説明

エチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法及びシステム

【課題】EC製造廃液からヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを、通常の分配抽出を利用して安価でしかも効果的に回収する。
【解決手段】 ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水と無極性溶媒とを混合する混合工程と、上記混合工程において混合された混合液から水層と無極性溶媒層とを分配抽出する分配抽出工程と、上記分配抽出工程において分配抽出された水層からKIを濃縮させたKI濃縮液を回収するとともに、上記分配抽出工程において分配抽出された無極性溶媒層からECを回収する原料回収工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液から原料を回収する際に好適なエチレンカーボネート製造廃液(以下、EC製造廃液と呼ぶ。)からの原料回収方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンカーボネートは、リチウムイオン電池の電解液として需要が伸びているほか、ポリカーボネートの炭酸基の原料としても有望視されている。エチレンカーボネートを工業的に製造する場合、カーボネート化反応の触媒としてハロゲン化アルカリが用いられるが、特に活性や選択性の点からは、ヨウ化カリウムを用いるのが望ましいものとされている。例えば、特許文献1の開示技術には、触媒には、ヨウ化カリウムを用い、エチレンカーボネート溶液に調合する点が記載されている。
【0003】
ところで、このエチレンカーボネートを工業的に製造する場合には、エチレンカーボネートとヨウ化カリウムとを含有するEC製造廃液が生じる。このようなEC製造廃液は、一般に、その中に含まれる特定の成分を排水基準で定められている値以下にした後、工業排水として排出するか、又は、濃縮することにより減容化した後、産業廃棄物として処理されている。
【0004】
しかしながら、これらEC製造廃液中には、原料として再利用することが可能な、ヨウ化カリウムやエチレンカーボネートが含まれているため、これらを廃棄してしまうのは、資源の有効活用の観点から望ましいものとはいえない。また、近年における地球環境の保護の観点から、これらヨウ化カリウムやエチレンカーボネートを単に廃棄するのではなく、再利用することが求められてきている。
【0005】
特にEC製造廃液からヨウ化カリウムを選択的に濃縮分離することができれば、そこからヨウ素を回収することができる。このヨウ素は、地殻構成元素第64番目と極めて量の少ない元素であり、非常に高価であることから、貴重なヨウ素資源を医薬用途、工業用途、農業用途等の幅広い分野で再利用することが可能となる。
【0006】
また、EC製造廃液からエチレンカーボネートを選択的に分離することができれば、エチレンカーボネートを工業生産する上での収率を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−104092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、EC製造廃液からヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを効果的に回収することが可能なエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明者は、ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水とベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタン等といった特定の種類からなる無極性溶媒を混合することにより、KIが水層に、ECが無極性溶媒層に溶け込むことを新たに見出し、水の混合量を少なくすることにより水層にKIを濃縮し、無極性溶媒にECをそれぞれ分配抽出することにより、KIとECとを効果的に回収することが可能なエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法及びシステムを発明した。
【0010】
即ち、本発明に係るエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法は、ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水と無極性溶媒とを混合する混合工程と、上記混合工程において混合された混合液から水層と無極性溶媒層とを分配抽出する分配抽出工程と、上記分配抽出工程において分配抽出された水層からKIを濃縮させたKI濃縮液を回収するとともに、上記分配抽出工程において分配抽出された無極性溶媒層からECを回収する原料回収工程とを有することを特徴とする。
【0011】
即ち、本発明に係るエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収システムは、ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水と無極性溶媒とを混合する混合手段と、上記混合手段により混合された混合液から水層と無極性溶媒層とを分配抽出する分配抽出手段と、上記分配抽出手段により分配抽出された水層からKIを濃縮させたKI濃縮液を回収するKI回収手段と、上記分配抽出手段により分配抽出された無極性溶媒層を蒸留分離することにより当該無極性溶媒層に溶解しているECを回収するEC回収手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、EC製造廃液からヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを、通常の分配抽出を利用して安価でしかも効果的に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した原料回収システムの構成図である。
【図2】本発明を適用したエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法を示すフローチャートである。
【図3】水層に対するEC廃液の液量比に対する、ECの水層、無極性(ジクロロメタン)溶媒層への分配率の結果を示す図である。
【図4】水層に対するEC廃液の液量比に対する、ECの水層、ベンゼン溶媒層への分配率の結果を示す他の図である。
【図5】水層に対するEC廃液の液量比に対する、KIの水層、ベンゼン溶媒層への分配率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態として、エチレンカーボネート(EC)製造廃液から各種原料を回収するエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0015】
図1は、本発明を適用した原料回収システム1の構成を示している。この原料回収システム1では、先ずEC製造廃液を貯留するためのEC製造廃液槽11と、無極性溶媒を貯留するための無極性溶媒槽12と、水を貯留するための水槽13と、EC製造廃液槽11、無極性溶媒槽12、水槽13からそれぞれ液体が供給される第1の抽出槽21と、この第1の抽出層21からの界面の区別をするための検出器25と、この第1の抽出槽21並びに無極性溶媒槽12から液体が供給される第2の抽出層22と、この第2の抽出層22からの界面の区別をするための検出器26と、管路を開閉させるための開閉弁27と、第2の抽出層22から液体が供給される貯水槽31と、第1の抽出層21並びに第2の抽出層22から液体が供給される溶媒貯留槽32と、溶媒貯留槽32から溶媒が供給される蒸留缶23と、蒸留缶23にそれぞれ接続されたEC貯留槽33並びに溶媒貯留槽34とを備えている。
【0016】
EC製造廃液槽11は、ECとヨウ化カリウム(KI)とを含有する製造廃液を貯留するための槽であり、必要に応じて図示しないヒータを介して所定の温度に維持される。EC製造廃液は、エチレンカーボネートを工業的に製造する場合において、カーボネート化反応の触媒としてKIが使用される場合が多いことから、その製造プロセスによって排出される廃液は、かかるECとKIが混合したものとなっている。本発明を適用した原料回収システム1は、かかるECとKIとが混合したEC製造廃液のみから原料を回収することを前提としたものであり、それ以外の廃液から原料回収を行うことを何ら意図したものではない。このEC製造廃液層11から排出されるEC製造廃液は、第1の抽出層21のみに配管を介して送られることになる。
【0017】
無極性溶媒槽12は、本発明を適用した原料回収システム1において原料回収を行う際に実施する溶媒抽出に必要な無極性溶媒を貯留するための槽である。この無極性溶媒槽12において実際に貯留される無極性溶媒は、あらゆる無極性溶媒を対象としたものではなく、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等といった特定の種類に限定するものである。無極性溶媒槽12から排出される無極性溶媒は、第1の抽出槽21並びに第2の抽出槽22へと送られ、どの時点で何れの槽に送られるか、は図示しない制御バルブを介して制御されることになる。
【0018】
水槽13は、本発明を適用した原料回収システム1において原料回収を行う際に実施する溶媒抽出に必要な水を貯留するための槽である。この水槽13から排出される水は、第1の抽出槽21のみに送られることとなる。
【0019】
第1の抽出槽21は、EC製造廃液槽11からEC製造廃液が供給され、無極性溶媒槽12から無極性溶媒が供給され、さらに水槽13から水が供給される。この第1の抽出槽21は、これら供給されてくるEC製造廃液、無極性溶媒、水を撹拌するための撹拌器21aを有している。この第1の抽出槽21は、EC製造廃液、無極性溶媒、水を撹拌させた後、しばらく放置することにより、水層と無極性溶媒層の2層に分離させる。そして、この分離された水層と無極性溶媒層とを検出器25により検出し、図示していない制御バルブを開閉させることにより分離する。この第1の抽出槽21により分離された水層は、第2の抽出槽22へ送られ、無極性溶媒層は、溶媒貯留槽32へと送られる。
【0020】
第2の抽出槽22は、第1の抽出槽21から抽出された水層を構成する水が供給され、また無極性溶媒槽12からは無極性溶媒が供給される。この第2の抽出槽22には、液体を撹拌するための撹拌器22aを有している。この第2の抽出槽22においても第1の抽出槽21と同様に分配抽出を行う。そして、この第2の抽出槽22において分離された水層と無極性溶媒層とを検出器26によりそれぞれ図示していない制御バルブを開閉させることにより抽出する。この第2の抽出槽22により分離された水層は、貯水槽31へ送られ、無極性溶媒層は、溶媒貯留槽32へと送られる。
【0021】
貯水槽31は、第2の抽出槽22から送られてくる水を貯留するための槽である。この貯水槽31に貯水された水は、タンクコンテナ30を介して外部へ運ばれてヨウ素精製工場にてヨウ素を回収されることになる。なお、このタンクコンテナ30を介してヨウ素精製工場にてヨウ素回収を行う場合に限定されることなく、この原料回収システム1内にヨウ素回収設備を設けてヨウ素回収を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0022】
溶媒貯留槽32は、第1の抽出槽21並びに第2の抽出槽22から送られてくる無極性溶媒層を構成する無極性溶媒を貯留するための槽である。この溶媒貯留槽32において貯留された無極性溶媒がある量まで達した場合には、蒸留缶23へと送られる。
【0023】
蒸留缶23は、溶媒貯留槽32から送られてくる無極性溶媒とエチレンカーボネートを蒸留する。この蒸留缶23は、2つ設けられているが、これに限定されるものではない。その結果、この無極性溶媒に含まれているECを分離し、これをEC貯留槽33へと送出するとともに、残りの無極性溶媒は、溶媒貯留槽34へと送出する。
【0024】
次に、本発明を適用したエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法について図1並びに図2のフローチャートを用いて詳細に説明をする。
【0025】
先ず、EC製造廃液槽11に貯留されているEC製造廃液、無極性溶媒槽12に貯留されている無極性溶媒、水槽13に貯留されている水を第1の抽出槽21において混合する(ステップS11)。
【0026】
次にステップS12へ移行して分配抽出を行う。先ず撹拌器21aにより混合溶液を撹拌し、その後放置することで無極性溶媒層、水層に分離される。これにより、EC製造廃液中のECの大半は無極性溶媒層へ溶け込み、KIの大半は水に溶け込むことになる。
【0027】
次にステップS13に移行して分相を行う。このステップS13では、無極性溶媒層、水層を互いに分離し、無極性溶媒層は、溶媒貯留槽32へ、水層は貯水槽31へと送ることになる。
【0028】
このステップS12、13においては、第1の抽出槽21のみならず、第2の抽出槽22を用いて複数段階で分配抽出、分相を行うようにしてもよい。その結果、EC、KIの分配率をより向上させることが可能となる。
【0029】
分離した水槽にはEC廃液中のKIがほとんど抽出され、水添加量によりその濃度が異なるため、その後のステップS14においては、必要に応じ濃縮プロセスを通じてKI濃縮液を得ることとなる。水添加量がEC廃液量の10分の1以下であれば、減容化することができて搬送効率を向上させることができ、ヨウ素の回収効率を向上させることができ、また設備をより縮小させることも可能となる。貯水槽31に貯水された水層は、タンクコンテナ30により外部に搬送され、ヨウ素工場に運ばれヨウ素回収が可能となる。その結果、KIが濃縮されたKI濃縮液を得ることが可能となる。
【0030】
なお、このKI濃縮液を得る過程では、水分を蒸発させることにより実現する場合に限定されるものではなく、ステップS11において混合する水層の量を少なくすることにより、KI濃縮液を得ることも可能である。このKI濃縮液からヨウ素を回収することで、医薬用途、工業用途、農業用途等の幅広い分野で再利用することが可能となる。また、このステップS14において蒸発させた水は、ステップS11の混合用の水として用いるようにしてもよい。
【0031】
また、分離した無極性溶媒層をステップS15において蒸留分離する。この蒸留分離は蒸留塔23において行い、無極性溶媒とECとを分離する。分離したECはEC貯留槽33において貯留され、再利用される。その結果、エチレンカーボネートを工業生産する上での収率を向上させることが可能となる。
【0032】
また、ステップS15において蒸留分離された無極性溶媒は、再びステップS11においてEC製造廃液や水と混合するようにしてもよい。これにより、無極性溶媒のリサイクルを行うことが可能となる。なお、このステップS15では、無極性溶媒層を蒸留分離することに限定することなく、公知のいかなる手法に基づいてECと無極性溶媒を分離するようにしてもよい。
【実施例1】
【0033】
以下、ステップS11において混合すべき無極性溶媒について行った実験的検討について詳細に説明をする。
【0034】
表1は、無極性溶媒の種類とその物性について示している。無極性溶媒としては、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンとし、比較のためにエチレンカーボネート、水の物性も示している。物性は、それぞれの沸点、密度、水に対する溶解度、誘電率を示しており、分類としては極性溶媒か、無極性溶媒かを示している。
【0035】
【表1】

【0036】
また、表2、表3に実際に行った分配実験の結果を示す。この分配実験では、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンの各無極性溶媒について、実際にEC製造廃液と水とを混合させ、それぞれの分配率を実験的に測定した。ちなみに、EC製造廃液:無極性溶媒:水の添加割合は、1:1:1としている。実際には、このEC製造廃液、無極性溶媒、水についてそれぞれ20mlを採取し、容器内において混合させている。これらの各溶液を混合した後、撹拌を行い、その後放置することで無極性溶媒からなる無極性溶媒層と、水層とに自然に分離されるのを待った。
【0037】
無極性溶媒層には主としてECが、また水層には主としてKIが溶け込んでいる。実際に何れの層にどの割合でEC、KIが溶け込んでいるかは、表2に示すように、液量ml、EC濃度、KI濃度を測定することにより確認している。また、表3は、これらを100分率で示したものである。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表2、3に示すように、ECは、無極性溶媒層により多く溶け込み、水層に溶け込む割合は小さかった。またKIは大半が水層に溶け込み、無極性溶媒層に溶け込んだのは僅かであった。
【0041】
特にジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンは、EC、KIの無極性溶媒層、水層への分配率がより明確になっていることが分かった。
【0042】
なお、トルエン、O−ジクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、1,1,1−トリクロロエタン、n−ヘキサン、四塩化炭素、トリエチルアミンについても無極性溶媒として利用可能か否か検討を行ったが、いずれもECがこれらの溶媒に殆ど溶け込まなかった。ECは元々極性を持つため、通常なら極性溶媒である水層に溶け込むため、上述した溶媒に溶け込まないことは十分に理論的裏づけが取れる。
【0043】
これに対して、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンについては、無極性溶媒でありながら、ECがこれらに溶け込むことが新たに示されていた。無極性溶媒にECが溶け込むことによる意義は大きい。無極性溶媒は水と分離するものであることから、KIは水に溶け込み、ECが無極性溶媒に溶け込むことで、分配抽出法を用いてこれらを分離することが可能となる。
【0044】
本発明では、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンについて、ECが溶け込むことを見出したことのみならず、KIがこれに溶け込まずに水層に溶け込むことを新たに見出したことの意義も大きい。即ち、表3に示すような分配率をもってEC、KIが明確に分離できることを新たに見出し、これを製造プロセスにおいて取り込んだものである。
【実施例2】
【0045】
液量比に対する分配抽出実験の結果について、以下説明をする。無極性溶媒としては、1,2−ジクロロエタンを使用する。EC製造廃液:1,2−ジクロロエタン:水の比率を、1:1:1、1:1:1/2、1:1:1/4、1:1:1/10、1:1:1/20の割合でそれぞれ容器内で混合し、容器の振とう時間を1時間、その後の静置時間を30分とした。
【0046】
図3は、水層に対するEC廃液の液量比に対する、ECの水層、溶媒層への分配率の結果を示している。
【0047】
水に対するEC製造廃液の液量比が増加するにつれて、ECはより無極性溶媒層に多く溶け込み、水層へ溶け込む比率が低下していることが示されている。このため、無極性溶媒としては、1,2−ジクロロエタンを使用する場合において、分配比の改善を図りたい場合には、水に対するEC廃液の比率を10倍以上とすることが望ましいものといえる
【実施例3】
【0048】
液量比に対する分配抽出実験の他の結果について、以下説明をする。無極性溶媒としては、ベンゼンを使用する。EC製造廃液:ベンゼン:水の比率を、1:1:1、2:2:1、4:4:1、10:10:1、15:15:1、20:20:1の割合でそれぞれ容器内で混合し、容器の振とう時間を1時間、その後の静置時間を30分とした。
【0049】
図4は、水層に対するEC廃液の液量比に対する、ECの水層、溶媒層への分配率の結果を示している。図5は、水層に対するEC廃液の液量比に対する、KIの水層、溶媒層への分配率の結果を示している。
【0050】
図4に示すように、水に対するEC製造廃液の液量比が増加するにつれて、ECはより無極性溶媒層に多く溶け込み、水層へ溶け込む比率が低下していることが示されている。また、図5に示すようにKIは、水に対するEC製造廃液の液量比が増加するにつれて、徐々に無極性溶媒層への溶け込み比率が増大する傾向も示されている。
【0051】
このため、無極性溶媒としては、ベンゼンを使用する場合において、分配比の改善を図りたい場合には、水に対するEC廃液の比率を10倍以上とすることが望ましいものといえる
【符号の説明】
【0052】
1 原料回収システム
11 EC製造廃液槽
12 無極性溶媒槽
13 水槽
21 第1の抽出槽
22 第2の抽出層
23 蒸留缶
25 制御バルブ
26 制御バルブ
31 貯水槽
32 溶媒貯留槽
33 EC貯留槽
34 溶媒貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水と無極性溶媒とを混合する混合工程と、
上記混合工程において混合された混合液から水層と無極性溶媒層とを分配抽出する分配抽出工程と、
上記分配抽出工程において分配抽出された水層からKIを濃縮させたKI濃縮液を回収するとともに、上記分配抽出工程において分配抽出された無極性溶媒層からECを回収する原料回収工程とを有すること
を特徴とするエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法。
【請求項2】
上記混合工程では、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンの何れかからなる無極性溶媒を混合すること
を特徴とする請求項1記載のエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法。
【請求項3】
上記原料回収工程において無極性溶媒層を蒸留分離することにより無極性溶媒を再回収し、これを上記混合工程において上記EC製造廃液に混合すること
を特徴とする請求項1又は2記載のエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収方法。
【請求項4】
ヨウ化カリウム(KI)とエチレンカーボネート(EC)とを含有するEC製造廃液に、水と無極性溶媒とを混合する混合手段と、
上記混合手段により混合された混合液から水層と無極性溶媒層とを分配抽出する分配抽出手段と、
上記分配抽出手段により分配抽出された水層からKIを濃縮させたKI濃縮液を回収するKI回収手段と、
上記分配抽出手段により分配抽出された無極性溶媒層を蒸留分離することにより当該無極性溶媒層に溶解しているECを回収するEC回収手段とを備えること
を特徴とするエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収システム。
【請求項5】
上記混合手段は、ベンゼン、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタンの何れかからなる無極性溶媒を混合すること
を特徴とする請求項4記載のエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収システム。
【請求項6】
上記混合手段は、上記EC回収手段により無極性溶媒層を蒸留分離することにより再回収された無極性溶媒を更に上記EC製造廃液に混合すること
を特徴とする請求項4又は5記載のエチレンカーボネート製造廃液からの原料回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162496(P2012−162496A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24899(P2011−24899)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(392000888)合同資源産業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】