説明

エチレンコポリマー変性ポリプロピレン及び造形物品

組成物およびこの組成物を含むかまたはこの組成物から製造された造形物品が開示されている。組成物は、(a)少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、(b)少なくとも1種のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンを含み;Xはビニルアセテートおよびアルキル(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーであり;およびYは、一酸化炭素;二酸化硫黄;アクリロニトリル;無水マレイン酸;マレイン酸ジエステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、およびこれらの塩;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルなどの1つまたは複数の追加のコモノマーであり、ここで、E/X/Yコポリマーに基づいて、Xは0〜50重量%であり、Yは0〜35重量%であり、XおよびYは両方が0%であることはできず、およびEが残量である)とを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーなどのエチレンコポリマーで変性されたポリプロピレンを含む組成物およびこれらから製造された造形物品(shaped article)に関する。
【背景技術】
【0002】
向上した機械特性を有するポリプロピレン組成物が、少量の添加剤をポリプロピレンに添加することにより調製されてきた。例えば、国際公開第2003/048434号パンフレットには、0.1〜20%の添加剤をポリプロピレンに添加することによるポリプロピレンモノフィラメントの製造方法が開示されている。欧州特許第0080274B1号明細書には、0.1〜10%の不混和性の他のポリマーを、ポリプロピレン(特に、ポリヘキサメチレンアジパミド)の溶融物に添加することによるポリプロピレン溶融スパン繊維の製造方法が開示されている。ポリプロピレンはまた、少量の液晶ポリマー、ポリエチレン、ポリエチレングリコールおよびナイロン66の添加により変性されてきた(Journal of Applied Polymer Science、1986年、31(8)、2753〜68頁)。ポリプロピレンおよびエチレン/アルキルアクリレートコポリマーのブレンドが既に開示されている(例えば、米国特許第3,433,573号明細書を参照のこと)。
【0003】
熱可塑性材料は、通例、自動車部品、食品容器、看板、包装材材料等などの用途に利用され得る、種々の造形物品の生産に用いられる。ポリプロピレン(PP)ホモポリマーを含む造形物品が、溶融高分子材料から、射出成形、圧縮成形、吹込成形、異形押出し成形等などの技術分野において周知である多数の溶融押出し成形法によって調製され得る。
【0004】
造形物品はまた、熱可塑性フィルムまたはシートが、その軟化温度より高温で加熱され、および所望の形状に成形される、熱成形法によって調製され得る。フィルムまたは積層体のこの成形シートは、通常は成形ウェブとして称される。種々のシステムおよび装置が熱成形法において用いられ、多くの場合、成形ウェブの予め定められた形状への適切な成形を提供する、真空アシストおよびプラグアシストコンポーネントが伴う。熱成形法およびシステムは技術分野において周知である。
【0005】
ポリプロピレンを含む成形物品の例としては、容器のための、射出成形されたまたは圧縮成形されたキャップまたは栓が挙げられる。栓を有する容器は周知であり、および広く多様な用途を有する。例えば、これらは薬剤または医薬品を内包し得る。これらは、水、ミルク、炭酸飲料あるいは非炭酸飲料等などの飲料、またはワインあるいは蒸留酒(例えばジンまたはウィスキー)を内包し得る。これらは食料を内包するために用いられ得る。これらはまた、石油製品、油、または髪用ケア製品、洗剤、漂白剤等などの家庭用製剤または薬品を内包するために用いられ得る。本発明は、これらの使用分野のすべて、およびさらにその他の多数に適用可能である。栓またはキャップの機能は、容器の内容物を、容器からの、または容器内への漏れから適切にシールすることである。多くの場合において、キャップは、消費者が容器の内容物にアクセスするに伴う繰返しの取り外しおよび再取り付け用に設計されている。
【0006】
このような容器用の栓またはキャップは、多くの場合、PPなどの熱可塑性組成物から、射出成形または圧縮成形により調製される。PPキャップが例えば、米国特許第4,550,843号明細書;米国特許第4,770,309号明細書;米国特許第4,807,772号明細書および米国特許第5,454,476号明細書において開示されている。
【0007】
典型的にはポリプロピレンキャップは、頂部と、容器のネックの周囲に締められる従属スカートかとから構成される。いくつかの事例においては、キャップは、容器にスクリュー栓および/またはスナップ栓を提供する、連続または非連続のねじ山を含み得る。これらはまた、計量機構、タンパーエビデンス機構および小児安全機構が組み合わされていてもよい。他の修飾的または機能的機構がまた存在し得る。これらはまた、他の材料との組み合わせを包含し得る(例えば、金属蓋部、またはポリプロピレン以外のプラスチック材料を利用した部分を有するキャップ)。PPキャップは、ライナーレスであってもよく(米国特許第4,770,309号明細書を参照のこと)、またはキャップのPPシェルに挿入されたまたは圧縮成形された個別のライナーを有していてもよい(米国特許第4,807,772号明細書を参照のこと)。
【0008】
ポリプロピレンキャップは、高速キャッピング作業に関連する応力に耐える十分な柔軟性を保持する一方で、容器の組み立ておよび保管中に構造的完全性を栓に提供するに十分な剛性および強度を有することが好ましい。柔軟性はまた、一定の小児安全キャップ設計におけるものなどの容器に、良好なシールを提供するのに好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリプロピレンキャップに伴う問題は、許容し得ない破損割れ速度である。従って、引張破断負荷、テナシティ(引張破断応力)および破断点伸びなどの向上した機械特性を有するPP組成物およびこれらから製造されたキャップなどの造形物品を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(a)ポリプロピレンホモポリマー;ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー;およびポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)0.2〜30重量%の少なくとも1種のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンを含み、Xはビニルアセテートおよびアルキル(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択されるモノマーであり、およびYは、一酸化炭素;二酸化硫黄;アクリロニトリル;無水マレイン酸;マレイン酸ジエステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、およびそれらの塩;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群から選択される1つまたは複数の追加のコモノマーであり;ここで、Xは、E/X/Yコポリマーの0〜50重量%であり、Yは、E/X/Yコポリマーの0〜35重量%であり、ここで、XおよびYの重量%両方が0であることはできず、およびEが残量を構成する)とを含むかまたはこれらから製造される組成物を提供する。組成物は、任意により、(c)0.01〜40重量%の、充填剤、艶消剤、紫外線安定剤、顔料、および他の添加剤などの少なくとも1種の追加の成分を含む。
【0011】
この組成物から製造された造形物品もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
「コポリマー」とは、2つ以上の異なるモノマーを含有するポリマーを意味する。用語「ジポリマー」および「ターポリマー」とは、2種類および3種類の異なるモノマーのみをそれぞれ含有するポリマーを意味する。句「種々のモノマーのコポリマー」とは、その単位が種々のモノマーに由来するコポリマーを意味する。
【0013】
好ましい実施形態は、(a)少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)0.1〜3重量%の少なくとも1種のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとを含む組成物から調製された造形物品である。代替的に、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの量は、1〜3重量%;好ましくは0.2〜1.5重量%、あるいは1〜1.5重量%である。エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの量は、0.2〜0.5重量%、特に0.2〜1重量%、または代替的に、1を超え5重量%以下であることも好ましい。
【0014】
ポリプロピレンポリマーとしては、プロピレンの、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマーおよびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。プロピレンのコポリマーとしては、プロピレンとエチレン、1−ブテン、2−ブテンおよび種々のペンテン異性体等などの他のオレフィンとのコポリマーが挙げられ、ならびに、プロピレンとエチレンとのコポリマーが好ましい。プロピレンのターポリマーとしては、プロピレンとエチレンとおよび他の1種のオレフィンとのコポリマーが挙げられる。統計的コポリマー(statistical copolymers)としても知られているランダムコポリマーは、プロピレンおよびコモノマーが、プロピレン対コモノマーの供給比に対応する比で高分子鎖全体にランダムに分布しているポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントと、例えば、プロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーからなる鎖セグメントとから形成されている。用語「ポリプロピレン」は、本願明細書において用いられるとき、一般に、上述のプロピレンを含むポリマーのいずれかまたはすべてを指すために用いられる。
【0015】
ポリプロピレンホモポリマーまたはランダムコポリマーは、公知の方法いずれかによって生産されることができる。例えば、ポリプロピレンポリマーは、有機金属化合物および三塩化チタンを含有する固形分をベースとするチーグラーナッタ触媒系の存在下において調製されることができる。
【0016】
ブロックコポリマーは、プロピレンが一般に先ず第1段階で単独で重合されると共に、プロピレンおよびエチレンなどの追加のコモノマーが、次いで、第1段階で得られたポリマーの存在下において第2段階で重合される以外は、同様に生産されることができる。これらの段階の各々は、例えば、炭化水素希釈剤中の懸濁液、液体プロピレン中の懸濁液、または気相中において、連続的にまたは非連続的に、同一の反応器中あるいは個別の反応器中において実施することができる。
【0017】
ブロックコポリマーおよびそれらの生産に関する追加の情報は、著作「Block Copolymers」(D.C.AllportおよびW.H.Janes編、1973年にApplied Science Publishers Ltdから発行)のチャプター4.4および4.7に特に見出し得る。
【0018】
本願明細書において記載の通り、ポリエステル変性剤として用いられたエチレンコポリマーとしては、エチレン/ビニルアセテートジポリマー、エチレン/ビニルアセテートターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートジポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、官能化エチレンコポリマー、エチレン/酸コポリマー、およびこれらの塩が挙げられる。
【0019】
上に開示した通り、これらのエチレンコポリマーは、E/X/Yコポリマーとして定義することができ、ここで、Eはエチレンを含み、Xは、ビニルアセテートおよびアルキル(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択されるコモノマーであり、およびYは1つまたは複数の追加のコモノマーである。
【0020】
用語「エチレン/ビニルアセテートジポリマー」は、エチレンおよびビニルアセテートの共重合から誘導されるコポリマーを包含する。
【0021】
用語「エチレン/ビニルアセテートターポリマー」は、エチレン、ビニルアセテートおよび追加のコモノマーの共重合から誘導されるコポリマーを包含する。
【0022】
エチレン/ビニルアセテートコポリマーに組み込まれるビニルアセテートコモノマーの相対量は、原理上、総コポリマーの数重量パーセントから40重量パーセントもの多さ以下で、またはさらにより多くで、幅広く異なることができる。
【0023】
用語「(メタ)アクリル酸」および略語「(M)AA」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に、用語「(メタ)アクリレート」および「アルキル(メタ)アクリレート」は、メタクリル酸および/またはアクリルのアルキルエステルを意味し、ここでアルキル部位は、1個〜6個の炭素原子を含有していることが好ましい。アルキルアクリレートの例としては、メチルアクリレート(略してMA)、エチルアクリレート(略してEA)およびブチルアクリレート(略してBA)が挙げられる。
【0024】
用語「エチレン/アルキル(メタ)アクリレートジポリマー」は、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合から誘導されるコポリマーを包含する。
【0025】
用語「エチレン/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー」は、エチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび追加のコモノマーの共重合から誘導されるコポリマーを包含する。
【0026】
用語「エチレン/アルキルアクリレートコポリマー」は、エチレンおよびアルキルアクリレートのコポリマーを包含し、ここで、アルキル部位は1個〜6個の炭素原子を含有する。アルキルアクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが挙げられる。「エチレン/メチルアクリレート(略してEMA)」は、エチレン(略してE)およびメチルアクリレート(略してMA)のコポリマーを意味する。「エチレン/エチルアクリレート(略してEEA)」は、エチレン(略してE)およびエチルアクリレート(略してEA)のコポリマーを意味する。「エチレン/ブチルアクリレート(略してEBA)」は、エチレン(略してE)およびブチルアクリレート(略してBA)のコポリマーを意味する。
【0027】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーに組み込まれるアルキルアクリレートコモノマーの相対量は、原理上、総コポリマーの数重量パーセントから40重量パーセントもの多さ以下で、またはさらにより多くで、幅広く異なることができる。同様に、アルキル基の選択は、原理上ではまた、単純なメチル基から、顕著な分枝を有するまたは有さない6個以下の炭素原子アルキル基の間で異なる。アルキルアクリレートエステルコモノマー中に存在するアルキル基の相対量および選択は、得られるコポリマーが、どのようにおよびどの程度、熱可塑性組成物において極性高分子構成成分として見なされるかに、寄与しているとみなすことができる。
【0028】
好ましくは、アルキルアクリレートコモノマー中のアルキル基は1個〜4個の炭素原子を有し、およびこのアルキルアクリレートコモノマーは、ターポリマーの5〜40重量パーセント、好ましくは10〜35重量%の濃度範囲を有する。最も好ましくは、アルキルアクリレートコモノマー中のアルキル基はメチルである。
【0029】
高分子組成物の極性に対するXコモノマーの寄与に追加して、エチレンコポリマー中に存在するYコモノマーの相対量および選択は、得られるコポリマーが、どのようにおよびどの程度、熱可塑性組成物において極性高分子構成成分として見なされるかに、寄与しているとみなすことができる。上に開示したとおり、Yコモノマーはまた、コポリマーの全体的な極性に対するその寄与に追加して、官能基をエチレンコポリマーに提供し得る(官能化エチレンコポリマーを形成するために)。
【0030】
本発明において有用なE/X/YコポリマーにおいてY成分として好適なのは、アクリル酸またはメタクリル酸である。エチレンなどのオレフィンと、アクリル酸またはメタクリル酸などの不飽和カルボン酸とのコポリマーは、本発明のとの関連において、エチレン/酸コポリマーと称される。例えば、「エチレン/(メタ)アクリル酸(略してE/(M)AA)」は、エチレン(略してE)/アクリル酸(略してAA)および/またはメタクリル酸(略してMAA)のコポリマーを意味する。本発明において有用なエチレン/酸コポリマーとしては、約2〜約30重量%の(M)AAを有するE/(M)AAジポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは、本発明との関連において、E/X/Yコポリマーとして定義することができ、ここで、Xの重量%は0でありおよびYは、約2〜約30重量%の重量%のアクリル酸またはメタクリル酸であり、残りがエチレンである。
【0031】
エチレン/酸コポリマーはまた、アルキル(メタ)アクリレートから選択される追加のコモノマーを含有するターポリマーであり得る。これらの酸ターポリマーは、α−オレフィンがエチレンである場合、E/X/Yコポリマーとして表記することができ、ここで、Eはエチレンであり、Xは、C1〜C6アルキルアクリレートまたはメタクリレートエステルからなる群から選択され、およびYは、アクリル酸またはメタクリル酸である。XおよびYは、広い範囲の割合で存在することができ、Xは典型的にはターポリマーの約50重量パーセント以下およびYは典型的にはポリマーの約35重量パーセント(重量%)以下である。これらのエチレン/酸ターポリマーとしては、例えば、エチレン/n−ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ターポリマー、エチレン/イソ−ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ターポリマー、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ターポリマー、およびエチレン/エチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ターポリマーが挙げられる。
【0032】
上記のエチレン/酸コポリマーは、少なくとも部分的に金属塩に中和され得る。リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、または亜鉛などの少なくとも1種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオン、またはこのようなカチオンの組み合わせが、コポリマーの酸性基のいくらかの部分を中和するのに用いられ、その結果増強された特性を示す熱可塑性樹脂が得られる。これらの中和された酸コポリマーは、通例、アイオノマー樹脂(「アイオノマー」)として称される。
【0033】
本発明において有用なアイオノマーとしては、約2〜約30重量%の(M)AAを有するE/(M)AAジポリマーから調製されるものが挙げられる。これらのコポリマーは、本発明との関連において、E/X/Yコポリマーとして定義されることができ、ここで、Xの重量%は0であり、およびYは、約2〜約30重量%の重量%のアクリル酸またはメタクリル酸であり、残りがエチレンであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンの少なくとも1種によって、少なくとも部分的に中和されている。カチオンは、リチウム*、ナトリウム*、カリウム、マグネシウム*、カルシウム、バリウム、鉛、錫、または亜鉛**は好ましいカチオンを示す)、またはこのようなカチオンの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
種々のアイオノマー樹脂が、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington、Delaware)のE.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)から商品名「Surlyn(登録商標)」で、およびExxon Corporationから商品名「Escor(登録商標)」および商品名「lotek」で販売されている。
【0035】
本願明細書において用いられた用語「官能化エチレンコポリマー」は、例えば共有結合によって他の成分と反応することができる、無水物およびエポキシドなどの反応性官能基を取り入れるエチレンのコポリマーを表す。
【0036】
本発明において有用なE/X/YコポリマーにおけるY成分としても好適なのは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルアルコールなどのC1〜C4アルコールのエステルを包含する、マレイン酸ジエステルまたはモノエステル(マレイン酸半エステル)である。好ましくは、エチレン/マレイン酸エステルコポリマーとしては、無水マレイン酸が挙げられる。また好ましくは、エチレン/マレイン酸エステルコポリマーとしては、マレイン酸半エステルが挙げられる。
【0037】
無水マレイン酸−グラフト化エチレンコポリマー(マレイン酸化ポリエチレン)は、ポリエチレンなどのエチレンコポリマーが無水マレイン酸で処理されたものであり、および相容化剤として技術分野において周知である。本願明細書において記載されたグラフト化E/X/Yコポリマーとしては、E成分の一部分が、ブテン、ヘキセンまたはオクタンなどのエチレン以外のα−オレフィンを含んで、コポリマーの密度が変性されたコポリマーが挙げられる。無水マレイン酸変性直鎖高密度ポリエチレンの例は、商品名Polybond(登録商標)3009で販売されている製品であって、Crompton Corporationから入手可能である。類似のマレイン酸化ポリオレフィンが、商品名Fusabond(登録商標)で販売されており、DuPontから入手可能である。好ましいグラフト化E/X/Yコポリマーは、無水マレイン酸が約0.3〜約2重量%の範囲で組み込まれたものである。
【0038】
無水マレイン酸などの反応性官能基を含むエチレンコポリマーはまた、高圧フリーラジカルプロセスによって容易に得ることができる。このようなコポリマーの調製に用いるのに好適な高圧プロセスが、例えば、米国特許第4,351,931号明細書に記載されている。無水マレイン酸−官能化ポリマーの生成に伝統的に用いられてきた、第2のプロセス段階のグラフト化を不要とする。さらに、この方法を用いる2重量%を超えるレベルでの無水マレイン酸の組み込みを達成するのは、グラフト化によるよりも容易である。エチレンおよびこのプロセスにより調製された官能性コモノマーから調製された好ましいコポリマーは、コポリマーが約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーを含むものである。特筆すべきは、エチレン/無水マレイン酸(E/MAH)またはエチレン/エチル水素マレイン酸エステル(エチレン/マレイン酸モノエステル、またはE/MAMEとしても知られている)コポリマーなどのコポリマーであって、高圧オートクレーブにおいて直接的に合成されるものである。
【0039】
本発明において有用なE/X/YターポリマーにおいてY成分としてまた好適なのは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはグリシジルビニルエーテル(すなわち2,3−エポキシ−1−プロパノールから誘導された部位を含有するコモノマー)などのエポキシ−官能化エチレンコモノマーである。
【0040】
本発明において有用な好ましいエポキシ−官能化コポリマーは、式:E/X/Yで表し得、式中、Eは、エチレンに由来のコポリマー単位−−(CH2CH2)−−であり、Xは、コポリマー単位−−(CH2CR12)−−(式中、R1は水素またはメチルであり、およびR2は炭素原子1〜10個のカルボアルコキシ(Xは、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートから誘導される)またはアセチルオキシであり)であり、およびYは、コポリマー単位−−(CH2CR34)−−(式中、R3は水素またはメチルであり、およびR4はカルボグリシドキシまたはグリシドキシ(Yは、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはグリシジルビニルエーテルから誘導される)である)である。
【0041】
本発明のこの実施形態について好ましくは、有用なE/X/Yコポリマーは、Xが前記E/X/Yコポリマーの5〜50重量%、Yが前記E/X/Yコポリマーの0.3〜15重量%、Eが残りであるものである。
【0042】
より好ましくは、エポキシ部位(例えば、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート)を含有するコモノマーが約0.3(または約0.5)重量%〜約8(または約10または約12)重量%であり、およびアルキルアクリレートが、エポキシ−官能化エチレンコポリマーの総量の約5〜約40(好ましくは約20〜約40または約25〜約35)重量%である。
【0043】
特筆すべきはエチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(E/MA/GMA)、エチレン/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(E/EA/GMA)およびエチレン/n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(E/n−BA/GMA)などのコポリマーである。
【0044】
エポキシド含有モノマー、およびより好ましくはグリシジル含有モノマーが、モノマーの並行反応によって反応剤コポリマーに組み込まれており、およびグラフト重合によってはポリマーにグラフト化されていないこともまた好ましい。
【0045】
本発明において有用なE/X/YコポリマーにおいてY成分としてまた好適なのは、一酸化炭素、二酸化硫黄およびアクリロニトリルからなる群から選択されるコモノマーである。特筆すべきは、エチレン/メチルアクリレート/一酸化炭素(E/MA/CO)、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素(E/EA/CO)およびエチレン/n−ブチルアクリレート/一酸化炭素(E/n−BA/CO)、およびエチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素(E/VA/CO)などのターポリマーである。
【0046】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、ポリマー技術分野において周知である方法によって、オートクレーブまたは管型反応器のいずれか一方を用いて調製することができる。共重合はオートクレーブ中での連続的方法として実施することができ、エチレン、アルキルアクリレート、および任意によりメタノールなどの溶剤(米国特許第5,028,674号明細書を参照のこと)が、攪拌下のオートクレーブ(米国特許第2,897,183号明細書に開示されているタイプ)に、開始剤と共に、連続的に供給される。添加速度は、コポリマーの目標組成物を得るために必要な、重合温度、圧力、使用されたアルキルアクリレートモノマー、および反応混合物におけるモノマーの濃度などの可変要素に依存することとなる。いくつかの場合において、プロパンなどのテロゲンを用いることが、分子量を制御するために望ましい場合がある。反応混合物は、連続的にオートクレーブから除かれる。反応混合物が反応容器から出た後、コポリマーは、未反応モノマーおよび溶剤(溶剤を用いた場合)から、例えば、未重合材料および溶剤を減圧下および高温で蒸発させるといった従来の手段により分離される。
【0047】
管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、一般に技術分野において周知であるとおり、より従来のオートクレーブ製エチレン/アルキルアクリレートから区別されることができる。従って、用語または句「管型反応器製」エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、本発明の目的については、管型反応器等において高圧および高温で製造されたエチレンコポリマーを表し、ここで、対応するエチレンおよびアルキルアクリレートコモノマーについての非類似の反応速度論の固有の結果は、管型反応器内の反応流路に沿った意図的なモノマーの導入によって緩和または補償される。一般に技術分野において認識されている通り、このような管型反応器共重合技術は、ポリマー主鎖に沿ったより大きな相対的な不均一性度を有するコポリマー(コモノマーのより塊状の分布)を製造し、長鎖分枝の存在を低減する傾向にあり、および同一のコモノマー比で、高圧攪拌オートクレーブ反応器において製造されたものより高い融点により特徴付けられるコポリマーを製造する。管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、一般に、オートクレーブ製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーより頑強でより弾性である。この性質の管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーが、DuPontから市販されている。
【0048】
前述の管型反応器エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの実際の生産は、高圧、管型反応器において、高温で、チューブに沿った反応剤コモノマーの追加の導入を伴うことが好ましく、および単に攪拌下の高温および高圧オートクレーブタイプ反応器においては生産しない。しかしながら、類似のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー材料は、一連のオートクレーブ反応器において製造されることができ、ここで、米国特許第3,350,372号明細書、米国特許第3,756,996号明細書、および米国特許第5,532,066号明細書において教示されている通り、反応剤コモノマーのマルチゾーン導入によってコモノマーの置き換えが達成され、およびそれ自体として、これらの高融点材料は、本発明の目的について均等であると考察され得る。
【0049】
管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを、従来のオートクレーブ製コポリマーと比して例示すると共に特徴づけるために、以下の市販されているエチレン/メチルアクリレートコポリマーの、関連した融点データを伴う列挙は、管型反応器製EMA樹脂は、ポリマー鎖に沿った大きく異なるMA分布により、オートクレーブ製EMAに対してより著しく高い融点を有していることを示す。
【0050】
オートクレーブ製コポリマー
EMA−A1(21.5重量%MA)、mp=76℃
EMA−A2(24重量%MA)、mp=69℃
EMA−A3(20重量%MA)、mp=80℃
EMA−A4(24重量%MA)、mp=73℃
【0051】
管型反応器製コポリマー
EMA−T1(25重量%MA)、mp=88℃
EMA−T2(20重量%MA)、mp=95℃
【0052】
管型反応器製およびオートクレーブ製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの間の差異に関する追加の考察については、Richard T.Chou、Mimi Y.KeatingおよびLester J.Hughes、「High Flexibility EMA made from High Pressure Tubular Process」、Annual Technical Conference−Society of Plastics Engineers(2002年)、第60回(第2巻)、1832〜1836頁を参照のこと(CODEN:ACPED4 ISSN:0272−5223;AN 2002:572809;CAPLUS)。
【0053】
本発明における使用に好適な、管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーなどのエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、DuPontから入手可能である。
【0054】
本発明において有用なエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、数値的に画分換算で約10以下のメルトインデックスを有するEMAが証明しているように、分子量が有意に変化することができる。ポリプロピレンの変性に用いられるエチレン/アルキルアクリレートコポリマー成分のグレードの特定の選択は、予期される変性剤およびポリプロピレンのメルトインデックスなどの平衡要素によって影響され得る。エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの選択における考慮すべき他の要素としては、より高い相対分子量コポリマー(0.7MIを有するE/25重量%MAなど)に関連する増加した弾性回復率、および充填剤(以下を参照のこと)と比較的低分子量のコポリマー(8MI(メルトインデックス)を有するE/20重量%MAなど)とのより容易なブレンドの実際的な性能が挙げられる。
【0055】
本発明において有用なエチレン/アルキルアクリレートコポリマーおよびポリプロピレンの組成物は、乾式配合、ペレットブレンド、溶融配合、種々の構成成分の混合物の押出し、および技術分野において周知である他の混合処理によって調製され得る。
【0056】
本発明において有用な組成物は、任意によりさらに、炭酸カルシウム(CaCO3)などの充填剤を、成形組成物の30〜40重量%以下になり得る量で含み得る。いくつかの造形物品においては、例えば、0.01〜20重量%、0.1〜15重量%、約2〜約10重量%のCaCO3が存在し得る。本願明細書において記載されたエチレンコポリマーは、ポリプロピレンベース樹脂および任意選択の充填剤の間の高められた混和性を提供する。高められた混和性は、充填剤およびポリプロピレン樹脂の分離によって生じる「ダスティング」の低減された傾向、処理作業中の空気中における低CaCO3粒子および成形機器または処理機器での低減された磨耗を提供し得る。本願明細書において記載のエチレンコポリマー変性剤の使用はまた、より高い充填剤充填量を提供し得る。
【0057】
本発明において有用な組成物は、任意によりさらに、二酸化チタン(TiO2)、紫外線安定剤、顔料等などの艶消剤などの他の添加剤を含み得る。これらの添加剤は、ポリプロピレン造形物品の技術分野において周知である。これらの従来の処方成分は、本発明による組成物中に、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%で存在し得る。
【0058】
このような従来の処方成分の、エチレンコポリマーで変性されたポリプロピレンを含む組成物への任意選択の組み込みは、いかなる公知の方法でも実施することができる。この組み込みは、例えば、乾式配合し、種々の構成成分の混合物の押出しにより、従来のマスターバッチ技術等により実施されることができる。典型的なマスターバッチは、75〜90重量%のCaCO3を含み得る。特筆すべきは、CaCO3およびエチレン/アルキルアクリレートコポリマー変性剤を含むマスターバッチの使用である。
【0059】
上に開示したとおり、本発明の造形物品は、上記開示の組成物から製造されることができる。本発明の造形物品は、当業者に公知の押出し成形処理または熱成形の手法のほとんどすべてによって形成することができる。例えば、射出成形、圧縮成形、吹込成形および異形押出し成形などの溶融押出し成形法を用いることができる。このようにして、物品は、典型的には射成成形、圧縮成形、吹込成形、異形押出し等されることができる。さらに、造形物品は、変性ポリプロピレン以外の高分子材料の層を含み得る。一般に技術分野において実用されている種々の添加剤は、それらの存在が物品の特性を実質的に変化させない限りにおいて、それぞれの層に存在することができ、結合層等の存在が包含される。従って、酸化防止剤および熱安定剤、紫外(UV)光安定剤、顔料および染料、充填剤、艶消剤、増摩剤、可塑剤、他の処理助剤等などの種々の添加剤が使用され得ることが予期される。
【0060】
実施形態においては、本発明は、上に開示された組成物から形成された、キャップなどの成形物品を提供する。他の実施形態は、上述の組成物から、異形押出し成形によって調製された管材である。
【0061】
本発明の好ましい造形物品としては、(a)少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、(b)0.2〜30重量%(あるいは1〜30重量%)の少なくとも1種のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとを含む組成物から調製された、以下の好ましい物品を包含する造形物品が挙げられる。
【0062】
好例1.前記アルキルアクリレートが、前記エチレン/アルキルアクリレートコポリマー中に約5〜約40重量%の範囲で存在する物品。
【0063】
好例2.前記アルキルアクリレートが、前記エチレン/アルキルアクリレートコポリマー中に約10〜約35重量%の範囲で存在する好例1の物品。
【0064】
好例3.前記アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートからなる群から選択される好例2の物品。
【0065】
好例4.前記アルキルアクリレートがメチルアクリレートである好例3の物品。
【0066】
好例5.成分(b)が0.2〜15重量%(あるいは1〜15重量%)の量で存在する好例1から好例4のいずれかの物品。
【0067】
好例6.成分(b)が0.2〜5重量%の量で存在している好例5の物品。
【0068】
好例7.成分(b)が0.2〜1重量%の量で存在している好例6の物品。
【0069】
好例8.成分(b)が1重量%を超えて5重量%以下の量で存在している好例6の物品。
【0070】
好例9.(c)充填剤、艶消剤、紫外線安定剤、顔料および他の添加剤からなる群から選択される、0.01〜40重量%の少なくとも1種の追加の成分をさらに含む好例1から好例8のいずれかの物品。
【0071】
好例10.成分(c)が0.1および15重量%の間の量で存在している好例8の物品。
【0072】
好例11.前記組成物が管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを含む好例1〜好例9のいずれかの物品。
【0073】
典型的には、ポリプロピレン造形物品の調製のための生産設備は、機器の改変および処理条件の変更は困難であろう。従って、本発明のポリプロピレン樹脂の、エチレン/アルキルアクリレート変性は、これから調製される物品の機械特性に顕著な向上を提供することができる。
【0074】
上に開示したとおり、本発明の特定の造形物品は、成形キャップまたは栓であることができる。キャップは、圧縮成形または射出成形され得る。このようなキャップは、飲料(炭酸ソフトドリンクおよびビールなどの低温殺菌飲料を含む);食品(特に容器シール性能が重大であるもので、マヨネーズ、ピーナッツバターおよびサラダ油などの酸素感応性のもの、および酢、レモン果汁などの腐食性のものを包含する);および漂白剤、洗剤、個人的衛生製品、薬、薬物、化粧品、石油製品を包含する家庭用薬品;ならびに最大範囲の流通下および使用条件下でのより高い一体性シールおよび再シールが要求される他の製品を包含する広く多様な製品のための広く多様な容器を閉めてシールするのに用いられ得る。
【0075】
キャップサイズは、典型的には約1mm未満〜約50mmまたは20mm〜120mmの範囲であり得、およびボトルおよび/またはジャーサイズは、2−オンス未満から128−オンス容量以上の範囲であり得る。ドラムまたは小樽などのより大きな容量の容器もまた、本発明の実施に、より小さいバイアルおよび他の容器と同様に、好適である。
【0076】
本願明細書における本発明の造形物品が、好ましい実施形態としてキャップによる例示で記載されたが、他の造形物品も引張破断負荷、テナシティ(引張破断応力)および破断点伸びなどの同一の向上した機械特性から利益が得られると想定される。ボトルプレフォームとしての使用に好適である射出成形された中空物品は、さらに本発明の成形物品の例である。
【0077】
吹込成形された物品の例としては、吹込成形ボトルなどの容器が挙げられる。例えば、ボトルおよび容器産業において、射出成形されたポリプロピレンプレフォームの吹込成形は、広く受容されている。
【0078】
本発明のボトルは、ミルクおよび他の乳製品などの液体のパッケージングに有用であることができる。本発明のボトルにパックされ得る他の液体としては、食用油、シロップ、ソース、ベビーフードなどのピューレおよび医薬品が挙げられる。モータ油、ガソリンなどの燃料、石鹸、洗剤、農芸化学製品等もまた、本発明のボトルにパッケージされ得る。粉末、顆粒および他の流動性固形分もまた本発明のボトルにパッケージされ得る。
【0079】
容器が、本願明細書において一般にボトルとして記載されているが、バイアル、ジャー、ドラムおよび燃料タンクなどの他の容器が、本願明細書に記載のとおり、本発明の組成物および物品から調製され得る。
【0080】
造形物品の他の例は異形材である。異形材は、特定の形状を有することにより、および異形押出し成形として知られるそれらの生産方法により、定義される。異形材は、フィルムまたはシートではなく、および従って、異形材の製造方法は、カレンダ加工またはチルロールの使用を含まない。異形材はまた、射出成形法によっては調製されない。異形材は、ダイの開口部を通して熱可塑性溶融物を押出して、所望の形状を維持することができる押出し物を形成することにより開始される溶融押出し成形法によって、製作されることができる。押出し物は、典型的には、所望の形状を維持しつつ、その最終寸法に引かれると共に、次いで空気中または水浴にて急冷されて形状に硬化し、これにより異形材を形成する。簡単な異形材の形成においては、押出し物は好ましくは、いかなる構造的補助も無しで形状を維持する。極度に複雑な形状については、支持手段が、形状維持の補助に頻繁に用いられる。
【0081】
異形材の共通する形状は管状である。液体および蒸気の輸送のための管材アセンブリは、技術分野において周知である。燃料ライン、エアブレーキライン、作動油ライン等などの自動車用途においては、管材アセンブリが、多様な有毒性でおよび有害な条件に露出される。管材は、自動車用流体および添加剤とほとんど定常的に接触している。また、考慮すべき、はね石および腐食性媒体(塩など)などの外部環境的要素がある。さらに、温度は、多くの場合極度の高いレベルにまで昇温し、および寒冷な気候においては、極度の低温へも露出される。
【0082】
管材はまた、医療用途における流体輸送について、または飲料などの流体の輸送においても用いられる。これらの用途では、良好な水分バリア特性、耐薬品性、靭性および柔軟性が要求される。
【0083】
造形物品はまた、熱成形法によって調製されることができる。熱成形物品は、典型的には、シートの材料形状が、トレイ、カップ、缶、バケツ、桶、箱またはボウルなどの凹状表面を形成する形状を有する。典型的には、フラットシートが、例えばシートの上方および下方から315℃の黒体放射体によって、30〜40秒の加圧保持時間(この時間の間、シートの表面温度はポリプロピレンの公称形成温度165℃に向かって昇温し得る)で加熱される。加熱サイクルの終了時に、シートは、直ちに、未加熱の、任意により冷却された金型キャビティ上に位置され、および金型周囲にクランプされる。短時間(例えば2秒)の金型内からの減圧が、シートを金型内に引く。冷却期間後、熱成形物品が金型から外される。あるいは、プラグが軟化されたシートを金型キャビティ内に押し込み得る。いずれの手法も、シートが、元のシートが持っていたより薄い断面およびより大きな表面積を有する形状に、伸張されまたは延伸された物品を提供する。
【0084】
上記の熱成形物品は、多くの場合、種々の消費者物品をパッケージングするための容器として用いられる。玩具、パネル、家具および自動車部品などの他の物品もまた、同様に調製され得る。
【0085】
本発明について、その好ましい実施形態を参照して具体的に示しおよび記載してきたが、本発明の思想および範囲を逸脱せずに、種々の形態上および詳細の変更をなし得ることが、当業者により理解されるであろう。
【0086】
以下の実施例は単なる例示であり、および本願明細書において記載されたおよび/または特許請求された本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0087】
実施例A
用いた材料
PP−1:2.1g/10分のMIを有するポリプロピレンホモポリマー(ASTM D−1238、230℃で2.16Kg質量を用いて)。
PP−2:8.0のMIを有するポリプロピレンコポリマー。
EMA−1:20重量%のメチルアクリレートと、8g/10分のMIとを有するエチレン/アルキルアクリレートコポリマー(ASTM D−1238、190℃で2.16Kg質量を用いて)。
白色着色剤として、二酸化チタン(TiO2)。
【0088】
組成物:
比較例C1:PP−1(99.2%)+TiO2(0.8%)
実施例2:PP−1(98.2%)+TiO2(0.8%)+EMA−1(1%)
実施例3:PP−1(49.1%)+PP−2(49.1%)+TiO2(0.8%)+EMA−1(1%)
実施例4:PP−1(97.2%)+TiO2(0.8%)+EMA−1(2%)
【0089】
処理条件
EMA−1変性剤を、PP樹脂およびTiO2着色剤マスターバッチと乾燥ミキサで乾式配合した。混合物を、次いで、Sacmiキャップ製造機のホッパーに供給し、押出しおよび圧縮成形して、ねじ山が一体化された標準設計を有するキャップとした。
押出し成形温度:200℃。
実施速度:毎分500キャップ。
【0090】
成形された後、キャップは、キャッピング機にベルト搬送され、および技術分野において周知である標準的な手順でボトルにねじ込まれる。これらの作業の間、非変性PPキャップは、割れる傾向を示す。実施例のキャップをボトルに取り付けおよびキャップが割れた率を観察しおよび表1に報告した。
【0091】
表1

【0092】
表1は、1%(組成物2および3)または2%(組成物4)のEMAを組み込むと、テスト中にキャップ割れ率が5%超から0まで減少したことを示す。0.2重量%〜5重量%のEMA樹脂(例えばEMA−1)をPP処方に組み込むことにより、匹敵する結果が得られたことは表に示していない。特筆すべきは、0.2重量%〜1重量%のEMAを含むPP組成物である。EMAの高いレベル(すなわち1重量%を超えて30重量%まで)は、さらに増強された伸度を提供する。
【0093】
さらに、非変性PPを超える機械特性の向上は、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー変性剤の量を変えることにより調整することができる。キャップなどのいくつかの用途において、処理条件の間の割れの低減を提供しつつも、好適な条件下での適切な破壊(タンパーエビデントバンドの割裂)を許容する、引張り特性における向上を有することが望ましい。従って、0.2重量%〜1重量%のエチレン/アルキルアクリレート変性剤を含むPP組成物は、スクリューキャップの調製に特に好適である。
【0094】
これらの試行結果は、0.2重量%〜30重量%のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーのPPへの添加が、PP造形物品の、引張破断負荷、破断伸びおよびテナシティなどの機械特性を向上することを立証した。
【0095】
実施例B
用いた材料
PP−1:Marlex(登録商標)HNZ−020ホモポリマーPP;MFR2.3g/10分(ASTM D−1238、230℃、2.16kg);密度0.907g/cc、
EMA−1:20%メチルアクリレートと8g/10分のMIを有するエチレン/アルキルアクリレートコポリマー(ASTM D−1238、190℃、2.16kg)、および
EMA−2:24%メチルアクリレートと、2g/10分のMIを有するエチレン/アルキルアクリレートコポリマー(ASTM D−1238、190℃、2.16kg)。
【0096】
組成物
PP−2+EMA−1(それぞれ0、1、2、3、4、5%)
PP−2+EMA−2(それぞれ0、1、2、3、4、5%)
【0097】
配合条件
EMA−1およびEMA−2を、それぞれ二軸押出し機を用いて、PP−2と溶融配合した。混合物を、次いで、射出成形機のホッパーに供給して、機械的試験および熱分析のためのサンプルバーを成形した。
【0098】
1)二軸スクリュー配合条件:
溶融温度:220℃〜230℃、スクリュー速度:200rpm、スループット:30lb/時。
2)射出成形条件:
溶融温度:227℃、成形温度:32℃
【0099】
特性試験手法:
1)ノッチ付アイゾッド衝撃強度
ASTM D256、23℃で試験した。
2)動的機械的分析
屈曲性バー1/8インチ×1/2インチを、TA Instruments2980DMA中の20mmデュアルカンチレバークランプに、8in−lbトルク力で固定した。2℃/分の遅い加熱プログラムを、10μm振動幅および多周波(1、3、5、10、20、50Hz)−140℃〜140℃で設定した。
3)DSC熱分析
0℃〜210℃の温度範囲で10℃/分の傾斜率。
【0100】
少量のEMA変性剤をPP(Marlex)樹脂に添加すると衝撃強度が増強した。表2は、EMA変性剤濃度を増加するとノッチ付アイゾッド衝撃強度が増加したことを示す。衝撃強度は、3%変性剤レベル程度で約100%増加して、強度が最大となった。EMA−1およびEMA−2変性剤の両方で同様の向上が見られた。
【0101】
靭性の向上の他の証拠がDMAテストから見られる。ガラス転移(β)およびα−転移(結晶相の不完全領域での転移)の両方の活性化エネルギーが、EMA−1変性剤の添加で減少した。表3は、ガラス転移の活性化エネルギーが、3%EMA−1で100kcal/モルから84kcal/モルに低下し;およびα−転移の活性化エネルギーが、3%EMA−1で43kcal/モルから29kcal/モルに低下したことを示す。活性化エネルギーの低下は、PPマトリックス中の分散されたEMAポリマー鎖が、PPポリマー鎖セグメントの、転移温度範囲における可動性を増加したことを示し、これは効果的に外部衝撃力を吸収して製品をより強靭にする。
【0102】
DSC結果は、PP参照サンプルの凍結温度が、EMA変性剤をPPに組み込んだ後低下したことを示す。表4は、1%EMA−1変性剤を有する化合物の凍結温度が約2℃から3℃落ちたことを示す。表5は、EMA−2変性剤による同様の効果を示す。結晶化温度の低下はより完全な結晶化をもたらす可能性があると共に、共に、より低い射出成形処理温度の使用を許容し、これにより、化合物の機械特性に肯定的に影響して、成形サイクル時間を短縮し、および生産性を増加させる。
【0103】
表2−EMA変性剤によるPP変性物のノッチ付アイゾッド衝撃強度

【0104】
表3.EMA−1によるPP変性物の活性化エネルギー

【0105】
表4.EMA−1によるPP変性物の溶融温度および凍結温度

【0106】
表5.EMA−2によるPP変性物の溶融温度および凍結温度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンホモポリマー;ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー;およびポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)0.2〜3重量%の少なくとも1種のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンを含み、Xはビニルアセテートおよびアルキル(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択されるモノマーであり、およびYは、一酸化炭素;二酸化硫黄;アクリロニトリル;無水マレイン酸;マレイン酸ジエステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、およびそれらの塩;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群から選択される1つまたは複数の追加のコモノマーであり;ここで、Xは、前記E/X/Yコポリマーの0〜50重量%であり、Yは、前記E/X/Yコポリマーの0〜35重量%であり、ここで、XおよびYの重量%は、両方が0であることはできず、およびEが残量である)と
を含むかまたはこれらから製造される組成物を含むかまたは該組成物から製造される造形物品。
【請求項2】
組成物が、
(a)少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)0.2〜3重量%の少なくとも1種のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーと
を含むか、またはこれらから製造され、ここで、成分(b)が好ましくは0.2〜1.5重量%の量で存在し、および前記アルキルアクリレートが、前記エチレン/アルキルアクリレートコポリマー中に好ましくは約5〜約40重量%の範囲で存在する請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびブチルアクリレート、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり、および好ましくはメチルアクリレートである請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
成分(b)が、0.2〜0.5重量%、または0.2〜1重量%、または1を超えて0.5重量%以下の量で存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
(c)0.01〜40重量%、または0.1〜15重量%の、充填剤、艶消剤、紫外線安定剤、顔料および他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の成分
を追加で含む組成物を含むかまたは該組成物から製造される請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記エチレン/アルキルアクリレートコポリマーが、管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
熱成形によって製造される請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
射出成形、圧縮成形、吹込成形または異形押出し成形である、溶融押出し成形法によって調製される請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
成形キャップである請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
(a)少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、(b)0.2〜1重量%の少なくとも1種のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーであって、好ましくは管型反応器製エチレン/アルキルアクリレートコポリマーとを含む組成物から調製される請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
異形押出し成形によって調製され、および好ましくは管材である請求項10に記載の物品。

【公表番号】特表2008−512548(P2008−512548A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531234(P2007−531234)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/031153
【国際公開番号】WO2006/028908
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】