説明

エタノールの製造方法

【課題】バイオマスのガス化により得られる、水素、一酸化炭素を含む原料気体を、高効率・高収量でエタノールに直接変換するエタノールの製造方法を提供すること。
【解決手段】バイオマスの熱化学的ガス化反応によって発生させた原料気体を、シリカ担体に担持した、ロジウム、マンガン、リチウム、およびスカンジウムからなる触媒、または、シリカ担体に担持した、ロジウム、マグネシウム、ジルコニウム、およびリチウムからなる触媒のいずれかのエタノール合成触媒の存在下で反応させるエタノールの製造方法であって、前記エタノール合成触媒によるエタノール合成工程後に反応生成物から未反応原料気体および副生気体を分離し、該分離気体を低級炭化水素改質処理によって一酸化炭素と水素に改質反応処理し、該改質処理後の気体を前記合成工程に循環すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの製造方法に関するものであり、バイオマス、すなわち再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものを熱化学的ガス化反応でよって生成する原料気体を利用したエタノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策の一環として、地球温暖化の大きな要因とされている二酸化炭素の大気中への排出量を減少するための対策が求められている。バイオマスは、光合成により二酸化炭素の固定により生育したものであるため二酸化炭素の排出量を増加させない有力な候補として様々な利用方法が提案されている。
なかでも、バイオマスを原料として、重要な化学品であって、自動車の燃料としても期待されているエタノールの効率的な製造方法の確立が求められている。
バイオマスを原料としたエタノールの製造方法として、発酵等の生物学的プロセスを使用してバイオマスから直接エタノールを合成する方法が提案されている。
しかしながら、木質系のバイオマスでは30質量%前後含有されるリグニンやセルロースをエタノールに変換するための前処理には、多大な工程が必要であり高コストであって技術的および経済性の問題があった。また、バイオマスの残渣物が多量に発生し、バイオマスの利用率が低いという問題もある。
【0003】
これに対して、バイオマスから熱化学的ガス化によって発生させた、水素、一酸化炭素、メタン、エタン等の低級炭化水素、二酸化炭素を主成分とする気体を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、以下において、バイオマスの熱化学的ガス化によって発生させた気体をバイオマスガスと称す。
しかしながら、バイオマスを熱化学的ガス化反応においては、例えば固定床或いは流動床等のガス化炉等を用いて一酸化炭素と水素の混合ガスを生成することが一般的であるが、発生条件によっては、水素の割合が少なくエタノールを直接合成する目的に使用した場合には、効率的なエタノール合成の原料とならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−532483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、バイオマスのガス化により得られる、水素、一酸化炭素を含む原料気体を、高効率・高収量でエタノールに直接変換するエタノールの製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バイオマスの熱化学的ガス化反応によって発生させた原料気体を、ロジウムと、少なくとも一種の遷移金属と、リチウム、マグネシウム、亜鉛から選ばれる少なくとも一種の元素と、を含む触媒の存在下で反応させるエタノールの製造方法である。
また、触媒が、シリカ担体に担持した、ロジウム、マンガン、リチウム、およびスカンジウムからなる触媒、シリカ担体に担持した、ロジウム、モリブデン、イリジウム、銅、およびパラジウムからなる触媒、または、シリカ担体に担持した、ロジウム、マグネシウム、ジルコニウム、およびリチウムからなる触媒のいずれかである前記のエタノールの製造方法である。
バイオマスから熱化学的ガス化反応によって発生させた原料気体を精製し、エタノール合成装置において反応させ、反応生成物から分離した、未反応原料気体および副生気体を低級炭化水素改質処理装置によって一酸化炭素と水素に改質反応処理した後に、前記エタノール合成装置に循環し、次いで、多段蒸溜塔で粗エタノール液を分離し、さらに水素との反応触媒を設けた水素化処理装置によって、残留アセトアルデヒド、酢酸,酢酸エチルをエタノールに変換する前記のエタノールの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエタノールの製造方法は、ロジウムと共に少なくとも一種の遷移金属、更に他の金属を含む触媒を用いたので、バイオマスの熱化学的ガス化反応によって得られる一酸化炭素及び水素を含有する気体を用いて高効率で直接エタノールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、バイオマスのガス化からエタノールの製造までの工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエタノールの製造方法およびエタノールの製造触媒は、一酸化炭素、水素を含有する気体であれば、任意の気体を原料気体として利用することが可能であるが、バイオマスの熱化学的反応によって得られる一酸化炭素、水素を含有するバイオマスガスを原料気体に用いる方法を例に挙げて説明する。
【0010】
図1は、バイオマスの熱化学的反応によるガス化からエタノールの製造までの工程を説明する図である。
本発明のエタノール製造工程1は、バイオマス供給部2と水蒸気供給部3から供給されるバイオマスと過熱水蒸気を、改質触媒を備えたガス化炉4に供給して高温度で、水素と一酸化炭素を含有する原料気体を発生させる。
ガス化炉4には各種のものを用いることができるが、流動床式のものが好ましい。また、ガス化炉にはバイオマスを供給する供給手段と、改質触媒を含むガス化炉を加熱する加熱手段、バイオマスを供給するバイオマス供給手段と、過熱水蒸気と酸化剤を供給する手段を有している。
【0011】
バイオマスの熱化学反応で得られたバイオマスガスに含まれるメタンやエタンなどの副生低炭化水素やベンゼン、多縮合環芳香族炭化水素等や油タール成分をさらに改質ガス化することができる。これによりバイオマスのガス化の変換効率を向上してバイオマス基準で60%以上のバイオマスガスを得ることができる。バイオマスガスには、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素を主成分にするガスを得ることができる。加えて副生するメタン、エタン、エチレンなどの低級炭化水素の高効率なガス化反応により水素収率を増大して、エタノール合成反応に供給する原料気体中の水素/一酸化炭素比が2以上の原料ガスを供給でき、これによりバイオマスのガス化装置に連結するエタノール合成装置を用いて高収量かつ高選択率でエタノールを製造することができる。
【0012】
本発明で用いるバイオマスとしては、杉等の木材、木質建築廃材、草木ソルガム、サトウキビの絞りかす絞りかすであるハガス、甜菜の絞りかす、稲わら等の、草木質バイオマスや産業廃棄バイオマスを挙げることができる。
また、上下水道の乾燥汚泥、畜産糞尿など広く未利用のバイオマス原料を粉砕・乾燥したもの等も挙げることができる。
【0013】
バイオマスの粉砕物の平均粒径は、5mm以下とすることが好ましく、平均粒径が5mmを超えたものでは反応の進行が遅くなり高効率のガス化が困難となる。一方、0.05mm以下では、粉砕効率が悪くなる。
【0014】
杉木材粉、草木ソルガムや稲わらなどの乾燥バイオマスを用いて800℃での熱分解反応と、改質触媒を備えた水蒸気改質ガス化によって、体積比で一酸化炭素30−50%水素、メタン5−15%、エタン2−5%、二酸化炭素6−12%からなる45−75%の合成ガスを含む原料気体を、バイオマス1kg当たり1−2Nm3を得ることができる。
【0015】
一般に、バイオマスを原料に水蒸気を添加して、改質触媒の存在下で熱分解反応を行う場合には、以下の反応が進行する。
CO+H2O → CO2+H2 式1
C+H2O → CO+H2 式2
C+2H2O → CO2+2H2 式3
CH4+H2O → CO十3H2 式4
CH4+CO2 → 2CO+2H2 式5
【0016】
水素と一酸化炭素からなる合成ガスを含む原料気体を用いて、エタノールを高収量でかつ高選択率で合成するためには、水素/一酸化炭素のモル比を2以上にすることが好ましい。このために、上記式1−5の反応が円滑に行われるように反応条件を調整する必要がある。
【0017】
ガス化炉4内の反応温度は、700〜1000℃に調整することが好ましい。また、改質触媒を含むガス化炉内部温度を高温領域に制御することにより水素収率が増大して水素/一酸化炭素のモル比が2以上の原料気体が得られる。また、改質触媒は400〜650℃に調整することが好ましい。
【0018】
ガス化炉4内に設ける改質触媒には、ニッケル系の触媒を用いることができる。これによって、バイオマスから生成したメタンやエタンなどの副生低級炭化水素、ベンゼン、多縮合環芳香族炭化水素、タール成分をさらに改質してガス化することができる。その結果、バイオマスのガス化の変換効率を向上してバイオマス基準で60%以上の原料気体を得ることができる。
加えて副生するメタン、エタンなどの低級炭化水素の効率なガス化反応により水素収率を増大して原料気体中の水素/一酸化炭素比が2以上の原料気体が得られる。これによりバイオマスのガス化装置に連結するエタノール合成装置を用いて高収量で高選択率でバイオエタノールを製造することができる。
【0019】
ガス化炉4からは灰分取りだし口10から灰分を取り出すと共に、生成した原料気体を水素還元装置5に供給して、水素供給部8から供給された水素と反応させて、イオウ化合物、アンモニア、アミン類等の窒素化合物を還元処理する。水素還元装置5には、コバルト・モリブデン触媒等を備えた装置を用いることができる。水素供給部8には、低級炭化水素改質処理装置によって得られる水素を提供することができる。
【0020】
次いで、脱硫装置6において、硫化水素(H2S)、硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS2)等のイオウ化合物を除去する脱硫が行われる。脱硫装置6としては酸化亜鉛脱硫剤等を設けたものを用いることができる。
水素還元装置5と脱硫装置6によって精製された原料気体は、脱硫装置6の出口部に連結された気液分離装置7aにおいて分離した凝縮水を凝縮水排出口9から分離する。
【0021】
精製後の原料気体を圧縮機11aで圧力を、0.2−5.1MPaの範囲、好ましくは1.0−3MPaの範囲に昇圧し、200−400℃の温度範囲、好ましくは250−300℃の温度範囲に加熱して、原料気体の空時速度(SV:原料気体の速度L/h/触媒の体積L)が1000−12000L/h、好ましくはSV=3000−10000L/hの反応条件でエタノール合成装置12に具備したエタノール合成触媒に原料気体を接触させてエタノール生成反応を行う。
【0022】
エタノール合成装置12には、エタノール合成触媒に原料気体を供給する供給手段と、エタノール合成触媒を加熱する加熱手段がエタノール合成触媒を包囲するように設けられており、エタノール合成触媒の出口部に連結された気液分離装置7bによって50−60体積%濃度エタノール等の液状生成物を、未反応原料気体や副生メタンやエタンを含む出口反応ガスから分離回収する。
【0023】
気液分離装置7bで分離された未反応原料気体や副生メタンやエタンなどを含む出口ガスを循環圧縮機11bで昇圧循環し、あるいは分離された出口ガス中のメタンやエタンなどの低級炭化水素を、低級炭化水素改質処理装置15に備えたニッケル・ルテニウム触媒によって合成ガス(H2、CO)に改質反応処理した後に昇圧循環してエタノール合成装置12に導入して3から5回の循環反応を行なう。また、同時にオフガスをオフガス取り出し口14から排出する。
これにより原料気体からのエタノールの合成工程において、一酸化炭素基準での原料気体からのエタノール変換収率と選択率を向上すると共に単位バイオマス1トンから製造できるエタノールの収量を0.3−0.5トンに増大することができる。
【0024】
気液分離装置7bで分離された液状生成物を多段蒸留塔16に供給される。また、気液分離装置7bには、液状生成物取り出し口13が設けられている。
多段蒸溜塔16においてエタノール濃度79−90体積%に濃縮すると共に、低沸点残留分である酢酸、アセトアルデヒド、プロパノール、メタノールなどを回収手段17で分離回収する。多段蒸溜塔16には、ラシッヒリングを備えた蒸溜塔を用いることができる。
前記多段蒸溜塔16で得られた粗エタノール液を、液体供給ポンプ18によって水素との反応触媒を設けた水素化処理装置19によって、残留する酢酸、アセトアルデヒド、酢酸エチル等をエタノールへと変換させることによって収量を増加させることができる。水素との反応触媒としては、CuZnO触媒やPdFe触媒を挙げることができる。
また、水素化処理装置には、低級炭化水素改質処理装置において生成する水素を利用することができる。
【0025】
水素化処理後のエタノールを水酸化ナトリウム水溶液供給口20から供給された水酸化ナトリウム水溶液と接触させて酸性物質を除去した後に、気液分離装置7cにおいて分離する。次いで、エタノールを多段蒸留塔21に供給して95体積%のエタノールをエタノール取り出し口23から回収する。また、エタノールを除いた残留成分は残留成分取り出し口25から排出する。
更に、ゼオライト吸着分離塔22で水分を除去して99体積%エタノールをエタノール取り出し口24から回収する。
【0026】
また、本発明のロジウム触媒を具備するエタノール合成装置での実施試験では、一酸化炭素と水素の混合ガスに体積比10%のメタン、エタン、エチレンや二酸化炭素をそれぞれ含むガス原料と、非含有ガス原料ではエタノールの生成活性が2−10%ほど向上するとともに触媒性能の安定性が改良される。
【実施例】
【0027】
実施例1
触媒1の調製
シリカ担体(表面積185m2/g)に、ロジウム、マンガン、リチウム、スカンジウムを各金属原子比で1:0.05:0.3:0.15となるそれぞれの塩化物のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素(1:4体積比)の混合気流下で100℃まで1時間昇温し、2時間保持し、400℃まで2時間昇温して2時間保持して25℃に降温することによって活性化処理をし、シリカ担体にロジウム、マンガン、リチウム、スカンジウムを担持した触媒1を調製した。
【0028】
Cu/ZnO触媒1の調製
シリカ担体(表面積265m2/g)に、銅と亜鉛を各金属原子比で1:0.8となるそれぞれの硝酸塩のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素(1:2体積比)の混合気流下で100℃まで1時間昇温し、2時間保持し、400℃まで2時間昇温して2時間保持し、25℃に降温することによって活性化処理し、シリカ担体に銅と酸化亜鉛(ZnO)を担持したCu/ZnO触媒1を調製した。
【0029】
原料気体の調製
図1で示す装置に、1時間当たり杉木粉10kgを供給して800℃において、水蒸気を供給しながらガス化炉で原料気体を1時間当たり15Nm3、水素/一酸化炭素(容量比)=2を製造した。
得られた原料気体の体積組成は、一酸化炭素26%、水素54%、メタン10%、エタン1%、二酸化炭素5%、残部は窒素であった。また、原料気体は、CoMo触媒による水素化と、酸化亜鉛を用いた脱硫処理装置で精製した。
【0030】
エタノールの合成試験
精製した原料気体を2.5MPa、温度280℃において、触媒1を充填した反応器Aに導入した後、反応器Aに直結した反応器Bにシリカ担時Cu/ZnO触媒1を充填して、2.5MPa、温度280℃において接触循環反応を行いエタノール選択率80%(一酸化炭素基準)、エタノール空時収率320g/触媒L/hでエタノールが生成した。
1000時間の反応経過においてもエタノール合成'性能が維持された。気液分離装置で回収されたエタノール(エタノール52%+水39%(容量比))を蒸留分離とゼオライト吸着精製処理を行なって水を除去して、99体積%エタノール3.5kgを得た。
【0031】
実施例2
触媒2の調製
シリカ担体(表面積215m2/g)に、ロジウム、モリブデン、イリジウム、銅とパラジウムを各金属原子比で1:0.3:0.2:0.5:0.3となるそれぞれRh,Mo,I r,Pdの各塩化物と硝酸銅のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素(1:3体積比)の混合気流下で150度Cまで1時間昇温し、2時間保持し、4500℃まで2時間昇温して2時間保持して室温に降温することによって活性化処理し、シリカ担体にロジウム、モリブデン、イリジウム、銅とパラジウムを担持した触媒2を調製した。
【0032】
原料気体の調製
バイオマスとして稲わら毎時5kgを用いた点を除き実施例1と同様にして原料気体を製造した。原料気体の体積組成は一酸化炭素28%、水素48%、メタン3%、エタン1%、二酸化炭素15%、残部は窒素であった。
エタノールの合成試験
精製した原料気体を2.5MPa、温度280℃において、触媒2と、希釈材としてのセラミックボールを体積比4:1で混合して充填した反応器に供給した。
反応気体を7.1MPa、300℃、SV=9000L/hで接触反応して一酸化炭素転化率58%、エタノール250g触媒L/hとメタノール480g/触媒L/hが得られた。
【0033】
実施例3
触媒3の調製
シリカ担体(表面積215m2/g)に、ロジウム、ジルコニウム、リチウム、マグネシウムを各金属原子比で1:0.3:0.5:0.8となるそれぞれの塩化物のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素(1:4体積比)の混合気流下100℃まで1時間昇温し、2時間保持し、400度Cまで2時間昇温して2時間保持し、室温に降温することによって活性化処理し、シリカ担体にロジウム、ジルコニウム、リチウム、マグネシウムを担持した触媒3を調製した。
【0034】
CuZnTi触媒の調製
シリカ担体(表面積165m2/g)に、銅、亜鉛とチタンを各金属原子比で1:0.8:0.2となるように、硝酸銅、硝酸亜鉛、塩化チタン(III)のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素ガス(1:2体積比)の混合気流下で100℃まで1時間昇温し、2時間保持し、450℃まで2時間昇温して2時間保持して室温に降温にして活性化処理して、シリカ担体に銅と亜鉛とチタンを担持したCuZnTi触媒を調製した。
【0035】
原料気体の調製
実施例1と同様にして、杉木材ペレット毎時10kgを用いて原料気体10Nm3/h、水素/一酸化炭素モル比=1.5を調整した。
エタノールの合成試験
生成した原料気体を触媒3と、CuZnTi触媒を充填した装置に、7.1MPa、290℃、SV=6000L/hにおいて接触反応させてエタノールを460kg/触媒L/h、および酢酸290g/触媒L・hの空時収率を得た。
【0036】
比較例
触媒4の調製
シリカ担体(表面積245m2/g)に、イリジウム、銅とパラジウムを各金属原子比で1:0.5:0.5となるそれぞれイリジウム塩化物、パラジウム塩化物、および硝酸銅のエタノール水溶液に含浸した後に、水素と窒素(1:2体積比)混合気流下で100℃まで1時間昇温し、2時間保持し、350℃まで2時間昇温して2時間保持した後に、室温に降温することによって活性化処理し、シリカ担体にイリジウム、銅とパラジウムを担持した触媒4を調製した。
【0037】
エタノールの合成試験
実施例1で使用した原料気体と触媒4を充填した反応器に2.5MPa、280℃の条件で反応させた点を除き実施例1と同様の条件でエタノール合成試験を行なったところ、100時間後には、エタノールは0.5−1g/触媒L/hのであり、一酸化炭素基準でのエタノール選択率は1%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のエタノール製造方法、およびエタノール製造触媒は、バイオマスの熱化学的ガス化反応によって得られる原料気体から、エタノールを高収率で製造することができる。これにより、草木材、稲わらなどの醗酵しにくいバイオマス原料や建築木材やパルプなど産業廃棄バイオマスなどを原料としてエタノールを合成することができ、これによりエタノール製造の原料範囲を拡大でき、かつ経済的なエタノール合成法を提供する。
【符号の説明】
【0039】
1 エタノール製造工程
1 バイオマス供給部
2 水蒸気供給部
3 ガス化炉
4 還元装置
5 脱硫装置
7a 気液分離装置
7b 気液分離装置
7c 気液分離装置
8 水素供給部
9 凝縮水排出口
10 灰分取りだし口
11a 循環圧縮機
11b 循環圧縮機
12 エタノール合成装置
13 液状生成物取り出し口
14 オフガス取り出し口
15 低級炭化水素改質処理装置
16 多段蒸留塔
17 回収手段
18 液体供給ポンプ
19 水素化処理装置
20 水酸化ナトリウム水溶液供給口
21 多段蒸留塔
22 ゼオライト吸着分離塔
23 エタノール取り出し口
24 エタノール取り出し口
25 残留成分取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを触媒の存在下で反応させて行われる酢酸、アセトアルデヒド、酢酸エチルの少なくとも一つの副生物を含むエタノールを合成する工程と、前記副生物を水素化処理によってエタノールに変換する工程を有するエタノールの製造方法であって、
前記原料ガスは、バイオマスの熱化学的ガス化反応によって得られる水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン及びエタンを含む低級炭化水素とを主成分とするバイオマスガスであり、
前記エタノール合成工程は、以下の(1)又は(2)
(1)シリカ担体に担持した、ロジウム、マンガン、リチウム、およびスカンジウムからなる触媒、
(2)シリカ担体に担持した、ロジウム、マグネシウム、ジルコニウム、およびリチウムからなる触媒
のエタノール合成触媒の存在下で行われ、
前記エタノール合成工程後に反応生成物から未反応原料気体および副生気体を分離し、該分離気体を低級炭化水素改質処理によって一酸化炭素と水素に改質反応処理し、該改質処理後の気体を前記合成工程に循環することを特徴とするエタノールの製造方法。
【請求項2】
前記バイオマスガスは、二酸化炭素と低級炭化水素を合わせて体積比で10%〜19%含む組成であることを特徴とする請求項1に記載のエタノールの製造方法。
【請求項3】
前記バイオマスガスは、一酸化炭素に対する水素の割合H/COがモル比で1.5以上の組成であることを特徴とする請求項2に記載のエタノールの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149089(P2012−149089A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92146(P2012−92146)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2010−550465(P2010−550465)の分割
【原出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(507127613)有限会社市川事務所 (3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】