説明

エチレン及びプロピレンの製造用高純度オレフィン系ナフサ

【課題】オレフィン系ナフサ及びこのナフサから低級オレフィンを製造する方法を提供する。
【解決手段】低級オレフィン、好ましくはエチレンを製造するための本発明の方法においては、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化し、該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法によりオレフィン系ナフサに転化する。該オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化し、そして該低級オレフィンの少なくとも一部を該分解装置の生成物流から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔相互関連出願〕
本出願は、両方とも同時出願の、「エチレン及びプロピレンの製造用高純度オレフィン系ナフサ」という名称の米国特許出願第10/355,110号(事件整理番号、005950−824)及び「エチレン及びプロピレンの製造用高純度オレフィン系ナフサ」という名称の米国特許出願第10/354,957号(事件整理番号、005950−825)に関連している。
【0002】
本発明は高純度オレフィン系ナフサから低級オレフィンを製造するための改良技術に関する。より具体的に、本発明は、遠く離れた場所からの安価な炭化水素資源を高純度オレフィン系ナフサに転化し、該オレフィン系ナフサを第二の設備に輸送し、その後に該オレフィン系ナフサを処理して低級オレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低級オレフィン、特に2〜4個の炭素原子を有するオレフィンは、例えば、アルキル化、オリゴマー化、及び重合方法を含む多数の化学的方法に適した出発物質である。炭化水素供給物を分解することによりその供給物から低級オレフィンを製造することは、周知の方法であり多数の石油化学製品製造設備で工業的に適用されている。典型的に、原油の留出物留分、普通原油のナフサ留分はエチレンを製造するためのナフサ分解装置法における炭化水素供給物として使用されている。
【0004】
工業的な理由で、低級オレフィン、特にエチレンに対する高い選択性を有するナフサ分解法が要求されている。石油ナフサ以外の炭化水素資源、特により価格が安くより豊富なものからエチレンを製造する要求も存在する。かかる炭化水素資源の例には、エチレン市場から遠く離れた場所で豊富な供給量で見出される天然ガス、石炭、及び重油が含まれる。現在、遠く離れた炭化水素資源をエチレンに転化する方法は二つあり、そこでは該エチレンは工業化された場所で製造される。
【0005】
最初の方法は、遠く離れたサイトで得られた炭化水素資源をフィッシャー・トロプシュ法により高度にパラフィン系の供給物に転化することである。この方法は、該炭化水素資源を部分酸化により合成ガスに転化し、該合成ガスをフィッシャー・トロプシュ法により炭化水素の混合物に転化することを含む。フィッシャー・トロプシュ法からの炭化水素留分は、エチレンを製造するためのナフサ分解法への供給物として使用することが出来る。一例として、欧州特許出願第161705号は、フィッシャー・トロプシュ合成法の生成物の一留分をナフサ分解法における炭化水素供給物として使用することが出来ることを開示している。EP161705は、実質的に線状パラフィンから成るフィッシャー・トロプシュ法からのC19−留分をナフサ分解法用の供給物として使用することを開示している。EP161705は更に、この供給物を使用することにより、原油のナフサ留分と比べて低級オレフィンに対する選択性が増加することを開示している。
【0006】
ナフサ分解法の選択性を増加させるために、水素処理、水素化分解、及び水添異性化を含めて水素を用いて処理された高度にパラフィン系のフィッシャー・トロプシュ・ナフサが典型的に使用される。エチレンを製造するため、該高度にパラフィン系のフィッシャー・トロプシュ・ナフサは典型的に合成されたサイトから工業化されたサイトへ輸送されナフサ分解装置中でエチレンに転化される。
【0007】
一例として、2002年8月18〜22日、マサチュセッツ州ボストン、ACS 2002国内会議、2002年7月ACS前刷り、Luis P.Dancuart等による「水蒸気分解供給原料としてのSASOL SPDナフサの性能」、及び米国特許第5,371,308号は、この方法の例を説明している。米国特許第5,371,308号は、水素処理合成油留分を含む炭化水素供給物から該水素処理合成油留分を含む炭化水素供給物を分解して低級オレフィンを製造する方法を教示している。該水素処理合成油留分はフィッシャー・トロプシュ合成法のような合成法から誘導されその後に水素が存在する方法で処理される。
【0008】
遠く離れた炭化水素資源をエチレンに転化する第二の方法は、メタノールの製造を含む。この方法は、遠く離れたサイトで得られた炭化水素資源を部分酸化により合成ガスに転化し、該合成ガスをメタノール合成設備でメタノールに転化することを含む。該メタノールは典型的に工業化されたサイトに輸送されメタノールからオレフィンへの方法によりエチレンに転化される。該メタノールからオレフィンへの方法は分子篩を使用してメタノールを脱水しエチレン、プロピレン及び他のオレフィンの混合物に転化する。
【0009】
エチレンを製造するためのフィッシャー・トロプシュ・ナフサを含む方法を使用すると、メタノール法に比べて利点がある。これらの利点は、フィッシャー・トロプシュ・ナフサを含む方法が現存する従来のナフサ分解装置を使用することが出来ることを含む。又、この方法で製造された高度にパラフィン系のナフサは、環状化合物(芳香族炭化水素及びナフテン)の少ないノルマルパラフィン及びイソパラフィンの混合物から成る。この高度にパラフィン系のナフサは、典型的な石油ナフサよりも高い収率のエチレン及び低いコークス化割合を提供する。
【0010】
しかしながら、フィッシャー・トロプシュ・ナフサの使用を含む方法にはいくらかの不利点が存在する。該不利点にはメタンを高度にパラフィン系のナフサに転化することに関する高価格が含まれる。この高価格の一つの要素は、フィッシャー・トロプシュ生成物を水素処理して高度にパラフィン系のナフサを提供するのに典型的に必要な水素である。更に、エチレン分解工程は、該ナフサをより小さな断片に脱水素分解する高温吸熱反応を含む。この高温吸熱反応は著しい量の高価な燃料の使用を必要とする。
【0011】
メタノール合成を含む方法は、必要とする工程がより少ないかもしれないが、一般的に天然ガスからメタノールを製造する際の経済性が悪い。更に、メタノールを輸送する時には、メタノールの大体50重量%がメタノールからオレフィンへの工程の間に水に転化されることを記憶に留めなければならない。従って、パラフィン系ナフサと比較すると、大体2倍量のメタノールを輸送しなければならない。更に、メタノールは有毒なので、典型的にはパラフィン系ナフサに必要な価格より高い価格で小さな特殊タンカーで輸送される。最後に、この方法はメタノールからオレフィンへの工程用の新しい設備の建設を必要とする。
【0012】
(遠く離れたサイトからのメタン又は石炭のような)安価な炭化水素資源を工業化された場所でエチレンに転化する経済的で効率的な方法が要求されている。これらの方法はいくらかの利点を有することが望ましい。炭化水素資源からナフサ分解装置用供給物への最初の転化は経済的であることが望ましい。該供給物が高収率のエチレンを与え、従って最初は必要とされる供給物量が比較的小さいことが望ましい。ナフサ分解工程の操作費用は低いことが望ましい。該方法は全体的に、例えば船、タンク、ポンプ、ナフサ分解装置等を含む現存する設備に適合することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は高純度オレフィン系ナフサから低級オレフィンを製造するための技術に関する。一局面において、本発明は低級オレフィンの製造方法に関する。該方法は、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化し、該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法によりオレフィン系ナフサに転化することを含む。該オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化し、そして該低級オレフィンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収する。
【0014】
他の局面において、本発明はエチレンの製造方法に関する。該方法は、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化し、該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法個別装置中で炭化水素流に転化することを含む。25〜80重量%のオレフィン及び75重量%より多いパラフィンが含まれる20〜75重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを該炭化水素流から単離する。該オレフィン系ナフサを金属酸化物の存在下に精製して1.5より低い全酸価を有する精製オレフィン系ナフサを提供し、該精製オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化する。該エチレンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収する。
【0015】
更なる局面において、本発明は、互いに遠く離れた第一サイト及び第二サイトであり、第二サイトで使用されるオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを形成する第一サイト及びエチレンを形成する第二サイトを含むエチレンの製造方法に関する。該方法は、第二サイトでオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを受け取り、該オレフィン系ナフサをナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化し、そして該ナフサ分解装置の生成物流からエチレンを単離することを含む。この方法において、該オレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサは、炭化水素資源を合成ガスに転化し、該合成ガスをフィッシャー・トロプシュ合成に処して炭化水素質生成物を形成し、該炭化水素質生成物からオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを単離することを含む方法により製造される。
【0016】
更に他の局面において、本発明はオレフィン系ナフサに関する。該オレフィン系ナフサは、(a)10〜80重量%の量のオレフィン、(b)50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の量の非オレフィン、(c)重量で10ppmより少ない量の硫黄、(d)重量で10ppmより少ない量の窒素、(e)10重量%より少ない量の芳香族炭化水素、(f)1.5より低い全酸価、および、(g)C〜400°Fの沸点範囲、を含む。
【0017】
又、本発明は、(a)65重量%より多い線状第一級オレフィンから成っている、25〜80重量%の量のオレフィン、(b)75重量%より多いパラフィンを含み、該パラフィンが1より低いi/n比を有する、20〜75重量%の量の非オレフィン、(c)重量で2ppmより少ない量の硫黄、(d)重量で2ppmより少ない量の窒素、(e)2重量%より少ない量の芳香族炭化水素、(f)1.5より低い全酸価、および、(g)C〜400°Fの沸点範囲、を含むオレフィン系ナフサにも関する。
【0018】
他の局面において、本発明はオレフィン系ナフサの製造方法に関する。該方法は、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化し、該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法個別装置中で炭化水素流に転化することを含む。10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを該炭化水素流から単離する。該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該オレフィン系ナフサを精製し、そして1.5より低い全酸価を有する精製オレフィン系ナフサを単離する。
【0019】
更に他の局面において、本発明は混合ナフサに関する。該混合ナフサは、(a)10〜80重量%の量のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の量の非オレフィン、を含むオレフィン系ナフサ、及び(b)水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサを含む。該混合ナフサは、10ppmより少ない硫黄を含み、1.5より低い酸価を有する。
【0020】
更なる局面において、本発明は混合ナフサの製造方法に関する。該方法は、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化し、該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ反応器中で炭化水素流に転化することを含む。10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを単離する。該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供する。該混合ナフサは10ppmより少ない硫黄を含み、1.5より低い酸価を有する。
【0021】
なお更なる局面において、本発明は混合ナフサの製造方法に関する。該方法は、10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを提供することを含む。該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供する。該混合ナフサは10ppmより少ない硫黄を含み、1.5より低い酸価を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】他の売れる製品の副製造と一緒に天然ガスをエチレンに転化する方法を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、オレフィン系ナフサ及びこのオレフィン系ナフサから低級オレフィンを製造する方法に関する。
【0024】
定義
以下の用語は、本明細書を通して使用し、特に断りのない限り以下の意味を有する。
【0025】
用語「ナフサ」は、Cと400°Fとの間で沸騰する化合物を含有する炭化水素質混合物を意味する。C分析はガス・クロマトグラフィーにより行われ、400°Fの温度はASTM D−2887で測定した95%沸点のことを言う。該炭化水素質混合物の、好ましくは少なくとも65%が、最も好ましくは少なくとも85%がCと400°Fとの間で沸騰する。
【0026】
用語「パラフィン」は、飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素(即ち、アルカン)を意味する。
【0027】
用語「オレフィン」は、少なくとも1個の二重結合を有する不飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素(即ち、アルケン)を意味する。
【0028】
用語「オレフィン系ナフサ」は、10〜80重量%のオレフィン、及び主にパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むナフサを意味する。好ましくは、オレフィン系ナフサは25〜80重量%以上のオレフィンを含み、より好ましくは50〜80重量%のオレフィンを含む。好ましくは、オレフィン系ナフサの非オレフィンは50重量%より多いパラフィンを含み、より好ましくは75重量%より多いパラフィンを含み、更により好ましくは90重量%より多いパラフィンを含む(重量%は非オレフィン成分に基いている)。好ましくは、オレフィン系ナフサは又10ppmより少ない硫黄及び10ppmより少ない窒素を含み、より好ましくは硫黄も窒素も5ppmより少なく、より好ましくは2ppmより少なく、更により好ましくは1ppmより少ない。好ましくは、オレフィン系ナフサは10重量%より少ない芳香族炭化水素、より好ましくは5重量%より少ない芳香族炭化水素、更により好ましくは2重量%より少ない芳香族炭化水素を含有する。オレフィン及び芳香族炭化水素はSCFC(超臨界流体クロマトグラフィー)により測定されるのが好ましい。
【0029】
用語「低級オレフィン」は2〜4個の炭素を有するオレフィンを意味する。好ましくは低級オレフィンはエチレン及びプロピレン、より好ましくはエチレンのことを言う。
【0030】
用語「線状第一級オレフィン」は、普通アルファオレフィンとして知られている直鎖1−アルケンを意味する。
【0031】
用語「全酸価」又は「酸価」は酸性度の大きさである。それは、ASTM D 664又は適切な同等物で測定して、測定されるサンプル1グラム中に存在する酸の中和に必要な水酸化カリウムのミリグラム数(mg KOH/g)により決定される。本発明の方法に使用されるオレフィン系ナフサは、好ましくは1.5mg KOH/gより低い、より好ましくは0.5mg KOH/gより低い全酸価を有する。
【0032】
用語「酸素化物」は、酸素を含有する炭化水素、即ち酸素化炭化水素を意味する。酸素化物には、アルコール、エーテル、カルボン酸、エステル、ケトン、及びアルデヒド等が含まれる。
【0033】
用語「i/n比」はイソパラフィン/ノルマルパラフィン重量比を意味する。それは、或るサンプルにおけるイソパラフィン(即ち、分岐鎖)の全数対ノルマルパラフィン(即ち、直鎖)の全数の比である。
【0034】
用語「フィッシャー・トロプシュ法から誘導された」又は「フィッシャー・トロプシュ誘導」は、生成物、留分、又は供給物がフィッシャー・トロプシュ法に由来するか、又は或る段階でフィッシャー・トロプシュ法により製造されることを意味する。
【0035】
用語「石油から誘導された」または「石油誘導」は、生成物、留分、又は供給物が原油の蒸留による塔頂蒸気流及び非蒸発性残留部分である残燃料に由来することを意味する。石油誘導物の源はガス分野凝縮液に由来し得る。
【0036】
用語「水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ」は、C〜400°F含有フィッシャー・トロプシュ生成物を水素処理して誘導されるナフサを意味する。
【0037】
用語「水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ」は、400°F+含有フィッシャー・トロプシュ生成物を水素化分解して誘導されるナフサを意味する。
【0038】
用語「水素化分解石油誘導ナフサ」は、400°F+含有石油誘導生成物を水素化分解して誘導されるナフサを意味する。
【0039】
用語「水素処理石油誘導ナフサ」は、C〜400°F含有石油誘導生成物を水素処理して誘導されるナフサを意味する。
【0040】
用語「高温度」は20℃より高い温度を意味する。本発明の方法において、高温度は、オレフィン系ナフサの精製に関して、好ましくは450°Fより高い。
【0041】
パラフィン系ナフサよりもフィッシャー・トロプシュ法で製造したオレフィン系ナフサの方がいくらかの利点を提供することが驚くことに発見された。例えば、オレフィン系ナフサを製造するのに伴う費用が減少するが、それはオレフィン系ナフサを製造するために水素処理工程、従って高価な水素が必要ないからである。更に、低級オレフィン、例えばエチレンを製造するためにオレフィン系ナフサを使用する場合、パラフィンよりもオレフィンの方がより高いエチレン収率を提供するのでエチレンの収率が増加する。従って、所望量のエチレンを製造するためのナフサ分解装置への供給物量は、パラフィン供給物と比較してオレフィン供給物を使用する方が少ない。更に、ナフサ分解装置に対する操作費用が減少するが、それはオレフィンをエチレンに転化するのに必要な熱が対応するパラフィンに対するよりも少ないからである。更に、オレフィン系ナフサ及び該オレフィン系ナフサからの低級オレフィンを製造する場合、現存する設備、例えば船、タンク、ポンプ、ナフサ分解装置等を使用することが出来る。
【0042】
従って、本発明はオレフィン系ナフサに関する。本発明のオレフィン系ナフサはフィッシャー・トロプシュ法により製造される。
【0043】
フィッシャー・トロプシュ合成法においては、H及びCOの混合物を含む合成ガスを適切な温度及び圧力反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒と接触させることにより液体及び気体状炭化水素が形成される。フィッシャー・トロプシュ反応は典型的に、約300〜700°F(149〜371℃)、好ましくは約400〜550°F(204〜228℃)の温度、約10〜600psia(0.7〜41バール)、好ましくは30〜300psia(2〜21バール)の圧力、及び約100〜10,000cc/g/hr、好ましくは300〜3,000cc/g/hrの触媒空間速度で行われる。
【0044】
該生成物は、大部分がC〜C100+の範囲であるが、CからC200+まで変動し得る。該反応は、種々のタイプの反応器、例えば1個以上の触媒床を含有する固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、又は異なるタイプの反応器の組合せ中で行うことが出来る。かかる反応方法及び反応器は周知であり文献に記録されている。本発明の実施に好ましいスラリー・フィッシャー・トロプシュ法は、強発熱性合成反応に対する優れた熱(及び物質)移動特性を利用し、コバルト触媒を使用する場合比較的高分子量のパラフィン系炭化水素を製造することが出来る。スラリー法において、H及びCOの混合物を含む合成ガスは、該反応条件で液状の該合成反応の炭化水素生成物を含むスラリー液に分散及び懸濁された粒状フィッシャー・トロプシュ炭化水素合成触媒を含む反応器中のスラリーを通り抜けて第三相として泡立てられる。水素対一酸化炭素のモル比は、約0.5から4まで幅広く変動し得るが、より典型的には約0.7〜2.75の範囲内、好ましくは約0.7〜2.5である。特に好ましいフィッシャー・トロプシュ法はEP0609079に教示されている。
【0045】
適切なフィッシャー・トロプシュ触媒は、Fe,Ni,Co,Ru及びReの様な1個以上の第VIII族触媒金属を含む。更に、適切な触媒は促進剤(promoter)を含有することが出来る。かくして、好ましいフィッシャー・トロプシュ触媒は、適切な無機支持体材料、好ましくは1種以上の耐火性金属酸化物を含む物の上に有効量のコバルト及びRe,Ru,Pt,Fe,Ni,Th,Zr,Hf,U,Mg及びLaの1種以上を含む。一般に、該触媒に存在するコバルトの量は全触媒組成物の約1〜約50パーセントである。該触媒は、ThO,La,MgO、及びTiOのような塩基性酸化物促進剤、ZrOのような促進剤、貴金属(Pt,Pd,Ru,Rh,Os,Ir)、貨幣金属(Cu,Ag,Au)、及びFe,Mn,Ni、及びReのような他の遷移金属を含むことも出来る。アルミナ、シリカ、マグネシア、及びチタニア又はそれらの混合物を含む支持体材料を使用することも出来る。コバルト含有触媒用の好ましい支持体はチタニアを含む。有用な触媒及びそれらの製造は知られており説明に役立つが、制限されない例を、例えば米国特許第4,568,663号に見出すことが出来る。
【0046】
懸濁床反応器で行われたフィッシャー・トロプシュ反応からの生成物は、一般に軽質反応生成物及び蝋質反応生成物を含む。軽質反応生成物(即ち、凝縮物留分)は、約700°Fより下で(例えば、テールガスから中間留分まで)、大部分はC〜C20の範囲で、約C30までは量が減少しつつ沸騰する炭化水素を含む。蝋質反応生成物(即ち、含蝋油)は、約600°Fより上で(例えば、減圧軽油から重質パラフィンまで)、大部分はC20+範囲で、C10までは量が減少しつつ沸騰する炭化水素を含む。軽質反応生成物も蝋質生成物も実質的にパラフィン系である。蝋質生成物は、一般に70%より多くのノルマルパラフィンを含み、多くの場合80%より多くのノルマルパラフィンを含む。軽質反応生成物は、かなりの割合のアルコール及びオレフィンと一緒にパラフィン系生成物を含む。或る場合には、軽質反応生成物は50%程多くの、或いは更に多くのアルコール及びオレフィンを含み得る。
【0047】
本発明のオレフィン系ナフサはフィッシャー・トロプシュ法の生成物から蒸留により単離することが出来る。本発明のオレフィン系ナフサはC〜400°Fの間で沸騰する。
【0048】
本発明の方法において、オレフィン系ナフサは精製することが出来る。フィッシャー・トロプシュ設備からのオレフィン系ナフサは、オレフィンの飽和なしに除去されるべき不純物を頻繁に含有する。これらの不純物の例には、酸及び重金属が含まれる。フィッシャー・トロプシュ・ナフサに存在する酸は、腐食性で船、タンク、ポンプ、及びナフサ分解装置の金属表面を急速に攻撃するであろう。酸が金属を攻撃するので、該金属はナフサ中に混入され、例えばナフサ分解装置を含む流下式処理装置における炎管の汚れを増加させるであろう。更に、金属は、酸と典型的なフィッシャー・トロプシュ触媒、例えば鉄との直接反応によりナフサ中に混入され得る。従って、オレフィンを飽和させることなく除去することが出来る方法によって、オレフィン系ナフサに存在する酸及び溶解金属を除去することが必要であろう。
【0049】
フィッシャー・トロプシュ設備からのオレフィン系ナフサには、アルコール及び他の酸素化物も存在し得る。ナフサ分解装置中でアルコール及び他の酸素化物を処理出来る間に、溶解金属及び酸と同様にそれらを除去することが望ましい。
【0050】
従来の石油を処理する際、標準的に原油は腐食問題を避けるため0.5mg KOH/gより低い全酸価を有すべきである。更に蒸留液留分は1.5mg KOH/gより低い酸価を有するのが標準的である。1998年テキサス州ヒューストン、国際的防食技術協会(NACE International),Richard A.Whiteによる「石油精製及び集油設備用の材料選択」6〜9頁を参照されたい。
【0051】
従って、オレフィン系ナフサに対する本発明の精製方法は、そこに含まれるオレフィンを感知できる程に飽和することなく、好ましくは1.5mg KOH/gより低い、より好ましくは1.0mg KOH/gより低い、更により好ましくは0.5mg KOH/gより低い全酸価を有するオレフィン系ナフサを提供することが出来る。フィッシャー・トロプシュ法から直接に単離されたオレフィン系ナフサは、容認できる全酸価を有することが出来る。しかしながら、もし単離されたオレフィン系ナフサが容認できる全酸価を有していなければ、本明細書に説明されるように、それを精製することが必要であろう。
【0052】
高度にパラフィン系のナフサを製造する従来技術において、酸、アルコール、及び他の酸素化物を含む不純物は、水素処理技術、例えば水素処理、水素化分解、水添異性化等により除去される。しかしながら、これらの方法は又同時に望ましいオレフィンを相対的により望ましくないパラフィンへと転化する。
【0053】
本発明によれば、フィッシャー・トロプシュ・ナフサ中の酸及び溶解金属は、該ナフサを高温度で金属酸化物触媒と接触させることにより除去される。該ナフサを高温度で金属酸化物と接触させる際、酸は脱炭酸反応によりパラフィン及びオレフィンに転化される。更に、アルコールは脱水により更なるオレフィンに転化され、他の酸素化物(相対的により少量で見出されるエーテル、エステル、及びアルデヒドを含む)は炭化水素に転化される。このナフサの精製方法において、高価な水素は必要ないが、(触媒/ナフサの接触を改良するため、又は熱管理のため)所望なら使用することが出来る。該ナフサ中の酸素は水および二酸化炭素に転化され、それらはオレフィン系ナフサ生成物から容易に分離することが出来る。
【0054】
もし溶解金属が該ナフサに存在していれば、それらは同時に除去され金属酸化物触媒上に沈着するであろう。典型的に、本発明による精製方法で使用される金属酸化物触媒は、低い失活速度を示すであろうが、結局該触媒は再生されるか又は置換えられる必要があるであろう。該触媒の再生は、高温ガス(水素又は他のガス)を用いた剥ぎ取り、又は該触媒が高温で酸素含有ガスと接触している間に該触媒を燃焼させることにより成し遂げることが出来る。燃焼による再生が好ましい。
【0055】
好ましくは、本発明による精製は、450〜800°Fで、1000psigよりも低く、0.25〜10LHSV(液時空間速度)の条件下、ガス状成分を添加することなく、金属酸化物を含有する精製個別装置にオレフィン系ナフサを通過させることにより行うことが出来る。一例として、該精製方法は、高温で金属酸化物を含有する精製個別装置にオレフィン系ナフサを下方向に通過させることにより行うことが出来る。
【0056】
好ましくは、該金属酸化物はアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択される。末端オレフィンが最高収率のエチレンを付与すると信じられているので、酸素化物の脱水に有効であるが該オレフィンが末端位置から内部位置に又は分岐オレフィンに異性化されるのを促進しない酸化物を選択することが好ましい。これに基いて、好ましい金属酸化物はアルミナである。脱水を促進するため又はオレフィンの異性化を遅らせるために、更なる成分を該金属酸化物に添加することが出来る。このような更なる成分の例は、周期表のI又はII族元素のような塩基性元素である。これらの塩基性成分は触媒の汚れを遅らせることも出来る。通常これらの成分は完成触媒に酸化物の形で配合される。
【0057】
所望の全酸価を達成するために、該精製方法の厳密性は必要に応じ変えることが出来る。典型的に該方法の厳密性は温度及びLHSV(液時空間速度)を調節することにより変えられる。従って、より高い温度で該精製方法を行うことによってより厳密な精製を成し遂げることが出来、これらのより厳密な精製条件下ではより多くの酸素化物が除去され、かくしてより低い全酸価を有するオレフィン系ナフサが提供されるであろう。
【0058】
本発明の精製方法は、含まれるオレフィンを飽和することなく、好ましくは1.5mg KOH/gより低い、より好ましくは1.0mg KOH/gより低い、更により好ましくは0.5mg KOH/gより低い全酸価を有するオレフィン系ナフサを提供する。本発明の精製方法は好ましくは、オレフィン系ナフサ中の80重量パーセントより多くの酸素化物を除去する。
【0059】
本発明によるオレフィン系ナフサは、10〜80重量%のオレフィン、及び主としてパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むナフサである。好ましくは、オレフィン系ナフサは25〜80重量%以上のオレフィン、より好ましくは50〜80重量%のオレフィンを含む。該オレフィン系ナフサのオレフィンは主として線状第一級オレフィンである。好ましくは、該オレフィンは50重量%より多い線状第一級オレフィンを、より好ましくは65重量%より多い線状第一級オレフィンを、更により好ましくは80重量%より多い線状第一級オレフィンを含む。
【0060】
オレフィン系ナフサの非オレフィン系成分は主としてパラフィン系である。好ましくは非オレフィンは(非オレフィン系成分に基づき測定して)50重量%より多いパラフィン、より好ましくは75重量%より多いパラフィン、更により好ましくは90重量%より多いパラフィンを含む。該ナフサの非オレフィン系成分のパラフィンは主としてn−パラフィンである。好ましくは該パラフィンは1.0より低い、より好ましくは0.5より低いi/n比を有する。
【0061】
更に、好ましくは、オレフィン系ナフサは又10ppmより少ない硫黄及び10ppmより少ない窒素を含有し、より好ましくは硫黄も窒素も5ppmより少なく、より好ましくは2ppmより少なく、更により好ましくは1ppmより少ない。更に、オレフィン系ナフサは好ましくは10重量%より少ない芳香族炭化水素、より好ましくは5重量%より少ない芳香族炭化水素、更により好ましくは2重量%より少ない芳香族炭化水素を含有する。オレフィン及び芳香族炭化水素は好ましくはSCFC(超臨界流体クロマトグラフィー)により測定される。
【0062】
本発明によるオレフィン系ナフサは混合されて混合ナフサを提供することも出来る。この混合ナフサは、ナフサが使用される任意の目的に使用することが出来る。これらの目的は、伝統的な方法と本発明の方法の両方を含めて、エチレンの製造方法を含む。混合ナフサは、上述のオレフィン系ナフサ、及び、水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサを含む。本発明による混合オレフィン系ナフサは、適当量の本明細書に記載されたオレフィン系ナフサを上記に定義された群から選択される他のナフサと混合して混合ナフサを提供することを含む方法により製造される。該オレフィン系ナフサは本明細書に記載された方法により製造することが出来る。
【0063】
本発明による混合ナフサは、10ppmより少ない硫黄を含み、1.5mg KOH/gより低い酸価を有する。好ましくは、該混合ナフサは0.5mg KOH/gより低い酸価を有する。又、好ましくは混合ナフサは10ppmより少ない窒素を含有し、より好ましくは硫黄も窒素も5ppmより少なく、より好ましくは2ppmより少なく、更により好ましくは1ppmより少ない。更に、混合ナフサは好ましくは10重量%より少ない芳香族炭化水素、より好ましくは5重量%より少ない芳香族炭化水素、更により好ましくは2重量%より少ない芳香族炭化水素を含有する。
【0064】
本発明による混合ナフサは、変化する量のオレフィン系ナフサを、上記に定義した他のナフサに対して含むことが出来る。好ましくは、該混合ナフサは、10〜90重量%のオレフィン系ナフサ及び90〜10重量%の上記に定義した他のナフサを含む。より好ましくは、混合ナフサは30〜70重量%のオレフィン系ナフサ及び70〜30重量%の他のナフサを含む。
【0065】
本発明のオレフィン系ナフサは、低級オレフィンの製造用ナフサ分解装置に対する優れた供給物を提供する。本発明による低級オレフィンの製造方法は、上述のオレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化することを含み、低級オレフィンはこの生成物流から回収される。
【0066】
炭化水素の熱分解はエチレンの工業的製造に対する主要なルートである。エチレンを製造する熱分解を行うための典型的な条件は、2001年4月16日、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,K.M.Sundaram等の「エチレン」に記載されているが、その全体を本明細書に引用して援用する。該熱分解反応は炉の輻射部分の熱分解コイル中で進行する。熱分解中にコークスも形成されるので、水蒸気を該供給物に対する希釈剤として添加する。該水蒸気は、コークスを形成する副反応を最小にし、炭化水素分圧を下げることにより所望のオレフィンを製造する選択性を改良する。輻射室に入る炭化水素と水蒸気の混合物の温度(交錯温度(crossover temperature)として知られている)は500〜700℃である。滞留時間及び必要な供給物の厳密性によって、コイル出口温度は典型的に775〜950℃に維持される。
【0067】
低い滞留時間及び低い分圧の組合せが、一定の供給物転化において、オレフィンに対する高い選択性を生ずる。1960年代には滞留時間は0.5〜0.8秒であったが、1980年代後半には滞留時間は典型的に0.1〜0.15秒であった。典型的な熱分解ヒーター特性を下表に記載する。
【表1】

【0068】
分解反応は、側壁又は床バーナーにおいて燃料ガス及び(又は)燃料油を燃焼させることにより供給される熱を用いて、転化炭化水素について1.6〜2.8MJ/kg(700〜1200BTU/lb)吸熱性である。側壁バーナーは通常均一な熱分布を与えるが、各バーナーの容量は限られている(0.1〜1MW)ので、単一炉に40〜200個のバーナーが必要である。いろりバーナーとも呼ばれる近代的床バーナーを用いると、10m程の高さのコイルに関して均一な熱流速分布が得られ、これらは比較的新しい設計に広く使用されている。これらのバーナーの容量は顕著に変化する(1〜10MW)ので、たった2,3個のバーナーが必要であるに過ぎない。バーナーの選択は、燃料のタイプ(ガス及び/又は液体)、燃焼空気源(周囲空気、予熱空気、又はガスタービン排気ガス)、及び必要なNOレベルに依存する。該炉から出てくる反応混合物は急冷クーラーで急速に冷却される。
【0069】
ナフサ分解装置への供給物として上述のオレフィン系ナフサを使用すると、パラフィン系ナフサと比較して、エチレンの収率が増加する。ナフサ分解中のエチレンの収率改良は、ナフサ分解の化学を検討することにより理解することが出来る。典型的なCパラフィンに対して、該分解反応(脱水素なし)は以下の通りである。
14 → 2C + C
従って、1モルのヘキサンは、2モルのエチレン及び1モルのエタンを生ずる。
【0070】
対応するCオレフィンに対する反応は以下の通りである。
12 → 3C
オレフィンはパラフィンと比較して水素が不足しているので、生成する低価値のエタンはより少なく、所望のエチレンの収率は50%増加する可能性がある。しかしながら、工業的条件下では出発ヘキサンの一部は脱水素されてヘキセン及び水素を形成するであろうから、実際のエチレンの収率は脱水素なしで予想される収率を超えて増加するであろう。それにも拘わらず、オレフィン系供給物を使用する場合、エチレン収率は、対応するパラフィンで観察される収率を超えて増加する。従って、本発明の分解反応は、上述のオレフィン系ナフサ供給物を使用しているので、より効率的である。
【0071】
更に、オレフィン系ナフサ供給物を使用した本発明の分解反応はより経済的である。パラフィン(即ち、ヘキサン)からエチレンへの転化もオレフィン(即ち、ヘキセン)からエチレンへの転化も吸熱性なので高温を必要とするが、吸熱性脱水素反応は同じ程度に起きないので、パラフィンの転化よりオレフィンの転化の方が吸熱性が少ない。従って、オレフィン系ナフサからエチレンへの転化中のエネルギー消費は、対応するパラフィンに対して予想されるものより低い。このより低いエネルギー消費のため、水蒸気分解装置の操作費用は減少する。
【0072】
ナフサ分解装置で使用される現在の供給原料は著しい量のオレフィンを含有していないが、それは典型的にこれらの化合物に欠けている石油からそれらが誘導されているからである点に注意すべきである。
【0073】
ナフサ分解装置におけるオレフィン系供給原料の処理は、炉管コークス化程度の増加を招く可能性がある。しかしながら、もしこれが起きたら、この問題を抑制するために以下の対策の任意の一つ又は組合せを取ることが出来る。これらの対策には、デコーキング操作の頻度を増加させること、HO/炭化水素供給原料の比を増加させること、該供給原料に硫黄又は硫黄含有流を添加すること、及び錫、クロム、アルミニウム、ゲルマニウム及びそれらの組合せのようなコークス不動態化剤で該反応器を塗布することが含まれる。
【0074】
本発明の低級オレフィンの製造方法においては、炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化する。該炭化水素資源は石炭、天然ガス、石油、及びそれらの組合せから成る群から選択することが出来る。該合成ガスの少なくとも一部を、上述したように、フィッシャー・トロプシュ法によりオレフィン系ナフサに転化する。該オレフィン系ナフサはフィッシャー・トロプシュ生成物流から単離し、やはり上述したように、所望により高温で金属酸化物と接触させることによって精製することが出来る。該オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化し、そして該低級オレフィンの少なくとも一部を該生成物流から回収する。好ましくは、これらの低級オレフィンはエチレンを含む。
【0075】
本発明の好ましい態様が図1に図解されている。エチレン製造設備から遠く離れた場所で、メタン(10)を酸素及び水蒸気(どちらも示されてない)と混合し合成ガス発生装置(20)中で反応させて合成ガス流(30)を形成する。該合成ガスをスラリー相フィッシャー・トロプシュ個別装置(40)中で反応させて液相生成物(50)及び蒸気相生成物(60)を生成する。該蒸気相生成物を分離してC10及びそれより大きな炭化水素質化合物を含有する留出液範囲物質(90)を形成する。又この分離で製造されるのは、C〜400°Fの炭化水素質化合物を含有するオレフィン系ナフサ(80)である。該オレフィン系ナフサは、ガス状成分を添加することなく680°F、50psig、及び5LHSV(液時空間速度)で精製個別装置(100)を通して下方に通過させる。該精製個別装置はアルミナを含有する。該精製個別装置は、80%より多くの酸素化化合物を除去し、オレフィン含量を増加させ、オレフィン系ナフサの酸性度を減少させる。精製されたオレフィン系ナフサが製造され(120)、エチレン製造サイトに輸送され(140)、そこでナフサ分解装置(160)中で分解されてエチレン含有流(170)を生成する。売れるエチレンを示されてない工程により該エチレン含有流から回収する。
【0076】
一方、400°F+物質を含有するフィッシャー・トロプシュ設備からの液相生成物(50)を留出液範囲物質(90)と混合し、該混合物を水素化設備(110)で処理して該生成物を売れる生成物、即ちディーゼル燃料、ジェット燃料、及び(又は)潤滑油ベース・ストック(130)に転化する。該水素化設備は水素化分解、水素処理、及び(又は)水添異性化工程から成る。これらの売れる生成物は市場(180)へ輸送される(150)。また、水素化設備(110)で他の売れる生成物と一緒に生成したパラフィン系ナフサ(示されてない)は、精製オレフィン系ナフサ(120)と混合し輸送することが出来る。
【0077】
オレフィン系ナフサの選択的精製処理は、(上に示されているように)輸送前か又は輸送後であって水蒸気分解装置における転化前に行うことが出来、或いは両方の場所で行うことが出来る。
【0078】
本発明を以下の限定するものではない説明に役立つ実施例により更に説明する。
【実施例1】
【0079】
フィッシャー・トロプシュ・オレフィン系ナフサ
フィッシャー・トロプシュ法により製造した二つのオレフィン系ナフサを得た。第一のもの(供給原料A)は鉄触媒を用いて製造した。第二のもの(供給原料B)はコバルト触媒を用いて製造した。両方の供給物を製造するのに用いたフィッシャー・トロプシュ法はスラリー相で操作した。二つの供給物の性質は下に続く表4に示されている。
【0080】
供給原料Aは著しい量の溶解鉄を含有し酸性でもある。それはかなり悪い腐食度を有する。
【0081】
本発明の目的のためには、供給原料Bが好ましい。それは、酸素化物がより少なく、酸含量がより低く、腐食性がより低い。従って、鉄触媒よりもコバルト触媒からエチレン製造用のオレフィン系ナフサを製造する方が好ましい。コバルト触媒からのナフサが有し得る不純物の度合は充分に低いので、上述したように更に処理又は精製することなく該ナフサを使用することが出来る。
【0082】
供給原料及び生成物におけるグループのタイプを決定するために、ASTM D6550(超臨界流体クロマトグラフィー、SFCによりガソリンのオレフィン含量を測定する標準試験方法)の修正版を使用した。該修正方法は、3点校正標準を作成することにより飽和炭化水素、芳香族炭化水素、酸素化物及びオレフィンの全量を定量することが出来る。校正標準溶液は、以下の化合物、即ちウンデカン、トルエン、n−オクタノール、及びドデセンを用いて調製した。定量化のためには外部標準法を用いたが、検出限界は芳香族炭化水素及び酸素化物に対して0.1重量%でありオレフィンに対して1.0重量%である。機器条件に関してはASTM D6550を参照して頂きたい。
【0083】
小分割量の燃料サンプルを、直列に連結された2個のクロマトグラフィー・カラムのセット上に注入し、移動相として超臨界二酸化炭素を用いて移送した。第一のカラムは高表面積シリカ粒子で充填した。第二のカラムには、銀イオンを装着した高表面積シリカ粒子を含有させた。
【0084】
異なる種類の成分をクロマトグラフィー・システムに通して検出器まで導くために2個の切換弁を使用した。前進流形態では、飽和炭化水素(ノルマル及び分岐アルカン及び環状アルカン)は両方のカラムを通って検出器まで通過し、一方オレフィンは銀装着カラムに捕捉され芳香族炭化水素及び酸素化物はシリカ・カラムに保持される。芳香族化合物及び酸素化物はその後逆流置換形態(back flush mode)でシリカ・カラムから検出器へと溶離された。最後に、オレフィンは銀装着カラムから検出器へと逆流置換された。
【0085】
定量化には水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。校正は、密度が訂正された既知質量%の全飽和炭化水素、芳香族炭化水素、酸素化物及びオレフィンを含有する標準基準物質と比較した飽和炭化水素、芳香族炭化水素、酸素化物及びオレフィンのクロマトグラフィー・シグナルの面積に基礎を置いた。すべての分析結果の総計は100%当り3%以内であったが便宜上100%に標準化した。
【0086】
オレフィンの重量パーセントは又、臭素価及び平均分子量から以下の式を用いて計算することが出来る。
オレフィン重量%=(臭素価)(平均分子量)/159.8
【0087】
平均分子量は適切な方法により直接測定するのが好ましいが、IEC Res.1996年35巻、A.G.Goossensの「石油留分の分子量の予測」985〜988頁に記載されたAPI比重及び中沸点を用いた相関関係により推定することも出来る。
【0088】
好ましくは、オレフィン及び他の成分は上述の修正SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)法により測定される。
【0089】
供給原料のGCMS(ガスクロマトグラフィー及び質量分析)分析により、飽和炭化水素は殆んど全くn−パラフィンだけであり、酸素化物は主として第一級アルコールであり、オレフィンは主として第一級線状オレフィン(アルファオレフィン)であると判断された。
【実施例2】
【0090】
脱水触媒
市販のシリカ・アルミナ及びアルミナ押出物を該オレフィン系ナフサの脱水について評価した。該押出物の性質を下の表1に示す。
【表2】

【実施例3】
【0091】
シリカ・アルミナ上の脱水
脱水実験を、ガス添加も液体再循環もなしに、1インチ流下式反応器中で行った。触媒体積は120ccであった。
【0092】
Feに基く凝縮物(供給物A)を市販のシリカ・アルミナで処理した。この触媒は、50psig、及び480°F、580°F、及び680°Fの温度で、1LHSV(液時空間速度)及び3LHSVの空間速度を用いて試験した。1LHSVで、3種のすべての温度において全オレフィン含量は69〜70%であったが、これは酸素化物の完全転化を示した。680°Fで軽質生成物の収率によりいくらかの分解が観察された、即ち全C4−は1.2%でC5〜290°Fは(該供給原料中の20%に対して)25%であった。3LHSV及び480°Fと580°Fにおいて、全オレフィンは53〜55%でより低かった。680°F及び3LHSVにおいて、全オレフィン含量は69%で高い脱水活性が得られた。GCMS(ガスクロマトグラフィー及び質量分析)のデータにより、著しい量の1−オレフィンが内部又は分岐オレフィンに転化されたことが示された。480°Fにおける全オレフィンは最初69%であったが、試験の最後近く(運転中〜960時間)は55%であった。触媒の取出し後、触媒上には著しい量の炭素が観察された。明らかに触媒は汚れた。
【表3】

【0093】
3LHSV及び680°Fにおける試験からの生成物(D)の詳細な分析値を下の表4に示す。酸素の84%が除去され、腐食度が改良され、そして鉄が検出レベルの下まで減少した。ナフサの酸性度は25%減少した。オレフィン含量の増加及び酸素化物含量の減少によって示されているように、酸素化物はオレフィンに転化された。
【実施例4】
【0094】
アルミナ上の脱水
Coに基く冷凝縮物(供給原料B)も、実施例2のようにではあるが、アルミナ触媒を用いて処理した。480°F〜730°Fの温度及び1〜5のLHSV(液時空間速度)値について探求した。高温度及び1LHSVでは、GCMS(ガスクロマトグラフィー及び質量分析)のデータにより、二重結合の異性化が著しい(アルファオレフィン含量が減少する)ことが示された。5LHSV及び580°Fでは、脱水転化が著しく低く、オレフィンの大部分が第一級線状オレフィンであった。この試験は2000時間実施されたが、汚れは示されなかった。
【表4】

【0095】
これらの結果により、サンプルからすべての酸素化物を除去しそれらをオレフィンに転化することが出来ることが示されている。高い酸素化物除去レベルでは、著しい割合のアルファオレフィンが内部オレフィンに異性化されている。エチレン製造用の供給原料としてアルファオレフィンよりも内部オレフィンの方が価値は低いけれども、内部オレフィンへの異性化は標準パラフィン系ナフサの下まで価値を減少させることはなく、又供給原料としてのいかなる価値をも破壊するものではない。
【0096】
5LHSV及び680°Fにおける操作から生成物(C)を製造した。詳細な性質が下の表1に示されている。酸素の87%が除去され、酸性度が55%減少し、そしてサンプル中の微量の鉄が除去された。最終材料の酸性度は、原油に対する典型的な最大値、0.5mg KOH/gより下であった。酸素化物含量の減少と大体一致するオレフィン含量の増加によって示されているように、酸素化物はオレフィンに転化された。
【0097】
すべてのサンプルにおけるICP(誘導結合プラズマ分析)検出限界より下の金属元素:Al,B,Ba,Ca,Cr,Cu,K,Mg,Mo,Na,Ni,P,Pb,S,Si,Sn,Ti,V。
【0098】
【表5】

【実施例5】
【0099】
酸素化物の吸着
高温処理により除去されない微量レベルの酸素化物は、ナトリウムXゼオライト(EM Science製市販の13X篩、タイプ13X、8〜12メッシュ・ビーズ、パート番号MX1583T−1)を使用した吸着により除去することが出来る。
【0100】
該吸着試験は上昇流式固定床個別装置中で行った。該吸着検討用の供給物は、Co凝縮物(供給物B)を5LHSV(液時空間速度)、680°F及び50psigにおいてアルミナ上で処理することにより製造した。該吸着検討用の供給物は、酸価が0.47で、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)による酸素化物含量が0.6%であった。
【0101】
該吸着用の処理条件は、周囲圧力、室温、及び0.5LHSVであった。処理生成物の酸素化物含量をSFC法により監視した。該吸着実験は、0.1%以上の酸素化物含量の出現として定義される破過点まで続けた。該破過点は、該篩が該供給物及び生成物酸素化物に基いて14重量%の同等量を吸着した時点で、生じた。処理後の生成物は、中性子放射化分析による0.05重量%の酸素、<0.1ppmの窒素、及び0.09の全酸価を示した。
【0102】
該吸着剤は、公知の方法、即ち、酸化的燃焼、不活性雰囲気中のか焼、水洗等、及びそれらの組合せにより再生することが出来る。
【0103】
これらの結果は、吸着処理も酸素化物除去に使用出来ることを示している。吸着処理は、そのまま、又は脱水と組合わせて使用することが出来る。
【0104】
本発明の範囲及び本質から離れることなく、本発明の種々の修正及び変形が当業者には明らかとなるであろう。前述の記載の再検討から、当業者には他の目的及び利点が明らかとなるであろう。
【0105】
本発明の態様は、以下のようにまとめることができる。
(1)a.10〜80重量%の量のオレフィン、
b.50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の量の非オレフィン、
c.重量で10ppmより少ない量の硫黄、
d.重量で10ppmより少ない量の窒素、
e.10重量%より少ない量の芳香族炭化水素、
f.1.5より低い全酸価、及び
g.C〜400°Fの沸点範囲、
を含むオレフィン系ナフサ。
(2)少なくとも25重量%のオレフィン、好ましくは少なくとも50重量%のオレフィンを含む、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(3)該非オレフィンが75重量%より多いパラフィンを含む、好ましくは該非オレフィンが90重量%より多いパラフィンを含む、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(4)該オレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンから成っている、好ましくは該オレフィンが65重量%より多い線状第一級オレフィンから成っている、最も好ましくは該オレフィンが80重量%より多い線状第一級オレフィンから成っている、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(5)該パラフィンが1より低いi/n比を有する、好ましくは該パラフィンが0.5より低いi/n比を有する、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(6)重量で2ppmより少ない量の硫黄及び重量で2ppmより少ない量の窒素を含み、好ましくは2重量%より少ない量の芳香族炭化水素を含む、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(7)0.5より低い全酸価を有する、上記(1)によるオレフィン系ナフサ。
(8)a.10〜80重量%の量のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の量の非オレフィン、を含むオレフィン系ナフサ、及び
b.水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサ、
を含み、10ppmより少ない硫黄を含み、1.5より低い酸価を有する混合ナフサ。
(9)0.5より低い酸価を有する、上記(8)による混合ナフサ。
(10)5ppmより少ない硫黄を含む、好ましくは2ppmより少ない硫黄を含む、上記(8)による混合ナフサ。
(11)2ppmより少ない量の窒素及び2重量%より少ない量の芳香族炭化水素を含む、上記(8)による混合ナフサ。
(12)該オレフィン系ナフサが少なくとも25重量%のオレフィンを含み、好ましくは該オレフィン系ナフサのオレフィンが65重量%より多い線状第一級オレフィンを含む、上記(8)による混合ナフサ。
(13)10〜90重量%のオレフィン系ナフサ及び90〜10重量%の(b)のナフサを含む、上記(8)による混合ナフサ。
(14)a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法によりオレフィン系ナフサに転化すること、
c.該オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化すること、及び
d.該低級オレフィンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収すること
を含む低級オレフィンの製造方法。
(15)該オレフィン系ナフサが1.5より低い全酸価を有する、上記(14)による方法。
(16)該オレフィン系ナフサを精製しそこに溶解した固体及び酸を減少させて精製ナフサを提供する工程を更に含む、上記(14)による方法。
(17)該精製オレフィン系ナフサが0.5より低い全酸価を有する、上記(16)による方法。
(18)該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該精製工程を行い、好ましくは該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、上記(14)による方法。
(19)該精製工程で形成された水及び二酸化炭素を該精製ナフサから分離する工程を更に含む、上記(16)による方法。
(20)該オレフィン系ナフサが10〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の非オレフィンを含む、好ましくは該オレフィン系ナフサが50〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜50重量%の非オレフィンを含む、上記(14)による方法。
(21)該オレフィン系ナフサが5重量%より少ない芳香族炭化水素、5ppmより少ない硫黄、及び5ppmより少ない窒素を含み、好ましくは該オレフィン系ナフサのオレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンを含み、最も好ましくは該オレフィン系ナフサのオレフィンが80重量%より多い線状第一級オレフィンを含む、上記(14)による方法。
(22)該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供し、該混合ナフサの少なくとも一部を該ナフサ分解装置中で転化する工程を更に含む、上記(14)による方法。
(23)a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法個別装置中で炭化水素流に転化すること、
c.25〜80重量%のオレフィン及び75重量%より多いパラフィンが含まれる20〜75重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを該炭化水素流から単離すること、
d.該オレフィン系ナフサを金属酸化物の存在下に精製して1.5より低い全酸価を有する精製オレフィン系ナフサを提供すること、
e.該精製オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化すること、及び
f.該エチレンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収すること、
を含むエチレンの製造方法。
(24)該オレフィン系ナフサのオレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンを含み、該オレフィン系ナフサの非オレフィンが90重量%より多いパラフィンを含み、該パラフィンが1より低いi/n比を有する、上記(23)による方法。
(25)該精製工程が該オレフィン系ナフサ中の固体、酸、及びアルコールの含量を減少させ、好ましくは該精製オレフィン系ナフサが0.5より低い全酸価を有する、上記(23)による方法。
(26)450〜800°Fで1000psigよりも低く0.25〜10LHSV(液時空間速度)の条件下ガス状成分の添加なしに、金属酸化物を含む精製個別装置に該オレフィン系ナフサを通過させることにより該精製工程を行う、上記(23)による方法。
(27)該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、上記(23)による方法。
(28)互いに遠く離れた第一サイト及び第二サイトであり、第二サイトで使用されるオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを形成する第一サイト及びエチレンを形成する第二サイトを含むエチレンの製造方法であって、
a.第二サイトで
i.炭化水素資源を合成ガスに転化すること、
ii.該合成ガスをフィッシャー・トロプシュ合成に処して炭化水素質生成物を形成すること、
iii.該炭化水素質生成物からオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを単離すること、
を含む方法により製造されるオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを受け取ること、
b.該オレフィン系ナフサをナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化すること、及び
c.該ナフサ分解装置の生成物流からエチレンを単離すること、
を含む前記のエチレンの製造方法。
(29)該オレフィン系ナフサが1.5より低い全酸価を有し、好ましくは該オレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを製造する方法が該オレフィン系ナフサを精製しそこに溶解した固体及び酸を減少させて精製ナフサを提供する工程を更に含む、上記(28)による方法。
(30)該精製ナフサが0.5より低い全酸価を有する、上記(29)による方法。
(31)該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該精製を行い、好ましくは該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、上記(28)による方法。
(32)該オレフィン系ナフサが50〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜50重量%の非オレフィンを含む、上記(28)による方法。
(33)該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供し、該混合ナフサを該ナフサ分解装置中で転化する工程を更に含む、上記(28)による方法。
(34)a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法個別装置中で炭化水素流に転化すること、
c.10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを該炭化水素流から単離すること、
d.該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該オレフィン系ナフサを精製すること、及び
e.1.5より低い全酸価を有する精製オレフィン系ナフサを単離すること、
を含むオレフィン系ナフサの製造方法。
(35)該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択し、好ましくは該精製工程が該オレフィン系ナフサ中の固体、酸、及びアルコールの含量を減少させ、最も好ましくは該単離精製ナフサが0.5より低い全酸価を有する、上記(34)による方法。
(36)該精製工程で形成された水及び二酸化炭素を該精製オレフィン系ナフサから分離する工程を更に含む、上記(34)による方法。
(37)450〜800°Fで1000psigよりも低く0.25〜10LHSV(液時空間速度)の条件下ガス状成分の添加なしに、金属酸化物を含む精製個別装置に該オレフィン系ナフサを通過させることにより該精製工程を行う、上記(35)による方法。
(38)a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法反応器中で炭化水素流に転化すること、
c.10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを単離すること、及び
d.該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供すること、
を含む混合ナフサの製造方法であって、該混合ナフサが10ppmより少ない硫黄を含み1.5より低い酸価を有する前記方法。
(39)該オレフィン系ナフサを精製してそこに溶解した固体及び酸を減少させる工程を更に含む、上記(38)による方法。
(40)該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該精製工程を行う、上記(39)による方法。
(41)該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、上記(40)による方法。
(42)該精製ナフサが0.5より低い全酸価を有し、好ましくは450〜800°Fで1000psigよりも低く0.25〜10LHSV(液時空間速度)の条件下ガス状成分の添加なしに、金属酸化物を含む精製個別装置に該オレフィン系ナフサを通過させることにより該精製工程を行う、上記(39)による方法。
(43)該混合ナフサが10〜90重量%のオレフィン系ナフサを含み、好ましくは該混合ナフサが2ppmより少ない硫黄を含む、上記(38)による方法。
(44)a.10〜80重量%のオレフィン及び50重量%より多いパラフィンが含まれる20〜90重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを提供すること、及び
b.該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供すること、
を含む混合ナフサの製造方法であって、該混合ナフサが10ppmより少ない硫黄を含み1.5より低い酸価を有する前記方法。
(45)該オレフィン系ナフサが25〜80重量%のオレフィン及び20〜75重量%の非オレフィンを含み、該非オレフィンが75重量%より多いパラフィンを含み、該オレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンを含む、上記(44)による方法。
(46)該オレフィン系ナフサが50〜80重量%のオレフィン及び20〜50重量%の非オレフィンを含み、該非オレフィンが75重量%より多いパラフィンを含み、該オレフィンが65重量%より多い線状第一級オレフィンを含む、上記(44)による方法。
(47)該混合ナフサが0.5より低い全酸価を有し、好ましくは該混合ナフサが10〜90重量%のオレフィン系ナフサを含み、より好ましくは該混合ナフサが2ppmより少ない硫黄を含む、上記(44)による方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法によりオレフィン系ナフサに転化すること、
c.該オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中で低級オレフィンを含む生成物流に転化すること、及び
d.該低級オレフィンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収すること
を含む低級オレフィンの製造方法。
【請求項2】
該オレフィン系ナフサが1.5より低い全酸価を有する、請求項1による方法。
【請求項3】
該オレフィン系ナフサを精製しそこに溶解した固体及び酸を減少させて精製ナフサを提供する工程を更に含む、請求項1による方法。
【請求項4】
該精製オレフィン系ナフサが0.5より低い全酸価を有する、請求項3による方法。
【請求項5】
該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該精製工程を行い、好ましくは該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、請求項1による方法。
【請求項6】
該精製工程で形成された水及び二酸化炭素を該精製ナフサから分離する工程を更に含む、請求項3による方法。
【請求項7】
該オレフィン系ナフサが10〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜90重量%の非オレフィンを含む、好ましくは該オレフィン系ナフサが50〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜50重量%の非オレフィンを含む、請求項1による方法。
【請求項8】
該オレフィン系ナフサが5重量%より少ない芳香族炭化水素、5ppmより少ない硫黄、及び5ppmより少ない窒素を含み、好ましくは該オレフィン系ナフサのオレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンを含み、最も好ましくは該オレフィン系ナフサのオレフィンが80重量%より多い線状第一級オレフィンを含む、請求項1による方法。
【請求項9】
該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供し、該混合ナフサの少なくとも一部を該ナフサ分解装置中で転化する工程を更に含む、請求項1による方法。
【請求項10】
a.炭化水素資源の少なくとも一部を合成ガスに転化すること、
b.該合成ガスの少なくとも一部をフィッシャー・トロプシュ法個別装置中で炭化水素流に転化すること、
c.25〜80重量%のオレフィン及び75重量%より多いパラフィンが含まれる20〜75重量%の非オレフィンを含むオレフィン系ナフサを該炭化水素流から単離すること、
d.該オレフィン系ナフサを金属酸化物の存在下に精製して1.5より低い全酸価を有する精製オレフィン系ナフサを提供すること、
e.該精製オレフィン系ナフサの少なくとも一部をナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化すること、及び
f.該エチレンの少なくとも一部を該ナフサ分解装置の生成物流から回収すること、
を含むエチレンの製造方法。
【請求項11】
該オレフィン系ナフサのオレフィンが50重量%より多い線状第一級オレフィンを含み、該オレフィン系ナフサの非オレフィンが90重量%より多いパラフィンを含み、該パラフィンが1より低いi/n比を有する、請求項10による方法。
【請求項12】
該精製工程が該オレフィン系ナフサ中の固体、酸、及びアルコールの含量を減少させ、好ましくは該精製オレフィン系ナフサが0.5より低い全酸価を有する、請求項10による方法。
【請求項13】
450〜800°Fで1000psigよりも低く0.25〜10LHSV(液時空間速度)の条件下ガス状成分の添加なしに、金属酸化物を含む精製個別装置に該オレフィン系ナフサを通過させることにより該精製工程を行う、請求項10による方法。
【請求項14】
該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、請求項10による方法。
【請求項15】
互いに遠く離れた第一サイト及び第二サイトであり、第二サイトで使用されるオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを形成する第一サイト及びエチレンを形成する第二サイトを含むエチレンの製造方法であって、
a.第二サイトで
i.炭化水素資源を合成ガスに転化すること、
ii.該合成ガスをフィッシャー・トロプシュ合成に処して炭化水素質生成物を形成すること、
iii.該炭化水素質生成物からオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを単離すること、
を含む方法により製造されるオレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを受け取ること、
b.該オレフィン系ナフサをナフサ分解装置中でエチレンを含む生成物流に転化すること、及び
c.該ナフサ分解装置の生成物流からエチレンを単離すること、
を含む前記のエチレンの製造方法。
【請求項16】
該オレフィン系ナフサが1.5より低い全酸価を有し、好ましくは該オレフィン系フィッシャー・トロプシュ・ナフサを製造する方法が該オレフィン系ナフサを精製しそこに溶解した固体及び酸を減少させて精製ナフサを提供する工程を更に含む、請求項15による方法。
【請求項17】
該精製ナフサが0.5より低い全酸価を有する、請求項16による方法。
【請求項18】
該オレフィン系ナフサを高温で金属酸化物と接触させることによって該精製を行い、好ましくは該金属酸化物をアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、クレー及びそれらの混合物から成る群から選択する、請求項15による方法。
【請求項19】
該オレフィン系ナフサが50〜80重量%のオレフィン、及び50重量%より多いパラフィンを含む、20〜50重量%の非オレフィンを含む、請求項15による方法。
【請求項20】
該オレフィン系ナフサを水素処理フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素化分解フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ、水素処理石油誘導ナフサ、水素化分解石油誘導ナフサ、及びそれらの混合物から成る群から選択されるナフサと混合して混合ナフサを提供し、該混合ナフサを該ナフサ分解装置中で転化する工程を更に含む、請求項15による方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−63811(P2011−63811A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260773(P2010−260773)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2006−503193(P2006−503193)の分割
【原出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】