説明

エダクタ

エアギャップ(5)、ベンチュリ構造(3)、およびエアギャップ(5)内に配置される逆止弁(19)を有するエダクタ(1)が提供される。逆止弁は取り外し可能であり、エダクタがエアギャップエダクタまたは逆止弁エダクタとして作動することを可能にする。エアギャップエダクタ(1)のエアギャップ(5)に取り付けられて、エダクタが逆止弁エダクタとして作動することができるようにする逆止弁カートリッジ(19)も提供される。逆止弁(19)をエアギャップエダクタ(1)に後付けする方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を混合するエダクタ、およびエダクタとともに用いる逆止弁に関する。また、本発明は、エアギャップエダクタを適合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル産業および外食産業等の多くの産業では、洗浄用の化学物質を濃縮液として購入し、用途に応じて正しい濃度になるよう使用現場において水で希釈することが一般的である。比例計量分配装置は、濃縮溶液の所望の希釈液を得て、混合希釈溶液を計量分配するように設計されている。
【0003】
このような計量分配装置は一般に、エダクタとして知られている、いわゆるベンチュリ型デバイスを用いて、濃縮溶液を水流に吸引、すなわち引き込む。
【0004】
このようなエダクタでは、通路内を流れる水は、通路内の狭い流路が広がる地点で濃縮溶液を飛沫同伴する。
【0005】
エダクタは通常、直立構成で配置され、ウォータージェットを形成して下方へ導くノズル、ノズルの下のエアギャップ、およびエアギャップの下に位置するベンチュリ構造を有する。使用時には、ウォータージェットがエアギャップを通過してベンチュリ構造に入る。ベンチュリ構造は、入口、濃縮液を送出する側部通路、および水流が濃縮液を飛沫同伴するチャンバを有する。
【0006】
溶液が所望の濃度で計量分配されることを確実にするために、水流に引き込まれる濃縮溶液の量を制御する流量調整方法が必要である。エダクタ、特に流量調整手段を有するエダクタは、たとえば特許文献1および2に記載されている。
【特許文献1】米国特許第5522419号
【特許文献2】国際公開WO94/04857
【0007】
通常、エダクタは主供給源から直接供給される水で作動する。ほとんどの給水システムでは、給水ライン内に部分真空を生成する過渡状態が起こる可能性がある。これは、給水源への濃縮液の逆流を引き起こす可能性がある。明らかにこれは望ましくなく、水源への化学物質の逆流を防止することにより、汚染のない給水を維持することが重要である。
【0008】
2つのタイプの水源保護装置が知られている。エアギャップ(AA)エダクタは、上述のように、ノズルとベンチュリ構造との間にエアギャップを有する。これにより、水がエアギャップを通って給水源まで戻ることができないため、逆流が防止される。逆流状況下でベンチュリ入口から出る水は全て、給水源を汚染することなくエダクタから単に溢れ出る。このように、エアギャップエダクタは、比較的高レベルで逆流を防止するが、以下で説明するようないくつかの欠点を有する。
【0009】
機械的な逆止弁または管遮断器(DB)は、エアギャップエダクタよりもわずかに低いレベルで逆流を防止するが、エアギャップエダクタに関連する欠点のいくつかは有さない。既知のエアギャップエダクタは、逆流防止と流体計量分配の組み合わせを単一装置で提供する。しかしながら、エアギャップエダクタはいくつかの欠点を有する。エアギャップを通過する水流は、水を導くノズルと同様に空気に曝される。動作環境からの粉塵または他の微粒子の進入は噴射の性能を妨害する可能性があり、これにより跳ね返りが生じ、ベンチュリ段階での効率が低下する恐れがある。噴射が妨害されると、エダクタが効果的に作動できなくなる。これらの理由から、エアギャップエダクタは定期的なメインテナンスが必要となる。エアギャップが存在することにより、希釈液が空気に曝されるため、エダクタを水以外の希釈液とともに用いることもできなくなる。
【0010】
エアギャップエダクタの代替形態は、エアギャップを設けずに、エダクタの上流で逆止弁を用いることである。逆止弁は、エダクタと直列に配置される別個の装置である。しかしながら、この装置では、エアギャップエダクタにより提供されるような複合型のエダクタ・逆流防止装置の利便性は失われる。さらに、逆流防止のレベルはエアギャップエダクタによるものよりも低い。例えばバキュームブレーカ装置といった、逆流を防止するための他の装置も知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、既知のエダクタでは、エダクタ装置自体を変更せずにエアギャップ装置と逆止弁装置とを切り替えることが不可能であると認識している。切り替えには費用および時間がかかる。エアギャップによる保護および逆止弁による保護が異なる時に必要とされる場合、単一のエダクタを用いることができない限り、既知のエダクタ装置の有用性は制限される。
【0012】
本発明の目的は、既知のエダクタ装置の欠点を解消すること、特に、エアギャップ装置と逆止弁装置との間での変更が容易にできるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、ベンチュリ構造、エアギャップ動作モードにおいて液体噴流がベンチュリ構造に入る際に通過するエアギャップ、およびエアギャップ内に配置される取り外し可能な逆止弁を有するエダクタが提供される。このエダクタによりエアギャップ動作モードと逆止弁動作モードが変換可能である。
【0014】
取り外し可能な逆止弁は、例えば当業者に既知のものから選択される、任意の適当な逆止の機構を有していてもよい。取り外し可能な逆止弁は、所定の程度の逆流防止が得られるように選択してもよい。逆止弁は、逆流した場合にエダクタから液体を排出させるための1つまたは複数の出口ポートを有してもよい。好適には、取り外し可能な逆止弁は、通常の動作中に遭遇する可能性が高い化学物質に対する耐性を有する1つまたは複数の材料から構成される。
【0015】
この装置により、エダクタは、逆止弁の単なる取り付けまたは取り外しによって、エアギャップエダクタまたは逆止弁エダクタとして作動することができる。逆止弁は、エダクタ内で、エアギャップに液体噴流を供給するノズルで置き換えてもよい。
【0016】
例えば水希釈システムにおいて、エアギャップ装置と逆止弁装置との変換を容易に行うことができるエダクタを設けることが好ましい。これは、水源、流量、および濃縮液がエダクタの寿命の間に変化する場合があり、逆流防止の要件も変化する可能性があるからである。したがって、本発明は、エアギャップによる保護が必要な場合と、逆止弁の埋め戻し(back fill)による保護が必要な場合とで用いることができるため、既知のエダクタと比較して有用性の高いエダクタを提供する。
【0017】
本発明による取り外し可能な逆止弁を有するエダクタは、使用現場でエアギャップ装置または逆止弁装置に適合させることができる。これは、このように適合させることができず、かつ逆流防止要件が変化した場合にエダクタ装置全体を交換する必要がある既知の装置よりも著しく有利である。通常これは専門技術者によって実行される。したがって、本発明により、エアギャップ装置と逆止弁装置との間で変更を行う場合の時間および費用を節約できる。
【0018】
本発明の第2の態様では、エアギャップおよびベンチュリ入口領域を有するエダクタのエアギャップ内に取り外し可能なように取り付けられている逆止弁カートリッジが提供され、この逆止弁カートリッジは、供給ラインから水を受け取るようになっている入口、ベンチュリ入口領域に水を送出するようになっている出口、および入口と出口の間の逆止弁を有する。
【0019】
好ましくは、出口は、ベンチュリ入口領域とシール接触するシール面を有する。
【0020】
好ましくは、入口は、供給ラインとシール接触するシール面を有する。
【0021】
好ましくは、逆止弁カートリッジは、コアと、コアの周りにコアとシール接触するように設けられて、コアとの間に流体が流れるのを防止する拡張可能な弾性スリーブとを有し、シール接触は、弾性スリーブが拡張すると解除され、弾性スリーブは入口からの流体圧力により拡張する。
【0022】
好ましくは、逆止弁カートリッジは、弾性スリーブの周りに設けられてスリーブの拡張の程度を制限し、入口から出口へ流体が流れている間はスリーブに密着する外部ケーシングを有する。この装置では、入口から出口への経路が閉鎖されると、外部ケーシングとスリーブとの間で水が逆流することができる。好ましくは、外部ケーシングは、逆流が生じた場合に流体が逆止弁から出ることができる開口を有する。
【0023】
エアギャップエダクタのエアギャップ内に着脱可能に取り付けることができる本発明による逆止弁カートリッジは、エアギャップエダクタが逆止弁で作動するように、既存のエアギャップエダクタを改変するのに安価で効率的な方法を提供することができる。したがって、本発明は、エダクタの逆流防止を改変する手段を提供し、エダクタ装置の交換または別個の逆止弁装置の取り付けの費用や不便さを伴わない、逆止弁による防止の効果を提供する。
【0024】
本発明の第3の態様では、このエアギャップ内に逆止弁を取り付けることを含む、ベンチュリ混合部とエアギャップとを有するエアギャップエダクタの適合方法が提供される。
【0025】
エダクタが逆止弁を有するように、エアギャップを有するエダクタを適合させることが有利である。これは、エダクタ全体を交換することも、流体流れラインの別の地点に逆止弁装置を取り付けることも必要とせずに、定期的なメインテナンスが必要である等のエアギャップ装置の欠点のいくつかをなくすことができるからである。
【0026】
本発明によるエアギャップエダクタの改変は、エダクタのユーザが行うことができ、専門技術者を必要としないことを意図したものである。したがって、エダクタを交換するか、または別個逆止弁装置を嵌めるという既知の手法よりも、時間および費用を著しく節約できる。
【0027】
逆止弁の形態で逆流への機械的障壁を設けることは、エダクタ内で有毒または有害な流体が用いられる場合に特に適している場合がある。
【0028】
添付図面を参照して、単なる一例として本発明の実施形態を以下で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1〜図3は本発明を実施する直立状態のエダクタ1を示し、エダクタ1は、入口部2、ベンチュリ構造3、および入口部2とベンチュリ構造3との間にエアギャップ5を画定する開口形水平円筒構造を有する本体4を有する。ベンチュリ構造3は、入口6、ベンチュリ構造3に濃縮液を送出する側部通路7、および出口部8を有する。また、ベンチュリ構造3は、水と濃縮液との混合が行われるベンチュリ体(図示せず)と、ベンチュリ体の周りに液体を流すバイパス通路(図示せず)とを有する。ベンチュリ構造3は従来型のものであるため、ここで詳細に説明する必要はない。
【0030】
図1はエダクタ1に水を送出する給水導管10も部分的に示す。導管10は、従来の方法で手動で作動可能な遮断弁11と、バヨネット取付具により入口部2に錠止可能な接続管12とを有する。
【0031】
以下で説明する逆止弁19を有しないエアギャップ動作モードでは、入口部2は、従来のように、接続管12に密着するノズル(図示せず)を有し、開放エアギャップを通してベンチュリ構造3の入口6にウォータージェットを導く。
【0032】
図1の分解図には取り外し可能な逆止弁19が示されており、これは使用時には本体4のエアギャップ5内に配置される(図3参照)。
【0033】
逆止弁19は、コア構造20、弁部材としての役割を果たす着脱可能かつ拡張可能な弾性スリーブ25、および外部ケーシング26を有する。コア構造20は、給水導管10から水を受け取るための上側部分の入口管21、入口21の下に延びる細長ステム22、および入口管21と細長ステム22とを接続するリブ24間の流体出口23(図3参照)を有する。
【0034】
拡張可能なスリーブ25はシリコーンゴム等のゴム材料からできており、弁が組み立てられるとコア構造20の細長ステム22および出口23を覆う。弁が組み立てられ、入口管21に加圧水が流れていない場合、スリーブ25は細長ステム22の周りにきつく嵌まり、細長ステム22とシール接触して、スリーブ25と細長部材22との間を液体が通ることができないようにする。
【0035】
外部ケーシング26は硬質プラスチック材料からできている本体27を有し、本体27は、補強螺旋リブ27a、弁が組み立てられてエアギャップ5内に配置されると外部ケーシングの内部からエアギャップ5へ流体を通す穴28、およびベンチュリ入口6と係合する出口管29を有する。弁が組み立てられると、外部ケーシングは拡張可能なスリーブ25およびコア構造20を取り巻く。
【0036】
逆止弁19の入口管21は2つのOリング21aを有し、このOリング21aは、入口管21が接続管12に挿入されると入口管21を接続管12に密着させる。出口管29はOリング29aを有し、このOリング29aは、出口管29がベンチュリ構造3の入口6に挿入されると出口管29をベンチュリ構造3の入口6に密着させる。逆止弁カートリッジがエダクタに挿入されると、エアギャップ動作モードから逆止弁動作モードにエダクタが修正されるが、これは、入口部2から供給源10を外し、ウォータージェットノズル(図示せず)を入口部2から取り外し、出口管29が入口6に入るように弁19を入口部に挿入し、供給源10が入口管21に密着するように供給源10を再接続することによって行われる。組み立てた状態の外部ケーシング26の上端は、スリーブ25のフランジ25aを入口管21の下端に押し付けて、この部分にシールを形成する。
【0037】
使用時には、水の流れは給水源10から入口管21に入り、出口23を通って管から出る。水の圧力によって弾性スリーブ25は細長ステム22から離れるように拡張する。この拡張により、スリーブ25とステム22との間に流路ができる。スリーブ25は外部ケーシング26の本体27に突き当たるまで拡張し、本体27は、スリーブ25が拡張できる程度を制限し、弁19の入口から出口までの流路をシールする。
【0038】
スリーブが拡張した結果として、水は外部ケーシングの入口管21から出口管29へ流れる。出口管29は、ベンチュリ入口6に導かれるウォータージェットを生み出し、ベンチュリ内の側部通路7を介して供給される濃縮液を既知の方法で飛沫同伴する。最後に、水および飛沫同伴された液体はエダクタの出口部8から排出される。
【0039】
水流が止まると、弾性スリーブ25は収縮して細長部材22の周りにきつく嵌まり、部材22とシール接触する。これにより、水が逆止弁19を通って給水源10まで逆流することが防止される。
【0040】
給水源10から逆止弁19へ水が流れていない場合、例えば、主給水源の圧力の急激な低下が生じて、ベンチュリ構造3内に逆流が生じた場合、流体はベンチュリ入口6から逆止弁19の出口管29へ流れる場合がある。しかしながら、すでに説明したように、弾性スリーブ25が細長部材22とシール接触しているため、流体は給水源に入ることができない。その代わりに、流体は本体27と弾性スリーブ25との間の空間に入り、穴28を通して逆止弁19から出る。
【0041】
図3は、エアギャップ5において、逆止弁19が組み立てられて本体4の内部に配置されているエダクタを示す。逆止弁19の本体27の穴28は、本体4の開口端を通して見ることができる。穴28を通して逆止弁19から流出する流体は、例えばベンチュリ構造3で逆流が生じるような状況では、エアギャップに入り、本体4の開口端を通してエダクタ1から出ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第2の態様の実施形態である逆止弁カートリッジを有する、本発明を実施するエダクタの分解斜視図である。
【図2】図1のエダクタおよび逆止弁の分解正面図である。
【図3】組み立てた状態の図1および図2のエダクタの正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチュリ構造、エアギャップ動作モードで液体噴流が前記ベンチュリ構造に入る際に通過するエアギャップ、および前記エアギャップに配置される取り外し可能な逆止弁を有し、エアギャップ動作モードと逆止弁動作モードとの間で変換可能であることを特徴とするエダクタ。
【請求項2】
エアギャップ動作モードにおいて前記エダクダは前記液体噴流を供給するノズルを有し、該ノズルは着脱可能であり、変換時に取り外して前記逆止弁と交換される請求項1記載のエダクタ。
【請求項3】
前記逆止弁は、使用時に前記ベンチュリ構造に導かれる流体噴流を供給する出口(29)を有する請求項1または2記載のエダクタ。
【請求項4】
前記逆止弁は、開放されている場合に前記ベンチュリ構造へ液体を流す、前記エアギャップにわたってシールされた第1の流路を提供し、かつ、該第1の流路が閉鎖されている場合に、前記ベンチュリ構造から前記エアギャップへ入り前記逆止弁から出るように逆流させる第2の流路を提供する請求項1〜3のいずれかに記載のエダクタ。
【請求項5】
エアギャップおよびベンチュリ入口領域を有するエダクタの前記エアギャップ内に取り外し可能に取り付けられている逆止弁カートリッジであって、供給ラインから水を受け取るようになっている入口、前記ベンチュリ入口領域に水を送出するようになっている出口、および前記入口と前記出口との間の逆止弁を有することを特徴とする逆止弁カートリッジ。
【請求項6】
前記出口が、前記ベンチュリ入口領域とシール接触するシール面を有する請求項5記載の逆止弁カートリッジ。
【請求項7】
前記入口が、前記供給ラインとシール接触するシール面を有する請求項5または6記載の逆止弁カートリッジ。
【請求項8】
取り付けられると、開放されている場合にベンチュリ構造へ液体を流す、前記エアギャップにわたってシールされた第1の流路を提供し、該第1の流路が閉鎖されている場合に、前記ベンチュリ構造から前記エアギャップへ入り前記逆止弁から出るように逆流させる第2の流路を提供する請求項5〜7のいずれかに記載の逆止弁カートリッジ。
【請求項9】
逆止弁を前記エアギャップに取り付けることを特徴とする、ベンチュリ混合部およびエアギャップを有するエアギャップエダクタの適合方法。
【請求項10】
前記エアギャップエダクタがウォータージェットを導くノズルを有し、前記エダクタから前記ノズルを取り外す工程を有する請求項9記載のエアギャップエダクタの適合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−501047(P2006−501047A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584411(P2003−584411)
【出願日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/008428
【国際公開番号】WO2003/087483
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(398061050)ジョンソンディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】