、メタノールの量は、溶媒の全量に関し、2−7%v/vを含む。より好ましくは、メタノールの量は溶媒の3−6%v/vを含む。さらに好ましくは、メタノールの量は全溶媒の6%である。
【0051】
一般的に、形成されるエソメプラゾールナトリウムは、濾過により反応媒体から取り除かれ、続いて、濾過された固形物が洗浄される。その後、単離されたエソメプラゾールナトリウムは、溶媒を除去するために乾燥される。
【0052】
高含有量のスルホンは、本発明の方法により、効果的に除去することができる。出発物質のスルホン含有量が2%以上である場合、付加的な精製工程が必要になる可能性があった。よって、高度に汚染されているエソメプラゾール粗物質の場合、この特許出願に記載されている溶媒条件において、本発明の方法により得られるエソメプラゾールナトリウムの付加的な再結晶化を、薬局方仕様に従い、スルホン含有量(0.2%以下のスルホン含有量)を含有する化合物を得るために実施することができる。
【0053】
よって、再結晶化は、エソメプラゾールナトリウムと、(C-C)-ケトン又はその混合物、及び(C-C)-アルコールを組合せることにより実施することができる。以下の特定の実施態様は、本発明の再結晶化の一般的方法を例証するものである。
【0054】
特定の実施態様では、再結晶化は、室温で、メチルイソブチルケトン/(C-C)-アルコールの混合物、又はメチルイソブチルケトン/(C-C)-アルコール/アセトンの混合物を用い、エソメプラゾールナトリウムを溶解させることにより実施され、ここでエソメプラゾールナトリウムは、溶媒の組合せ、及びそれらそれぞれの割合に応じて可溶化し、ついで、エソメプラゾールナトリウムを得るために、溶液は、好ましくは室温まで冷却される。多くの場合、エソメプラゾールナトリウムを形成させるために、冷却前に、溶媒の一部を除去する必要がある。一般的に、溶媒は懸濁液が得られるまで除去される。
【0055】
好ましくは、(C-C)-アルコールはメタノール又は1-プロパノールである。より好ましくは、(C-C)-アルコールはメタノールである。
【0056】
好ましい実施態様では、メチルイソブチルケトンとメタノールが溶媒として使用され、メチルイソブチルケトン/メタノールの最初の量は、出発エソメプラゾールナトリウムの10-20ml/gを含み、好ましくは13ml/gである。また好ましくは、メチルイソブチルケトン/メタノールの混合物は、全溶液の25%のメタノール量を含有する。
【0057】
他の好ましい実施態様では、メチルイソブチルケトン及び1-プロパノールが溶媒として使用され、メチルイソブチルケトン/1-プロパノールの最初の量は、出発エソメプラゾールナトリウムの10-20ml/gを含み、好ましくは14ml/gである。また好ましくは、メチルイソブチルケトン/1-プロパノールの混合物は、全溶液の29%の1-プロパノール量を含有する。
【0058】
また、本発明の溶媒組成における前述の再結晶化は、スルホン不純物、及び当該技術で公知の他の方法により得られたエソメプラゾールナトリウムのR-エソメプラゾール不純物を減少させるために使用することもできる。好ましくは、R-エソメプラゾール不純物の含有量は、塩の0.5%w/wを超えない、0.5%w/w以下であることを意味する。より好ましくは、R-エソメプラゾールの含有量は塩の0.2%w/wを超えない。さらに好ましくは、R-エソメプラゾールの含有量は0.1%w/wを超えない。よりさらに好ましくは、R-エソメプラゾール不純物は存在しない、又は分析方法、例えばHPLCにより検出されない。
【0059】
明細書及び特許請求の範囲において、「含有する」なる用語及びその用語の変形例は、他の技術的特徴、添加剤、成分又は工程を排除することを意図していない。本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、記載の検討において当業者には明らかになるであろうし、又は本発明の実施により学ぶことができる。以下の実施例及び図面は、例証により提供され、それらは本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、以下に記載する特定及び好ましい実施態様の全ての可能な組合せをカバーする。
【実施例】
【0060】
エソメプラゾールナトリウムの純度は、HPLCにより測定される。スルホン含有量の測定、及びマグネシウムエソメプラゾールにおけるR-エナンチオマー含有量の測定のための、米国薬局方(USP32)に記載のHPLC条件は、本発明の方法により得られたエソメプラゾールナトリウムにおけるR-エナンチオマー含有量及びスルホン含有量の測定に使用することができる。使用される特定の条件は、それぞれUSP32のクロマトグラフィー純度及びエナンチオマー純度の項に記載されている。
【0061】
本発明の目的について、使用されるケトンは、工業的規模で市販されているケトン中に見いだされる通常の量で、水分を含有していてもよい。
【0062】
実施例1:溶媒としてメチルイソブチルケトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メタノール(4.7mL、25.3mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、室温で、メチルイソブチルケトン(60mL)にエソメプラゾール(8.5g、24.6mmol;2.2%のスルホン)が入った溶液に滴下した。得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、メチルイソブチルケトン(2×10mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:6.3g(70%)。スルホン含有量:0.33%。
【0063】
実施例2:メチルイソブチルケトン/アセトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メタノール(4.7mL、25.3mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、メチルイソブチルケトン(60mL)にエソメプラゾール(8.5g、24.6mmol;2.2%のスルホン、4.7%のR-エナンチオマー)が入った溶液に滴下した。アセトン(60mL)を30分で添加した。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×10mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:5.5g(61%)。スルホン含有量:0.17%。R-エナンチオマー含有量:0.00%。
【0064】
実施例3:メチルイソブチルケトン/アセトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メタノール(6.0mL、32.3mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、メチルイソブチルケトン(75mL)にエソメプラゾール(10.7g、31.0mmol;1.1%のスルホン、2.5%のR-エナンチオマー)が入った溶液に滴下した。混合物を20分攪拌した。アセトン(75mL)を30分で添加した。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×12.5mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:6.8g(60%)。スルホン含有量:0.06%。R-エナンチオマー含有量:0.00%。
【0065】
実施例4:メチルイソブチルケトン/アセトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
アセトン(75mL)を、メチルイソブチルケトン(75mL)にエソメプラゾール(10.1g、29.2mmol;1.1%のスルホン、2.5%のR-エナンチオマー)が入った溶液に添加した。メタノール(5.7mL、30.7mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、15分で添加した。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×12mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:6.5g(61%)。スルホン含有量:0.06%。R-エナンチオマー含有量:0.00%。
【0066】
実施例5:メチルイソブチルケトン/アセトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルイソブチルケトン(60mL)にエソメプラゾール(9.5g、27.5mmol;2.3%のスルホン)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(5.2mL、28.0mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、15分で添加した。付加的な漏斗をMeOH(0.3mL)及びメチルイソブチルケトン(0.7mL)ですすいだ。混合物を15分攪拌し、アセトン(30mL)を20分以上かけてゆっくりと添加した。続いて、溶液を25℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×15mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:6.1g(60%)。スルホン含有量:0.20%。
【0067】
実施例6:メチルイソブチルケトン/アセトン/メチル-tert-ブチルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルイソブチルケトン(60mL)にエソメプラゾール(9.5g、27.5mmol;2.3%のスルホン、2.3%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(5.2mL、28.0mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを、15分で添加した。付加的な漏斗をMeOH(0.3mL)及びメチルイソブチルケトン(0.7mL)ですすいだ。混合物を15分攪拌し、アセトン(60mL)を15分以上かけてゆっくりと添加した。続いて、溶液を25℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。1時間攪拌した後、メチル-tert-ブチルエーテル(15mL)を滴下した。得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×15mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:6.3g(62%)。スルホン含有量:0.23%。
【0068】
実施例7:メチルイソブチルケトン/メタノール/アセトン/メチル-tert-ブチルエーテル、及びナトリウム tert-ブトキシドを使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルイソブチルケトン(30mL)とメタノール(2.1mL)に、エソメプラゾール(4.7g、13.6mmol;2.3%のスルホン、2.3%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。ナトリウム tert-ブトキシド(1.33g、13.8mmol)を5分で添加し、混合物を15分攪拌した。得られた溶液に、アセトン(30mL)を15分以上かけてゆっくりと添加したところ、固形物が結晶化し始めた。混合物を25℃まで加熱し、メチル tert-ブチルエーテル(7.5mL)を滴下した。スラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×5mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:3.2g(65%)。スルホン含有量:0.26%。R-エナンチオマー含有量:0.01%。
【0069】
実施例8:メチルイソブチルケトン/アセトン/ジイソプロピルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルイソブチルケトン(28mL)に、エソメプラゾール(4.4g、12.7mmol;2.3%のスルホン)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(2.4mL、12.9mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを滴下した。混合物を15分攪拌し、アセトン(28mL)を15分以上かけてゆっくりと添加した。続いて、溶液を25℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。ジイソプロピルエーテル(7.5mL)を滴下し、得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×5mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:3.2g(68%)。スルホン含有量:0.22%。
【0070】
実施例9:メチルイソブチルケトン/アセトン/メチル-tert-ブチルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルイソブチルケトン(120mL)に、エソメプラゾール(18.8g、54.4mmol;2.0%のスルホン)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(10.3mL、55.5mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを15分で添加した。混合物を15分攪拌し、アセトン(60mL)を10分以上かけてゆっくりと添加した。続いて、溶液を26℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。20分攪拌した後、メチル tert-ブチルエーテル(30mL)を滴下した。得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×20mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:14.4g(72%)。スルホン含有量:0.19%。
【0071】
実施例10:メチルイソブチルケトン/アセトン/メチル-tert-ブチルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
倍量のメチル tert-ブチルエーテル(45mL)を添加した以外は、実施例6に従い、エソメプラゾールナトリウムをエソメプラゾール粗物(14.3g、41.4mmol;2.3%のスルホン)から調製した。収率:10.6g(70%)。スルホン含有量:0.29%。
【0072】
実施例11:メチルイソブチルケトン/アセトン/メチル-tert-ブチルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
倍量のメチル tert-ブチルエーテル(45mL)を添加した以外は、実施例9に従い、エソメプラゾールナトリウムをエソメプラゾール粗物(14.3g、41.4mmol;2.3%のスルホン)から調製した。収率:11.9g(78%)。スルホン含有量:0.39%。
【0073】
実施例12:メチルイソブチルケトン/メタノールの混合物からの、エソメプラゾールナトリウムの再結晶化
エソメプラゾールナトリウム(3.0g、0.57%のスルホン)をメタノール(10ml、3.3ml/g)に55℃で溶解させ、メチルイソブチルケトン(30ml、10ml/g)を添加した。懸濁液が得られるまで、溶液を真空下で濃縮した。エソメプラゾールナトリウムが沈殿し、得られたスラリーを室温で3時間攪拌した。固形物を濾過により収集し、メチルイソブチルケトン(2×3mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:2.16g(72%)。スルホン含有量:0.20%。
【0074】
実施例13:メチルイソブチルケトン/1-プロパノールの混合物からの、エソメプラゾールナトリウムの再結晶化
エソメプラゾールナトリウム(3.0g、0.36%のスルホン)を1-プロパノール(12ml)に90-100℃で溶解させ、メチルイソブチルケトン(30ml)を添加した。懸濁液が得られるまで、溶液を真空下で濃縮したところ、残存容量が最初の容量の約60になった。エソメプラゾールナトリウムが沈殿し、得られたスラリーを一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、メチルイソブチルケトン(2×3mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:2.16g(72%)。スルホン含有量:0.09%。
【0075】
実施例14:アセトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
アセトン(120mL)に、エソメプラゾール(19.5g、56.5mmol;1.3%のスルホン、1.05%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(10.7mL、57.6mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを15分で添加した。続いて、溶液を28℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×20mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:10.6g(51%)。スルホン含有量:0.06%。R-エナンチオマー含有量:0.02%。
【0076】
実施例15:メチルエチルケトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルエチルケトン(120mL)に、エソメプラゾール(19.5g、56.5mmol;1.3%のスルホン、1.05%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(10.7mL、57.6mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを15分で添加した。続いて、溶液を27℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、メチルエチルケトン(2×20mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:12.4g(60%)。スルホン含有量:0.06%。R-エナンチオマー含有量:0.00%。
【0077】
実施例16:アセトン/メチルエチルケトン、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
メチルエチルケトン(60mL)及びアセトン(60mL)に、エソメプラゾール(19.5g、56.5mmol;1.3%のスルホン、1.05%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(10.7mL、57.6mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを15分で添加した。続いて、溶液を27℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×20mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:10.8g(52%)。スルホン含有量:0.05%。R-エナンチオマー含有量:0.00%。
【0078】
実施例17:アセトン/メチル tert-ブチルエーテル、及びメタノールにナトリウムメトキシドが入った溶液を使用する、エソメプラゾールナトリウムの調製
アセトン(33mL)に、エソメプラゾール(5.3g、15.3mmol;1.3%のスルホン、1.05%のR-エナンチオマー)が入った溶液を15℃まで冷却した。メタノール(2.9mL、15.6mmol)に30%のナトリウムメトキシドが入ったものを15分で添加した。続いて、溶液を28℃で攪拌した。固形物が結晶化し始めた。30分攪拌した後、メチル tert-ブチルエーテル(6mL)を滴下した。得られたスラリーを室温で一晩攪拌した。固形物を濾過により収集し、アセトン(2×6mL)ですすぎ、減圧下、50℃にて乾燥させたところ、エソメプラゾールナトリウムが生じた。収率:3.5g(62%)。スルホン含有量:0.28%。R-エナンチオマー含有量:0.17%。
【0079】
実施例18:本発明の方法により得られたエソメプラゾールナトリウムと、従来技術で公知の実施例の再現により得られたエソメプラゾールナトリウムの比較結果
比較例を実施するために使用されたエソメプラゾール粗物は、HPLCで2.3%のスルホン不純物を含有する。国際公開第2007012650号の実施例41を、重水素化エソメプラゾールの代わりに、エソメプラゾールを使用して再現した。
【0080】
表1は、反応媒体からの結晶化/沈殿工程を含む、従来技術に記載されている方法の再現による、スルホン不純物からのエソメプラゾールナトリウムの精製に関して得られた結果を示す。

【0081】
国際公開第2009040825号の再現において、メタノール溶媒和物が得られた。メタノール溶媒和物を脱溶媒させた場合、結晶構造が失われ、得られたエソメプラゾールナトリウムが非晶質形態になってしまうことが、本発明者により証明された
【0082】
スルホン不純物からのエソメプラゾールナトリウムの精製に関して、本発明の調製方法に従い得られた結果を、表2に含める。

【0083】
比較例19:国際公開第03/89408号の実施例3及び4の再現により得られたエソメプラゾールナトリウム
国際公開第03/89408号の実施例3を再現し、エソメプラゾールナトリウムを、アセトン(10容量)にエソメプラゾールナトリウムを懸濁させることによって精製した。ついで、分散液を還流にて1時間加熱し、エソメプラゾールナトリウムを回収するために35-38℃まで冷却した。
【0084】
また、国際公開第03/89408号の実施例4を再現し、エソメプラゾールナトリウムを、アセトン(10容量)及びNaCl水にエソメプラゾールナトリウムを懸濁させることによって精製した。アセトン:NaCl水の比率は、99.3:0.7v/vであり、水中におけるNaClの濃度は5%であった。ついで、分散液を還流にて1時間加熱し、エソメプラゾールナトリウムを回収するために35-38℃まで冷却した。
【0085】
再現の結果を表3に要約する。

【0086】
国際公開第03/89408号に記載されたものとは異なり、本発明者により実施された実施例3及び4では、スルホン不純物を除去できなかった。
【0087】
比較例20:エソメプラゾールナトリウムの精製における、本発明の溶媒系に存在するアルコールの影響
表4は、エソメプラゾールナトリウムの精製における、溶媒の特定の組合せの影響を示すために、アルコールが存在しないことを除き、本発明の溶媒系を使用して実施されたいくつかのアッセイの結果を示す。
【0088】
それぞれの実施例を、10gのエソメプラゾール、60mlのメチルイソブチルケトン、60mlのアセトン、及び15mlのメチル tert-ブチルエーテルを用い、25℃の温度で実施した。実施例20Aは0.75gのMeONa固形物(1.02当量)、実施例20Bは0.94gのEtONa固形物(1.02当量)、及び実施例20Cは1.375gのtBuONa固形物(1.02当量)を用いた。
【0089】

【0090】
本発明の溶媒系にアルコールが存在しないと、スルホン不純物はほとんど精製されなかった。よって、これらの結果には、エソメプラゾールナトリウムの精製における、本発明の溶媒の特定の組合せの影響が例証されている。特に、組合せは、少なくとも1の(C-C)-ケトン及び(C-C)-アルコールを含まなければならない。
【0091】
明細書中で引用した文献
−国際公開第2003/089408号
−国際公開第1994/27988号
−国際公開第1996/025235号
−国際公開第2007/012650号
−国際公開第2006/001753号
−国際公開第2008/149204号
−国際公開第2009/040825号
−国際公開第2004/052882号
−国際公開第2004/002982号
−国際公開第2007/013743号
−米国特許出願公開第20070259921号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5%w/w以下の5-メトキシ-2-[(S)-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルホニル]-1H-ベンズイミダゾール含有量のエソメプラゾールの調製方法において、
)(C-C)-ケトン又はその混合物にエソメプラゾールが入った溶液をナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールと組合せ;又はa)エソメプラゾールナトリウムを(C-C)-ケトン又はその混合物、及び(C-C)アルコールで溶解させて、溶液を形成し;
b)濾過により、(C-C)-ケトン又はその混合物及び(C-C)アルコールを含有する工程a)の反応媒体から、形成されたエソメプラゾールナトリウムを回収する、
工程を含む調製方法。
【請求項2】
工程a)において、(C-C)-アルコールの量が2−7%v/vである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程a)が、(C-C)-ケトン又はその混合物にエソメプラゾールが入った溶液をナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールと組合せることを含む、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
工程a)において、(C-C)アルコールにナトリウムアルコキシドが入った溶液が使用される、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
(C-C)-ケトンが、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、及びアセトンからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
ナトリウムアルコキシドが、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
ナトリウムアルコキシドがナトリウムメトキシドである、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
(C-C)アルコールが、メタノール、エタノール、及びtert-ブタノールからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
(C-C)アルコールがメタノールである、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
工程a)において、メチルイソブチルケトン/アセトンの混合物が使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項11】
溶媒の全量が7〜18ml/出発エソメプラゾールgであり、アセトンの量が溶媒の全量に対して20〜60%v/vである、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
アセトンが、エソメプラゾールをメチルイソブチルケトン、ナトリウムアルコキシド、及び(C-C)アルコールと組合せた後、又はエソメプラゾールナトリウムをメチルイソブチルケトン及び(C-C)アルコールと組合せた後に添加される、請求項10又は11に記載の調製方法。
【請求項13】
(C-C)-アルキルエーテル、(C-C)-アルカン、及び(C-C)-シクロアルカンからなる群から選択される抗溶媒の添加をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項14】
抗溶媒がメチルtert-ブチルエーテル又はイソプロピルエーテルである、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
メチルイソブチルケトン/アセトンの混合物が使用される、請求項13又は14に記載の調製方法。
【請求項16】
溶媒の全量に関する抗溶媒の量が10−25%v/vを含み、溶媒の全量に関するアセトンの量が20%〜50%v/vを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の調製方法。

【公表番号】特表2013−519655(P2013−519655A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552405(P2012−552405)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052026
【国際公開番号】WO2011/098553
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(507005056)エステヴェ キミカ, エス.エー. (9)
【Fターム(参考)】