説明

エチレンイミン重合体水溶液およびその製造方法

【課題】悪臭や刺激臭がなく、さらには粘度の経時的変化の少ない工業的に要求される品質基準に適合した高純度エチレンイミン重合体水溶液を提供する。
【解決手段】水性媒体中でエチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体水溶液を製造する際に、重合中の反応溶液の温度と反応熱の除去に用いる熱媒の温度を特定の範囲に維持しながら重合し、さらに熟成も特定の温度範囲で行うことを特徴とするエチレンイミン重合体水溶液の製造方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンイミン重合体水溶液およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、エチレンイミンを開環重合させるエチレンイミン重合体水溶液の製造方法、並びに、エチレンイミン重合体水溶液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンイミンは紙加工剤、接着剤、粘着剤、塗料、インキ、繊維処理剤、凝集分離剤、化粧品、トイレタリー、分散剤などの分野で幅広く利用されている。エチレンイミン重合体は、エチレンイミンを重合開始剤の存在下に重合させて得られるが、無溶媒下での重合では、粘度上の問題から、得られるエチレンイミン重合体の重合度は低い。このため、高重合度のエチレンイミン重合体を得るためには、水性媒体中で重合反応を行い、高分子量のエチレンイミン重合体をその水溶液の形態で得ている。例えば、特許文献1には、水性溶液中でポリハロアルカン重合開始剤の存在下、55℃から85℃でエチレンイミン水溶液の沸点の範囲の温度でエチレンイミンを重合させてエチレンイミン重合体水溶液を得る方法が記載されている。
【0003】
特許文献2は、モノエタノールアミンを触媒の存在下に分子内脱水反応させて得られる粗エチレンイミンの水性媒体中でポリハロアルカン重合開始剤、例えば、ジクロロエタンの存在下に80℃で反応することによりエチレンイミン重合体水溶液が得られることが開示されている。特許文献3には、水性媒体中でエチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体水溶液を製造するにあたり、エチレンイミンを80℃以下の温度で重合させ、次いで100〜150℃の温度で熟成することにより、粘度の経時的変化が少なく品質が安定し、また樹脂分が20〜70質量%という高濃度のエチレンイミン重合体水溶液が得られることが開示されている。
【0004】
一方、いずれのエチレンイミン重合体水溶液においても毒性や刺激性の強いエチレンイミンや低分子アミン等が含まれるため、エチレンイミン重合体水溶液中の不純物を除去する方法も検討されている。例えば、特許文献4には変性ポリエチレンイミン水溶液を98℃で加熱し、さらに窒素ガスを吹き込みながら約160℃に加熱することにより悪臭を除去する方法が開示されている。また特許文献2に開示の粗エチレンイミンを水性媒体中で重合して得られるエチレンイミン重合体水溶液には未反応のエタノールアミンおよび副生成物として、アンモニア、メチルアミンおよびエチルアミン等の軽質アミン類、アセトニトリル、さらにはアセトアルデヒドなどのケトン類、アセトアルデヒドと原料のモノエタノールアミンとが反応して生成するシッフ塩基などが含まれるため、特許文献5には、粗エチレンイミンを水性媒体中で重合して得られる粗エチレンイミン重合体水溶液を加熱して、水溶液中の水を蒸発除去することにより高純度エチレンイミン重合体水溶液が得られることが開示されている。
【0005】
しかしながら、不純物が除去された高純度エチレンイミン重合体水溶液であっても悪臭や刺激臭、特にアンモニア臭やアミン臭があることから、その刺激臭がエチレンイミン重合体水溶液を取り扱う者に不快感を与え、食品用の包装フィルム用や洗剤用原料などに関連する用途によってはエチレンイミン重合体の使用制限を受けることがあった。そのため作業環境を改善するためにエチレンイミン重合体の製法については改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭43−8828号公報
【特許文献2】特開2001−213959号公報
【特許文献3】特表2001−288265号公報
【特許文献4】特表平11−514024号公報
【特許文献5】特開2001−270941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、悪臭や刺激臭の少ないエチレンイミン重合体水溶液であり、さらには工業的に要求される品質基準に適合した高純度エチレンイミン重合体水溶液を提供することを課題としている。本発明はまた、その高純度エチレンイミン重合体水溶液の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの研究によれば、前記課題は下記発明により達成できることがわかった。
(1)水性媒体中でエチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体水溶液の製造方法であって、反応溶液温度が45〜80℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を40℃以上で行うことを特徴とするエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
(2)重合反応後に100〜150℃の温度で熟成することを特徴とする(1)記載のエチレンイミン重合体水溶液製造方法。
(3)反応溶液温度が50〜70℃になるようにエチレンイミンを重合させ、次いで110〜140℃の温度で熟成することを特徴とする(1)または(2)記載のエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の重合を、反応液の最終液量(m)当りの撹拌機の撹拌動力(kW)の比率(PV値=撹拌動力/最終液量)が0.5kW/m以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
(5)エチレンイミンを重合して得られたエチレンイミン重合体水溶液の水をさらに蒸留除去してエチレンイミン重合体水溶液を精製する工程を含むことを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
(6)臭気度が500ppm以下であることを特徴とするエチレンイミン重合体水溶液。ここで、臭気度とは分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体水溶液として100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反応後に残存ずる未反応エチレンイミン量を抑制できるので、アンモニア臭、アミン臭がない高純度エチレンイミン重合体水溶液を製造することができる。さらに、本発明の高純度エチレンイミン重合体水溶液は、粘度が経時的に変化が起きないため、品質が安定なエチレンイミン重合体水溶液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかるエチレンイミン重合体水溶液の製造方法は、水性媒体中でエチレンイミンを重合する際に、反応溶液温度が45〜80℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を40℃以上で行うエチレンイミン重合体水溶液の製造方法である。また、本発明にかかる高純度エチレンイミン重合体水溶液は、臭気度が500ppm以下であるエチレンイミン重合体水溶液である。
【0011】
本発明に用いるエチレンイミンには特に制限はなく、例えば、液相でハロゲン化エチルアミンを濃アルカリにより分子内閉環する方法、モノエタノールアミン硫酸エステルを熱濃アルカリにより分子内閉環する方法(以下、液相法ともいう)、あるいはモノエタノールアミンを触媒的気相分子内脱水反応させる方法(以下、気相法ともいう)により得られるエチレンイミンを用いることができる。
【0012】
気相法により得られるエチレンイミン原料としては、モノエタノールアミンの触媒的分子内脱水反応により得られるエチレンイミン含有反応混合物を簡単な蒸留操作に供して回収した粗エチレンイミンを重合用の原料とすることができる(特許文献2参照)。粗エチレンイミンを重合する場合は、エチレンイミン重合体(以下、粗エチレンイミン重合体ということもある。)を簡便な精製操作に供して、工業的に要求される品質基準に適合した高純度ポリエチレンイミンを得ることができる(特許文献5参照)。
【0013】
前記エチレンイミン含有反応混合物を高度に精製して得られる精製エチレンイミンもエチレンイミン重合体水溶液合成の原料として利用することができる。この場合、前記エチレンイミン含有反応混合物中には、目的物のエチレンイミンのほかに、未反応のモノエタノールアミンや、エチレンイミンのオリゴマー、アセトアルデヒドなどのケトン類、アセトアルデヒドと原料のモノエタノールアミンとが反応して生成するシッフ塩基などの重質不純物や、アンモニア、メチルアミンおよびエチルアミンの軽質アミン類、アセトニトリルなどの軽質不純物が含まれているので、これら不純物を高度の精製工程を経て除去し、しかる後に得られる精製エチレンイミンを重合反応に供するのである。
【0014】
高度の精製工程を経て得られる精製エチレンイミンを用いてエチレンイミン重合体を製造する技術は、高度の精製工程の実施にともなう生産コストのアップを免れず、工業的に有利とはいえないため、粗エチレンイミンがエチレンイミン原料として好適に用いられる。
【0015】
重合開始剤としては、エチレンイミンの重合に一般に用いられているものを使用できるが、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジブロモエタン、クロロホルムなどのポリハロアルカンが好適に用いられる。重合開始剤の使用量は、目的とするエチレンイミン重合体の分子量により適宜選択できる。高分子量エチレンイミン重合体の水溶液を得るためには、エチレンイミンに対して、0.5〜5質量%とするのが好適である。
【0016】
水性媒体としては、通常、水が用いられるが、水溶性有機液体、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、ジメチルホルムアミドなどと水との混合物も使用することができる。
【0017】
本発明においては、エチレンイミンを重合する際、反応溶液温度を45〜80℃、好ましくは50〜70℃の温度で行う。80℃を超える温度では、品質の安定したエチレンイミン重合体水溶液を得ることができない。なお、あまり低い温度では、重合時間が長くなって経済的でない。
【0018】
本発明において、反応熱を除去するために用いる熱媒は40℃以上に維持しながら重合を行うのが良い。好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上である。前記熱媒の温度を維持することにより、エチレンイミンの反応中に反応溶液が局部的に高粘度になることが抑制され、高効率の撹拌により局部滞留がなく均一な重合をさせることができるため、エチレンイミンの反応が均一かつ効率的に行うことができるようになる。熱媒としては、温水、水蒸気または加熱したオイル等が使用でき、工業的には温水および水蒸気が好適に用いられる。
【0019】
本発明においては、エチレンイミンの重合終了後、好ましくは供給したエチレンイミンの95%以上が消費された後、反応液を100〜150℃、好ましくは110〜140℃に昇温して、この温度範囲で熟成させる。100℃より低い温度では、品質の安定したエチレンイミン重合体水溶液を得ることができない。また、150℃より高い温度では、生成したエチレンイミン重合体の熱分解が起こり、高分子量の重合体が得られないこともある。熟成時間は、通常、1〜20時間であり、好ましくは2〜10時間である。また、反応液を熟成温度まで昇温する時間は、通常、0.2〜5時間であり、好ましくは0.5〜3時間である。
【0020】
本発明におけるエチレンイミンの重合反応の際、重合開始剤およびエチレンイミンは一括して添加してもよいが、発熱反応であるため、温度制御しながらそれぞれ連続的に供給するのがよい。
【0021】
重合反応は常圧、加圧のいずれでもよく、通常、0〜10MPaG、好ましくは0〜2MPaGで行う。反応液の熟成は、通常、0.05〜10MPaG、好ましくは0.05〜1MPaGの加圧下に行うのがよい。
【0022】
重合反応および熟成処理は、回分式(バッチ式)、半回分式、連続流通式などいずれの反応形式によっても行うことができる。連続流通式のように連続的にエチレンイミン重合体水溶液を製造する場合は管型反応器等が用いられ、回分式反応の場合は反応器等が使用される。本発明に用いる反応器としては、温度計、撹拌機、冷却装置等を備えた円筒型反応器が好適に用いられる。
【0023】
回分式反応の場合、重合反応の際に、重合物の粘度が高くなるため、除熱、拡散、反応促進のため撹拌機として、工業的にはパドル翼や高粘度用撹拌翼、例えばマックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)などが用いられ、好適にはマックスブレンド翼である。また重合により発生した反応熱を除去できるように熱媒を流すための冷却装置が付いた反応器、例えば外部ジャケット付反応器などが好適に用いられる。ジャケット式除熱の効率化を図るため縦チューブ型冷却器を用いることもでき、エチレンイミンを還流下で重合するのが好適である。
【0024】
本発明においては、反応液の最終液量(m)当りの撹拌動力(kW)で表わされる値、すなわちPV値(撹拌動力/最終液量)を0.5kW/m以上で行うのが良く、好ましくは、2kW/m以上が好ましい。尚、10kW/m超えるとエネルギーコストが高くなり経済的でない。
【0025】
本発明の製法において好ましい形態は、得られたエチレンイミン重合体水溶液の水や水溶性有機液体をさらに蒸発除去してエチレンイミン重合体水溶液を精製する工程を含む形態である。具体的には、例えば、重合反応終了後、反応器内温度が200℃を超えない温度、好ましくは100〜180℃の範囲の温度で撹拌下にエチレンイミン重合体水溶液から水分を蒸発除去する。水分の蒸発除去の程度(水溶液の濃縮の程度)については特に制限はないが、通常、エチレンイミン重合体水溶液中のエチレンイミン重合体の濃度(樹脂分)は30〜50質量%であるので、エチレンイミン重合体水溶液中の水の10〜50質量%程度を蒸発除去すればよい。これにより、気相法で得られた粗エチレンイミン原料を使用する場合は軽質アミン類、アセトニトリルの含有量がともに1ppm以下の高純度エチレンイミン重合体水溶液を得ることができる。
【0026】
なお、蒸発操作は常圧または減圧のいずれでもよいが、減圧下で行う場合には、反応器内圧力を10〜700mmHgにするのが好ましい。
【0027】
本発明の方法によって得られるエチレンイミン重合体水溶液は、臭気度が500ppm以下のエチレンイミン重合体である。好ましくは、400ppm以下、より好ましくは300ppm以下である。臭気度が500ppmを超えるとアンモニア臭、アミン臭を感じ、1000ppmを超えると作業環境において不快感が生じる場合がある。ここで、臭気度は実施例に記載の方法により定義される指標である。
【0028】
本発明の方法によればエチレンイミン重合体水溶液は、保存中の経時変化が少ない安定したエチレンイミン重合体水溶液が得られる。特に、粘度変化の少ないエチレンイミン重合体水溶液である。
【0029】
本発明の方法によって得られるエチレンイミン重合体水溶液の樹脂分(濃度)は、通常、20〜70質量%である。好ましくは40〜60質量%である。また、エチレンイミン重合体の平均重量分子量は1,000〜1,000,000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定、プルラン換算)である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「ppm」は「容積ppm」をそれぞれ示すものとする。
<臭気度の測定方法>
分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体水溶液100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。前記アンモニア用ガス検知管(例えば、ガステック社製3M)の測定範囲は10〜1000ppm範囲のものを用いる。
【0031】
<エチレンイミン重合体水溶液の調製>
実施例1
撹拌装置、温度計、エチレンイミンおよび重合開始剤仕込管を備えた容積2リットル(以下、Lとも表す)の耐圧反応器を熱媒の温水を60℃にした水浴槽中に置いた。反応器に水1200gを仕込み、反応溶液温度を55℃に加熱した後、エチレンイミン800gおよび1,2−ジクロロエタン13.2g(対エチレンイミン1.65質量%)を反応温度が80℃になるように保ちながら、反応器にフィードした。その後、水槽の水温を調節しながら反応温度を70℃で4時間撹拌したところ、原料エチレンイミンの98%が反応していた。この間の反応液温度と水浴槽の熱媒温度の差を10〜20℃に維持した。
【0032】
その後、水槽をオイル槽に変更し反応液の温度を120℃まで30分で昇温し、温度120℃、圧力0.1MPaGで5時間熟成した。120℃に昇温直後の反応液の粘度は5000mPa・s/25℃に達した。熟成中の粘度の変化は見られなかった。エチレンイミン重合体水溶液中の残存エチレンイミンは1ppm以下であり、得られたエチレンイミン重合体水溶液中の臭気度は300ppmであった。
尚、PV値(撹拌動力(kW)/最終液量(m)は2.0kW/mで行った。
【0033】
上記の方法により得られたエチレンイミン重合体水溶液1000gをオイルバス上の攪拌機、蒸気凝縮抜出し器および温度計を備えたフラスコ反応器に仕込み、常圧にて、110℃に加熱して精製を行った。留出水をカットし、樹脂分50%になったところで、分析した結果、残存するエチレンイミンは1ppm以下であった。得られた精製エチレンイミン重合体水溶液中の臭気度は50ppmであった。また、精製後の粘度は17000mPa・s/25℃であった。
【0034】
実施例2
温水温度を45℃に変更した以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体水溶液を得た。精製前後のエチレンイミン重合体水溶液の臭気度はそれぞれ500および250ppmであった。精製後のエチレンイミン重合体水溶液の樹脂分が50%になったところで粘度は16300mPa・s/25℃であった。
実施例3
PV値(撹拌動力/最終液量)を0.7kW/mに変更した以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体水溶液を得た。精製前後のエチレンイミン重合体水溶液の臭気度はそれぞれ450および150ppmであった。精製後のエチレンイミン重合体水溶液の樹脂分が50%になったところで粘度は16800mPa・s/25℃であった。
【0035】
比較例1
温水温度を35℃未満(25℃)に変更して、PV値(撹拌動力/最終液量)を0.3kW/mで行った以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体水溶液を得た。精製前後のエチレンイミン重合体水溶液の臭気度はそれぞれで800及び600ppmあった。精製後のエチレンイミン重合体水溶液の樹脂分が50%になったところで粘度は16100mPa・s/25℃であった。
【0036】
<エチレンイミン重合体水溶液の安定性評価>
実施例1、2、3及び比較例1で得られた精製前のエチレンイミン重合体水溶液を70℃に保持し、10日後の経時変化を調べた結果、実施例1及び比較例1で得られた水溶液の粘度は、それぞれ16900、16250、16800及び15500mPa・s/25℃であった。
【0037】
実施例1および比較例1から明らかなように、本発明で得られるエチレンイミン重合体水溶液は臭気がないだけでなく、さらに驚くべきことには粘度の経時的な変化がほとんどない、品質の安定なエチレンイミン重合体水溶液を得られることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のエチレンイミン重合体水溶液は、紙加工剤、接着剤、粘着剤、塗料、インキ、繊維処理剤、凝集分離剤、化粧品、トイレタリー、分散剤などの分野で安全に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中でエチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体水溶液の製造方法であって、反応溶液温度を45〜80℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を40℃以上で行うことを特徴とするエチレンイミン重合体水溶液製造方法。
【請求項2】
重合反応後に100〜150℃の温度で熟成することを特徴とする請求項1記載記載のエチレンイミン重合体水溶液製造方法。
【請求項3】
反応溶液温度が50〜70℃になるようにエチレンイミンを重合させ、次いで110〜140℃の温度で熟成することを特徴とする請求項1または2記載のエチレンイミン重合体水溶液製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の重合を、反応液の最終液量(m)当りの撹拌機の撹拌動力(kW)の比率(PV値=撹拌動力/最終液量)が0.5kW/m以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
【請求項5】
エチレンイミンを重合して得られたエチレンイミン重合体水溶液の水をさらに蒸留除去してエチレンイミン重合体水溶液を精製する工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエチレンイミン重合体水溶液の製造方法。
【請求項6】
臭気度が500ppm以下であることを特徴とするエチレンイミン重合体水溶液。ここで、臭気度とは分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体として100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。

【公開番号】特開2012−214596(P2012−214596A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80273(P2011−80273)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】