説明

エタノール製造方法

【課題】資源の有効利用の観点から、廃棄物処理施設に搬入される食品廃棄物より選択的に選別した、デンプン質を含む原料とセルロースを含む原料を用い、それぞれ適した方法でエタノールの生産効率を上げ、かつ既存の廃棄物回収システム及び廃棄物処理施設をそのまま採用した廃棄物処理施設におけるエタノール製造方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物処理施設に搬入される食品残渣より選択的に選別した、デンプン質を含む原料は、アルコール発酵を水分含水量の比較的小さな固体発酵法を用い、又セルロースを含む原料は微生物によるアルコール変換法を用いそれぞれ適した方法でエタノールを生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理施設におけるエタノール生産方法に関し、動植物性残渣の生ゴミより高効率にエタノールを生産するエタノール製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設及び製材工場などから排出される廃材、稲わら、麦わら、サトウキビ、とうもろこしや古紙等のバイオマス資源からエタノールを生産する方法が提案されている。
ところで、わが国における食品廃棄物の排出状況は、一般廃棄物が1600万トンで、その内訳は一般事業系が600万トン、家庭系から1000万トンで、事業系の食品製造業から排出される食品廃棄物は340万トンとなっている。総排出量は1940万トンで、そのうち91%が焼却処分され再資源化への転換は9%にとどまっている。
【0003】
現在、食品循環資源の再利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)が施工され、食品関連事業者は事業所内から排出される食品廃棄物の発生抑制、再生利用、減量化を行わなければならない。
【0004】
なかでも、資源を可能な限り再利用するための技術が望まれている。すでに食品廃棄物からエタノールを生産する方法は実用化にむけて実施されている。例えば、デンプン質を含む原料を用い、発酵により生産する方法に於いて、エタノール生産過程で廃液の生じることのないエタノールの製造方法およびエタノール製造システム、また、従来の食品廃棄物(セルロース系廃棄物)よりエタノールを生産する方法に於いては、セルロース系廃棄物に酵素液を作用させて糖を生成する糖化工程と、この糖化工程で生成した糖を含有する糖含有液を用いて発酵を行うことにより、アルコールを取得する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−159954
【特許文献2】特開2005−65695
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2記載の方法では、食品残渣のデンプン質を含む原料のみを用いエタノールの製造をおこなうものであった。
【0006】
本発明は、上記のアルコール発酵法の持っている問題点を基に考え、既存の廃棄物回収システム及び廃棄物処理施設をそのまま用い、回収した食品残渣の生ゴミ中のデンプン質を含む原料を用い、アルコール発酵を固体発酵法により生成する方法と、回収した食品残渣の生ゴミ中のセルロースを含む原料を用い、微生物による糖からアルコールに変換する生成方法を有し、それぞれ適した方法でエタノールの生産効率の向上および大幅な増産を可能とするエタノール製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の廃棄物処理施設におけるエタノール製造システムは、廃棄物処理施設に搬入される食品廃棄物の中から生ゴミを選択的に、デンプン質を含む原料とセルロースを含む原料に選別する。前記原料をそれぞれ違った生成方法を用い、可能な限り資源の再利用を行いエタノールの大幅な増産と利用の拡大を可能にしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、生ゴミよりデンプン質を含む原料を用いペレットを形成し、前記ペレットに麹菌を接種して麹を得る。前記麹と酵母、最少量の水分から構成された発酵もろみを用い、発酵から終了まで固体状で発酵する。前記発酵方法で発酵終了後の発酵もろみを蒸留してエタノールを回収する。また、生ゴミ中のセルロースを含む原料を用い、糖化処理する方法は、セルラーゼ系又はアミラーゼ系の酵素剤を用いて糖化処理する方法と硫酸を用いて加熱及び加圧する方法で糖化処理を行う方法等があるが、これは特に限定するものではない。本発明では、セルロースが糖化処理後酵母菌を用いてアルコール発酵するのではなく、財団法人地球環境産業技術研究機構の開発した糖をアルコールに変換する微生物であるライト(Rite)菌によるアルコール変換工程を備えた、2とおりのエタノール製造システムを提供するものである。
前記ライト(Rite)菌により、従来のセルロース系バイオエタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率が飛躍的に向上させることが可能になった。
【発明の効果】
【0009】
本発明の廃棄物処理施設におけるエタノール製造システムによれば、廃棄物処理施設に搬入される食品廃棄物より選択的にデンプン質とセルロースを含む原料に選別し、一方ではアルコール発酵を水分含水量の比較的少ない固体発酵法用い、もう一方は微生物であるライト(Rite)菌によるアルコール変換法を用い、蒸留を行い高効率にエタノールを生産する。これは、廃棄物の回収システム及び廃棄物処理施設として既存のものを使用できるので新たな回収システム及び運搬費用を必要とすることなく、エタノール製造に適した原料を効率的に確保することができる。
【0010】
本発明では、アルコール発酵を固体発酵法で行うため蒸留後の固体形状の残渣fは、酵母や麹菌由来のたんぱく質を豊富に含むため家畜の飼料として利用できる。また、セルロース分解後の残渣物等bは自家用燃料として活用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の廃棄物処理施設におけるエタノール製造システムの実施の形態を、図1に示すエタノール製造プロセスのフローシートに基づいて説明する。
【0012】
廃棄物処理施設に搬入される動植物性残渣よりデンプン質を含む原料とセルロース質を含む原料とに選別し、既存のシステムを利用して生成処理する。例えば、デンプン質を含む原料については、アルコール発酵を固体発酵法で、セルロース質を含む原料は、酵素および硫酸等で糖化し、微生物を使いアルコール変換によりエタノールを製造する。尚、生ゴミ・原材料の収集システムとしては、既存の廃棄物収集運搬のシステムを使用して回収するため新たな廃棄物収集システムの創設は必要ない。
【0013】
廃棄物処理施設に、ゴミ収集車等により搬入された動植物性残渣より生ゴミAを、水槽に投下し、浮沈式比重選別1によりデンプン質を含む原料Bと、セルロース質を含む原料Cに分類される。浮沈式比重選別は、水等の液体媒体中に投下された生ごみ等を分散させ、媒体より比重の小さな生ゴミは(セルロース等を含む食品残渣)と、それよりも比重の大きな生ゴミ(デンプン質等を含む食品残渣)とに簡易に分離できる方法である。
【0014】
ここで、浮沈式比重選別をおこなう際に、目開きの小さなスクリーンを水槽底部に、水槽中央部には目開きの大きいスクリーンを配置する。前記スクリーンを上下動作により前記媒体よりも比重の小さな生ゴミを水槽の中央に配置したスクリーン上側に成層させ、下側のスクリーン上に前記媒体よりも比重の大きな生ゴミを成層選抜させる。そして、下側スクリーン上に成層した生ゴミより選択的にデンプン質を含む原料Bを選別し圧縮装置2で原料中の水分を除去する。
【0015】
圧縮装置2から供給された原料は、蒸気乾燥装置3に蒸気ボイラーにより高温・高圧の加熱蒸気を、吹き付け攪拌をおこない原料を乾燥する。
【0016】
乾燥した原料を、脱脂機aで脱脂後、造粒機4でペレット状(円柱状)に押し出す。その大きさは4mm粒大が望ましい。
【0017】
自動製麹装置5を用いて、外気の環境に左右されず自動的に、造粒機4で製造されたデンプン質を含むペレットの品温と湿度を制御し麹を得る。
【0018】
固体発酵装置6では、前記麹に酵母を添加し発酵もろみを酸素が存在しない状態で嫌気発酵を行う。
【0019】
連続蒸留装置7は、発酵が発酵もろみからエタノールを連続的に蒸留し、エタノールを得るものである。連続蒸留装置7は、セルロース系食品残渣より取得したエタノールもこの装置で生成する。
【0020】
前記エタノールを、精留装置8で高品質、高濃度のアルコールに生成する。
【0021】
一方、水槽中央部の目開きの大きいスクリーンに、前記スクリーンの上下動作により水等の液体媒体よりも比重の小さな生ゴミから、前記スクリーン上側に成層したセルロース質Cを含む生ゴミだけを選択的に選別する。破砕処理装置9により、後工程でおこなわれる糖化処理に適した大きさに破砕する。また、破砕処理をした生ゴミの含水率を95%〜80%に保ち、糖化処理を行うのが望ましい、糖化装置10で糖化処理を行う方法としては、希硫酸をもちいた加水分解、セルラーゼ系及びアミラーゼ系の酵素剤をもちいる方法があるが、これは特に限定するものではない。但し、2〜3年後には安価なセルラーゼ酵素が開発されて酸触媒が酵素法に代わると言われている。
【0022】
糖化装置10で、原料中のセルロースがグルコースに糖化される。グルコースを含んだ糖化処理後の糖液は加熱処理と言った滅菌または滅菌処理がされるが、希硫酸を添加した後、加熱処理をおこなった場合は滅菌処理を要しない。
【0023】
糖化処理をおこない回収された糖液は中和後、変換処理槽11で遺伝子組み換え菌、RITE菌により、アルコールニ変換する。遺伝子組み換え菌・ライト(Rite)菌は、財団法人地球環境産業技術研究機構により開発された。財団法人地球環境産業技術研究機構は、コリネ型細菌の特性を利用しさらに高効率な生産性与えるため、コリネ型細菌の遺伝子組み換えにより創製に成功した。ライト(Rite)菌は、従来のセルロース系エタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率を飛躍的に向上させることが可能になった。財団法人地球環境産業技術研究機構では、新規組み換え微生物を用いることによりセルロース系の発酵工程に大幅な合理化ができる工業化基礎技術を確立している。
よって、発酵工程周辺機器の装置固定費が従来より掛からない。
【0024】
また、糖化処理装置10及び変換槽11内にておこなわれる各処理により発生する残渣bは、脱水工程c、乾燥処理工程dで含水率を調整後、自家用燃料として処理する。
【0025】
以上、本発明の廃棄物処理施設におけるエタノール製造システムについて説明したが、原料の残渣成分を有効なエネルギーに転換することにより、資源全体を可能な限り有効利用し経済的で環境にやさしいプロセスを構築できる。また、上記に記載した構成に限定するものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲に於いて、その構成を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の廃棄物処理施設における、エタノール製造プロセスのフローシートである。
【符号の説明】
【0027】
A 回収動植物残渣
B 食品残渣のデンプン質を含む原料
C 食品残渣のセルロース質を含む原料
1 浮沈式比重選別工程
2 圧縮装置
3 蒸気乾燥装置
a 脱脂機
4 造粒機
5 自動製麹機
6 固体発酵装置
f 残渣
7 連続蒸留装置
8 精留装置
h 廃液処理
9 破砕機
10 糖化装置
g 廃液処理
b 残渣
c 脱水装置
d 乾燥機
e 木質バイオマスボイラー
11 変換処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理施設に搬入される食品廃棄物の中から生ゴミを選択的に、デンプン質を含む原料とセルロースを含む原料に選別し、選別されたデンプン質を含む原料は、アルコール発酵を水分含水量の比較的少ない固体発酵法を用い、又、セルロースを含む原料は、微生物であるライト(Rite)菌によるアルコール変換法を用いそれぞれ適した方法で、高効率にエタノールを生産することを特徴とする廃棄物処理施設におけるエタノール製造方法。
【請求項2】
原料の確保を、廃棄物の回収システム及び廃棄物処理施設として既存のものを使用できるので新たな回収システム及び運搬費を必要とすることなくエタノール製造に適した原料を効率的に確保できることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理施設におけるエタノール製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−92927(P2008−92927A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300899(P2006−300899)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(506372265)
【Fターム(参考)】